説明

発光素子および発光素子の製造方法

【課題】所定の間隔を離して基板上に立設された複数のナノワイヤを簡易かつ適切に形成できる発光素子および発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子100は、基板1と、基板1上に配された複数の絶縁薄膜9A、および、基板1の表面が露出している複数の開口部9Bからなるパターン層9と、基板1側から第1導電型の半導体層2、半導体発光層4、および、第2導電型の半導体層5をこの順に含み、パターン層9の開口部内9Bにおいて基板1に立設している複数のナノワイヤ20と、パターン層9を上方から覆うようにして、ナノワイヤ20間の隙間に配された透明絶縁層8と、複数のナノワイヤ20の第1導電型の半導体層3に電気的に接続された第1電極2と、複数のナノワイヤ20の第2導電型の半導体層5に電気的に接続された第2電極6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子および発光素子の製造方法に係り、詳しくは、半導体発光層を有している複数のナノワイヤを用いた発光素子およびその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN;窒化物半導体)系材料は、直接遷移型のバンド構造を持ち、連続的に紫外域から可視域に亘る幅広い範囲で発光可能な半導体材料として、様々な分野への応用が期待されている。一般に、サファイア基板上にGaN層を結晶成長させる手法が用いられるが、サファイア基板とGaNとの間には大きな格子不整合が存在するので、GaN結晶に糸状転位などの欠陥が発生するという問題がある。
【0003】
このような糸状転位の発生を減らして、発光素子の輝度を向上させる手法として、GaN系材料からなるナノサイズの柱状結晶構造体(以下、必要に応じて「GaNナノワイヤ」という)が有望視されている。
【0004】
このGaNナノワイヤのTEM観測によれば、糸状転位などの欠陥が極めて少ないことが確認されている。このため、当該GaNナノワイヤにGaN/InGaN MQD(Multiple Quantum Disk)活性層を作り込んだ高輝度発光素子がすでに提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は、GaNナノワイヤを用いた従来の発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、必要に応じて「ナノワイヤLED」と略す)の構造例を示した断面図である。なお、図17には、上述の特許文献1記載の素子に準拠した発光ダイオードの構造が示されている。
【0006】
従来のナノワイヤLED200には、基板51上にn型のGaNバッファ層50が形成されている。そして、このGaNバッファ層50上に、n型GaN層53、GaN/InGaN MQD活性層54、および、p型GaN層55からなるGaNナノワイヤ60が複数個配置されている。また、GaNナノワイヤ60のそれぞれの周辺には、SOG(Spin On Glass)材料やSiO2などの透明絶縁層58が設けられている。p型GaN層55の上部は、例えば、Ni/Auからなるp型透明電極56により共通に接続されている。そして、このp型透明電極56に、例えばTi/Alからなる電極パッド57が配されている。また、GaNバッファ層50に、例えばTi/Alからなるn型電極52が配されている。
【0007】
このようなナノワイヤLED200には、糸状転位などの欠陥が少ないことに加え、GaNナノワイヤ60の側壁から出射された光が、周辺のGaNナノワイヤ60により散乱され、この散乱光を上方に効率的に取り出せるという利点がある。更に、ナノワイヤLED200では、多数のGaNナノワイヤ60を光源とする面光源を容易に構成できるという特徴もある。
【特許文献1】特開2005−228936号公報
【特許文献2】特開2007−27298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来のナノワイヤLED200には、GaNナノワイヤ60を成長させる際に、GaNナノワイヤ60同士の適切な間隔制御において難点がある。
【0009】
例えば、ナノワイヤLED200を照明器具や表示デバイス用の面光源として用いる場合には、GaNナノワイヤ60の基板面内における敷き詰め度(面積占有率)のばらつきにより、面光源の光強度がばらつく場合がある。
【0010】
また、GaNナノワイヤ60が極度に高密度で敷き詰められた場合、GaNナノワイヤ60同士の間で一旦取り出された光が隣接するGaNナノワイヤ60に再度入射すると、GaNナノワイヤ60に吸収されることにより、光の取り出し効率が低下するという問題がある。
【0011】
また、GaNナノワイヤ60が極度に高密度で敷き詰められた場合、ナノワイヤLED200の放熱性が悪くなり、ナノワイヤLED200の温度上昇により発光効率が劣化する。
【0012】
特に大面積の面光源の場合には、ナノワイヤLED200の中央部分の放熱性が悪いので、ナノワイヤLED200の面内の電流が不均一になり易い。つまり、ナノワイヤLEDの中央部分の温度が上昇し易いので、ナノワイヤLED200の発光効率が面内で不均一になるという問題がある。
【0013】
これに対し、GaNナノワイヤ60の成長温度を下げることにより、GaNナノワイヤ60同士の間隔をある程度広げた状態でGaNナノワイヤ60を成長できるが、この場合、GaNナノワイヤ60の結晶性の悪化(つまり結晶中の欠陥増加)が懸念される。
【0014】
そこで、GaN結晶体同士の間隔の制御を意図したLEDの製造方法が、上述の特許文献2の図2に記載されている。同公報によれば、開口部を有するシリコン酸化膜をGaN結晶体のマスクとして、この開口部内においてGaN結晶体が選択成長により埋め込まれている。これにより、GaN結晶体を等間隔に形成できるとされている。
【0015】
しかし、上述の公報に記載された開口部においては、GaNナノワイヤが埋め込まれているので、シリコン酸化膜の開口部のパターニングにおいて、以下のような問題がある。
【0016】
例えば、円柱状のGaNナノワイヤの高さが1μm、その直径が80nm、GaNナノワイヤ同士の間隔が100nmであるとする。すると、このような円柱状のGaNナノワイヤを、上述の製造方法に倣って形成する場合、高さが1μm、直径が80nmという高アスペクト比の開口パターンを100nm間隔で、シリコン酸化膜上にパターニングする必要がある。そして、このことが、様々な不都合(例えば、ナノワイヤLEDの製造コストのアップ)を誘発すると考えられる。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり 所定の間隔を離して基板上に立設された複数のナノワイヤを簡易かつ適切に形成できる発光素子および発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、
基板と、
前記基板上に配された絶縁膜および前記基板の表面が露出している複数の開口部からなるパターン層と、
前記基板側から第1導電型の半導体層、半導体発光層、および、第2導電型の半導体層をこの順に含み、前記パターン層の開口部内において前記基板に立設している複数のナノワイヤと、
前記パターン層を上方から覆うようにして、前記ナノワイヤ間の隙間に配された透明絶縁層と、
前記複数のナノワイヤの前記第1導電型の半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記複数のナノワイヤの前記第2導電型の半導体層に電気的に接続された第2電極と、
を備えた発光素子を提供する。
【0019】
本発明の発光素子では、パターン層の開口部内にナノワイヤを埋め込む必要がないので、当該開口部の設計スペックを、パターン層を形成し易くなるよう、適切に設定できる。
【0020】
また、開口部の幅が狭くて、開口部のアスペクト比が大きいと、ナノワイヤの各層に対応する組成の原料が基板に届き難くなり、ナノワイヤの成長を阻害する場合があるが、本発明の発光素子では、開口部のアスペクト比を小さくできるので、このような問題に適切に対処できる。
【0021】
また、本発明の発光素子では、パターン層の開口部の間隔に基づいて、ナノワイヤの適切な間隔制御を行える。
【0022】
よって、このような発光素子を面光源として用いる場合には、ナノワイヤの基板面内における敷き詰め度(面積占有率)のばらつきを抑えることができ、面光源の光強度のばらつきを抑制できる。
【0023】
また、ナノワイヤを高密度に敷き詰め過ぎることが回避され、発光素子の温度上昇やナノワイヤから取り出された光の隣接するナノワイヤへの再吸収を抑えることができる。その結果、発光素子の温度上昇による特性劣化や光の取り出し効率の低下を防ぐことができる。
【0024】
前記パターン層の絶縁膜は、前記開口部を挟むようにして、ストライプ状に配置されていてもよい。
【0025】
これにより、開口部の幅方向に隣接する、ナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配列することができる。
【0026】
また、前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部を格子状に配列してもよい。
【0027】
これにより、格子状に並んでいる開口部の配列方向に隣接するナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配することができる。
【0028】
なお、本明細書において、「略円形」とは、真円形の他、当該真円形から歪んだ円形(例えば、楕円形や長円形)を含むものとする。また、「略多角形」とは、多角形を形作る辺が必ずしも直線である必要はなく、この辺を若干湾曲させた多角形を含み(例えば、三角形に対して扇型)、多角形を形作る角が必ずしも尖っている必要はなく、この角を若干丸めた多角形(例えば、図13に例示される「長方形の開口部409B」を参照)を含むものとする。
【0029】
また、前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部を千鳥状に配列してもよい。
【0030】
これにより、千鳥状に並んでいる開口部に隣接するナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配することができる。
【0031】
また、前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部をランダムに配列してもよい。
【0032】
また、前記パターン層の絶縁膜の厚みが、前記ナノワイヤの高さの半分以下であってもよい。
【0033】
また、前記パターン層の絶縁膜は、酸化シリコンにより構成されてもよい。
【0034】
また、本発明は、基板上に配された絶縁膜および前記基板の表面が露出している複数の開口部からなるパターン層を形成する工程と、
前記開口部内において第1導電型の半導体層、半導体発光層、および、第2導電型の半導体層をこの順に成長させ、これらの層を含む複数のナノワイヤを前記基板に対して鉛直方向に形成させる成長工程と、
前記パターン層を上方から覆うようにして、前記ナノワイヤ間の隙間に透明絶縁層を埋め込む工程と、
前記複数のナノワイヤの第1導電型の半導体層に電気的に接続する第1電極を形成する工程と、
前記複数のナノワイヤの第2導電型の半導体層に電気的に接続する第2電極を形成する工程と、
を含んでいる発光素子の製造方法を提供する。
【0035】
本発明の発光素子の製造方法では、パターン層の開口部内にナノワイヤを埋め込む必要がないので、当該開口部の設計スペックを、パターン層を形成し易くなるように適切に設定できる。
【0036】
また、開口部の幅が狭くて、開口部のアスペクト比が大きいと、ナノワイヤの各層に対応する組成の原料が基板に届き難くなり、ナノワイヤの成長を阻害する場合があるが、本発明の発光素子の製造方法では、開口部のアスペクト比を小さくできるので、このような問題に適切に対処できる。
【0037】
また、本発明の発光素子の製造方法では、パターン層の開口部の間隔に基づいて、ナノワイヤの適切な間隔制御を行える。
【0038】
よって、このようにして製造された発光素子を面光源として用いる場合には、ナノワイヤの基板面内における敷き詰め度(面積占有率)のばらつきを抑えることができ、面光源の光強度がばらつきを抑制できる。
【0039】
また、ナノワイヤを高密度に敷き詰め過ぎることが回避され、ナノワイヤから取り出された光の隣接するナノワイヤへの再吸収を抑えることができる。その結果、発光素子の光の取り出し効率の低下を防ぐことができる。更に、発光素子の放熱性も改善され、発光素子の温度上昇に伴う特性劣化を防ぐことができる。
【0040】
また、前記成長工程の際に、前記パターン層の絶縁膜上に多結晶層が成長した場合、前記多結晶層を除去する工程をさらに含んでもよい。
【0041】
例えば、このような多結晶層をウエットエッチングにより除去することができ、多結晶層を下地の絶縁膜と一緒に、リフトオフ法により除去することもできる。
【0042】
また、前記パターン層を形成する工程において、隣接する前記開口部間に前記絶縁膜をストライプ状に形成してもよい。
【0043】
これにより、開口部の幅方向に隣接する、ナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配列することができる。
【0044】
また、前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の前記開口部を格子状に並ぶように形成してもよい。
【0045】
これにより、格子状に並んでいる開口部の配列方向に隣接する、ナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配することができる。
【0046】
また、前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の前記開口部を千鳥状に並ぶように形成してもよい。
【0047】
これにより、千鳥状に並んでいる開口部に隣接する、ナノワイヤ同士の間隔を一定に保つように、開口部内にナノワイヤを配することができる。
【0048】
また、前記パターン層を形成する工程において、前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の開口部をランダムに並ぶように形成してもよい。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、所定の間隔を離して基板上に立設された複数のナノワイヤを簡易かつ適切に形成できる発光素子および発光素子の製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0051】
図1は、本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの構造例を示した断面図である。
【0052】
本実施形態のナノワイヤLED100では、図1に示すように、サファイア基板1の表面にn型のGaNバッファ層10が設けられている。これにより、GaNバッファ層10上に、複数のGaNナノワイヤ20を自然に成長させることができる。このGaNナノワイヤ20は、サファイア基板1に対して鉛直方向に立設するように形成され、上述のGaNバッファ層10上に、n型GaN層3(n型の窒化物半導体層)、InGaN/GaN MQD活性層4(窒化物半導体発光層)、および、p型GaN層5(p型の窒化物半導体層)をこの順に有する柱状(例えば円柱状)を成している。また、n型GaN層3、InGaN/GaN MQD活性層4、および、p型GaN層5はダブルへテロ構造を成している。なお、InGaN/GaN MQD活性層4中のIn組成を調整することにより、InGaN/GaN MQD活性層4は、可視波長域を含む様々な波長の光を発光できる。
【0053】
また、本実施形態のナノワイヤLED100では、GaNナノワイヤ20間の隙間には、図1に示すように、後述するパターン層9を上方から覆うようにして、酸化シリコン(SiO2)やSOG材料からなる透明絶縁層8が埋め込まれている。
【0054】
これにより、柱状のGaNナノワイヤ20とGaNバッファ層10との密着性、および、GaNナノワイヤ20の機械的強度を向上できる。また、透明絶縁層8によって、p型GaN層5とn型のGaNバッファ層10とを完全に分離できるので、p型透明電極6(後述)による両者間の短絡などの問題も適切に回避できる。
【0055】
更に、本実施形態のナノワイヤLED100では、図1に示すように、全てのp型GaN層5に共通に電圧を印加するように、p型GaN層5に電気的に接続されたp型透明電極6がp型GaN層5の上部に配されている。なお、p型透明電極6には、Ni/Au電極などを用いればよい。一方、全てのn型GaN層3に共通に電圧を印加するように、n型GaN層3に電気的に接続されたn型電極2がGaNバッファ層10上の適所に配されている。なお、n型電極2には、Ti/Al電極などを用いればよい。更に、Ti/Alなどからなる電極パッド7が、p型透明電極6に電気的に接続されてp型透明電極6上の適所に配されている。
【0056】
なお、上述のナノワイヤLED100は一例に過ぎず、本実施形態のナノワイヤLED100の構成を様々な態様に改変できる。
【0057】
例えば、本実施形態のナノワイヤLED100では、窒化物半導体(窒化ガリウム;GaN)を用いてナノワイヤを構成しているが、例えば、酸化亜鉛(ZnO)などの酸化物半導体を用いてもよい。
【0058】
また、GaNナノワイヤ20をGaNバッファ層10上に成長させているが、サファイア基板1上にナノワイヤを直接成長させてもよいし、安価なシリコン(Si)基板を用いて、Si基板上に直接ナノワイヤを成長させてもよい。この場合、Si基板は前処理として自然酸化膜を除去し、GaNのワイヤを成長させる公知の方法を用いることができる。
【0059】
更に、ナノワイヤLED100の基板として、上述のシリコン基板以外にも、サファイア基板1、シリコン基板、SiC(シリコンカーバイド)基板、SOI基板、または、ハイブリッド基板などを用いることができ、これらの基板上にナノワイヤを直接成長させてもよい。
【0060】
更に、GaNバッファ層10上のn型電極2に代えて、特開2007−27298号公報(図1)に記載の如く、n型の導電性基板の裏面全域にn型電極を配するように、構成してもよい。
【0061】
更に、透明絶縁層8の材料として、上述の酸化シリコンに代えて、他の絶縁材料、例えば、窒化シリコン(SiN)を用いてもよい。
【0062】
次に、本実施形態のナノワイヤLED100の特徴部であるパターン層9について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0063】
図2は、本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。但し、図2では、本実施形態のナノワイヤLED100の構成要素を適宜省略し、図面の簡略化を図っている。例えば、図2では、サファイア基板1やp型透明電極6の図示、GaNナノワイヤ20中の各層3、4、5の図示を省いている。
【0064】
図3は、本発明の実施形態によるナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【0065】
なお、本明細書では、説明の便宜上、図2および図3に示すとおり、開口部9Bが延びている方向を「第1方向」とし、この「第1方向」に直交する方向(開口部9Bの幅方向)を「第2方向」とする。
【0066】
図2および図3に示すように、パターン層9は、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に配され、第1方向に延びるストライプ状の複数の絶縁薄膜9A、および、サファイア基板1のGaNバッファ層10の表面が露出されているストライプ状の複数の開口部9Bを有している。つまり、パターン層9の絶縁薄膜9Aは、開口部9Bを挟むようにして形成され、この絶縁薄膜9AによりGaNバッファ層10が被覆されている。絶縁薄膜9Aは、ここでは、酸化シリコン(SiO2)により構成されている。
【0067】
一方、開口部9Bに対応する領域については、絶縁薄膜9Aによる被覆がなされてなく、パターン層9を形成した段階では、下地のGaNバッファ層10が露出している。このため、この露出された領域が、サファイア基板1のGaNバッファ層10上にGaNナノワイヤ20を成長させる際の、GaNナノワイヤ20のエピタキシャル成長面として機能する。
【0068】
なお、絶縁薄膜9Aでは、サファイア基板1上にGaNナノワイヤ20を成長させる際に、多結晶GaN層の成長を伴うことがあるが、この場合、後述のとおり、多結晶GaN層は選択エッチングにより除去される。
【0069】
本実施形態では、絶縁薄膜9Aの幅W1(図3参照)は、約100nmに設定され、開口部9Bの第2方向の幅D1(図3参照)も、約100nmに設定されている。また、絶縁薄膜9Aの厚みT(図1参照)は、GaNナノワイヤ20の高さに比べて充分に小さく、ここでは、約100nmである。
【0070】
この場合、円柱状のGaNナノワイヤ20の直径が約80nmであり、GaNナノワイヤ20が開口部9Bの第2方向の略中央に成長すると見做すと、図2に示すように、GaNナノワイヤ20の第2方向における間隔D2(正確には、GaNナノワイヤ20の第2方向における端同士の距離)は、上述の絶縁薄膜9Aの幅W1(100nm)および開口部9Bの幅D1(100nm)に基づいて一定(ここでは、約120nm)になると期待される。
【0071】
つまり、開口部9Bは、第2方向に等間隔(上述の幅W1)を隔てて配され、第1方向に真直ぐにストライプ状に延在しているので、開口部9Bの幅方向(第2方向)に隣接する、GaNナノワイヤ20同士の間隔D2を一定に保つように、GaNナノワイヤ20は、開口部9B毎に第1方向に1列に並んで配列されている。
【0072】
このようにして、GaNナノワイヤ20の集合体としてのGaNナノワイヤアレイ14を、GaNナノワイヤ20がGaNバッファ層10上の第2方向に等間隔に並ぶように、サファイア基板1上に形成できる。
【0073】
但し、上述の絶縁薄膜9Aの幅W1、開口部9Bの幅D1、および、絶縁薄膜9Aの厚みTの各値は飽くまで一例に過ぎない。絶縁薄膜9Aの厚みTについては、少なくともGaNナノワイヤ20の高さの半分以下に設定すればよい。よって、GaNナノワイヤ20の高さが約1μmの場合には、この厚みTは、例えば、CVD法やスパッタ法で形成するのであれば、50nm〜300nmの範囲において、Si基板上に熱酸化法で形成するのであれば、3nmから20nmの範囲において、任意に設定できる。
【0074】
また、絶縁薄膜9Aの幅W1および間隔(つまり開口部9Bの幅D1)は、GaNナノワイヤ20の発光層であるInGaN/GaN MQW活性層4から発光した光が、効率よく取り出され、周囲のGaNナノワイヤ20によって効率よく散乱されて、光が上部に取り出されるために適したGaNナノワイヤの間隔と直径に基づいた数値を設定すればよい。
【0075】
具体的には、GaNナノワイヤ20からの光の取り出し効率を高めるには、GaNナノワイヤ20の直径を発光波長よりも小さくするとよい。発光波長をλ、GaNナノワイヤ20の屈折率をn1とすると、GaNナノワイヤ20の直径はλ/n1よりも小さくするとよい。GaNナノワイヤ20の屈折率をn1=2.5とすると、発光波長が例えば360nmの紫外線の場合、144nmより小さい値が適当な値となる。また、発光波長が780nmの赤色光線の場合は、312nmより小さい値に設定すればよく、他にも、緑色、青色、紫外線など、発光波長に合わせて適当な直径を設定すればよい。よって、絶縁薄膜9Aの間隔(つまり開口部9Bの幅D1)は開口部9Bに形成するGaNナノワイヤの本数に応じて設定すればよい。
【0076】
更に、GaNナノワイヤ20から一旦外部に取り出された光が、GaNナノワイヤ20に吸収されることなく、効率よく散乱されるには、GaNナノワイヤ20の間隔を発光波長よりも小さくするとよい。発光波長をλ、透明絶縁膜8の屈折率をn2とすると、GaNナノワイヤ20の間隔はλ/n2よりも小さくするとよい。透明絶縁膜8がSiO2とすると、その屈折率は約1.46であるため、GaNナノワイヤ20の間隔は、発光波長が例えば360nmの紫外線の場合、247nmより小さい値が適当な値となる。また、発光波長が780nmの赤色光線の場合は、534nm以下の値に設定すればよく、他にも、緑色、青色、紫外線など、発光波長に合わせて適当な間隔を設定すればよい。
【0077】
なお、本実施形態では、開口部9B毎に、第1方向に1列に並んだGaNナノワイヤ20を例示したが、開口部9Bの幅D1を広げることにより、開口部9B毎に、GaNナノワイヤ20を第1方向に2列以上配列することもできる。
【0078】
図7および図8には、開口部9B’毎にGaNナノワイヤ20’を第1方向に2列以上(ここでは、4列)を配してストライプ状にパターン層9’を形成した例が図示されている。
【0079】
図7は、このようなナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。図8は、このようなナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。この場合、GaNナノワイヤ20’を束にしながら、絶縁薄膜9A’によってできる適度の間隔(例えば、上述の設計基準による間隔)に基づいてナノワイヤLED100’の光を適切に散乱できる。その結果、単位面積あたりのGaNナノワイヤ20’の本数を多くでき、ナノワイヤLED100’の光を効率的に上部に取り出すことができる。また、微細なパターン層の作製はコストアップになり、コスト的に限界があるので、GaNナノワイヤの単位面積あたりの本数をできるだけ増やしたいときはこのような構成が有効である。
【0080】
次に、本発明の実施形態によるナノワイヤLED100の製造方法について説明する。
【0081】
図4は、本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの製造方法を説明するための図である。図4(a)〜図4(e)には、ナノワイヤLED100の各製造工程における断面図が示されている。
【0082】
まず、図4(a)に示すように、サファイア基板1上に、n型のGaNバッファ層10を形成させる。そして、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に、厚みが100nmの酸化シリコンからなるベタ状の均一な絶縁薄膜9’を、適宜の真空成膜法(例えば、CVD法やスパッタリング法)により形成する。次いで、絶縁薄膜9’上にストライプ状にパターニングされたレジスト膜12を形成する。
【0083】
次に、図4(b)に示すように、レジスト膜12をマスクにして(但し、図4(b)ではレジスト膜12を除去した後の形態を図示)、絶縁薄膜9’をストライプ状にエッチングにより除去する。すると、絶縁薄膜9’は、ストライプ状にパターニングされる。その結果、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に、ストライプ状の絶縁薄膜9A、および、ストライプ状の開口部9Bを有するパターン層9が形成される。このようにして、GaNバッファ層10の表面が、絶縁薄膜9Aにより被覆され、GaNバッファ層10の表面が、開口部9Bにおいて露出される。
【0084】
次に、有機金属ハイドライド気相エピタキシャル成長法(MO−HVPE法)を用いると、図4(c)に示すように、開口部9B内のGaNバッファ層10上に、GaNナノワイヤ20を成長できる。
【0085】
Ga原料として、GaClを用い、N原料として、アンモニアを用い、In原料として、トリメチルインジウム(TMI)を用いればよい。また、n型不純物元素として、シリコン(Si)を用いることができ、この場合のSi原料として、SiH4を用いればよい。p型不純物元素として、マグネシウム(Mg)を用いることができ、この場合のMg原料として、Cp2Mg(Bis cyclopenta dienylmagnesium)を用いればよい。
【0086】
GaNナノワイヤ20の成長温度を400〜700℃程度に設定して、各層3、4、5に対応する組成の原料を順次供給すると、n型GaN層3、InGaN/GaN MQD活性層4、および、p型GaN層5がそれぞれ、エピタキシャル成長面として機能する開口部9B内において、この順番にサファイア基板1に対して鉛直方向(3次元方向)に柱状に成長する。
【0087】
本実施形態では、n型GaN層3の高さは500nmに設定され、InGaN/GaN MQD活性層4の高さは30nmに設定され、p型GaN層5の高さは500nmに設定されている。InGaN/GaN MQD活性層4のエピ構造については、任意の構造をとることができる。例えば、当該エピ構造において、オーバーフローストッパー層であるAlGaN(アルミニウムガリウムナイトライド)層を追加してもよい。また、当該エピ構造において、量子井戸の数を適宜選択することができる。
【0088】
一方、絶縁薄膜9Aには、何も成長しない場合もあるが、図4(c)に示すように、GaNナノワイヤ20の成長と同時に、多結晶GaN層15の成長を伴う場合がある。この場合には、例えば、200℃〜300℃の燐酸および硫酸の混合溶液を用いて、絶縁薄膜9A上の多結晶GaN層15を選択的にウエットエッチングすれば、図4(c)以後の断面図に示すように、多結晶GaN層15を除去できる。
【0089】
また、図示を省略しているが、フッ酸などを用いて、多結晶GaN層15を、その下地の酸化シリコン膜(絶縁薄膜9A)と一緒に、リフトオフ法により除去してもよい。
【0090】
次に、図4(d)に示すように、GaNナノワイヤ20間の隙間に、パターン層9を上方から覆うようにして、酸化シリコンからなる透明絶縁層8が埋め込まれる。例えば、SOG(Spin On Glass)材料をサファイア基板1上に塗布することにより、透明絶縁層8を形成することができる。次いで、透明絶縁層8をエッチバックすることにより、GaNナノワイヤ20のp型GaN層5の上部が、頭だしされる。
【0091】
最後に、図4(e)に示すように、各GaNナノワイヤ20に共通して電圧を印加できるように、各GaNナノワイヤ20のp型GaN層5の上部に接続するp型透明電極6が、電子ビーム蒸着法などにより形成される。このp型透明電極6は、例えば、Ni/Au電極である。また、このp型透明電極6に接続する電極パッド7も、電子ビーム蒸着法などにより形成される。この電極パッド7は、例えば、Ti/Al電極である。更に、GaNバッファ層10に接続するn型電極2も、電子ビーム蒸着法などにより形成される。このn型電極2は、例えば、Ti/Al電極である。このようにして、本実施形態のナノワイヤLED100を製造できる。
【0092】
なお、本実施形態では、MO−HVPE法を用いたGaNナノワイヤ20の成長法を述べたが、これに限らず、MOCVD法(有機金属気相成長法)やMBE法(分子線エピタキシー法)を用いてもGaNナノワイヤを成長させることができる。
【0093】
以上に述べたとおり、本実施形態のナノワイヤLED100は、サファイア基板1と、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に形成されたパターン層9を有する。このパターン層9は、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に配された複数の絶縁薄膜9Aおよびサファイア基板1のGaNバッファ層10の表面が露出されている複数の開口部9Bにより構成されている。
【0094】
また、ナノワイヤLED100は、サファイア基板1側からn型GaN層3、InGaN/GaN MQD活性層4、および、p型GaN層5をこの順に含み、上述の開口部9B内において、サファイア基板1(正確にはサファイア基板1上のGaNバッファ層10)に対して鉛直方向に立設している複数のGaNナノワイヤ20と、パターン層9を上方から覆うようにして、GaNナノワイヤ20間の隙間に配された透明絶縁層8と、を備える。
【0095】
そして、このナノワイヤLED100では、全てのp型GaN層5に共通に接触するようにして、p型GaN層5と電気的に接続されたp型透明電極6が配されている。また、GaNバッファ層10の適所には、全てのn型GaN層3と電気的に接続されたn型電極2が配されている。
【0096】
このように、本実施形態のナノワイヤLED100では、パターン層9の開口部9B内にGaNナノワイヤ20を埋め込む必要がないので、当該開口部9Bの設計スペックを、パターン層9を形成し易くなるように適切に設定できる。
【0097】
また、開口部9Bの幅が狭くて、開口部9Bのアスペクト比が大きいと、GaNナノワイヤ20の各層3、4、5に対応する組成の原料がサファイア基板1のGaNバッファ層10に届き難くなり、GaNナノワイヤ20の成長を阻害する場合があるが、本実施形態のナノワイヤLED100では、開口部9Bのアスペクト比を小さくできるので、このような問題に適切に対処できる。
【0098】
また、本実施形態では、ストライプ状の開口部9Bは、第2方向に等間隔(上述の幅W1)を隔てて配され、第1方向に真直ぐに延びているので、GaNナノワイヤ20が、第2方向(開口部9Bの幅方向)に隣接する、GaNナノワイヤ20同士の間隔D2を一定に保つように、開口部9B毎に第1方向(開口部9Bの延びる方向)に1列に並んで配列されている。
【0099】
これにより、本実施形態のナノワイヤLED100では、GaNナノワイヤ20の第2方向の適切な間隔制御を行える。
【0100】
よって、ナノワイヤLED100を面光源として用いる場合には、GaNナノワイヤ20のサファイア基板1面内における敷き詰め度(面積占有率)のばらつきを抑えることができ、面光源の光強度がばらつきを抑制できる。
【0101】
また、GaNナノワイヤ20を高密度に敷き詰め過ぎることが回避され、GaNナノワイヤ20から取り出された光の隣接するGaNナノワイヤ20への再吸収を抑えることができる。その結果、発光素子の光の取り出し効率の低下を防ぐことができる。また、ナノワイヤLED100の放熱性も改善され、ナノワイヤLED100の温度上昇に伴う特性劣化を防ぐことができる。
【0102】
なお、本実施形態では、絶縁薄膜9Aは、CVD法やスパッタリング法を用いて形成したが、基板にSi基板を使用し、Si基板上に直接GaNナノワイヤを成長させる場合は、熱酸化法を用いて、絶縁薄膜9Aを形成してもよい。
(変形例1)
本実施形態では、ストライプ状の絶縁薄膜9Aおよびストライプ状の開口部9Bを有するパターン層9が例示されているが、このようなパターン層9を、以下の如く、改変してもよい。
【0103】
図5は、本発明の変形例1によるナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。
【0104】
図6は、本発明の変形例1によるナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【0105】
なお、本明細書では、説明の便宜上、図6に示すとおり、マトリクス状に並んでいる開口部109Bの一方の配列方向を「第1方向」とし、この「第1方向」に直交する方向(マトリクス状に並んでいる開口部109Bの他方の配列方向)を「第2方向」とする。
【0106】
本変形例のナノワイヤLED110では、図5および図6に示すように、パターン層109は、サファイア基板1のGaNバッファ層10上に配された絶縁薄膜109A、および、サファイア基板1のGaNバッファ層10の表面が露出されている矩形状の複数の開口部109Bを有している。パターン層109の開口部109Bは、第1方向および第2方向において、マトリクス状(格子状)に配列されている。
【0107】
パターン層109の絶縁薄膜109Aは、図6に示すように、開口部109Bを囲むようにして形成され、矩形環状の周縁部119A(但し、図5および図6では、矩形環状の周縁部119Aの上下の直線部の一部のみを図示)と、複数の帯部119Bと、を備える。
【0108】
複数の帯部119Bは、この周縁部119Aから分岐するようにして、周縁部119Aの内側において第1方向または第2方向に延びており、互いに直交格子状を成して互いに交差している。
【0109】
このようにして、絶縁薄膜109AによりGaNバッファ層10が被覆されている。なお、絶縁薄膜109Aは、ここでは、酸化シリコン(SiO2)により構成されている。
【0110】
一方、開口部109Bに対応する領域については、絶縁薄膜109Aによる被覆がなされてなく、パターン層109を形成した段階では、下地のGaNバッファ層10が露出している。このため、この露出された領域が、サファイア基板1のGaNバッファ層10上にGaNナノワイヤ120を成長させる際の、GaNナノワイヤ120のエピタキシャル成長面として機能する。また、実施形態と同様、絶縁薄膜109Aでは、サファイア基板1(図5では図示省略)上にGaNナノワイヤ120を成長させる際に、多結晶GaN層の成長を伴うことがあるが、この場合、この多結晶GaN層は、選択的なウエットエッチングやリフトオフ法により除去される。
【0111】
なお、適宜のレジスト膜(図示せず)を用いて、GaNバッファ層10上に形成された酸化シリコンからなるベタ状の均一な絶縁薄膜(図示せず)を、上述の矩形環状の周縁部119Aおよび直交格子状の帯部119Bを残すようにパターニングすれば、当該パターン層109を容易に製造できる。
【0112】
本変形例では、絶縁薄膜109Aの帯部119Bの幅W2(図6参照)は、所定幅に設定され、開口部109Bの第1方向および第2方向における一辺の寸法D3、D4(図6参照)も、それぞれ、所定寸法に設定されている。
【0113】
よって、円柱状のGaNナノワイヤ120を開口部109Bの略中心に1本、成長させると、図6に示すように、GaNナノワイヤ120の第1方向における間隔D5(正確には、GaNナノワイヤ120の第1方向における端面同士の距離)は、上述の帯部119Bの幅W2および開口部109Bの寸法D3に基づいて一定になると期待される。
【0114】
同様に、GaNナノワイヤ120の第2方向における間隔D6(正確には、GaNナノワイヤ120の第2方向における端面同士の距離)は、上述の帯部119Bの幅W2および開口部109Bの寸法D4に基づいて一定になると期待される。
【0115】
なお、実施形態と同様、絶縁薄膜109Aの厚み、パターン層109の帯部119Bの幅W2、および、開口部109Bの寸法D3、D4は、ナノワイヤ120自身から光が取り出しやすく、また、周囲のナノワイヤ120によって効率よく散乱されて上部に取り出せるよう、適宜、設定できる。
【0116】
絶縁薄膜109Aの厚みについては、少なくともGaNナノワイヤ120の高さの半分以下に設定すればよい。例えば、GaNナノワイヤ120の高さが約1μmの場合には、この厚みは、例えば、3nm〜300nmの範囲において任意に設定できる。また、帯部119Bの幅W2は、例えば、30〜1600nmの範囲において任意に設定できる。また、開口部9Bの寸法D3、D4は、例えば、30nm〜520nmの範囲において任意に設定できる。
【0117】
つまり、本変形例では、パターン層109の開口部109B内にGaNナノワイヤ120を埋め込む必要がないので、当該開口部109Bの設計スペックを、パターン層109を形成し易くなるように適切に設定できる。
【0118】
また、開口部109Bの幅が狭くて、開口部109Bのアスペクト比が大きいと、GaNナノワイヤ120の各層3、4、5に対応する組成の原料がサファイア基板1のGaNバッファ層10に届き難くなり、GaNナノワイヤ120の成長を阻害する場合があるが、本実施形態のナノワイヤLED110では、開口部109Bのアスペクト比を小さくできるので、このような問題に適切に対処できる。
【0119】
また、上述の開口部109Bは、第1方向および第2方向に等間隔(上述の幅W2)をマトリクス状に隔てて配されているので、第1方向および第2方向(マトリクス状に並んでいる開口部109Bの配列方向)に隣接する、GaNナノワイヤ120同士の間隔D5、D6を一定に保つように、GaNナノワイヤ120は開口部109B毎に1本ずつ配されている。
【0120】
このようにして、GaNナノワイヤ120の集合体としてのGaNナノワイヤアレイ114を、GaNナノワイヤ120がGaNバッファ層10上の第1方向および第2方向に等間隔に並ぶように、サファイア基板1上に形成できる。
【0121】
これにより、本変形例のナノワイヤLED110では、GaNナノワイヤ120の第1方向および第2方向の適切な間隔制御を行える。よって、ナノワイヤLED110を面光源として用いる場合には、GaNナノワイヤ120のサファイア基板1面内における敷き詰め度(面積占有率)のばらつきを抑えることができ、面光源の光強度がばらつきを抑制できる。また、ナノワイヤを高密度に敷き詰め過ぎることが回避され、ナノワイヤから取り出された光の隣接するナノワイヤへの再吸収を抑えることができる。その結果、発光素子の光の取り出し効率の低下を防ぐことができる。
【0122】
なお、本変形例では、開口部109B毎に、1本ずつ配されたGaNナノワイヤ120を例示したが、開口部109Bの寸法D3、D4を広げることにより、開口部109B毎に、第1方向及び第2方向についてGaNナノワイヤを2本以上、配することもできる。
【0123】
図9および図10には、開口部109B’毎に、GaNナノワイヤ120’を第1方向に2列、第2方向に3列を配して格子状にパターン層109’を形成した例が図示されている。図9は、このようなナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。図10は、このようなナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。この場合、開口部109B’毎に第1方向及び第2方向にGaNナノワイヤ120’を複数列形成することにより、GaNナノワイヤ120’を束にしながら、絶縁薄膜109A’によってできる適度の間隔でナノワイヤLED110’の光を適切に散乱できる。その結果、単位面積あたりのGaNナノワイヤ120’の本数を多くでき、ナノワイヤLED110’の光を上部に効率的に取り出すことができる。また、微細なパターン層の作製はコストアップになり、コスト的に限界があるので、GaNナノワイヤの単位面積あたりの本数をできるだけ増やしたいときはこのような構成が有効である。
(変形例2)
変形例1では、開口部の形状として長方形が例示され、開口部の配列としてマトリクス配列(格子配列)が例示されている。しかしながら、開口部の形状は、ナノワイヤLEDの特性に合わせて任意(例えば、略円形や略多角形)に改変できる。また、開口部の配列も、ナノワイヤLEDの特性に合わせて任意(例えば、千鳥配列やランダム配列)に改変できる。
【0124】
図11、図12、図13、図14、図15および図16は何れも、開口部の形状または配列が改変されたパターン層の一例を平面視した図である。
【0125】
図11では、パターン層209として、複数(ここでは9個)の真円形の開口部209Bがマトリクス状に並ぶようにして形成された絶縁薄膜209Aが示されている。
【0126】
図12では、パターン層309として、複数(ここでは9個)の正六角形の開口部309Bがマトリクス状に並ぶようにして形成された絶縁薄膜309Aが示されている。
【0127】
図13では、パターン層409として、複数(ここでは9個)の長方形の開口部409Bがマトリクス状に並ぶようにして形成された絶縁薄膜409Aが示されている。
【0128】
図11や図12に示すような真円形や六角形の方が、中心に結晶の核を形成させ易く、その結果、GaNナノワイヤを中心に成長させ易いという利点がある。また、図13に示す如く、長方形の開口パターンを微細化すると、パターン層409の製造過程において、長方形の開口部409Bの角が丸くなる場合がある。
【0129】
図14では、パターン層509として、複数(ここでは10個)の真円形の開口部509Bが千鳥状に並びようにして形成された絶縁薄膜509Aが示されている。
【0130】
図11に示す如く、真円形の開口部209Bをマトリクス状に配列するよりも、真円形の開口部509Bを千鳥状に配列する方が、単位面積あたりのワイヤ本数を増やすことが可能となるので、ナノワイヤLEDの光強度改善の観点から有益である。
【0131】
なお、図示を省略するが、略多角形の開口部を千鳥状に配列してもよい。また、略円形や略多角形の開口部をマトリクス状や千鳥状のような規則的な配列以外の配列、例えば、ランダムに配列してもよい。この場合、公知のランダム関数により割り付けられたマスクの開口パターンを用いて、適宜のフォトリソ技術によりランダム配列の開口部を形成できる。
【0132】
図15および図16では、ナノワイヤLEDの周辺部分におけるGaNナノワイヤの敷き詰め度が、ナノワイヤLEDの中央部分におけるGaNナノワイヤの敷き詰め度よりも高くなるように、開口部の形状を調整した例が図示されている。具体的には、図15および図16に示す如く、ナノワイヤLEDの周辺部分における開口部709B、709B’の単位面積が、ナノワイヤLEDの中央部分における開口部609B、609B’の単位面積よりも大きくなっている。
【0133】
これにより、ナノワイヤLEDを面光源として用いて、大面積の光源を作製する場合、放熱特性の劣るナノワイヤLEDの中央部分でのGaNナノワイヤの発熱を抑えて、ナノワイヤLEDの中央部分の発光効率の低下やナノワイヤLEDの面内の電流分布のばらつきを改善できる。その結果、ナノワイヤLEDの大面積での均一な発光を実現できる。また、この他にも、ナノワイヤLEDの所望の発光分布をもたせるように、種々のパターン層を設計できる。
【0134】
なお、ここまで、発光素子として、GaNナノワイヤを用いたLEDを例示したが、本明細書に記載されたGaNナノワイヤを成長させる際のGaNナノワイヤ間の間隔制御技術の適用範囲は、これに限らない。本技術は、LEDの他、例えば、レーザーダイオードなどにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明によれば、所定の間隔を離して基板上に立設された複数のナノワイヤを簡易かつ適切に形成できる発光素子を得ることができる。よって、本発明の発光素子は、素子単体の他、表示デバイス用の面光源や、光通信用の光源などの様々な用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの構造例を示した断面図である。
【図2】本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。
【図3】本発明の実施形態によるナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【図4】本発明の実施形態によるナノワイヤLEDの製造方法を説明するための図である。(a)〜(e)には、ナノワイヤLEDの各製造工程における断面図が示されている。
【図5】本発明の変形例1によるナノワイヤLEDの要部の立体斜視図である。
【図6】本発明の変形例1によるナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【図7】図2のパターン層が改変されたナノワイヤLEDの要部を示した立体斜視図である。
【図8】図7のナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【図9】図5のパターン層が改変されたナノワイヤLEDの要部を示した立体斜視図である。
【図10】図9のナノワイヤLEDのパターン層を平面視した図である。
【図11】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図12】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図13】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図14】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図15】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図16】開口部の形状または配列が改変されたパターン層を平面視した図である。
【図17】従来のナノワイヤLEDの構造例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1 サファイア基板
2 n型電極
3 n型GaN層
4 InGaN/GaN MQD活性層
5 p型GaN層
6 p型透明電極
7 電極パッド
8 透明絶縁層
9 109 パターン層
9A、109A 絶縁薄膜
9B 109B 開口部
10 GaNバッファ層
14、114 GaNナノワイヤアレイ
20、120 GaNナノワイヤ
100、110 ナノワイヤLED
119A 周縁部
119B 帯部
D1 開口部の幅
D2、D5、D6 GaNナノワイヤ同士の間隔
D3、D4 開口部の一辺の寸法
W1 絶縁薄膜の幅
W2 帯部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配された絶縁膜および前記基板の表面が露出している複数の開口部からなるパターン層と、
前記基板側から第1導電型の半導体層、半導体発光層、および、第2導電型の半導体層をこの順に含み、前記パターン層の開口部内において前記基板に立設している複数のナノワイヤと、
前記パターン層を上方から覆うようにして、前記ナノワイヤ間の隙間に配された透明絶縁層と、
前記複数のナノワイヤの前記第1導電型の半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記複数のナノワイヤの前記第2導電型の半導体層に電気的に接続された第2電極と、
を備えた発光素子。
【請求項2】
前記パターン層の絶縁膜は、前記開口部を挟むようにして、ストライプ状に配置されている請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部が格子状に並んでいる請求項1記載の発光素子。
【請求項4】
前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部が千鳥状に並んでいる請求項1記載の発光素子。
【請求項5】
前記パターン層を平面視した場合、略円形または略多角形の前記開口部がランダムに並んでいる請求項1記載の発光素子。
【請求項6】
前記パターン層の絶縁膜の厚みが、前記ナノワイヤの高さの半分以下である請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記パターン層の絶縁膜は、酸化シリコンにより構成されている請求項1記載の発光素子。
【請求項8】
基板上に配された絶縁膜および前記基板の表面が露出している複数の開口部からなるパターン層を形成する工程と、
前記開口部内において第1導電型の半導体層、半導体発光層、および、第2導電型の半導体層をこの順に成長させ、これらの層を含む複数のナノワイヤを前記基板に対して鉛直方向に形成させる成長工程と、
前記パターン層を上方から覆うようにして、前記ナノワイヤ間の隙間に透明絶縁層を埋め込む工程と、
前記複数のナノワイヤの第1導電型の半導体層に電気的に接続する第1電極を形成する工程と、
前記複数のナノワイヤの第2導電型の半導体層に電気的に接続する第2電極を形成する工程と、
を含んでいる発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記成長工程の際に、前記パターン層の絶縁膜上に多結晶層が成長した場合、前記多結晶層を除去する工程をさらに含んでいる、請求項8記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記パターン層を形成する工程において、隣接する前記開口部間に前記絶縁膜をストライプ状に形成する、請求項8記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の前記開口部を格子状に並ぶように形成する、請求項8記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の前記開口部を千鳥状に並ぶように形成する、請求項8記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記パターン層を形成する工程において、略円形または略多角形の開口部をランダムに並ぶように形成する、請求項8記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−147140(P2009−147140A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323365(P2007−323365)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】