説明

発光装置、光走査装置及び画像形成装置

【課題】放熱特性に優れ、プリント基板との熱膨張率差に起因する破壊を防止し、光の出射方向の傾きを生じない発光装置、光走査装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】上下面に個別電極12及び共通電極13が設けられる面発光レーザ10と、面発光レーザ10を搭載するための搭載部31が開口部22の底面26に設けられ、面発光レーザ10の共通電極13が搭載部31と電気的に接続されるセラミックパッケージ20とを備える発光装置50であって、セラミックパッケージ20は、下面の周縁に設けられた裏面電極32と、下面の中央に設けられた裏面放熱電極33とを有し、搭載部31は、セラミックパッケージ20に設けられた共通電極引出配線を介して裏面電極32と電気的に接続されると共に、開口部底面26とセラミックパッケージ20の下面との間を貫通する貫通電極36を介して裏面放熱電極33と熱的に接続されることを特徴とする発光装置50、及びこの発光装置50を用いた光走査装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、光走査装置及び画像形成装置に係り、特に、放熱特性を向上させた発光装置、光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER、以下面発光レーザという)は、半導体基板に対して垂直方向にレーザ光を出射するものである。半導体基板に平行な方向にレーザ光を出射する端面発光型の半導体レーザよりも低価格、低消費電力、及び小型であり、かつ高性能であることから、面発光レーザは、近年において、光通信、プリンタの書き込み光源等の用途で注目されている。
【0003】
特に、面発光レーザを用いる場合、端面発光型の半導体レーザでは不可能であった半導体レーザ素子の2次元アレイ化が可能である。面発光レーザ素子を2次元アレイ化することにより、高密度に光源を集積し、高出力のレーザ光を発振させることができる。
【0004】
一方で、面発光レーザ素子を2次元アレイ化した場合には、小さな面積から大量の熱が発生されるので、十分に放熱を行うことが重要となる。面発光レーザにおいて放熱が不十分であると、各面発光レーザ素子の温度が上昇する。その結果、各面発光レーザ素子において、キャリアの誘導放出が起こりにくくなり、発光効率が低下する。また、発振波長が変動し、素子自体の寿命が短くなる、等の問題も発生する。
【0005】
上記のごとく、面発光レーザ素子の温度上昇を抑えるためには、面発光レーザ自身の特性もさることながら、面発光レーザを搭載するパッケージ自身の耐久性、放熱特性も優れていることが重要である。
【0006】
その点、セラミックパッケージは、樹脂等の有機系材料よりなるオーガニックパッケージと比較して、耐久性、放熱特性を始めとして、耐熱性、耐食性にも優れるため、面発光レーザ素子を実装するためのパッケージとして好適である。
【0007】
従来の面発光レーザ素子等の発光素子を実装するためのセラミックパッケージは、発光素子を収容可能なキャビティ(以下開口部という)をパッケージの上面中央部に有している(例えば特許文献1参照)。開口部の底面の略中央部には発光素子の搭載部である導体層がメタライズによって形成され、その導体層上には発光素子が接合されている。また、搭載部である導体層の周囲には、ワイヤボンディング用の導体層がメタライズ(金属配線形成工程)によって形成されている。
【0008】
このような構造を有するセラミックパッケージは、セラミックグリーンシート積層法により、以下のような手順を経て製造することが可能である。まず、打抜加工によって開口部用の打抜部分を設けたグリーンシートを、開口部を形成するように積層して積層体を作製すると共に、その積層体の開口部の底面にメタライズ層(金属配線層)形成用の導体ペーストをスクリーン印刷法等により塗布する。このようにして導体ペーストが塗布されたグリーンシートを高温で焼成し、メタライズ層を有するセラミック焼結体とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記のようなセラミックパッケージに面発光レーザを実装して発光装置を構成する場合、次のような問題があった。
【0010】
上述した従来例におけるセラミックパッケージの搭載部に面発光レーザを搭載する場合、樹脂を用いたオーガニックパッケージに比して優れたセラミック材料を通した放熱及び搭載部の共通電極を介した放熱にのみ依存し、更に積極的に放熱特性を向上させる工夫がなされていないため、放熱が不十分であるという問題があった。
【0011】
ここで、共通電極は、複数の面発光レーザ素子が配列された面発光レーザにおいて、下部電極を共通化して一つの電極としたものである。面発光レーザがセラミックパッケージに実装される場合、共通電極を下側にし、半田接合(ハンダつけ)又は導電性接着剤によりセラミックパッケージのグラウンド端子に電気的且つ熱的に接続されることが多い。その際、面発光レーザの共通電極は、セラミックパッケージのグラウンド端子及びグラウンド配線を介して電気的にグラウンド接続される。しかしながら、グラウンド端子及びグラウンド配線は断面積に制約があり、面発光レーザで発生する熱をグラウンド端子及びグラウンド配線を通じて放熱するのには限界があった。
【0012】
また、面発光レーザを搭載したセラミックパッケージをプリント基板に実装した場合、発光開始、発光停止による温度上昇、温度下降を繰返す際にセラミックパッケージとプリント基板との熱膨張率差によって発生する繰返し応力が、プリント基板とセラミックパッケージとの間で半田接合(ハンダつけ)された端子電極の付近に集中して加わる。そのため、半田接合(ハンダつけ)の部分が破壊されてしまうという問題があった。
【0013】
更に、面発光レーザを光通信、プリンタの書き込み光源等に利用する場合、光出射方向がばらつき、光学部品と組合わせる際に個別調整が必要になり生産性に欠けるという問題があった。
【0014】
グリーンシート積層法により形成したセラミックパッケージは、裏面、搭載面及び上面は、グリーンシート面であり、平行度は確保されている。面発光レーザは、半導体基板の表面と垂直な方向に光の出射を行うという特徴を有しているため、セラミックパッケージの開口部の底面に設けられた搭載部に面発光レーザを搭載する場合、セラミックパッケージの底面又は上面と出射光のなす角はほぼ垂直である。ところが、放熱用の電極としてセラミックパッケージの開口部の底面からセラミックパッケージの下面までを貫通する貫通電極を形成すると、グリーンシートに貫通孔を形成する加工に起因して、貫通電極の周囲が盛り上がり凹凸が発生する。この盛り上がった部分の上に面発光レーザを搭載した場合、面発光レーザが傾いてしまい、光の出射方向がセラミックパッケージの上面に垂直な法線方向から傾いてしまうという問題があった。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、放熱特性に優れ、プリント基板との熱膨張率差に起因する破壊を防止し、光の出射方向の傾きを生じない発光装置、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0017】
第1の発明は、上面に複数の個別電極が設けられ、下面に一つの共通電極が設けられる面発光レーザと、上方に向け開口する開口部が設けられ、前記面発光レーザを搭載するための金属よりなる搭載部が前記開口部の底面に設けられ、前記面発光レーザの前記共通電極が前記搭載部と電気的に接続されるセラミックパッケージとを備える発光装置であって、前記セラミックパッケージは、該セラミックパッケージの下面の周縁に設けられた裏面電極と、前記下面の中央に設けられた裏面放熱電極とを有し、前記共通電極が電気的に接続された前記搭載部は、前記セラミックパッケージに設けられた共通電極引出配線を介して前記裏面電極のうちグラウンドに接続された裏面電極と電気的に接続されると共に、前記セラミックパッケージの前記開口部の前記底面と前記セラミックパッケージの前記下面との間を貫通する貫通電極を介して前記裏面放熱電極と熱的に接続されることを特徴とする。
【0018】
第2の発明は、第1の発明に係る発光装置において、前記共通電極引出配線は、前記セラミックパッケージの前記開口部の前記底面から前記セラミックパッケージの側面へ引き出され、更に該側面の下端を回り込んで前記セラミックパッケージの前記下面へ引き回されることを特徴とする。
【0019】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る発光装置において、前記裏面放熱電極は、前記セラミックパッケージの前記下面において略全面に亘り形成されることを特徴とする。
【0020】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか一つの発明に係る発光装置において、前記貫通電極は、前記搭載部の部分であって前記面発光レーザが搭載されない部分の下側に複数設けられることを特徴とする。
【0021】
第5の発明は、第4の発明に係る発光装置において、平面視において前記貫通電極と前記面発光レーザとは0.2mm以上離れていることを特徴とする。
【0022】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか一つの発明に係る発光装置において、前記裏面放熱電極は、複数に分割して設けられ、前記複数に分割された前記裏面放熱電極の各々は、前記貫通電極を介して前記搭載部と熱的に接続されることを特徴とする。
【0023】
第7の発明は、第6の発明に係る発光装置において、前記セラミックパッケージがプリント基板にハンダつけされ、前記複数に分割された前記裏面放熱電極及び前記セラミックパッケージの下面の周縁に設けられた裏面電極の間隙部にアンダーフィル剤が充填されることを特徴とする。
【0024】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか一つの発明に係る発光装置において、前記裏面放熱電極にヒートシンクが設置されることを特徴とする。
【0025】
第9の発明は、被走査面上で光を走査する光走査装置において、第1乃至第8の何れか一つの発明に係る発光装置と、前記発光装置で発光された光を偏向する偏向器と、前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系とを備えることを特徴とする。
【0026】
第10の発明は、第9の発明に係る光走査装置と、前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体とを備え、前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、発光装置の放熱特性に優れ、プリント基板との熱膨張率差に起因する破壊を防止し、光の出射方向の傾きを生じないような実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す裏面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を説明するための図であり、図1におけるA−A線における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を説明するための図であり、図1における点線で囲まれたSの領域の構造を拡大して示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置において、貫通電極周辺の盛り上がりを示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置がプリント基板に実装された構造を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る発光装置の構造を説明するための図であり、面発光レーザアレイを搭載する前のセラミックパッケージの構造を模式的に示す平面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る発光装置を説明するための図であり、図8(a)のB−B線における断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す裏面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る発光装置がプリント基板に実装される場合の構成を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置を説明するための図であり、面発光レーザアレイに形成された各面発光レーザ素子と光走査装置の走査方向との関係を模式的に示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置であるレーザプリンタの概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1乃至図4を参照し、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す平面図である。図2は、本実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す裏面図である。図3は、本実施の形態に係る発光装置を説明するための図であり、図1におけるA−A線における断面図である。図4は、本実施の形態に係る発光装置を説明するための図であり、図1における点線で囲まれたSの領域の構造を拡大して示す平面図である。
【0031】
図1乃至図3を参照するに、本実施の形態に係る発光装置50は、面発光レーザアレイ10と、面発光レーザアレイ10を実装するためのセラミックパッケージ20よりなる。面発光レーザアレイ10は、複数の面発光レーザ素子11と、複数の面発光レーザ素子11に対応する複数の個別電極12と、共通電極13とを備える。セラミックパッケージ20は、パッケージ基体21、開口部22、パッケージ蓋体23、基板底部24、基板堤部25、開口部底面26、搭載部31、裏面電極32、裏面放熱電極33、個別電極引出配線34、共通電極引出配線35、貫通電極36を備える。面発光レーザアレイ10は、搭載部31の上に搭載された状態で、導電性接着剤又は半田(ハンダ)接合により、電気的及び熱的に搭載部31に接続されている。
【0032】
面発光レーザアレイ10は、図4に示されるように、本実施の形態においては、一体の半導体基板上に面発光レーザ素子11が2次元に配列されて構成される面発光レーザアレイ10が用いられる。面発光レーザアレイ10は、第2の実施の形態で後述するように、発光装置50が光走査装置900の光源ユニット110として機能するためのものである。
【0033】
面発光レーザアレイ10上には、図4に示されるように、面発光レーザ素子11が2次元に配列するように形成される。本実施の形態において、面発光レーザ素子11は、例えば4行×10列に配列するように形成することができる。行方向及び列方向は、面発光レーザアレイ10が第2の実施の形態において後述する光走査装置に組み込まれるときの、被走査面における主走査方向及び副走査方向に夫々対応する。主走査方向に配置された10個の面発光レーザ素子11は、副走査方向に階段状にずらされて配置される。面発光レーザアレイ10のチップサイズは、例えば一辺が1.2mmである方形形状とすることができ、面発光レーザ素子11の各々の素子サイズは、例えば一辺が25μmである方形形状とすることができる。
【0034】
セラミックパッケージ20は、図3に示されるように、基板底部24と基板底部24の上面の外周に形成される基板堤部25とからなるパッケージ基体21と、基板底部24の上方の空間が基板堤部25で囲繞されることによって、パッケージ基体21上面に上方に向け開口するように形成される開口部22と、基板堤部25に段差を設け、段差に係止すると共に開口部22を塞ぐように配設されるパッケージ蓋体23とを備える。
【0035】
パッケージ基体21は、基板底部24と基板堤部25とよりなり、基板底部24の外周に基板堤部25が一体的に設けられる。ここで、基板底部24の上面であって基板堤部25で囲繞される部分であり、開口部22の空間を構成する面を開口部底面26とする。
【0036】
また、パッケージ基体21は、有機系材料に比して比較的熱伝導性に優れるアルミナ質焼結体又はアルミニウムナイトライド質焼結体よりなる。
【0037】
パッケージ蓋体23は、開口部22の底面である開口部底面26に形成される搭載部31に搭載された面発光レーザアレイ10を保護すると共に、面発光レーザアレイ10から出射されるレーザ光をセラミックパッケージ20の上方に出射するために取出す窓となる。パッケージ蓋体23は、面発光レーザアレイ10から出射されるレーザ光に対して透明であればよく、特に限定されるものではないが、光学用ガラスや石英系ガラス、アルミナ単結晶(いわゆるサファイアガラス)などの透明な無機材料よりなる基板を用いることができる。
【0038】
搭載部31は、開口部底面26の中央付近の表面がメタライズされて形成される。搭載部31は、面発光レーザアレイ10が搭載される部分として機能すると共に、面発光レーザアレイ10の下面の共通電極13と電気的に接続される電極としても機能する。搭載部31は、平面視において面発光レーザアレイ10の下面全体を含むような大きさに形成される。搭載部31の平面視における寸法は、特に限定されるものではないが、例えば2.4mm角とすることができる。
【0039】
裏面電極32は、図2に示されるように、セラミックパッケージ20の下面の周縁に、所定の間隔で複数個設けることができる。裏面電極32は、セラミックパッケージ20の開口部底面26に面発光レーザアレイ10を実装して構成される発光装置50を、更に外部の基板等に搭載すると共に、外部と配線を接続するためのものである。裏面電極32の数は、特に限定されるものではないが、例えば平面視において正方形の形状を有するパッケージ基体21の各々の辺において、所定の間隔で12個設けることができ、そのうち両端の2個を除いた10個を個別電極12用として用いることができる。従って、全周に亘っては、40個の個別電極12を裏面電極32と接続することができる。また、各辺に設けられる裏面電極32の両端の2個、全周ではその4倍である8個の裏面電極32aは、面発光レーザ素子11の各個別電極12と接続されるのではなく、共通電極13と接続される。
【0040】
裏面放熱電極33は、図2に示されるように、セラミックパッケージ20の下面において略全面に亘り設けられる。裏面放熱電極33は、後述する貫通電極36を介して搭載部31と熱的に接続され、発光装置50で発生した熱を放熱するための機能を有する。また、裏面放熱電極33全体がプリント基板の放熱用の端子電極に接続されるときには、発光開始及び停止に伴う温度の上昇及び下降に伴ってセラミックパッケージ20とプリント基板との熱膨張率差に起因するセラミックパッケージ20の裏面電極32とプリント基板の端子電極との間の半田接合(ハンダつけ)の破壊や剥がれを防止する機能を有する。裏面放熱電極33は、セラミックパッケージ20の下面の略全面に亘り設けられるため、セラミックパッケージ20の下面の周縁に設けられた裏面電極32より所定の間隔で離れて設けられる。その結果、矩形形状のセラミックパッケージ20に対して相似形である矩形形状を有する。
【0041】
個別電極引出配線34は、図1及び図3に示されるように、開口部底面26を含む基板底部24の上面に搭載部31と分離して複数設けられる。即ち、搭載部31の外周より所定の距離離れた位置を始点とし、各々が交差することなく基板底部24の上面に設けられた配線及び基板堤部25と基板底部24とに挟まれるように設けられた配線を介してパッケージ基体21の側面に到達するまで基板底部24の周縁に向け引き出される。そして、パッケージ基体21の側面に設けられた配線を介してパッケージ基体21の側面の下端を回り込み、パッケージ基体21下面の周縁に設けられた裏面電極32へと達するように引き回される。
【0042】
個別電極引出配線34は、図4に示されるように、面発光レーザアレイ10内に形成された複数の面発光レーザ素子11の各々の個別電極12と、各々の個別電極12に対応してパッケージ基体21の下面の周縁に設けられた複数の裏面電極32とを1対1で接続するためのものである。従って、面発光レーザアレイ10の面発光レーザ素子11の各々の個別電極12は、ワイヤ37を用いて夫々の個別電極引出配線34とワイヤボンディングされる。平面視における複数の個別電極引出配線34のパターン形状は、特に限定されるものではないが、配線距離をなるべく短くするために、図1及び図4に示されるように、平面視において、例えばパッケージ基体中心から周縁に向けて放射状に引き出されるように延在する配線のパターンを用いることができる。
【0043】
共通電極引出配線35は、図1に示されるように、開口部底面26を含む基板底部24の上面に搭載部31と電気的に接続されるように複数設けられる。即ち、略方形形状を有する搭載部31の4個の頂点付近から引き出され、個別電極引出配線34の各々と交差することなく基板底部24の上面に設けられた配線及び基板堤部25と基板底部24とに挟まれるように設けられた配線を介してパッケージ基体21の側面に到達するまで基板底部24の周縁に向け引き出される。そして、パッケージ基体21の側面に設けられた配線を介してパッケージ基体21の側面の下端を回り込み、パッケージ基体21の下面の周縁に設けられた裏面電極32へと達するように引き回される。共通電極引出配線35は、面発光レーザアレイ10の下面に形成された一個の面発光レーザ素子11の共通電極13と、パッケージ基体21の下面の周縁に設けられた裏面電極32のうちパッケージ基体の下面の四辺において両端に設けられた合計8個のグラウンドに接続される裏面電極32aとを接続するためのものである。平面視における共通電極引出配線35のパターン形状は特に限定されるものではないが、配線距離をなるべく短くするために、図1及び図4に示されるように、平面視において、例えばパッケージ基体中心から周縁に向けて放射状に引き出されるように延在する配線のパターンを用いることができる。
【0044】
貫通電極36は、セラミックパッケージ20の開口部底面26とセラミックパッケージ20の下面との間、即ち、基板底部24を貫通し、搭載部31と裏面放熱電極33とを熱的に接続するように設けられる。また、貫通電極36は、搭載部31の部分のうち、面発光レーザアレイ10が搭載されない部分の下側に設けられる。具体的には、図1に示されるように、平面視において、搭載部の中央に面発光レーザアレイ10が搭載され、その周囲を囲繞するように、貫通電極36が形成される。本実施の形態では、例えば8個の貫通電極36が形成される。
【0045】
上述した電極及び引出配線の構造を具備することにより、面発光レーザアレイ10の共通電極13は、まず搭載部31に電気的且つ熱的に接続される。また、搭載部31は、貫通電極36を介して裏面放熱電極33に熱的に接続される。従って、面発光レーザアレイ10で発生した熱は、搭載部31、貫通電極36を介して、裏面放熱電極33に伝えられる。
【0046】
ここで、もし、貫通電極36及び裏面放熱電極33が形成されない場合、面発光レーザアレイ10で発生した熱は、搭載部31、共通電極引出配線35、を介して裏面電極32のうちグラウンドに接続された裏面電極32aに伝えられるため、伝熱経路の断面積が小さく、効率良く放熱することができない。
【0047】
一方、貫通電極36及び裏面放熱電極33が形成される場合には、面発光レーザアレイ10で発生した熱は搭載部31、貫通電極36を介して、効率良く放熱することができ、面発光レーザアレイ10の温度上昇を抑制し、面発光レーザアレイ10の劣化を抑制することができるため、面発光レーザアレイ10を長寿命化することができる。
【0048】
ここで、パッケージ基体21及びパッケージ基体21表面のメタライズを含めたセラミックパッケージの製造方法を説明する。
【0049】
パッケージ基体は、公知のセラミックパッケージを用いることができるため、特に限定されるものではないが、例えば、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramic)と呼ばれるアルミナを主成分とするパッケージ、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic)と呼ばれるガラスとアルミナの複合材料で構成されるパッケージ、アルミニウムナイトライドを主成分とするAlNパッケージ等を用いることが可能である。
【0050】
HTCCパッケージではアルミナ粉末に対して焼結助剤として酸化マンガン、シリカ、マグネシア、カルシア等の粉末を夫々数重量%混合した原料粉を用いることができる。LTCCパッケージではガラスとセラミック粉末を分散させた混合粉末を用いることができる。AlNパッケージではAlN粉末に対して焼結助剤としてY、CaO等の粉末を夫々数重量%混合した原料粉を用いることができる。
【0051】
各々の原料粉末に公知の有機バインダと溶剤を加え、混錬しスラリーを作製した後、公知のドクターブレード法によってグリーンシートを作製する。或いは、混合粉末に有機バインダを加え、公知のプレス成形、圧延成形等によってグリーンシートを作製することもできる。
【0052】
また、パッケージ基体に貫通電極を形成する場合には、グリーンシートを作製後、マイクロドリル、型によるパンチング等により例えば直径50〜250μmφの貫通孔(ビアホール)を形成することができる。本実施の形態では、例えば200μmφの貫通孔を用いることができる。
【0053】
このようにして作製したグリーンシートの貫通孔内に導体ペーストを充填し、スクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により、導体ペーストを配線のパターンの形状になるように印刷塗布する。
【0054】
導体ペーストは、導体成分として例えばタングステン、モリブデン等を用いる。また、アルミナ焼結体と導体層との密着性を高めるため、アルミナ粉末を10重量%添加した導体ペーストを用いることができる。なお、LTCCパッケージの場合は銀、銅等の材料を用いることもできる。
【0055】
その後、導体ペーストを印刷塗布したグリーンシートを位置合わせしながら積層圧着して積層体を作製した後、作製された積層体を、焼成することによって、グリーンシートをセラミック化し、パッケージ基体を作製することができる。HTCCパッケージでは約1600℃の温度で、LTCCパッケージでは約850℃の温度で、AlNパッケージでは約1800℃の温度で焼成する。
【0056】
次に、パッケージ基体に形成された導体層の表面にニッケルメッキを行い、更にその表面にAuメッキを行い、メタライズを行った。
【0057】
このようにして準備したパッケージ基体21の搭載部31に導電性ペーストを塗布し、面発光レーザアレイ10を載置した後、キュア(オーブンで加熱、100〜200℃、数十分)処理を行って、搭載部31に面発光レーザアレイ10を取付けた。その後、開口部22底面の個別電極引出配線34と面発光レーザアレイ10の個別電極12の各々を、ワイヤ37を用いたワイヤボンディングによって電気的に接続した。最後に、透明基板よりなるパッケージ蓋体23で開口部22を閉塞し、樹脂を用いて樹脂封止を行い、セラミックパッケージ20中に面発光レーザアレイ10が実装された発光装置を得ることができる。
【0058】
次に、図1、図5及び図6を参照し、本実施の形態に係る発光装置において、レーザ光の出射方向をセラミックパッケージの開口部底面の法線方向に平行に揃えることができる機能について説明する。
【0059】
図5は、本実施の形態に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。図6は、本実施の形態に係る発光装置において、貫通電極周辺の盛り上がりを示すグラフである。
【0060】
図6に示されるように、貫通電極36の周囲100〜150μmの範囲においては、約5μmの高さの盛り上がりがある。この盛り上がりは、グリーンシート作製後、マイクロドリル又は型によるパンチング等によって貫通孔を形成した際か、又は、貫通孔内に導体ペーストを充填し、導体ペーストを印刷塗布する際に生ずるものである。
【0061】
貫通電極36の周囲の盛り上がりの部分に面発光レーザアレイ10の下面の一部がかかるような配置で面発光レーザアレイ10を搭載した場合、面発光レーザアレイ10の下面は開口部底面26に対し傾きを生ずる。その結果、面発光レーザアレイ10からの出射光は、セラミックパッケージ20の上面又は底面に対する法線方向に対し傾きを生ずる。従って、面発光レーザアレイ10は、面発光レーザアレイ10の下面のどの部分も貫通電極36の周囲の盛り上がりの部分にかからない位置に配置される。即ち、貫通電極36は、搭載部31の部分であって面発光レーザアレイ10が搭載されない部分の下側に複数設けられる。
【0062】
更に、完全に貫通電極36の周囲の盛り上がりの影響を排除するためには、面発光レーザアレイ10の下面のどの部分も貫通電極36の周囲の盛り上がりの部分にかからないだけでは不十分である。図6に示されるように、例えば貫通電極36の直径を0.2mmφとする場合、貫通電極36の周囲100〜150μmの範囲においては、約5μmの高さの盛り上がりがある。従って、図5に示されるように、平面視において、貫通電極36と面発光レーザアレイ10は距離Lだけ離れるように配置される。具体的には、距離Lは0.2mm以上とすることができる。
【0063】
このとき、平面視における貫通電極36の配置は、図1に示されるように、搭載部31の中央に平面視において矩形形状の面発光レーザアレイ10が搭載され、その周囲を取り囲み、面発光レーザアレイ10の4個の頂点の各々から対角線方向に離れた4点、及びその4点のうち互いに隣接する2点からなる4組の各々の中間点である4点を加えた合計8点に貫通電極36が設けられる。
【0064】
面発光レーザアレイ10を1.2mm角とし、面発光レーザアレイ10の一辺の両端で5μmの高低差が発生する場合の傾斜角は、tan−1(5/1200)=0.24°となり、例えば出射角のばらつきを±0.5°以内に抑えるような場合に非常に大きな不良の原因となる。一方、平面視において面発光レーザアレイ10と貫通電極36とが0.2mm以上離れるように配置される場合、図6に示されるように、例えば面発光レーザアレイ10の一辺の両端での高低差を1μm以内に抑えることができ、傾斜角はtan−1(1/1200)=0.05°以内に抑えることができる。
【0065】
次に、図7を参照し、本実施の形態に係る発光装置がプリント基板に実装される場合の構成、及びプリント基板に実装された後半田(ハンダ)部分の熱履歴による剥がれが防止される効果について説明する。
【0066】
図7は、本実施の形態に係る発光装置がプリント基板に実装された構造を模式的に示す断面図である。
【0067】
図7に示されるように、発光装置50が実装されるプリント基板40は、プリント基板40の基体であるプリント基板基体41の上面に、発光装置50の裏面電極32及び裏面放熱電極33に対応して、プリント基板表面電極42及びプリント基板表面放熱電極43が形成されている。またプリント基板基体41の下面には、プリント基板裏面放熱電極44が形成されている。更に、プリント基板基体41を貫通し、プリント基板表面放熱電極43とプリント基板裏面放熱電極44とを熱的に接続するように、プリント基板貫通電極45が形成される。
【0068】
発光装置50は、裏面電極32とプリント基板表面電極42とが半田(ハンダ)46を用いて半田接合(ハンダつけ)され、裏面放熱電極33とプリント基板表面放熱電極43とが半田接合(ハンダつけ)されるように、プリント基板40上に実装される。その結果、面発光レーザアレイ10の個別電極12の夫々は、セラミックパッケージ20の個別電極引出配線34、セラミックパッケージ下面の裏面電極32を介してプリント基板表面電極42と電気的に接続される。また、面発光レーザアレイ10の共通電極13は、セラミックパッケージ20の搭載部31、共通電極引出配線35、セラミックパッケージ20の下面のグラウンドに接続される図示しない裏面電極を介し、プリント基板表面電極であってグラウンドに接続される図示しないプリント基板表面電極に電気的に接続される。一方、面発光レーザアレイ10の共通電極13は、セラミックパッケージ20の搭載部31、貫通電極36、裏面放熱電極33を介してプリント基板表面放熱電極43へ熱的に接続され、更にプリント基板貫通電極45を介し、プリント基板裏面放熱電極44へ熱的に接続される。
【0069】
このとき、セラミックパッケージ20の下面において略全面に亘って形成された裏面放熱電極33は、プリント基板40のプリント基板表面放熱電極43と熱的に接続されるように、半田接合(ハンダつけ)される。具体的には、プリント基板40の半田接合(ハンダつけ)する電極部分に半田(ハンダ)ペーストを塗布し、発光装置50をプリント基板40の上に各々の半田接合(ハンダつけ)する電極の位置が対応するように載置し、リフロー処理を行って半田接合(ハンダつけ)を行うことができる。
【0070】
プリント基板40のプリント基板基体41の材質は、特に限定されるものではなく、一般的に用いられるFR−4などのガラエポ(ガラス・エポキシ)樹脂を用いることができる。
【0071】
ここで、面発光レーザアレイ10の個別電極12と共通電極13との間での電圧印加を開始又は停止することによって、光の出射を開始又は停止させると、それに伴って面発光レーザアレイ10での発熱の開始又は停止によって温度が上昇又は下降を繰り返す所謂熱履歴を繰り返す。セラミックパッケージを構成するアルミナセラミックスの熱膨張率は7ppm/℃であり、プリント基板40のプリント基板基体41を構成するガラエポ樹脂の熱膨張率は14〜16ppm/℃であるため、熱膨張率差が大きい。この大きな熱膨張率差のため、熱履歴によってセラミックパッケージ20の裏面電極32とプリント基板40のプリント基板表面電極42とを接合する半田(ハンダ)46の部分に繰り返し応力がかかり、疲労を起こして破壊し、半田接合(ハンダつけ)が外れてしまう。
【0072】
ここで、セラミックパッケージ20とプリント基板40との間の半田接合(ハンダつけ)が、裏面電極32とプリント基板表面電極42との間だけではなく、裏面放熱電極33とプリント基板表面放熱電極43との間でもされる場合、裏面放熱電極33がセラミックパッケージ20の下面の略全面に亘り形成されているため、セラミックパッケージ20とプリント基板40とが接合される接合面積が著しく増大する。具体的には、例えばセラミックパッケージ20の下面が14mm角であり、裏面電極32が1mm角であり、裏面放熱電極33が10mm角であるとしたとき、48個の裏面電極32だけの合計面積が48mmであるのに対し、48個の裏面電極32に裏面放熱電極33の面積も加えた合計面積は148mmとなり、接合面積が約3倍に増大する。単位面積当たりの半田接合(ハンダつけ)の強度が変わらないと仮定すると、接合面積が約3倍に増大することによって、接合強度も3倍に増大する。一方、裏面放熱電極33を半田接合(ハンダつけ)した場合も熱履歴に伴って発生する応力は変わらないため、プリント基板40との半田接合(ハンダつけ)は、裏面放熱電極33がない場合に比して、より多い熱履歴の回数に対して破壊を防止することができる。
【0073】
以上、本実施の形態に係る発光装置によれば、放熱特性を向上させることができ、プリント基板との熱膨張差に起因する破壊を防止し、光の出射方向の傾きを生じないような実装を行うことができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、裏面放熱電極はセラミックパッケージの下面の略全面に渡り形成されているが、放熱が十分行えるのであれば、裏面放熱電極がセラミックパッケージの下面の中央に設けられる配置も可能である。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図8(a)乃至図9を参照し、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る発光装置を説明する。
【0075】
図8(a)及び図8(b)は、本変形例に係る発光装置の構造を説明するための図であり、面発光レーザアレイを搭載する前のセラミックパッケージの構造を模式的に示す平面図である。図9は、本変形例に係る発光装置を説明するための図であり、図8(a)のB−B線における断面図である。ただし、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある(以下の変形例、実施の形態についても同様)。
【0076】
本変形例に係る発光装置は、面発光レーザが搭載される部分の下側にも貫通電極が設けられる点で、第1の実施の形態に係る発光装置と相違する。
【0077】
図8(a)及び図9を参照するに、第1の実施の形態において、貫通電極は、搭載部の部分であって面発光レーザが搭載されない部分の下側に設けられるのと相違し、本変形例に係る発光装置50aにおいては、セラミックパッケージ20aにおいて、貫通電極36aは、搭載部31の部分であって面発光レーザアレイ10が搭載される部分の下側にも設けられる。その結果、本変形例における貫通電極36aは、第1の実施の形態において8本であったより1本多い9本である。各々の貫通電極36aの直径が0.2mmφであるのは、第1の実施の形態と同様である。
【0078】
面発光レーザアレイ10の直下に貫通電極36aが設けられることにより、面発光レーザアレイ10が搭載される部分に約5μmの凹凸が生ずるものの、面発光レーザアレイ10の直下に設けられた貫通電極36aによって、搭載部31から裏面放熱電極33への伝熱経路の断面積が増大し、より効率良く放熱される。そのため、面発光レーザアレイ10の温度上昇に伴う特性劣化や短寿命化を防止することができる。
【0079】
なお、貫通電極36aは、放熱特性を向上させるために本数を更に増大させることができ、例えば図8(b)に示されるように、13本とすることもできる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図10乃至図12を参照し、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る発光装置を説明する。
【0080】
図10は、本変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す裏面図である。図11は、本変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。図12は、本変形例に係る発光装置がプリント基板に実装される場合の構成を模式的に示す断面図である。
【0081】
本変形例に係る発光装置は、裏面放熱電極が5つの部分に分割されて形成されている点で、第1の実施の形態に係る発光装置と相違する。
【0082】
図10及び図11を参照するに、第1の実施の形態において、セラミックパッケージの下面の略全面に亘り裏面放熱電極が形成されているのと相違し、本変形例においては、セラミックパッケージ20bの下面に形成される裏面放熱電極33bは5つの部分に分割されている。また、5つに分割された裏面放熱電極33bの各々は、貫通電極36bを介して搭載部31と熱的に接続されている。従って、裏面放熱電極33bが分割されてはいるものの、第1の実施の形態と同様に、高い放熱特性を有する。
【0083】
次に、図12を参照し、プリント基板に実装する場合の構成について説明する。
【0084】
図12に示されるように、発光装置50bは、セラミックパッケージ20bの5つの部分に分割された裏面放熱電極33bが、プリント基板40bのプリント基板表面放熱電極43bと熱的に接続されるように、半田(ハンダ)46を用いて半田接合(ハンダつけ)することによって実装される。更に、複数の裏面放熱電極33b及びプリント基板表面放熱電極43bの各々の間の空隙である間隙部には、アンダーフィル材(アンダーフィル剤)47が充填される。その結果、複数の裏面放熱電極33b及びアンダーフィル材(アンダーフィル剤)47を用いて、発光装置50bは、発光装置50bの下面の全面でプリント基板40bに接合される。
【0085】
発光装置50bの下面の全面がプリント基板40bに接合されることにより、発光装置50bとプリント基板40bとの熱的な接続がより向上する。また、発光装置50bとプリント基板40bとの熱的な接続が向上すると共に、熱膨張差によって半田接合(ハンダつけ)が破壊されることを防止することができる。
【0086】
なお、本変形例では、裏面放熱電極を5つの部分に分割されて形成しているが、放熱がセラミックパッケージの全体で均一に行えるように、略2回対称又は略4回対称の形状を有しているのであれば、裏面電極の分割の方法は特に限定されるものではない。
(第1の実施の形態の第3の変形例)
次に、図13を参照し、本発明の第1の実施の形態の第3の変形例に係る発光装置を説明する。
【0087】
図13は、本変形例に係る発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【0088】
本変形例に係る発光装置は、裏面放熱電極にヒートシンクを接続している点で、第1の実施の形態に係る発光装置と相違する。
【0089】
図13を参照するに、第1の実施の形態に係る発光装置において、裏面放熱電極の全面がプリント基板に半田(ハンダ)付けされるのと相違し、本変形例に係る発光装置50cにおいては、裏面放熱電極33に、プリント基板40cとは別に、ヒートシンク48が接続される。
【0090】
図13に示されるように、ヒートシンク48には、外部との熱交換を促進するためのフィン49が形成され、面発光レーザアレイ10で発生し、共通電極13、搭載部31、貫通電極36を介してヒートシンク48へ伝熱される熱を効率良く外部へ放熱することが可能である。
【0091】
更に、ヒートシンク48に図示しない水冷方式又は空冷方式の冷却機構を付加し、発光装置から伝熱される熱を更に効率よく外部へ放熱することも可能である。
【0092】
以上、本変形例に係る発光装置によれば、プリント基板に実装した状態において、裏面放熱電極にヒートシンクが設置され、放熱効果を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図14及び図15を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置を説明する。
【0093】
本実施の形態に係る光走査装置は、光源ユニットとして、第1の実施の形態又は第1の実施の形態の第1乃至第3の何れか一つの変形例に係る発光装置を備え、発光装置で発光された光を偏向器及び走査光学系を用いて被走査面上に集光する光走査装置である。
【0094】
図14は、本実施の形態に係る光走査装置の構造を模式的に示す断面図である。図15は、本実施の形態に係る光走査装置を説明するための図であり、面発光レーザアレイに形成された各面発光レーザ素子と光走査装置の走査方向との関係を模式的に示す図である。
【0095】
図14を参照するに、光走査装置900は、面発光レーザアレイ10を用いた光源ユニット110、カップリングレンズ111、アパーチャ112、シリンドリカルレンズ113、ポリゴンミラー114、fθレンズ115、トロイダルレンズ116、2つのミラー117、118、及び上記各部を統括的に制御する図示しない主制御装置を備える。
【0096】
カップリングレンズ111は、光源ユニット110から出射された光ビームを略平行光に整形する。アパーチャ112は、カップリングレンズ111を介した光ビームのビーム径を規定する。シリンドリカルレンズ113は、アパーチャ112を通過した光ビームをミラー117を介してポリゴンミラー114の反射面に集光する。
【0097】
ポリゴンミラー114は、高さの低い正六角柱の形状を有する部材よりなり、側面には6面の偏向面が形成される。そして、図示しない回転機構により、図14に示される矢印の方向に一定の角速度で回転される。従って、光源ユニット110から出射され、シリンドリカルレンズ113によってポリゴンミラー114の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー114の回転により一定の角速度で偏向される。fθレンズ115は、ポリゴンミラー114からの光ビームの入射角に比例した像高さを有し、ポリゴンミラー114により一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、主走査方向に対して等速移動させる。トロイダルレンズ116は、fθレンズ115からの光ビームをミラー118を介して感光体ドラム901の表面上に結像する。
【0098】
このような構成を有する光走査装置900において、面発光レーザアレイ10が図15に示されるように配置される場合、面発光レーザアレイ10では、各面発光レーザ素子11の中心から副走査方向に平行な直線に向けて垂線を下ろしたときの副走査方向における各面発光レーザ素子11の間隔が等間隔(間隔d2とする)となる。従って、点灯のタイミングを調整することによって、感光体ドラム901上において、副走査方向に等間隔で光源が並んでいる場合と同様の効果を有する。例えば、副走査方向での面発光レーザ素子11のピッチd1が26.5μmであれば、前記間隔d2は2.65μmとなる。そして、光学系の倍率を2倍とすれば、感光体ドラム901上では副走査方向に5.3μm間隔で書き込みドットを形成することができる。これは、4800dpi(ドット/インチ)に対応する。即ち、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書き込みができる。主走査方向の面発光レーザ素子11の数を増加したり、ピッチd1を狭くして間隔d2を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる、等の方法と併用することによって、更に高解像度での印刷を行うことができる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、光源の点灯のタイミングを制御することによって、容易に制御することができる。
【0099】
この場合、書き込みドット密度が増大しても面発光レーザ素子11は高い単一基本横モード出力を発生させることができるので、印刷速度を落とすことなく印刷することができる。又は、書き込みドット密度が同じ場合には印刷速度を更に増大させることができる。
【0100】
更に、本実施の形態に係る光走査装置900は、第1の実施の形態又は第1の実施の形態の第1乃至第3の何れか一つの変形例に係る発光装置を備えるため、面発光レーザアレイ10における各面発光レーザ素子11の温度上昇が低減され、ピッチd1=26.5μm、間隔d2=2.65μmであっても、各面発光レーザ素子11から高出力で光ビームをそれぞれ出射することが可能であり、また長期信頼性(素子寿命)も改善される。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によれば、光源ユニット110は面発光レーザアレイ10を含むため、感光体ドラム901の表面上に高精彩な潜像を高速で走査形成することが可能となる。
(第3の実施の形態)
次に、図16を参照し、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置を説明する。
【0102】
本実施の形態に係る画像形成装置は、第2の実施の形態に係る光走査装置と、この光走査装置により光が走査される被走査面を備える少なくとも一つの像担持体である感光体ドラムとを備えたレーザプリンタである。
【0103】
図16は、本実施の形態に係る画像形成装置であるレーザプリンタの概略構成を模式的に示す図である。
【0104】
図16を参照するに、レーザプリンタ500は、光走査装置900、感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、除電ユニット914、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910を備える。
【0105】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置される。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→除電ユニット914→クリーニングブレード905の順に配置される。
【0106】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図16における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0107】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。
【0108】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、このトナーは現像ローラ903に供給される。現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ904から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。トナーが付着されて顕像化された画像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0109】
給紙トレイ906には記録紙913が格納されている。給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持すると共に、記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0110】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引き付けるためにトナーとは逆極性の電圧が印加される。この電圧により、感光体ドラム901の表面にトナーが付着させて形成された顕像としての画像が記録紙913に転写される。画像が転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0111】
定着ローラ909では、熱と圧力が記録紙913に加えられ、トナーが記録紙913上に定着される。トナーが定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0112】
除電ユニット914は、感光体ドラム901の表面を除電する。クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0113】
本実施の形態に係るレーザプリンタ500は、第2の実施の形態に係る光走査装置900を備える。更に、光走査装置900は、光源ユニット110として第1の実施の形態に係る発光装置50を備える。
【0114】
ここで、光源ユニット110は、第1の実施の形態に係る発光装置50であるため、感光体ドラム901の表面上に高精彩な潜像を高速で走査形成することが可能である。
【0115】
なお、本実施の形態では、光源ユニット110として、第1の実施の形態に係る発光装置50を用いているが、第1の実施の形態に係る発光装置50に代えて、第1の実施の形態の第1乃至第3の何れかの変形例に係る発光装置を用いた場合にも、感光体ドラム901の表面上に高精彩な潜像を高速で形成することが可能となる。
【0116】
また、本実施の形態では、感光体ドラム901が一台だけであり、画像形成装置としては、例えば黒色トナーを用いた白黒画像を形成するだけであるが、カラー画像に対応したカラー画像を形成する画像形成装置として構成することも可能である。具体的には、カラー画像に対応した光走査装置を用い、カラー画像に対応し、例えばブラック(K)用の感光体ドラム、シアン(C)用の感光体ドラム、マゼンダ(M)用の感光体ドラム、イエロー(Y)用の感光体ドラムのように複数の感光体ドラムを備えるタンデムカラーレーザプリンタとして構成することが可能である。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 面発光レーザ(面発光レーザアレイ)
11 面発光レーザ素子
12 個別電極
13 共通電極
20、20a、20b セラミックパッケージ
21 パッケージ基体
22 開口部
23 パッケージ蓋体
24 基板底部
25 基板堤部
26 開口部底面
31 搭載部
32、32a 裏面電極
33、33b 裏面放熱電極
34 個別電極引出配線
35 共通電極引出配線
36、36a、36b 貫通電極
40、40b、40c プリント基板
41 プリント基板基体
42 プリント基板表面電極
43、43b プリント基板表面放熱電極
44 プリント基板裏面放熱電極
45 プリント基板貫通電極
46 半田(ハンダ)
47 アンダーフィル材(アンダーフィル剤)
48 ヒートシンク
49 フィン
50、50a、50b、50c 発光装置
110 光源ユニット
114 ポリゴンミラー(偏向手段)
115 fθレンズ(走査光学系の一部)
116 トロイダルレンズ
500 レーザプリンタ
900 光走査装置
901 感光体ドラム(像担持体)
903 現像ローラ(転写手段の一部)
911 転写チャージャ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2004−228549号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に複数の個別電極が設けられ、下面に一つの共通電極が設けられる面発光レーザと、
上方に向け開口する開口部が設けられ、前記面発光レーザを搭載するための金属よりなる搭載部が前記開口部の底面に設けられ、前記面発光レーザの前記共通電極が前記搭載部と電気的に接続されるセラミックパッケージと
を備える発光装置であって、
前記セラミックパッケージは、該セラミックパッケージの下面の周縁に設けられた裏面電極と、前記下面の中央に設けられた裏面放熱電極とを有し、
前記共通電極が電気的に接続された前記搭載部は、前記セラミックパッケージに設けられた共通電極引出配線を介して前記裏面電極のうちグラウンドに接続された裏面電極と電気的に接続されると共に、前記セラミックパッケージの前記開口部の前記底面と前記セラミックパッケージの前記下面との間を貫通する貫通電極を介して前記裏面放熱電極と熱的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記共通電極引出配線は、前記セラミックパッケージの前記開口部の前記底面から前記セラミックパッケージの側面へ引き出され、更に該側面の下端を回り込んで前記セラミックパッケージの前記下面へ引き回されることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記裏面放熱電極は、前記セラミックパッケージの前記下面において略全面に亘り形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の発光装置。
【請求項4】
前記貫通電極は、前記搭載部の部分であって前記面発光レーザが搭載されない部分の下側に複数設けられることを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
平面視において前記貫通電極と前記面発光レーザとは0.2mm以上離れていることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
前記裏面放熱電極は、複数に分割して設けられ、前記複数に分割された前記裏面放熱電極の各々は、前記貫通電極を介して前記搭載部と熱的に接続されることを特徴とする請求項1乃至5何れか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記セラミックパッケージがプリント基板にハンダつけされ、前記複数に分割された前記裏面放熱電極及び前記セラミックパッケージの下面の周縁に設けられた裏面電極の間隙部にアンダーフィル剤が充填されることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記裏面放熱電極にヒートシンクが設置されることを特徴とする請求項1乃至7何れか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
被走査面上で光を走査する光走査装置において、
請求項1乃至8何れか一項に記載の発光装置と、
前記発光装置で発光された光を偏向する偏向器と、
前記偏向器で偏向された光を前記被走査面上に集光する走査光学系と
を備える光走査装置。
【請求項10】
請求項9記載の光走査装置と、
前記光走査装置により光が走査される前記被走査面を備える少なくとも一つの像担持体と
を備え、
前記光走査装置は、前記像担持体の前記被走査面上で画像情報が含まれる光を走査し、前記像担持体の前記被走査面上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−10660(P2010−10660A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97118(P2009−97118)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】