説明

発振回路

【課題】温度補償回路に発振部の出力がノイズとして入力しない発振回路を提供する。
【課題の解決手段】周囲温度に応じた制御信号によって出力周波数が制御される発振部1と、この発振部1に制御信号を供給する温度補償回路2と、発振部1の発振出力と温度補償回路2の温度センサ出力のいずれかを出力するようオンオフ制御される出力バッファ4と温度センサ出力スイッチ3からなる切換スイッチ回路とを備え、温度センサ出力スイッチ3は、トランスファーゲートスイッチ301,302を2段直列に接続し、この接続点に固定電位に接続した第3のスイッチ303を介在させてなり、発振出力を出力する時はトランスファーゲートスイッチ301,302をオフとして、第3のスイッチ303をオンとし、温度センサ出力を出力する時はトランスファーゲートスイッチ301,302をオンとして、第3のスイッチ303をオフとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振子の周囲温度の変化に伴う周波数変動を補償する温度補償回路を備えた発振回路に関し、特に、一時的に発振出力を停止して、前記温度補償回路の温度センサ出力を出力可能な発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれ各別の入出力パッドを有する2つの異なる機能の回路A,Bと、前記各入出力パッドとの間に、トランスファーゲートスイッチからなる切り換えスイッチを設け、これらの切り換えスイッチをテスト制御部からの信号でオンオフ制御することにより、前記2つの回路A,Bのいずれか一方を選択して動作可能とし、選択した回路の出力を、2つの回路が共有するテスト用端子から出力したり、自己の出力パッドから出力することは知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−155153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の切り換えスイッチは、オフ状態の時に、図2に示すように、寄生容量がバイパス経路となって、一方の回路Aの出力が他方の回路Bに漏れてノイズとなり、回路Bの動作に悪影響を与えるという不都合を生じる。この不都合は、回路Aが周囲温度で変化する周波数温度特性の発振子を有する発振回路で、回路Bがこの発振回路に周囲温度に応じた周波数制御信号を供給する温度補償回路のように、回路Aの漏れた出力が入力する回路Bが低ノイズが要求される場合に、特に顕著となる。すなわち、温度補償回路の周波数制御信号がノイズの影響を受けて、発振部の可変容量ダイオードの動作に悪影響を及ぼし、周波数温度特性を悪化させたり、位相ノイズの原因となるものである。また、従来は各回路毎に入出力パッドを有するので、これらパッドが装置面積に占める割合が大きく、装置面積の縮小化を阻害するという不都合もある。本発明は、このような不都合を解消した発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発振回路は、周囲温度に応じた制御信号によって出力周波数が制御される発振部と、この発振部に前記制御信号を供給する温度補償回路と、前記発振部の発振出力と前記温度補償回路の温度センサ出力とのいずれか一方を選択出力するようオンオフ制御される発振出力スイッチと温度センサ出力スイッチからなる切換スイッチ回路とを備え、前記温度センサ出力スイッチは、トランスファーゲートスイッチを2段直列に接続するとともに、この接続点に固定電位に接続した第3のスイッチを介在させてなり、前記切換スイッチ回路は、前記発振出力スイッチがオンの時は前記温度センサ出力スイッチの各トランスファーゲートスイッチがオフで前記第3のスイッチがオンとなり、前記発振出力スイッチがオフの時は前記温度センサ出力スイッチの各トランスファーゲートスイッチがオンで前記第3のスイッチがオフとなるよう構成したものである。
【0006】
より具体的な構成としては、上述の発振部と、温度補償回路と、切換スイッチ回路に加えて、この切換スイッチ回路を制御する制御信号が入力される入力端子と、入力した制御信号によって前記温度センサ出力スイッチをオンオフ制御する温度センサ出力制御部と、前記切換スイッチ回路で選択された出力を出力する出力端子とを備え、前記出力端子に発振出力を出力する時は、前記発振出力スイッチをオンとする一方、前記各トランスファーゲートスイッチをオフとして前記第3のスイッチをオンとし、前記出力端子に温度センサ出力を出力する時は、前記発振出力スイッチをオフとする一方、前記各トランスファーゲートスイッチをオンとして前記第3のスイッチをオフとするよう構成すると好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度センサ出力スイッチを、2段直列に接続したトランスファースイッチに加えて、その接続点と固定電位に接続した第3のスイッチを設けて構成し、トランスファースイッチの寄生容量を介して漏れる発振部の出力を、第3のスイッチを介して固定電位に落とすことにより、発振部の出力が温度補償回路にノイズとして入力することを防止し、温度補償回路が供給する制御信号がノイズの影響を受けないことによって、発振部の周波数温度特性に悪影響を与えたり、位相ノイズの原因となることがないほか、出力パッドを各別に設ける必要がなく装置面積の縮小化に貢献できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る発振回路の好適な実施形態を示す回路図であって、破線で囲まれた部分は水晶発振モジュール用ICを示しており、発振回路は、発振部1と、温度補償回路2と、温度センサ出力スイッチ3と、出力バッファ4と、EEPROM5とを有する。前記温度センサ出力スイッチ3と発振出力スイッチである前記出力バッファ4とによって切換スイッチ回路を構成する。また、前記EEPROM5が温度センサ出力制御部を構成する。
【0009】
また、6は前記発振部1の発振出力と前記温度補償回路2の温度センサ出力のいずれか一方が出力される出力端子、7は入力端子で、発振出力を出力する発振出力モードと温度センサ出力を出力するテストモードを切り換える制御信号が入力されるモード切換信号入力端子である。このモード切換信号入力端子7は、前記EEPROM5に書き込まれるデータの入力端子も兼ねている。
【0010】
発振部1の水晶振動子101は外部素子として外付けされたもので、反転増幅回路102の帰還抵抗103と並列に接続されている。前記反転増幅回路102の入力端はコンデンサ104、抵抗105、可変容量ダイオード106を介して接地され、出力端はコンデンサ107、抵抗108、可変容量ダイオード109を介して接地されている。また、前記反転増幅回路102と並列に抵抗110,111が接続されている。
【0011】
発振部1には、各抵抗110,111の接続中間点に温度補償回路2の出力端が接続されて、前記温度補償回路2から温度センサ201が測定した周囲温度に応じて出力される発振周波数制御信号が入力する。この発振周波数制御信号は各可変容量ダイオード106,109に、それぞれ抵抗110,105及び111,108を介して入力され、制御信号である電圧値が上昇すると前記各可変容量ダイオード106,109の容量値は減少し、発振周波数が高くなる。
【0012】
一方、発振部1の出力は、出力バッファ4を介して出力端子6から出力される。また、モード切換信号入力端子7は、反転増幅回路102と、出力バッファ4と、EEPROM5に接続され、モード切換信号入力端子7に入力した制御信号に応じて前記反転増幅回路102と前記出力バッファ4がオンオフ制御され、EEPROM5のラッチ出力が制御され、これによって発振部1と温度補償回路2の出力が制御される。さらに、モード切換信号入力端子7に入力したデータに応じてEEPROM5のデータ書き換えが行われる。
【0013】
出力バッファ4の出力端と温度補償回路2の温度センサ201の出力端との間に設けた温度センサ出力スイッチ3は、それぞれNチャネルMOSトランジスタとPチャネルMOSトランジスタとからなるトランスファーゲートスイッチ301,302を2段直列に接続し、これら各スイッチ301,302の接続点と固定電位(図示例では接地)との間に、NチャネルMOSトランジスタからなる第3のスイッチ303を接続してなる。
【0014】
そして、温度センサ出力スイッチ3の各NチャネルMOSトランジスタのゲートには、EEPROM5のラッチ出力が直接入力し、各PチャネルMOSトランジスタのゲートには、EEPROM5のラッチ出力がそれぞれインバータ304,305を介して入力するよう接続されている。また、第3のスイッチ303であるNチャナルMOSトランジスタのゲートにもEEPROM5のラッチ出力がインバータ306を介して入力するよう接続されている。したがって、前記温度センサ出力スイッチ3がオン状態、すなわち、トランスファーゲートスイッチ301,302がオン状態の時は、第3のスイッチ303はオフ状態となり、前記温度センサ出力スイッチ3がオフ状態、すなわち、トランスファーゲートスイッチ301,302がオフ状態の時は、第3のスイッチ303はオン状態となる。
【0015】
続いて、上述した発振回路の動作を説明するが、本発振回路は発振出力モードと温度センサ出力をモニタするテストモードの2つの動作モードを有している。まず、発振出力モードの動作から説明すると、発振出力モードにおいては、モード切換信号入力端子7からHレベルの制御信号を入力し、発振部1及び出力バッファ4を動作する一方、EEPROM5のラッチ出力をLレベルにして温度センサ出力スイッチ3をオフにする。これによって、通常の発振出力が出力端子6から出力される。この際、前記温度センサ出力スイッチ3の第3のスイッチ303はオン状態となるので、各トランスファーゲートスイッチ301,302の寄生容量をバイパス経路とする発振出力の漏れは、前記スイッチ303を介して固定電位に落とされ、温度補償回路2へ流れることはない。
【0016】
次に、テストモードにおいては、モード切換信号入力端子7からLレベルの制御信号を入力して、発振部1及び出力バッファ4の出力をハイインピーダンスとし、発振部1の動作を停止する一方、EEPROM5のラッチ出力をHレベルにして温度センサ出力スイッチ3をオンにする。これによって、温度補償回路2から出力される温度センサ出力と、別途公知の手段で生成した前記温度センサ出力と比較するための基準電圧が出力端子6から出力される。前記基準電圧は、例えば、バンドキャップ電圧、またはバンドキャップ電圧を抵抗分圧したものである。この際、前記温度センサ出力スイッチ3の第3のスイッチ303はオフ状態となる。そして、前記出力端子6の出力結果から、温度補償回路2の制御出力による発振部1の容量値の変化と、それに伴う温度補償特性を評価することができる。
【0017】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、第3のスイッチ303は、MOSトランジスタではなくバイポーラトランジスタで構成してもよい。また、前記第3のスイッチ303を接続する固定電位は、接地ではなく、VddやVssでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる発振回路の一実施形態を示す回路図。
【図2】従来のトランスファーゲートスイッチにおける寄生容量を示す回路図。
【符号の説明】
【0019】
1 発振部
2 温度補償回路
3 温度センサ出力スイッチ
4 出力バッファ
5 EEPROM
6 出力端子
7 モード切換信号入力端子
101 水晶振動子
102 反転増幅回路
106,109 可変容量ダイオード
201 温度センサ
301,302 トランスファーゲートスイッチ
303 第3のスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度に応じた制御信号によって出力周波数が制御される発振部と、この発振部に前記制御信号を供給する温度補償回路と、前記発振部の発振出力と前記温度補償回路の温度センサ出力とのいずれか一方を選択出力するようオンオフ制御される発振出力スイッチと温度センサ出力スイッチからなる切換スイッチ回路とを備え、前記温度センサ出力スイッチは、トランスファーゲートスイッチを2段直列に接続するとともに、この接続点に固定電位に接続した第3のスイッチを介在させてなり、前記切換スイッチ回路は、前記発振出力スイッチがオンの時は前記温度センサ出力スイッチの各トランスファーゲートスイッチがオフで前記第3のスイッチがオンとなり、前記発振出力スイッチがオフの時は前記温度センサ出力スイッチの各トランスファーゲートスイッチがオンで前記第3のスイッチがオフとなるよう構成したことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記請求項1の構成に加えて、切換スイッチ回路を制御する制御信号が入力される入力端子と、入力した制御信号によって前記切換スイッチ回路の温度センサ出力スイッチをオンオフ制御する温度センサ出力制御部と、前記切換スイッチ回路で選択された出力を出力する出力端子とを備え、前記切換スイッチ回路は、前記出力端子に発振出力を出力する時は、前記発振出力スイッチをオンとする一方、前記各トランスファーゲートスイッチをオフとして前記第3のスイッチをオンとし、前記出力端子に温度センサ出力を出力する時は、前記発振出力スイッチをオフとする一方、前記各トランスファーゲートスイッチをオンとして前記第3のスイッチをオフとするよう構成したことを特徴とする発振回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−225123(P2009−225123A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67580(P2008−67580)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】