発泡合成樹脂シート製容器の製造方法及び金型
【課題】 この発明は、発泡合成樹脂シート製の容器において、打ち抜き時に発泡樹脂粉末の発生を防止することを第一の課題とし、フランジ端縁部の鋭利性を減殺することを第二の課題とするものである。
【解決手段】 発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法において、前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器Aのフランジ3の周縁部を、内方から打ち抜き予定位置5に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とするものである。
前記金型は下型Bと上型Cとで構成し、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成する。
【解決手段】 発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法において、前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器Aのフランジ3の周縁部を、内方から打ち抜き予定位置5に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とするものである。
前記金型は下型Bと上型Cとで構成し、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡合成樹脂シート製容器の製造方法及び金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡合成樹脂シート製容器は、複数個同時に成形できる多面取り構造とした下型の上に発泡合成樹脂シートを位置させ、上方から上型を降ろして上下の型でシートを挟み成形加工し、図1に示すように連続した複数の容器Aを得、次いで打ち抜き刃によってフランジ周縁を切断して製造する。
このとき、打ち抜き刃の上刃9がフランジ3のシートを押し切るように動くので(図6参照)、発泡樹脂シート、特に発泡ポリスチレンシートは打ち抜き刃で擦られ、発泡樹脂の粉末が発生する。この粉末が静電気で容器に付着し内容物に紛れ込んだり、容器外側面に付着して印刷不良の原因になったりする。
【0003】
また、従来の容器におけるフランジ端縁はほぼ垂直に切断されている。そのために、食品容器として口に含んだとき、唇に鋭利な切断面が触れ硬質な感触となる。また、フランジに蓋材11をシールしたとき蓋材11はフランジ3の全面に接着されるので、蓋材11を剥離するときにフランジ3の一部が砕けて蓋材に付着したり破片が容器の内容物上に落ちたりする場合がある(図7、図8)。
【0004】
さらに、即席カップ麺における乾燥麺など硬質の内容物を入れる場合には、その流通時の輸送条件によって内容物が後述する発泡PSP層及び容器表面HIPS層を破損するおそれがあり、これを防止するための補強機能、ならびに内容物の酸化・乾燥を防止するためのバリヤー機能を付加する目的で、容器内面にフィルムを貼り合わせる手法がある。しかしながら、従来の容器における内面フィルムはフランジ端縁と共にほぼ垂直に切断されているため、フランジに蓋材11をシールしたとき蓋材11は内面フィルム2cの全面に接着されるので、蓋材11を剥離するときに内面フィルム2cも蓋材11と共にフランジ3から剥がされてしまう場合がある(図9,図10)。
【0005】
また、近年発泡ポリスチレンペーパー(PSP)を用いた容器においては、成形後の容器強度、表面への印刷適正、表面の艶等の理由により、発泡PSP層2aの表面に100ミクロン程度以上の厚さのハイインパクトポリスチロール(HIPS)層2bをラミネートしたシートを用いるのが一般的となっている。
このようなシートを用いて成形後打ち抜き刃でフランジ周縁を切断するとき、倒立して置かれた状態において、フランジは発泡PSP層2a部分が下降する打ち抜き刃によって押しつぶされる。そのために、発泡PSP層2aの表面にラミネートされたHIPS層2bは斜めに押し下げられて、若干斜めにカットされることとなり、前記押しつぶされた発泡PSP層2aが原状に復帰したとき、HIPS層2bの端縁が発泡PSP層2aの端縁よりも僅かに突出した仕上がりとなる(図11)。
その結果、飲食物の容器として使用する場合、容器を唇にあてがったときに硬く痛い、時として唇を切るという消費者クレームが食品メーカーに寄せられている。
【特許文献1】特開平09−66560号公報
【0006】
上記発明は、発泡合成樹脂シート製容器におけるフランジ端縁を丸みを帯びた形状としたものである。ここにおいては、発泡シートを加熱成形して容器本体を形成した後に加熱治具によってフランジ端縁を溶融して丸みを付ける手法が開示されている。
係る手法においては、容器を唇に当てたときの感触は改善されるが、打ち抜き時における発泡樹脂粉末の発生を回避することはできない。また打ち抜き後における処理であるから、作業工程が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、発泡合成樹脂シート製の容器において、打ち抜き時に発泡樹脂粉末の発生を防止することを第一の課題とし、上記先行技術のように作業工程を増加させることなくフランジ端縁部の鋭利性を減殺すること、特にHIPSシートをラミネートしたシートを用いた容器において、HIPSシートの端縁が突出しないフランジ端縁を得ること、及び内面にフィルムを貼り合わせた容器において、蓋材剥離時に蓋材と共に内面フィルムが剥離しないフランジ端縁を得ることを第二の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法に係るものであり、前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器のフランジ周縁部を、内方から打ち抜き予定位置に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とするものである。
請求項2の発明は、発泡合成樹脂シートとして、発泡合成樹脂シートの表面にHIPSシートが貼り合わされたものを用いるものである。
請求項3の発明は、発泡合成樹脂シートとして、発泡合成樹脂シートの裏面にフィルムが貼り合わされたものを用いるものである。
請求項4の発明は、請求項1の発明を実施するための金型に関するものであり、発泡合成樹脂シートからフランジ付容器を成形する多面取り金型において、前記金型は上型と下型とで構成し、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成する。
【0009】
上記請求項1において、フランジ周縁部を圧縮するとは、打ち抜き刃によってフランジ周縁を打ち抜く際に発泡樹脂の粉末が可及的に発生しない程度にフランジ周縁部が硬化ソリッド化された状態をいう。そして、フランジ周縁部の内方から端縁に向けて次第に強く加圧するとは、フランジに際だった段部を形成することなくフランジ端縁を圧縮するための構成である。したがって、フランジ端縁の1〜3ミリ程度内側から端縁に向けて傾斜面を形成したり、断面弧状としたりして形成する。
断面弧状とすることにより、フランジの端縁部が断面弧状となり、唇への感触が軟らかくなる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、フランジ周縁部が圧縮されるので、該部が硬化ソリッド化されて、打ち抜き時における打ち抜き刃との摩擦による発泡樹脂粉末の発生が未然に防止される。その結果、容器内容物に粉末が異物として混入したり、容器の外壁に付着して印刷に悪影響を及ぼすことがない。
また、打ち抜き前に予めフランジ周縁部が圧縮されているので、HIPSシートをラミネートしたシートを成形した容器においても、打ち抜き後にHIPSシートがフランジ端縁から突出することがない。したがって、HIPSシートのフランジ端縁からの突出による唇への違和感や損傷のおそれが解消する。
さらに、フィルムシートを発泡合成樹脂シートの裏面にラミネートしたシートを整形した容器においては、フィルムもフランジ端縁部の断面弧状に沿って弧を描き、蓋材との間に隙間ができることから、蓋材剥離時にフィルムが蓋材と共に剥がれることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は多面取り成型された容器の断面図であり、図2はこの発明の実施に使用する金型の一部断面図である。下型B,上型C共に複数の容器を一度に成形できるように縦・横に複数の成形凹部及び成形凸部が並列しており、図はそのフランジ成形部分を示している。
下型Bは、容器Aのフランジ3の対応部分において、周縁部対応部分を除き水平であり、周縁部に対応する位置に断面凹弧状部4が形成してあり、打ち抜き予定位置5よりも外側、すなわち打ち抜きにより打ち抜かれて抜きかすとなる抜きかす部8においてフランジ内側部分におけるよりも上方に突出している。また上型Cは下型Bと逆に、容器Aのフランジ3の対応部分において、周縁部対応部分を除き水平であり、周縁部に対応する位置に断面凸弧状部6が形成してあり、打ち抜き予定位置5よりも外側の抜きかす部8においてフランジ内側部分におけるよりも下方に突出している。
前記凹弧状部4,凸弧状部6の始点は前記打ち抜き予定位置5より1〜2ミリ程度内側としてある。
【0012】
上記構成により、容器Aのフランジ3の周縁対応部において下型Bと上型Cとの対
向間隔は次第に狭まるので、下型Bと上型Cとで発泡PSP層2aの表面にHIPSシート2bをラミネートした発泡樹脂シート2を挟んで容器Aを得るために加熱成形すると、容器Aはフランジ3の周縁部において圧縮され、フランジ3は周縁部を除き上面、下面ともに水平に成形され、周縁部は前記上下の型の凹弧状部4,凸弧状部6に対応して断面弧状をなして成形される(図3中符号7)。また前記打ち抜き予定位置5より外側の抜きかす部8もシート2は圧縮されている。なお、発泡樹脂シート2は、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせたものとすることもできる(図5)。
次に成形された容器A(この段階では複数の容器がつながっている)を上刃9と下刃10で構成される打ち抜き刃で、前記打ち抜き予定位置5を打ち抜いて、個別に切り離された容器Aを得る。
この打ち抜きは通常の要領で行うものであるが、従来の成形品と異なり、上記の通りフランジ3の周縁部及び打ち抜き予定位置5の外側の抜きかす部8においてシート2は圧縮され、硬化・ソリッド化されている。打ち抜きの際に下降する上刃9の下面は圧縮された抜きかす部8に当たりこの部分を押し下げるので、上刃9の下降によってフランジ3が圧縮され変形することはない。また、上刃9と接触するフランジ3の打ち抜き予定位置5も圧縮され硬化・ソリッド化している。
【0013】
フランジ3の打ち抜き予定位置5は硬化・ソリッド化しているので、フランジ3の打ち抜き予定位置5と上刃9との接触によって発泡樹脂粉末が発生するおそれも可及的に減少する。また、上刃9の下降によってフランジ3が圧縮変形することがないので、シート2においてラミネートされたHIPS層2bの切断部が引き出されることもなく、打ち抜き後にフランジ3の端縁(打ち抜き予定位置5が打ち抜き後にはフランジ端縁となる)から突出することもない。
【0014】
上記のようにして製造された容器Aは、フランジ3の端縁部が上面、下面共に断面弧状をなし、フランジ端縁に向けて薄く成型されている。かつHIPS層2bがフランジの端縁から突出していない。したがって、フランジを唇に当てたときに柔らかな感触を得ることができ、また唇を損傷するおそれもない。
また、フランジ3の上面に蓋材11をシールしたとき、フランジ3の上面端縁部は断面弧状をなして次第に薄くなっており、かつ該部は圧縮されているので、蓋材11の周縁部はフランジに接着せずに浮いた状態となる。その結果、蓋材を剥離するとき、剥離当初からスムーズに剥がれ、フランジ上面が破損して蓋材に付着することもない(図4)。発泡樹脂シート2を、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせたものとした場合には、フィルム2cはフランジ3の上面端縁部の断面弧状の形状に沿って弧を描き、フィルム端部は蓋材11と接着されないので、蓋材11を剥離するときに蓋材11と共にフィルム2cが容器から剥離されることはなくなる(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、発泡合成樹脂シート成型容器において、製造過程における打ち抜き時の発泡合成樹脂粉末の発生を防ぎ、合成樹脂粉末が異物として内容物に混入したり、印刷への悪影響を防止することができる。加えてフランジ端縁を丸みのある形状に成形することができ、唇への接触時の硬質感や唇損傷のおそれを回避でき、特にHIPSシートをラミネートしたシートを用いた容器におけるHIPSシート端縁の突出も回避でき、容器内面に補強及びバリヤー機能付加目的のフィルムをラミネートした容器における蓋材開封時のフィルム剥離を回避できるなど、特に食品用容器に適したものとして、産業上利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の容器の打ち抜き前の状態を示す一部断面図
【図2】この発明実施形態の金型の要部断面図
【図3】この発明によって製造した容器のフランジの断面図
【図4】この発明により製造した容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図5】この発明により製造した内面にフィルムをラミネートした容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図6】従来技術における打ち抜き工程を示す断面図
【図7】従来の容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図8】同じく蓋材の剥離状態を示す断面図
【図9】フィルムをラミネートした従来の容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図10】同じく蓋材の剥離状態を示す断面図
【図11】HIPSシートをラミネートした従来の容器のフランジ断面図
【符号の説明】
【0017】
A 容器
B 下型
C 上型
2 発泡合成樹脂シート
2a 発泡PSP層
2b HIPS層
2c フィルム層
3 フランジ
4 凹弧状部
5 打ち抜き予定位置
6 凸弧状部
7 弧状部
8 抜きかす部
9 上刃
10 下刃
11 蓋材
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡合成樹脂シート製容器の製造方法及び金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡合成樹脂シート製容器は、複数個同時に成形できる多面取り構造とした下型の上に発泡合成樹脂シートを位置させ、上方から上型を降ろして上下の型でシートを挟み成形加工し、図1に示すように連続した複数の容器Aを得、次いで打ち抜き刃によってフランジ周縁を切断して製造する。
このとき、打ち抜き刃の上刃9がフランジ3のシートを押し切るように動くので(図6参照)、発泡樹脂シート、特に発泡ポリスチレンシートは打ち抜き刃で擦られ、発泡樹脂の粉末が発生する。この粉末が静電気で容器に付着し内容物に紛れ込んだり、容器外側面に付着して印刷不良の原因になったりする。
【0003】
また、従来の容器におけるフランジ端縁はほぼ垂直に切断されている。そのために、食品容器として口に含んだとき、唇に鋭利な切断面が触れ硬質な感触となる。また、フランジに蓋材11をシールしたとき蓋材11はフランジ3の全面に接着されるので、蓋材11を剥離するときにフランジ3の一部が砕けて蓋材に付着したり破片が容器の内容物上に落ちたりする場合がある(図7、図8)。
【0004】
さらに、即席カップ麺における乾燥麺など硬質の内容物を入れる場合には、その流通時の輸送条件によって内容物が後述する発泡PSP層及び容器表面HIPS層を破損するおそれがあり、これを防止するための補強機能、ならびに内容物の酸化・乾燥を防止するためのバリヤー機能を付加する目的で、容器内面にフィルムを貼り合わせる手法がある。しかしながら、従来の容器における内面フィルムはフランジ端縁と共にほぼ垂直に切断されているため、フランジに蓋材11をシールしたとき蓋材11は内面フィルム2cの全面に接着されるので、蓋材11を剥離するときに内面フィルム2cも蓋材11と共にフランジ3から剥がされてしまう場合がある(図9,図10)。
【0005】
また、近年発泡ポリスチレンペーパー(PSP)を用いた容器においては、成形後の容器強度、表面への印刷適正、表面の艶等の理由により、発泡PSP層2aの表面に100ミクロン程度以上の厚さのハイインパクトポリスチロール(HIPS)層2bをラミネートしたシートを用いるのが一般的となっている。
このようなシートを用いて成形後打ち抜き刃でフランジ周縁を切断するとき、倒立して置かれた状態において、フランジは発泡PSP層2a部分が下降する打ち抜き刃によって押しつぶされる。そのために、発泡PSP層2aの表面にラミネートされたHIPS層2bは斜めに押し下げられて、若干斜めにカットされることとなり、前記押しつぶされた発泡PSP層2aが原状に復帰したとき、HIPS層2bの端縁が発泡PSP層2aの端縁よりも僅かに突出した仕上がりとなる(図11)。
その結果、飲食物の容器として使用する場合、容器を唇にあてがったときに硬く痛い、時として唇を切るという消費者クレームが食品メーカーに寄せられている。
【特許文献1】特開平09−66560号公報
【0006】
上記発明は、発泡合成樹脂シート製容器におけるフランジ端縁を丸みを帯びた形状としたものである。ここにおいては、発泡シートを加熱成形して容器本体を形成した後に加熱治具によってフランジ端縁を溶融して丸みを付ける手法が開示されている。
係る手法においては、容器を唇に当てたときの感触は改善されるが、打ち抜き時における発泡樹脂粉末の発生を回避することはできない。また打ち抜き後における処理であるから、作業工程が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、発泡合成樹脂シート製の容器において、打ち抜き時に発泡樹脂粉末の発生を防止することを第一の課題とし、上記先行技術のように作業工程を増加させることなくフランジ端縁部の鋭利性を減殺すること、特にHIPSシートをラミネートしたシートを用いた容器において、HIPSシートの端縁が突出しないフランジ端縁を得ること、及び内面にフィルムを貼り合わせた容器において、蓋材剥離時に蓋材と共に内面フィルムが剥離しないフランジ端縁を得ることを第二の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法に係るものであり、前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器のフランジ周縁部を、内方から打ち抜き予定位置に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とするものである。
請求項2の発明は、発泡合成樹脂シートとして、発泡合成樹脂シートの表面にHIPSシートが貼り合わされたものを用いるものである。
請求項3の発明は、発泡合成樹脂シートとして、発泡合成樹脂シートの裏面にフィルムが貼り合わされたものを用いるものである。
請求項4の発明は、請求項1の発明を実施するための金型に関するものであり、発泡合成樹脂シートからフランジ付容器を成形する多面取り金型において、前記金型は上型と下型とで構成し、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成する。
【0009】
上記請求項1において、フランジ周縁部を圧縮するとは、打ち抜き刃によってフランジ周縁を打ち抜く際に発泡樹脂の粉末が可及的に発生しない程度にフランジ周縁部が硬化ソリッド化された状態をいう。そして、フランジ周縁部の内方から端縁に向けて次第に強く加圧するとは、フランジに際だった段部を形成することなくフランジ端縁を圧縮するための構成である。したがって、フランジ端縁の1〜3ミリ程度内側から端縁に向けて傾斜面を形成したり、断面弧状としたりして形成する。
断面弧状とすることにより、フランジの端縁部が断面弧状となり、唇への感触が軟らかくなる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、フランジ周縁部が圧縮されるので、該部が硬化ソリッド化されて、打ち抜き時における打ち抜き刃との摩擦による発泡樹脂粉末の発生が未然に防止される。その結果、容器内容物に粉末が異物として混入したり、容器の外壁に付着して印刷に悪影響を及ぼすことがない。
また、打ち抜き前に予めフランジ周縁部が圧縮されているので、HIPSシートをラミネートしたシートを成形した容器においても、打ち抜き後にHIPSシートがフランジ端縁から突出することがない。したがって、HIPSシートのフランジ端縁からの突出による唇への違和感や損傷のおそれが解消する。
さらに、フィルムシートを発泡合成樹脂シートの裏面にラミネートしたシートを整形した容器においては、フィルムもフランジ端縁部の断面弧状に沿って弧を描き、蓋材との間に隙間ができることから、蓋材剥離時にフィルムが蓋材と共に剥がれることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は多面取り成型された容器の断面図であり、図2はこの発明の実施に使用する金型の一部断面図である。下型B,上型C共に複数の容器を一度に成形できるように縦・横に複数の成形凹部及び成形凸部が並列しており、図はそのフランジ成形部分を示している。
下型Bは、容器Aのフランジ3の対応部分において、周縁部対応部分を除き水平であり、周縁部に対応する位置に断面凹弧状部4が形成してあり、打ち抜き予定位置5よりも外側、すなわち打ち抜きにより打ち抜かれて抜きかすとなる抜きかす部8においてフランジ内側部分におけるよりも上方に突出している。また上型Cは下型Bと逆に、容器Aのフランジ3の対応部分において、周縁部対応部分を除き水平であり、周縁部に対応する位置に断面凸弧状部6が形成してあり、打ち抜き予定位置5よりも外側の抜きかす部8においてフランジ内側部分におけるよりも下方に突出している。
前記凹弧状部4,凸弧状部6の始点は前記打ち抜き予定位置5より1〜2ミリ程度内側としてある。
【0012】
上記構成により、容器Aのフランジ3の周縁対応部において下型Bと上型Cとの対
向間隔は次第に狭まるので、下型Bと上型Cとで発泡PSP層2aの表面にHIPSシート2bをラミネートした発泡樹脂シート2を挟んで容器Aを得るために加熱成形すると、容器Aはフランジ3の周縁部において圧縮され、フランジ3は周縁部を除き上面、下面ともに水平に成形され、周縁部は前記上下の型の凹弧状部4,凸弧状部6に対応して断面弧状をなして成形される(図3中符号7)。また前記打ち抜き予定位置5より外側の抜きかす部8もシート2は圧縮されている。なお、発泡樹脂シート2は、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせたものとすることもできる(図5)。
次に成形された容器A(この段階では複数の容器がつながっている)を上刃9と下刃10で構成される打ち抜き刃で、前記打ち抜き予定位置5を打ち抜いて、個別に切り離された容器Aを得る。
この打ち抜きは通常の要領で行うものであるが、従来の成形品と異なり、上記の通りフランジ3の周縁部及び打ち抜き予定位置5の外側の抜きかす部8においてシート2は圧縮され、硬化・ソリッド化されている。打ち抜きの際に下降する上刃9の下面は圧縮された抜きかす部8に当たりこの部分を押し下げるので、上刃9の下降によってフランジ3が圧縮され変形することはない。また、上刃9と接触するフランジ3の打ち抜き予定位置5も圧縮され硬化・ソリッド化している。
【0013】
フランジ3の打ち抜き予定位置5は硬化・ソリッド化しているので、フランジ3の打ち抜き予定位置5と上刃9との接触によって発泡樹脂粉末が発生するおそれも可及的に減少する。また、上刃9の下降によってフランジ3が圧縮変形することがないので、シート2においてラミネートされたHIPS層2bの切断部が引き出されることもなく、打ち抜き後にフランジ3の端縁(打ち抜き予定位置5が打ち抜き後にはフランジ端縁となる)から突出することもない。
【0014】
上記のようにして製造された容器Aは、フランジ3の端縁部が上面、下面共に断面弧状をなし、フランジ端縁に向けて薄く成型されている。かつHIPS層2bがフランジの端縁から突出していない。したがって、フランジを唇に当てたときに柔らかな感触を得ることができ、また唇を損傷するおそれもない。
また、フランジ3の上面に蓋材11をシールしたとき、フランジ3の上面端縁部は断面弧状をなして次第に薄くなっており、かつ該部は圧縮されているので、蓋材11の周縁部はフランジに接着せずに浮いた状態となる。その結果、蓋材を剥離するとき、剥離当初からスムーズに剥がれ、フランジ上面が破損して蓋材に付着することもない(図4)。発泡樹脂シート2を、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせたものとした場合には、フィルム2cはフランジ3の上面端縁部の断面弧状の形状に沿って弧を描き、フィルム端部は蓋材11と接着されないので、蓋材11を剥離するときに蓋材11と共にフィルム2cが容器から剥離されることはなくなる(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、発泡合成樹脂シート成型容器において、製造過程における打ち抜き時の発泡合成樹脂粉末の発生を防ぎ、合成樹脂粉末が異物として内容物に混入したり、印刷への悪影響を防止することができる。加えてフランジ端縁を丸みのある形状に成形することができ、唇への接触時の硬質感や唇損傷のおそれを回避でき、特にHIPSシートをラミネートしたシートを用いた容器におけるHIPSシート端縁の突出も回避でき、容器内面に補強及びバリヤー機能付加目的のフィルムをラミネートした容器における蓋材開封時のフィルム剥離を回避できるなど、特に食品用容器に適したものとして、産業上利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の容器の打ち抜き前の状態を示す一部断面図
【図2】この発明実施形態の金型の要部断面図
【図3】この発明によって製造した容器のフランジの断面図
【図4】この発明により製造した容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図5】この発明により製造した内面にフィルムをラミネートした容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図6】従来技術における打ち抜き工程を示す断面図
【図7】従来の容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図8】同じく蓋材の剥離状態を示す断面図
【図9】フィルムをラミネートした従来の容器に蓋材を接着した状態の断面図
【図10】同じく蓋材の剥離状態を示す断面図
【図11】HIPSシートをラミネートした従来の容器のフランジ断面図
【符号の説明】
【0017】
A 容器
B 下型
C 上型
2 発泡合成樹脂シート
2a 発泡PSP層
2b HIPS層
2c フィルム層
3 フランジ
4 凹弧状部
5 打ち抜き予定位置
6 凸弧状部
7 弧状部
8 抜きかす部
9 上刃
10 下刃
11 蓋材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法において、
前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器のフランジ周縁部を、内方から打ち抜き予定位置に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とする、発泡合成樹脂シート製容器の製造方法
【請求項2】
発泡合成樹脂シートは、発泡合成樹脂シートの表面にHIPSシートが貼り合わされたものとした、請求項2記載の発泡合成樹脂シート製容器のフランジ端縁処理方法
【請求項3】
発泡合成樹脂シートは、発泡合成樹脂シートの裏面にフィルムが張り合わされたものとした、請求項1又は2記載の発泡合成樹脂シート製容器のフランジ処理方法
【請求項4】
発泡合成樹脂シートからフランジ付容器を成形する多面取り金型において、
前記金型は上型と下型とで構成され、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成した、
発泡合成樹脂シート製容器の製造用金型
【請求項1】
発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法において、
前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器のフランジ周縁部を、内方から打ち抜き予定位置に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とする、発泡合成樹脂シート製容器の製造方法
【請求項2】
発泡合成樹脂シートは、発泡合成樹脂シートの表面にHIPSシートが貼り合わされたものとした、請求項2記載の発泡合成樹脂シート製容器のフランジ端縁処理方法
【請求項3】
発泡合成樹脂シートは、発泡合成樹脂シートの裏面にフィルムが張り合わされたものとした、請求項1又は2記載の発泡合成樹脂シート製容器のフランジ処理方法
【請求項4】
発泡合成樹脂シートからフランジ付容器を成形する多面取り金型において、
前記金型は上型と下型とで構成され、上型と下型との対向間隔は容器のフランジ周縁部対応位置から打ち抜き予定位置に向けて次第に狭く構成した、
発泡合成樹脂シート製容器の製造用金型
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−38631(P2007−38631A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5165(P2006−5165)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591161623)株式会社コバヤシ (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591161623)株式会社コバヤシ (30)
【Fターム(参考)】
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