説明

真空処理装置

【課題】搬送チャンバー内にシリコン基板を搬送したときに、シリコン基板が面内温度分布に起因して反ることがない真空処理装置の提供。
【解決手段】真空雰囲気でシリコン基板26に回路を形成する複数の処理を、それぞれ順次実行する為の複数のプロセスチャンバー2〜5と、複数のプロセスチャンバー2〜5に隣接し、シリコン基板26をプロセスチャンバー2〜5内へ搬入しプロセスチャンバー2〜5内から搬出する搬送機構19を有する搬送チャンバー1とを備える真空処理装置。ガスを吹き出す吹出口22〜25と、搬送チャンバー1内のガスを外部へ排気する排気口31とを搬送チャンバー1内に備え、搬送機構19がプロセスチャンバー22〜25から搬出し停止させたシリコン基板26へ吹出口22〜25からガスを吹出させる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に回路を形成する複数の処理を実行する為の複数のプロセスチャンバーと、シリコン基板をプロセスチャンバー内へ搬入しプロセスチャンバー内から搬出する搬送機構を有する搬送チャンバーとを備える真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上に半導体素子又は集積回路を形成する製造工程においては、成膜及びエッチング等の処理を施すプロセスチャンバー(真空処理容器)を複数備えたマルチチャンバー型の真空処理装置が使用されている。マルチチャンバー型の真空処理装置は、複数のプロセスチャンバーと、複数のプロセスチャンバーに隣接し、シリコン基板を搬送する搬送アームを内蔵する搬送チャンバーと、搬送チャンバーに隣接し、外部と連絡する為のロードロックチャンバー(真空予備容器)とを備えている。
プロセスチャンバーと搬送チャンバーとの間、及び搬送チャンバーとロードロックチャンバーとの間は、それぞれゲートバルブにより密閉可能になっている。
【0003】
このような真空処理装置では、搬送アームが、ロードロックチャンバー内のカセットから未処理のシリコン基板を搬送し、プロセスに従って、1番目のプロセスチャンバー内に搬入する。1番目のプロセスチャンバー内での処理が終了すると、搬送アームが、シリコン基板を1番目のプロセスチャンバー内から搬出し、搬送チャンバー内で一時的に停止させた後、2番目のプロセスチャンバー内に搬入する。
【0004】
2番目のプロセスチャンバー内での処理が終了すると、搬送アームがシリコン基板を搬出し、搬送チャンバー内で一時的に停止させた後、3番目のプロセスチャンバー内に搬入する。
以下、同様にして、真空処理装置内での処理が終了すると、搬送アームが、他のロードロックチャンバー内のカセットへ処理済みのシリコン基板を搬送する。上述した動作において、シリコン基板がチャンバー間を搬送されるときは、それぞれのゲートバルブが開閉される。
【0005】
特許文献1には、被処理体を収容して熱処理を行う処理室と、処理室から搬出された熱処理後の被処理体を収容して所定の温度以下に冷却する冷却室とを備えた熱処理装置が開示されている。冷却室は被処理体を支持する支持部と、被処理体の下面に対向して被処理体を冷却する冷却板とを有し、冷却板の上面が被処理体に対向する周縁部から中央部に向かって漸次隆起して形成されている。
【0006】
特許文献2には、半導体ウェーハを加熱する熱板を有する加熱室と、加熱室によって加熱されたウェーハを冷却する冷却プレートと、加熱室に対してウェーハを搬入・搬出する搬送手段とを備えた熱処理装置が開示されている。冷却プレートに、冷媒流路である冷却配管と、冷却プレート表面との間に隙間をおいてウェーハを載置する複数の突起と、各突起の近傍に設けられ、吸引手段に接続する吸引孔とを設けている。
【0007】
特許文献3には、クーリングプレートの基板冷却面の中央部に、基板冷却面から突出した吸着部が設けられており、吸着部の周囲が間隙部とされた基板冷却装置が開示されている。間隙部には、基板冷却面と基板との間隙を一定に保持する為のプロキシミティボールが配設されており、これにより、基板の周縁部については、プロキシミティ方式での冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−93543号公報
【特許文献2】特開2008−147320号公報
【特許文献3】特開平11−330212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
搬送チャンバー内では、プロセスチャンバー内での処理に使用される腐食ガスの拡散防止対策として、圧力制御は行っているが、処理後のシリコン基板が搬送チャンバーを通過するときに、熱で反り易いシリコン基板の変形等を抑制するような機能は実行していない。
シリコン基板温度(ヒータの制御温度)が高い状態でのプロセス処理を実施した後、搬送チャンバー内にシリコン基板を搬送した場合、シリコン基板はエッジ部から放熱する為、シリコン基板内の面内温度分布の差は大きくなる。つまり、シリコン基板の中心部の温度がエッジ側の温度より高くなる。この面内温度分布に伴う熱収縮によって、シリコン基板が反ってしまうという問題がある。
【0010】
この場合、搬送チャンバー内でシリコン基板を放置し、徐々に冷却することで反りを解消することは可能であるが、冷却に時間がかかりスループットが大幅に低下してしまう。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、搬送チャンバー内にシリコン基板を搬送したときに、シリコン基板が面内温度分布に起因して反ることがない真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る真空処理装置は、真空雰囲気でシリコン基板上に回路を形成する複数の処理を、それぞれ順次実行する為の複数のプロセスチャンバーと、該複数のプロセスチャンバーに隣接し、前記シリコン基板をプロセスチャンバー内へ搬入しプロセスチャンバー内から搬出する搬送機構を有する搬送チャンバーとを備える真空処理装置において、ガスを吹き出す吹出口と、前記搬送チャンバー内のガスを外部へ排気する排気口とを前記搬送チャンバー内に備え、前記搬送機構がプロセスチャンバーから搬出し停止させたシリコン基板の中央部分へ前記吹出口からガスを吹出させるように構成してあることを特徴とする。
【0012】
この真空処理装置では、複数のプロセスチャンバー内で、真空雰囲気でシリコン基板上に回路を形成する複数の処理を、それぞれ順次実行し、複数のプロセスチャンバーに隣接する搬送チャンバーに内蔵する搬送機構が、シリコン基板をプロセスチャンバー内へ搬入しプロセスチャンバー内から搬出する。搬送チャンバー内に吹出口と排気口とを備え、吹出口がガスを吹き出し、排気口が、搬送チャンバー内のガスを外部へ排気する。吹出口は、搬送機構がプロセスチャンバーから搬出し停止させたシリコン基板の中央部分へガスを吹出す。従って、シリコン基板の中央部分の温度が、エッジ側の温度より低くなり、シリコン基板の反りが抑えられる。
【0013】
第2発明に係る真空処理装置は、前記吹出口は、前記シリコン基板へガスを上方から吹出させるように設けてあり、前記排気口は、前記搬送チャンバーの下部に設けてあることを特徴とする。
【0014】
この真空処理装置では、吹出口は、シリコン基板へガスを上方から吹出させるように設けてあり、排気口は、搬送チャンバーの下部に設けてある。
【0015】
第3発明に係る真空処理装置は、シリコン基板を検出する検出器を更に備え、該検出器がシリコン基板を検出している場合に、前記吹出口からガスを吹出させるように構成してあることを特徴とする。
【0016】
この真空処理装置では、検出器がシリコン基板を検出している場合に、吹出口からガスを吹出させる。
【0017】
第4発明に係る真空処理装置は、前記吹出口を前記プロセスチャンバーのそれぞれに対応させて備えることを特徴とする。
【0018】
この真空処理装置では、プロセスチャンバーのそれぞれに対応する吹出口を備えている。
【0019】
第5発明に係る真空処理装置は、前記検出器を前記吹出口毎に備え、該検出器がシリコン基板を検出している場合に、該検出器を備える吹出口からガスを吹出させるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
この真空処理装置では、検出器を吹出口毎に備え、検出器がシリコン基板を検出している場合に、その検出器を備える吹出口からガスを吹出させる。
【0021】
第6発明に係る真空処理装置は、前記シリコン基板を搬出したプロセスチャンバーの処理内容に応じて、前記吹出口からガスを吹出させる流量及び/又は時間を調節するように構成してあることを特徴とする。
【0022】
この真空処理装置では、シリコン基板を搬出したプロセスチャンバーでの処理内容に応じて、吹出口からガスを吹出させる流量及び/又は時間を調節する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る真空処理装置によれば、搬送チャンバー内にシリコン基板を搬送したときに、シリコン基板に接触しない簡単な構成により、シリコン基板が面内温度分布に起因して反ることがない真空処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る真空処理装置の実施の形態の概略構成を模式的に示す平面図である。
【図2】吹出口に関連する構成を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る真空処理装置の実施の形態の吹出口に関連する構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る真空処理装置の実施の形態1の概略構成を模式的に示す平面図である。
この真空処理装置は、成膜及びエッチング等の熱処理を含むプロセス処理を施す4つのプロセスチャンバー(真空処理容器)2〜5を備えたマルチチャンバー型の真空処理装置である。この真空処理装置は、4つのプロセスチャンバー2〜5に隣接し、シリコン基板26を搬送する2本の搬送アーム(搬送機構)19,19を内蔵する搬送チャンバー1と、搬送チャンバー1に隣接し、大気搬送部28と連絡する為の3つのロードロックチャンバー(真空予備容器)6〜8とを備えている。尚、2本の搬送アーム19,19の動作及び構成は同じであるため、以下では1本の搬送アーム19について説明を行い、他方の搬送アーム19の説明を省略する。
【0026】
プロセスチャンバー2〜5と搬送チャンバー1との隔壁、及び搬送チャンバー1とロードロックチャンバー6〜8との隔壁は、それぞれゲートバルブ9〜12,13〜15により密閉可能に構成されている。また、ロードロックチャンバー6〜8と大気搬送部36との隔壁は、それぞれゲートバルブ16〜18により密閉可能に構成されている。
【0027】
大気搬送部36内には、旋回及び伸縮可能な大気搬送アーム39と、大気搬送アーム39を水平方向に移動させる水平移動部37及び上下移動部38とを備えている。大気搬送部36には、ロードポート(カセット)40〜42が隣接して設けられている。大気搬送アーム39は、未処理のシリコン基板をロードポート40〜42からロードロックチャンバー6〜8内へ搬送し、処理済みのシリコン基板をロードロックチャンバー6〜8からロードポート40〜42へ搬送する。
大気搬送部36には、また、オリエンタ43が隣接して設けられており、オリエンタ43内では、シリコン基板を回転させて、その偏心量を光学的に求めて位置合わせを行う。
【0028】
搬送アーム19は、水平方向に折り曲げ自在に連結された4つのアーム20,20,20,20を備え、搬送アーム19を構成する先端側のアーム20には、シリコン基板26を載置するフォーク21,21が取付けられている。搬送アーム19は、搬送するシリコン基板26の位置に応じて、アーム20,20,20,20を鉛直方向に移動させることが可能である。
搬送チャンバー1内には、搬送アーム19が、プロセスチャンバー2〜5から搬出したシリコン基板26を一時停止させる位置に、窒素、ヘリウム又はアルゴン等の冷却ガスを吹出す吹出口22〜25が設けられている。
【0029】
図2は、吹出口22〜25に関連する構成を模式的に示す縦断面図である。
図示しない冷却ガスボンベに接続された冷却ガス配管34が、搬送チャンバー1の底を貫通して固定されている。冷却ガス配管34の吹出口22〜25は、搬送アーム19のフォーク21,21が載置して一時停止させたシリコン基板26の中央部分に、下方から冷却ガスを吹出す位置に固定されている。つまり、図1に示すように、シリコン基板26を保持した搬送アーム19が折り畳まれ、プロセスチャンバー2〜5から搬送チャンバー1内へ搬送されたシリコン基板26の略中央部に冷却ガスを吹き付けることが可能な位置に吹出口22〜25が設けられている。
【0030】
シリコン基板26内の面内温度分布差により、シリコン基板26の反りは発生するが、シリコン基板26の中央部分の温度がエッジ側の温度より高い場合にのみ反りは発生する。つまり、シリコン基板26の中央部分の温度が、エッジ側の温度よりも低い場合には、シリコン基板26の反りは発生しない。従って、本実施の形態では、シリコン基板26の中央部分のみに冷却ガスを局所的に供給して、シリコン基板26の面内温度分布差が発生しないように構成している。冷却ガスを吹付ける範囲としては、例えば、直径300mmのシリコン基板26の場合には、基板中心から半径約50mmの範囲を超えないように冷却ガスを吹付ける。直径450mmのシリコン基板26の場合には、基板中心から半径約100mmの範囲を超えないように冷却ガスを吹付けるのが好ましい。
冷却ガス配管34の吹出口22〜25に近い部分には、シリコン基板26を検出する検出器22a〜25aが付設され、フォーク21,21が載置して一時停止させたシリコン基板26を、反射型フォトインタラプタ方式で検出する。
【0031】
搬送チャンバー1の外部の冷却ガス配管34の中途に、流量制御バルブ30が設けられている。
冷却ガスを排気する為の排気口31が、搬送チャンバー1の底を貫通して設けてあり、排気口31には、搬送チャンバー1の外部の配管35を介して真空ポンプ32が接続されている。
以上の吹出口22〜25に関連する構成はそれぞれ同様であるが、排気口31については、吹出口22〜25で共用する。
【0032】
各吹出口22〜25に対応する各検出器22a〜25aの検出信号は、マイクロコンピュータを備えた冷却制御部33に与えられる。冷却制御部33は、与えられた検出信号に基づき、シリコン基板を検出している検出器22a〜25aに対応する流量制御バルブ30を制御して、対応する吹出口22〜25から冷却ガスを吹出させる。つまり、シリコン基板26が上方に位置する吹出口22〜25から冷却ガスが吹き出し、シリコン基板26が上方に位置しない吹出口22〜25からは冷却ガスが吹き出されない。冷却制御部33は、その際、搬送アーム19がシリコン基板26を搬出して来たプロセスチャンバー2〜5の処理内容に応じて、冷却ガスを吹出させる流量及び時間を調節する。例えば、処理内容が高温での処理であれば、冷却ガスの流量を増加させ、冷却ガスの吹出し時間を長くする。
【0033】
また、各プロセスチャンバー2〜5におけるシリコン基板26に対する処理内容を記憶する記憶手段を備え、冷却制御部33は、シリコン基板26を搬送チャンバー1へ搬送した場合、その前後におけるシリコン基板26の処理内容を特定する手段と、特定された処理内容に応じて、前記シリコン基板26へ吹き出す冷却ガスの流量及び時間を決定する手段とを備え、決定された流量及び時間に基づいて、流量制御バルブ30の動作を制御するように構成しても良い。尚、言うまでも無く、冷却ガスの流量及び時間のいずれか一方のみを制御するように構成しても良い。
【0034】
尚、搬送アーム19の折曲がり状態(収縮状態)に基づきシリコン基板を検出する検出器を1つ備え、検出器がシリコン基板を検出した場合に、吹出口22〜25から冷却ガスを吹出させるように構成することも可能である。つまり、搬送アーム19が収縮した状態にあることを検出する検出器を備え、搬送アーム19が収縮したことを検出した場合、全ての吹出口22〜25から冷却ガスを吹出させるように構成しても良い。この場合、検出器は1つで良い。
一方、本実施の形態1のように、吹出口22〜25毎に検出器22a〜25aを備えることにより、消費される冷却ガスは少量となる。
【0035】
以下に、このような構成の真空処理装置の動作を説明する。
この真空処理装置では、搬送アーム19が、ロードロックチャンバー8内から未処理のシリコン基板を搬送し、プロセスに従って、1番目のプロセスチャンバー2内に搬入する。1番目のプロセスチャンバー2内での処理が終了すると、搬送アーム19が、シリコン基板をプロセスチャンバー2内から搬出し、搬送チャンバー1内で一時停止した後、2番目のプロセスチャンバー3内に搬入する。
【0036】
冷却制御部33は、搬送アーム19が、シリコン基板を搬送チャンバー1内で一時停止させ、検出器25aがシリコン基板を検出している場合、流量制御バルブ30を駆動制御して、吹出口25から冷却ガスを吹出させる。冷却制御部33は、その際、その直前のプロセスチャンバー2内での処理内容に応じて定められた冷却ガス流量及び吹出し時間に基づき、流量制御バルブ30を駆動制御する。
これにより、シリコン基板の中央部分をその温度に応じて冷却することができ、シリコン基板内の面内温度分布が均一化され、シリコン基板は反ることがない。
冷却制御部33は、また、搬送チャンバー1内を所定圧力に調整する為、真空ポンプ32を駆動制御して排気させる。
【0037】
2番目のプロセスチャンバー3内での処理が終了すると、搬送アーム19がシリコン基板を搬出し、搬送チャンバー1内で一時停止した後、3番目のプロセスチャンバー4内に搬入する。
冷却制御部33は、搬送アーム19が、シリコン基板を搬送チャンバー1内で一時停止させ、検出器24aがシリコン基板を検出している場合、流量制御バルブ30を駆動制御して、吹出口24から冷却ガスを吹出させる。冷却制御部33は、その際、その直前のプロセスチャンバー3内での処理内容に応じて定められた冷却ガス流量及び吹出し時間に基づき、流量制御バルブを駆動制御する。
【0038】
以下、同様にして、真空処理装置内での処理が終了すると、搬送アーム19が、ロードロックチャンバー8内へ処理済みのシリコン基板を搬送する。上述した動作において、シリコン基板がチャンバー1〜8間を搬送されるときは、それぞれのゲートバルブ9〜10,13〜15,16〜18が開閉され、真空処理装置内の真空度が保持されるように構成されている。
【0039】
このように構成された真空処理装置によれば、搬送チャンバー1を介してプロセスチャンバー2〜5間でシリコン基板26を受け渡す際、該シリコン基板26が面内温度分布に起因して反ることを防止することができる。
また、シリコン基板26の位置を検出し、シリコン基板26が位置する吹出口22〜25のいずれか一つから冷却ガスを吹き出すように構成してあるため、冷却ガスの消費量を抑えることができる。
【0040】
尚、本実施の形態1では、検出器の例として吹出口の近傍に設けられた反射型フォトインタラプタ、搬送アームの収縮を検出する手段などを説明したが、特にこれらに限定されない。例えば、搬送アームの収縮を検出する収縮検出手段と、搬送アームの向きを検出する向き検出手段とを用いて検出器を構成し、該収縮検出手段及び向き検出手段によって、シリコン基板の位置を特定ないし推定し、シリコン基板の位置に対応する吹出口から冷却ガスを吹き出すように構成しても良い。
【0041】
(実施の形態2)
図3は、本発明に係る真空処理装置の実施の形態の吹出口に関連する構成を模式的に示す縦断面図である。
冷却ガス配管34aは、搬送チャンバー1の天井を貫通して固定されている。冷却ガス配管34aの吹出口22b〜25bは、搬送アーム19のフォーク21,21が載置して一時停止させたシリコン基板26の中央部分に、上方から冷却ガスを吹出す位置に固定されている。冷却ガス配管34aの吹出口22b〜25bに近い部分には、シリコン基板26を検出する検出器22c〜25cが付設され、フォーク21,21が載置して一時停止させたシリコン基板26を、反射型フォトインタラプタ方式で検出する。
【0042】
搬送チャンバー1の外部の冷却ガス配管34aの中途に、流量制御バルブ30が設けられている。
冷却ガスを排気する為の排気口31aが、搬送チャンバー1の底を貫通して設けてあり、排気口31aには、搬送チャンバー1の外部の配管35aを介して真空ポンプ32が接続されている。
【0043】
本実施の形態2では、シリコン基板26に上方から冷却ガスを吹出し、搬送チャンバー1の底の排気口31aから排気するので、シリコン基板26の下方に多く存在するパーティクルを散乱させず、搬送チャンバー1内をクリーンに維持できる。
また、シリコン基板26に上方から冷却ガスを吹出すので、下方から吹出す場合のように、シリコン基板26が吹上げられフォーク21,21から落下する虞がない。
更に、吹出口22b〜25bを天井側に設置するので、搬送アーム19の動作の邪魔にならず、吹出口22b〜25bの設置位置を決める際の自由度も大きい。
以上の吹出口22b〜25bに関連する構成はそれぞれ同様であるが、排気口31aについては、吹出口22b〜25bで共用する。
【0044】
更にまた、シリコン基板26を上面側から冷却するように構成してあるため、シリコン基板26の下面側に比べて上面側がより大きく熱収縮し、シリコン基板26には、中央部分の反りを抑えるような応力が働く。フォーク21によって下側から支持されているシリコン基板26は、エッジ部分の下側から温度が低下する為、シリコン基板26と、シリコン基板26上に形成された膜の熱膨張率によっては、シリコン基板26には、熱収縮により中央部が盛り上がる方向の応力が働く。他方、シリコン基板26の中央部分を上面側から冷却した場合、シリコン基板26の中央部分とエッジ部分との温度差が小さくなると共に、シリコン基板26の上面及び下面の温度差によって、シリコン基板26の中央部分の反りを打ち消す方向に応力が働く。従って、より速やか、かつ効果的にシリコン基板26の反りを抑えることが可能である。
【0045】
各吹出口22b〜25bに対応する各検出器22c〜25cの検出信号は、マイクロコンピュータを備えた冷却制御部33に与えられる。冷却制御部33は、与えられた検出信号に基づき、シリコン基板を検出している検出器22c〜25cに対応する流量制御バルブ30を制御して、吹出口22b〜25bから冷却ガスを吹出させる。冷却制御部33は、その際、搬送アーム19がシリコン基板を搬出して来たプロセスチャンバー2〜5の処理内容に応じて、冷却ガスを吹出させる流量、時間を調節する。例えば、処理内容が高温での処理であれば、冷却ガスの流量を増加させ、冷却ガスの吹出し時間を長くする。
本実施の形態2のその他の構成及び動作は、上述した実施の形態1の動作及び構成と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
尚、上述した実施の形態1,2では、冷却ガスによりシリコン基板を冷却する構成であるが、吹出口から吹出させるガスは冷却ガスに限定されない。フォーク21で搬送することで、シリコン基板の中心部と比較して、シリコン基板のエッジ側の温度が低下した場合には、エッジ側にのみホットガスを供給して、シリコン基板内の温度均一性を保つことができる。これにより、次工程プロセス(冷却も含む)開始時のシリコン基板の状態を安定させることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 搬送チャンバー
2〜5 プロセスチャンバー
6〜8 ロードロックチャンバー
9〜18 ゲートバルブ
19 搬送アーム(搬送機構)
20 アーム
21 フォーク
22〜25,22b〜25b 吹出口
22a〜25a,22c〜25c 検出器
26 シリコン基板
30 流量制御バルブ
31,31a 排気口
32 真空ポンプ
33 冷却制御部
34,34a 冷却ガス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気でシリコン基板上に回路を形成する複数の処理を、それぞれ順次実行する為の複数のプロセスチャンバーと、該複数のプロセスチャンバーに隣接し、前記シリコン基板をプロセスチャンバー内へ搬入しプロセスチャンバー内から搬出する搬送機構を有する搬送チャンバーとを備える真空処理装置において、
ガスを吹き出す吹出口と、前記搬送チャンバー内のガスを外部へ排気する排気口とを前記搬送チャンバー内に備え、前記搬送機構がプロセスチャンバーから搬出し停止させたシリコン基板の中央部分へ前記吹出口からガスを吹出させるように構成してあることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記吹出口は、前記シリコン基板へガスを上方から吹出させるように設けてあり、前記排気口は、前記搬送チャンバーの下部に設けてある請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
シリコン基板を検出する検出器を更に備え、該検出器がシリコン基板を検出している場合に、前記吹出口からガスを吹出させるように構成してある請求項1又は2記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記吹出口を前記プロセスチャンバーのそれぞれに対応させて備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記検出器を前記吹出口毎に備え、該検出器がシリコン基板を検出している場合に、該検出器を備える吹出口からガスを吹出させるように構成してある請求項3又は4記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記シリコン基板を搬出したプロセスチャンバーの処理内容に応じて、前記吹出口からガスを吹出させる流量及び/又は時間を調節するように構成してある請求項4又は5記載の真空処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−79835(P2012−79835A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222090(P2010−222090)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】