説明

磁気メモリ素子及びその情報の書き込み及び読み取り方法

【課題】磁気メモリ素子及びその情報の書き込み及び読み取り方法を提供する。
【解決手段】反強磁性層上に形成された固定層、情報保存層及び自由層を備え、情報保存層は、SAF構造で形成される磁気メモリ素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気メモリ素子に係り、特にMR(Magnetoresistance)の減少を最小化し、かつ臨界電流密度(Jc)を低めることができる構造の磁気メモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
情報産業が発達し、大容量の情報処理が要求されるにつれて、高容量の情報を保存できるデータ記録媒体に関する需要が持続的に増加している。需要の増加によって、データ保存速度が速く、かつ小型の情報記録媒体に関する研究が進められており、結果的に多様な種類の情報保存装置が開発された。
【0003】
情報保存装置は、揮発性の情報保存装置と不揮発性の情報保存装置とに大別される。揮発性の情報保存装置の場合、電源が遮断されれば、記録された情報がいずれも除去されるが、情報記録及び再生速度が速いという長所がある。不揮発性の情報保存装置の場合、電源が遮断されても記録された情報が除去されない。
【0004】
揮発性の情報保存装置としては、代表的なものとしてDRAM(Dynamic Random Access Memory)が挙げられる。そして、不揮発性の情報保存装置は、HDD(Hard Disk Drive)及びRAM(Random Access Memory)などがある。不揮発性の情報保存装置の一つの種類である磁気メモリ素子(Magnetic Random Access Memory:MRAM)は、スピン依存伝導現象に基づいた磁気抵抗効果を利用したメモリ素子である。
【0005】
従来の磁気メモリ素子は、ビットライン、ワードラインに流れる電流により発生する磁場を利用して、メモリセルの自由層の磁化方向をスイッチングさせる方式を使用した。しかし、かかる方式は、次のような問題点がある。第1に、高密度のメモリ素子の具現のために単位セルのサイズを縮小させる場合、自由層の保磁力が増加するため、スイッチングフィールドが増加し、したがって、印加電流の大きさが大きくなければならないという問題がある。第2に、メモリアレイ構造で多くのメモリセルを含むため、所望しないセルの自由層もスイッチングが発生する可能性がある。したがって、磁場によるスイッチング方式を利用した磁気メモリ素子は、選択性及び高密度化が困難であるという問題点がある。
【0006】
これに対し、スピントランスファトルク(Spin Transfer Torque:STT)現象を利用した磁気メモリ素子は、集積度、選択性、高い書き込み電流の問題点を解決できるので、最近多くの研究が進められている。この方式は、一方向にスピンが分極化された電流を磁気メモリ素子に流して、電子のスピン伝達を使用して磁気メモリ素子の自由層を所望の方向にスイッチングする方式である。この方式は、セルサイズが小さくなるほど、要求電流が小さくなるので、高密度化に有利である。しかし、STT現象を利用した磁気メモリ素子は、スイッチングに必要な臨界電流密度が商用化するにはまだ高いため、臨界電流を低めるための研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、MR値の減少を最小化でき、かつ臨界電流密度を減少させる新たな構造の磁気メモリ素子及びその情報の書き込み及び読み取り方法を提供するところにある。
【0008】
本発明の他の目的は、磁気メモリ素子において、固定層、情報保存層及び自由層を備える磁気メモリ素子を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、本発明の一側面において、前記反強磁性層により磁化方向が固定された固定層と、前記固定層上に形成された第1非磁性層と、前記第1非磁性層上に形成された情報保存層と、前記情報保存層上に形成された第2非磁性層と、前記第2非磁性層上に形成されたものであって、磁化方向が変更可能な自由層と、を備える。
【0010】
本発明の一側面において、前記情報保存層は、SAF(Synthetic Antiferromagnetic)構造で形成される。
【0011】
本発明の一側面において、前記固定層は、SAF構造で形成される。
【0012】
本発明の一側面において、前記自由層は、SAF構造で形成される。
【0013】
本発明の一側面において、前記SAF構造は、強磁性層、中間層及び強磁性層を備える。
【0014】
本発明の一側面において、前記中間層は、Ru,CrまたはCuで形成される。
【0015】
本発明の一側面において、前記第1及び第2非磁性層は、MgOを含んで形成される。
【0016】
本発明の一側面において、前記反強磁性層は、スイッチ構造体を備える下部構造体上に形成される。
【0017】
本発明の一側面において、前記自由層上に順次に形成されたビットライン、層間絶縁膜及び書き込みラインをさらに含む。
【0018】
本発明の一側面において、前記自由層上に形成されたものであって、磁化方向が相異なる少なくとも二つのドメインを含む磁性層をさらに備える。
【0019】
本発明の実施形態では、固定層、情報保存層及び自由層を備える磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法において、前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と逆方向に設定した後、前記情報保存層に情報を書き込み、前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と同方向に設定した後、前記情報保存層から情報を読み取る磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法を提供する。
【0020】
本発明の一側面において、前記自由層上に形成された書き込みラインをさらに備え、前記書き込みラインに電流を印加して発生した磁場により、前記自由層の磁化方向を変更する。
【0021】
本発明の一側面において、前記自由層上に形成されたものであって、磁化方向が相異なる少なくとも二つのドメインを含む磁性層をさらに備え、前記磁性層のドメイン障壁を移動させた後、前記自由層の磁化方向を変更する。
【0022】
本発明の実施形態では、固定層、SAF構造の情報保存層及び自由層を備える磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法において、前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と同方向に設定した後、前記情報保存層に情報を書き込み、前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と逆方向に設定した後、前記情報保存層から情報を読み取る磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態による磁気メモリ素子は、自由層の磁化方向を固定層の磁化方向と同一または逆方向に調節することによって、情報保存層に/から情報を書き込み/読み取り、この過程での臨界電流密度を従来技術による磁気メモリ素子に比べて大きく減少させる。本発明の実施形態によれば、自由層の磁化方向を変更して情報の保存及び再生動作を実施することによって、MR値の減少を最小化し、かつ臨界電流密度を大きく低めることができ、情報保存層をSAF構造で形成することによって、外部磁場に対して安定した磁気メモリ素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態による磁気メモリ素子の構造を示す図面である。
【図2】本発明の実施形態による磁気メモリ素子の構造を示す図面である。
【図3A】本発明の実施形態による磁気メモリ素子の駆動方法を示す図面である。
【図3B】本発明の実施形態による磁気メモリ素子の駆動方法を示す図面である。
【図4】固定層及び情報保存層をSAF構造で形成した磁気メモリ素子の構造を示す図面である。
【図5】情報保存層及び自由層をSAF構造で形成した磁気メモリ素子の構造を示す図面である。
【図6】固定層、情報保存層及び自由層をSAF構造で形成した磁気メモリ素子の構造を示す図面である。
【図7】本発明の具現例による磁気メモリ素子を示す図面である。
【図8】本発明の具現例による磁気メモリ素子を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施形態による磁気メモリ素子について詳細に説明する。参考までに、図面に示した各層の厚さ及び幅は、説明のために多少誇張されたことを銘記せねばならない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による磁気メモリ素子を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施形態による磁気メモリ素子は、反強磁性層11上に形成された固定層12、第1非磁性層13及び情報保存層14が形成されている。そして、情報保存層14上には、順次に形成された第2非磁性層15及び自由層16が形成されている。
【0028】
本発明の実施形態による磁気メモリ素子の各層について記載すれば、次の通りである。反強磁性層11は、主にMnを含む合金を使用して形成され、例えばIrMn,FeMn,NiMn合金などを含んで形成される。反強磁性層11は、スイッチング素子またはスイッチング素子と連結された電極上に形成される。スイッチング素子は、例えばトランジスタ構造体でありうる。固定層12は、反強磁性層11により磁化方向が一方向に固定されたものであって、Ni,CoまたはFeを含む強磁性物質で形成され、例えばNiFe,CoFe,NiFeB,CoFeB,NiFeSiBまたはCoFeSiBなどで形成される。第1非磁性層13及び第2非磁性層15は、MgOで形成される。情報保存層14及び自由層16は、磁化方向が変更可能なものであって、Ni,CoまたはFeを含む強磁性物質で形成され、例えばNiFe,CoFe,NiFeB,CoFeB,NiFeSiBまたはCoFeSiBなどで形成される。
【0029】
図1に示した本発明の実施形態による磁気メモリ素子の情報の書き込み方法及び読み取り方法について、図3Aを参照して詳細に説明する。
【0030】
情報の書き込み方法(write)を説明すれば、次の通りである。まず、自由層16の磁化方向を固定層12の磁化方向と逆方向に整列させるために、外部から磁場または電界を印加する。この場合、固定層12は、第1方向の磁化方向を有し、自由層16は、第2方向の磁化方向を有する。そして、固定層12または自由層16の方向から情報保存層14にスピン分極化された電子を一方向に印加する。固定層12の方向からスピン分極化された電子を印加する場合、情報保存層14の磁化方向は、第1方向に整列され、自由層16の方向からスピン分極化された電子を印加する場合、情報保存層14の磁化方向は、第2方向に整列される。図3Aでは、自由層16の方向からスピン分極化された電子を印加する場合の情報保存層14のスピン方向を示したものである。結果的に、これによって、情報保存層14に第1方向または第2方向の情報が保存される。かかる情報の書き込み過程によって、書き込み動作に必要な臨界電流密度を低めることができる。
【0031】
次いで、情報の読み取り方法(read)を説明すれば、次の通りである。まず、自由層16の磁化方向を固定層12の磁化方向と同方向に整列させる。そして、情報保存層14に電流を流して情報保存層14の抵抗値を測定する。情報保存層14の磁化方向が固定層12及び自由層16の磁化方向と同じ場合、相対的に低い抵抗値が測定される。そして、情報保存層14の磁化方向が固定層12及び自由層16の磁化方向と逆である場合には、相対的に高い抵抗値が測定される。かかる方法により、情報保存層14の磁化方向、すなわち保存されたデータを読み取ることができる。
【0032】
結果的に、本発明の実施形態による磁気メモリ素子は、固定層12上に情報保存層14及び自由層16を備えることによって、自由層16の磁化方向を変更して情報の保存及び再生動作を実施することによって、MR値の減少を最小化し、かつ臨界電流密度を大きく低めることができるという長所がある。
【0033】
図2は、本発明の実施形態による磁気メモリ素子において、情報保存層14をSAF(Synthetic Antiferromagnetic)構造で形成させた構造を示す断面図である。
【0034】
図2に示すように、反強磁性層11上に固定層12、第1非磁性層13及び情報保存層14が形成されている。そして、情報保存層14上には、順次に形成された第2非磁性層15及び自由層16が形成されている。ここで、情報保存層14は、SAF構造で形成される。すなわち、情報保存層14は、第1磁性層14a、中間層14b及び第2磁性層14cが順次に形成された構造でありうる。情報保存層14をSAF構造で形成することによって、磁場に対して安定した構造を維持できる。
【0035】
図2に示した本発明の実施形態による磁気メモリ素子の情報の書き込み方法及び読み取り方法について、図3Bを参照して説明する。
【0036】
情報の書き込み方法を説明すれば、次の通りである。まず、自由層16の磁化方向を固定層12の磁化方向と同様に第1方向に整列させる。そして、固定層12または自由層16の方向から情報保存層14にスピン分極化された電子を印加する。固定層12の方向から情報保存層14にスピン分極化された電子を印加する場合、情報保存層14の第1磁性層14aは、第1方向に磁化され、第2磁性層14cは、第2方向に磁化される。そして、自由層16の方向から情報保存層14にスピン分極化された電子を印加する場合、情報保存層の第2磁性層14cは、第1方向に磁化され、第1磁性層14aは、第2方向に磁化される。図3Bでは、自由層16の方向から情報保存層14にスピン分極化された電子を印加した場合を示す図面である。
【0037】
次いで、情報の読み取り方法を説明すれば、次の通りである。まず、自由層16の磁化方向を固定層12の磁化方向と逆方向に整列させる。例えば、自由層16の磁化方向を第1方向に整列させ、固定層12の磁化方向を第2方向に整列させる。そして、情報保存層14に電流を流して抵抗値を測定する。例えば、自由層16及び第2磁性層14cの磁化方向がいずれも第1方向と同じ場合、相対的に低い抵抗値が測定される。このとき、固定層12及び第1磁性層14aの磁化方向も同じ方向となるので、固定層12と第1磁性層14aとの間でも相対的に低い抵抗値が測定される。しかし、自由層16及び第2磁性層14cの磁化方向と逆である場合と、固定層12及び第1磁性層14aの磁化方向が逆である場合には、相対的に高い抵抗値が測定される。かかる方法により、情報保存層14の磁化方向、すなわち保存されたデータを読み取ることができる。
【0038】
結果的に、本発明の実施形態による磁気メモリ素子は、固定層12上に情報保存層14及び自由層16を備えることによって、自由層の磁化方向を変更して情報の保存及び再生動作を実施することによって、MR値の減少を最小化し、かつ臨界電流密度を大きく低めることができる。
【0039】
ここで、情報保存層14だけでなく、固定層12または自由層16もSAF構造で形成できる。
【0040】
図4は、情報保存層14と固定層12とをSAF構造で形成した構造を示した。図4に示すように、反強磁性層11上にSAF構造で形成された固定層12、固定層12上に形成された第1非磁性層13、第1非磁性層13上にSAF構造で形成された情報保存層14、情報保存層14上に第2非磁性層15及び自由層16が形成されている。固定層12は、第1固定磁性層12a、中間層12b及び第2固定磁性層12cを備え、第1固定磁性層12a及び第2固定磁性層12cの磁化方向は、互いに逆方向に維持される。
【0041】
図5は、情報保存層14と自由層16とをSAF構造で形成した構造を示した。図5に示すように、反強磁性層11上に固定層12が形成されており、固定層12上に形成された第1非磁性層13、第1非磁性層13上にSAF構造で形成された情報保存層14、情報保存層14上に第2非磁性層15及びSAF構造で形成された自由層16が形成されている。ここで、自由層16は、第1自由磁性層16a、中間層16b及び第2自由磁性層16cを備え、第1自由磁性層16a及び第2自由磁性層16cの磁化方向は、互いに逆方向に維持される。
【0042】
図6は、固定層12、情報保存層14及び自由層16をSAF構造で形成した構造を示した。図6に示すように、反強磁性層11上にSAF構造の固定層12が形成されており、固定層12上に形成された第1非磁性層13、第1非磁性層13上にSAF構造で形成された情報保存層14、情報保存層14上に第2非磁性層15及びSAF構造で形成された自由層16が形成されている。
【0043】
情報保存層14をSAF構造で形成する場合、外部磁場に対して磁化方向が安定化される。そして、固定層12及び情報保存層14をSAF構造で形成する場合、漏れフィールドを減少させて自由層16の制御を容易にすることができる。固定層12及び情報保存層14の場合、ネットモーメントが相殺されるように中間層12b,14bの両側の磁性層の厚さを同等に維持できる。自由層16もSAF構造で形成する場合、保磁力Hcを制御できる。自由層16の場合、ネットモーメントの存在により外部磁場に反応できるように、中間層16bの両側の磁性層の厚さを異なって形成できる。
【0044】
各層の物質を説明すれば、次の通りである。反強磁性層11は、主にMnを含む合金を使用して形成され、例えばIrMn,FeMn,NiMn合金などを含んで形成される。そして、反強磁性層11は、スイッチング素子またはスイッチング素子と連結された電極上に形成される。スイッチング素子は、例えばトランジスタ構造体でありうる。固定層12は、反強磁性層11により磁化方向が一方向に固定されたものであって、Ni,CoまたはFeを含む強磁性物質で形成され、例えばNiFe,CoFe,NiFeB,CoFeB,NiFeSiBまたはCoFeSiBなどで形成される。自由層16は、磁化方向が変更可能なものであって、NiFeまたはCoFeなどの強磁性物質で形成される。固定層12の第1固定磁性層12a、第2固定磁性層12c、情報保存層14の第1磁性層14a及び第2磁性層14c、自由層16の第1自由磁性層16a及び第2自由磁性層16cは、Ni,CoまたはFeを含む強磁性物質で形成され、例えばNiFe,CoFe,NiFeB,CoFeB,NiFeSiBまたはCoFeSiBなどで形成される。そして、中間層12b,14b,16bは、Ru,CrまたはCuを含んで形成される。
【0045】
図1及び図2に示した本発明の実施形態による磁気メモリ素子の自由層16の磁化方向を変える方法について説明すれば、次の通りである。
【0046】
第1の方法は、自由層16上に書き込みラインを形成して、書き込みラインに電流を流して書き込みラインで発生する磁場を利用して自由層16の磁化方向を調節するものである。ここで、自由層16は、外部磁場により磁化方向を変えるほどの低い保磁力Hcを有させる。情報保存層14は、自由層16より高い保磁力を有させる。書き込みラインを備える磁気メモリ素子の構造を図7に示した。
【0047】
図7は、本発明の具現例による磁気メモリ素子の構造を示す断面図である。
【0048】
図7に示すように、ソース21a及びドレイン21bを備える基板20上には、ゲート絶縁層22及びゲート電極23を備えるトランジスタ構造体が形成されている。トランジスタ構造体上には、第1層間絶縁膜25が形成されており、ドレイン21bに対応する第1層間絶縁膜25を開口し、コンタクトプラグ24が形成されている。コンタクトプラグ24上には、下部電極26が形成されており、下部電極26上には、反強磁性層11、固定層12、第1非磁性層13、情報保存層14、第2非磁性層15及び自由層16の多層膜が順次に形成されている。それらの多層膜の側部には、第2層間絶縁膜27が形成されている。自由層16上には、ビットライン28が形成されており、ビットライン28上には、第3層間絶縁膜29が形成されている。選択的に、自由層16とビットライン28との間には、自由層16を保護するための保護層をさらに備える。自由層16に対応する第3層間絶縁膜29上には、書き込みライン30が形成されている。ここで、固定層12、情報保存層14及び自由層16は、SAF構造で形成される。書き込みライン30に流れる電流の方向によって磁場が発生し、発生した磁場により自由層16の磁化方向が変更しうる。参考までに、情報保存層14をSAF構造で形成させ、自由層16は単層構造で形成した場合、情報保存層14の形成時、情報保存層14の磁化容易軸をビットライン28の方向と30ないし60°の角を有するように形成することによって、自由層16の磁化方向を変更させる場合、情報保存層14の磁化方向に及ぼす影響を減少させる。
自由層16の磁化方向を変える第2の方法は、ドメイン障壁移動現象を利用するものである。これは、自由層16上に相異なる磁化方向を有する磁性層を形成して、所望の磁化方向を有するドメインを自由層16上に移動させた後、自由層16内に所望の磁化方向を有するドメインを移動させることである。相異なる磁化方向を有する磁性層が備えられた磁気メモリ素子の構造を図8に示した。
【0049】
図8は、本発明の具現例による磁気メモリ素子の構造を示す断面図である。
【0050】
図8に示すように、ソース31a及びドレイン31bを備える基板30が設けられており、基板30上には、ソース31a及びドレイン31bと接触して、ゲート絶縁層32及びゲート電極層33が形成されている。かかるトランジスタ構造体上には、第1層間絶縁膜35が形成されており、ドレイン31bに対応する第1層間絶縁膜35を開口するコンタクトプラグ34が形成されている。コンタクトプラグ34上には、下部電極36が形成されており、下部電極36上には、反強磁性層11、固定層12、第1非磁性層13、情報保存層14、第2非磁性層15及び自由層16の多層膜が順次に形成されている。それらの多層膜の側部には、第2層間絶縁膜37が形成されている。自由層16及び第2層間絶縁膜37上には、相異なる磁化方向を有するドメインを含む磁性層38が形成されている。ここで、固定層12、情報保存層14及び自由層16は、SAF構造で形成される。
磁性層38は、互いに逆方向の磁化方向を有するドメインを含んでおり、ドメイン間には、ドメイン障壁Wが存在する。ドメイン障壁Wは、電子の方向、すなわち電流の逆方向に移動する特性がある。例えば、自由層16に対して右側方向の磁化方向を有するように磁化させようとする場合を説明すれば、次の通りである。まず、磁性層38に電流を印加して、ドメイン障壁Wを自由層16上の右側方向に移動させる。したがって、右側方向の磁化方向を有するドメインを自由層16上に位置させる。そして、磁性層38の左側及び自由層16に電流を印加して、磁性層38のドメインを自由層16に移動させる。逆に、自由層16の左側方向の磁化方向を有するように磁化させようとする場合には、磁性層38に電流を印加して、ドメイン障壁Wを自由層16上の左側方向に移動させる。これによって、左側方向の磁化方向を有するドメインが自由層16上に位置する。そして、磁性層38の右側及び自由層16に電流を印加して、磁性層38のドメインを自由層16に移動させる。
【0051】
前記した説明で多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するというより、望ましい実施形態の例示として解釈されねばならない。例えば、本発明の実施形態による磁気メモリ素子は、別途のバッファ層、下地層及び上地層をさらに備え、これは、選択的なものである。したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態により決まるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想により決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、情報記録媒体関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
11 反強磁性層
12 固定層
13 第1非磁性層
14 情報保存層
15 第2非磁性層
16 自由層
20,30 基板
21a,31a ソース
21b,31b ドレイン
22,32 ゲート絶縁層
23,33 ゲート電極
24,34 コンタクトプラグ
25,27,29,35,37 層間絶縁膜
28 ビットライン
30 書き込みライン
38 ドメインを含む磁性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気メモリ素子において、
反強磁性層、固定層、情報保存層及び自由層を備えたことを特徴とする磁気メモリ素子。
【請求項2】
前記反強磁性層により磁化方向が固定された固定層と、
前記固定層上に形成された第1非磁性層と、
前記第1非磁性層上に形成された情報保存層と、
前記情報保存層上に形成された第2非磁性層と、
前記第2非磁性層上に形成されたものであって、磁化方向が変更可能な自由層と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項3】
前記情報保存層は、SAF構造で形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項4】
前記固定層は、SAF構造で形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項5】
前記自由層は、SAF構造で形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項6】
前記SAF構造は、強磁性層、中間層及び強磁性層を備えたことを特徴とする請求項3ないし5のうちいずれか一項に記載の磁気メモリ素子。
【請求項7】
前記中間層は、Ru,CrまたはCuで形成されたことを特徴とする請求項6に記載の磁気メモリ素子。
【請求項8】
前記第1及び第2非磁性層は、MgOを含んで形成されたことを特徴とする請求項2に記載の磁気メモリ素子。
【請求項9】
前記反強磁性層は、スイッチ構造体を備えた下部構造体上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項10】
前記自由層上に順次に形成されたビットライン、層間絶縁膜及び書き込みラインをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項11】
前記自由層上に形成されたものであって、磁化方向が相異なる少なくとも二つのドメインを含む磁性層をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリ素子。
【請求項12】
固定層、情報保存層及び自由層を備えた磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法において、
前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と逆方向に設定した後、前記情報保存層に情報を書き込み、
前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と同方向に設定した後、前記情報保存層から情報を読み取る磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項13】
前記自由層上に形成された書き込みラインをさらに備え、
前記書き込みラインに電流を印加して発生した磁場により、前記自由層の磁化方向を変更することを特徴とする請求項12に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項14】
前記自由層上に形成されたものであって、磁化方向が相異なる少なくとも二つのドメインを含む磁性層をさらに備え、
前記磁性層のドメイン障壁を移動させた後、前記自由層の磁化方向を変更することを特徴とする請求項12に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項15】
固定層、SAF構造の情報保存層及び自由層を備える磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法において、
前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と同方向に設定した後、前記情報保存層に情報を書き込み、
前記自由層の磁化方向を前記固定層の磁化方向と逆方向に設定した後、前記情報保存層から情報を読み取る磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項16】
前記自由層上に形成された書き込みラインをさらに備え、
前記書き込みラインに電流を印加して発生した磁場により、前記自由層の磁化方向を変更することを特徴とする請求項15に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項17】
前記自由層上に形成されたものであって、磁化方向が相異なる少なくとも二つのドメインを含む磁性層をさらに備え、
前記磁性層のドメイン障壁を移動させた後、前記自由層の磁化方向を変更することを特徴とする請求項15に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項18】
前記固定層または自由層は、SAF構造で形成されたことを特徴とする請求項15に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。
【請求項19】
前記SAF構造は、強磁性層、中間層及び強磁性層を備えたことを特徴とする請求項18に記載の磁気メモリ素子の情報の書き込み及び読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−253298(P2009−253298A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91137(P2009−91137)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】