説明

磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置

【課題】磁気抵抗効果素子(磁気ヘッド)のコア幅を微細化とすることができる磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置を提供する。
【解決手段】磁気抵抗効果素子10は、下地層11と、反強磁性層12と、ピンド層(固定側磁性層)13と、非磁性中間層14とが順次積層された状態で形成されるとともに、非磁性中間層14の上面に形成された自由側磁性層(フリー層)15の一部には、自発磁化を有する磁性金属30を内部に内包したナノチューブ20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置に関し、特に、磁気記録媒体の読み取り用として使用される磁気抵抗効果素子(磁気ヘッド)のコア幅を狭小化とすることができる磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気再生記録装置には、磁気ヘッド(磁気抵抗効果素子)が広く用いられており、この磁気記録媒体の読み取り用として使用されるこのような磁気ヘッド(磁気抵抗効果素子)では、磁気ヘッドにセンス電流を流すとともに、磁気ヘッドの抵抗変化(電圧の変化)を利用して信号を検出している。
【0003】
[従来の磁気抵抗効果素子の構成]
ここで、従来の磁気抵抗効果素子の構成および概要を説明する。図8は、従来の磁気抵抗効果素子の全体構成を示す概念図を示している。
【0004】
図8に示すように、磁気抵抗効果素子は、下部に設けた下地層1の上部に磁気抵抗効果膜2を積層するとともに、この磁気抵抗効果膜2の上部にマスク3を形成し、このマスク3に対して、電子線描画処理などによりエッチング処理を施すことにより、この磁気抵抗効果素子のコア幅T′を狭小化とする製造を行なっている。
【0005】
ここで、従来では、図8に示す製造工程により製造された磁気抵抗効果素子のコア幅T′は、加工プロセスによる限界などから、この磁気抵抗効果素子のコア幅T′(微細化限界寸法)は、10nm程度となっている。
【0006】
また、このような磁気抵抗効果素子の製造技術に関する従来技術としては、中間層を外部磁界に応答して磁化方向が変化するグラニュラー状の中間層とする磁気抵抗効果素子に関して開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、同様に、磁気抵抗効果素子の製造技術に関する従来技術として、磁気抵抗効果素子を構成する中間層の内部にナノチューブを形成した磁気抵抗効果素子に関して開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2006−157027号公報
【特許文献2】特開2004−221442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、近年では、特に磁気記録媒体が高記録密度化となっているため読み取り精度のさらなる向上が求められているため、これによって、磁気抵抗効果素子のコア幅をより狭小化(微細化)とすることが課題となっている。
【0010】
また、前述した特許文献1の場合には、磁気抵抗効果素子を構成する中間層を外部磁界に応答して磁化方向が変化するグラニュラー状の中間層とすることで、読み取り精度を向上とすることとしているが、依然として磁気抵抗効果素子のコア幅を、近年の高記録密度化に対応した寸法まで微細化(狭小化)できないという問題がある。
【0011】
また、前述した特許文献2の場合には、磁気抵抗効果素子の製造技術の従来技術として、磁気抵抗効果素子を構成する中間層の内部にナノチューブを形成しているため、磁気抵抗効果素子の出力を上げることができるが、中間層の内部にナノチューブを形成することが難かしいうえ、特許文献1と同様に依然として磁気抵抗効果素子のコア幅を、近年の高記録密度化に対応した寸法まで微細化(狭小化)できないという問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、磁気抵抗効果素子(磁気ヘッド)のコア幅をより微細化とすることができる磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示の磁気抵抗効果素子は、自由側磁性層と、固定側磁性層と、自由側磁性層および固定側磁性層との間に挟まれた状態で形成される非磁性中間層とを備え、自由側磁性層の一部には、自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを有し、ナノチューブの形成領域以外は、磁性金属より保磁力が高いハード層で囲われている層として形成されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0014】
開示の磁気抵抗効果素子には、この磁気抵抗効果素子を形成する非磁性中間層の上面に形成される自由側磁性層の一部に自発磁化を有する磁性金属を内包したナノチューブを形成しているので、この磁性金属を内包したナノチューブにより磁気抵抗効果素子のコア幅をより狭小化とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明の磁気抵抗効果素子の各実施例(実施例1及び実施例2)について詳細に説明する。なお、以下に示す実施例1〜実施例2によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
[磁気抵抗効果素子の構成および概要]
先ず、本実施例1に係る磁気抵抗効果素子の構成および概要を説明する。ここで、図1は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子の全体構成を示す概念図を示している。具体的には、磁気抵抗効果素子のウエハのABS面の層構成を拡大した図を示している。
【0017】
また、図2は、図1に示した磁気抵抗効果素子の全体構成を示す平面図を、図3は、同じく、図1に示したナノチューブの外観を説明する斜視図をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示すように、本実施例1において、磁気抵抗効果素子10は、非磁性中間層14の上面に形成された自由側磁性層15にレジストマスク層16を形成するとともに、所定のレジスト処理を行ない、最終的に、非磁性中間層14の上面(自由側磁性層15の位置)に、ハード膜層17を形成し、このハード膜層17の一部(ほぼ中央部)に、円筒状のナノチューブ20を設ける構造としている。
【0019】
すなわち、図1に示すように、磁気抵抗効果素子10は、下から下地層11と、反強磁性層12と、ピンド層(固定側磁性層)13と、非磁性中間層14と、ハード膜層17とが順次積層された状態で形成されている。
【0020】
また、下地層11の下部には、下部電極Pを、ハード膜層17の上部には上部電極Pをそれぞれ電極層として形成している。これら下部電極Pおよび上部電極Pの電源ラインは電源部(図示せず)に接続されている。
【0021】
すなわち、ハード膜層17は、金属層(メタル層)であり、このハード膜層17のほぼ中央部には、磁性金属30を内部に内包したナノチューブ20を設けている。具体的に説明すると、ナノチューブ20の形成領域以外は、このナノチューブ20の内部に設けた磁性金属30より保磁力が高いハード膜層17(非磁性層)として形成している。
【0022】
ここで、ナノチューブ20は、1枚のシートを丸めるように形成された筒状の中空構造体(図2、3)であり、このナノチューブ20を形成する円筒本体部21の内部に磁性金属30を内包した状態で設けている。また、このナノチューブ20の円筒本体部21内に設けられた磁性金属30は、所謂、自発磁化を有する強磁性体であり、本実施例1では、特に磁気特性が強い鉄(Fe)を磁性金属30の材料として使用している。
【0023】
また、同図に示すように、このナノチューブ20の内部に内包した磁性金属30は、ナノチューブ20の上側接合面(図1の上部電極Pとの当接面)から下側接合面(図1の非磁性中間層14との当接面)に貫通(充填形成)するように設けられている。
【0024】
また、ナノチューブ20の円筒本体部21には、非導電性の材料が選定されている。すなわち、本実施例1では、上述したように、ナノチューブ20の内部には自発磁化を有する磁性金属30を内包させ、この磁性金属30は、ナノチューブ20の上側接合面から下側接合面に貫通するように形成し、ナノチューブ20の円筒本体部21を非導電性材料としている。
【0025】
これにより、上述したように、ナノチューブ20の形成領域以外は、非磁性層領域(保持力が高いハード膜層17)であるため、上部電極Pから下部電極Pに向けて流れるセンス電流の狭窄効果が大きくすることができる。すなわち、本実施例1の磁気抵抗効果素子10では、従来の加工プロセスによるコア幅をより狭少化とすることができるとともに、ナノチューブ20を、このナノチューブ20に設けた磁性金属30よりも保持力が高いハード膜層17により挟持する位置に設け、さらに、このナノチューブ20の内部に自発磁化を有する磁性金属30を充填させた状態で内包させることによりセンス電流の通過が良好となる構造としている。
【0026】
[実施例1に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法]
次に、本実施例1による磁気抵抗効果素子10の製造方法を図4および図5を用いて説明する。ここで、図4は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子10の製造工程を示すフローチャートである。また、図5(1)〜(6)は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子10の製造工程を説明する図である。
【0027】
図4に示すように、実施例1に係る磁気抵抗効果素子10の製造工程の場合、反強磁性層形成工程と、ピンド層形成工程と、中間層形成工程と、レジスト形成工程と、パターニング工程と、ナノチューブ形成工程と、レジスト剥離工程と、ハード膜層形成工程と、平坦化工程とが順に行なわれる。
【0028】
すなわち、図4のフローチャートに示すように、先ず、下地層11の上面に反強磁性層12を形成する反強磁性層形成工程を行なう(ステップS1)。
【0029】
具体的に説明すると、図5(1)に示すように、スライダーの母体となるAl203−TiC基板(図示を省略)の上にAl203層(図示は、省略)を介して、NiFe等からなる下部電極Pを形成するとともに、磁気シールド層として下地層11を形成し、この下地層11の上面にライト素子側のサイドシールド(図示は、省略)を所定の厚さ分(例えば、厚さ=10nm)積層し、次に、IrMn等の反強磁性層12を所定の厚さ分(例えば、厚さ=10nm)積層する。
【0030】
次に、ステップS1で形成した反強磁性層12の上面にピンド層(固定側磁性層)13を形成するピンド層形成工程を行なう(ステップS2)。具体的に説明すると、図5(1)に示すように、反強磁性層12の上面にFeCo等からなるピンド層13を所定の厚さ分(例えば、厚さ=3nm)積層する。
【0031】
次に、ステップS2で形成したピンド層13の上面に非磁性中間層14を形成する中間層形成工程を行なう(ステップS3)。具体的に説明すると、図5(1)に示すように、ピンド層13の上面にCu等からなる非磁性中間層14を所定の厚さ分(例えば、厚さ=1nm)成膜する。
【0032】
次に、ステップS3で形成した非磁性中間層14の上面にレジストマスクを形成するレジスト形成工程を行なう(ステップS4)。具体的に説明すると、図5の(1)に示すように、成膜した非磁性中間層14の膜上にレジストを塗布することにより、この非磁性中間層14の上面にレジストマスク層16を形成する。
【0033】
次に、ステップS4で行なったレジスト形成工程の後をパターンニングするパターンニングを行なう(ステップS5)。
【0034】
具体的に説明すると、図5の(1)に示すように、レジストを塗布した塗布面に対して、電子線描画等でパターンニングする。これによりレジストマスク層16で覆われていない非磁性中間層14の一部を露出させることができる。
【0035】
次に、ステップS5で形成したレジストマスク層16の所定の位置にナノチューブ20を形成するナノチューブ形成工程を行なう(ステップS6)。
【0036】
具体的に説明すると、図5の(3)に示すように、露出した非磁性中間層14の上面であって、レジストマスク層16のほぼ中央位置(凹状部)に磁性金属30を内包したナノチューブ20を形成する。
【0037】
同図に示すように、ナノチューブ20の内部に内包した磁性金属30は、ナノチューブ20の上側位置から下側接合面(非磁性中間層14との当接面)に貫通(充填形成)するように設けられる。
【0038】
ここで、ナノチューブ20自体の形成方法は目的に応じて適宜選択可能であり、ナノチューブを単体で形成後に磁性金属を内包させる場合(ナノチューブ20の円筒本体部21内部に、磁性金属30を形成する場合)には、例えば、プラズマCVD法で1W/cm程度の高周波により流量比が所定の数値(メタン:窒素=1:50)である炭素供給ガスで、常圧、300℃でナノチューブ単体を形成し、その後、ナノチューブ20の円筒本体部21の内部に、例えば、Co(コバルト)を通常のスパッタ法でAr(アルゴン)ガスにより充填(3mTorr)させることにより、ナノチューブの内部に磁性金属30を内包させることができる。
【0039】
また、磁性金属30を内包したナノチューブ20を同時形成する場合、真空度を10−3〜10−5Pa程度、希ガスイオン種のアルゴンイオンの加速電圧を0.1〜300keV、平均イオン電流密度を1μA/cm〜10mA/cm程度、イオンビームのスパッタ速度を2nm〜1μm/min程度とする条件下で、室温で1〜10分のイオン照射を行いながら同時に、例えばFe(CO)を気化させて鉄(Fe)を供給する。
【0040】
これにより、円筒型のナノチューブ20の内部にFe(鉄)による磁性金属30を内包したナノチューブ20を成長形成させることができる。ここで、この時に供給するFe(鉄)原子は極微量であり、例えば、原子数比でナノチューブの約5%以下の量とする。
【0041】
なお、このナノチューブ20を構成する円筒本体部21の肉厚寸法や内径寸法などは製造条件で調整可能であり、具体的には、このナノチューブ20の内径寸法、ひいては磁性金属30の直径は最小寸法(例えば、直径=1nm程度)まで微細化することができる。
【0042】
次に、ステップS2〜S3により非磁性中間層14の上面(ナノチューブ20の周囲)に形成したレジストマスク層16を剥離するレジスト剥離工程を行なう(ステップS7)。
【0043】
具体的に説明すると、図5の(4)に示すように、ナノチューブ20の円筒本体部21の外側に位置する余分なレジストマスク層16をレジスト処理やコバルトクロム処理により剥離する。
【0044】
なお、本実施例1では、ナノチューブ20の形成領域以外は、保磁力が高い層(ハード膜層17)としているが、自由側磁性層15(図1)は、単にフリー層として機能させないことから、このナノチューブ20の形成領域以外は、非磁性層で囲まれている層として形成することとしてもよい。
【0045】
次に、ステップS7で形成したナノチューブ20の上面にハード膜を形成するハード膜形成工程を行なう(ステップS8)。具体的に説明すると、図5の(5)に示すように、非磁性中間層14およびステップS7で形成したナノチューブ20の上面に略台形状のハード膜層17を形成する。ハード膜層17は、ナノチューブ20に該当するレジストマスク層16の分だけこのハード膜層17の一部が上方に突出する。
【0046】
次に、ステップS8で形成した略台形状のハード膜層17を平坦化する平坦化工程を行なう(ステップS9)。具体的に説明すると、図5の(6)に示すように、ステップS8で形成した略台形状のハード膜層17を平坦化とすることにより、ナノチューブ20の周囲は略台形部分が平坦化となった平坦化層とすることができ、これによって、磁性金属30を内包したナノチューブ20を有する磁気抵抗効果素子10を製造することができる。なお、最後に、この平坦化されたハード膜層17の上面には磁気抵抗効果素子10の上部側の電極となる上部電極Pを形成する。
【0047】
このように、本実施例1の磁気抵抗効果素子によれば、非磁性中間層14の上面に内部に磁性金属30を内包したナノチューブ20を形成することにより、磁気抵抗効果素子のコア幅Tを、従来技術によるコア幅の幅寸法の狭小化で限界とされていた寸法(直径10nm程度)と比較して、10分の1程度(例えば、直径1nm)まで、この磁気抵抗効果素子のコア幅Tを狭小化とすることができる。
【0048】
また、ナノチューブ20の内部には自発磁化を有する磁性金属30を内包させるとともに、この磁性金属30は、ナノチューブ20の上側接合面から下側接合面に貫通するように形成し、ナノチューブ20の円筒本体部21を非導電性材料としているため、ナノチューブ20の形成領域以外は、非磁性層領域(保持力が高いハード膜層17)であることから、上部電極Pから下部電極Pに向けて流れるセンス電流の狭窄効果を大きくすることができる磁気抵抗効果素子を実現することができる。
【実施例2】
【0049】
[実施例2に係る磁気抵抗効果素子10aの製造方法]
次に、本実施例2による磁気抵抗効果素子10aの製造方法を図6用いて説明する。図6(1)〜(6)は、実施例2に係る磁気抵抗効果素子10aの製造工程を説明する図である。
【0050】
ここで、本実施例2と前述した実施例1との相違は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子10の製造方法では、反強磁性層形成工程と、ピンド層形成工程と、中間層形成工程と、レジスト工程と、パターニング工程と、ナノチューブ形成工程と、レジスト剥離工程と、ハード膜形成工程と、平坦化工程とを順に行なうこととしていが、本実施例2では、磁気抵抗効果素子10aの最後の製造工程で、非磁性中間層14の上面に所定のナノチューブ20を形成することとしている。このため、以下の説明では、実施例1と同様な部分についての詳細な説明は、省略する。
【0051】
具体的に説明すると、図6(1)に示すように、下地層11、反強磁性層12、ピンド層13、非磁性中間層14を順次積層させる工程は、実施例1と同様の工程である。そして、本実施例2では、図6(2)に示すように、下地層11、反強磁性層12、ピンド層13、中間14を順次積層させた後では、非磁性中間層14の上部にナノチューブ20に該当する小径なレジストマスク層16aを形成し、次に、図6(3)に示すように、非磁性中間層14の上面に略台形状のハード膜層17aを形成する。具体的には、ナノチューブ20に該当するレジストマスク層16aの分だけハード膜層17aの一部が上方に突出する。
【0052】
そして、図6(4)に示すように、略台形状に形成したハード膜層17aを平坦化処理し、次に、図6(5)に示すように、平坦化処理されたハード膜層17aのほぼ中央部に位置するナノチューブ20aに該当するレジストマスク層16aを剥離する。
【0053】
そして、最終的に、図6(6)に示すように、レジストマスク層16aが剥離したハード膜層17aの凹状部分に自発磁化を有する磁性金属30を内包させたナノチューブ20aを形成し、さらに、ハード膜層17aの上面に磁気抵抗効果素子10の上部側の電極となる上部電極Pを形成することで磁気抵抗効果素子10aを製造することとしている。
【0054】
本実施例2によれば、磁気抵抗効果素子10aの内部には、自発特性を有する磁性金属30を内部に内包させたナノチューブ20aを形成することができるので、磁気抵抗効果素子10aのコア幅Tを所定の寸法(例えば、1nm程度)の幅寸法まで狭小化とすることができる。
【0055】
また、この磁気抵抗効果素子10aは、実施例1の磁気抵抗効果素子10と同様に、ナノチューブ20aの内部には自発磁化を有する磁性金属30を内包させるとともに、この磁性金属30は、ナノチューブ20aの上側接合面から下側接合面に貫通するように形成し、ナノチューブ20aの円筒本体部21を非導電性材料としているため、ナノチューブ20aの形成領域以外は、非磁性層領域(保持力が高いハード膜層17a)であることから、上部電極Pから下部電極Pに向けて流れるセンス電流の狭窄効果を大きくすることができる。
【0056】
(磁気再生記録装置の概要)
次に、図7を用いて、本実施例1に係る磁気抵抗効果素子を適用可能な磁気再生記録装置40の概要について簡単に説明する。図7は、磁気再生記録装置40の概要を説明する図である。
【0057】
図7に示すように、磁気再生記録装置40は収容空間を有する箱形のベース42を形成したハウジング41を備える。ハウジング41の内部には、記憶媒体である磁気ディスク43が収容され、この磁気ディスク43はスピンドルモータ43aの回転軸に装着され所定の方向に回転する。
【0058】
また、キャリッジ44は複数のキャリッジアーム44aとキャリッジブロック45とに連結され、このキャリッジブロック45は、垂直方向に延びる支軸46に回転自在に連結される。
【0059】
個々のキャリッジアーム44aの先端にはヘッドサスペンション47が取り付けられ、このヘッドサスペンション47の先端部には、磁気ヘッド(磁気抵抗効果素子)48が搭載される。
【0060】
キャリッジブロック45には、ボイスコイルモータ(VCM)49が接続され、このVCM49によりキャリッジブロック45は支軸46回りで回転することができ、このキャリッジブロック45の回転に基づきキャリッジアーム44aが揺動する。これにより、磁気ヘッド48は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることにより、目標の記録トラックに対して位置決めおよびデータの読み取りを行なうことができる。
【0061】
そして、この磁気再生記録装置40の磁気ヘッド48には、上述した実施例1、2で示した内部に磁気特性が強く自発磁化を有する磁性金属30(図5、6)を内包したナノチューブ20、20aを有する磁気抵抗効果素が使用されているため、この磁気抵抗効果素子によるコア幅の狭小化にともなう読み取り精度の向上を図ることができる。
【0062】
(他の実施例)
さて、これまで本発明の実施例1及び実施例2について説明したが、本発明の磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置は、上述した実施例1、2以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において、種々の異なる実施例にて実施することもできる。
【0063】
すなわち、上述した、本実施例1、2では、ナノチューブ20の内部に内包される磁性金属30に使用される材料は、特に、自発磁化を有する金属材料である鉄(Fe)が選定されているが、この鉄(Fe)以外にもコバルト(Co)、ニッケル(Ni)から選定される少なくとも一種類の元素を含むこととしてもよい。また、磁気特性が強い金属材料である鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の金属材料のうちの少なくとも一種類の元素が混入される金属としてもよい。
【0064】
以上の実施例1、2を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0065】
(付記1)記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気抵抗効果素子であって、
自由側磁性層と、固定側磁性層と、自由側磁性層および固定側磁性層との間に挟まれた状態で形成される非磁性中間層とを備え、
前記自由側磁性層の一部には、自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを有し、
前記ナノチューブの形成領域以外は、非磁性層で囲まれている層または、前記磁性金属より保磁力が高いハード層で囲われている層として形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【0066】
(付記2)前記ナノチューブの内部に内包した磁性金属は、当該ナノチューブの上側接合面から下側接合面に貫通するように形成されることを特徴とする付記1に記載の磁気抵抗効果素子。
【0067】
(付記3)前記磁性金属は、自発磁化を有する金属材料である鉄、コバルト、ニッケルから選定される少なくとも一種類の元素を含むことを特徴とする付記1または2に記載の磁気抵抗効果素子。
【0068】
(付記4)前記ナノチューブには、非導電性の材料が選定されることを特徴とする付記1または2に記載の磁気抵抗効果素子。
【0069】
(付記5)記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気ヘッドの製造方法であって、
下地層の上面に反強磁性層を形成する反強磁性層形成工程と、
前記反強磁性層の上面に固定側磁性層を形成する固定側磁性層形成工程と、
前記固定側磁性層の上面に中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の上面にレジストマスクを形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト形成工程により形成したレジストマスクを剥離するとともに、前記中間層の上面に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを形成するナノチューブ形成工程と、
前記ナノチューブ形成工程により形成した前記ナノチューブの形成領域以外に、前記磁性金属より保磁力が高いハード層を形成するハード層形成工程と、
を含むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【0070】
(付記6)記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気ヘッドの製造方法であって、
下地層の上面に反強磁性層を形成する反強磁性層形成工程と、
前記反強磁性層の上面に固定側磁性層を形成する固定側磁性層形成工程と、
前記固定側磁性層の上面に中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の上面にレジストマスクを形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト形成工程により形成したレジストマスクの上面に非磁性層であるハード層を形成するハード層形成工程と、
前記ハード層形成工程により形成したハード層のほぼ中央位置に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを形成するナノチューブ形成工程と、
を含むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【0071】
(付記7)磁気抵抗効果素子により磁気記録媒体からの情報を読み出す磁気再生記録装置であって、
前記磁気抵抗効果素子は、
自由側磁性層と、固定側磁性層と、自由側磁性層および固定側磁性層との間に挟まれた状態で形成される非磁性中間層と、
前記自由側磁性層の一部に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブと、前記ナノチューブの形成領域以外に形成した非磁性層で囲まれている層または、前記磁性金属より保磁力が高いハード層とを備えることを特徴とする磁気再生記録装置。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置に有用であり、特に、磁気抵抗効果素子(磁気ヘッド)のコア幅を微細化とすることができる磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドの製造方法及び磁気再生記録装置に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例1に係る磁気抵抗効果素子の全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示した磁気抵抗効果素子の全体構成を示す平面図である。
【図3】図1に示したナノチューブの外観を説明する斜視図である。
【図4】実施例1に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を説明する説明図である。
【図6】実施例2に係る磁気抵抗効果素子の製造工程を説明する説明図である。
【図7】磁気再生記録装置の概要を説明する図である。
【図8】従来の磁気抵抗効果素子の全体構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0074】
1、11 下地層
2 磁気抵抗効果膜
3 マスク
10、10a 磁気抵抗効果素子
12 反強磁性層
13 ピンド層
14 非磁性中間層
15 自由側磁性層
16、16a レジストマスク層
17、17a ハード膜層
20、20a ナノチューブ
21 円筒本体部
30 磁性金属
下部電極
上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気抵抗効果素子であって、
自由側磁性層と、固定側磁性層と、自由側磁性層および固定側磁性層との間に挟まれた状態で形成される非磁性中間層とを備え、
前記自由側磁性層の一部には、自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを有し、
前記ナノチューブの形成領域以外は、非磁性層で囲まれている層または、前記磁性金属より保磁力が高いハード層で囲われている層として形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記ナノチューブの内部に内包した磁性金属は、当該ナノチューブの上側接合面から下側接合面に貫通するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記磁性金属は、自発磁化を有する金属材料である鉄、コバルト、ニッケルから選定される少なくとも一種類の元素を含むことを特徴とする請求項1、2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記ナノチューブには、非導電性の材料が選定されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気ヘッドの製造方法であって、
下地層の上面に反強磁性層を形成する反強磁性層形成工程と、
前記反強磁性層の上面に固定側磁性層を形成する固定側磁性層形成工程と、
前記固定側磁性層の上面に中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の上面にレジストマスクを形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト形成工程により形成したレジストマスクを剥離するとともに、前記中間層の上面に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを形成するナノチューブ形成工程と、
前記ナノチューブ形成工程により形成した前記ナノチューブの形成領域以外に、前記磁性金属より保磁力が高いハード層を形成するハード層形成工程と、
を含むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】
記録媒体からの読み取り信号の再生を行なう磁気ヘッドの製造方法であって、
下地層の上面に反強磁性層を形成する反強磁性層形成工程と、
前記反強磁性層の上面に固定側磁性層を形成する固定側磁性層形成工程と、
前記固定側磁性層の上面に中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の上面にレジストマスクを形成するレジスト形成工程と、
前記レジスト形成工程により形成したレジストマスクの上面に非磁性層であるハード層を形成するハード層形成工程と、
前記ハード層形成工程により形成したハード層のほぼ中央位置に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブを形成するナノチューブ形成工程と、
を含むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】
磁気抵抗効果素子により磁気記録媒体からの情報を読み出す磁気再生記録装置であって、
前記磁気抵抗効果素子は、
自由側磁性層と、固定側磁性層と、自由側磁性層および固定側磁性層との間に挟まれた状態で形成される非磁性中間層と、
前記自由側磁性層の一部に自発磁化を有する磁性金属を内部に内包したナノチューブと、前記ナノチューブの形成領域以外に形成した非磁性層で囲まれている層または、前記磁性金属より保磁力が高いハード層とを備えることを特徴とする磁気再生記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−129105(P2010−129105A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300189(P2008−300189)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】