説明

磁気抵抗効果素子

【課題】面積抵抗RAの大幅な増大を招くことなく、高いMR変化率を有する磁気抵抗効果素子を製造できる方法を提供する。
【解決手段】磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層は膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含み、前記結晶粒の一端の面内方向位置を0とし、前記結晶粒の他端に隣接する粒界の面内方向位置を100としたとき、前記電流パスは面内方向位置が20以上80以下の範囲内にある領域上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直方向にセンス電流を流す構造の磁気抵抗効果素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto-Resistive Effect:GMR)の発見により、磁気デバイス、特に磁気ヘッドの性能が飛躍的に向上している。特に、スピンバルブ膜(Spin-Valve:SV膜)の磁気ヘッドやMRAM(Magnetic Random Access Memory)などへの適用は、磁気デバイス分野に大きな技術的進歩をもたらした。
【0003】
「スピンバルブ膜」とは、二つの強磁性層の間に非磁性金属スペーサ層を挟んだ構造を有し、一方の強磁性層(「ピン層」や「磁化固着層」などと称される)の磁化を反強磁性層などで固着し、もう一方の強磁性層(「フリー層」や「磁化自由層」などと称される)の磁化を外部磁界に応じて回転するようにした積層膜をいう。スピンバルブ膜では、ピン層とフリー層の磁化方向の相対角度が変化することによって、巨大な磁気抵抗変化が得られる。
【0004】
近年、膜面に対してほぼ垂直方向にセンス電流を通電するCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR素子が、CIP−GMR素子よりも大きなGMR効果を発現することから、注目されている。これらの磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに応用することを考慮した場合、素子抵抗が高くなるとショットノイズおよび高周波応答の点で問題が生じる。素子抵抗に関しては、RA(抵抗×通電面積)で評価するのが妥当である。具体的には、RAは、200Gbpsi(Gigabit per square inch)の記録密度で数百mΩμm2〜1Ωμm2、500Gbpsiの記録密度で500mΩμm2以下であることが必要とされている。
【0005】
このような要求に対して、CPP素子は、磁気デバイスがますます微細化される傾向において、抵抗が低くても大きなMR変化率が得られるポテンシャルを有している。CPP素子およびそれを用いた磁気ヘッドは、200Gbpsi〜1Tbpsi(Terabit per square inch)の記録密度を実現するための有力候補と考えられる。
【0006】
しかし、ピン層/スペーサ層/フリー層(これら三層構造をスピン依存散乱ユニットと呼ぶ)が金属層で形成されているメタルCPP素子は、抵抗変化量が小さく、高密度化に伴う微弱磁界を検知するには不十分であり、実用化は困難である。
【0007】
この問題を解決するために、非磁性スペーサ層として、厚み方向への電流パスを含む酸化物層[NOL(nano-oxide layer)]を用いたCPP素子が提案されている(例えば特許文献1参照)。このようなCPP素子では、電流狭窄[CCP(Current-confined-path)]効果により素子抵抗およびMR変化率ともに増大させることができる。以下、このような素子をCCP−CPP素子という。尚、磁気抵抗効果素子中に酸化物などを主成分とする層を形成する方法は既に提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−208744号公報
【特許文献2】特開2002−76473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メタルCPP素子と比較して、CCP−CPP素子では以下のような改善効果がある。ここでは、メタルCPP素子として、基板/Ta[5nm]/Ru[2nm]/PtMn[15nm]/Co90Fe10[4nm]/Ru[0.9nm]/Co90Fe10[4nm]/Cu[5nm]/Co90Fe10[1nm]/Ni81Fe19[3nm]/Cu[1nm]/Taキャップ層という構造を有するものを作製した。なお、PtMnによりピン層を固着させる規則化熱処理のために、磁場中において270℃、10時間の熱処理を行っている。一方、上記のメタルCPP素子のCuスペーサ層の代わりに、スペーサ層としてAl90Cu10[0.7nm]を自然酸化(Natural Oxidation)することにより形成されたNOLを有するCCP−CPP素子を作製した。これらの素子の面積抵抗RA、面積抵抗変化量ΔRAおよびMR変化率を下記に示す。
【0009】
メタルCPP CCP−CPP
面積抵抗RA 100mΩμm2 370mΩμm2
面積抵抗変化量ΔRA 0.5mΩμm2 5.6mΩμm2
MR変化率 0.5% 1.5%。
【0010】
上記のように、CCP−CPP素子では、MR変化率が向上し、RAも向上しているので、CCP−CPP素子のΔRAはメタルCPP素子よりも約1桁向上している。
【0011】
しかし、上に示したCCP−CPP素子の特性値でも、200Gbpsiさらには500Gbpsiといった高記録密度の媒体からの微弱な磁界信号を検知するには不十分であると予想されている。例えば200Gbpsiで、RAが500mΩμm2のときにMR変化率は少なくとも3%以上であることが必要であるとの試算があり、十分なS/N比を確保することを考慮すると、前記試算値の倍以上の7%以上のMR変化率が必要と考えられる。このような指標を考慮すると、上記のMR変化率の値は、要求仕様の約半分の値であり、実用化は困難である。
【0012】
本発明の目的は、面積抵抗RAの大幅な増大を招くことなく、より大きなMR変化率を有する磁気抵抗効果素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子は、磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層は膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含み、前記結晶粒の一端の面内方向位置を0とし、前記結晶粒の他端に隣接する粒界の面内方向位置を100としたとき、前記電流パスは面内方向位置が20以上80以下の範囲内にある領域上に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様に係る磁気抵抗効果素子は、磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層は膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含み、前記電流パスは前記結晶粒上に形成され、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層に含まれる結晶粒端から3nm以上離れた領域に形成されていることを特徴とする。
【0015】
スペーサ層の下側に位置する磁化自由層または磁化固着層とは、製造段階でスペーサ層の下に形成された磁化自由層または磁化固着層を指す。
【0016】
本発明のさらに他の態様に係る磁気抵抗効果素子は、磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層と前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層とを有する磁気抵抗効果素子において、前記電流パスの結晶配向角度の分散角度が5度以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、面積抵抗RAの大幅な増大を招くことなく、高いMR変化率を有する磁気抵抗効果素子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(a)に本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)の斜視図を示す。図1(a)の磁気抵抗効果素子は、図示しない基板上に形成された、下電極11、下地層12、ピニング層13、ピン層14(下部ピン層14a、磁気結合層14b、上部ピン層14c)、スペーサ層(CCP−NOL)16、フリー層18、キャップ層19、および上電極20を有する。スペーサ層(CCP−NOL)16は、絶縁層22と、絶縁層22を貫通する電流パス21を含む。図1(b)に上部ピン層14c、スペーサ層16、およびフリー層18の断面図を示す。
【0019】
なお、スペーサ層16の下に下部金属層を形成することがあるが、この下部金属層はスペーサ層16の電流パス21の供給源として用いられ、最終的には明確な金属層として残存しないことがありうる。また、スペーサ層16の上に上部金属層を形成することがあるが、この上部金属層も必須というわけではない。そこで、簡略化のために、図1(a)および(b)ではスペーサ層16に対する下部金属層および上部金属層を省略している。
【0020】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)のスペーサ層16のナノ微細構造を、図2(a)を参照して概略的に説明する。図2(a)は下地の磁性層(上部ピン層14c)およびスペーサ層16の部分を拡大して示す断面図である。スペーサ層16は、Al23からなる絶縁層22中にCuからなる電流パス21が形成されたものとして説明する。
【0021】
本発明の実施形態においては、図2(a)に示すように、電流を狭窄するための電流パスが、下地磁性層(ここでは上部ピン層14c)の結晶粒の中央部上に形成されている。また、電流パスは絶縁層となる酸化物、窒化物、酸窒化物から形成される層から比べて著しく酸素、窒素の含有量が少ない領域であり(少なくとも2倍以上の酸素や窒素の含有量の差がある)、一般的には結晶相である。これは、結晶相のほうが抵抗が小さいため、電流パスとして機能しやすいからである。また絶縁層となる酸化物、窒化物、酸窒化物はアモルファスから形成されるAl23もあれば、MgOのような結晶構造を有する場合もある。また、本発明の実施形態において、磁性膜の粒界は結晶粒どうしの界面として定義することができる。結晶粒の最も容易な定義方法として、図2で模式的に示したような凹凸の一つの山を結晶粒と定義できる。つまり凹凸の周期を結晶粒の大きさと定義できる。凹凸はスペーサ層を形成する酸化物と下部磁性層の界面における凹凸で識別することとする。凹凸の凸の頂点部分が結晶粒の中心部分であり、凹の部分が粒界に相当する。この場合には、TEM写真の観察奥行き方向の膜の厚さを結晶格子が鮮明にみえる程度に充分薄くしておく必要がある。
【0022】
さらには、単純な凹凸だけでなく、隣の結晶粒との間で結晶格子の連続性が崩れているところから、結晶粒および粒界を定義することもできる。すなわち、同一結晶粒においては、結晶格子がほぼ連続的に存在しており、粒界においてはその結晶格子の連続性が崩れた界面ということで確認することができる。
【0023】
これら定義に照らし合わせて例として図7を参照すると、例えばポイントP、Qなどが粒界として、PとQの両点に挟まれた領域が一つの結晶粒として定義できることがわかる。
【0024】
さらには1nm程度の電子回折パターンをスペーサ層の下部磁性層領域において膜面横方向にスキャンしていき、その回折パターンが同一である領域が同一の結晶粒、そのパターンが変化する遷移領域が粒界という判別も可能である。ただし、この場合もTEMサンプルの奥行き方向にある結晶粒の影響も受ける場合があるので、TEMサンプルの厚さは充分薄くして観測する必要がある。
【0025】
上述した結晶粒の中央部とは、結晶粒の一端の面内方向位置を0とし、結晶粒の他端に隣接する粒界の面内方向位置を100としたとき、面内方向位置が20以上80以下の範囲内にある領域のことをいう。また、結晶粒の中央部とは、スペーサ層の下地を形成する磁化固着層または磁化自由層に含まれる結晶粒間の粒界から3nm以上離れた領域のことをいう。また、結晶粒の中央部を別の表現で表すと、表面に凹凸を有する結晶粒の凸部(頂点)から、2nm以内の領域ということもできる。
【0026】
このような構造では、電流パス21を形成する非磁性金属層(この場合Cu層)は、下地磁性層との間に結晶欠陥の少ない結晶粒の中央部で界面を形成するため、良好な界面が形成される。この結果、電流パス21によって狭窄された電流のスピン依存界面散乱効果が大きくなる。また、磁性層と非磁性層の界面を通過し、下地磁性層において電流(電流方向によって、上部から下部、下部から上部の電流方向のいずれも生じうる)が広がったときに、電子伝導の散乱源となる粒界から遠い領域の磁性層中を電流が通過するため、粒界に散乱されることなく、下地磁性層内におけるスピン依存バルク散乱効果が大きくなる。以上のように、電流パスが下地磁性層の結晶粒の中央部に形成されることで、スピン依存界面散乱効果およびスピン依存バルク散乱効果のいずれの観点においてもより大きな値が実現でき、高MR変化率の実現に極めて有利である。
【0027】
また、本発明の実施形態においては、電流パスの結晶配向角度の分散角度が5度以内であれば、スピン依存界面散乱効果およびスピン依存バルク散乱効果のいずれの観点においてもより大きな値が実現でき、高MR変化率の実現に極めて有利である。この場合、電流パスが形成される位置は特に限定されない。
【0028】
なお、結晶粒の中央部に電流パスが形成された場合、図2(b)に示すように、下地磁性層、電流パス、上部磁性層の間で結晶格子が連続的に形成されやすい。このように結晶格子が連続的に形成されていると、下地磁性層から電流パスを介して上部磁性層まで結晶欠陥のない領域を電流が通過することになるので、スピン依存界面散乱およびスピン依存バルク散乱ともに大きくなり、高MR変化率を示す磁気抵抗効果素子を実現できる。
【0029】
本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子のスペーサ層を形成するには、以下のような方法を用いる。ここでは、アモルファス構造を有するAl23からなる絶縁層22中に金属結晶構造を有するCuからなる電流パス21を含むスペーサ層16を形成する場合を例に説明する。まず、膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含む上部ピン層14c上に、電流パスの供給源となる下部金属層(例えばCu)を成膜した後、下部金属層上に絶縁層に変換される被酸化金属層(例えばAlCuやAl)を成膜する。被酸化金属層に希ガス(例えばAr)のイオンビームを照射して前処理を行う。この前処理をPIT(Pre-ion treatmentという)。このPITの結果、被酸化金属層中に下部金属層の一部が吸い上げられて侵入した状態になる。酸化ガス(例えば酸素)を供給して被酸化金属層を酸化する。この酸化により、被酸化金属層をAl23からなる絶縁層22に変換するとともに絶縁層22を貫通する電流パス21を形成して、スペーサ層16を形成する。このような方法により、電流パス16を下地磁性層(ここでは上部ピン層14c)の結晶粒の中央部上に形成することができる。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。以下の実施例においては、合金の組成は原子%(atomic%)を意味する。
【0031】
[実施例1]
本実施例においては、図1(a)に示す構造を有する磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を製造した。具体的には、図示しない基板上に下記の膜を順次形成した。
【0032】
下電極11
下地層12:Ta[5nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Pt50Mn50[15nm]
ピン層14:Co90Fe10[4nm]/Ru[0.9nm]/Co90Fe10[4nm]
下部金属層15:Cu[0.5nm]
スペーサ層(CCP−NOL)16:Al23からなる絶縁層22およびCuからなる電流パス21(Al90Cu10[0.9nm]を成膜した後、PIT/IAO処理)
上部金属層17:Cu[0.25nm]
フリー層18:Co90Fe10[4nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ru[10nm]
上電極20。
【0033】
なお、以下においては、スペーサ層16とその下層および上層の2層の金属層を含めてスペーサ層ということがある。図1(a)のCCP−CPP素子はピン層14を下部に配置したボトム型であるが、後述するようにピン層14を上部に配置したトップ型でもよいことはもちろんである。以下、本実施例におけるCCP−CPP素子の製造方法についてより詳細に説明する。
【0034】
基板(図示せず)上にスピンバルブ膜へ垂直通電するための下電極11を形成する。次に、下電極11上に、CPPスピンバルブ膜の下地層からキャップ層までを形成する。
【0035】
図3に、このときに用いられる成膜装置の概略図を示す。図3に示すように、搬送チャンバー(TC)50を中心として、ロードロックチャンバー51、プレクリーニングチャンバー52、第1の金属成膜チャンバー(MC1)53、第2の金属成膜チャンバー(MC2)54、酸化チャンバー(OC)60がそれぞれゲートバルブを介して設けられている。この装置では、ゲートバルブを介して接続された各チャンバーの間で、真空中において基板を搬送することができるので、基板の表面は清浄に保たれる。
【0036】
基板をロードロックチャンバー51にセットし、金属の成膜を金属成膜チャンバー53、54で、酸化を酸化チャンバー60でそれぞれ行う。金属成膜チャンバーの到達真空度は1×10-8Torr以下とすることが好ましく、5×10-10Torr〜5×10-9Torr程度が一般的である。搬送室の到達真空度は10-9Torrオーダーである。酸化チャンバーの到達真空度は8×10-8Torr以下である。金属成膜チャンバーは多元(5〜10元)のターゲットを有する。成膜方式は、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ等のスパッタ法や、イオンビームスパッタ法、蒸着法などが挙げられる。
【0037】
下電極11上に、下地層12としてTa[5nm]/Ru[2nm]を成膜する。Taは下電極の荒れを緩和したりするためのバッファ層である。Ruはその上に成膜されるスピンバルブ膜の結晶配向および結晶粒径を制御するシード層である。
【0038】
バッファ層としては、Ta、Ti、W、Zr、Hf、Crまたはこれらの合金を用いることができる。バッファ層の膜厚は2〜10nm程度が好ましく、3〜5nm程度がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎるとバッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎるとMR変化率に寄与しない直列抵抗を増大させることになるので好ましくない。ただし、バッファ層上に成膜されるシード層がバッファ効果も有する場合には、Taなどからなるバッファ層を必ずしも設ける必要はない。
【0039】
シード層はその上に成膜される層の結晶配向を制御できる材料であればよいが、hcp構造またはfcc構造を有する金属層などが好ましい。Ruをシード層として用いることにより、その上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができ、またPtMnの結晶配向を規則化したfct構造、bcc金属の結晶配向をbcc(110)配向に良好に保つことができる。また、シード層を設けることにより、スピンバルブ膜の結晶粒径を10〜40nmに制御することができ、CCP−CPP素子のサイズが小さくなっても特性のばらつきを招くことなく高MR変化率を実現できる。結晶配向性に関しては、X線回折による測定でスピンバルブ膜のfcc(111)ピーク、PtMnのfct(111)ピークまたはbcc(110)ピークのロッキングカーブの半値幅が3.5〜6度となる比較的良好な配向性を実現することができる。この配向の分散角は断面TEMを用いた回折スポットからも判別することができる。
【0040】
シード層として、Ruの代わりに、例えばNixFe100-x(x=90〜50%、好ましくは75〜85%)や、NiFeに第3元素を添加して非磁性にした(NixFe100-x100-yy(X=Cr、V、Nb、Hf、Zr、Mo)などを用いることもできる。Ruよりも、NiFeベースのシード層のほうが結晶配向性は改善され、上記と同様に測定したロッキングカーブの半値幅が3〜5度になる。上述した10〜40nmという適正な結晶粒径を得るためには、第3元素Xの組成yを0〜30%程度とすることが好ましい。結晶粒径を40nmよりも粗大化させるためには、さらに多量の添加元素を用いることが好ましい。例えば、NiFeCrの場合にはCr量を35〜45%程度とし、fccとbccの境界相を示す組成を用いることが好ましい。ただし、高密度記録に対応した再生ヘッドとして用いる場合には、素子サイズが100nm以下になるので、結晶粒径が大きすぎると特性のばらつきを招くことがある。一方、例えばMRAMとして用いる場合には素子サイズは100nm以上であるので、結晶粒径を粗大化させるシード層を用いてもよい。
【0041】
シード層の膜厚は1.5nm〜6nm程度が好ましく、2〜4nmがより好ましい。シード層の厚さが薄すぎると結晶配向制御などの効果が失われる。シード層の厚さが厚すぎると直列抵抗の増大を招くうえに、スピンバルブ膜の界面凹凸の原因となることがある。
【0042】
下地層12上にピニング層13を成膜する。ピニング層13は、その上に成膜されるピン層14となる強磁性層に一方向異方性を付与して磁化を固着する機能を有する。ピニング層13の材料としては、PtMn、PdPtMn、IrMn、RuRhMnなどの反強磁性材料を用いることができる。十分な強さの一方向異方性を付与するためには、ピニング層13の膜厚を適切に設定する。PtMnやPdPtMnの場合には、膜厚は8〜20nm程度が好ましく、10〜15nmがより好ましい。IrMnやRuRhMnの場合には、PtMnなどより薄い膜厚でも一方向異方性を付与することができるので、5〜18nmが好ましく、7〜15nmがより好ましい。これらの反強磁性層の比抵抗は概ね100Ωμcm以上と大きいため、MR変化率に直接寄与しない直列抵抗を増大させ、RAの値を大きくする要因になる。この問題を回避するために、反強磁性層の代わりに、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層としては、例えばCoPt(Co=50〜85%)、(CoxPt100-x100-yCry(x=50〜85%、y=0〜40%)、FePt(Pt40〜60%)などを用いることができる。ハード磁性層(特にCoPt)は比抵抗が比較的小さいため、直列抵抗の増大およびRAの増大という影響を小さくすることができる。
【0043】
ピニング層13上にピン層14を形成する。本実施例におけるピン層14は、下部ピン層14a(Co90Fe10)、磁気結合層14b(Ru)、および上部ピン層14c(Co90Fe10[4nm])からなるシンセティックピン層である。ピニング層(PtMn)13とその直上の下部ピン層14aは一方向異方性をもつように交換磁気結合している。磁気結合層14bの上下の下部ピン層14aおよび上部ピン層14cは、磁化の向きが互いに反平行になるように強く磁気結合している。ここでは、上部ピン層14cとして、Co90Fe10を用いたがbcc構造を有するFeCo合金(Fe>30%以上)を用いても構わない。実際に、bcc構造を有するピン層を用いた場合に界面散乱効果が大きくなり、より大きなMR変化率が得られる。bcc構造を有する具体的なピン層としては、以下のような構成を有するものが挙げられる。すなわち、
(Fe50Co50[1nm]/Cu[0.25nm])×2/Fe50Co50[1nm]、
(Fe80Co20[1nm]/Cu[0.25nm])×2/Fe80Co20[1nm]、
(Co90Fe10[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe50Co50[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe50Co50[1nm]、
Co90Fe10[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe80Co20[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe80Co20[1nm]、
Co90Fe10[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe50Co50[1.5nm]、
Co90Fe10[1nm]/Cu[0.25nm]/Fe80Co20[1.5nm]、
Co90Fe10[0.5〜1nm]/Fe50Co50[1.5〜2.5nm]、
Co90Fe10[0.5〜1nm]/Fe80Co20[1.5〜2.5nm]、
Fe50Co50[2〜3nm]、
Fe80Co20[2〜3nm]
などである。
【0044】
ここで、極薄のCu層を磁性層中に挿入している理由は、磁性層中のスピン依存バルク散乱効果を増大させるためである。この場合、Cu層の膜厚は、Cu層を介して上下の磁性層が強磁性的に強く磁気結合する程度に薄い必要があり、具体的には、0.1〜1nmが好ましく、0.2〜0.5nmがより好ましい。Cu層の膜厚が薄すぎると、バルク散乱効果を向上させる効果が弱くなる。Cu層の膜厚が厚すぎると、バルク散乱効果を減少させることがあるうえに、非磁性のCu層を介した上下の磁性層の磁気結合が弱くなり、ピン層の特性が不十分となるので好ましくない。磁性層間の非磁性層の材料として、Cuの代わりに、Hf、Zr、Tiなどを用いてもよい。一方、FeCoなどの磁性層の膜厚は、0.5〜2nmが好ましく、1〜1.5nm程度がより好ましい。
【0045】
また、Co90Fe10やFe50Co50の代わりに、Fe80Co20を用いる理由は、Fe80Co20のほうがよりbcc構造が安定であり、Fe50Co50よりも望ましい場合があるためである。また、Ru上にfcc構造のCo90Fe10を用いている理由は、Ru上の磁性層の組成がFeリッチになると、Ruを介した上下の磁性層の反強磁性結合の強さが弱くなってしまう場合があるからである。これを避けるために、Ru直上のみにCoFe、Coなど、コバルトリッチな組成を用いることが望ましい場合がある。さらに、場合によっては上述の極薄のCu積層膜を除き、かつRu上にRuを介した磁気結合を強くするためにCo90Fe10、その上にスピン依存界面散乱効果が大きなbcc構造を有するFe50Co50やFe80Co20を積層した構造であるCo90Fe10/Fe50Co50、Co90Fe10/Fe80Co20という二層を積層した構成も、良好な磁気特性と大きなMR変化率を両立できる構成として有効である。
【0046】
下部ピン層14aは、磁気膜厚すなわち飽和磁化Bs×膜厚t(Bs・t積)が、上部ピン層14cとほぼ等しくなるように設計することが好ましい。一例として、上部ピン層14cが(Fe50Co50[1nm]/Cu[2.5nm])×2/Fe50Co50[1nm]の場合には、FeCoの飽和磁化が約2.2Tであるため、磁気膜厚は2.2T×3nm=6.6Tnmとなる。下部ピン層14aについてはCo90Fe10の飽和磁化が約1.8Tなので、上記と等しい磁気膜厚を与える下部ピン層14aの膜厚tは6.6Tnm/1.8T=3.66nmとなる。したがって、膜厚が約3.6nmのCo90Fe10を用いることが望ましい。ピニング層(PtMn)による一方向異方性磁界強度およびRuを介した下部ピン層と上部ピン層との反強磁性結合磁界強度という観点から、下部ピン層に用いられる磁性層の膜厚は2〜5nm程度が好ましい。膜厚が薄すぎるとMR変化率が小さくなる。膜厚が厚すぎるとデバイス動作に必要な十分な一方向性異方性磁界を得ることが困難になる。
【0047】
下部ピン層14aには、例えばCoxFe100-x合金(x=0〜100%)、NixFe100-x合金(x=0〜100%)、またはこれらに非磁性元素を添加したものを用いることができる。
【0048】
磁気結合層14b(Ru)は上下の磁性層に反強磁性結合を生じさせてシンセティックピン構造を形成する機能を有する。磁気結合層14bとしてのRu層の膜厚は0.8〜1nmであることが好ましい。上下の磁性層に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、Ru以外の材料を用いてもよい。
【0049】
上部ピン層14c(Co90Fe10[4nm])は、スピン依存散乱ユニットの一部をなす。スペーサ層との界面にbcc構造をもつ磁性材料を用いた場合、スピン依存界面散乱効果が大きいため、大きなMR変化率を実現することができる。bcc構造をもつFeCo系合金としては、FexCo100-x(x=30〜100%)や、FexCo100-xに添加元素を加えたものが挙げられる。スピンバルブ膜に用いられる金属材料は、fcc構造またはfct構造であることが多いため、上部ピン層のみがbcc構造を有することがあり得る。上部ピン層の膜厚が薄すぎると、bcc構造を安定に保つことが困難になり、高いMR変化率が得られなくなるので、上部ピン層の膜厚は2nm以上であることが好ましい。一方、大きなピン固着磁界を得るために、上部ピン層の膜厚は5nm以下であることが好ましい。また、ピン層が高MR変化率を実現しやすいbcc構造をもつ磁性層から形成されている場合には、bcc構造をより安定に保つために、bcc構造をもつ層の膜厚は2nm以上であることが好ましい。大きなピン固着磁界とbcc構造の安定性を両立させるには、bcc構造をもつ層の膜厚は2.5nm〜4nm程度が好ましい。FeCo系の磁性膜に関しては、相図上でより安定なbcc構造が得られる組成範囲として、Fe75Co25〜Fe85Co15が挙げられる。上部ピン層には、bcc構造をもつ磁性材料の代わりに、fcc構造のCoFe合金や、hcp構造をもつコバルト合金も用いることができる。Co、Fe、Niなどの単体金属、またはこれらのいずれか一つの元素を含む合金材料はすべて用いることができる。上部ピン層の磁性材料を、大きなMR変化率を得るのに有利なものから並べると、bcc構造をもつ合金材料、50%以上のコバルト組成をもつコバルト合金、50%以上のNi組成をもつニッケル合金の順になる。
【0050】
FeCo層とCu層とを交互に積層した上部ピン層の代わりに、FeCoとCuを合金化した上部ピン層を用いてもよい。このようなFeCoCu合金としては、例えば(FexCo100-x100-yCuy(x=30〜100%、y=3〜15%程度)が挙げられるが、これ以外の組成範囲を用いてもよい。FeCoに添加する元素として、Cuの代わりに、Hf、Zr,Tiなど他の元素を用いてもよい。上部ピン層には、Co、Fe、Niや、これらの合金材料からなる単層膜を用いてもよい。例えば、最も単純な構造の上部ピン層として、Co90Fe10単層を用いてもよい。これらの材料に添加元素を加えてもよい。
【0051】
次に、電流狭窄構造(CCP構造)を有するスペーサ層16を形成する。スペーサ層16を形成するには、図3に示した酸化チャンバー60を用いる。図4を参照して、酸化チャンバー60の構成を説明する。図4に示すように、酸化チャンバー60は真空ポンプ61によって真空引きされ、酸化チャンバー60にはマスフローコントローラー(MFC)63により流量制御された酸素ガスが酸素供給管62から導入される。酸化チャンバー60内にはイオンソース70が設けられている。イオンソースの形式は、ICP(Inductive coupled plasma)型、Capacitive coupled plasma型、ECR(Electron-cyclotron resonance)型、カウフマン型などが挙げられる。イオンソース70に対向するように基板ホルダー80および基板1が配置される。イオンソース70からのイオン放出口には、イオン加速度を調整する3枚のグリッド71、72、73が設けられている。イオンソース70の外側にはイオンを中和するニュートラライザ74が設けられている。基板ホルダー80は傾斜可能に支持されている。基板1へのイオンの入射角度は広い範囲で変えることができるが、典型的な入射角度の値は15°〜60°である。
【0052】
図5(a)〜(d)を参照して、スペーサ層16の形成方法を説明する。上述したように、本実施例ではAl23からなる絶縁層22中にCuからなる電流パス21を含むスペーサ層16を形成する。電流パス21は実質的に非磁性金属からなる。ただし、電流パス21には下地の磁性層や、スペーサ層上部に位置する層(本実施例においてはフリー層)を構成する材料から拡散した微量の磁性金属が含まれることはありうる。これは、ピニング層を構成するPtMnや、IrMnなどの反強磁性層のピニング特性を良好にするために行う熱処理(270℃、10時間程度、またはこれよりも高温で短時間でもよく例えば290℃、4時間程度)において多少元素の熱拡散が生じるためである。
【0053】
図5(a)に示すように、膜厚方向に延びる粒界Bによって分離された結晶粒Gを含む上部ピン層14c上に、電流パスの供給源となる下部金属層15(例えばCu)を成膜した後、下部金属層15上に絶縁層に変換される被酸化金属層25(例えばAlCuやAl)を成膜する。図5(b)に示すように、被酸化金属層25に希ガス(例えばAr)のイオンビームを照射して前処理を行う。この前処理をPIT(Pre-ion treatmentという)。このPITの結果、被酸化金属層25中に下部金属層15の一部が吸い上げられて侵入した状態になる。図5(c)に示すように、希ガス(Ar、Xe、Kr、Heなど)のイオンビームを照射しながら酸化ガス(例えば酸素)を供給して被酸化金属層25を酸化する。この方法をイオンビームアシスト酸化(IAO:Ion beam-assisted Oxidation)という。この処理により、Alが酸化されやすく、Cuが酸化されにくいという、酸化エネルギーの差を利用して、絶縁層22であるAl23と電流パス21であるCuとが分離した形態のスペーサ層16を形成する。本発明の実施形態においては、この段階で、上部ピン層14cに含まれる結晶粒Gの中央部に電流パス21が形成される。図5(d)に示すように、スペーサ層16上にCuなどの上部金属層17を成膜し、その上にフリー層18を成膜する。なお、スペーサ層16上の上部金属層17は、その上に成膜されるフリー層18が酸化膜の影響を受けるのを防止する機能を有するが、必ずしも設ける必要はない。
【0054】
図4に示した酸化チャンバー60においては、Arなどのイオンビームを基板1に照射することによりPITを行うことができ、酸素供給管62から酸素ガスを供給しながらArなどのイオンビームを基板1に照射することによりIAOを行うことができる。
【0055】
PIT工程では、加速電圧30〜130V、ビーム電流20〜200mA、処理時間30〜180秒の条件でArイオンを照射する。本実施例においては、加速電圧を40〜60Vに設定した。これよりも高い電圧範囲の場合には、PIT後の表面荒れ等の影響により、MR変化率の低下が生じた。また、電流値を30〜80mAとし、照射時間を60〜150秒とした。成膜された下部金属層15(Cu層)は二次元的な膜の形態で存在しているが、PIT工程により下部金属層15のCuが被酸化金属層25(AlCu層)中へ吸い上げられて侵入し、AlCu層中へ侵入したCuが電流パスとなる。さらに、被酸化金属層であるAlCu層のイオンビームアシスト酸化(IAO)を行う。IAO工程では、酸素を供給しながら、加速電圧40〜200V、ビーム電流30〜200mA、処理時間15〜300秒の条件でArイオンを照射する。本実施例においては、加速電圧を50〜100Vに設定した。これよりも高い電圧範囲の場合には、処理後の表面荒れ等の影響により、MR変化率の低下が生じた。また、電流値を40〜100mAとし、照射時間を30〜180秒とした。Alは酸化されやすいが、Cuは酸化されにくいので、Al23からなる絶縁層22とCuからなる電流パス21とを有するスペーサ層16が形成される。本実施例におけるIAOでの酸化時の酸素暴露量は、2000〜4000L(1L=1×10-6Torr×sec)の範囲とする。IAO時にAlだけでなく、下地磁性層まで酸化するような処理を行うと、CCP−CPP素子の耐熱性、信頼性が低下するので好ましくない。信頼性向上のために、CCPスペーサ層の下部に位置する磁性層は酸化を生じていない、メタル状態で存在することが重要である。これを実現するためには酸素量を上記範囲の酸素暴露量で制御することが必要である。また、供給された酸素によって安定な酸化物を形成するために、イオンビームを基板表面に照射している時間の間だけ、酸素ガスをフローしていることが望ましく、イオンビームを基板表面に照射していないときは、酸素ガスをフローしないことが望ましい。
【0056】
以上のような方法では、PITまたはIAOがエネルギーを有するプロセスであるため、下地結晶粒からの吸い上げ効果が生じる。このとき、PITまたはIAOのエネルギーがちょうど届く範囲の材料が上部に吸いあがることになる。つまり、PITやIAOのエネルギー範囲を電流パス21の供給源である下部金属層15(Cu)に届くように設定することで、結晶粒の中央部にCuが集中してCuの電流パス21が形成されることになる。このようなプロセスによって、図2(a)に示したような結晶粒の中央部に電流パス21を有するような良好なCCP構造を形成することが可能となる。つまり、良好な電流パス21を形成するためには、酸化前および酸化中にCuが吸い上げられるようなエネルギーを供給できるプロセスが好ましいということになる。そのためには、イオンビームの代わりに、RFプラズマなどを用いても構わない。RFプラズマを用いた場合、電圧はRFパワーの値を設定することで自動的に決まるが、その値は上記のイオンビームを用いた場合のPITやIAOのときの電圧値と同様な範囲であることが好ましい。また、電流値も、RFプラズマを用いた場合にはRFパワーの値を設定することで自動的に決まるが、好ましい範囲はイオンビームを用いた場合と同様である。つまり、RFプラズマでは電圧と電流を独立に制御できないという制御性の悪さが存在するが、RFプラズマでもPIT、およびIAO処理は可能である。
【0057】
酸化前のPIT処理や酸化中のIAO処理に代わるエネルギー処理として、基板加熱などの加熱処理も適用可能な処理である。しかしながら、上述のイオンビームやRFプラズマを用いた処理と比べると、基板加熱はあまり好ましくない処理である。なぜならば、基板加熱の場合にはエネルギーを照射する範囲が膜厚方向のすべてにわたるため、下部金属層のCuに対して最もエネルギーを与えるような膜厚方向の制御が困難になるからである。つまり、単純な加熱処理の場合には、すべての層において拡散が生じ、電流パスの供給源となる下部金属層のCuのみを上部に吸い上げることが困難であるからである。それに対し、イオンビームやRFプラズマであれば、エネルギー範囲や電流範囲を制御することで膜表面からどの程度の膜厚まで吸い上げの作用を生じさせるかということを制御できるので好ましい。上述のエネルギー範囲、電流範囲はこのような観点で決定された好ましい範囲である。
【0058】
下部金属層15(Cu)の膜厚は被酸化金属層25(AlCu)の膜厚に応じて調整する。すなわち、AlCu層の膜厚を厚くするほど、PIT工程の際にAlCu層中へ侵入させるCu量を増加させなければならないので、Cu層の膜厚を厚くする必要がある。例えば、AlCuの膜厚が0.6〜0.8nmのときにはCu層の膜厚を0.1〜0.5nm程度にする。AlCuの膜厚が0.8〜1nmのときにはCu層の膜厚を0.3〜1nm程度にする。Cu層の膜厚が薄すぎると、PIT工程の際にAlCu層中に十分な量のCuが供給されないため、AlCu層の上部までCuの電流パスを貫通させることが不可能になる。この場合、面積抵抗RAが高くなりすぎるうえに、MR変化率が不十分な値となる。一方、Cu層の膜厚が厚すぎると、PIT工程の際にはAlCu層中に十分な量のCuが供給されるものの、最終的にはピン層14とスペーサ層16との間に厚いCu層が残ることになる。CCP−CPP素子で高いMR変化率を得るためには、スペーサ層16において狭窄された電流が狭窄されたまま磁性層に到達することが条件になる。ところが、ピン層14とスペーサ層16との間に厚いCu層が残っていると、スペーサ層16において狭窄された電流が磁性層に到達するまでに広がるため、MR変化率の低下を招いてしまい、好ましくない。
【0059】
電流パス21の供給源となる下部金属層15の材料として、Cuの代わりに、Au、Agなどを用いてもよい。ただし、Au、Agに比べて、Cuの方が熱処理に対する安定性が最も高いので好ましい。
【0060】
被酸化金属層としてAl90Cu10を用いた場合、PIT工程中に下部金属層のCuが吸い上げられるだけでなくAlCu中のCuもAlから分離されて電流パスとなる。しかも、PIT工程後にイオンビームアシスト酸化を行った場合には、イオンビームによるアシスト効果によってAlとCuの分離が促進されつつ酸化が進行する。被酸化金属層として、Al90Cu10の代わりに、電流パス材料であるCuを含まないAlを用いてもよい。この場合、電流パス材料であるCuは下地の下部金属層からのみ供給される。被酸化金属層としてAlCuを用いた場合、PIT工程中に被酸化金属層からも電流パス材料であるCuが供給されるので、厚い絶縁層を形成する場合でも比較的容易に電流パスを形成することができる点で有利である。被酸化金属層としてAlを用いた場合、酸化により形成されるAl23にCuが混入しにくくなるため、耐圧の高いAl23を形成しやすい点で有利である。
【0061】
被酸化金属層の膜厚は、AlCuの場合には0.6〜2nm、Alの場合には0.5〜1.7nm程度である。これらの被酸化金属層が酸化されて形成される絶縁層の膜厚は、0.8〜3.5nm程度となる。酸化後の膜厚が1.3〜2.5nm程度の範囲にある絶縁層は作製しやすく、かつ電流狭窄効果の点でも有利である。また、絶縁層を貫通する電流パスの直径は1〜10nm程度である。典型的な値としては、3〜7nm程度が好ましい範囲である。
【0062】
被酸化金属層としてのAlCuは、AlxCu100-x(x=100〜70%)で表される組成を有するものが好ましい。AlCuには、Ti、Hf、Zr、Nb、Mg、Mo、Siなどの添加元素を添加してもよい。この場合、添加元素の組成は2〜30%程度が好ましい。これらの添加元素を添加すると、CCP構造の形成が容易になることがある。また、他の領域に比べて、Al23絶縁層とCu電流パスとの境界領域にこれらの添加元素がリッチに分布すると、絶縁層と電流パスとの密着性が向上してエレクトロマイグレーション(electromigration)耐性が向上するという効果が得られる。CCP−CPP素子においては、スペーサ層における電流密度が107〜1010A/cm2もの巨大な電流密度になるため、エレクトロマイグレーション耐性が高く、電流通電時のCu電流パスの安定性を確保できることが重要である。ただし、適切なCCP構造が形成されれば、被酸化金属層に添加元素を加えなくても十分良好なエレクトロマイグレーション耐性を実現できる。
【0063】
被酸化金属層の材料は、Al23を形成するためのAl合金に限らず、Hf、Zr、Ti、Ta、Mo、W、Nb、Siなどを主成分とする合金でもよい。なお、金属層を酸化して酸化物に変換する場合に限らず、窒化物や酸窒化物に変換するようにしてもよい。被酸化金属層としてどのような材料を用いた場合にも成膜時の膜厚は0.5〜2nmが好ましく、酸化物、窒化物または酸窒化物に変換したときの膜厚は0.8〜3.5nm程度が好ましい。
【0064】
スペーサ層16の上に、上部金属層17としてCu[0.25nm]を成膜する。この上部金属層17は、その上に成膜されるフリー層がスペーサ層16の酸化物に接して酸化されないようにするバリア層としての機能を有する。なお、フリー層の酸化はアニール条件の最適化などによって回避できることもあるので、スペーサ層16上の上部金属層17は必ずしも設ける必要はない。このように、スペーサ層16の下の下部金属層15は電流パスの供給源であるため必須である(ただし電流パス形成後にも明確な金属層として残存しているとは限らない)が、スペーサ層16の上の上部金属層17は必須というわけではない。製造上のマージンを考慮すると、スペーサ層16上の上部金属層17を形成することが好ましい。上部金属層17の材料としては、Cu以外に、Au、Ag、Ruなどを用いることもできる。上部金属層17の材料は、スペーサ層16の電流パス21の材料と同一であることが好ましい。上部金属層17の材料が電流パスの材料と異なる場合には界面抵抗の増大を招くが、両者が同一の材料であれば界面抵抗の増大は生じない。上部金属層17の膜厚は、0〜1nmが好ましく、0.1〜0.5nmがより好ましい。上部金属層17が厚すぎると、スペーサ層16で狭窄された電流が上部金属層17で広がって電流狭窄効果が不十分になり、MR変化率の低下を招く。
【0065】
上部金属層17の上に、フリー層18としてCo90Fe10[4nm]を形成する。単層のCoFeフリー層の代わりに、界面にCoFeを挿入してNiFeを用いたCo90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]という従来から用いられてきたフリー層を成膜しても構わない。高いMR変化率を得るためには、スペーサ層との界面に位置するフリー層18の磁性材料の選択が重要である。この場合、スペーサ層との界面には、NiFe合金よりもCoFe合金を設けることが好ましい。本実施例では、CoFe合金のなかでも特に軟磁気特性が安定なCo90Fe10を用いている。Co90Fe10近傍のCoFe合金を用いる場合には、膜厚を0.5〜4nmとすることが好ましい。他の組成(例えばピン層に関連して説明した組成)のCoFe合金を用いる場合、膜厚を0.5〜2nmとすることが好ましい。例えば、スピン依存界面散乱効果を上昇させるために、フリー層にもピン層と同様にFe50Co50(またはFexCo100-x(x=45〜85))を用いた場合には、フリー層としての軟磁性を維持するために、あまり厚い膜厚は使用できないため、0.5〜1nmが好ましい膜厚範囲である。Coを含まないFeを用いる場合には、軟磁気特性が比較的良好なため、膜厚を0.5〜4nm程度とすることができる。CoFe層の上に設けられるNiFe層は最も軟磁性特性が安定な材料である。CoFe合金の軟磁気特性はそれほど安定ではないが、その上にNiFe合金を設けることによって軟磁気特性を補完することができ、大きなMR変化率を得ることができる。NiFe合金の組成は、NixFe100-x(x=78〜85%程度)が好ましい。Ni83Fe17のように通常用いられるNiFeの組成Ni81Fe19よりもNiリッチな組成を用いるのは、CCP構造を有するスペーサ層上にフリー層を形成した場合には、ゼロ磁歪を実現するためのNi組成が多少ずれるためである。NiFe層の膜厚は2〜5nm程度が好ましい。NiFe層を用いない場合には、1〜2nmのCoFe層またはFe層と0.1〜0.8nm程度の極薄Cu層とを、複数層交互に積層したフリー層を用いてもよい。
【0066】
フリー層18の上に、キャップ層19としてCu[1nm]/Ru[10nm]を積層する。キャップ層19はスピンバルブ膜を保護する機能を有する。Cu層の膜厚は0.5〜10nm程度が好ましい。Cu層を設けることなく、フリー層18の上に直接Ru層を0.5〜10nm程度の厚さで設けてもよい。Cu層の上にRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層の構成は特に限定されず、キャップ効果を発揮できるものであれば他の材料を用いてもよい。キャップ層19の上にスピンバルブ膜へ垂直通電するための上電極20を形成する。
【0067】
図6に本実施例のCCP−CPP素子の特性を評価した結果を示す。RA=350mΩμm2、MR変化率=4.3%、ΔRA=15mΩμm2であった。このような高いMR変化率が実現できたのは、電流パス21を下地磁性層の結晶粒の中央部に設けることができたからである。
【0068】
図7および図8(a)、(b)、(c)に、本実施例のCCP−CPP素子の断面TEM写真を示す。図8(a)、(b)、(c)は、図7の(a)、(b)、(c)に対応し、電流パスが形成されている領域の拡大写真である。図8(a)、(b)、(c)から、いずれの場合もCCPが形成される前の下地磁性層の結晶粒の凹凸のほぼ中央に電流パスが形成されていることがわかった。PtMnとCoFe/Ru/CoFeとの間で同一の結晶粒かどうかを判断するのは困難だが、CoFe/Ru/CoFeの三層では同一の結晶粒を形成している。AlCu−NOLとCoFeとの界面から、凹凸を有する結晶粒が認められ、結晶粒の凹凸の周期は10〜20nmであった。本明細書においては、前述のようにこの凹凸の周期を結晶粒の大きさと定義する。このとき、TEMサンプルの厚さが結晶粒の大きさよりも何倍も厚くなると、TEM断面の奥にある結晶粒の干渉効果によって結晶粒が小さくみえることがあるので、TEMサンプルの厚さは結晶格子が認められる程度までは十分薄く準備することが必要である。
【0069】
図7および図8(a)、(b)、(c)からわかるように、アモルファスのアルミナを貫通して結晶構造を有する電流パス(Cu)が結晶粒のほぼ中央に形成されていることがわかる。例えば、図7の(c)領域において、結晶粒、粒界および電流パスの位置関係を具体的に示している。図7(c)のPおよびQが一つの結晶粒を区画する粒界に相当するものであり、面内方向位置でPを0、Qを100と定義すると、アモルファス構造を有するAl23を貫通している結晶構造を有する電流パスが、面内方向位置で33から70の範囲の位置、つまり結晶粒のほぼ中央に形成されていることがわかる。また、粒界Pから電流パスまでの距離は7nmと離れたところに位置し、またもう一方の粒界Qから電流パスまでの距離も6nmと離れたところに位置している。このような構造によって、Cuと磁性層との界面でスピン依存界面散乱効果が大きく、かつ下地磁性層の結晶粒内で広がった電流についてもスピン依存バルク散乱効果が大きく、大きなMR変化率を有するCCP−CPPスピンバルブ膜を実現することができる。ここで、電流パスの直径は約5nmであり、ばらつきも含めると電流パスの直径は3〜7nmである。
【0070】
図9(a)および(b)に、アモルファス酸化膜と電流パスの領域をスポット径が1nmのナノEDX分析を行った結果を示す。図9(a)に示すように、アモルファス領域では、Alリッチなピークが認められる。図9(b)に示すように、結晶領域ではCuリッチなピークを認めることができる。これらの結果から、アモルファス領域ではAl23が形成され、電流パス領域ではCu電流パスが形成されていることがわかる。ナノEDXのピークではAlとCuの分離が不完全で、かつ他の元素のピークも認めることができる。これは、スポット径1nmがAl23の膜厚に比べて十分に小さい値とはいえず、酸化物層の周囲の領域の元素も検出しているため、およびTEMサンプルの奥行き方向の厚さがあるため実像でみえている領域以外に奥行き方向の膜のゆれや裏にある結晶粒の元素を検出しているためと考えられる。
【0071】
図7および図8(a)、(b)、(c)のTEM観察で認められた構造を模式的に示すと、既述した図2のとおりである。図2(a)に示すように、電流パスが下地結晶粒の中央部に形成されている。すなわち、電流パス21は、結晶粒Gの一端の粒界の面内方向位置を0とし、他端の粒界の面内方向位置を100としたとき、20〜80の範囲の面内方向位置の領域、または結晶粒間の粒界から3nm以上離れた領域に形成されている。さらに、TEM写真をよく見ると、図2(b)のように、上部ピン層(CoFe)の結晶粒とフリー層(CoFe)の結晶粒が電流パスを介して一体となって結晶がつながった領域も認めることができる。一般的にアモルファス酸化物上に磁性層を形成した場合には微結晶ライクで結晶配向があまり良くない膜が形成されるのに対し、本実施例では電流パスの結晶配向をそのままひきずった良好な配向を示す領域が上部磁性層にも形成されている。このような構造が実現できると、下地磁性層から、Cu、上部磁性層まで一貫した結晶粒で形成されているため、結晶欠陥が少なく、非磁性層と磁性層の間のスピン依存界面散乱効果も大きな膜が実現でき、かつ、電流パス近傍での上部磁性層の結晶性が良好なため、磁性層内でのスピン依存バルク散乱効果も大きな膜が実現できる。つまり、大きなMR変化率を実現することが可能となる。
【0072】
それに対し、「発明が解決しようとする課題」の欄に示した比較例のCCP−CPP素子では、RAが370mΩμm2、MR変化率が1.5%、ΔRAが5.5mΩμm2であった(図6参照)。この素子は、スペーサ層を形成する際に、エネルギー酸化を用いずに、自然酸化法を用いたものである。
【0073】
図10および図11に、このCCP−CPP素子の断面TEM写真を示す。これらのTEM写真から、自然酸化法によっても絶縁Al23を貫通した3〜7nmの金属結晶からなる電流パスが形成されることを認めることができる。しかし、図11の場合、電流パスは下地磁性層の結晶粒が窪んだ部分に形成されている。例えば、図10において、結晶粒、粒界および電流パスの位置関係を具体的に示す。図10のPおよびQが一つの結晶粒を区画する粒界に相当するものであり、面内方向位置でPを0、Qを100と定義すると、アモルファス構造を有するAl23を貫通している結晶構造を有する電流パスは、粒界に相当する100の位置に形成されていることがわかる。また、粒界Qから電流パスまでの距離は0nmであり、電流パスは粒界から遠く離れた位置には存在していないことがわかる。
【0074】
このように粒界近傍に電流パスが形成されてしまうのは、スペーサ層を形成するための酸化プロセスおよびその事前処理としてエネルギープロセスが全くないため、AlとCuとの分離が促進されずCuが結晶粒の中央部に分離するようなことが生じない。こうした状況では、電流パスが形成される個所はランダムになるが、粒界において酸素の還元効果が生じやすい。このように、図10および図11では電流パスが主に粒界上に形成されている点が、図7および図8(a)、(b)、(c)のように電流パスが下地磁性層の結晶粒の中央部に形成されている本実施例のスペーサ層との最大の違いになっている。
【0075】
図11のような構造を模式的に示すと図12のようになる。図12に示すように、電流パス(Cu)がちょうど下地磁性層の粒界B上に位置しているため、電流パス(Cu)と磁性層との界面には多くの欠陥が存在し、スピン依存界面散乱効果は大幅に減少してしまう。また、電流パス(Cu)の直下に下地磁性層の粒界Bが存在するため、電流狭窄された電子が磁性層に到達したときに、粒界の影響を直接的に受けて散乱されるため、スピン依存バルク散乱効果が減少する。これは、MR変化率の減少を引き起こすことになる。
【0076】
[実施例2]
本実施例においては、下記のような構造を有する磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を製造した。
【0077】
下電極11
下地層12:Ta[5nm]/Ru[2nm]
ピニング層13:Pt50Mn50[15nm]
ピン層14:Co90Fe10[4nm]/Ru[0.9nm]/(Fe50Co50[1nm]
/Cu[0.25nm])×2/Fe50Co50[1nm]
下部金属層15:Cu[0.5nm]
スペーサ層(CCP−NOL)16:Al23絶縁層22およびCu電流パス21(Al90Cu10[1nm]を成膜した後、PIT/IAO処理。PIT/IAO処理については実施例1と同様な条件を使用。)
上部金属層17:Cu[0.25nm]
フリー層18:Co90Fe10[1nm]/Ni83Fe17[3.5nm]
キャップ層19:Cu[1nm]/Ru[10nm]
上電極20。
【0078】
図13(a)、(b)に本実施例において製造した磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)の断面TEM写真を示す。図13(a)、(b)でも、図7、図8(a)、(b)、(c)と同様に、下地磁性層を構成する10〜20nmの結晶粒のほぼ中央部に絶縁層を貫通する電流パスが形成されている。電流パスの直径は約5nmであり、ばらつきを考慮すると電流パスの直径は3〜7nm程度である。実施例1と同様に、電流パスが結晶粒のほぼ中央部に形成されたことにより、Cuと磁性層の間の界面に結晶欠陥が少ないためスピン依存界面散乱効果が大きく、かつ電流パス直下の磁性層に電流が流れたときの磁性層内におけるスピン依存バルク散乱効果が大きいことによって、大きなMR変化率が得やすい。
【0079】
図13(a)においても、図7、図10と同様に結晶粒、粒界および電流パスの位置関係を具体的に示している。図13(a)のPおよびQが一つの結晶粒を区画する粒界に相当するものであり、面内方向位置でPを0、Qを100と定義すると、アモルファス構造を有するAl23を貫通している結晶構造を有する電流パスが、面内方向位置で33から66の範囲の位置、つまり結晶粒のほぼ中央に形成されていることがわかる。また、粒界Pから電流パスまでの距離は4nmと離れたところに位置し、またもう一方の粒界Qから電流パスまでの距離も4nmと離れたところに位置している。
【0080】
さらに、図13の断面TEM写真において、スポット径約0.5nmの電子ビームを用いて得られた、ナノディフラクションの結果を図14(a)、(b)に示す。図14(a)、(b)から分かるように、ピン層14c、電流パス21、フリー層18のいずれにおいても結晶配向の分散化角度は5度以内に収まっており、良好な結晶配向を有していることがわかる。フリー層の結晶配向性はピン層に比べると若干劣っているが、これはフリー層がアモルファスのアルミナ上に形成されたことに起因している。電流パス内においてもこのような良好な結晶配向性が得られていることで、電流パス内での比抵抗が下げられ、良好なMR変化率が得られる。
【0081】
本実施例のCCP−CPP素子では、RA=500mΩμm2、MR変化率=7.3%が得られている。MR変化率が実施例1のものよりも上昇しているのは、bcc構造のFe50Co50のほうがfcc構造のCoFeよりも界面散乱効果が大きなからである。また、極薄のCuを積層しているため、磁性層内でのスピン依存バルク散乱効果も増し、MR変化率の上昇に寄与している。
【0082】
なお、以上においてはピン層がフリー層よりも下に位置するボトム型のCCP−CPP素子について説明したが、本発明の実施形態に係る方法はトップ型のCCP−CPP素子にも全く同様に適用できる。トップ型のCCP−CPP素子を製造する場合には、図1の下地層12とキャップ層19との間にある層を、図1と逆の順序で成膜すればよい。なお、トップ型のCCP−CPP素子においても、スペーサ層の上下の金属層(Cu層)の機能については、ボトム型のCCP−CPP素子と同じである。すなわち、スペーサ層の下のCu層は電流パスの供給源であるため必須であるが、スペーサ層の上のCu層は必須ではない。
【0083】
(磁気ヘッドの実施例)
図15および図16は、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに組み込んだ状態を示している。図15は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面に対してほぼ平行な方向に磁気抵抗効果素子を切断した断面図である。図16は、この磁気抵抗効果素子を媒体対向面ABSに対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0084】
図15および図16に例示した磁気ヘッドは、いわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有する。磁気抵抗効果膜10は上述したCCP−CPP膜である。磁気抵抗効果膜10の上下には、下電極11と上電極20とがそれぞれ設けられている。図15において、磁気抵抗効果膜10の両側面には、バイアス磁界印加膜41と絶縁膜42とが積層して設けられている。図16に示したように、磁気抵抗効果膜10の媒体対向面には保護層43が設けられている。
【0085】
磁気抵抗効果膜10に対するセンス電流は、その上下に配置された電極11、20によって矢印Aで示したように、膜面に対してほぼ垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜41、41により、磁気抵抗効果膜10にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果膜10のフリー層の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる。
【0086】
本発明によれば、磁気抵抗効果膜のMR変化率が向上しているので、磁気ヘッドに応用した場合に高感度の磁気再生が可能となる。
【0087】
(ハードディスクおよびヘッドジンバルアセンブリーの実施例)
図15および図16に示した磁気ヘッドは、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込んで、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0088】
図17は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、磁気ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本発明の磁気記録再生装置150は、複数の磁気ディスク200を備えたものとしてもよい。
【0089】
磁気ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ヘッドスライダ153は、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0090】
磁気ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は磁気ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが磁気ディスク200と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
【0091】
サスペンション154はアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、ボビン部に巻かれた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0092】
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0093】
図18は、アクチュエータアーム155から先のヘッドジンバルアセンブリーをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、アセンブリ160は、アクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。サスペンション154の先端には、上述したいずれかの実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165はアセンブリ160の電極パッドである。
【0094】
本発明によれば、上述した本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を含む磁気ヘッドを具備することにより、従来よりも高い記録密度で磁気ディスク200に磁気的に記録された情報を確実に読み取ることが可能となる。
【0095】
(磁気メモリの実施例)
次に、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を搭載した磁気メモリについて説明する。すなわち、本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を用いて、例えばメモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(magnetic random access memory、MRAM)などの磁気メモリを実現できる。
【0096】
図19は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図である。この図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになり一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果素子10中の磁気記録層(フリー層)に記録されたビット情報を読み出すことができる。ビット情報を書き込むときは、特定の書き込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場を印加する。
【0097】
図20は、本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図である。この場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子10とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子10以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0098】
図21は、本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図である。図22は、図21のA−A’線に沿う断面図である。これらの図に示した構造は、図19または図20に示した磁気メモリに含まれる1ビット分のメモリセルに対応する。このメモリセルは、記憶素子部分311とアドレス選択用トランジスタ部分312とを有する。
【0099】
記憶素子部分311は、磁気抵抗効果素子10と、これに接続された一対の配線322、324とを有する。磁気抵抗効果素子10は、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)である。
【0100】
一方、選択用トランジスタ部分312には、ビア326および埋め込み配線328を介して接続されたトランジスタ330が設けられている。このトランジスタ330は、ゲート332に印加される電圧に応じてスイッチング動作をし、磁気抵抗効果素子10と配線334との電流経路の開閉を制御する。
【0101】
また、磁気抵抗効果素子10の下方には、書き込み配線323が、配線322とほぼ直交する方向に設けられている。これら書き込み配線322、323は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらいずれかを含む合金により形成することができる。
【0102】
このような構成のメモリセルにおいて、ビット情報を磁気抵抗効果素子10に書き込むときは、配線322、323に書き込みパルス電流を流し、それら電流により誘起される合成磁場を印加することにより磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を適宜反転させる。
【0103】
また、ビット情報を読み出すときは、配線322と、磁気記録層を含む磁気抵抗効果素子10と、下電極324とを通してセンス電流を流し、磁気抵抗効果素子10の抵抗値または抵抗値の変化を測定する。
【0104】
本発明の実施形態に係る磁気メモリは、上述した実施形態に係る磁気抵抗効果素子(CCP−CPP素子)を用いることにより、セルサイズを微細化しても、記録層の磁区を確実に制御して確実な書き込みを確保でき、且つ、読み出しも確実に行うことができる。
【0105】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗効果膜の具体的な構造や、その他、電極、バイアス印加膜、絶縁膜などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる。
【0106】
例えば、磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、素子の上下に磁気シールドを付与することにより、磁気ヘッドの検出分解能を規定することができる。
【0107】
また、本発明は、長手磁気記録方式のみならず垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気再生装置についても同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0108】
さらに、本発明の磁気再生装置は、特定の記録媒体を定常的に備えたいわゆる固定式のものでも良く、一方、記録媒体が差し替え可能ないわゆる「リムーバブル」方式のものでも良い。
【0109】
その他、本発明の実施形態として上述した磁気ヘッドおよび磁気記憶再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記憶再生装置および磁気メモリも同様に本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図および断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子のスペーサ層を模式的に示す断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子を製造するために用いられる成膜装置の概略図。
【図4】図3の成膜装置の酸化チャンバーを示す構成図。
【図5】本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素子のスペーサ層の製造工程を示す断面図。
【図6】実施例1のCCP−CPP素子の特性の評価結果を示す図。
【図7】実施例1のCCP−CPP素子の断面TEM写真。
【図8】実施例1のCCP−CPP素子の一部を拡大して示す断面TEM写真。
【図9】実施例1のCCP−CPP素子のスペーサ層のナノEDX分析結果を示す図。
【図10】比較例のCCP−CPP素子の断面TEM写真。
【図11】比較例のCCP−CPP素子の一部を拡大して示す断面TEM写真。
【図12】比較例の磁気抵抗効果素子のスペーサ層を模式的に示す断面図。
【図13】実施例2のCCP−CPP素子の断面TEM写真。
【図14】実施例2のCCP−CPP素子のナノディフラクションの結果を示す図。
【図15】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図。
【図16】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図。
【図17】本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置の斜視図。
【図18】本発明の実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリの斜視図。
【図19】本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の一例を示す図。
【図20】本発明の実施形態に係る磁気メモリのマトリクス構成の他の例を示す図。
【図21】本発明の実施形態に係る磁気メモリの要部を示す断面図。
【図22】図21のA−A’線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0111】
1…基板、11…下電極、12…バッファ層、13…ピニング層、14…ピン層、15…金属層、16…スペーサ層、17…金属層、18…フリー層、19…キャップ層、20…上電極、21…電流パス、22…絶縁層、41…バイアス磁界印加膜、42…絶縁膜、43…保護層、50…搬送チャンバー、51…ロードロックチャンバー、52…プレクリーニングチャンバー、53…第1の金属成膜チャンバー、54…第2の金属成膜チャンバー、60…酸化チャンバー、61…真空ポンプ、62…酸素供給管、70…イオンソース、71、72、73…グリッド、74…ニュートラライザ、75…プラズマ励起源、80…基板ホルダー、150…磁気記録再生装置、152…スピンドル、153…ヘッドスライダ、154…サスペンション、155…アクチュエータアーム、156…ボイスコイルモータ、157…スピンドル、160…磁気ヘッドアッセンブリ、164…リード線、200…磁気記録磁気ディスク、311…記憶素子部分、312…アドレス選択用トランジスタ部分、312…選択用トランジスタ部分、321…磁気抵抗効果素子、322…ビット線、322…配線、323…ワード線、323…配線、324…下部電極、326…ビア、328…配線、330…スイッチングトランジスタ、332…ゲート、332…ワード線、334…ビット線、334…ワード線、350…列デコーダ、351…行デコーダ、352…センスアンプ、360…デコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層は膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含み、前記結晶粒の一端の面内方向位置を0とし、前記結晶粒の他端に隣接する粒界の面内方向位置を100としたとき、前記電流パスは面内方向位置が20以上80以下の範囲内にある領域上に形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層は膜厚方向に延びる粒界によって分離された結晶粒を含み、前記電流パスは前記結晶粒上に形成され、前記スペーサ層の下側に位置する前記磁化固着層または前記磁化自由層に含まれる結晶粒端から3nm以上離れた領域に形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた絶縁層及び前記絶縁層を貫通する電流パスを含むスペーサ層と、を有する磁気抵抗効果素子において、前記電流パスの結晶配向角度の分散角度が5度以内であることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記磁化固着層、前記電流パス、および前記磁化自由層の結晶配向角度の分散角度がいずれも5度以内であることを特徴とする請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記電流パスと、前記電流パスの下地を形成する前記磁化固着層または前記磁化自由層と、前記電流パスの上部に形成される前記磁化自由層または前記磁化固着層との間で、結晶格子が連続的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記電流パスは、Cu、AuおよびAgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記絶縁層は、Al、Si、Hf、Ti、Ta、Mo、W、Nb、Cr、MgおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物または窒化物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記磁化固着層は、前記スペーサ層との界面で体心立方構造をなすことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記磁化固着層は、前記スペーサ層と接する層がFeを30原子%以上含有するFe合金からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記磁化固着層は、強磁性層と厚さ0.1nm以上1nm以下のCuとの積層膜を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする磁気抵抗効果ヘッド。
【請求項12】
請求項11記載の磁気抵抗効果ヘッドを具備したことを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子を具備したことを特徴とする磁気メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−135253(P2006−135253A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325315(P2004−325315)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】