説明

磁気抵抗効果膜及び磁気抵抗効果素子

【課題】狭リードギャップ長化を図り、所要の特性を備える磁気抵抗効果膜及びトンネル磁気抵抗効果素子を提供する。
【解決手段】スペーサ層27と、硬磁性層23と、磁化自由層28とを備える磁気抵抗効果膜であって、前記硬磁性層23が、m-D019型CoPt規則合金相、またはL11型CoPt規則合金相として形成され、該硬磁性層23の磁化容易軸方向が硬磁性層の面内に向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気抵抗効果膜及び磁気抵抗効果素子に関し、より詳細にはCoPt規則合金を硬磁性層として備える磁気抵抗効果膜及びこれを用いた磁気抵抗効果素子に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置の高記録密度化には、磁気記録媒体の記録ビットサイズを縮小することと、磁気ヘッドの再生ヘッドの狭リードギャップ長化が必須である。
磁気ヘッドの再生ヘッドは、磁化固定層、磁化自由層、スペーサ層(トンネルバリア層)を備える磁気抵抗効果膜を有する。リードギャップ長は磁気抵抗効果膜を挟む磁気シールド間隔によって規定されるから、リードギャップ長を狭くするには、磁気抵抗効果膜の膜厚を薄くする必要がある。
【0003】
従来の磁気抵抗効果膜においては、磁化固定層の磁化方向を固定する目的で、反強磁性層が用いられている。この反強磁性層は強磁性層との交換異方性を用いて強磁性層の磁化方向を固定する作用を有する。反強磁性層が交換異方性を発現するには、反強磁性層の膜厚は5nm以上必要であり、この反強磁性層は磁気抵抗効果膜のうちで最も厚い膜厚を占める。したがって、狭リードギャップ長化のためには、反強磁性層の膜厚を薄くするか、反強磁性層を排除することが有効である。
【0004】
磁気抵抗効果膜として反強磁性層を使用しない膜構成として、磁化固定層に硬磁性層を使用するいわゆる保磁力差型の磁気抵抗効果素子が知られている。この保磁力差型の構造を用いて狭リードギャップ長化を図る場合、硬磁性層の厚さは3nm以下とすることが望ましい。また、磁化方向を安定させる観点から、硬磁性層は10kOe以上の大きな保磁力を有する必要がある。
一般に、保磁力は磁気異方性エネルギーと相関があることから、大きな保磁力を得るためには大きな磁気異方性エネルギーを持つ材料を選択し、さらに磁気抵抗効果素子へ適用する場合は、磁化容易軸方向が膜面内に向くように制御する必要がある。
【0005】
G. Kim らは比較的大きな一軸磁気異方性エネルギーを有するL10型CoPt規則合金を用いた磁気抵抗効果素子を報告している(非特許文献1)。
また、近年、スパッタリング法により300℃以下の低温でm-D019型Co75Pt25(at.%表記)規則合金またはL11型Co50Pt50(at.%表記)規則合金の作製が報告されている(非特許文献2)。これらの規則合金は、高い一軸磁気異方性エネルギーを有するL10型FePtと同等の107 erg/cm3という大きな磁気異方性エネルギーを有している(非特許文献2)。
【0006】
【非特許文献1】G. Kim et al., APPLIED PHYSICS LETTERS 92, 172502 (2008)
【非特許文献2】H. Sato et al., JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 103, 07E114 (2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、磁気抵抗効果素子の狭リードギャップ化を図るために、反強磁性層を使用せず、硬磁性層を用いて磁気抵抗効果膜を形成する場合は、硬磁性層は、膜厚3nm以下で、10kOe以上の大きな保磁力を備える必要がある。また、硬磁性層は磁化方向が面内方向となるようにする必要があり、そのためには硬磁性層の結晶配向を制御する必要がある。磁気ヘッド等の磁気デバイスへ適用する場合は、非単結晶基板上に磁気抵抗効果膜を成膜するから、非単結晶基板上においても硬磁性層の結晶配向が制御できるようにする必要がある。また、磁気デバイスに適用するためには、規則化温度が300℃以下である必要がある。
【0008】
しかしながら、前述したL10型CoPt規則合金を用いた例では規則化温度が400℃以上の高温であり、磁気デバイスにはその手法がそのまま適用できないという問題がある。また、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金、L11型Co50Pt50(at.%)規則合金については、磁気抵抗効果膜の硬磁性層として使用することについては未だ検討されていない。
本発明は、磁気抵抗効果膜の硬磁性層としてm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金、またはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金を使用することによって、狭リードギャップ長化を図るとともに所要の特性を備えることができる磁気抵抗効果膜及び磁気抵抗効果素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一観点によれば、スペーサ層と、硬磁性層と、磁化自由層とを備える磁気抵抗効果膜であって、前記硬磁性層が、m-D019型CoPt規則合金相、またはL11型CoPt規則合金相として形成され、該硬磁性層の磁化容易軸方向が硬磁性層の面内に向いている磁気抵抗効果膜が提供される。
なお、スペーサ層は導電体層によって形成される場合もあるし、絶縁バリア層として形成される場合もある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁気抵抗効果膜は、m-D019型CoPt規則合金相として形成され磁化容易軸方向が面内に向いた硬磁性層、あるいはL11型CoPt規則合金相として形成され磁化容易軸方向が面内に向いた硬磁性層を備えることから、反強磁性を用いることなく磁気抵抗効果膜を形成することができ、磁気抵抗効果素子の狭リードギャップ長化等を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(CoPt規則合金相)
まず、磁気抵抗効果膜の硬磁性層となるm-D019型Co75Pt25(at.%表記)規則合金相あるいはL11型Co50Pt50(at.%表記)規則合金相の結晶構造及びその規則合金を形成する方法について説明する。
図1は、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相とL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相の結晶構造を示す。図1には、L10型Co50Pt50(at.%)規則合金相についての結晶構造もあわせて示している。
【0012】
m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相は、六方晶型の結晶構造を有する。L11型Co50Pt50(at.%)規則合金相は、面心立方晶型の結晶構造を有する。磁気抵抗効果素子の磁化固定層は、磁化容易軸方向が面内に向く必要がある。硬磁性層をm-D019型CoPtあるいはL11型CoPtによって形成する場合も同様に、磁化容易軸方向が硬磁性層の面内に向くようにする必要がある。
【0013】
図3は、非単結晶基板からなる基板1上にm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相、またはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相となる硬磁性層を形成する場合に、硬磁性層の磁化方向が基板1の面内方向に向くように、基板1に下地層2を成膜し、下地層2上に硬磁性層3を形成することを示す。非単結晶基板としては、AlTiC(Al2O3-TiC)あるいは熱酸化膜付Si基板等が用いられる。下地層2は、磁化容易軸方向が面内に向くように硬磁性層を結晶配向させるために設けられる。なお、「硬磁性層」という用語は、磁化方向が固定されている、いいかえれば保磁力が大きな磁性層であるとの意味で使用している。
【0014】
硬磁性層3をm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相として形成する場合に、硬磁性層3の磁化容易軸が磁性層の面内方向に向くようにするには、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相のc軸方向が基板面に平行となるように結晶配向するように成膜する必要がある。
このためには、下地層2として、たとえば体心立方構造を有するCrを(001)配向させて成膜し、この下地層2の上にCo75Pt25を成膜すればよい。下地層としてはCrのかわりに、Cr基合金を使用することもできる。
なお、硬磁性層3をm-D019型のCoPt規則合金相として形成する場合のPt濃度は必ずしも25at.%とする場合に限らない。CoPt合金におけるPt濃度を、15at.%から30at.%の範囲内で選択し、規則合金相の規則度が最も高くなるPt濃度を選択して成膜するのがよい。
また、非単結晶基板上に下地層2を成膜する場合は、基板あるいは基板上に成膜した層の結晶情報を打ち消す層(たとえば、Ta膜等)を基板1に形成してから下地層2を成膜するのがよい。
【0015】
一方、硬磁性層3をL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相として形成する場合は、Co50Pt50を(110)面と基板面とが平行になるように成膜する必要がある。
そのためには、基板1上にCrあるいはFe、あるいはこれらの合金を、(211)結晶配向するように成膜して下地層2とし、その上に硬磁性層3としてCo50Pt50を成膜する。スパッタリング法により成膜して下地層2を形成する際に、微量酸素添加スパッタリング法もしくは微量窒素添加スパッタリング法を利用し、表面エネルギーを制御することによって体心立方格子の結晶構造を有する下地層2が(211)結晶配向するように成膜することができる。スパッタリングにおける希ガス種には、Ar、Kr、Xe、He、Neのいずれを用いてもよい。
また、硬磁性層3をL11型のCoPt規則合金相として形成する場合は、CoPt合金のPt濃度を、40at.%から60at.%の範囲内で選択し、規則相の規則度が最も高くなるPt濃度を選択して成膜する。
【0016】
m-D019型CoPtあるいはL11型CoPtをスパッタリング法によって成膜する方法としては、スパッタリングターゲットにCoPt合金を使用し、DCまたはRFマグネトロンスパッタリング法によって成膜する方法、CoとPtの単体のターゲットを使用し、DCまたはRFマグネトロンスパッタリング法により、同時放電によって所望の合金組成となるように制御する方法が使用できる。
【0017】
また、m-D019型CoPt規則合金相、及びL11型CoPt規則合金相となるように成膜する際に、規則化を促進させる方法として、熱エネルギーを利用する方法が利用できる。すなわち、スパッタリング法によってCoPt層を形成する際に、基板を加熱して(300℃程度)スパッタリングする方法、CoPt層を成膜した後、大気開放することなく真空中にてCoPt層を加熱(300℃程度)した後、室温まで冷却し、次いで上層を成膜するといった方法である。
【0018】
図2は、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金とL11型Co50Pt50(at.%)規則合金の一軸結晶磁気異方性エネルギーのPt組成依存性を示す。
m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金及びL11型Co50Pt50(at.%)規則合金について、一軸磁気異方性エネルギーは2×107 erg/cm3を上回る値が得られている(非特許文献1)。m-D019型CoPt合金については、Pt濃度が15at.%〜30at.%の範囲において、1×107 erg/cm3を上回る一軸磁気異方性エネルギーが得られ、L11型CoPt合金については、Pt濃度が40at.%〜60at.%の範囲内において、1×107 erg/cm3を上回る一軸異方性エネルギーが得られる。
【0019】
図2に示すように、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金は、一軸磁気異方性エネルギーが2×107 erg/cm3、飽和磁化値が1200 emu/cm3であることから、硬磁性層をこの規則合金相とした場合に理論的に予想される最大の保磁力は13kOeとなる。一軸磁気異方性エネルギーをKu、飽和磁化をMs、異方性磁界をHk、保磁力をHcとすると、面内磁化膜では保磁力の最大値はHc / Hk 〜 0.4で記述されることが一般に知られている。Hk = 2Ku / MsであることからHc / Hk = 0.4として上記の保磁力13kOeが得られる。
硬磁性層をL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相として形成した場合は、同様の計算から硬磁性層として理論的に予想される最大の保磁力は30kOeである。
【0020】
前述したように、磁気抵抗効果素子の保磁力差型における硬磁性層として有効に機能するには、硬磁性層は10kOe程度の保磁力を備えていることが求められる。上述したm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金、及びL11型Co50Pt50(at.%)規則合金は、10kOe程度以上の保磁力を有することから、磁気抵抗効果膜の硬磁性層として十分に使用することができる。
なお、CoPt合金にBやCrといった第三元素を添加すると一般に、磁性層の飽和磁化値が低下する。したがって、CoPt合金にBやCrといった第三元素を添加しても一軸磁気異方性エネルギーが変化しなければ、最大保磁力はさらに大きくなり、硬磁性層としてさらに有効に使用することができる。ただし、CoPt合金にBやCrを添加した場合に、CoPt層が規則合金相として維持できるようにする必要がある。BあるいはCrの添加量が5at.%以下であれば、CoPt層がアモルファス相にならないようにすることができる。
【0021】
(磁気抵抗効果素子)
図4、5、6、7は、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相あるいはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相によって形成された硬磁性層を備える磁気抵抗効果素子の例を示す。
図4に示す磁気抵抗効果素子10は、下部シールド層21、下地層22、硬磁性層23、スペーサ層27、磁化自由層28、キャップ層29、上部シールド層30からなる。なお、下部シールド層21は下部電極を兼ね、上部シールド層30は上部電極を兼ねる。
【0022】
下部シールド層21には、たとえばNiFeを使用する。
下地層22には、たとえばTa層(1nm)とCr層(2nm)を積層して形成する。Ta層は下部シールド層21の結晶情報を打ち消すために設けている。Cr層は、硬磁性層23のc軸方向が基板と平行になるように結晶配向させるために設けている。
硬磁性層23は、Co75Pt25合金をターゲットに使用し、基板温度を300℃に加熱してスパッタリング法により形成する。下地層22上に成膜されたCoPt層は、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相として形成される。硬磁性層23の厚さは1.5〜3.0nmとする。
【0023】
硬磁性層23をL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相として形成する場合は、下地層22としてTa層(1nm)とCr層(2nm)を積層して形成し、Cr層が(211)配向するように成膜する。
次いで、Co50Pt50合金をターゲットとし、基板温度を300℃に加熱した状態でスパッタリング法によって硬磁性層23を形成する。下地層22のCr層が(211)配向していることにより、Co50Pt50合金は(110)面を基板面と平行になるように結晶配向を制御して成膜され、硬磁性層23はL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相として形成される。この場合も、硬磁性層23の厚さは1.5〜3.0nmとする。
【0024】
硬磁性層23に積層して形成するスペーサ層27は、導電体層あるは絶縁バリア層として形成する。スペーサ層27をMgO等の絶縁バリア層として形成した場合はトンネル磁気抵抗効果素子となり、スペーサ層27をCu、Crといった導電体によって形成した場合は、GMR型の磁気抵抗効果素子となる。
【0025】
磁化自由層28は、たとえばCoFe、CoFeB、Ta、NiFeの4層構造とする。磁化自由層28をNiFeの単層構造とすることも可能である。磁化自由層28を4層構造とするのは、磁化自由層28の特性を向上させるためである。キャップ層29は、保護層として作用するものであり、例としてTaとRuの2層構造とする。上部シールド層30は、下部シールド層21と同様にNiFeによって形成する。
【0026】
図5に示す磁気抵抗効果素子11は、下層側から、下部シールド層21、下地層22、硬磁性層23、磁化固定層26、スペーサ層27、磁化自由層28、キャップ層29、上部シールド層30からなる。
本実施形態の磁気抵抗効果素子11は、磁化固定層26を、硬磁性層23に積層して形成した点が、上述した磁気抵抗効果素子10と相異する。磁化固定層26には、MR比を向上させるためにスピン分極率の高い材料、たとえばCoFeB、CoFe合金、Co基またはFe基ホイスラー合金などを用いる。
【0027】
図6に示す磁気抵抗効果素子12は、下層側から、下部シールド層21、下地層22、硬磁性層23、反強磁性結合層25、磁化固定層26、スペーサ層27、磁化自由層28、キャップ層29、上部シールド層30からなる。
図6に示す磁化固定層26は、反強磁性結合層25を介して磁化固定層26を積層する構造とすることによって磁化方向をより安定させた構造としている。反強磁性結合層25としてはRuやRuを含む合金を用いることができる。
【0028】
図7に示す磁気抵抗効果素子13は、下層側から、下部シールド層21、下地層22、硬磁性層23、第1の磁化固定層24、反強磁性結合層25、第2の磁化固定層26a、スペーサ層27、磁化自由層28、キャップ層29、上部シールド層30からなる。
本実施形態の磁気抵抗効果素子13は、第1の磁化固定層24を、硬磁性層23上に積層して形成した点が、上述した磁気抵抗効果素子12と相異する。
第1の磁化固定層24には、Ruと強い交換結合作用を有するCoFeを使用し、反強磁性結合層25にRuもしくはRuを含む合金を使用する。第2の磁化固定層26には、CoFeB、CoFe合金あるいはCo基またはFe基ホイスラー合金などを使用する。
【0029】
なお、図5、6及び7に示す磁気抵抗効果素子11、12、13のいずれについても、硬磁性層23は、前述した方法と同様に、1.5〜3nmの厚さに、m-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相あるいはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相となるように形成する。
硬磁性層23をm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相あるいはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相に形成したことによって、硬磁性層は1.5〜3.0nmといった薄厚で、かつ10kOe程度の大きな保持力を有するものとなる。これによって保磁力差型の磁気抵抗効果素子の硬磁性層として効果的に機能し、従来の反強磁性層にくらべて硬磁性層23の膜厚を薄くすることによって狭リードギャップ長化を図ることが可能となる。
【0030】
なお、図4〜7に示した磁気抵抗効果素子10、11、12、13は、磁気抵抗効果素子の膜構成の典型例を示したものであり、磁気抵抗効果素子の膜構成は上記例に限られるものではない。
【0031】
上記実施形態の磁気抵抗効果素子10、11、12、13は、磁気記憶装置に搭載する磁気ヘッドの再生ヘッドに利用することができる。
図8は再生ヘッド40と記録ヘッド50とを備える磁気ヘッドの構造を、ABS面に対して垂直な面方向の断面図として示したものである。再生ヘッド40は、下部シールド層41及び上部シールド層42と、下部シールド層41及び上部シールド層42に挟まれて配置されている磁気抵抗効果膜43とを備える。下部シールド層41、上部シールド層42及び磁気抵抗効果膜43が、上述した磁気抵抗効果素子10、11、12、13に相当する。
【0032】
記録ヘッド50は、主磁極51、第1リターンヨーク53及び第2リターンヨーク52とを備える。主磁極51のABS面から離間する側の下面に磁極層54が設けられ、主磁極51と磁極層54にコイル55が巻回されている。
本実施形態の磁気ヘッドは、リード特性を劣化させることなく狭リードギャップ長化を図った再生ヘッドを備える磁気ヘッドとして提供される。
【0033】
図9は上述した磁気ヘッドを備える情報記憶装置60を示す。
情報記憶装置60は、矩形の箱状に形成されたケーシング61内に、スピンドルモータによって回転駆動される磁気記録媒体62を備える。磁気記録媒体62の側方には、媒体面に平行に揺動可能に支持されたアクチュエータアーム63が配されている。アクチュエータアーム63の先端には、アクチュエータアーム63の延長方向にサスペンション64が取り付けられ、サスペンション64の先端に、磁気記録媒体62の媒体面に向けてヘッドスライダ65が取り付けられている。
【0034】
ヘッドスライダ65には、前述した磁気抵抗効果素子を備える磁気ヘッドが形成されている。磁気ヘッドはサスペンション64に形成された配線、及びアクチュエータアーム63に付設されたフレキシブルケーブル66を介して、磁気記録媒体に情報を記録し、磁気記録媒体に記録された情報を読み取る電気信号を制御する制御回路に接続される。
磁気ヘッドにより磁気記録媒体62に情報を記録し、情報を再生する処理は、アクチュエータ67により、アクチュエータアーム63を所定位置に揺動させる操作(シーク動作)とともになされる。
本実施形態の情報記憶装置は、磁気記録媒体の高密度化に対応した磁気ヘッドを搭載した製品として提供される。
【0035】
上述したm-D019型Co75Pt25(at.%)規則合金相あるいはL11型Co50Pt50(at.%)規則合金相として形成された硬磁性層は、磁気デバイスとしての不揮発メモリの磁化固定層として利用することができる。不揮発性メモリは、トンネルバリア層を挟んで固定磁化層と磁化自由層を配置した磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction)を備える。磁化自由層の磁化方向はビット線によって制御され、磁化自由層の磁化方向によってトンネル磁気抵抗が異なることを利用して記録信号を検出する。磁化自由層の磁化状態を利用することにより不揮発性となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】m-D019型とL11型CoPt規則合金の結晶構造を示す説明図である。
【図2】m-D019型とL11型CoPt規則合金の一軸異方性エネルギーを示すグラフである。
【図3】基板上に硬磁性層を形成する場合の膜構成を示す説明図である。
【図4】磁気抵抗効果素子の膜構成例を示す説明図である。
【図5】磁気抵抗効果素子の膜構成例を示す説明図である。
【図6】磁気抵抗効果素子の膜構成例を示す説明図である。
【図7】磁気抵抗効果素子の膜構成例を示す説明図である。
【図8】再生ヘッドとして本発明の磁気抵抗効果素子を備える磁気ヘッドの断面図である。
【図9】磁気ヘッドを搭載した情報記憶装置の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
10、11、12、13 磁気抵抗効果素子
21 下部シールド層
22 下地層
23 硬磁性層
24、26 磁化固定層
25 反強磁性結合層
27 スペーサ層
28 磁化自由層
30 上部シールド層
40 再生ヘッド
50 記録ヘッド
60 情報記憶装置
65 ヘッドスライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサ層と、硬磁性層と、磁化自由層とを備える磁気抵抗効果膜であって、
前記硬磁性層が、m-D019型CoPt規則合金相、またはL11型CoPt規則合金相として形成され、
該硬磁性層の磁化容易軸方向が硬磁性層の面内に向いていることを特徴とする磁気抵抗効果膜。
【請求項2】
前記硬磁性層が、m-D019型Co75Pt25(at.%表記)規則合金からなることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果膜。
【請求項3】
前記硬磁性層が、L11型Co50Pt50(at.%表記)規則合金からなることを特徴とする請求項1
記載の磁気抵抗効果膜。
【請求項4】
前記硬磁性層は、膜厚1.5〜3nmm、保磁力10(kOe)以上であることを特徴とする請求項1〜3記載の磁気抵抗効果膜。
【請求項5】
前記硬磁性層はL11型CoPt規則合金相であり、(211)結晶配向したCrまたはFe、またはこれらの合金からなる下地層に積層して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の磁気抵抗効果膜。
【請求項6】
前記スペーサ層がトンネルバリア層として形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載の磁気抵抗効果素子を備える磁気再生ヘッド。
【請求項8】
磁気抵抗効果膜を備えたヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを支持するサスペンションと、
前記サスペンションの端部を固定し、回動自在なアクチュエータアームと、
前記サスペンション及び前記アクチュエータアーム上の絶縁された導電線を通じて、前記磁気抵抗効果素子に電気的に接続され、媒体に記録された情報を読み取るための電気信号を検出する回路と、を備える情報記憶装置であって、
前記磁気抵抗効果膜は、スペーサ層と、硬磁性層と、磁化自由層とを備え、
前記硬磁性層が、m-D019型CoPt規則合金相、またはL11型CoPt規則合金相として形成され、
該硬磁性層の磁化容易軸方向が硬磁性層の面内に向いていることを特徴とする情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−97979(P2010−97979A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264991(P2008−264991)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】