説明

移動体装置、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、デバイス製造方法、及び移動体装置の組立方法。

【課題】運動性能の向上した基板ステージ装置を提供する。
【解決手段】 基板ステージ20は、X軸方向に関する位置を個別に制御可能であってY軸方向に関して互いに分離して配置される第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとを含み、X軸方向に沿って移動するX粗動ステージ23xと、基板Pを保持し、X粗動ステージ23xに誘導されて少なくともX軸方向に沿って移動する微動ステージ30と、Y軸方向に関して第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとの間に配置され、微動ステージ30を下方から支持し、微動ステージ30と共に少なくともX軸方向に沿って移動可能な重量キャンセル装置50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法、並びに移動体装置の組立方法に係り、更に詳しくは、所定方向に沿って移動可能な移動体を備える移動体装置とその組立方法、前記移動体装置を備える露光装置、及び前記露光装置を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法、並びに前記露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)と、ガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、マスクに形成されたパターンをエネルギビームを用いて基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、露光対象の基板を保持する基板保持部材を下方から支持することにより、該基板保持部材を6自由度方向に駆動するためのリニアモータの負荷を低減する重量キャンセル装置を含む基板ステージ装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、露光装置の基板ステージ装置は、基板を高速且つ高精度で位置制御する必要があるため、運動性能が向上したものが望まれている。また、基板ステージ装置は、近年の基板の大型化に伴い大型化しており、組立作業が容易であることも望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0018950号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、第1方向に関する位置を個別に制御可能であって前記第1方向に直交する第2方向に関して互いに分離して配置される第1部分と第2部分とを含み、前記第1方向に沿って移動する第1移動体と、物体を保持し、前記第1移動体に誘導されて少なくとも前記第1方向に沿って移動する物体保持部材と、前記第2方向に関して前記第1部分と前記第2部分との間に配置され、前記物体保持部材を下方から支持し、前記物体保持部材と共に少なくとも前記第1方向に沿って移動可能な支持装置と、を備える移動体装置である。
【0007】
これによれば、第1部分と第2部分とは、第1方向に関する位置が個別に制御可能、且つ第2方向に関して互いに分離して配置されるので、第1移動体の運動性能が向上する。また、第1及び第2部分は、第2方向に関してそれぞれ支持装置の一側及び他側に配置されるので、移動体装置の組立が容易である。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、本発明の移動体装置と、前記物体保持部材に保持された物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置である。
【0009】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法である。
【0010】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【0011】
本発明は、第5の観点からすると、第1方向に沿って移動可能な第1移動体と、物体を保持し、前記第1移動体に誘導されて少なくとも前記第1方向に移動する物体保持部材と、を含む移動体装置の組立方法であって、前記物体保持部材を下方から支持する支持装置を所定の支持部材上に設置することと、前記第1方向に直交する第2方向に関して、前記支持装置の一側に前記第1移動体の第1部分を配置することと、前記第2方向に関して、前記支持装置の他側に前記第1部分とは個別に前記第1方向の位置制御がされる前記第1移動体の第2部分を配置することと、を含む移動体装置の組立方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の液晶露光装置が有する基板ステージ装置(一部省略)の平面図である。
【図3】図2の基板ステージから微動ステージを取り除いた図である。
【図4】基板ステージ装置の一部断面図である。
【図5】基板ステージ装置の組立方法を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態に係る基板ステージ装置の平面図である。
【図7】第3の実施形態に係る基板ステージ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0014】
図1には、液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とする投影露光装置である。
【0015】
液晶露光装置10は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、一対の基板ステージ架台33、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置PST、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0016】
照明系IOPは、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0017】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により吸着保持されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(不図示)により走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含むマスク干渉計システムにより計測される。
【0018】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの下方に配置されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、マスクMのパターン像の投影領域が千鳥状に配置された複数の投影光学系(マルチレンズ投影光学系)を含み、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。本実施形態では、複数の投影光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。
【0019】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0020】
一対の基板ステージ架台33は、液晶露光装置10の装置本体(ボディ)を構成する部材であり、上記マスクステージMST、及び投影光学系PLは、装置本体に支持されている。一対の基板ステージ架台33それぞれは、図2に示されるように、Y軸方向に延びる部材から成り、X軸方向に離間して互いに平行に配置されている。基板ステージ架台33は、その長手方向の端部近傍が、図1に示されるように、クリーンルームの床11上に設置された防振装置34により下方から支持されている。これにより、装置本体(及びマスクステージMST、投影光学系PLなど)が、床11から振動的に分離される。
【0021】
基板ステージ装置PSTは、図2に示されるように、一対のベースフレーム14、補助ベースフレーム15、及び基板ステージ20を備えている。なお、図1に示される基板ステージ装置PSTは、図2のA−A線断面図に相当する(ただし、図2では基板ホルダ31が取り除かれている)。
【0022】
一方のベースフレーム14は、+X側の基板ステージ架台33の+X側に、他方のベースフレーム14は、−X側の基板ステージ架台33の−X側に、補助ベースフレーム15は、一対の基板ステージ架台33の間に、それぞれ基板ステージ架台33に所定距離隔てて(非接触状態で)配置されている。一対のベースフレーム14及び補助ベースフレーム15は、それぞれY軸方向に延びるYZ平面に平行な板状部材から成り、複数のアジャスタ装置を介して高さ位置(Z位置)が調整可能に床11上に設置されている。一対のベースフレーム14、及び補助ベースフレーム15それぞれの上端面(+Z側の端部)には、Y軸方向に延びる機械的なYリニアガイド装置(一軸ガイド装置)の要素であるYリニアガイド16aが固定されている。
【0023】
図1に戻り、基板ステージ20は、Y粗動ステージ23y、X粗動ステージ23x、微動ステージ30、Yステップ定盤40、重量キャンセル装置50、及び複数の位置決め用エアシリンダ36(図1では不図示。図4参照)を有している。
【0024】
Y粗動ステージ23yは、一対のベースフレーム14、及び補助ベースフレーム15上に搭載されている。Y粗動ステージ23yは、図2に示されるように、一対のXビーム25を有している。一対のXビーム25それぞれは、X軸方向に延びるYZ断面が矩形の部材から成り、Y軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。一対のXビーム25は、+X側及び−X側の端部近傍それぞれにおいて、Yキャリッジ26により互いに接続されている。Yキャリッジ26は、Y軸方向に延びるXY平面に平行な板状部材から成り、その上面上に一対のXビーム25が搭載されている。また、Yキャリッジ26の上面には、Yキャリッジ26に対する一対のXビーム25の取付位置を規定する複数の位置決めピン29が固定されている。また、一対のXビーム25は、図1に示されるように、その長手方向の中央部が補助キャリッジ26aにより接続されている。
【0025】
Yキャリッジ26の下面、及び補助キャリッジ26aの下面には、上記Yリニアガイド16aと共にYリニアガイド装置16を構成するYスライド部材16bが複数(図1では紙面奥行き方向に重なっている)固定されている。Yスライド部材16bは、対応するYリニアガイド16aに低摩擦でスライド自在に係合しており、Y粗動ステージ23yは、一対のベースフレーム14、及び補助ベースフレーム15上を低摩擦でY軸方向に所定のストロークで移動可能となっている。一対のXビーム25の下面のZ位置は、一対の基板ステージ架台33の上面よりも+Z側に設定されており、Y粗動ステージ23yは、一対の基板ステージ架台33(すなわち装置本体)から振動的に分離されている。なお、Yリニアガイド装置16において、Yスライド部材16bをYキャリッジ26(あるいは補助キャリッジ26a)に対してX軸方向に相対移動可能に追加して取り付けても良い。この場合、仮に複数のYリニアガイド16a相互間の平行度が低下しても、Y粗動ステージ23yのY軸方向へのスムースな移動が保証される。
【0026】
Y粗動ステージ23yは、図2に示されるように、一対のY送りねじ装置17によりY軸方向に駆動される。一対のY送りねじ装置17それぞれは、ベースフレーム14の外側面に取り付けられたモータにより回転駆動されるねじ軸17aと、Yキャリッジ26に取り付けられた複数の循環式ボール(不図示)を有するナット17bとを含む。Y粗動ステージ23yのY位置情報は、不図示のリニアエンコーダシステムにより求められる。なお、Y粗動ステージ23y(一対のXビーム25)をY軸方向に駆動するためのYアクチュエータの種類は、上記ボールねじ装置に限らず、例えばリニアモータ、ベルト駆動装置などであっても良い。また、補助ベースフレーム15に上記Y送りねじ装置17と同様な構成(あるいは別種の)のYアクチュエータを配置しても良い。また、Y送りねじ装置17はひとつでも良い。
【0027】
一対のXビーム25それぞれの上面には、X軸方向に延びる機械的な一軸ガイド装置の要素であるXリニアガイド27aが、Y軸方向に所定間隔でひとつのXビーム25につき、例えば2本、互いに平行に固定されている。また、一対のXビーム25それぞれの上面であって、一対のXリニアガイド27a間の領域には、X軸方向に所定間隔で配列された複数の永久磁石を含む磁石ユニット28a(X固定子)が固定されている。
【0028】
X粗動ステージ23xは、図3に示されるように、第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとを有している。第1Xテーブル24aは、+Y側のXビーム25上に搭載され、第2Xテーブル24bは、−Y側のXビーム25上に搭載されている。第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれは、X軸方向を長手方向とする平面視矩形の板状部材から成り、Y軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれの幅方向寸法(Y軸方向の寸法)は、Xビーム25の幅方向寸法と同程度に(本第1の実施形態では幾分広く)設定されている。
【0029】
第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれの下面には、図4に示されるように、上記Xリニアガイド27aと共にXリニアガイド装置27を構成するXスライド部材27bが固定されている。Xスライド部材27bは、一本のXリニアガイド27aにつき、X軸方向に所定間隔で、例えば4個設けられている(図1参照)。Xスライド部材27bは、対応するXリニアガイド27aに低摩擦でスライド自在に係合しており、第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれは、Y粗動ステージ23y上を低摩擦でX軸方向に所定のストロークで移動可能となっている。また、第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれの下面には、磁石ユニット28aに所定のクリアランスを介して対向し、磁石ユニット28aと共に第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれを独立にX軸方向に所定のストロークで駆動するためのXリニアモータ28を構成するコイルユニット28b(X可動子)が固定されている。第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれのX位置情報は、それぞれ不図示のリニアエンコーダシステムにより独立に求められる。なお、図4(及び図5)は、基板ステージ20を+X側から見た側面図であるが、基板ステージ20のうち、微動ステージ30、重量キャンセル装置50、レベリング装置60が図2のB−B線断面図で示されている。
【0030】
なお、基板ステージ20では、第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれが互いに分離して配置されており、独立した計測系(リニアエンコーダシステムを含む)により位置計測が行われ、独立した駆動系(Xリニアモータを含む)によりX位置を制御することができるように構成されているが、第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bのX軸方向の位置制御(速度制御も含む)は原則的に同期するように行われる。
【0031】
また、第1Xテーブル24a及び第2Xテーブル24bそれぞれは、Xリニアガイド装置27によりY粗動ステージ23yに対するY軸方向への相対移動が制限されており、Y粗動ステージ23yと一体的にY軸方向に移動する。
【0032】
微動ステージ30は、図2に示されるように、平面視矩形の箱形部材から成り、その上面に、図1に示されるように、基板ホルダ31が固定されている。基板ホルダ31は、その上面に載置された基板Pを、例えば真空吸着により吸着保持する。
【0033】
微動ステージ30は、X粗動ステージ23xに固定された固定子と、微動ステージ30に固定された可動子とから成る複数のボイスコイルモータを含む微動ステージ駆動系により、X粗動ステージ23x上で3自由度方向(X軸、Y軸、θz方向)に微少駆動される。複数のボイスコイルモータには、図2に示されるように、複数(本第1の実施形態では、例えば2つ)のXボイスコイルモータ18x、及び複数(本第1の実施形態では、例えば2つ)のYボイスコイルモータ18yが含まれる。
【0034】
ここで、例えば2つのXボイスコイルモータ18xを構成する、例えば2つのX固定子の一方は、第1Xテーブル24a上に固定され、X固定子の他方は、第2Xテーブル24b上に固定されている。また、例えば2つのYボイスコイルモータ18yを構成する、例えば2つのY固定子は、それぞれ第1Xテーブル24a上に固定されている。微動ステージ30は、上記複数のボイスコイルモータが発生する推力(電磁力)によって、X粗動ステージ23xに非接触で誘導され、これにより、そのX粗動ステージ23xと共にX軸方向、及び/又はY軸方向に所定のストロークで移動する。また、微動ステージ30は、複数のボイスコイルモータによりX粗動ステージ23xに対して上記3自由度方向に適宜微少駆動される。
【0035】
また、微動ステージ駆動系は、図1に示されるように、微動ステージ30をθx、θy、及びZ軸方向の3自由度方向に微少駆動するための複数のZボイスコイルモータ18zを有している。複数のZボイスコイルモータ18zは、例えば微動ステージ30の四隅部に対応する箇所に配置されている(図1では、4つのZボイスコイルモータ18zのうち2つのみが示され、他の2つは図示省略。また、図2では不図示)。複数のボイスコイルモータを含み、微動ステージ駆動系の構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0036】
ここで、前述したように、第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24bは、原則としてX軸方向に同期駆動されるが、上記複数のボイスコイルモータの固定子と可動子とが接触しない程度であれば、互いのX軸方向の位置ずれは許容される。また、基板Pの位置は、後述する光干渉計測システムの出力に基づいて複数のボイスコイルモータにより高精度で制御されるため、基板ステージ20において、第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24bを厳密に同期駆動する必要もない。
【0037】
第1Xテーブル24aと微動ステージ30とのX軸方向に関する相対位置情報は、図2に示されるように、第1Xテーブル24aに固定されたXギャップセンサ44xaにより、微動ステージ30に固定されたXターゲット45を用いて求められる。同様に、第2Xテーブル24bと微動ステージ30とのX軸方向に関する相対位置情報は、第2Xテーブル24bに固定されたXギャップセンサ44xbにより、微動ステージ30に固定されたXターゲット45を用いて求められる。また、第1Xテーブル24aと微動ステージ30とのY軸方向に関する相対位置情報は、第1Xテーブル24aに固定されたYギャップセンサ44yにより、微動ステージ30に固定されたYターゲット45を用いて求められる。
【0038】
図1に戻り、微動ステージ30のXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含む基板干渉計システムにより、微動ステージ30にミラーベース21を介してそれぞれ固定されたX移動鏡22x、及びY移動鏡22y(図1では不図示。図2参照)を用いて求められる。レーザ干渉計には、X移動鏡22xに対応するXレーザ干渉計、及びY移動鏡22yに対応するYレーザ干渉計がそれぞれ複数含まれる。
【0039】
また、微動ステージ30のθx、θy、及びZ軸方向それぞれの位置情報は、図4に示されるように、微動ステージ30の下面に固定された複数のZセンサ46により、後述する重量キャンセル装置50にフィーラ58と称されるアーム状の部材を介して固定されたターゲット47を用いて求められる。本第1の実施形態では、複数のZセンサ46には、微動ステージ30のZ軸方向に関する絶対位置計測用のレーザ変位計46と、相対位置計測用のレーザ変位計46とが含まれる。複数のZセンサ46は、XY平面内の同一直線上にない少なくとも3箇所に配置されている。なお、Zセンサ46は、相対位置計測用のレーザ変位計46のみであっても良い。上記微動ステージ30の位置計測系の構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0040】
Yステップ定盤40は、図3に示されるように、X軸方向に伸びるYZ断面矩形の部材から成り、一対のXビーム25それぞれに所定距離隔てた状態で(非接触状態で)、一対のXビーム25間に挿入されている。Yステップ定盤40の長手方向の寸法は、微動ステージ30のX軸方向に関する移動ストロークよりも幾分長めに設定されている。また、Yステップ定盤40の幅方向(Y軸方向)の寸法は、重量キャンセル装置50が有する複数のエアベアリング55を支持可能な幅に設定されている。Yステップ定盤40の上面は、平面度が非常に高く仕上げられている。Yステップ定盤40は、図3に示されるように、一対の基板ステージ架台33それぞれの上面に固定された複数のYリニアガイド35aと、Yステップ定盤40の下面に固定された複数のYスライド部材35bとにより構成される複数のYリニアガイド装置35により、一対の基板ステージ架台33上でY軸方向に所定のストロークで直進案内される。
【0041】
Yステップ定盤40は、図3に示されるように、+X側、及び−X側の端部近傍それぞれにおいて、一対のフレクシャ装置41と称される装置を介して一対のXビーム25に機械的に連結されている。これにより、Yステップ定盤40は、Y粗動ステージ23yがY軸方向に駆動されると、そのY粗動ステージ23yに牽引されて一体的にY軸方向に移動する。フレクシャ装置41は、例えばXY平面に平行に配置された厚さの薄い帯状の鋼板(あるいはワイヤロープ、合成樹脂製ロープ、鎖など)と、その鋼板の両端部に設けられた滑節装置(例えばボールジョイント、又はヒンジ装置)とを含み、上記鋼板が滑節装置を介してYステップ定盤40とXビーム25との間に架設されている。フレクシャ装置41は、長手方向(ここではY軸方向)の剛性に比べて他の5自由度方向(ここではX,Z,θx、θy、θz方向)の剛性が低く、上記5自由度方向に関してYステップ定盤40とY粗動ステージ23yとが振動的に分離される。
【0042】
このように、Yステップ定盤40は、Y粗動ステージ23yに牽引されることによりY軸方向に移動するので、駆動用アクチュエータ、及び位置計測用部材(例えばリニアエンコーダなど)が必要なく、コストが安い。また、Yステップ定盤40は、Y粗動ステージ23yに駆動されるので、基板ステージ架台33を含み、装置本体に駆動反力が伝わらない。なお、Yステップ定盤40の材料は、特に限定されないが、例えば石材(例えば斑レイ岩などの緻密な石材)、あるいはセラミックス、鋳鉄などを用いて形成することが好ましい。また、本第1の実施形態のYステップ定盤40は、長手方向に直交する断面が矩形状であるが、これに限定されず、例えばI字状などであっても良く、また中実であっても中空であっても良い。また、Yステップ定盤40とXビーム25とを連結するフレクシャ装置41の配置及び数は、上記に限られず、例えばよりYステップ定盤40の中央側に配置されても良いし、ひとつのXビーム25とYステップ定盤40とを3箇所以上で接続しても良い。あるいは、Yステップ定盤40のX軸方向に関する重心位置に対応する一箇所でXビーム25とYステップ定盤40とを接続しても良い。
【0043】
重量キャンセル装置50は、図4に示されるように、後述するレベリング装置60と称される装置を介して微動ステージ30を下方から支持している。重量キャンセル装置50は、Y軸方向に関して第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとの間に配置されており、Yステップ定盤40上に載置されている。
【0044】
本実施形態の重量キャンセル装置50は、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示される重量キャンセル装置と同様の構成、及び機能を有している。すなわち、重量キャンセル装置50は、上部が開口した有底の筒状部材から成る筐体51と、筐体51の内部に収容された空気ばね52と、空気ばね52上に搭載され、複数の平行板ばね装置53を介して筐体51に対してZ軸方向に相対移動可能に取り付けられたZスライダ54などを備える。重量キャンセル装置50は、空気ばね52が発生する重力方向上向き(+Z方向)の力により、微動ステージ30、基板ホルダ31などを含む系の重量(重量加速度による下向き(−Z方向)の力)を打ち消し、これにより微動ステージ駆動系を構成する複数のZボイスコイルモータ18zの負荷を低減する。
【0045】
重量キャンセル装置50は、その重心のZ位置とほぼ同じZ位置(重心高さ)で、図3に示されるように、第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24bそれぞれに対して複数、例えば2つのフレクシャ装置56を介して機械的に接続されている。フレクシャ装置56の構成は、前述したYステップ定盤40とXビーム25とを接続するフレクシャ装置41の構成と概ね同じである。例えば、4つのフレクシャ装置56、は、それぞれY軸に対して、例えば45°の角度を成しており、例えば4本のフレクシャ装置56が重量キャンセル装置50を中心に平面視でX字状(放射状)に延びて配置されている。これにより、X粗動ステージ23x(第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24b)がX軸方向、及び/又はY軸方向に移動すると、重量キャンセル装置50は、複数のフレクシャ装置56の少なくともひとつを介してX粗動ステージ23xに牽引されることにより、X粗動ステージ23xと一体的にX軸方向、及び/又はY軸方向に移動する。
【0046】
ここで、重量キャンセル装置50は、図4に示されるように、筐体51の下面に取り付けられた複数のエアベアリング55(以下、ベースパッド55と称する)を介して、Yステップ定盤40上に非接触状態で搭載されている。重量キャンセル装置50は、X粗動ステージ23xと一体的にX軸方向に移動する際には、Yステップ定盤40上を移動する。これに対し、重量キャンセル装置50は、X粗動ステージ23xと一体的にY軸方向に移動する際には、Y粗動ステージ23y、及びYステップ定盤40と一体的にY軸方向に移動するのでYステップ定盤40上から脱落することがない。
【0047】
レベリング装置60は、レベリングカップ61と、レベリングカップ61の内壁面に弾性ヒンジ装置を介して揺動自在に取り付けられた複数(本実施形態では、例えば3つ。ただし、図4では、例えば3つのレベリングパッド62のうちのひとつは不図示)のエアベアリング62(以下、レベリングパッド62と称する)とを含む。レベリング装置60は、微動ステージ30の天井面にスペーサ64を介して固定された逆三角錐状の部材63(以下、レベリングダイヤ63と称する)の傾斜面それぞれをレベリングパッド62で非接触支持することにより、微動ステージ30を微動ステージ30及び基板ホルダ31を含む系の重心CGを回転中心としてθx及びθy方向に揺動(チルト)自在に下方から支持している。
【0048】
レベリング装置60は、レベリングカップ61が重量キャンセル装置50のZスライダ54の上面に取り付けられた複数のエアベアリング57(以下、シーリングパッド57と称する)に下方から非接触支持されており、重量キャンセル装置50に対して水平面に平行な方向に振動的に分離されている。レベリング装置60の詳細な構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。なお、図1では、レベリング装置60が模式的に球面軸受け装置として示されているが、レベリング装置60が球面軸受け装置と同様に機能することから、微動ステージ30を水平面に対して揺動可能に支持できれば、以上説明したレベリング装置60に替えて球面軸受け装置を用いても良い。
【0049】
本第1の実施形態では、例えば3つの位置決め用エアシリンダ36(以下、単にエアシリンダ36と称する)のうち、例えば2つは、第1Xテーブル24aの上面に(図4では紙面奥行き方向に隠れているため、一方は不図示)、例えば1つは、第2Xテーブル24bの上面にそれぞれロッド先端が+Z側を向くように固定されている。従って、例えば3つのエアシリンダ36は、例えば三角形の頂点に対応する位置(すなわち同一直線上にない3箇所)に配置されている。複数のエアシリンダ36それぞれのロッド先端には、ボールが固定されている。
【0050】
微動ステージ30の下面であって、第1Xテーブル24aに固定された、例えば2つのエアシリンダ36に対応する位置には、下面に円錐溝が形成された嵌合部材37aが固定されている。基板ステージ20では、微動ステージ30がX粗動ステージ23xに対して6自由度方向に微少駆動されるが、例えば2つのエアシリンダ36それぞれのボールを対応する嵌合部材37aの円錐溝内に嵌合させることにより、第1Xテーブル24aに対する微動ステージ30のX、Y、及びθz方向の位置を拘束(相対移動を制限)することができる。
【0051】
また、微動ステージ30の下面であって、第2Xテーブル24bに固定された、例えば1つのエアシリンダ36に対応する位置には、平板状の当接部材37bが固定されている。基板ステージ20では、第1Xテーブル24aに固定された、例えば2つのエアシリンダ36と、第2Xテーブル24bに固定された、例えば1つのエアシリンダ36を併せて用いることにより、微動ステージ30のθx、θy、及びZ軸方向の位置を制御することができる。
【0052】
次に基板ステージ装置PSTの組立手順の一例について説明する。本第1の実施形態において、基板ステージ装置PSTは、先ずクリーンルームの床11上に、図2に示される配置で、一対の基板ステージ架台33、一対のベースフレーム14、及び補助ベースフレーム15がそれぞれ設置される。この後、一対のベースフレーム14にYキャリッジ26が、補助ベースフレーム15に補助キャリッジ26aが、それぞれYリニアガイド装置16を介して搭載されるとともに、一対の基板ステージ架台33上にYステップ定盤40が複数のYリニアガイド装置35を介して搭載される。
【0053】
次いで、Yステップ定盤40上に、図5に示されるように、重量キャンセル装置50が搭載され、この後、図5の黒矢印で示されるように、予め第1Xテーブル24aが搭載された一方のXビーム25、及び予め第2Xテーブル24bが搭載された他方のXビーム25が、それぞれ重量キャンセル装置50の両側に配置され、Yキャリッジ26、及び補助キャリッジ26a(図5では不図示。図1参照)上に搭載される。この際、一対のXビーム25のYキャリッジ26上の位置は、位置決めピン29により規定される。なお、一対のYキャリッジ26は、それぞれが分割されていても良い。この場合、Xビーム25とYキャリッジを一体にしてリニアガイド16aに沿って図5の黒塗り矢印で示されるように移動させ、所定の位置に配置させた後にYキャリッジ同士を結合するようにしても良い。Xビーム25の移動にガイドがあることにより、組立がより容易になる。
【0054】
この後、図5の白矢印で示されるように、微動ステージ30(レベリング装置60を含む)が重量キャンセル装置50上に載置され、複数のボイスコイルモータの固定子と可動子とが組み合わされる。次いで、重量キャンセル装置50の空気ばね52、ベースパッド55、及びシーリングパッド57、並びにレベリング装置60のレベリングパッド62に加圧気体が供給され、微動ステージ30が重量キャンセル装置50に非接触支持される。
【0055】
ここで、基板ステージ20では、基板Pの位置制御がレーザ干渉計を用いた基板干渉計システムの計測値に基づいて行われるため、最初に微動ステージ30を所定の計測原点位置に位置させる必要がある。これに対し、基板ステージ20は、微動ステージ30をガイドする部材がないため、微動ステージ30を単体で上記計測原点位置に位置させることが困難である。このため、本第1の実施形態では、第1Xテーブル24aに取り付けられた、例えば2つのエアシリンダ36を用いて第1Xテーブル24aに対する微動ステージ30の水平面内の位置(X軸、Y軸、及びθz方向の位置)を機械的に拘束し、その状態で、X粗動ステージ23x、及び/又はY粗動ステージ23yを用いて微動ステージ30を不図示のレーザ干渉計から照射される測長ビームがX移動鏡22x(図5では不図示。図2参照)、及びY移動鏡22yそれぞれに垂直に入射する位置に位置決めする。この際、第2Xテーブル24bが有するエアシリンダ36を併せて用いることにより、微動ステージ30のZ軸、θx、及びθy方向のおおよその位置決めを行うこともできる。微動ステージ30のZ軸、θx、θy方向の位置情報は、微動ステージ30の下面に取り付けられた複数のZセンサ46を用いて求められ、微動ステージ30は、Z軸、θx、θy方向に関して、複数のZボイスコイルモータ18zにより計測原点位置に位置決めされる。
【0056】
ここで、本第1の実施形態のX粗動ステージ23xは、第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとの2つの互いに分離した部材から成り、第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとが、互いに独立に制御されているため、互いのX位置の関係が変化する可能性がある。また、一対のXビーム25も、独立に組み立てられるので、互いの平行度が悪い可能性がある。これに対し、本第1の実施形態では、第1Xテーブル24a(2つのXテーブルのうちの一方)を基準にして微動ステージ30のX軸、Y軸、及びθz方向の位置決めが行われるので、仮に第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとのX位置にずれが生じても、微動ステージ30を第1Xテーブル24aを用いて確実に計測原点位置に位置決めすることができる。
【0057】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージMST上へのマスクMのロードが行われるとともに、不図示の基板搬入装置によって、基板ホルダ31上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。なお、この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。そして、露光処理が終了した基板が不図示の基板搬出装置により基板ホルダ31上から搬出されるとともに、次に露光される別の基板が基板ホルダ31に搬送されることにより、基板ホルダ31上の基板の交換が行われ、複数の基板に対し、露光動作などが連続して行われる。
【0058】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、X粗動ステージ23xが、第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24bの互いに分離した2つの部分により構成されているので、仮にX粗動ステージ23xを一対のXビーム25間に架設されるような部材とする場合に比べて、軽量化を図ることができ、これにより運動性能が向上し、より高速且つ高精度での基板Pの位置制御が可能となる。また、本第1の実施形態に係る基板ステージ20は、微動ステージ30(すなわち基板P)のXY平面内の位置が複数のボイスコイルモータにより制御されるので、X粗動ステージ23xの位置制御は、微動ステージ30に比べて高精度である必要がない。従って、X粗動ステージ23xが互いに2つの部分から構成されることにより、第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24bのX位置がずれる可能性があるが、基板Pの位置制御には問題が生じない。
【0059】
また、X粗動ステージ23xが互いに分離した第1Xテーブル24aと第2Xテーブル24bとで構成されているので、基板ステージ20を組み立てる際に、一対のXビーム25、及びX粗動ステージ23x(第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24b)に先行してYステップ定盤40上に重量キャンセル装置50を載置することができる。従って、基板ステージ20を組み立てる際に、重量キャンセル装置50をX粗動ステージ23xよりも高く吊り上げる必要がない。したがって、基板ステージ20の組立作業が容易である。また、Y粗動ステージ23yに関しても、同様に、一対のXビーム25が別部材とされているので、基板ステージ20を組み立てる際に、重量キャンセル装置50を吊り上げて一対のXビーム25間に挿入する必要がない。したがって、基板ステージ20の組立作業が容易である。
【0060】
また、Xビーム25と第1Xテーブル24a、及びXビーム25と第2Xテーブル24bそれぞれを、図5に示されるように、予め組み立てて運搬することが可能であるため、基板ステージ装置PSTが設置されるクリーンルームに分解して輸送する際の輸送が容易であり、且つそのクリーンルーム内で組み立てる際の組立作業が容易である。
【0061】
また、Xビーム25は、長手方向の中間部が補助ベースフレーム15により下方から支持されているので、その自重に起因する撓みを抑制でき、第1Xテーブル24a(あるいは第2Xテーブル24b)をガイドするガイド面の平面度の低下が抑制される。
【0062】
《第2の実施形態》
次に第2の実施形態について図6を用いて説明する。第2の実施形態に係る基板ステージ120の構成は、第1Xテーブル24cの形状が異なる点、及び重量キャンセル装置50とX粗動ステージ123xとを接続する複数のフレクシャ装置56の配置が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じである。以下、上記第1の実施形態と同様の構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0063】
上記第1の実施形態において、第1Xテーブル24aは、図3に示されるように、Xビーム25と同程度の幅方向寸法で形成された平面視矩形(長方形)の板状部材から成ったのに対し、本第2の実施形態における第1Xテーブル24cは、図6に示されるように、Xビーム25とほぼ同じ幅方向寸法で形成された平面視でX軸方向を長手方向とする長方形の部分24c(以下、本体部24cと称する)と、上記本体部24cの+X側の端部近傍、及び−X側の端部近傍それぞれにおける−Y側の側面から−Y側に突き出した平面視矩形の板状の部分24c(以下、突出部24cと称する)と、を備え、平面視でU字状に形成されている。一対の突出部24cの先端部(−Y側の端部)と第2Xテーブル24bとの間には、隙間が形成されており、上記第1の実施形態と同様に第1Xテーブル24cと第2Xテーブル24bとは、独立にX位置が制御される。
【0064】
重量キャンセル装置50は、一対の突出部24cの間に挿入されている。重量キャンセル装置50は、第1Xテーブル24cの本体部24c、及び第2Xテーブル24bそれぞれに対し、Y軸に平行に配置されたフレクシャ装置56を介して接続されており、X粗動ステージ123xと一体的にY軸方向に移動する。また、重量キャンセル装置50は、一対の突出部24cそれぞれに対し、X軸に平行に配置されたフレクシャ装置56を介して接続されており、第1Xテーブル24cと一体的にX軸方向に移動する。なお、複数のフレクシャ装置56の配置は、上記第1の実施形態と同じでも良い。
【0065】
以上説明した第2の実施形態では、微動ステージ30をX軸方向に駆動するXボイスコイルモータ18x(図6では不図示。図2参照)を微動ステージ30のY軸方向に関する中央位置に配置することができる。この場合、例えば、X粗動ステージ123xと微動ステージ30を機械的に接触させてX粗動ステージ123xの駆動力を微動ステージ30に伝えても良い。
【0066】
《第3の実施形態》
次に第3の実施形態について図7を用いて説明する。第3の実施形態に係る基板ステージ220の構成は、重量キャンセル装置250の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じである。以下、上記第1の実施形態と同様の構成、及び機能を有する部材については、上記第1の実施形態と同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0067】
上記第1の実施形態において、図4に示されるように、レベリング装置60は、シーリングパッド57を介して重量キャンセル装置50に非接触支持され、重量キャンセル装置50に対して水平面に平行な方向に相対移動可能であるのに対し、本第3の実施形態において、図7に示されるように、レベリング装置60は、重量キャンセル装置250の筐体251内に収容されるとともにZスライダ254に一体的に接続されている。このため、レベリング装置60のZ位置が上記第1の実施形態よりも低く、その分スペーサ264が厚く形成されている。また、上記第1の実施形態において、図3に示されるように、重量キャンセル装置50は、複数のフレクシャ装置56を介してX粗動ステージ23xに接続されるのに対し、本第3の実施形態では、図7に示されるように、重量キャンセル装置250がX粗動ステージ23xから分離されている。したがって、X粗動ステージ23x及び重量キャンセル装置250相互間で振動が伝達しない。
【0068】
本第3の実施形態の基板ステージ220では、微動ステージ30がX粗動ステージ23xに誘導されて水平面に沿って移動する際、あるいは複数のボイスコイルモータにより水平面に沿って微少駆動される際、レベリングダイヤ63とレベリングパッド62との間の気体の静圧により、レベリングカップ61と重量キャンセル装置250とが微動ステージ30と一体的に水平面に沿って移動する。本第3の実施形態のような構成の基板ステージ220であっても、上記第1の実施形態と同様に、基板ステージ220の組立時には、一対のXビーム25、及びX粗動ステージ23x(第1Xテーブル24a、及び第2Xテーブル24b)に先行してYステップ定盤40上に重量キャンセル装置250を載置することができ、組立作業が容易となる。
【0069】
なお、上記第1〜第3の実施形態で説明した構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記第1〜第3の実施形態において、基板ステージ架台33は、例えば2つであったが、これに限られず、3つ以上配置し、それぞれの基板ステージ架台33の間に更に補助ベースフレーム15を配置することにより、さらにXビーム25の自重に起因する撓みを抑制しても良い。なお、Xビーム25の撓みが無視できる程度であれば、補助ベースフレーム15は、配置しなくても良い。また、基板ステージ架台33は、Y軸方向に延びる部材から成ったが、これに限られず、X軸方向に延びる部材とし、Y軸方向に所定間隔で配置しても良い。
【0070】
また、Yステップ定盤40は、機械的な一軸ガイド装置であるYリニアガイド装置35を介して基板ステージ架台33上でY軸方向に直進案内されたが、これに限られず、例えば、Yステップ定盤40の下面にエアベアリングを複数取り付け、基板ステージ架台33上に浮上させても良い。この場合、Yステップ定盤40と一対のXビーム25とを接続するフレクシャ装置41としては、Yステップ定盤40とXビーム25とのX軸方向の相対移動を抑制するため、X軸方向の剛性が高い構造のものにしておくことが好ましい。
【0071】
また、基板ステージ20、120、220は、それぞれY粗動ステージ23y上にX粗動ステージ23xが搭載される構成であったが、これに限られず、X軸方向(スキャン方向)に所定のストロークで移動するX粗動ステージ上にY軸方向(クロススキャン方向)に所定のストロークで移動するY粗動ステージ23yが搭載される構成であっても良い。また、重量キャンセル装置50は、Yステップ定盤40上でX軸方向に移動し、Yステップ定盤40と共にY軸方向に移動する構成であったが、これに限られず、Yステップ定盤40に換えて、重量キャンセル装置50のXY平面内の移動範囲に対応する広いガイド面を有する定盤を基板ステージ架台33上に固定し、その定盤上に重量キャンセル装置50を搭載しても良い。また、X粗動ステージ23xは、第1Xテーブル24a(あるいは24c)と、第2Xテーブル24bとが、互いに分離されて配置されていたが、互いのX位置を拘束しなければ、連結されていても良い。また、重量キャンセル装置50は、空気ばね52を用いる構成のものに限られず、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるようなコイルバネ、あるいはカム装置などを用いた構造のものであっても良い。
【0072】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0073】
また、上記第1〜第3の実施形態では、投影光学系PLが、複数本の投影光学ユニットを備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学ユニットの本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、例えばオフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、上記実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は縮小系及び拡大系のいずれでも良い。
【0074】
なお、上記第1〜第3の実施形態においては、光透過性のマスク基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)、例えば、非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)を用いる可変成形マスクを用いても良い。
【0075】
なお、露光装置としては、サイズ(外径、対角線の長さ、一辺の少なくとも1つを含む)が500mm以上の基板、例えば液晶表示素子などのフラットパネルディスプレイ用の大型基板を露光する露光装置に対して適用することが特に有効である。
【0076】
また、露光装置としては、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置、ステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用することができる。また、移動体装置の移動体に保持される物体は、露光対象物体である基板などに限られず、マスクなどのパターン保持体(原版)であっても良い。
【0077】
また、露光装置の用途としては、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。
【0078】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、移動体を所定方向に沿って駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体を露光するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの製造に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの製造に適している。また、本発明の移動体装置の組立方法は、移動体を組み立てるのに適している。
【符号の説明】
【0080】
10…液晶露光装置、20…基板ステージ、23x…X粗動ステージ、23y…Y粗動ステージ、24a…第1Xテーブル、24b…第2Xテーブル、30…微動ステージ、40…Yステップ定盤、50…重量キャンセル装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に関する位置を個別に制御可能であって前記第1方向に直交する第2方向に関して互いに分離して配置される第1部分と第2部分とを含み、前記第1方向に沿って移動する第1移動体と、
物体を保持し、前記第1移動体に誘導されて少なくとも前記第1方向に沿って移動する物体保持部材と、
前記第2方向に関して前記第1部分と前記第2部分との間に配置され、前記物体保持部材を下方から支持し、前記物体保持部材と共に少なくとも前記第1方向に沿って移動可能な支持装置と、を備える移動体装置。
【請求項2】
前記第1部分と前記第2部分とは、互いに非接続とされる請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記支持装置は、前記第1移動体に連結され、該第1移動体に誘導される請求項1又は2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記第1及び第2部分は、それぞれ第1及び第2の案内装置により前記第1方向に案内される請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記案内装置は、前記第1方向に沿って配置されるガイド部材を含む請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記ガイド部材を有し、前記第2方向に沿って移動可能な第2移動体を更に備え、
前記第1移動体は、前記第2移動体に設けられ、前記第2移動体と共に前記第2方向に移動し、該移動により前記物体保持部材を前記第2方向に誘導する請求項5に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記第2移動体は、前記第1部分が設けられる第1部材と、前記第2部分が設けられる第2部材と、を有し、
前記支持装置は、前記第2方向に関して前記第1部材と前記第2部材との間に配置される請求項6に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記第2移動体は、前記第1部材と前記第2部材とが互いに連結される請求項7に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記第1移動体に対して前記物体保持部材を6自由方向に微少駆動する微少駆動系を更に備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記微少駆動系は前記物体保持部材を前記第1移動体に対して非接触で駆動する複数のアクチュエータを含む請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記物体保持部材は、前記アクチュエータが発生する推力により前記第1移動体に非接触で誘導される請求項10に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記支持装置は、前記物体保持部材を非接触支持する請求項1〜11のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の移動体装置と、
前記物体保持部材に保持された物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項14】
前記物体は、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる基板である請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記基板は、少なくとも一辺の長さ又は対角長が500mm以上である請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項18】
第1方向に沿って移動可能な第1移動体と、物体を保持し、前記第1移動体に誘導されて少なくとも前記第1方向に沿って移動する物体保持部材と、を含む移動体装置の組立方法であって、
前記物体保持部材を下方から支持する支持装置を所定の支持部材上に設置することと、
前記第1方向に直交する第2方向に関して、前記支持装置の一側に前記第1移動体の第1部分を配置することと、
前記第2方向に関して、前記支持装置の他側に前記第1部分とは個別に前記第1方向の位置制御がされる前記第1移動体の第2部分を配置することと、を含む移動体装置の組立方法。
【請求項19】
前記移動体装置は、前記第1移動体が搭載され、該第1移動体と共に前記第2方向に移動可能な第2移動体を更に備え、
前記第1部分を配置することでは、前記第2移動体を構成する第1部材に前記第1部分を設けた後に、前記第1部材と前記第1部分とを前記第2方向に関して前記支持装置の一側に配置し、
前記第2部分を配置することでは、前記第2移動体を構成する第2部材に前記第2部分を設けた後に、前記第2部材と前記第2部分とを前記第2方向に関して前記支持装置の他側に配置することにより行う請求項18に記載の移動体装置の組立方法。
【請求項20】
前記第1部材と前記第2部材とを互いに連結することを更に含む請求項19に記載の移動体装置の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234109(P2012−234109A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104061(P2011−104061)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】