説明

移動情報測定装置

【課題】移動体の曲面からの信号に関してデフォーカスによる信号振幅減少を低減し、移動情報の検出精度の低下を抑制する。
【解決手段】光源と、移動方向に曲面を備える移動体と、前記曲面からの集光された反射光または透過光を受講する受光素子と、を有する移動情報測定装置において、前記曲面が移動方向に複数種の曲率を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動情報として移動体の相対変位量や相対速度などを測定するための移動情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の変位量を検出する方式として、移動体表面に光を照射し反射された光束を、光検出器にて受光し、移動体の移動に伴う反射光束の移動に基づき、移動体の位置を検出する方法がある。移動体表面の光照射領域内の反射率分布や、表面散乱により、光検出器上で反射光に強度分布が生じ、移動体の移動に伴い検出器面上の反射光の強度分布も移動するため、反射光強度分布の移動を光検出器にて検出する事で移動体の移動量を検出する。位置検出精度をより高める為に、移動体表面に凹面を形成し移動体表面の凹面の結像作用を利用して位置の検出精度を高める方法が、特許文献1に記載されている。
【0003】
以下、図13を用いて特許文献1に記載の位置検出装置について説明する。図13は、特許文献1に記載の位置検出装置の構成について説明した図である。紙面垂直方向に移動する移動体1204の表面には、反射防止用塗装膜1205を塗布し、さらに集光機能を有する部材である凹面形状部1206には反射面用塗装膜を塗布してある。集光機能を有する凹面形状部806は移動体1204の基準位置に設けられ、測定装置1201は特定の位置に固定しておく。
【0004】
移動体1204の表面上の凹面形状部1206が、この凹面形状部1206と対向する位置検出装置1201に対してある特定の位置まで移動すると、発光部1202からの光が、凹面形状部1206の表面で反射される。凹面形状部1206を除く移動体1204の面では、反射防止用塗装膜1205により、光は反射されない。
【0005】
こうして、凹面形状部1206にて反射した光を集光し、受光部1203に導き、測定装置1201の内部での光電変換により、受光量に対応した電圧の変化を検出し、これを信号として受け取る回路により、移動体1204の位置を検出する。以上のように、移動体1204の表面に集光機能を有した凹面形状部1206を備えることで、反射光の拡散を少なくし、移動体1204の位置を精度よく検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−249002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された位置検出装置では、以下のような問題がある。即ち、測定装置1201と移動体1204のz軸方向に対する位置関係は、移動体1204表面の凹面形状部1206によって、発光部1202から照射された光束が、受光部1203の表面にて焦点を結ぶように設定されている。そのため、移動体1204の移動に伴うz軸方向の変動や、測定装置1201の配置時に、移動体1204に対して、z軸方向に配置位置ズレを起こすと、受光部1203上の光束がデフォーカス状態となる。
【0008】
これにより、検出信号振幅が低下し、結果として位置の検出精度が低下してしまうという問題があった。このような問題に鑑みて、本発明の目的は、移動体の曲面からの信号に関し、デフォーカスによる信号振幅の減少を低減し、移動情報の検出精度の低下を抑制することが可能な移動情報測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本出願に係る発明は、光源と、前記光源で照射され移動方向に曲面を備える移動体と、前記曲面からの集光された反射光または透過光を受光する受光素子と、を有する移動情報測定装置において、前記曲面が移動方向に複数種の曲率を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動体の曲面からの信号に関し、デフォーカスによる信号振幅の減少を低減し、移動情報の検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態である変位測定装置の構成を示す図である。
【図2】(a)は第1の実施形態における移動体表面に形成した凹面の形状を示す図、(b)はZ軸方向の距離変動についての説明図である。
【図3】第1の実施形態における移動体表面の曲率の大小関係について示す図で、(a)は中心部の曲率よりも外縁部の曲率が小さい場合、(b)は中心部の曲率よりも外縁部の曲率が大きい場合である。
【図4】(a)は第1の実施形態における光学パターン像の通過する様子を示した図、(b)は各フォトダイオードの和信号を示す図、(c)は差動出力を示す図である。
【図5】第1の実施形態におけるZ軸方向の距離変動に対する検出電圧値を示した図である。
【図6】第2の実施形態における変位測定装置の構成を示す図である。
【図7】第3の実施形態における変位測定装置の構成を示す図である。
【図8】第4の実施形態における速度測定装置の構成を示す図である。
【図9】(a)は第4の実施形態におけるフォトダイオードアレイグループで先行して得られる信号を示す図、(b)はそのときの移動体の位置を示す図、(c)はフォトダイオードアレイグループで遅れて得られる信号を示す図、(d)はそのときの移動体の位置を示す図である。
【図10】第4の実施形態におけるデータに時間遅延を与えるプロセスのブロック図である。
【図11】第5の実施形態における変位及び速度測定装置の構成を示す図である。
【図12】反射型の曲面に替えて透過型の曲面を用いた装置構成を示す概念図である。
【図13】従来例の速度測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
《第1の実施形態》
図1を用いて、本実施形態の変位測定装置の構成について説明する。移動体102は移動方向であるY軸方向に移動しており、波長λの光を出射する光源101からの発散光束となる照射光により照射される。移動体102には、表面上に移動方向断面の長さがCである、凹面103が形成されている。発散光束は凹面103によって反射集光され、凹面103からの反射光を受光する受光素子としてのフォトダイオードアレイ上にて光学パターン像106となり結像される。
【0014】
フォトダイオードアレイは、移動体102の移動方向に対して幅Pd/2、間隔がPdで配置されたフォトダイオードアレイ104及び、同様の構成で空間的に移動体の移動方向に対してPd/2ずらして配置されたフォトダイオードアレイ105を備える。以上、本実施形態の変位測定装置の全体構成について説明した。
【0015】
(移動体の曲面部)
次に、本発明の特徴である移動体102の表面に移動方向に沿って形成される曲面部として、凹面103を例に詳しく説明する。図1に示すように凹面103は移動方向にのみ曲面となっており、移動方向に直交する方向には曲面となっていないものとして説明するが、移動方向に直交する方向にも曲面を備える構成としても良い。ここで、曲面部である凹面103の曲率の大小は曲率半径の大小と逆の関係にあり(曲率半径をRとすると曲率は1/R)、曲率が大きい場合は曲率半径が小さい場合に相当する。
【0016】
図2(a)は移動体102の表面に形成される凹面の曲率について説明した図である。凹面103は、中心部201曲率と外縁部202の曲率が異なる形状であり、移動体102と、光源101及びフォトダイオードアレイが実装された検出器との、z軸方向に対する相対的な距離変動変動と関連付けて決められている。また、凹面103の中心部201及び外縁部202の中間部203の形状は、中心部201形状および外縁部202形状が連続的に接続されるように形成されている。
【0017】
図2(b)は、移動体102と検出器との、z軸方向に対する相対的な距離変動について説明した図である。移動体102が、z軸方向にΔZの変動量をもつとき、あるいは、移動体表面と変位検出装置のZ軸方向の取り付け公差が、中心値に対して±ΔZ/2であるような場合を考える。この場合、凹面の中心部201の曲率半径R1と、外縁部202の曲率半径R2との関係は、以下の条件式で示されることとなる。
|R1−R2|≧ΔZ 式―1
また凹面103の移動方向断面の寸法Cは、中心部201の曲率半径R1、外縁部202の曲率半径R2、から以下の条件式を満たすよう決定される。
【0018】
C≦(R1+R2)×√(λ/|R1−R2|) 式―2
ここで、式―2の導出に関し、反射型を透過型に置き換えて、図12を用いて説明する。本発明においては、移動体の曲面部からの反射光を用いる他、移動体の曲面部からの透過光を用いるものであっても良い。
【0019】
光源101の中心波長をλ、凹面103に相当するレンズの焦点深度をd、開口数をNAとすると、一般に以下の式が成立する。即ち、d=λ/NA/NA、NA=n×sinθである。ここでnに関しては空気の屈折率としてn=1である。焦点深度dに関しては|R1−R2|と等しいものとし、またNAに関しては移動方向断面の寸法をC0としてNA=C0/2/[(R1+R2)/2]として考えると、C0=(R1+R2)×√(λ/|R1−R2|)となる。
【0020】
ここで、曲率半径がR1の中央領域に対し、曲率半径がR2の周辺領域を更に大きくすることは好ましくないことから、移動方向断面の寸法CはC0以下が好ましく、式―2が導出される。
【0021】
本実施形態によれば、検出器を移動体からの距離がR1からR2の間に配する事で、移動体と検出器との相対的な距離が最大|R1−R2|変動しても、デフォーカスによる信号振幅の減少を低減し、位置検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0022】
ここで、曲面部における中心部201(曲率半径R1)と外縁部(曲率半径R2)との間の中間部は、連続的に曲率が変化するように設定されることが一般的に好ましいが、中間部において不連続な曲率を持たせても良い。
【0023】
(移動体の曲面における複数種の曲率)
次に、図3を用いて、凹面103の中心部201の曲率半径R1と外縁部202の曲率半径R2の大小関係について説明する。図3(a)は、中心部201の曲率半径R1よりも外縁部202の曲率半径R2の方が小さい場合の、凹面103によって反射集光される光束の光路を示した図である。移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が小さくなる場合は、外縁部202から反射された光束が結像する。一方、移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が大きくなる場合には、中心部201から反射された光束が結像する。移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が上記範囲の中間の距離の場合、中間部から反射した光束が結像する。
【0024】
図3(b)は、中心部201の曲率半径R1よりも外縁部202の曲率半径R2の方が大きい場合の、凹面103によって反射集光される光束の光路を示した図である。移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が小さくなる場合は、中心部201から反射された光束が結像する。移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が大きくなる場合には、外縁部202から反射された光束が結像する。移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離が上記範囲の中間の距離の場合、中間部から反射した光束が結像する。
【0025】
このように、凹面103は、移動体102と検出器のz軸方向の相対的な距離に対応した、結像に寄与する領域を持つ。
【0026】
以下、移動体と変位検出器に関し、具体的な数値を例にとり、凹面形状の長さCに関して説明を加える。一般的にエンコーダのような位置検出用途では、移動体であるスケールに対し、検出器のz軸方向の取り付け精度が、中心値に対してΔZ=±1mm程度を要求される。このとき|R1−R2|≧2mmとなり、仮に|R1―R2|=2mmとする。検出器の設置位置が、移動体102からz軸方向に2mmの位置であったとすると、式―2から凹面103の移動方向断面の寸法はC≦90μmとなる。検出器のフォトダイオードアレイで検出される受光量は、Cの大きさに依存するので、C=90μmが好ましい。
【0027】
定量的に具体例を示すと、光源として赤色LEDを用いる場合はλが650nmであり、|R1−R2|を2mmとすると、R1が3.5mm、R2が1.5mmでCが90μmとなる。R1が1.5mm、R2が3.5mmの場合も同様である。
【0028】
また、移動体が樹脂フィルムのような柔軟体である場合、樹脂フィルムの移動方向の変位に伴う該樹脂フィルムのz軸方向の振れにより、移動体である樹脂フィルムに対し、検出器のz軸方向の取り付け精度が、中心値に対してΔZ=±2mm程度を要求される。このとき、検出器の設置位置が移動体102からz軸方向に5mmの位置であったとすると、式―2から凹面103の移動方向断面の寸法はC≦150μmとなる。受光量は、Cの大きさに依存するので、C=150μmが好ましい。ここで挙げた樹脂フィルムには、例えば複写機やレーザービームプリンタに使用されるような転写ベルト等が挙げられるが、それに限るものではない。
【0029】
移動体が樹脂フィルムのような柔軟体である場合、光源として赤色LEDを用いる場合λが650nmであり、|R1−R2|を4mmとすると、R1が8mm、R2が4mmでCが150μmとなる。R1が4mm、R2が8mmの場合も同様である。
以上、移動体102表面に形成する凹面103形状について具体的数値例を示し説明した。
【0030】
(フォトダイオードアレイ上の光学パターン像の変位)
次に図1を用いて光学パターン像106の変位原理に関して説明する。検出器面に実装された光源発光部101から移動体102表面上の凹面103までの光路長をL1、該凹面103からフォトダイオードアレイ上の集光位置までの光路長をL2とする。このとき、移動体102と受光面上で結像した光束の移動量の関係は、移動体:受光部上結像光束=1:(L1+L2)/L1で表される。図1に示す例では、光源101上の発光点から移動体102表面までの光路長L1と、移動体102からフォトダイオードアレイ上の結像位置までの光路長L2とが等しい。
【0031】
その為、移動体102と結像位置のy軸方向に対する移動量の関係は、移動体:光源発光領域像=1:2となる。上記の原理に基づいて、移動体102の移動に伴い、フォトダイオードアレイ表面に結像されたパターン像106は移動する。以上、移動体102の変位量とフォトダイオードアレイ表面に結像された光学パターン像106の変位量との関係について説明した。
【0032】
(変位量検出方法)
以下、移動体変位量検出方法について詳しく説明する。はじめにフォトダイオードアレイの構成及び信号検出方法について説明する。移動体102の凹面103によってフォトダイオードアレイ上に光学パターン像106が結像される。光学パターン像106は、フォトダイオードアレイにより光電変換され、1次元の光強度が電圧値に変換される。そして、フォトダイオードアレイ104を成す複数のフォトダイオードの検出電圧値の和を取ることで空間フィルタ作用と合せて、フォトダイオードアレイ104の検出電圧値V1が決定される。
【0033】
同様にフォトダイオードアレイ105を成す複数のフォトダイオードの検出電圧値の和を取ることで空間フィルタ作用と合せて、フォトダイオードアレイ105の検出電圧値V2が決定される。そして両フォトダイオードアレイ出力の差動により、(V1−V2)から、ある時刻における電圧値を変位測定装置は出力する。
【0034】
次に、移動体102の移動に伴うフォトダイオードアレイ上の光学パターン像106の移動から、移動体102の変位量を検出する方法について説明する。図4は、移動体102の移動に伴うフォトダイオードアレイ上の光学パターン像106の移動と、フォトダイオードアレイにより検出される、検出電圧値の時間変化を示している。図4(a)は、フォトダイオードアレイ104およびフォトダイオードアレイ105上を光学パターン像106が通過していく様子を説明する図である。
【0035】
光学パターン像106は、Pd周期で互い違いに配列されたフォトダイオードアレイ104及びフォトダイオードアレイ105を通過する。図4(b)は、光学パターン像106の移動に伴い、フォトダイオードアレイにて検出される電圧値V1および電圧値V2について説明する図である。実線は、光学パターン像106の移動に伴うフォトダイオードアレイ104で検出される電圧値の変化を表している。フォトダイオードアレイ104は、間にフォトダイオードアレイ105を挟んでいる為、図4(b)に示すように、飛び飛びの出力電圧値V1を得る。
【0036】
破線は、光源パターン像106の移動に伴うフォトダイオードアレイ105で検出される電圧値の変化を表している。同様にフォトダイオードが互い違いに配列されている為、V2も飛び飛びの出力電圧値を得る。図4(c)は、光学パターン像の移動に伴う、フォトダイオード104及びフォトダイオード105の差動出力(V1−V2)を取った検出電圧値を示した図である。V1・V2は、図4(b)のように位相が180度ズレた凸型波形の為、差動をとることで図4(c)のように1周期の信号波形を得ることができる。
【0037】
したがって、移動体102の移動に伴い、検出器で検出される出力電圧変化の周期の数をカウントすることで、フォトダイオードアレイ上の光学パターン像106の移動量を検出できる。これより、前述した移動体102と、検出された光学パターン像106の移動量に基づき、移動体の変位量を検出することができる。以上、移動体102の凹面103により結像された光源発光領域像を利用した変位測定装置の説明をした。
【0038】
図5で、移動体102に本発明の凹面103を用いた場合での移動体表面と変位検出装置のZ軸方向の距離(Gap)変動に対する検出電圧値を実線で示す。また、理想的な曲率を持つ凹面を用いた場合での移動体表面と変位検出装置のZ軸方向の距離変動に対する検出電圧値を破線で示している。Gapが、理想的な曲率を持つ凹面の曲率に近づくにつれ信号振幅は近くなる。
【0039】
しかし、その領域を除いた広い範囲で理想的な曲率を持つ凹面に比べて信号振幅をおよそ5割増加することができる。こうして、Gapオフセット/変動等を起因とするデフォーカスによる信号振幅減少を抑制し、Gap変動による位置検出精度を改善することが可能となる。
【0040】
以上、本実施形態によれば、移動体102と検出器とのz軸方向の相対的な距離変動ΔZの範囲において、凹面103が、検出器との相対距離に対応した、光束を結像させる領域をもつことができる。言い換えると、凹面103がΔZの間隔にかけて累進焦点あるいは多重焦点をもつ曲面となるので、変動による受光面上の光束のデフォーカスによる信号振幅低下を防ぎ検出精度の低下を抑制する。
【0041】
本実施形態によれば、移動方向に沿って形成される曲面部を移動方向に一つだけ備えることで、移動方向における位置の絶対値を検出するためにこの曲面部を用いることができる。
【0042】
《第2の実施形態》
本実施形態の変位測定装置について、図6を用いて説明する。本実施形態では第1の実施形態で説明した変位測定装置における、移動体102表面に凹面103を周期的に複数個設けたものである。凹面103の周期Plは、複数個の受光領域を持つ検出器において、移動体の移動方向に対して隣り合った受光領域の中心間距離即ちフォトダイオードアレイの周期Pdと対応しており、以下の条件式を見たす。
【0043】
Pl=[L1/(L1+L2)]×Pd×k 式―3
kは正の整数である。これは複数の凹面によって結像される光学パターン像106が、加算検出するフォトダイオードの配列周期Pdの整数倍で結像されることを意味する。L1=L2でk=1の場合、P1=Pd/2となる。凹面103の周期Plは、
図12に示したCと等しいあるいはCよりやや大きい値となり、例えばPl=100μmとする。
【0044】
本実施形態によれば、光学パターン像106を複数のフォトダイオードで検出し、その加算電圧値であるフォトダイオードアレイの出力電圧値が増加することで、信号振幅を増加させることができる。図6では光学パターン像106の間隔Peがフォトダイオードアレイの配列周期Pdの2倍の間隔(Pe=2×Pd)となるように、光学パターン像106が結像される。変位測定の原理については、第1の実施形態で説明している為、省略する。
【0045】
《第3の実施形態》
本実施形態である変位測定装置について、図7を用いて説明する。本実施形態は、第2の実施形態で説明した変位測定装置における光源の発光部を複数にし、その光学パターン像106の配列周期Peが、フォトダイオードアレイの配列周期Pdと結像倍率を関連付けた以下の値となるように配置したものである。
【0046】
Pe=L1/[L2/(m×Pd)] 式―4
mは正の整数で、加算検出する同相のフォトダイオードアレイを成すフォトダイオードの数よりも小さく、図7では、m≦3となる。ここではm=1、L1=L2であり、移動体102表面の凹面103により、光学パターン像106の間隔Peが、フォトダイオードアレイ周期Pdと等しい間隔(Pe=Pd)で、フォトダイオードアレイ上に結像する。こうして、加算検出する複数のフォトダイオード上に、それぞれの光源による光学パターン像106が生成される。
【0047】
そのため、該複数のフォトダイオードで検出された加算電圧値であるフォトダイオードアレイの出力電圧値が増加し、信号振幅を増加させることができる。変位測定の原理については、第1の実施形態にて説明している為、省略する。
【0048】
《第4の実施形態》
第1乃至第3の実施形態で説明した変位測定装置を用い、移動体の速度を測定する本実施形態における測定装置について、図8を用いて説明する。本実施形態における速度測定装置は、複数の発光部801、及び、フォトダイオードアレイグループ802及びフォトダイオードアレイグループ803を持つ。フォトダイオードアレイグループ802は、フォトダイオードアレイ804及び、差動検出用のフォトダイオードアレイ805から成る。
【0049】
フォトダイオードアレイグループ803は、フォトダイオードアレイ806及び、差動検出用のフォトダイオードアレイ807から成る。各フォトダイオードアレイグループは、間隔Dだけ離されて配置されている。各フォトダイオードアレイグループ上に生成された周期的な光学パターン像106は、フォトダイオードアレイにより光電変換され、1次元の光強度が電圧値に変換される。
【0050】
そして、フォトダイオードアレイ804を成す複数のフォトダイオード検出電圧値の和としてフォトダイオードアレイ804の検出電圧値V1が決定される。同様にフォトダイオードアレイ805を成す複数のフォトダイオード検出電圧値の和としてフォトダイオードアレイ805の検出電圧値V2が決定される。そして(V1−V2)を、ある時刻における電圧値をとしてフォトダイオードアレイグループ802は出力する。フォトダイオードアレイグループ803においても同様にある時刻における電圧値が出力される。
【0051】
(移動速度検出)
次に移動情報として移動速度を検出する検出方法について説明する。移動体102がY軸方向に移動しているとする。このときフォトダイオードアレイグループ802によって先行して光学パターン像106の移動による変位信号が検出される。続いて、これと同位置における光学パターン像106の移動による変位信号が、フォトダイオードアレイグループ間隔Dと、移動体の速度に依存した時間だけ遅延して、フォトダイオードアレイグループ803により検出される。
【0052】
図9を用いて速度の検出方法について具体的に説明する。図9(a)はフォトダイオードアレイグループ602により先行して検出された、ある時刻間の移動体の移動に伴う検出出力の変動データP1である。また、図9(b)はP1データ取得時刻間中の時刻t1における移動体の位置を示す図である。図9(c)は、フォトダイオードアレイグループ602に対し、遅れてフォトダイオードアレイグループ603により検出された、ある時刻間の移動体の移動に伴う検出出力の変動データP2である。
【0053】
また、図9(d)はP2データ取得時刻間中の時刻t2における移動体の位置を示す図である。時刻t1から時刻t2にかけて、移動体102は、距離D/{(L1+L2)/L1}だけ移動する。図10はデータに所定時間遅延を与えるプロセスのブロック図である。検出出力変動データP1及び検出出力変動データP2は比較器701にて、時刻に対する電圧値同士が比較される。
【0054】
ここで、最適なデータの時間遅延量T=t2−t1が検出出力変動データP1に与えられている場合、比較器701による比較の結果、各フォトダイオードアレイグループの時刻に対する強度変動データが一致する。一致しない場合、速度検知回路は時間遅延回路に対して時間遅延量に対する補正値が与えられる。そして、補正された時間遅延量が与えられた検出出力変動データP1を用いて、再び比較器701にて比較を行う。
【0055】
上記ループにより、速度検知回路は測定時刻差Tを決定する。そして、フォトダイオードアレイグループ間隔Dから、以下の関係式−7を用いて移動体102の速度Vを求めることができる。
V= D/T/{(L1+L2)/L1} 式−7
例えば、移動体102表面に形成された凹面103の形状にムラがあり、検出される信号振幅が1周期ごとに異なってしまうような場合でも、本速度検出方式であれば速度の検出を行うことができる。本実施形態では、第3の実施形態における変位測定装置を基本系として、速度測定装置を構成した例を説明したが、これに限らず、第1、第2の実施形態の変位測定装置からなる速度測定装置を構成しても良い。
【0056】
また、フォトダイオードアレイ構成に関しても、第1乃至第3の実施形態で説明したように、差動検出型のフォトダイオードアレイ構成に限定されるものではない。さらに、図9に示すように、フォトダイオードアレイグループを同一基板上に配置せず、第1乃至第3の実施形態において説明した変位測定装置を、所定間隔Dだけ離して2つ配置しても良い。ただし、この場合の速度算出式は、変位測定装置のフォトダイオードグループの中心間隔Dにおける通過時間Tから、V=D/Tにより求められる。
【0057】
なお、本実施形態において上述した所定距離間隔を通過する移動体の通過時間を基に相対速度を検出する替わりに、所定時間における移動体の変位量を基に相対速度を検出することもできる。
【0058】
《第5の実施形態》
本実施形態である変位測定装置について、図11を用いて説明する。図11は第2の実施形態で説明した変位測定装置について、式―2から与えられるCの値を径とし、内周部の曲率半径をR1、外周部の曲率半径をR2とした凹面1104を、移動体102の表面に周期的に形成したものである。検出器は、Y軸方向の変位量を検出する為のフォトダイオードアレイ104及びフォトダイオードアレイ105に加え、X軸方向の変位量を検出する為のフォトダイオードアレイ1102及びフォトダイオードアレイ1103を持つ。
【0059】
凹面1104の配列周期は、X軸方向及びY軸方向ともに式―3で与えられる周期である。これにより得られる光学パターン像1101は、凹面の配列周期の (L1+L2)/L1 倍の配列周期で、X軸及びY軸方向に斑点模様のように生成される。これにより、移動体1105がY軸方向だけでなく、X軸方向へ変位したとしても、フォトダイオードアレイ1102及びフォトダイオードアレイ1103を用い、第1の実施形態で説明した方法と同じ原理で変位を検出することができる。
【0060】
また、X軸及びY軸方向それぞれの変位量の比から、X−Y平面内での移動体1105の移動方向ベクトルを求める事もできる。速度についても同様に第4の実施形態で説明した方法と同じ原理でY軸方向に加えてX軸方向の速度も検出する事ができる。さらに、X軸方向及びY軸方向の検出速度比から、X−Y平面内での速度方向ベクトルを検出することができる。
【0061】
(変形例)
以上、移動体の曲面部に関して中心部と周辺部で曲率を異ならせた実施形態を説明したが、本発明はこれに限らず、曲面部において全体として異なる任意の第1領域と第2領域(部分的に重複領域があっても良い)で曲率を異ならせるようにしても良い。
【0062】
また、移動情報測定として移動量、移動速度を測定する実施形態を説明したが、移動情報として移動加速度を測定する測定装置であっても良い。移動加速度は、例えば
所定時間における移動体の移動速度の変位量を基に算出が可能である。このように本発明において測定される移動体の移動情報としては、移動量、移動速度、移動加速度の少なくとも一つが含まれることは勿論、更には移動量に関連して、位置の相対値だけでなく位置の絶対値を検出する場合も含まれる。なお、各実施形態で記載した技術事項を本発明の範囲内で適宜組み合わせて用いても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
101・・光源、102・・移動体、103・・凹面、104、105・・フォトダイオードアレイ、106・・光学パターン像、201・・中心部、202・・外縁部、203・・中間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源で照射され移動方向に曲面を備える移動体と、
前記曲面からの集光された反射光または透過光を受光する受光素子と、
を有する移動情報測定装置において、
前記曲面が移動方向に複数種の曲率を備えることを特徴とする移動情報測定装置。
【請求項2】
前記光源の中心波長をλ、前記曲面の中心部の曲率半径をR1、外縁部の曲率半径をR2とし、前記受光素子を前記移動体の表面からの距離がR1とR2の間となるように配するとき、前記移動体の移動方向断面の長さCを、以下の条件式を満たすようにしたことを特徴とする請求項1に記載の移動情報測定装置。
C≦(R1+R2)×√(λ/|R1−R2|)
【請求項3】
前記移動体の表面と、前記光源および前記受光素子が実装された検出器の面との間隔の変動量をΔZとするとき、以下の条件式を満たすようにしたことを特徴とする請求項2に記載の移動情報測定装置。
|R1−R2|≧ΔZ
【請求項4】
前記曲面は前記光源からの照射光を反射させる曲面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項5】
前記曲面は前記光源からの照射光を透過させる曲面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項6】
前記曲面は移動方向に周期的に複数個設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項7】
前記曲面は、前記曲面の中心部から前記曲面の外縁部に渡り、連続的に曲率が変化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項8】
前記受光素子は、複数個の受光領域を持ち、前記移動体の移動方向に対して、隣り合った受光領域の中心間距離がPdであるとき、
前記曲面は、以下の条件を満たすように前記移動体の表面上に配列されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
Pl=[L1/(L1+L2)]×Pd×k
ただしPlは、前記曲面の配列周期、kは正の整数である。
【請求項9】
前記受光素子は、前記移動体の移動方向に設けられる他に、これに直交する方向にも設けられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項10】
所定時間における前記移動体の変位量、或いは、所定距離間隔を通過する前記移動体の通過時間から、前記移動体と前記受光素子との間の相対速度を検出することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。
【請求項11】
前記移動体の移動量、移動速度、移動加速度、位置の絶対値の少なくとも一つを移動情報として測定することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の移動情報測定装置。

【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−181018(P2012−181018A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42072(P2011−42072)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】