説明

空気圧縮機

【課題】
本発明は、モータの安全性を確保しつつ、モータを効率よく冷却することにより、空気圧縮機の信頼性を向上することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、モータコイルと駆動軸とモータハウジングとを有するモータと、前記モータの前記駆動軸のに取り付けられた冷却ファンと、前記モータの前記駆動軸に取り付けられ、シリンダ内を往復動することにより空気を圧縮するピストンとを備え、前記モータハウジングは開口部を有し、前記モータハウジングの開口部に通気性があり、不燃性材料で形成されたカバーを設けることを特徴とする空気圧縮機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動モータを一体に形成した圧縮機は、モータハウジングに形成された外気導入口及び排出口と外部が連通している。
【0003】
特許文献2の電動モータは、モータハウジング内部に内気循環ファンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−274800号公報
【特許文献2】実開昭61−81767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動モータを一体に形成した圧縮機は、モータハウジングに形成された外気導入口及び排出口と外部が連通している。従って、特に高圧の圧縮空気を得ようとすると多くの圧縮熱が発生するため、モータの安全性を確保するためにモータを十分に冷却する機構が必要となり、圧縮機の小型化・軽量化・低コスト化を実現することができない。
【0006】
また、特許文献2の電動モータは、モータハウジング内部内気循環ファンが設けられているが、外気吸入口を設けない場合は冷却効果が小さい。従って、特許文献2の外気吸入口を設けていない電動モータを特許文献1の圧縮機に用いた場合、電動モータの内部の冷却が不十分で電動モータの寿命が短くなる。さらに、電動モータから発せられた熱が、モータハウジングからクランクケースに伝熱するので、クランクケースから外気を吸込む場合、吸込み空気の温度が上昇してしまい、圧縮効率が低下、更にはシールリングが劣化することが懸念される。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、モータの安全性を確保しつつ、モータを効率よく冷却することにより、空気圧縮機の信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、モータコイルと駆動軸とモータハウジングとを有するモータと、前記モータの前記駆動軸のに取り付けられた冷却ファンと、前記モータの前記駆動軸に取り付けられ、シリンダ内を往復動することにより空気を圧縮するピストンとを備え、前記モータハウジングは開口部を有し、前記モータハウジングの開口部に通気性があり、不燃性材料で形成されたカバーを設けることを特徴とする空気圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータの安全性を確保しつつ、モータを効率よく冷却することにより、空気圧縮機の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例による圧縮機の横断平面図である。
【図2】図1における線B−B上の断面図である。
【図3】図1における線C−C上の断面図である。
【図4】図1における線D−D上の断面図である。
【図5】本発明の実施例による圧縮機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る圧縮機の実施例を、図1−5を用いて説明する。
【0012】
図1は本実施例における圧縮機の横断平面図であり、電動モータと圧縮部を一体に形成した圧縮機である。図2、3、4は、それぞれ、図1のB−B断面図、C−C断面図、D−D断面図である。図5は、本実施例における圧縮機の斜視図である。
【0013】
本実施例における圧縮機の全体構成について図1、2を用いて説明する。
【0014】
1は駆動源としての電動モータ(モータ部)で、駆動軸2と一体に形成されているロータ3、ステータ4、モータコイル5、モータハウジング6等で形成されている。モータコイル5に給電されることにより駆動軸2が回転し、モータコイル5は発熱する。駆動軸2は、モータハウジング6の外部へ貫通しており、モータハウジング6の外部において駆動軸2には、連接棒7と冷却ファン8が取付けられている。連接棒7には吸込み口7aと吸込み弁7bが設けられており、上面側にはリテーナ19を用いてシールリング20が取付けられており、後述のシリンダ10内を往復運動するピストン体となっている。シールリング20は、連接棒7とシリンダ10との間を気密にシールしている。上述のピストン体は、ピストンが連接棒に固定されたタイプである揺動式とピストンと連接棒をベアリング機構により、回転自在に連結させたタイプであるピストン式とを選択的に用いることができる。
【0015】
9は、電動モータ1によって駆動される圧縮部を覆うクランクケースである。クランクケース9の上部にシリンダ10、吸込み弁11aと吐出し弁11bを有する弁座11、吐出し12bを有するシリンダヘッド12が取付けられ、圧縮部を構成している。クランクケース9の開口部はクランクケースカバー13で覆い、吸込み室14を構成する。
【0016】
ここで、本実施例における圧縮部の動作について説明する。圧縮部は電動モータ1の駆動軸が回転すると、連接棒7とリテーナ9により構成されたピストンがシリンダ10内を往復動することにより、圧縮工程を行う。圧縮部における圧縮工程では、クランクケース9の側面に設けた外気吸込み口9aより外気を吸込む。吸込んだ外気は上述の連接棒7の有する吸込み弁7bを通過しシリンダ10内へ入る。吸込んだ外気をシリンダ10内にて圧縮し、上述の弁座11の有する吐出し弁11bを通過し、上述のシリンダヘッド12の有する吐出し口12bより圧縮空気として取り出す。取り出された圧縮空気は貯留タンク等に貯留される。
【0017】
本実施例における電動モータ1の構造について図3−5を用いて説明する。
【0018】
電動モータ1は特に、モータコイル5が発熱しやすく、特許文献1のようにモータハウジング6によってモータコイル5が外気と遮断されていないモータコイル5が発火するのを防止するため、電動モータ1を十分に冷却する必要がある。特に電動モータ1を圧縮機に用いた場合、圧縮機によってより高圧の圧縮空気を得ようとすると、より多くの圧縮熱が発生するため、電動モータ1の周囲に熱がこもりやすく、電動モータ5を冷却するために圧縮機全体の大型化・重量化・高コスト化につながる。そこで、本実施例では、電動モータ1の安全構造として、モータハウジング6の開口部6a、6bにはそれぞれ通気性があり、不燃性のカバー16、17を設けた。開口部6bの拡大図を図3に、開口部6aの拡大図を図4に示す。
【0019】
図5は、ファンカバー15を外した圧縮機の全体構造の斜視図を示し、図5を用いて、モータ1、ファン8の構造を説明する。16、17はカバーで、例えば網またはパンチングメタル等のように複数の穴が開いた形状を有して通気性があり、かつ金属などの不燃性材料により形成されている。このカバー16、17はモータハウジング6の開口部6a、6b部に勘合固定されている。ここで、カバー16、17の網またはパンチングメタル等の目は十分に細かいため、モータコイル5の発熱により万一発火した場合にもカバー16、17において消火され、電動モータ1の外部に炎が出ることを防止できる。従って、モータコイル5の発熱により万一の発火を防止するためにモータコイルの5冷却や発火した場合の消火の機構が不要となり、圧縮機全体を小型・軽量・低コスト化することができる。
【0020】
モータコイル5で発生した熱は上述の駆動軸2の端部に設けた冷却ファン8から発生する冷却風によって冷却される。冷却ファン8は冷却ファン8の羽根8bを冷却ファン8の片側の端面(開口部6a、6bに遠い方の面)から覆うファンカバー15の軸中心部分に設けた開口部15aから外部空気を吸込み、円周方向外側に向かって吐き出す。冷却ファン8から発生する冷却風はクランクケース9外周を経由させ、モータハウジング6の開口部6aからモータ1内に流入し、モータコイル5を冷却して開口部6bから外部へ流出する。
【0021】
ここで、冷却ファン8の片側の端面(開口部6a、6bに近い方の面)8aは閉じている形状(本実施例では遠心ファン)であり、さらにモータハウジング6の開口部6aよりも大径となっている。モータ1内部において万一発火した場合、前述の通り、モータハウジング6の開口部6aの部分で消火されるが、仮に消火されずにモータハウジング6の開口部6aから炎が出た場合、炎は冷却ファン8の片側の面8aに当たり、ファンカバー15内を外側に迂回して冷却ファン8の羽根8bの隙間を通ってファンカバー15の開口部15aから外部に出ることになる。しかし、炎は前記の経路を通過する際に冷却されるため、温度が低下して消火されるため、圧縮機の外部に炎が出ることを防止できる。ここで、冷却ファン8からモータコイル5の開口部6aに冷却風を導く導風板を設け、冷却風通路を形成することにより、効率よくモータコイル5内に冷却風を供給することができる。また、万一開口部6aから炎が出た場合でも導風板内の冷却風により冷却され消火することができる。なお、導風板を不燃性の材料とすることで確実に消火することができる。
【0022】
また、本実施例では、冷却風通路中に圧縮部の外気吸込み口9aを配置した。これにより、温度の低い外部空気を冷却ファン8によて圧縮部の外気吸込み口9aに導き、圧縮部によって圧縮される空気の温度を低くでき、圧縮熱による温度の上昇を抑え、圧縮機全体の温度を低くすることができる。さらに、圧縮機全体の温度を低くすることができるため、モータ1の温度上昇を防止でき、モータ1内部の発火の防止や消火をするための機構が不要となり、圧縮機全体を小型・軽量・低コスト化することができる。
【0023】
以上より本実施例によれば、モータハウジング6の開口部6a、6bに通気性があり、不燃性で炎を通さないカバー16、17を設けたため、モータ1内部で発火した場合にもモータの外部に炎が出ることを防止でき、安全性を向上することができる。また、モータ1内部の発火の防止や消火をするための機構が不要となり、圧縮機全体を小型・軽量・低コスト化することができる。
【0024】
また、冷却ファン8からモータハウジング6の開口部6aに冷却風を導く冷却風通路を形成したため、効率よくモータ5内にを冷却でき、万一モータ5内部で発火して、モータハウジングの開口部6aから炎が出た場合にも冷却経路で温度が低下して圧縮機の外部に炎が出ることを防止でき、安全性を向上することができる。
【0025】
本実施例にて説明した電動モータは本実施例で説明した往復動圧縮機に限らず、スクロール式圧縮機、スクリュー式圧縮機にも適用できる。また、圧縮機に限らず、電動モータを用いた様々な機械に適用できるが、特に各部の発熱が大きい圧縮機において安全性の確保、高効率化に大きく寄与する。
【0026】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 電動モータ
2 駆動軸
3 ロータ
4 ステータ
5 モータコイル
6 モータハウジング
6a 開口部
6b 開口部
7 連接棒
7a 吸込み口(連接棒)
7b 吸込み弁(連接棒)
8 冷却ファン
8a 端面
8b 羽根
9 クランクケース
9a 外気吸込み口(クランクケース)
10 シリンダ
11 弁座
11a 吸込み弁(弁座)
11b 吐出し(弁座)
12 シリンダヘッド
12b 吐出し口(シリンダヘッド)
13 クランクケースカバー
14 吸込み室
15 ファンカバー
15a 開口部(ファンカバー)
16 カバー
17 カバー
19 リテーナ
20 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコイルと駆動軸とモータハウジングとを有するモータと、前記モータの前記駆動軸に取り付けられた冷却ファンと、前記モータの前記駆動軸に取り付けられ、シリンダ内を往復動することにより空気を圧縮するピストンとを備え、
前記モータハウジングは開口部を有し、前記モータハウジングの開口部に通気性があり、不燃性材料で形成されたカバーを設けることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
前記カバーは複数の穴が開いた形状を特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
前記カバーは金属であることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
前記冷却ファンは前記モータハウジングの開口部に近い方の端面が閉じている形状であることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
前記冷却ファンは不燃性材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項6】
前記冷却ファンから前記モータハウジングの開口部に冷却風を導く冷却風通路を形成することを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項7】
前記冷却風通路内に前記シリンダ内に空気を吸込む吸込み口を設けることを特徴とする請求項6に記載の空気圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78188(P2013−78188A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216015(P2011−216015)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】