窒化アルミニウム部分を除去した素子
【課題】AlN(窒化アルミニウム)基板上に作られた発光ダイオードにおいて、AlN基板による光吸収を低減する。
【解決手段】1層以上の層150をバルク結晶AlN基板140上にエピタキシャル成長させる。これらのエピタキシャル層は同層のエピタキシャル成長の初期表面である表面101を含む。AlN基板はエピタキシャル成長の大部分の初期表面を覆って実質的に除去される。
【解決手段】1層以上の層150をバルク結晶AlN基板140上にエピタキシャル成長させる。これらのエピタキシャル層は同層のエピタキシャル成長の初期表面である表面101を含む。AlN基板はエピタキシャル成長の大部分の初期表面を覆って実質的に除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)部分を除去または薄膜化した素子、およびこのような素子を形成するための方法に関する。いくつかの実施形態は、発光層と第1および第2のヘテロ構造とを含む1層以上のエピタキシャル層を有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)部分を除去または薄膜化した素子、およびこのような素子を形成するための方法に関する。いくつかの実施形態は、発光層と第1および第2のヘテロ構造とを含む1層以上のエピタキシャル層を有する発光素子に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1のヘテロ構造をバルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させ、次にエピタキシャル層からバルク結晶AlN基板が除去される。第1のヘテロ構造は、第1の表面と第2の表面とを有しており、第1のヘテロ構造の第1の表面は、エピタキシャル層のエピタキシャル成長の初期表面である。第1のヘテロ構造の第2の表面の真上に、発光層をエピタキシャル成長させる。発光層の真上に、第2のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。発光素子は、バルク結晶AlN基板を含まない。
【0004】
いくつかの実施形態によれば、発光素子は、第1の表面と第2の表面とを有する第1のエピタキシャル成長させたヘテロ構造と、この第1のヘテロ構造の第2の表面の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、を含む。第2のエピタキシャル成長させたヘテロ構造を発光層を覆って成長させる。この素子は、約365nm未満の波長範囲の、発光層により生成された光が第1のヘテロ構造の第1の表面を通過して、この素子から射出可能であるように構成されている。第1の表面近傍の欠陥密度は、約108cm−3未満である。
【0005】
いくつかの実施形態は、第1および第2のヘテロ構造間に発光層を含む発光素子に関する。バルク結晶AlN基板上に、第1のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。第1のヘテロ構造の真上に、発光層をエピタキシャル成長させる。発光層の真上に、第2のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。バルク結晶AlN基板は、約50μm未満の化学的にエッチングされた厚さを有する。
【0006】
いくつかの実施形態は、AlN、GaN、AlGaN、InGaN、InN、およびInAlGaNの少なくとも1つを含み、かつ、エピタキシャル成長の初期表面である第1の表面を有する1層以上のエピタキシャル層からなる物体に関する。この物体は、バルク基板を含まないが、除去処理後に残ったAlN基板残部、たとえば、約50μm未満の厚さを有する化学的にエッチングされたAlN基板残部を含んでよい。エピタキシャル成長の初期表面100nm以内の欠陥密度は、約108cm−3未満である。この物体は、約200nm以上または約365nm以上の波長の光に対して光透過性であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態は、素子を形成する方法に関する。バルクAlN基板上に格子不整合エピタキシャル層を成長させる。このエピタキシャル層は、初期エピタキシャル成長の表面近傍で約108cm−3未満の欠陥密度を有する。バルクAlN基板は、この基板を完全に除去するか、または化学エッチングすることによって実質的に除去されて、約50μm未満の厚さの基板残部を残す。この基板が実質的に除去された後、エピタキシャル層の格子不整合は、部分的または完全に緩和されるとともに、初期のエピタキシャル成長の表面近傍の欠陥密度は実質的に維持される。基板の実質的な除去は、エピタキシャル成長の初期表面の大部分(50%以上)に対して基板を除去する工程またはエピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して基板残部を残す工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、サブアセンブリを示す図である。
【図2】図2は、バルクAlN基板を除去する方法を示す図である。
【図3】図3は、AlN基板の厚さを測定する工程を示す流れ図である。
【図4】図4は、エピタキシャルなAlxGa(1−x)N層のエッチング時間を示す図である。
【図5】図5は、リン酸中のAlxGa(1−x)N層のエッチング速度を示すグラフである。
【図6】図6は、X線回折測定の一例を示す図である。
【図7】図7は、湿潤エッチングによりサブアセンブリからAlN基板を除去するために使用することができる装置を示す図である。
【図8】図8は、温度の関数としてバルクAlNのエッチング速度を示す図である。
【図9】図9は、サブアセンブリのプロフィルメータの測定値を示す重畳されたグラフである。
【図10】図10は、AlN基板の厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置を示す図である。
【図11】図11は、AlN基板の厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置を示す図である。
【図12】図12は、サブアセンブリによって生成される光を使用する装置を示す図である。
【図13】図13は、AlN層の厚さの関数としての光検出器によって生成される信号の一例を示す図である。
【図14】図14は、バルクAlN基板上に初期に成長させた紫外線(UV)発光ダイオード(LED)を示す図である。
【図15】図15は、エッチング低減層を含むLEDを示す図である。
【図16】図16は、表面で裏面コンタクトを有する垂直方向の電気的注入LEDアーキテクチャを示す図である。
【図17】図17は、レーザダイオード設計のエネルギバリアを示す図である。
【図18】図18は、得られたエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理を示す図である。
【図19】図19は、スタンドアロン型のエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理を示す図である。
【図20】図20は、界面層をエッチングすることによって基板からエピタキシャル成長させたヘテロ構造を分離した後に得られた構造を示す図である。
【図21】図21は、エピタキシャル成長させたヘテロ構造を形成する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、バルク結晶AlN基板140と、このバルクAlN基板140上に形成させたエピタキシャル層150とを最初に含むサブアセンブリ100を示す図である。図1は、いくつかのエピタキシャル層150を示しているが、サブアセンブリはこれより多いまたは少ないエピタキシャル層を含んでよいし、一部の実施においては、1層のみのエピタキシャル層を含んでもよい。AlN基板140は、第1の表面141と第2の表面142と有している。バルク結晶AlN基板は、第1および第2の表面141、142においてスライスされるインゴットとして成長させてよい。
【0010】
場合により、エピタキシャル層150は、第1のヘテロ構造110と第2のヘテロ構造130に挟まれた1層以上の発光層120を含む。発光層120および/またはヘテロ構造110、130は、低欠陥密度でAlN上にエピタキシャル成長させることができる材料系、GaN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNから形成されてよい。この例では、バルクAlN基板140の真上に、第1のヘテロ構造110をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル層150の成長は、AlN基板140の第2の表面142上でエピタキシャル成長する第1のヘテロ構造110の第1の表面101から進行する。第1のヘテロ構造110は、欠陥低減層、ひずみ管理層、および/または電流分布層を含む多層を有してよい。次に、第1のヘテロ構造110の真上に活性領域120を成長させ、活性領域120の真上に第2のヘテロ構造130を成長させる。破線160で示すように、サブアセンブリ100の形成後、バルクAlN基板140は実質的に除去される。
【0011】
バルクAlN基板は、ある波長範囲、たとえば、365nm以上の波長に対して、および/または、約200nm〜約365nmのUV波長範囲において、実質的に光吸収性である。発光素子の場合、バルクAlN基板の実質的な除去によって素子の基板側(本明細書中では素子の裏面として示す)、すなわち、このバルクAlNが実質的に除去された表面を介して光を射出することが可能となる。スタンドアロン型のエピタキシャルテンプレート/基板の場合、バルクAlN基板の実質的な除去によってエピタキシャルテンプレート/基板が約365nm以上の波長を有する光に対しておよび/または約200nm〜約365nmの波長範囲の光に対して実質的に光透過性となることができる。
【0012】
基板の実質的な除去は、エピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して基板を除去する工程を含む。基板の実質的な除去は、たとえば、エピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して化学的にエッチングすることにより、AlN基板を薄膜化する工程を含む。場合により、基板残部は、エッチング処理後のエピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して残留することがある。基板残部は、約50μm〜0nm(完全に除去)または約50μm未満の厚さを有する。
【0013】
図2は、サブアセンブリからバルクAlN基板を除去する方法を示している。このサブアセンブリは、バルクAlN基板と、このバルクAlN基板上にエピタキシャル成長させた1層以上のエピタキシャル成長層とを含む。たとえば、この1層以上のエピタキシャル層は、発光層を有する発光素子を含むかまたは発光層を含まないエピタキシャル層を含む。
【0014】
バルクAlN基板、たとえば、基板の窒素極性(N極)面は、高温、たとえば、湿潤エッチング処理においてリン酸の沸点におけるリン酸を含むエッチング液にさらされる(220)。本明細書に記載されているLED構造において、たとえば、図1に概略的に示すように、バルクAlN基板の底面はエッチング液にN極面を付与することができる。約85%以上または約87%〜約96%の濃度範囲および160℃〜210℃の温度範囲におけるリン酸は適切な時間内でバルク単結晶AlNを溶解することができる。いくつかの構成において、使用されるリン酸は、たとえば、約160℃〜約180℃の温度範囲で87%〜92%の濃度範囲を有することができる。この溶解はまた、表面の初期加水分解後にAl極面を付与するAlN基板をエッチングするために使用することもできる。
【0015】
エッチング処理中、エッチング処理パラメータ、たとえば、リン酸の濃度および/または温度が監視され(225)、リン酸の濃度および/または温度が所定の濃度/温度範囲内に留まるように調整される。エッチング処理中、AlN基板の厚さを監視することができる(230)。場合により、AlN基板の厚さは移動位置において測定され、この厚さ測定は、エッチング処理からサブアセンブリを定期的に除去し、サブアセンブリの厚さおよび/または窒化アルミニウム基板の厚さを測定し、場合によっては測定後このサブアセンブリをエッチング処理へ戻す工程を含む。別の場合では、以下に説明するように、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の厚さは原位置で測定できる。
【0016】
エッチング処理は、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の測定厚さに基づき必要に応じて調整することができる(240)。エッチング処理は、エッチング速度を変化させ(エッチング速度を増減させ)、エッチング処理を開始し、および/または、基板が所定の状態に入った後、たとえば、基板がサブアセンブリから実質的に除去された後、または、基板が所定の厚さ、たとえば、約50mmに達した時、または基板がサブアセンブリの領域内で実質的に除去された時、エッチング処理を停止するように、調整することができる。エッチング速度は、エッチング液の濃度および/または温度を変化させることによって調整することができる。たとえば、AlNの厚さが所定の厚さに近づく(または基板の実質的な除去に近づく)につれて、エッチング速度はチャンバに水を添加することによって遅延させてエッチング液の濃度を低下させることができる。これに代えてまたはこれに加えて、エッチング速度を遅延させるためにエッチング液の温度を下げてもよい。いくつかの実施において、エッチング処理を停止する工程は、手動または自動の除去技術のいずれかにより、エッチング液からサブアセンブリを除去して達成することができる。
【0017】
サブアセンブリおよび/または窒化アルミニウム基板の厚さ測定は、機械的、電気的、化学的、および/または光学的技術を含む様々な処理によって達成され得る。たとえば、いくつかの構成において、AlN基板の厚さ測定は、電磁放射を使用する光学的技術によって達成され得る。これらの技術は、電磁放射をサブアセンブリへ方向付けるソースと、回折され、反射されおよび/またはサブアセンブリによって透過される電磁放射を検出するように構成されている検出器と、を必要とする。たとえば、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の厚さは、X線回折、偏光解析法、および/または干渉分光法などの技術を用いて測定可能である。いくつかの構成において、計測ユニットは、エッチング処理中に原位置で厚さ測定されるように配置することができる。他の構成において、厚さは、エッチング処理からサブアセンブリを除去し、測定し、このサブアセンブリをエッチング処理に戻すことによって移動位置で測定される。
【0018】
いくつかの構成において、AlN基板の厚さ測定は、サブアセンブリを透過する光を検出する工程を含む。このような測定に使用される光の波長範囲は、バルクAlN基板によって実質的に吸収され、少なくともある程度エピタキシャル層によって透過される範囲のものである。図3の流れ図によって示すように、最初にエッチング処理が開始された時(320)、AlN基板は相対的に厚膜であり光に対して不透明である。(あれば)AlN基板を透過した光はエッチング処理中に検出される(330)。AlN基板がエッチングによって除去されると、このAlN基板は基板を通過して光透過が可能となる位に薄膜化される。AlN基板の透過光の量、エッチング処理において以前測定した基準量に比較した場合の光透過の変化および/またはAlN基板を通過する光透過の変化率が検出でき(340)、かつ、これらをエッチング処理を調整するために用いてよい(350)。
【0019】
AlxGa(1−x)N材料(X=0〜1)のエッチング速度は、アルミニウム含有量の関数として変化する。図4および図5のグラフは、各々エピタキシャル成長させたAlGaN層のエッチング時間とエッチング速度をアルミニウムのモル分率の関数として示している。各試料について、エッチングされているAlGaN層の厚さは、エッチング液化学槽から定期的に試料を取り出してX線スキャンを実行して、AlGaN層のX線信号強度を求めることにより監視された。図4は、91%濃度と180℃の温度におけるリン酸(H3PO4)中でエッチングされた厚さ2.4μmのエピタキシャルなAlxGa(1−x)N層のエッチング時間を示している。74%または67%のアルミニウムモル分率を有するAlGaNの層は5分以内で実質的に除去されたが、47%のアルミニウムモル分率を有するAlGaN層を除去するには30分以上もかかった。
【0020】
図5は、91%濃度および180℃の温度におけるリン酸(H3PO4)中にエピタキシャル成長させたAlxGa(1−x)Nのエッチング速度を、アルミニウムモル分率として示すグラフである。このグラフは、アルミニウムモル分率が高くなるにつれてエッチング速度も速くなることを示している。図6は、基板の除去前(610)と基板の除去後(620)の試料サブアセンブリのX線回折測定の一例である。以下に詳細に説明するように、いくつかの実施形態において、相対的に高いモル分率のエピタキシャル成長させたAlGaNの層はバルクAlN基板を除去するための中間層として使用することができる。
【0021】
図7は、湿潤エッチングによりサブアセンブリからAlN基板を除去するために使用することができる装置を示す図である。この装置はエッチング液チャンバ710を含み、このチャンバはエッチング液を含有するとともにエッチングされているサブアセンブリを保持するように構成されている。この装置は必要に応じて計測ユニット720を含み、この計測ユニットはAlN基板の厚さおよび/またはAlN基板と1層以上のエピタキシャル層との両方を含むサブアセンブリの厚さとを示す信号を生成するように構成されている。この信号はエッチング処理中に計測ユニット720によって生成され、一連の厚さ測定値を反映することが可能である。この信号はエッチング処理の1層以上の側面を調整するためにコントロールユニット730によって使用可能である。
【0022】
エッチング処理の調整は、エッチング処理のさまざまな側面を調整するように配置されたコントロールユニット730の1つ以上のサブユニットによって達成可能である。たとえば、サブユニット731、732、733は、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、および/または試料の位置を調整することができる。サブアセンブリのエッチング速度は、これらの1つ以上および/または他のパラメータを変更することによって調整することが可能である。濃度調整サブユニット732は、チャンバ710へより多くの水分を添加することによって、またはチャンバ710内の水分を減少させることによって、例えば、沸騰時に蒸発する水分を補給しないことによって、エッチング液の濃度を維持したり変更したりするように構成することができる。温度調整サブユニット731は、エッチング液を加熱および/または冷却するヒータおよびクーラの1つまたは両方を含むことが可能である。エッチング液の冷却および/またはエッチング液の濃度低下はエッチング速度を遅らせる。エッチング液の温度の上昇および/または濃度の増加はエッチング速度をあるポイントまで上昇させる。しかしながら、エッチング速度はAlN基板表面の加水分解に依存することがあり得る。エッチング速度は、エッチング液の濃度が高くなりすぎ、エッチング液中の水量が表面の加水分解を発生させるには不十分な場合、抑制される。図8はバルクAlNのエッチング速度を温度の関数として示す。理解されるように、エッチング速度は約85%の濃度に対応する約160℃よりも高い温度に対しても横ばい(レベルオフ)であるように見える。この横ばいは基板の表面を加水分解するには水分が不十分であることに起因し得る。
【0023】
いくつかの構成において、温度および/または濃度調整サブユニット731、732はエッチング液の温度および/または濃度を所定の範囲内に保つように設定される。基板の除去はエッチング溶液を監視する工程を含む。リン酸の温度が沸点に保たれる場合、沸騰時の水分の損失はAlNの加水分解速度を減速させ、これによりエッチング速度を低下させる。リン酸の沸点は酸の濃度に応じて変化する。たとえば、市販のリン酸は約85%の濃度を有し約158℃で沸騰する。沸騰中に水分が損失されるにつれて酸の濃度と沸騰点は上昇する。調整されたエッチング速度の場合、エッチング液の濃度および/または温度は、所定の範囲内、たとえば、約87%〜約96%の濃度範囲および160℃〜210℃の温度範囲に保つことが可能である。相対的に一定した酸の濃度を保つために、損失した水分は、例えば、還流冷却器または自動ドリップシステムのいずれかにより補給することができる。
【0024】
計測ユニット720は、センサ/検出器からの信号を処理するように構成されている適切な処理回路721に結合された(図7においてセンサ/検出器722として示す)1つ以上のセンサまたは検出器を含む。エッチング処理中、センサ/検出器722は、AlN基板および/またはサブアセンブリの厚さに関連するサブアセンブリおよび/またはエッチング液の特性における変化を検出する。前述したように、計測ユニット720は、厚さを示す信号を生成するために様々な技術を使用することができる。これらの技術は、エッチング処理中のAlN基板、サブアセンブリおよび/またはエッチング液の光学的、機械的、化学的、または電気的パラメータを感知する工程を含む。一例として、サブアセンブリの厚さの機械的な測定はプロフィルメータを使用して行われる。この例の場合、プロフィルメータの探り針(プローブ)は計測ユニットのセンサである。サブアセンブリはエッチング処理中に数回測定される。図9はサブアセンブリのプロフィルメータの測定値の重畳したグラフを示す。厚さプロファイルIはサブアセンブリのAlN基板がエッチングされる前の起動プロファイルである。この起動プロファイル(プロファイルI)を取得した後、第1の期間でサブアセンブリをエッチング槽に入れ、次に除去し厚さプロファイルを再測定した。プロファイルAは、第1の期間においてエッチングした後のサブアセンブリの厚さを表している。プロファイルAを取得した後、第2の期間においてサブアセンブリをエッチングした。第2の期間を経た後、プロファイルBに示したように、サブアセンブリの厚さを再測定した。連続するプロファイルI、A、Bは第1および第2の期間を経た後のエッチング処理の進行状況を示している。
【0025】
サブアセンブリの電気的特性は、厚さを示す信号を生成するために使用可能である。たとえば、いくつかの実施形態において、センサは、サブアセンブリの表面または部分に電気接触するように構成されている電気コンタクトを含む。電気コンタクトは、1つ以上の電気的特性処理を実施するように構成されている回路に結合される。サブアセンブリの電気的特性は、抵抗/コンダクタンス測定値、静電容量測定値、電流−電圧特性、および/または他の特性の1つ以上を含み得る。サブアセンブリの厚さの薄膜化はサブアセンブリの電気的特性における検出可能な変化を生成する。
【0026】
計測ユニットはサブアセンブリおよび/またはエッチング液における化学的変化を検出するように構成されている化学センサとこれらに関連する回路とを含む。化学センサは、サブアセンブリの上、および/または、エッチング液槽などのエッチングチャンバ内に配置することができる。場合により、化学センサとこれらに関連する回路はエッチング槽中のイオン濃度を測定するように構成されている。この濃度は、エッチング液に溶解される状態になるAlNの量の関数として、エッチング処理中に変化し得る。よって、化学センサによって検出されたイオン濃度はAlN基板の厚さを示す信号を生成するために使用可能である。いくつかの構成において、これは、エッチングされている表面にてイオン濃度に対する感度を高めるためにサブアセンブリの近傍、例えば、サブアセンブリの数mm以内に化学センサを配置するために有用であり得る。
【0027】
計測ユニットは基板の厚さを示す信号を生成するためにサブアセンブリを透過した光を使用することができる。これらの実施において、計測ユニットは、光をサブアセンブリへ方向付けるように配置された光源と、透過した光を検出するように配置された検出器と、を含み得る。光源は、1つ以上のランプ、LED、および/またはUV、可視光、赤外光、または広帯域光を放つレーザを含み得る。サブアセンブリへ方向付けられた光はAlN基板に実質的に光学的に吸収されるがサブアセンブリのエピタキシャル層には実質的に吸収されない波長範囲を含む。たとえば、バルクAlN基板とAlGaNエピタキシャル層とを含むサブアセンブリに対して、計測ユニットは、光源、例えば、約200nm〜約365nmの波長範囲で発光するLEDと同範囲で光を検出する検出器とを含み得る。いくつかの構成において、光源は発光し、検出器は約250nm〜約300nmの波長範囲の光を検出し得る。
【0028】
場合により、光源はある波長範囲を有する光を出力するように構成され検出器は波長範囲にわたってサブアセンブリのスペクトル応答を特徴づけるように構成されている。スペクトル応答における変化はエッチング処理を調整するために使用することが可能である。
【0029】
図10は、厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置1000を示す図である。図10の構成例において、バルクAlN基板1011とAlN基板1011上の1つ以上のエピタキシャル層1012とを含むサブアセンブリ1010はエッチング液チャンバ1020内に配置されている。加熱素子1030、たとえば、ヒータおよび/またはクーラはエッチング処理中にエッチング液の温度を調整するためにチャンバ1020の中、その上、またはその周りに配置することができる。これに加えて、またはこれに代えて、装置1000は、チャンバ内のエッチング液の濃度を調整するように構成されている構造(図示しない)を含み得る。光源、たとえば、UVLEDは光がサブアセンブリへ向けて方向付けられるように配置される。図10に示すように、光は光ファイバ1050を介してサブアセンブリ1011に向けて方向付けられる。エッチング処理に先立って、光源1040からの光はバルクAlN基板1011により実質的に遮断されるが、エピタキシャル層1012により実質的に透過される。基板1011が薄膜化されるにつれて、光はサブアセンブリ1010を透過することが可能である。透過光1070は光検出器1080によって検出される。サブアセンブリ1010を透過した光1070に応答して、光検出器1080はAlN基板1011の厚さを示す出力信号1090を生成する。
【0030】
エッチング処理中にAlN基板の厚さを検出するために光を使用する装置1100の他の例を図11に示す。本実施形態の装置1100はリン酸槽を含む石英タンク1120を備えるエッチング液チャンバを含む。AlN基板とこの上に形成した1つ以上のエピタキシャル層とを含むサブアセンブリ1110は、試料ホルダ1121によりタンク1120内に位置決めされ保持される。装置1100は各々が真空に結合されている2つのポート1122、1123を含む。この例において、ポート1122、1123は閉端された真空石英管を含む。光源1140からの光は第1のポート1122を介して第1の光ファイバ1150によって導かれ第1のミラー1124によってサブアセンブリ1110に向けて方向付けられる。サブアセンブリ1110を透過した光は第2のポートから第2の光ファイバ1151を介して第2のミラー1125によって方向付けられる。光検出器1180はサブアセンブリ1110を透過した光を検出するように配置される。検出された光に応答して、光検出器1180はAlN基板の厚さを示す信号1190を生成する。
【0031】
いくつかの実施において、サブアセンブリのエピタキシャル層はLEDなどの発光素子を形成し得る。これらの実施において、発光素子はAlN基板の厚さを示す信号を生成する際に使用される光のための光源であってよい。図12は、AlN基板の厚さを測定するために使用される光1270を生成するためにサブアセンブリ1210のエピタキシャル層1212を使用する装置1200を示す。装置1200は、図10に示した外部光源と光ファイバが図12に示した実施では使用されていないことを除いて、いくつかの点で図10の装置と同様である。サブアセンブリ1210はエッチング液チャンバ1220内に配置されるとともにAlN基板1211上にエピタキシャル成長させる層1212を含む。エピタキシャル層1212は発光素子を形成する。装置1200は、発光素子1212と接触する電気コンタクト1232、1233と、これらの電気コンタクト1232、1233を電源1240に接続するリード1234、1235と、を含む。発光素子1212がリード1234、1235と電気コンタクト1232、1233を介して電源1240によって通電されると、発光素子1212は、基板が光1270を透過するために十分に薄膜化された時にAlN基板を透過する光1270を生成する。AlN基板1211がエッチングされるにつれて、この基板1211は増量する光1270を透過し、この光量は光検出器1280によって検出される。光検出器1280はAlN基板の厚さを示す信号1290を生成する。
【0032】
図13は、たとえば、AlN基板の厚さを示す光検出器によって生成される、理想的な信号の一例を示す。最初にAlN基板はこのAlN基板に向けて透過される光を実質的に光学的に吸収している。エッチング処理が最初に開始されると、AlN基板に方向付けられた光の多くが基板によって吸収されてサブアセンブリから抜け出さない。この厚さ信号は、AlN基板の厚さがAlN層を光が透過する位に薄膜化されるまで、公称値のままである。窒化アルミニウム基板が光を透過する位に薄膜化されると、厚さ信号はAlNが基板からエッチングされればされるほど、一層増え始める。信号の変化はAlN基板の厚さがかなりの光量を透過する値に達した時、極めて速くなる。
【0033】
場合により、計測ユニットにより生成された信号はエッチング処理を調整するために使用することができる。たとえば、コントロールユニットは急速な変化が検出されるポイントまで信号を監視し得る。その時点で、コントロールユニットはエッチング速度を変更させるように、たとえば、エッチング処理を遅延させたり停止させたりするように、動作し得る。計測ユニットにより生成された信号はエッチング処理を調整するために他の情報と組み合わせて使用され得る。たとえば、計測ユニットによって生成された信号に加えて、コントロールユニットは、エッチング処理期間、エッチング処理期間にわたるチャンバ内のエッチング液の濃度、および/またはエッチング処理期間にわたるエッチング液の温度などの要因を考慮に入れる。コントロールユニットは感熱ユニット、たとえば、ヒータやクーラの動作を調整し、および/またはエッチング処理の速度を変更するためにエッチング液の濃度を調整することができる。
【0034】
様々なタイプの発光素子は本明細書中に記載されているバルクAlN基板を除去するための処理を用いて形成してよい。バルクAlN基板の除去や薄膜化は約200nm〜約365nmまたは約250nm〜約320nmの波長範囲の光を放つ紫外線発光ダイオード(UVLED)と紫外線(UV)レーザダイオードに特に有用である。これらの発光素子の形成におけるバルクAlN基板の使用は素子構造の低欠陥エピタキシャル層の成長を可能にするが、AlN基板は素子の基板側に向けた活性領域から放たれた光を実質的に吸収する。したがって、基板の除去は素子の基板側(裏面)から増加した発光を可能にする。いくつかの素子において、基板から活性層の反対側にある発光素子の上層(すなわち、素子の正面側にある層)は素子によって生成された光の波長で光学的に吸収している状態であり得る。したがって、これは、AlN基板の除去によって実現可能となる素子によって生成された光が基板側を通過して放たれる場合に有用である。
【0035】
図14は、バルクAlN基板1410上に初期に成長させたUVLED1400の実施形態を示す図である。エピタキシャル層の成長は、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE)および/またはこれらの技術の任意の組み合わせにより、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、達成される。次に、バルクAlN基板1410は、矢印1411で示されるように、除去されるかまたは薄膜化される。場合により、AlN基板1410は除去される。場合により、AlN基板1410は、たとえば、機械的な技術を用いて可能とされる厚さよりも薄く、約50μm以下の厚さまで薄膜化される。図14に示したUVLEDヘテロ構造1400は有機金属気相成長法により成長させて以下を含む:
n側のAlxGa1−xN遷移領域1420と、
nドープされたAl0.74Ga0.26Nのnコンタクト層1430と、
n側のAl0.74Ga0.26Nの分離した閉じ込めヘテロ構造(SCH)1440と、
例えば、中心周波数λ=250nmで発光するように設計された、多重量子井戸(MQW)発光層1450と、
電子遮断層1460と、
p側AlGaNのSCH1470と、p型ドープAlGaN遷移領域1480と、
pドープされたGaNコンタクト層1490。
【0036】
n側のAlxGa1−xNの遷移領域1420はAlN基板1410上に形成されたエピタキシャル成長の初期表面1405を含む。いくつかの構成において、n側遷移領域1420は、約0.90に等しいxから約0.80に等しいxまでの範囲の平均Al組成を有する一連の短周期超格子である。いくつかの構成において、遷移領域1420は、xが約100%から約74%までの範囲の線形グレード合金であってよい。nコンタクト層1430はnコンタクト1435のためのコンタクト層であり、たとえば、約1.9μm厚さであってよい。量子井戸(MQW)発光層1450は3対の6nm厚さのAl0.68Ga0.32Nバリアと2nm厚さのAl0.65Ga0.35Nウェルを含むことができる。電子遮断層(EBL)1460は約83%のアルミニウムと約20nmの厚さであってよい。p−SCH1470は約0.3から約0.74までの範囲のアルミニウム組成xを有することができる。p遷移層1480は超格子であるかまたは約0.3から約0.74までの範囲xを有する合金であってよい。pコンタクト層1490はGaNを含みかつp型金属コンタクト1495のためのコンタクト層である。記載した構造は一例にすぎない。層数、層の組成、実際のヘテロ構造の設計、および/または成長手順は大きく異なる。具体的には、これらの層はAlGaNに代えてInGaNまたはInAlGaNを形成するためにインジウムを含むことができる。
【0037】
LEDをバルクAlN基板上に最初に成長させて次にこの基板を除去するかまたは薄膜化する。この処理は、たとえば、約108cm−3または107cm−3などの約1010cm−3〜約103cm−3の範囲において相対的に低くなるようにAlGaN遷移層のエピタキシャル成長の初期表面において欠陥密度を生成する。このように、素子はAlN基板に整合する実質的な格子によってもたらされる高品質のエピタキシャル成長を保持するが、この素子の基板側を通過する実質的な光透過を可能とすることもできる。
【0038】
たとえば、バルクAlN基板上にエピタキシャル成長させる約70%〜80%未満のAlモル分率を有するAlGaNのn遷移層は基板にぴったり格子整合すると思われる。このシナリオでは、AlGaNのn遷移層は低欠陥密度を有するバルク結晶AlNの格子定数にぴったり整合するように最初は不整合な状態である。AlN基板が除去されると、n遷移層の格子は緩むが、低欠陥密度は保持される。
【0039】
図15は、図14のLED1400にいくつかの点で類似しているLEDを示す。図15において参照符号で識別される要素は、図14におけるこれらの片われに類似している。LED1500は、このLED1500がエッチング前にAlN基板1410とAlGaN遷移層1420との間で成長させることが可能なエッチング低減層1510(エッチング停止層ともいう)を含む点で、図14のLED1400とは異なる。この例において、エッチング低減層1510は初期のエピタキシャル表面1505を含む。エッチング低減層1510は、AlN基板をエッチングするために使用されるエッチング液に不浸透性であるかまたはエッチング液中のエッチング低減層のエッチング速度はAlN1410のエッチング速度より低速である。エッチング低減層1510は、相対的に薄層のGaN層であるかまたは約70%〜約80%の範囲のアルミニウム含有量(Alモル分率)を有するAlGaN層であるかおよび/または、たとえば、エッチング低減能力を付与する他の適切な材料を含み得る。
【0040】
約50μm未満の厚さを有する基板残部を残すための完全な除去または化学的なエッチングのいずれかによる基板の除去によってこの後の処理のために素子の裏面へのアクセスが可能となる。基板が除去された後は素子の裏面にある量の表面粗さやテクスチャリングが存在している。場合により、テクスチャリングは、この基板除去処理によって素子の裏面へ付与される。この基板除去処理は、この基板除去処理中にこの素子の裏面のテクスチャリングを付与するように構成可能である。化学エッチングから得られた表面粗さはエッチング槽温度、酸濃度、エッチング速度、および/またはウェハ裏面磨きなどの処理パラメータに依存する。適切な処理パラメータは所望される表面粗さ特性を生成するために選択することができる。いくつかのシナリオにおいて、素子の裏面は、たとえば、イオンビームまたは化学処理によって、基板除去後にテクスチャリングすることができる。テクスチャリングは光抽出を向上させることができる。いくつかのシナリオにおいて、裏面のテクスチャリングを行わずに、実質的な発光量を全内部反射によってヘテロ構造に閉じ込めることができる。裏面のテクスチャリングは放たれた光を散乱させ、全内部反射を妨げ、かつ光抽出効率を向上させる。
【0041】
表面テクスチャリングは様々な湿式または乾式の処理技術によってパターン化することができる。たとえば、表面は水素化カリウム(KOH)溶液に浸漬することによりテクスチャリングすることができる。プラズマ処理技術は粗面処理するために使用することができる。たとえば、LED1400、1500の初期のエピタキシャル表面1405、1505はテクスチャリングされた表面であってよい。
【0042】
裏面のテクスチャリングは、放たれた光がより短い波長でTM方向(平面に垂直な方向)へますます偏光した状態になるので、短波長のUVLEDにおいて特に重要である。これによって、光の大部分は裏面へ向けてよりもむしろ、素子の端部へ向けて伝搬しながら発光される。基板が除去されて、特性は裏面へ向けてかつ裏面を通過して放たれた光を再方向付けするようにパターン化することができる。
【0043】
基板の除去によって垂直方向の電気的注入LEDアーキテクチャも可能になる。図16はこのような構造1600を示す。このLEDは初期エピタキシャル表面1631を含むn型のヘテロ構造1630を含む。n型のヘテロ構造の初期のエピタキシャル表面から開始して発光層1620とp型ヘテロ構造1610を連続してエピタキシャル成長させながら、LED1600をバルク結晶AlN基板(図16に図示せず)上に成長させた。エピタキシャル層1610〜1630を形成した後、バルクAlN基板が除去される。
【0044】
垂直方向注入LED1600のpコンタクト1605はヒートシンクチップ1601のパッド1602へ半田付け1603される。電極1640は1つ以上のリード1641とnコンタクト1642を介してヒートシンクチップ1601に電気的に結合される。素子の動作中、電流は、pコンタクト1605、p側(p型ヘテロ構造1610)、発光層1620、およびn側(n型ヘテロ構造1630)を介して、外部電源(図示せず)から注入されるとともに素子1600の裏面に形成された電極1640にて集合される。電気的絶縁性のAlN基板を除去することによって裏面コンタクト1640を形成するためのN型ヘテロ構造層1630へのアクセスが可能となる。
【0045】
図16に示した垂直方向注入構造1600は、n型ヘテロ構造1630を形成する材料、たとえば、nドープされたAlGaNが大きく抵抗性を示す場合、特に有利になり得る。この状況において、AlN基板を除去しない場合、電流は、素子1600のpコンタクト1605と同じ側で、発光領域1620に並んだ領域において、集合される(たとえば、図14と図15のLED1400、1500、1600の構造を参照されたい)。より高い光出力パワーを得るために発光層1620の面積は相対的に大きくなるように作られる。発光層の中心に注入される電流は、素子の周囲のnコンタクトに達する前に抵抗性のあるnドープされた層内でより長い横方向の距離を移動する必要があるとおもわれる。この横方向の距離に沿った電流経路は大きな電圧降下を生成しかつ不均一な電流注入を生じさせることができる。AlN基板の除去はコンタクトを素子の裏面に形成することを可能にしこれによりpコンタクト1602と電流収集電極1640との間により直接的な電流経路とより低い電圧降下をもたらす。
【0046】
レーザダイオード(LD)もまた、AlN基板の除去や薄膜化を有利とすることができる。図17は関連する光学モードプロファイル(破線で示す)とともに典型的なレーザーダイオード設計(実線で示す)のエネルギバリア図sを示す。モードの中心周波数は約250nmの波長に対応する。この設計において、光学モードと量子井戸1730の間のオーバーラップは、Γ=8.26%で表される。LDは、nコンタクト1710、n‐SCH1720、多重量子井戸1730、p‐SCH1740、およびpコンタクト1760を含む。
【0047】
AlN基板上に作られた一般的なUVレーザダイオードにおいて、何らかの電界がAlN基板に浸透している場合、このAlN基板がレーザ処理波長において高く光吸収するので、実質的なモーダル損失が生じる。光吸収基板は導波管材料の損失を助長しこれによりレーザ処理を達成するために必要とされる利得を増加させる。基板側のクラッド層は活性領域内に光学モードをしっかりと閉じ込めるために十分に厚くする必要がある。しかしながら、厚膜のnクラッド層は素子の抵抗性を助長する。AlN基板を除去または薄膜化することはモーダル損失を低減し設計上のフレキシビリティを高める。AlN基板の除去/薄膜化はまた、LEDのケースにおいて説明した利益に類似した利益を提供する垂直方向の注入LD構造を可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態において、基板の除去/薄膜化は、裏面全体を横切ってというよりむしろ裏面のいくつかの部分に於いてのみ達成される。基板は化学エッチング液から保護することができ選択領域における開口はこれらの領域のみをエッチングするためだけに形成することができる。たとえば、開口は発光層の真下の領域においてのみ形成でき、これによりバルク基板の部分はエッチング処理後に残留しこれ以降の処理のために使用可能である。
【0049】
いくつかの実施において、本明細書において「テンプレート/基板」と総称されるエピタキシャル成長させたAlNまたはAlGaNテンプレートおよび/または基板は、スタンドアロン型コンポーネントとして製造することができる。これらのテンプレート/基板は、たとえば、ピースパーツとして売られ、その後、LEDやレーザーダイオードなどのオプトエレクトロニクスデバイスとヘテロ接合トランジスタや増幅器などの電子素子とを含む数多くの種類の素子を形成するために使用することができる。エピタキシャルなテンプレートは、バルク結晶AlN基板上にエピタキシャルなAlNまたはAlGaNを成長させ次にこのAlN基板を除去または薄膜化することによって形成することができる。この技術は、AlN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNなどの窒化物系材料の高品質で光学的に透明なエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を生成することができ、これ以降の処理ステップにおけるエピタキシャル成長のためのベースとして使用することができる。エピタキシャルなテンプレート/基板は、相対的に高い成長率、たとえば、時間あたり約1μm以上で成長させて約30μm〜約400μmの層を生成することができる。エピタキシャル成長させたテンプレート/基板は、有機金属気相成長法(MOCVD)により、ハイドライド気相成長法(HVPE)により、および/または、これらの技術の任意の組み合わせにより、形成される。高品質で光学的に透明なテンプレート/基板は、前述した理由からUVオプトエレクトロニクスデバイスに有用であり得る。最も一般的な配向はc平面のAlNであるが、m平面、a平面などの他の結晶配向や半極性配向も、エピタキシャル成長の開始前にAlNバルク基板を所望の配向において切断することによって得ることができる。
【0050】
図18および図19は、スタンドアロン型のエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理(図19)と、これにより得られる構造(図18)と、を示す。たとえば、エピタキシャルなAlN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNを含むエピタキシャル層をバルク結晶AlN基板上に成長させる(1910)。得られた構造1810を図18に示す。バルクAlN基板は、本明細書において前述した処理によって除去または薄膜化1920されて、スタンドアロン型のエピタキシャルなテンプレート/基板1820を残す。
【0051】
いくつかの実施において、構造、たとえば、エピタキシャルなテンプレート/基板、オプトエレクトロニクスデバイス、または他の構造またはヘテロ構造は、AlN、シリコン、サファイア、またはSiC(炭化ケイ素)などの様々な基板上に成長させた中間層上に成長させることができる。これらは中間層をエッチングすることによって基板から分離させてこれにより基板から構造を分離させることができる。図21は、中間層をエッチングすることによりその基板からスタンドアロン型のエピタキシャル成長させたヘテロ構造を形成する処理を示す。図20は、この構造の初期と最後の状態を示す。中間層2020は基板2010上にエピタキシャル成長させる(2110)。構造2030を界面層2020に成長させる(2120)。界面層2020は横方向にエッチングされ(2130)、基板2010から構造2030を分離させる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)部分を除去または薄膜化した素子、およびこのような素子を形成するための方法に関する。いくつかの実施形態は、発光層と第1および第2のヘテロ構造とを含む1層以上のエピタキシャル層を有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、窒化アルミニウム(AlN)部分を除去または薄膜化した素子、およびこのような素子を形成するための方法に関する。いくつかの実施形態は、発光層と第1および第2のヘテロ構造とを含む1層以上のエピタキシャル層を有する発光素子に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1のヘテロ構造をバルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させ、次にエピタキシャル層からバルク結晶AlN基板が除去される。第1のヘテロ構造は、第1の表面と第2の表面とを有しており、第1のヘテロ構造の第1の表面は、エピタキシャル層のエピタキシャル成長の初期表面である。第1のヘテロ構造の第2の表面の真上に、発光層をエピタキシャル成長させる。発光層の真上に、第2のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。発光素子は、バルク結晶AlN基板を含まない。
【0004】
いくつかの実施形態によれば、発光素子は、第1の表面と第2の表面とを有する第1のエピタキシャル成長させたヘテロ構造と、この第1のヘテロ構造の第2の表面の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、を含む。第2のエピタキシャル成長させたヘテロ構造を発光層を覆って成長させる。この素子は、約365nm未満の波長範囲の、発光層により生成された光が第1のヘテロ構造の第1の表面を通過して、この素子から射出可能であるように構成されている。第1の表面近傍の欠陥密度は、約108cm−3未満である。
【0005】
いくつかの実施形態は、第1および第2のヘテロ構造間に発光層を含む発光素子に関する。バルク結晶AlN基板上に、第1のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。第1のヘテロ構造の真上に、発光層をエピタキシャル成長させる。発光層の真上に、第2のヘテロ構造をエピタキシャル成長させる。バルク結晶AlN基板は、約50μm未満の化学的にエッチングされた厚さを有する。
【0006】
いくつかの実施形態は、AlN、GaN、AlGaN、InGaN、InN、およびInAlGaNの少なくとも1つを含み、かつ、エピタキシャル成長の初期表面である第1の表面を有する1層以上のエピタキシャル層からなる物体に関する。この物体は、バルク基板を含まないが、除去処理後に残ったAlN基板残部、たとえば、約50μm未満の厚さを有する化学的にエッチングされたAlN基板残部を含んでよい。エピタキシャル成長の初期表面100nm以内の欠陥密度は、約108cm−3未満である。この物体は、約200nm以上または約365nm以上の波長の光に対して光透過性であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態は、素子を形成する方法に関する。バルクAlN基板上に格子不整合エピタキシャル層を成長させる。このエピタキシャル層は、初期エピタキシャル成長の表面近傍で約108cm−3未満の欠陥密度を有する。バルクAlN基板は、この基板を完全に除去するか、または化学エッチングすることによって実質的に除去されて、約50μm未満の厚さの基板残部を残す。この基板が実質的に除去された後、エピタキシャル層の格子不整合は、部分的または完全に緩和されるとともに、初期のエピタキシャル成長の表面近傍の欠陥密度は実質的に維持される。基板の実質的な除去は、エピタキシャル成長の初期表面の大部分(50%以上)に対して基板を除去する工程またはエピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して基板残部を残す工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、サブアセンブリを示す図である。
【図2】図2は、バルクAlN基板を除去する方法を示す図である。
【図3】図3は、AlN基板の厚さを測定する工程を示す流れ図である。
【図4】図4は、エピタキシャルなAlxGa(1−x)N層のエッチング時間を示す図である。
【図5】図5は、リン酸中のAlxGa(1−x)N層のエッチング速度を示すグラフである。
【図6】図6は、X線回折測定の一例を示す図である。
【図7】図7は、湿潤エッチングによりサブアセンブリからAlN基板を除去するために使用することができる装置を示す図である。
【図8】図8は、温度の関数としてバルクAlNのエッチング速度を示す図である。
【図9】図9は、サブアセンブリのプロフィルメータの測定値を示す重畳されたグラフである。
【図10】図10は、AlN基板の厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置を示す図である。
【図11】図11は、AlN基板の厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置を示す図である。
【図12】図12は、サブアセンブリによって生成される光を使用する装置を示す図である。
【図13】図13は、AlN層の厚さの関数としての光検出器によって生成される信号の一例を示す図である。
【図14】図14は、バルクAlN基板上に初期に成長させた紫外線(UV)発光ダイオード(LED)を示す図である。
【図15】図15は、エッチング低減層を含むLEDを示す図である。
【図16】図16は、表面で裏面コンタクトを有する垂直方向の電気的注入LEDアーキテクチャを示す図である。
【図17】図17は、レーザダイオード設計のエネルギバリアを示す図である。
【図18】図18は、得られたエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理を示す図である。
【図19】図19は、スタンドアロン型のエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理を示す図である。
【図20】図20は、界面層をエッチングすることによって基板からエピタキシャル成長させたヘテロ構造を分離した後に得られた構造を示す図である。
【図21】図21は、エピタキシャル成長させたヘテロ構造を形成する処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、バルク結晶AlN基板140と、このバルクAlN基板140上に形成させたエピタキシャル層150とを最初に含むサブアセンブリ100を示す図である。図1は、いくつかのエピタキシャル層150を示しているが、サブアセンブリはこれより多いまたは少ないエピタキシャル層を含んでよいし、一部の実施においては、1層のみのエピタキシャル層を含んでもよい。AlN基板140は、第1の表面141と第2の表面142と有している。バルク結晶AlN基板は、第1および第2の表面141、142においてスライスされるインゴットとして成長させてよい。
【0010】
場合により、エピタキシャル層150は、第1のヘテロ構造110と第2のヘテロ構造130に挟まれた1層以上の発光層120を含む。発光層120および/またはヘテロ構造110、130は、低欠陥密度でAlN上にエピタキシャル成長させることができる材料系、GaN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNから形成されてよい。この例では、バルクAlN基板140の真上に、第1のヘテロ構造110をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル層150の成長は、AlN基板140の第2の表面142上でエピタキシャル成長する第1のヘテロ構造110の第1の表面101から進行する。第1のヘテロ構造110は、欠陥低減層、ひずみ管理層、および/または電流分布層を含む多層を有してよい。次に、第1のヘテロ構造110の真上に活性領域120を成長させ、活性領域120の真上に第2のヘテロ構造130を成長させる。破線160で示すように、サブアセンブリ100の形成後、バルクAlN基板140は実質的に除去される。
【0011】
バルクAlN基板は、ある波長範囲、たとえば、365nm以上の波長に対して、および/または、約200nm〜約365nmのUV波長範囲において、実質的に光吸収性である。発光素子の場合、バルクAlN基板の実質的な除去によって素子の基板側(本明細書中では素子の裏面として示す)、すなわち、このバルクAlNが実質的に除去された表面を介して光を射出することが可能となる。スタンドアロン型のエピタキシャルテンプレート/基板の場合、バルクAlN基板の実質的な除去によってエピタキシャルテンプレート/基板が約365nm以上の波長を有する光に対しておよび/または約200nm〜約365nmの波長範囲の光に対して実質的に光透過性となることができる。
【0012】
基板の実質的な除去は、エピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して基板を除去する工程を含む。基板の実質的な除去は、たとえば、エピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して化学的にエッチングすることにより、AlN基板を薄膜化する工程を含む。場合により、基板残部は、エッチング処理後のエピタキシャル成長の初期表面の大部分に対して残留することがある。基板残部は、約50μm〜0nm(完全に除去)または約50μm未満の厚さを有する。
【0013】
図2は、サブアセンブリからバルクAlN基板を除去する方法を示している。このサブアセンブリは、バルクAlN基板と、このバルクAlN基板上にエピタキシャル成長させた1層以上のエピタキシャル成長層とを含む。たとえば、この1層以上のエピタキシャル層は、発光層を有する発光素子を含むかまたは発光層を含まないエピタキシャル層を含む。
【0014】
バルクAlN基板、たとえば、基板の窒素極性(N極)面は、高温、たとえば、湿潤エッチング処理においてリン酸の沸点におけるリン酸を含むエッチング液にさらされる(220)。本明細書に記載されているLED構造において、たとえば、図1に概略的に示すように、バルクAlN基板の底面はエッチング液にN極面を付与することができる。約85%以上または約87%〜約96%の濃度範囲および160℃〜210℃の温度範囲におけるリン酸は適切な時間内でバルク単結晶AlNを溶解することができる。いくつかの構成において、使用されるリン酸は、たとえば、約160℃〜約180℃の温度範囲で87%〜92%の濃度範囲を有することができる。この溶解はまた、表面の初期加水分解後にAl極面を付与するAlN基板をエッチングするために使用することもできる。
【0015】
エッチング処理中、エッチング処理パラメータ、たとえば、リン酸の濃度および/または温度が監視され(225)、リン酸の濃度および/または温度が所定の濃度/温度範囲内に留まるように調整される。エッチング処理中、AlN基板の厚さを監視することができる(230)。場合により、AlN基板の厚さは移動位置において測定され、この厚さ測定は、エッチング処理からサブアセンブリを定期的に除去し、サブアセンブリの厚さおよび/または窒化アルミニウム基板の厚さを測定し、場合によっては測定後このサブアセンブリをエッチング処理へ戻す工程を含む。別の場合では、以下に説明するように、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の厚さは原位置で測定できる。
【0016】
エッチング処理は、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の測定厚さに基づき必要に応じて調整することができる(240)。エッチング処理は、エッチング速度を変化させ(エッチング速度を増減させ)、エッチング処理を開始し、および/または、基板が所定の状態に入った後、たとえば、基板がサブアセンブリから実質的に除去された後、または、基板が所定の厚さ、たとえば、約50mmに達した時、または基板がサブアセンブリの領域内で実質的に除去された時、エッチング処理を停止するように、調整することができる。エッチング速度は、エッチング液の濃度および/または温度を変化させることによって調整することができる。たとえば、AlNの厚さが所定の厚さに近づく(または基板の実質的な除去に近づく)につれて、エッチング速度はチャンバに水を添加することによって遅延させてエッチング液の濃度を低下させることができる。これに代えてまたはこれに加えて、エッチング速度を遅延させるためにエッチング液の温度を下げてもよい。いくつかの実施において、エッチング処理を停止する工程は、手動または自動の除去技術のいずれかにより、エッチング液からサブアセンブリを除去して達成することができる。
【0017】
サブアセンブリおよび/または窒化アルミニウム基板の厚さ測定は、機械的、電気的、化学的、および/または光学的技術を含む様々な処理によって達成され得る。たとえば、いくつかの構成において、AlN基板の厚さ測定は、電磁放射を使用する光学的技術によって達成され得る。これらの技術は、電磁放射をサブアセンブリへ方向付けるソースと、回折され、反射されおよび/またはサブアセンブリによって透過される電磁放射を検出するように構成されている検出器と、を必要とする。たとえば、サブアセンブリおよび/またはAlN基板の厚さは、X線回折、偏光解析法、および/または干渉分光法などの技術を用いて測定可能である。いくつかの構成において、計測ユニットは、エッチング処理中に原位置で厚さ測定されるように配置することができる。他の構成において、厚さは、エッチング処理からサブアセンブリを除去し、測定し、このサブアセンブリをエッチング処理に戻すことによって移動位置で測定される。
【0018】
いくつかの構成において、AlN基板の厚さ測定は、サブアセンブリを透過する光を検出する工程を含む。このような測定に使用される光の波長範囲は、バルクAlN基板によって実質的に吸収され、少なくともある程度エピタキシャル層によって透過される範囲のものである。図3の流れ図によって示すように、最初にエッチング処理が開始された時(320)、AlN基板は相対的に厚膜であり光に対して不透明である。(あれば)AlN基板を透過した光はエッチング処理中に検出される(330)。AlN基板がエッチングによって除去されると、このAlN基板は基板を通過して光透過が可能となる位に薄膜化される。AlN基板の透過光の量、エッチング処理において以前測定した基準量に比較した場合の光透過の変化および/またはAlN基板を通過する光透過の変化率が検出でき(340)、かつ、これらをエッチング処理を調整するために用いてよい(350)。
【0019】
AlxGa(1−x)N材料(X=0〜1)のエッチング速度は、アルミニウム含有量の関数として変化する。図4および図5のグラフは、各々エピタキシャル成長させたAlGaN層のエッチング時間とエッチング速度をアルミニウムのモル分率の関数として示している。各試料について、エッチングされているAlGaN層の厚さは、エッチング液化学槽から定期的に試料を取り出してX線スキャンを実行して、AlGaN層のX線信号強度を求めることにより監視された。図4は、91%濃度と180℃の温度におけるリン酸(H3PO4)中でエッチングされた厚さ2.4μmのエピタキシャルなAlxGa(1−x)N層のエッチング時間を示している。74%または67%のアルミニウムモル分率を有するAlGaNの層は5分以内で実質的に除去されたが、47%のアルミニウムモル分率を有するAlGaN層を除去するには30分以上もかかった。
【0020】
図5は、91%濃度および180℃の温度におけるリン酸(H3PO4)中にエピタキシャル成長させたAlxGa(1−x)Nのエッチング速度を、アルミニウムモル分率として示すグラフである。このグラフは、アルミニウムモル分率が高くなるにつれてエッチング速度も速くなることを示している。図6は、基板の除去前(610)と基板の除去後(620)の試料サブアセンブリのX線回折測定の一例である。以下に詳細に説明するように、いくつかの実施形態において、相対的に高いモル分率のエピタキシャル成長させたAlGaNの層はバルクAlN基板を除去するための中間層として使用することができる。
【0021】
図7は、湿潤エッチングによりサブアセンブリからAlN基板を除去するために使用することができる装置を示す図である。この装置はエッチング液チャンバ710を含み、このチャンバはエッチング液を含有するとともにエッチングされているサブアセンブリを保持するように構成されている。この装置は必要に応じて計測ユニット720を含み、この計測ユニットはAlN基板の厚さおよび/またはAlN基板と1層以上のエピタキシャル層との両方を含むサブアセンブリの厚さとを示す信号を生成するように構成されている。この信号はエッチング処理中に計測ユニット720によって生成され、一連の厚さ測定値を反映することが可能である。この信号はエッチング処理の1層以上の側面を調整するためにコントロールユニット730によって使用可能である。
【0022】
エッチング処理の調整は、エッチング処理のさまざまな側面を調整するように配置されたコントロールユニット730の1つ以上のサブユニットによって達成可能である。たとえば、サブユニット731、732、733は、エッチング液の温度、エッチング液の濃度、および/または試料の位置を調整することができる。サブアセンブリのエッチング速度は、これらの1つ以上および/または他のパラメータを変更することによって調整することが可能である。濃度調整サブユニット732は、チャンバ710へより多くの水分を添加することによって、またはチャンバ710内の水分を減少させることによって、例えば、沸騰時に蒸発する水分を補給しないことによって、エッチング液の濃度を維持したり変更したりするように構成することができる。温度調整サブユニット731は、エッチング液を加熱および/または冷却するヒータおよびクーラの1つまたは両方を含むことが可能である。エッチング液の冷却および/またはエッチング液の濃度低下はエッチング速度を遅らせる。エッチング液の温度の上昇および/または濃度の増加はエッチング速度をあるポイントまで上昇させる。しかしながら、エッチング速度はAlN基板表面の加水分解に依存することがあり得る。エッチング速度は、エッチング液の濃度が高くなりすぎ、エッチング液中の水量が表面の加水分解を発生させるには不十分な場合、抑制される。図8はバルクAlNのエッチング速度を温度の関数として示す。理解されるように、エッチング速度は約85%の濃度に対応する約160℃よりも高い温度に対しても横ばい(レベルオフ)であるように見える。この横ばいは基板の表面を加水分解するには水分が不十分であることに起因し得る。
【0023】
いくつかの構成において、温度および/または濃度調整サブユニット731、732はエッチング液の温度および/または濃度を所定の範囲内に保つように設定される。基板の除去はエッチング溶液を監視する工程を含む。リン酸の温度が沸点に保たれる場合、沸騰時の水分の損失はAlNの加水分解速度を減速させ、これによりエッチング速度を低下させる。リン酸の沸点は酸の濃度に応じて変化する。たとえば、市販のリン酸は約85%の濃度を有し約158℃で沸騰する。沸騰中に水分が損失されるにつれて酸の濃度と沸騰点は上昇する。調整されたエッチング速度の場合、エッチング液の濃度および/または温度は、所定の範囲内、たとえば、約87%〜約96%の濃度範囲および160℃〜210℃の温度範囲に保つことが可能である。相対的に一定した酸の濃度を保つために、損失した水分は、例えば、還流冷却器または自動ドリップシステムのいずれかにより補給することができる。
【0024】
計測ユニット720は、センサ/検出器からの信号を処理するように構成されている適切な処理回路721に結合された(図7においてセンサ/検出器722として示す)1つ以上のセンサまたは検出器を含む。エッチング処理中、センサ/検出器722は、AlN基板および/またはサブアセンブリの厚さに関連するサブアセンブリおよび/またはエッチング液の特性における変化を検出する。前述したように、計測ユニット720は、厚さを示す信号を生成するために様々な技術を使用することができる。これらの技術は、エッチング処理中のAlN基板、サブアセンブリおよび/またはエッチング液の光学的、機械的、化学的、または電気的パラメータを感知する工程を含む。一例として、サブアセンブリの厚さの機械的な測定はプロフィルメータを使用して行われる。この例の場合、プロフィルメータの探り針(プローブ)は計測ユニットのセンサである。サブアセンブリはエッチング処理中に数回測定される。図9はサブアセンブリのプロフィルメータの測定値の重畳したグラフを示す。厚さプロファイルIはサブアセンブリのAlN基板がエッチングされる前の起動プロファイルである。この起動プロファイル(プロファイルI)を取得した後、第1の期間でサブアセンブリをエッチング槽に入れ、次に除去し厚さプロファイルを再測定した。プロファイルAは、第1の期間においてエッチングした後のサブアセンブリの厚さを表している。プロファイルAを取得した後、第2の期間においてサブアセンブリをエッチングした。第2の期間を経た後、プロファイルBに示したように、サブアセンブリの厚さを再測定した。連続するプロファイルI、A、Bは第1および第2の期間を経た後のエッチング処理の進行状況を示している。
【0025】
サブアセンブリの電気的特性は、厚さを示す信号を生成するために使用可能である。たとえば、いくつかの実施形態において、センサは、サブアセンブリの表面または部分に電気接触するように構成されている電気コンタクトを含む。電気コンタクトは、1つ以上の電気的特性処理を実施するように構成されている回路に結合される。サブアセンブリの電気的特性は、抵抗/コンダクタンス測定値、静電容量測定値、電流−電圧特性、および/または他の特性の1つ以上を含み得る。サブアセンブリの厚さの薄膜化はサブアセンブリの電気的特性における検出可能な変化を生成する。
【0026】
計測ユニットはサブアセンブリおよび/またはエッチング液における化学的変化を検出するように構成されている化学センサとこれらに関連する回路とを含む。化学センサは、サブアセンブリの上、および/または、エッチング液槽などのエッチングチャンバ内に配置することができる。場合により、化学センサとこれらに関連する回路はエッチング槽中のイオン濃度を測定するように構成されている。この濃度は、エッチング液に溶解される状態になるAlNの量の関数として、エッチング処理中に変化し得る。よって、化学センサによって検出されたイオン濃度はAlN基板の厚さを示す信号を生成するために使用可能である。いくつかの構成において、これは、エッチングされている表面にてイオン濃度に対する感度を高めるためにサブアセンブリの近傍、例えば、サブアセンブリの数mm以内に化学センサを配置するために有用であり得る。
【0027】
計測ユニットは基板の厚さを示す信号を生成するためにサブアセンブリを透過した光を使用することができる。これらの実施において、計測ユニットは、光をサブアセンブリへ方向付けるように配置された光源と、透過した光を検出するように配置された検出器と、を含み得る。光源は、1つ以上のランプ、LED、および/またはUV、可視光、赤外光、または広帯域光を放つレーザを含み得る。サブアセンブリへ方向付けられた光はAlN基板に実質的に光学的に吸収されるがサブアセンブリのエピタキシャル層には実質的に吸収されない波長範囲を含む。たとえば、バルクAlN基板とAlGaNエピタキシャル層とを含むサブアセンブリに対して、計測ユニットは、光源、例えば、約200nm〜約365nmの波長範囲で発光するLEDと同範囲で光を検出する検出器とを含み得る。いくつかの構成において、光源は発光し、検出器は約250nm〜約300nmの波長範囲の光を検出し得る。
【0028】
場合により、光源はある波長範囲を有する光を出力するように構成され検出器は波長範囲にわたってサブアセンブリのスペクトル応答を特徴づけるように構成されている。スペクトル応答における変化はエッチング処理を調整するために使用することが可能である。
【0029】
図10は、厚さを示す信号を生成するために光を使用する装置1000を示す図である。図10の構成例において、バルクAlN基板1011とAlN基板1011上の1つ以上のエピタキシャル層1012とを含むサブアセンブリ1010はエッチング液チャンバ1020内に配置されている。加熱素子1030、たとえば、ヒータおよび/またはクーラはエッチング処理中にエッチング液の温度を調整するためにチャンバ1020の中、その上、またはその周りに配置することができる。これに加えて、またはこれに代えて、装置1000は、チャンバ内のエッチング液の濃度を調整するように構成されている構造(図示しない)を含み得る。光源、たとえば、UVLEDは光がサブアセンブリへ向けて方向付けられるように配置される。図10に示すように、光は光ファイバ1050を介してサブアセンブリ1011に向けて方向付けられる。エッチング処理に先立って、光源1040からの光はバルクAlN基板1011により実質的に遮断されるが、エピタキシャル層1012により実質的に透過される。基板1011が薄膜化されるにつれて、光はサブアセンブリ1010を透過することが可能である。透過光1070は光検出器1080によって検出される。サブアセンブリ1010を透過した光1070に応答して、光検出器1080はAlN基板1011の厚さを示す出力信号1090を生成する。
【0030】
エッチング処理中にAlN基板の厚さを検出するために光を使用する装置1100の他の例を図11に示す。本実施形態の装置1100はリン酸槽を含む石英タンク1120を備えるエッチング液チャンバを含む。AlN基板とこの上に形成した1つ以上のエピタキシャル層とを含むサブアセンブリ1110は、試料ホルダ1121によりタンク1120内に位置決めされ保持される。装置1100は各々が真空に結合されている2つのポート1122、1123を含む。この例において、ポート1122、1123は閉端された真空石英管を含む。光源1140からの光は第1のポート1122を介して第1の光ファイバ1150によって導かれ第1のミラー1124によってサブアセンブリ1110に向けて方向付けられる。サブアセンブリ1110を透過した光は第2のポートから第2の光ファイバ1151を介して第2のミラー1125によって方向付けられる。光検出器1180はサブアセンブリ1110を透過した光を検出するように配置される。検出された光に応答して、光検出器1180はAlN基板の厚さを示す信号1190を生成する。
【0031】
いくつかの実施において、サブアセンブリのエピタキシャル層はLEDなどの発光素子を形成し得る。これらの実施において、発光素子はAlN基板の厚さを示す信号を生成する際に使用される光のための光源であってよい。図12は、AlN基板の厚さを測定するために使用される光1270を生成するためにサブアセンブリ1210のエピタキシャル層1212を使用する装置1200を示す。装置1200は、図10に示した外部光源と光ファイバが図12に示した実施では使用されていないことを除いて、いくつかの点で図10の装置と同様である。サブアセンブリ1210はエッチング液チャンバ1220内に配置されるとともにAlN基板1211上にエピタキシャル成長させる層1212を含む。エピタキシャル層1212は発光素子を形成する。装置1200は、発光素子1212と接触する電気コンタクト1232、1233と、これらの電気コンタクト1232、1233を電源1240に接続するリード1234、1235と、を含む。発光素子1212がリード1234、1235と電気コンタクト1232、1233を介して電源1240によって通電されると、発光素子1212は、基板が光1270を透過するために十分に薄膜化された時にAlN基板を透過する光1270を生成する。AlN基板1211がエッチングされるにつれて、この基板1211は増量する光1270を透過し、この光量は光検出器1280によって検出される。光検出器1280はAlN基板の厚さを示す信号1290を生成する。
【0032】
図13は、たとえば、AlN基板の厚さを示す光検出器によって生成される、理想的な信号の一例を示す。最初にAlN基板はこのAlN基板に向けて透過される光を実質的に光学的に吸収している。エッチング処理が最初に開始されると、AlN基板に方向付けられた光の多くが基板によって吸収されてサブアセンブリから抜け出さない。この厚さ信号は、AlN基板の厚さがAlN層を光が透過する位に薄膜化されるまで、公称値のままである。窒化アルミニウム基板が光を透過する位に薄膜化されると、厚さ信号はAlNが基板からエッチングされればされるほど、一層増え始める。信号の変化はAlN基板の厚さがかなりの光量を透過する値に達した時、極めて速くなる。
【0033】
場合により、計測ユニットにより生成された信号はエッチング処理を調整するために使用することができる。たとえば、コントロールユニットは急速な変化が検出されるポイントまで信号を監視し得る。その時点で、コントロールユニットはエッチング速度を変更させるように、たとえば、エッチング処理を遅延させたり停止させたりするように、動作し得る。計測ユニットにより生成された信号はエッチング処理を調整するために他の情報と組み合わせて使用され得る。たとえば、計測ユニットによって生成された信号に加えて、コントロールユニットは、エッチング処理期間、エッチング処理期間にわたるチャンバ内のエッチング液の濃度、および/またはエッチング処理期間にわたるエッチング液の温度などの要因を考慮に入れる。コントロールユニットは感熱ユニット、たとえば、ヒータやクーラの動作を調整し、および/またはエッチング処理の速度を変更するためにエッチング液の濃度を調整することができる。
【0034】
様々なタイプの発光素子は本明細書中に記載されているバルクAlN基板を除去するための処理を用いて形成してよい。バルクAlN基板の除去や薄膜化は約200nm〜約365nmまたは約250nm〜約320nmの波長範囲の光を放つ紫外線発光ダイオード(UVLED)と紫外線(UV)レーザダイオードに特に有用である。これらの発光素子の形成におけるバルクAlN基板の使用は素子構造の低欠陥エピタキシャル層の成長を可能にするが、AlN基板は素子の基板側に向けた活性領域から放たれた光を実質的に吸収する。したがって、基板の除去は素子の基板側(裏面)から増加した発光を可能にする。いくつかの素子において、基板から活性層の反対側にある発光素子の上層(すなわち、素子の正面側にある層)は素子によって生成された光の波長で光学的に吸収している状態であり得る。したがって、これは、AlN基板の除去によって実現可能となる素子によって生成された光が基板側を通過して放たれる場合に有用である。
【0035】
図14は、バルクAlN基板1410上に初期に成長させたUVLED1400の実施形態を示す図である。エピタキシャル層の成長は、例えば、ハイドライド気相成長法(HVPE)および/またはこれらの技術の任意の組み合わせにより、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、達成される。次に、バルクAlN基板1410は、矢印1411で示されるように、除去されるかまたは薄膜化される。場合により、AlN基板1410は除去される。場合により、AlN基板1410は、たとえば、機械的な技術を用いて可能とされる厚さよりも薄く、約50μm以下の厚さまで薄膜化される。図14に示したUVLEDヘテロ構造1400は有機金属気相成長法により成長させて以下を含む:
n側のAlxGa1−xN遷移領域1420と、
nドープされたAl0.74Ga0.26Nのnコンタクト層1430と、
n側のAl0.74Ga0.26Nの分離した閉じ込めヘテロ構造(SCH)1440と、
例えば、中心周波数λ=250nmで発光するように設計された、多重量子井戸(MQW)発光層1450と、
電子遮断層1460と、
p側AlGaNのSCH1470と、p型ドープAlGaN遷移領域1480と、
pドープされたGaNコンタクト層1490。
【0036】
n側のAlxGa1−xNの遷移領域1420はAlN基板1410上に形成されたエピタキシャル成長の初期表面1405を含む。いくつかの構成において、n側遷移領域1420は、約0.90に等しいxから約0.80に等しいxまでの範囲の平均Al組成を有する一連の短周期超格子である。いくつかの構成において、遷移領域1420は、xが約100%から約74%までの範囲の線形グレード合金であってよい。nコンタクト層1430はnコンタクト1435のためのコンタクト層であり、たとえば、約1.9μm厚さであってよい。量子井戸(MQW)発光層1450は3対の6nm厚さのAl0.68Ga0.32Nバリアと2nm厚さのAl0.65Ga0.35Nウェルを含むことができる。電子遮断層(EBL)1460は約83%のアルミニウムと約20nmの厚さであってよい。p−SCH1470は約0.3から約0.74までの範囲のアルミニウム組成xを有することができる。p遷移層1480は超格子であるかまたは約0.3から約0.74までの範囲xを有する合金であってよい。pコンタクト層1490はGaNを含みかつp型金属コンタクト1495のためのコンタクト層である。記載した構造は一例にすぎない。層数、層の組成、実際のヘテロ構造の設計、および/または成長手順は大きく異なる。具体的には、これらの層はAlGaNに代えてInGaNまたはInAlGaNを形成するためにインジウムを含むことができる。
【0037】
LEDをバルクAlN基板上に最初に成長させて次にこの基板を除去するかまたは薄膜化する。この処理は、たとえば、約108cm−3または107cm−3などの約1010cm−3〜約103cm−3の範囲において相対的に低くなるようにAlGaN遷移層のエピタキシャル成長の初期表面において欠陥密度を生成する。このように、素子はAlN基板に整合する実質的な格子によってもたらされる高品質のエピタキシャル成長を保持するが、この素子の基板側を通過する実質的な光透過を可能とすることもできる。
【0038】
たとえば、バルクAlN基板上にエピタキシャル成長させる約70%〜80%未満のAlモル分率を有するAlGaNのn遷移層は基板にぴったり格子整合すると思われる。このシナリオでは、AlGaNのn遷移層は低欠陥密度を有するバルク結晶AlNの格子定数にぴったり整合するように最初は不整合な状態である。AlN基板が除去されると、n遷移層の格子は緩むが、低欠陥密度は保持される。
【0039】
図15は、図14のLED1400にいくつかの点で類似しているLEDを示す。図15において参照符号で識別される要素は、図14におけるこれらの片われに類似している。LED1500は、このLED1500がエッチング前にAlN基板1410とAlGaN遷移層1420との間で成長させることが可能なエッチング低減層1510(エッチング停止層ともいう)を含む点で、図14のLED1400とは異なる。この例において、エッチング低減層1510は初期のエピタキシャル表面1505を含む。エッチング低減層1510は、AlN基板をエッチングするために使用されるエッチング液に不浸透性であるかまたはエッチング液中のエッチング低減層のエッチング速度はAlN1410のエッチング速度より低速である。エッチング低減層1510は、相対的に薄層のGaN層であるかまたは約70%〜約80%の範囲のアルミニウム含有量(Alモル分率)を有するAlGaN層であるかおよび/または、たとえば、エッチング低減能力を付与する他の適切な材料を含み得る。
【0040】
約50μm未満の厚さを有する基板残部を残すための完全な除去または化学的なエッチングのいずれかによる基板の除去によってこの後の処理のために素子の裏面へのアクセスが可能となる。基板が除去された後は素子の裏面にある量の表面粗さやテクスチャリングが存在している。場合により、テクスチャリングは、この基板除去処理によって素子の裏面へ付与される。この基板除去処理は、この基板除去処理中にこの素子の裏面のテクスチャリングを付与するように構成可能である。化学エッチングから得られた表面粗さはエッチング槽温度、酸濃度、エッチング速度、および/またはウェハ裏面磨きなどの処理パラメータに依存する。適切な処理パラメータは所望される表面粗さ特性を生成するために選択することができる。いくつかのシナリオにおいて、素子の裏面は、たとえば、イオンビームまたは化学処理によって、基板除去後にテクスチャリングすることができる。テクスチャリングは光抽出を向上させることができる。いくつかのシナリオにおいて、裏面のテクスチャリングを行わずに、実質的な発光量を全内部反射によってヘテロ構造に閉じ込めることができる。裏面のテクスチャリングは放たれた光を散乱させ、全内部反射を妨げ、かつ光抽出効率を向上させる。
【0041】
表面テクスチャリングは様々な湿式または乾式の処理技術によってパターン化することができる。たとえば、表面は水素化カリウム(KOH)溶液に浸漬することによりテクスチャリングすることができる。プラズマ処理技術は粗面処理するために使用することができる。たとえば、LED1400、1500の初期のエピタキシャル表面1405、1505はテクスチャリングされた表面であってよい。
【0042】
裏面のテクスチャリングは、放たれた光がより短い波長でTM方向(平面に垂直な方向)へますます偏光した状態になるので、短波長のUVLEDにおいて特に重要である。これによって、光の大部分は裏面へ向けてよりもむしろ、素子の端部へ向けて伝搬しながら発光される。基板が除去されて、特性は裏面へ向けてかつ裏面を通過して放たれた光を再方向付けするようにパターン化することができる。
【0043】
基板の除去によって垂直方向の電気的注入LEDアーキテクチャも可能になる。図16はこのような構造1600を示す。このLEDは初期エピタキシャル表面1631を含むn型のヘテロ構造1630を含む。n型のヘテロ構造の初期のエピタキシャル表面から開始して発光層1620とp型ヘテロ構造1610を連続してエピタキシャル成長させながら、LED1600をバルク結晶AlN基板(図16に図示せず)上に成長させた。エピタキシャル層1610〜1630を形成した後、バルクAlN基板が除去される。
【0044】
垂直方向注入LED1600のpコンタクト1605はヒートシンクチップ1601のパッド1602へ半田付け1603される。電極1640は1つ以上のリード1641とnコンタクト1642を介してヒートシンクチップ1601に電気的に結合される。素子の動作中、電流は、pコンタクト1605、p側(p型ヘテロ構造1610)、発光層1620、およびn側(n型ヘテロ構造1630)を介して、外部電源(図示せず)から注入されるとともに素子1600の裏面に形成された電極1640にて集合される。電気的絶縁性のAlN基板を除去することによって裏面コンタクト1640を形成するためのN型ヘテロ構造層1630へのアクセスが可能となる。
【0045】
図16に示した垂直方向注入構造1600は、n型ヘテロ構造1630を形成する材料、たとえば、nドープされたAlGaNが大きく抵抗性を示す場合、特に有利になり得る。この状況において、AlN基板を除去しない場合、電流は、素子1600のpコンタクト1605と同じ側で、発光領域1620に並んだ領域において、集合される(たとえば、図14と図15のLED1400、1500、1600の構造を参照されたい)。より高い光出力パワーを得るために発光層1620の面積は相対的に大きくなるように作られる。発光層の中心に注入される電流は、素子の周囲のnコンタクトに達する前に抵抗性のあるnドープされた層内でより長い横方向の距離を移動する必要があるとおもわれる。この横方向の距離に沿った電流経路は大きな電圧降下を生成しかつ不均一な電流注入を生じさせることができる。AlN基板の除去はコンタクトを素子の裏面に形成することを可能にしこれによりpコンタクト1602と電流収集電極1640との間により直接的な電流経路とより低い電圧降下をもたらす。
【0046】
レーザダイオード(LD)もまた、AlN基板の除去や薄膜化を有利とすることができる。図17は関連する光学モードプロファイル(破線で示す)とともに典型的なレーザーダイオード設計(実線で示す)のエネルギバリア図sを示す。モードの中心周波数は約250nmの波長に対応する。この設計において、光学モードと量子井戸1730の間のオーバーラップは、Γ=8.26%で表される。LDは、nコンタクト1710、n‐SCH1720、多重量子井戸1730、p‐SCH1740、およびpコンタクト1760を含む。
【0047】
AlN基板上に作られた一般的なUVレーザダイオードにおいて、何らかの電界がAlN基板に浸透している場合、このAlN基板がレーザ処理波長において高く光吸収するので、実質的なモーダル損失が生じる。光吸収基板は導波管材料の損失を助長しこれによりレーザ処理を達成するために必要とされる利得を増加させる。基板側のクラッド層は活性領域内に光学モードをしっかりと閉じ込めるために十分に厚くする必要がある。しかしながら、厚膜のnクラッド層は素子の抵抗性を助長する。AlN基板を除去または薄膜化することはモーダル損失を低減し設計上のフレキシビリティを高める。AlN基板の除去/薄膜化はまた、LEDのケースにおいて説明した利益に類似した利益を提供する垂直方向の注入LD構造を可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態において、基板の除去/薄膜化は、裏面全体を横切ってというよりむしろ裏面のいくつかの部分に於いてのみ達成される。基板は化学エッチング液から保護することができ選択領域における開口はこれらの領域のみをエッチングするためだけに形成することができる。たとえば、開口は発光層の真下の領域においてのみ形成でき、これによりバルク基板の部分はエッチング処理後に残留しこれ以降の処理のために使用可能である。
【0049】
いくつかの実施において、本明細書において「テンプレート/基板」と総称されるエピタキシャル成長させたAlNまたはAlGaNテンプレートおよび/または基板は、スタンドアロン型コンポーネントとして製造することができる。これらのテンプレート/基板は、たとえば、ピースパーツとして売られ、その後、LEDやレーザーダイオードなどのオプトエレクトロニクスデバイスとヘテロ接合トランジスタや増幅器などの電子素子とを含む数多くの種類の素子を形成するために使用することができる。エピタキシャルなテンプレートは、バルク結晶AlN基板上にエピタキシャルなAlNまたはAlGaNを成長させ次にこのAlN基板を除去または薄膜化することによって形成することができる。この技術は、AlN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNなどの窒化物系材料の高品質で光学的に透明なエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を生成することができ、これ以降の処理ステップにおけるエピタキシャル成長のためのベースとして使用することができる。エピタキシャルなテンプレート/基板は、相対的に高い成長率、たとえば、時間あたり約1μm以上で成長させて約30μm〜約400μmの層を生成することができる。エピタキシャル成長させたテンプレート/基板は、有機金属気相成長法(MOCVD)により、ハイドライド気相成長法(HVPE)により、および/または、これらの技術の任意の組み合わせにより、形成される。高品質で光学的に透明なテンプレート/基板は、前述した理由からUVオプトエレクトロニクスデバイスに有用であり得る。最も一般的な配向はc平面のAlNであるが、m平面、a平面などの他の結晶配向や半極性配向も、エピタキシャル成長の開始前にAlNバルク基板を所望の配向において切断することによって得ることができる。
【0050】
図18および図19は、スタンドアロン型のエピタキシャル成長させたテンプレート/基板を形成する処理(図19)と、これにより得られる構造(図18)と、を示す。たとえば、エピタキシャルなAlN、AlGaN、InN、InGaN、および/またはInAlGaNを含むエピタキシャル層をバルク結晶AlN基板上に成長させる(1910)。得られた構造1810を図18に示す。バルクAlN基板は、本明細書において前述した処理によって除去または薄膜化1920されて、スタンドアロン型のエピタキシャルなテンプレート/基板1820を残す。
【0051】
いくつかの実施において、構造、たとえば、エピタキシャルなテンプレート/基板、オプトエレクトロニクスデバイス、または他の構造またはヘテロ構造は、AlN、シリコン、サファイア、またはSiC(炭化ケイ素)などの様々な基板上に成長させた中間層上に成長させることができる。これらは中間層をエッチングすることによって基板から分離させてこれにより基板から構造を分離させることができる。図21は、中間層をエッチングすることによりその基板からスタンドアロン型のエピタキシャル成長させたヘテロ構造を形成する処理を示す。図20は、この構造の初期と最後の状態を示す。中間層2020は基板2010上にエピタキシャル成長させる(2110)。構造2030を界面層2020に成長させる(2120)。界面層2020は横方向にエッチングされ(2130)、基板2010から構造2030を分離させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子であって、
バルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させた第1のヘテロ構造であって、前記第1のヘテロ構造は第1の表面と第2の表面とを有しており、前記第1の表面は前記第1のヘテロ構造のエピタキシャル成長の初期表面である、第1のヘテロ構造と、
前記第1のヘテロ構造の第2の表面の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、
前記発光層の真上にエピタキシャル成長させた第2のヘテロ構造であって、前記バルク結晶AlN基板はエピタキシャル成長の前記初期表面の大部分を覆って前記発光素子から実質的に除去された第2のヘテロ構造と、
を含む発光素子。
【請求項2】
エピタキシャル成長の前記初期表面における欠陥密度はエピタキシャル成長の前記初期表面の約100nm以内で108cm−3未満である、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記第1のヘテロ構造は約80%未満のアルミニウムモル分率を有するAlGaNを含む、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記第1のヘテロ構造、前記第2のヘテロ構造、および前記発光層は、AlGaN、InGaN、InN、GaN、およびInAlGaNの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の素子。
【請求項5】
前記発光素子は約200nm〜約365nmの波長範囲の光を放つように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の素子。
【請求項6】
前記第1のヘテロ構造は次に除去されるバルクAlN基板上に成長させたAlGaN遷移領域を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記発光素子から放たれた光は前記第1のヘテロ構造または第2のヘテロ構造を介して移動する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
光は前記ウェハ面に平行な方向に放たれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項9】
素子であって、
バルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させた第1のヘテロ構造と、
前記第1のヘテロ構造の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、
前記発光層の真上にエピタキシャル成長させた第2のヘテロ構造であって、前記バルク結晶AlN基板は約50μm未満の化学的にエッチングされた厚さを有している、第2のヘテロ構造と、
を含む素子。
【請求項10】
物体形成方法であって、
格子不整合エピタキシャル層をバルクAlN基板上に成長させる工程であって、前記格子不整合エピタキシャル層は初期のエピタキシャル成長の表面近傍で約108cm−3未満の欠陥密度を有している、工程と、
前記バルクAlN基板を実質的に除去し前記エピタキシャル層の前記格子不整合を緩和する一方、エピタキシャル成長の前記初期表面の約100nm以内の前記欠陥密度を実質的に保つ工程と、
を含む物体形成方法。
【請求項1】
発光素子であって、
バルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させた第1のヘテロ構造であって、前記第1のヘテロ構造は第1の表面と第2の表面とを有しており、前記第1の表面は前記第1のヘテロ構造のエピタキシャル成長の初期表面である、第1のヘテロ構造と、
前記第1のヘテロ構造の第2の表面の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、
前記発光層の真上にエピタキシャル成長させた第2のヘテロ構造であって、前記バルク結晶AlN基板はエピタキシャル成長の前記初期表面の大部分を覆って前記発光素子から実質的に除去された第2のヘテロ構造と、
を含む発光素子。
【請求項2】
エピタキシャル成長の前記初期表面における欠陥密度はエピタキシャル成長の前記初期表面の約100nm以内で108cm−3未満である、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記第1のヘテロ構造は約80%未満のアルミニウムモル分率を有するAlGaNを含む、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記第1のヘテロ構造、前記第2のヘテロ構造、および前記発光層は、AlGaN、InGaN、InN、GaN、およびInAlGaNの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の素子。
【請求項5】
前記発光素子は約200nm〜約365nmの波長範囲の光を放つように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の素子。
【請求項6】
前記第1のヘテロ構造は次に除去されるバルクAlN基板上に成長させたAlGaN遷移領域を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記発光素子から放たれた光は前記第1のヘテロ構造または第2のヘテロ構造を介して移動する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
光は前記ウェハ面に平行な方向に放たれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項9】
素子であって、
バルク結晶AlN基板上にエピタキシャル成長させた第1のヘテロ構造と、
前記第1のヘテロ構造の真上にエピタキシャル成長させた発光層と、
前記発光層の真上にエピタキシャル成長させた第2のヘテロ構造であって、前記バルク結晶AlN基板は約50μm未満の化学的にエッチングされた厚さを有している、第2のヘテロ構造と、
を含む素子。
【請求項10】
物体形成方法であって、
格子不整合エピタキシャル層をバルクAlN基板上に成長させる工程であって、前記格子不整合エピタキシャル層は初期のエピタキシャル成長の表面近傍で約108cm−3未満の欠陥密度を有している、工程と、
前記バルクAlN基板を実質的に除去し前記エピタキシャル層の前記格子不整合を緩和する一方、エピタキシャル成長の前記初期表面の約100nm以内の前記欠陥密度を実質的に保つ工程と、
を含む物体形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−46062(P2013−46062A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170932(P2012−170932)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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