説明

管理システム、管理方法及び電子装置の製造方法

【課題】製造歩留まりの低下を抑制し、プラズマ処理装置の稼働率の向上が可能な管理システムを提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置の処理室50でプラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器54の調節パラメータの時系列データを収集する収集ユニット62と、プラズマ処理装置により参照基板を処理して収集した調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成する基準作成部30と、プラズマ処理装置による対象基板の処理において、調節パラメータを参照時系列データの初期値に設定する初期設定部32と、高周波の反射波を最小にするように調節された調節パラメータの対象時系列データを記録する記録部34と、対象時系列データを管理基準データと比較してプラズマ処理装置の異常を判定する判定部36とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置を管理する管理システム、管理方法及び電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置(LCD)等の電子装置の製造工程において、プラズマを用いた処理が、表面改質、化学気相成長(CVD)、イオン注入等に用いられている。プラズマ処理においては、高周波電源から高周波供給電極を介して印加された高周波により、真空排気されたプラズマ処理装置の処理室内に導入されたガスを放電させてプラズマが生成される。
【0003】
プラズマ状態は、ガスの種類、処理室内の圧力、処理室の内壁に堆積する反応性生物等によってプラズマ状態は変化する。また、プラズマ処理中にも、プラズマ状態は変化する。プラズマ状態の変化に伴い、プラズマ放電のインピーダンスが変化するため、印加した高周波の反射波が増大しプラズマ放電の実効電力が減少する。プラズマ処理を効率的に行うために、通常は、インピーダンス整合器を設けて、印加した高周波の出力に対し反射波が最小となるように自動的にプラズマ放電の調整が行われている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
しかし、表面改質、CVD、イオン注入等のプラズマ処理において、半導体装置の性能に対する要求から決められている表面改質層の窒素濃度、CVD膜厚、イオン注入層の抵抗率等の品質管理特性が管理基準以内に制御されているかを簡便に調査する方法は提供されていない。現状では、例えば25枚に1枚程度の割合で、プラズマ処理された測定用半導体基板を用いて、品質管理特性が管理基準以内に制御されているかを確認している。
【0005】
特に、枚葉処理装置では、プラズマ処理は半導体基板毎に行われるため、品質管理特性が管理基準から外れていてもすぐに発見することはできない。半導体装置の完成後の測定により、管理基準から外れていることを発見することになり、大幅な時間と多数の半導体基板の損失が発生する。その結果、製造歩留まりが低下する。
【0006】
また、プラズマ処理の品質管理特性が管理基準から外れた場合、プラズマ処理装置のメンテナンスが実施される。プラズマ処理装置の管理という観点からは、プラズマ処理結果が管理基準をはずれてから、メンテナンスをする管理方法では、計画的なメンテナンスができない。そのため、プラズマ処理装置の稼働率が低下する。
【特許文献1】特許第3107757号公報
【特許文献2】特開2000−173982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造歩留まりの低下を抑制し、プラズマ処理装置の稼働率の向上が可能な管理システム、管理方法及び電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、(イ)プラズマ処理装置の処理室でプラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの時系列データを収集する収集ユニットと、(ロ)プラズマ処理装置により参照基板を処理して収集した調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成する基準作成部と、(ハ)プラズマ処理装置による対象基板の処理において、調節パラメータを参照時系列データの初期値に設定する初期設定部と、(ニ)高周波の反射波を最小にするように調節された調節パラメータの対象時系列データを記録する記録部と、(ホ)対象時系列データを管理基準データと比較してプラズマ処理装置の異常を判定する判定部とを備える管理システムが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、(イ)プラズマ処理装置により参照基板をプラズマ処理して、プラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成し、(ロ)調節パラメータを参照時系列データの初期値に設定して、プラズマ処理装置により対象基板のプラズマ処理を開始し、(ハ)高周波の反射波を最小にするように調節された調節パラメータの対象時系列データを記録し、(ニ)対象時系列データを管理基準データと比較してプラズマ処理装置の異常を判定することを含む管理方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、(イ)プラズマ処理装置により参照基板をプラズマ処理して、プラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成し、(ロ)調節パラメータを参照時系列データの初期値に設定して、プラズマ処理装置を用いて対象基板のプラズマ処理を開始し、(ハ)高周波の反射波を最小にするように調節された調節パラメータの対象時系列データを記録し、(ニ)対象時系列データを管理基準データと比較してプラズマ処理装置の異常を判定し、(ホ)異常と判定された場合、プラズマ処理装置のメンテナンスを実施して、新たな基板をプラズマ処理することを含む電子装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造歩留まりの低下を抑制し、プラズマ処理装置の稼働率の向上が可能な管理システム、管理方法及び電子装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの構成等が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の係る管理システムは、図1に示すように、プラズマ処理装置に接続された収集ユニット62、及び管理ユニット20等を備える。プラズマ処理装置は、処理室50、高周波電源52、インピーダンス整合器54、ガス供給系66、真空ポンプ70等を備える。
【0014】
接地された高周波電源52が、伝送路55aを介してインピーダンス整合器54に接続される。第1可動部60a及び第2可動部60bを有するインピーダンス整合器54が、伝送路55bを介して、処理室50内の高周波供給電極56に接続される。基板10を載置する基板ステージ58は、高周波供給電極56と対向して配置される。基板ステージ58の内部には、加熱源64が設けられる。基板ステージ58は、接地される。
【0015】
ガス供給系66が、ガス供給配管68を介して処理室50に接続される。真空ポンプ70が、排気配管72を介して処理室50に接続される。また、搬送ロボット78を有する搬送室76が、処理室50に接続される。搬入室74が、搬送室に接続される。
【0016】
管理ユニット20は、インピーダンス整合器54及び収集ユニット62に接続される。管理ユニット20には、入力装置22、出力装置24、外部メモリ26等が接続される。管理ユニット20は、基準作成部30、初期設定部32、記録部34、判定部36、内部メモリ38等を含む。
【0017】
プラズマ処理装置の高周波電源52から、伝送路55a、インピーダンス整合器54、伝送路55bを通して処理室50の高周波供給電極56に高周波が伝送されプラズマが生成される。インピーダンス整合器54では、高周波の反射波を最小にするように第1及び第2可動部60a、60bの位置が自動的に調節される。第1及び第2可動部60a、60bの位置が、インピーダンス整合の調節パラメータとして用いられる。
【0018】
例えば、高周波電源52として、発振周波数が2.45GHzのマイクロ波発振器等が用いられる。伝送路55a、55bとして、導波管等が用いられる。また、インピーダンス整合器54として、スタブチューナ等が用いられる。インピーダンス整合器54の第1及び第2可動部60a、60bとして、2軸の整合用スタブが供される。
【0019】
なお、高周波電源52の発振周波数は限定されず、例えば、10MHz〜GHz帯の発振周波数を用いてもよい。伝送路55a、55bとして、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路等の高周波伝送路を用いてもよい。また、インピーダンス整合器54はスタブチューナに限定されず、2本の整合用プランジャを有するEHチューナを用いてもよい。また、バリアブルコンデンサをインピーダンス整合器として用いてもよい。この場合、調節パラメータとして、プランジャあるいはコンデンサ電極の位置が用いられる。スタブ、プランジャ、あるいはコンデンサ電極が電圧駆動の場合は、駆動電圧を調節パラメータとしてもよい。更に、インピーダンス整合器54の可動部は、第1及び第2可動部60a、60bに限定されず、単一の可動部、あるいは3以上の複数の可動部であってもよい。
【0020】
真空ポンプ70は、処理室50を排気配管72を通して真空排気する。ガス供給系66は、真空排気された処理室50に、プラズマ処理に用いられる各種のガスをガス供給配管68を通して供給する。プラズマ処理として、表面改質、CVD、スパッタ、エッチング、イオン注入等が含まれる。例えば、表面改質処理の場合、窒素(N)、酸素(O)、酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、アルゴン(Ar)等のガスが用いられる。また、CVD等の場合は、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)、有機シラン、O、N、NO、アンモニア(NH)等のガスが用いられる。エッチングの場合は、ハロゲン系ガス、水素(H)、ヘリウム(He)、O、N、Ar等のガス源が含まれる。イオン注入装置のイオンソースの場合は、ジボラン(B)、アルシン(AsH)、フォスフィン(PH)等のガスが用いられる。
【0021】
収集ユニット62は、インピーダンス整合器54の第1及び第2可動部60a、60bの調節パラメータである位置等の時系列データを収集する。例えば、真空排気された処理室50に供給された処理ガスに高周波が印加されプラズマ放電が励起される。プラズマ放電中に、第1及び第2可動部60a、60bの位置がそれぞれ、高周波の反射波を最小にするように自動的に調節される。第1及び第2可動部60a、60bの位置は、所定のサンプリング時間でモニタされる。第1及び第2可動部60a、60bの位置のモニタ値が収集ユニット62により時系列データとして収集される。
【0022】
管理ユニット20の基準作成部30は、プラズマ処理装置を用いて参照基板を処理して収集した調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成する。初期設定部32は、プラズマ処理装置による対象基板の処理において、調節パラメータを初期値に設定する。記録部34は、高周波の反射波を最小にするように調節された調節パラメータの対象時系列データを記録する。判定部36は、対象時系列データを管理基準データと比較してプラズマ処理装置の異常を判定する。
【0023】
管理ユニット20、収集ユニット62は、通常のコンピュータシステムの中央処理装置(CPU)の一部として構成すればよい。基準作成部30、初期設定部32、記録部34、及び判定部36は、それぞれ専用のハードウェアで構成しても良く、通常のコンピュータシステムのCPUを用いて、ソフトウェアで実質的に等価な機能を有していても構わない。
外部メモリ26は、管理基準データ、調節パラメータの初期値、調節パラメータの時系列データ等を格納する。外部メモリ26は、半導体ROM、半導体RAM等の半導体メモリ装置、磁気ディスク装置、磁気ドラム装置、磁気テープ装置などの外部記憶装置で構成してもよく、CPUの内部の主記憶装置で構成しても構わない。
【0024】
また、入力装置22は、キーボード、マウス等の機器を指す。入力装置22から入力操作が行われると対応するキー情報が管理ユニット20に伝達される。出力装置24は、モニタなどの画面を指し、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)パネル、エレクトロルミネセンス(EL)パネル等が使用可能である。出力装置24は、管理ユニット20により記録されるデータや判定結果等を表示する。
【0025】
本発明の第1の実施の形態では、酸化シリコン(SiO)膜等の絶縁膜の表面改質処理用のプラズマ処理装置を例として説明する。例えば、図2に示すように、熱酸化により表面上に厚さが約2nmのSiO膜12が形成されたシリコン(Si)等の基板10が、搬入室74に搬入される。基板10は、搬送ロボット78により搬入室74から搬送室76を通って処理室50の基板ステージ58上に装着される。
【0026】
処理室50を所定の圧力まで真空ポンプ70により排気する。処理室50内に、例えばArとNの混合ガスを導入する。処理室50内の圧力を約70mPaに設定し、圧力が安定するまで待つ。基板10は、基板ステージ58に内蔵した加熱源64により約400℃に加熱される。
【0027】
プラズマを励起する前に、インピーダンス整合器54の第1及び第2可動部60a、60bの調節パラメータである位置を基準となる初期位置に移動させる。初期位置は、任意の位置でよい。プラズマを最も励起しやすい位置の組み合わせを選ぶ方が、安定してプラズマを励起できる。
【0028】
第1及び第2可動部60a、60bを初期位置に移動させたときから、例えば約500m秒毎に、第1及び第2可動部60a、60bの位置の収集を開始する。その後、周波数が2.45GHz、高周波電力が約700Wのマイクロ波を処理室50内に導入してプラズマを励起する。第1及び第2可動部60a、60bの位置は、常にマイクロ波の反射波が最小になるように調整される。
【0029】
例えば、約30秒間プラズマ励起し続けた後に、マイクロ波の供給を止めてプラズマをオフする。このようにして、図3に示すように、SiO膜12の表面が改質されて窒化酸化シリコン(SiON)膜14が形成される。形成されたSiON膜14に対して、表面改質処理の成否を確認するため、エリプソメトリ法、X線光電子分光法(XPS)等により、膜厚、屈折率、窒素濃度等の品質管理特性が測定される。品質管理特性が管理基準内に制御されていれば、プラズマ処理が成功と判定される。品質管理特性が管理基準から外れていれば、プラズマ処理が失敗と判定される。
【0030】
基板10として参照基板を用いて、収集ユニット62により収集された第1及び第2可動部60a、60bの位置をプラズマ処理時間に対する時系列データとして、管理ユニット20の記録部34が記録する。その結果、図4及び図5に示すように、プラズマ処理時間に対する第1及び第2可動部60a、60bの位置の曲線が得られる。第1及び第2可動部60a、60bの位置とプラズマ処理時間の曲線は、第1及び第2可動部60a、60bの初期位置とプラズマ処理条件が同一で、且つプラズマ処理結果が正常である場合は、再現性よく得られる。
【0031】
同じプラズマ処理条件で、プラズマ処理結果が成功であるにもかかわらず、第1及び第2可動部60a、60bの位置の時系列データに再現性がない場合は、基準となる初期位置を調整する。このようにして、第1及び第2可動部60a、60bの位置の時系列データに再現性が取れるようになる。
【0032】
基準作成部30は、プラズマ処理結果が正常な場合について、第1及び第2可動部60a、60bの位置とプラズマ処理時間の関係をプラズマ処理条件毎に基準曲線として作成する。図6及び図7に示すように、基準曲線に対して管理範囲を設けて管理基準データを作成する。管理範囲として、例えば、プラズマ処理時間毎の第1及び第2可動部60a、60bの位置に対し±5%の上限及び下限が設けられる。管理基準データは、外部メモリ26に格納される。
【0033】
次に、基板10として対象基板を用いて、プラズマ処理装置により上述の表面改質処理が実施される。基準曲線における第1及び第2可動部60a、60bの位置の初期位置を、初期設定部32がインピーダンス整合器54に伝送する。収集ユニット62が第1及び第2可動部60a、60bの位置を収集する。収集された第1及び第2可動部60a、60bの位置を、プラズマ処理時間に対する対象時系列データとして記録部34が記録する。次の表面改質処理を実施する前に、記録された対象時系列データのモニタ曲線を作成し、判定部36が管理基準データと比較する。
【0034】
例えば、モニタ曲線が管理基準データの上限及び下限の範囲内にある場合、判定部36によりプラズマ処理が成功したと判定される。判定結果を出力装置24に表示して、プラズマ処理装置のコントローラ(図示省略)あるいは操作者に知らせる。引き続き、プラズマ処理装置により、次の基板が同様に処理される。
【0035】
また、図8及び図9に示すように、第1及び第2可動部60a、60b位置のモニタ曲線が、プラズマ処理時間t、tで管理基準データの上限及び下限から外れた場合、判定部36によりプラズマ処理が失敗したと判定される。その結果、プラズマ処理装置が異常であると判定され、次の基板のプラズマ処理が中止される。また、プラズマ処理装置に対して、メンテナンスが実施される。
【0036】
なお、第1及び第2可動部60a、60b位置のモニタ曲線のいずれか一方だけが、管理基準データの上限及び下限から外れた場合でも、異常と判定される。また、第1及び第2可動部60a、60b位置のモニタ曲線が一瞬でも管理基準データの上限及び下限から外れた場合でも、異常と判定される。
【0037】
本発明の第1の実施の形態に係る管理システムによれば、プラズマ処理毎にプラズマ処理が成功しているかどうか直ちに判定できる。プラズマ処理が失敗した場合は、次のプラズマ処理を中止してプラズマ処理装置のメンテナンスを実施することができる。その結果、時間及び基板の損失を低減でき、製造歩留まりの低下を抑制することができる。また、プラズマ処理装置のメンテナンス時期の早期判定が可能となる。
【0038】
本発明の第1の実施の形態に係る管理方法を、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0039】
(イ)ステップS100で、プラズマ処理装置を用いて参照基板をプラズマ処理する。収集ユニット62は、プラズマ処理中に、プラズマを生成する高周波の反射波を最小にするように調節するインピーダンス整合器の可動部の調節パラメータの参照時系列データを収集する。管理ユニット20の基準作成部30が、収集された参照時系列データに所定の管理範囲を設定して、管理基準データを作成する。
【0040】
(ロ)ステップS101で、初期設定部32は、インピーダンス整合器54に参照時系列データにおける調節パラメータの初期値を伝送する。第1及び第2可動部60a、60bの調節パラメータが初期値に設定される。
【0041】
(ハ)ステップS102で、プラズマ処理装置を用いて対象基板のプラズマ処理が開始される。
【0042】
(ニ)ステップS103で、収集ユニット62が、高周波の反射波を最小にするように調節する調節パラメータの対象時系列データを収集する。収集された対象時系列データを、記録部34が記録する。
【0043】
(ホ)ステップS104で、対象時系列データを管理基準データと比較して、プラズマ処理の成否を、判定部36が判定する。ステップS105で、プラズマ処理が成功していれば、プラズマ処理装置は正常と判定され、ステップS101に戻って次のプラズマ処理が実施される。
【0044】
(ヘ)ステップS105で、プラズマ処理が失敗であれば、プラズマ処理装置は異常と判定される。ステップS106で、プラズマ処理装置のメンテナンスが実施される。
【0045】
本発明の第1の実施の形態に係る管理方法では、プラズマ処理毎にプラズマ処理が成功しているかどうか直ちに判定される。プラズマ処理が失敗した場合は、次のプラズマ処理を中止してプラズマ処理装置のメンテナンスを実施することができる。その結果、時間及び基板の損失を低減でき、製造歩留まりの低下を抑制することができる。また、プラズマ処理装置のメンテナンス時期の早期判定が可能となる。
【0046】
また、プラズマ処理装置のメンテナンス後に、管理基準データを用いて、メンテナンスが成功し、プラズマ処理装置が定常状態に戻っているかどうかを確認することができる。例えば、メンテナンス終了後に、試験基板を用いて表面改質のプラズマ処理を実施して、調節パラメータの時系列データを記録する。記録した時系列データが、管理基準データの管理範囲内に入っていれば、メンテナンスが成功し、プラズマ処理装置が定常状態に戻っていると判定される。記録した時系列データが、管理基準データの管理範囲を超える場合は、メンテナンスが失敗していると判定される。このように、本発明の第1の実施の形態に係る管理方法では、簡単にメンテナンス後のプラズマ処理装置の状態を把握できるため、プラズマ処理装置の稼働率を大幅に改善できる。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る管理システムは、図11に示すように、収集ユニット62及びインピーダンス整合器54に接続された管理ユニット20a等を備える。管理ユニット20aは、基準作成部30、初期設定部32、記録部34、算出部35、判定部36、内部メモリ38等を備える。管理ユニット20aには、入力装置22、出力装置24、外部メモリ26等が接続される。
【0048】
本発明の第2の実施の形態に係る管理システムは、管理ユニット20aに算出部35を備えている点が第1の実施の形態と異なる。他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0049】
管理ユニット20aの算出部35は、プラズマ処理装置で処理された基板の枚数に対する調節パラメータの時系列データの変化率を算出する。変化率に基いて、調節パラメータの時系列データが管理基準データの上限あるいは下限を超える処理枚数を予測する。
【0050】
例えば、調節パラメータの時系列データから、プラズマ励起後20秒後の調節パラメータのモニタ値が抽出される。図12に示すように、プラズマ処理枚数が3500枚の時点で、モニタ値の近似曲線よりモニタ値の変化率が算出される。変化率を用いてモニタ値の近似曲線を外挿してモニタ値の変化を予測する。その結果、約500枚のプラズマ処理後に管理基準データの下限を超えることが予測される。約500枚の処理枚数になる前に、プラズマ処理装置のメンテナンスが必要であると判定される。
【0051】
本発明の第2の実施の形態に係る管理システムでは、調節パラメータの時系列データを処理枚数について記録して解析することにより、プラズマ処理装置のメンテナンス時期を事前に予測することができる。したがって、プラズマ処理装置の稼働率を改善することが可能となる。
【0052】
本発明の第2の実施の形態に係る管理方法を、図13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0053】
(イ)ステップS200で、プラズマ処理装置を用いて参照基板をプラズマ処理する。収集ユニット62は、プラズマ処理中に、プラズマを生成する高周波の反射波を最小にするように調節するインピーダンス整合器の可動部の調節パラメータの参照時系列データを収集する。管理ユニット20aの基準作成部30が、収集された参照時系列データに所定の管理範囲を設定して、管理基準データを作成する。
【0054】
(ロ)ステップS201で、初期設定部32は、インピーダンス整合器54に参照時系列データにおける調節パラメータの初期値を伝送する。第1及び第2可動部60a、60bの調節パラメータが初期値に設定される。
【0055】
(ハ)ステップS202で、プラズマ処理装置を用いて対象基板のプラズマ処理が開始される。
【0056】
(ニ)ステップS203で、収集ユニット62が、高周波の反射波を最小にするように調節する調節パラメータの対象時系列データを収集する。収集された対象時系列データを、記録部34が記録する。
【0057】
(ホ)ステップS204で、算出部35が、プラズマ処理装置での処理基板枚数に対する対象時系列データの変化率を算出する。
【0058】
(ヘ)ステップS205で、判定部36が、対象時系列データの変化率を用いて対象時系列データの変化を予測して、管理基準データを越える処理枚数に基いてメンテナンス時期を判定する。
【0059】
本発明の第2の実施の形態に係る管理方法では、調節パラメータの時系列データを処理枚数について記録して解析することにより、プラズマ処理装置のメンテナンス時期を事前に予測することができる。したがって、プラズマ処理装置の稼働率を改善することが可能となる。
【0060】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の第1及び第2の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0061】
本発明の第1及び第2の実施の形態においては、プラズマを用いてSiO膜中に窒素を導入する表面改質処理について説明している。しかし、プラズマ処理は表面改質処理に限定されず、例えば、スパッタ、CVD等の成膜処理、エッチング処理、アッシング処理、あるいはイオン注入装置におけるイオン生成の処理であってもよい。
【0062】
また、本発明の第1及び第2の実施の形態では、半導体装置の製造方法について例示したが、本発明は、液晶装置、磁気記録媒体、光記録媒体、薄膜磁気ヘッド、超伝導素子等の電子装置の製造方法に適用できることは、上記説明から容易に理解できるであろう。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る管理システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置で処理される基板の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理装置で処理後の基板の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータとプラズマ処理時間の関係の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータとプラズマ処理時間の関係の他の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータの管理基準の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータの管理基準の他の例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータのモニタ曲線の一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータのモニタ曲線の他の例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る管理方法の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る管理システムの一例を示す概略図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る管理方法で用いる調節パラメータと処理枚数の関係の一例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る管理方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10…基板
20、20a…管理ユニット
30…基準作成部
32…初期設定部
34…記録部
35…算出部
36…判定部
50…処理室
52…高周波電源
54…インピーダンス整合器
55a、55b…伝送路
60a…第1可動部
60b…第2可動部
62…収集ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の処理室でプラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの時系列データを収集する収集ユニットと、
前記プラズマ処理装置により参照基板を処理して収集した前記調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成する基準作成部と、
前記プラズマ処理装置による対象基板の処理において、前記調節パラメータを前記参照時系列データの初期値に設定する初期設定部と、
前記高周波の反射波を最小にするように調節された前記調節パラメータの対象時系列データを記録する記録部と、
前記対象時系列データを前記管理基準データと比較して前記プラズマ処理装置の異常を判定する判定部
とを備えることを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記プラズマ処理装置で処理された基板の枚数に対する前記対象時系列データの変化率を算出する算出部を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
プラズマ処理装置により参照基板をプラズマ処理して、プラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成し、
前記調節パラメータを前記参照時系列データの初期値に設定して、前記プラズマ処理装置により対象基板のプラズマ処理を開始し、
前記高周波の反射波を最小にするように調節された前記調節パラメータの対象時系列データを記録し、
前記対象時系列データを前記管理基準データと比較して前記プラズマ処理装置の異常を判定する
ことを含むことを特徴とする管理方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理装置で処理された基板の枚数に対する前記対象時系列データの変化率を算出し、前記管理基準データ及び前記変化率に基いて前記プラズマ処理装置のメンテナンス時期を判定することを、更に含むことを特徴とする請求項3に記載の管理方法。
【請求項5】
プラズマ処理装置により参照基板をプラズマ処理して、プラズマを生成する高周波のインピーダンス整合器の調節パラメータの参照時系列データより管理基準データを作成し、
前記調節パラメータを前記参照時系列データの初期値に設定して、前記プラズマ処理装置を用いて対象基板のプラズマ処理を開始し、
前記高周波の反射波を最小にするように調節された前記調節パラメータの対象時系列データを記録し、
前記対象時系列データを前記管理基準データと比較して前記プラズマ処理装置の異常を判定し、
前記異常と判定された場合、前記プラズマ処理装置のメンテナンスを実施して、新たな基板をプラズマ処理する
ことを含むことを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−81302(P2007−81302A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270267(P2005−270267)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】