説明

紙皺予兆監視装置及び紙皺予兆監視プログラム

【課題】高精度で紙皺予兆を検知することができる。
【解決手段】印刷記録媒体の搬送路中に配置された印刷記録媒体の搬送のタイミングを検出する少なくとも1つのタイミング検出手段102と、タイミング検出手段102によって検出された印刷記録媒体の搬送タイミングに基づいて印刷記録媒体の搬送時の紙皺発生の予兆を検出し、予兆を出力する予兆出力手段120と、を備える紙皺予兆監視装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙皺予兆監視装置及び紙皺予兆監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置における定着装置で発生する紙皺発生の検知及び紙皺発生の予兆を監視する従来技術が知られている。
【0003】
例えば、定着装置の駆動用搬送ローラと押圧用搬送ローラの中央部の支持軸を露出する間隔部の変位量を検出するセンサと、センサにより検出された信号に基づいて用紙の皺を判定する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、歪みゲージが張り付けられた作動板をヒートローラのローラ軸と接触させ、トナー像の熱定着のためにヒートローラと圧力ローラとの間を通過する用紙の厚さに応じて生ずるヒートローラのローラ間変動に伴うローラ軸の変位を歪みゲージで検出する技術が開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、不可視トナーを用いて規則的な波形の不可視画像を用紙に形成し、定着処理後にセンサによって用紙上の波形の不可視画像を読み取り、その規則性に乱れがあるか否かを判断する技術が開示されている(特許文献3)。
【0006】
また、記録媒体の累積枚数に応じて予め規定された摺動抵抗の規定値とを比較することにより紙皺等の用紙変形の発生に対する寿命を予測する技術が開示されている(特許文献4)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−24713号公報
【特許文献2】特開平9−269697号公報
【特許文献3】特開2006−21905号公報
【特許文献4】特開2008−83091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真方式の印刷用の高速機等では、装置が停止している時間を短くするために、紙皺発生を事前に予測することは重要課題である。しかしながら、製造コストを抑えつつ、紙皺の発生を予測することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、印刷記録媒体の搬送路中に配置された印刷記録媒体の搬送のタイミングを検出する少なくとも1つのタイミング検出手段と、前記タイミング検出手段によって検出された印刷記録媒体の搬送タイミングに基づいて印刷記録媒体の搬送時の紙皺発生の予兆を検出し、前記予兆を出力する予兆出力手段と、を備える紙皺予兆監視装置である。
【0010】
ここで、前記予兆出力手段は、2つ以上の前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0011】
また、前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の前後に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記予兆出力手段は、同一の前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の先端及び後端のそれぞれの搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0013】
また、前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の後に配置されていてもよい。
【0014】
また、前記予兆出力手段は、前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の搬送タイミングの差から求められたスキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0015】
また、前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の前及び後の少なくとも一方に配置されていてもよい。
【0016】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体の種類毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0017】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体に記録された画像の記録密度の範囲毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0018】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体への画像の記録モード毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0019】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体の種類毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0020】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体に記録された画像の記録密度の範囲毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0021】
また、前記予兆出力手段は、印刷記録媒体への画像の記録モード毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出してもよい。
【0022】
本発明の別の態様は、印刷記録媒体の搬送路中に配置された印刷記録媒体の搬送のタイミングを検出する少なくとも1つのタイミング検出手段によって検出された印刷記録媒体の搬送タイミング、に基づいて印刷記録媒体の搬送時の紙皺発生の予兆を検出し、前記予兆を出力する処理をコンピュータの処理部に実行させる紙皺予兆監視プログラムである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1又は14の発明によれば、高精度で紙皺予兆を検知することができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、電子写真印刷機の定着器付近で発生する紙皺予兆を高精度で検知することができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、電子写真印刷機の定着器付近で発生する紙皺予兆を高精度で検知することができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、電子写真印刷機の定着器付近で発生する紙皺予兆を高精度で検知することができる。
【0030】
請求項8及び11の発明によれば、印刷記録媒体の種類毎に高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【0031】
請求項9及び12の発明によれば、印刷記録媒体に記録された画像の記録密度の範囲毎に高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【0032】
請求項10及び13の位相の発明によれば、印刷記録媒体への画像の記録モード毎に高い確度で紙皺予兆を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態における紙皺予兆監視装置100は、図1の機能ブロック図に示すように、搬送タイミング検出手段102、搬送タイミング蓄積手段104、評価指標算出手段106、紙皺予兆判定手段108、警告出力手段110、画像記録モード取得手段112、画像記録密度取得手段114及び媒体種類情報取得手段116を含んで構成される。
【0034】
搬送タイミング蓄積手段104、評価指標算出手段106、紙皺予兆判定手段108及び警告出力手段110は紙皺の予兆を検知して警告を出力する予兆出力手段120を構成する。
【0035】
紙皺予兆監視装置100の、搬送タイミング検出手段102、搬送タイミング蓄積手段104、評価指標算出手段106、紙皺予兆判定手段108、警告出力手段110、画像記録モード取得手段112、画像記録密度取得手段114及び媒体種類情報取得手段116はコンピュータにより実現される。
【0036】
紙皺予兆監視装置100を実現するコンピュータは、図2に示すように、処理部200、記憶部202、入力部204及び出力部206を含んで構成される。
【0037】
処理部200は、一般的にはコンピュータのCPUであり、画像形成処理プログラムや紙皺予兆監視プログラムを実行して紙皺予兆監視装置100を含む画像形成装置等の各部を統合的に制御する。
【0038】
記憶部202は、紙皺予兆監視装置100で実行される紙皺予兆監視プログラムやその処理で利用される各種パラメータや各種データを格納及び保持する。記憶部202は、処理部200から適宜アクセスされる。記憶部202は、半導体メモリやハードディクス等の記憶手段を含んで構成される。
【0039】
入力部204は、紙皺予兆監視装置100で使用される各種パラメータや各種データを取得する。入力部204は、例えば、ユーザから指示や各種パラメータ又は各種データの入力を受け付けるタッチパネル等を含んで構成してもよい。また、入力部204は、搬送タイミング検出手段102において搬送路を搬送される印刷記録媒体を検知するセンサからの出力をサンプリングするインターフェース、画像記録モード取得手段112において画像記録モードに関する情報を取得するインターフェース、画像記録密度取得手段114において印刷媒体への画像形成される画像の記録密度に関する情報を取得するインターフェース及び媒体種類情報取得手段116において印刷媒体の種類に関する情報を取得するインターフェースを含んでもよい。
【0040】
出力部206は、紙皺予兆監視装置100で使用される各種パラメータや各種データを入力するためのインターフェース画面、紙皺予兆監視装置100で得られた処理の結果を表示する。出力部206は、例えば、液晶等の表示機能を備えたタッチパネル等を含んで構成してもよい。
【0041】
図3は、第1の実施の形態における紙皺予兆監視装置100を備えた画像形成装置300の構成の一例である。本実施の形態では画像形成装置300として電子写真印刷装置を例に説明する。
【0042】
図3の例における画像形成装置300は、光走査装置(ラスタ出力スキャン:ROS)を利用した画像形成装置の一例である。ここでは、画像形成部をK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)の各色に対応するように4組備えた、いわゆるタンデム構成の例を示す。
【0043】
原稿画像読取部2は、原稿カバー3、プラテン5、ライト6、ミラー7〜8、レンズ10、光電変換素子11を含んで構成される。原稿画像読取部2では、プラテン5に載せ置かれた原稿をライト6で照射しつつスキャンし、ミラー7〜8及びレンズ10を用いて原稿画像を光電変換素子11において電気信号に変換する。これにより、原稿から原稿画像が読み取られる。読み取った原稿画像は、処理部200に送信され、デジタル化されて原稿画像データとして記憶部に保存される。また、原稿画像データは、データインターフェースを用いて、ネットワークを介して外部のコンピュータ等から受信されるものとしても良い。例えば、処理部200を原稿画像データの送信元となるコンピュータと兼ねる構成とすることも好適である。受信された原稿画像データは、処理部200からアクセス可能な記憶部202に一時的に保存される。
【0044】
画像形成部1は、半導体レーザ22と、半導体レーザ22から発せられたレーザ光(レーザビーム)を感光性部材の一例である感光体ドラム15に向けて反射させるミラー19,20,21,24とを有する光走査装置14K,14Y,14M,14CをK,Y,M,Cの色毎に備えている。また、一方向に順次一定間隔をおいて並置されたK,Y,M,Cの各色の画像形成部13K,13Y,13M,13C、中間転写部を構成する中間転写ベルト25、ベルトローラ27〜31及び定着器36を備える。また、給紙トレイ38〜41から印刷記録媒体(記録用紙)34を中間転写ベルト25へ搬送するために、用紙搬送路上には、ロール部材として、ピックアップロール42、複数の搬送ロール群43〜47が設けられている。
【0045】
例えば、K系の画像形成部では、先ず光走査装置14Kは、処理部200からの黒の画像形成信号によって駆動され、黒の画像形成信号を半導体レーザ22により光信号に変換する。帯電器16Kによって帯電された感光体ドラム15K上をこの変換されたレーザ光によって走査することで、感光体ドラム15K上に原稿画像の黒成分に対応する静電潜像を形成する。この静電潜像は、黒のトナーが供給される現像器17Kによってトナー像とされる。このトナー像は、中間転写ベルト25が感光体ドラム15Kを通過する間に一次転写ロール26Kによって中間転写ベルト25上に転写される。そして転写後は、クリーナ18Kによって感光体ドラム15K上に残留するトナーが除去される。
【0046】
同様に、K以外のY,M,Cの各色の画像形成信号によって感光体ドラム15Y,15M,15C上に静電潜像が形成され、各静電潜像は各色のトナーが供給される現像器17Y,17M,17Cによってトナー像とされ、各トナー像は中間転写ベルト25が対応する感光体ドラム15Y,15M,15Cを通過する間に対応する一次転写ロール26Y,26M,26Cによって中間転写ベルト25上に順次転写される。
【0047】
K,Y,M,Cの各色のトナー像が順次多重転写された中間転写ベルト25上のトナーは、二次転写ロール33によって中間転写ベルト25上から剥離されて、搬送路を搬送されてきた印刷記録媒体(記録用紙)34上に転写される。印刷記録媒体34は定着器36に搬送され、定着器36によって印刷記録媒体34上にトナーが定着される。
【0048】
このように画像が形成された印刷記録媒体34は複写機の外部に排出される。定着器36の後流側には、用紙を機外に排出する排出路が設けられ、画像形成された印刷済み印刷記録媒体34を機外にて受け取るための排紙トレイ37が設けられる。
【0049】
また、搬送経路上には、印刷記録媒体34の搬送状況を検知するためのセンサが設けられる。一般的には、搬送経路上において印刷記録媒体34が詰まってしまうジャム状態の発生を検知するために多数のジャム検出用のセンサが設けられる。センサは、例えば、光学式のタイミングセンサとしてもよい。各センサは、処理部200によってアクセス可能な入力部204に接続される。なお、図面が複雑になることを避けるために、図3にはセンサは図示していない。
【0050】
本実施の形態では、図4に示すように、センサ50は少なくとも定着器36の前後に設置される。センサ50は、例えば、反射型の光学式センサであって、搬送経路の中央部に設置されている。これらのセンサ50からの出力は入力部204を介して処理部200によって周期的にサンプリングされ、サンプリング周期分の誤差範囲内において印刷記録媒体34の先端の通過タイミングを検出するよう構成されている。
【0051】
上記構成の紙皺予兆監視装置100を備えた画像形成装置300における紙皺予兆監視処理について以下に説明する。紙皺予兆監視処理は、記憶部202に予め記憶させておいた紙皺予兆監視プログラムを処理部200によって実行することによって行われる。紙皺予兆監視処理は、図5のフローチャートに沿って実行される。
【0052】
ステップS10では、印刷記録媒体34の搬送タイミングの検出が行われる。ここでの処理が搬送タイミング検出手段102に相当する。
【0053】
処理部200は、入力部204を介して定着装置前後に設置されたセンサ50の出力信号を周期的にサンプリングする。処理部200は、サンプリングされたセンサ50の出力信号の時間的変化から印刷記録媒体34の先端が定着装置前後に設置されたセンサ50が設置された位置を通過するタイミング(t1,t2)を取得する。
【0054】
また、ステップS10では、画像記録モード、画像記録密度、用紙種類を含む画像記録における属性データを取得する。これらの処理が画像記録モード取得手段112、画像記録密度取得手段114及び媒体種類情報取得手段116に相当する。
【0055】
画像記録モード取得手段112は、処理部200において画像形成装置300の動作する記録モードをタッチパネル等の入力部204の操作入力情報やプリントジョブ情報から取得することによって実現される。
【0056】
画像記録モードによって画像形成装置300におけるプロセス速度が変化するため、搬送経路上における印刷記録媒体34の搬送タイミングが変化する。例えば、カラー記録/白黒記録、手差し/トレイ、厚紙/薄紙等の画像記録モードによって画像記録速度が変化するよう構成された画像形成装置300ではそれぞれの画像記録モードによって印刷記録媒体34の搬送速度が異なる。また、片面記録/両面記録の記録モードに関しても、定着器36を1回通過する場合と2回通過する場合で定着器36の印刷記録媒体34の通過時間は変化する。
【0057】
画像記録密度取得手段114は、画像形成装置300において画像形成された画像データを処理部200において処理することによって実現される。画像記録密度情報は、処理部200において画像形成処理される画像データの1頁毎に算出される。画像記録密度は、印刷記録媒体34の1頁上に画像形成される各色の記録画像の総画素数を当該印刷記録媒体34の全画素数で除算したものである。画像記録密度は、一般的にはカバレッジと呼ばれているものである。また、上記両面記録モードの場合は、例えば、両面の画像記録密度の平均を当該印刷記録媒体34の画像記録密度としてもよい。また、Y,M,Cの画像を形成するトナーとKの画像を形成するトナーで印刷記録媒体34上の表面性が異なる場合は補正係数を掛けた後合算してもよい。
【0058】
媒体種類情報取得手段116は、画像形成装置300において画像形成される印刷記録媒体34の種類を処理部200において得ることによって実現される。処理部200は、入力部204を用いたユーザからの入力により印刷記録媒体34の種類、裏紙利用、サイズ等を取得する。また、サイズは画像形成装置300のトレイ情報から取得してもよい。また、プリント処理の場合には、処理対象となるプリントジョブ情報に含まれている印刷記録媒体34の種類、裏紙利用、サイズ等を取得してもよい。ただし、裏紙利用に関しては、背面画像の画像記録密度が不定となるため紙皺予兆監視には利用しない。
【0059】
画像記録モード取得手段112、画像記録密度取得手段114及び媒体種類情報取得手段116は高い精度で紙皺予兆監視するために用いられるが、必ずしも総ての情報を利用する必要はない。以下の説明では、画像記録モード、画像記録密度及び媒体種類の属性データに基づいて紙皺発生の予兆監視を行うか否かを判定するが、画像記録モード、画像記録密度及び媒体種類に依らず紙皺発生の予兆監視を行ってもよいし、画像記録モード、画像記録密度及び媒体種類の少なくとも1つを条件に紙皺発生の予兆監視を行ってもよい。
【0060】
また、さらに高精度な予兆監視をするために、テストモードを設定しておき、テストモードとして予め定めた画像記録モード及び予め定めた画像記録密度で予め定めた印刷記録媒体34に対して画像形成する状態においてタイミング測定を実施してもよい。
【0061】
ステップS12では、ステップS10で取得した画像記録モード、画像記録密度及び媒体種類の属性データが予め設定された予兆監視のための画像形成条件の条件に合致しているか否かを判定する。処理部200は、画像記録モード、画像記録密度及び媒体種類の属性データが予兆監視のための画像形成条件の条件に合致している場合には処理をステップS14に移行させ、そうでない場合にはステップS10に処理を戻し、次の画像形成のタイミングデータ及び属性データを取得する。
【0062】
画像記録密度の条件に関しては、画像記録密度が高い方が搬送経路における印刷記録媒体34の滑り量は大きくなるため、正常時と紙皺発生時との通過タイミングの差は大きくなる。すなわち、画像記録密度が高い方が紙皺発生の予測性能は高くなる。したがって、条件とする画像記録密度は、画像形成装置300での利用頻度の高い画像記録密度と紙皺発生の予測性能を考慮した画像記録密度を設定するとよい。
【0063】
また、媒体種類の条件に関しては、画像形成装置300での利用頻度の高い印刷記録媒体34の種類を設定するとよい。また、予兆監視精度を向上させるために、画像記録密度及び媒体種類は複数の条件を設定してもよい。
【0064】
また、テストモードで評価する場合のテストチャートの画像記録密度は、画像形成装置300への負荷と紙皺発生の予測性能を考慮して最大画像記録密度の50%程度の画像記録密度、例えば、30%以上70%以下の画像記録密度を設定するとよい。また、媒体種類は標準的な用紙から薄紙として分類される用紙の坪量、例えば、坪量100g/m以下の値に設定するとよい。
【0065】
ステップS14では、ステップS10で取得した2つのセンサ50間のタイミングの差分を求める。処理部200は、ステップS10において取得した印刷記録媒体34の先端が通過するタイミング(t1,t2)の差分を算出して記憶部202の記憶領域に格納する。ここでの処理が搬送タイミング蓄積手段104に相当する。
【0066】
ここでは、予め定められた画像記録密度及び媒体種類に対する定着装置前後の印刷記録媒体34先端の通過タイミング(t1,t2)を予め定められた枚数分だけ記憶部202に保存する。予め定められた枚数は例えば100枚等である。予め定められた枚数分の情報を蓄積し、後段の評価指標算出手段106の搬送タイミング取得要求に応じて蓄積情報を出力する。また、蓄積情報が予め定められた枚数分を超える場合には情報は古い順に順次上書きする。
【0067】
記憶領域(D1)は、例えば、100枚分の画像形成時のタイミング(t1,t2)、その差分、属性データを蓄積できるよう構成されており、100枚分のデータを超える場合は古いものから順次上書きされるよう構成されている。
【0068】
ステップS16では、画像形成に関する画像形成装置300の累積出力数を取得し、予め定められた予兆監視処理のための通過タイミングの監視タイミングか否かを判定する。処理部200は、累積出力数が予め定められた予兆監視処理実行の設定出力枚数に達した場合にはステップS18に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS10に処理を戻す。監視タイミングは、例えば、1000枚の画像記録出力毎としてもよい。
【0069】
ステップS18では、記憶領域(D1)から予め定められた画像記録回数分の時系列のタイミングの差分データを読み出す。ここでの処理は評価指標算出手段106の一部に相当する。
【0070】
ステップS20では、ステップS18で読み出した時系列のタイミングの差分データの平均値を算出する。ここでの処理が評価指標算出手段106の一部に相当する。処理部200は、ステップS18で読み出した時系列のタイミングの差分データの平均値を算出し、記憶部202の平均値時系列データ記憶領域(D2)に格納する。
【0071】
ステップS22では、平均値の変化を平均化する。処理部200は、予め定められた算出回数分の平均値を平均値時系列データ記憶領域(D2)から読み出し、それらの値の移動平均を算出する。
【0072】
ステップS24では、ステップS22で得られた移動平均値から紙皺発生の予兆を判定する。ここでの処理が紙皺予兆判定手段108に相当する。処理部200は、ステップS22で得られた移動平均値が予め定められた予兆監視処理のための警告基準値を超えるか否かを判定する。本実施の形態では、図6に示すように、紙皺発生の予兆の判定は移動平均値を算出する毎に行う。移動平均値が警告基準値を超えない場合はステップS10に処理を戻し、警告基準値を超える場合はステップS26に処理を移行させる。
【0073】
また、警告基準値は複数の閾値としてもよい。この場合、処理部200は、設定された複数の閾値についていずれの閾値を超えたかによって複数のレベルの予兆判定をする。例えば、段階的な劣化状況を把握するために、定着器36の交換のための事前準備が必要なレベル、即時の保守サービスが必要なレベル等を示す閾値を設定してもよい。
【0074】
ステップS26では、紙皺発生の予兆に対する警告を出力する。ここでの処理が警告出力手段110に相当する。処理部200は、ステップS24の紙皺予兆の判定結果に応じて、例えば、タッチパネル等の出力部206の画面上に警告情報を表示させる。または、出力部206に接続されたネットワークを介してリモート保守サービスの拠点であるリモートセンターに警告を出力してもよい。リモートセンターには、警告情報と共に、画像形成装置300を特定できる識別子を送信してもよい。
【0075】
ステップS20では、ステップS18で読み出した時系列のタイミングの差分データの平均値を求め、その平均値に基づいて紙皺の予兆の予測を行った。しかしながら、ステップS20では、図7に示すように、ステップS18で読み出した時系列のタイミングの差分データの標準偏差を算出し、その標準偏差に基づいて紙皺の予兆の予測を行ってもよい。
【0076】
この場合、ステップS22では、標準偏差の変化を平均化する。処理部200は、予め定められた算出回数分の標準偏差を平均値時系列データ記憶領域(D2)から読み出し、それらの値の移動平均を算出する。ステップS24及びS26での処理は上記処理と同じでよい。
【0077】
また、紙皺発生の予兆の判定は平均値及び標準偏差の両方を用いて行ってもよい。この場合、紙皺予兆の判定は、平均値及び標準偏差ともそれぞれに対して設定された閾値を超えた場合、又は、いずれか一方が閾値を超えた場合のいずれかで判定すればよい。
【0078】
また、平均値及び標準偏差を含む2次元の基準空間に対して判定を実施してもよい。2次元の基準空間に関しては、例えば、マハラノビス距離判別、線形判別等の判別アルゴリズムを利用すればよい。
【0079】
図8に平均値及び標準偏差の2次元のマハラノビス基準空間における予兆判定方法を示す。マハラノビス距離判別では、予め画像形成装置300の定着器36の初期状態の通過タイミングについて条件を満たす場合について平均値及び標準偏差を複数回サンプリングする。そして、それらのサンプリング値について基準空間を算出し、中心点との距離の差分が予め定められた閾値を超えるか否かによって紙皺発生の予兆を判定する。
【0080】
尚、平均がμ=(μ12・・・,μp)Tで、共分散行列(各変数間の共分散を配列した行列)がΣであるような多変数ベクトルx=(x1,x2・・・,xp)Tで表される一群の値に対するマハラノビス)距離(DM)は数式(1)によって算出される。
[数1]
DM(x)=((x-μ)TΣ-1(x-μ))1/2 (1)
【0081】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態における紙皺予兆監視装置100では、図9に示すように、搬送タイミング検出手段102のセンサ50は定着装置の後に設置される。処理部200はセンサ50からの出力信号をサンプリングして、印刷記録媒体34の先端及び後端の通過タイミング(t1,t2)を検出する。その後の処理は第1の実施の形態と同様に行う。
【0082】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態における紙皺予兆監視装置100では、第1の実施の形態のようにセンサ50が定着器36の前後に印刷記録媒体34の中央部に設置されると共に、図10に示すように、定着器36の印刷記録媒体34の端部位置にセンサ50が設置される。なお、図10は画像形成装置300を上面からみた場合のセンサ50の配置を示している。これらのセンサ50は印刷記録媒体34が搬送路を通過する際のスキュー角を求めるために用いられる。
【0083】
搬送タイミング検出では、定着器36の前後に設置されたセンサ50において印刷記録媒体34の先端の通過タイミングを検出すると共に、中央部に設置されたセンサ50と印刷記録媒体34の端部に設置されたセンサ50で印刷記録媒体34の先端を検知したタイミングの差を印刷記録媒体34の搬送路に対するスキュー量として検出する。
【0084】
例えば、プロセス速度が200ミリ秒の画像形成装置300において、中央部に設置されたセンサ50と印刷記録媒体34の端部に設置されたセンサ50との距離が150mmである場合、0.1°のスキュー量は中央部に配置されたセンサ50と印刷記録媒体34の端部に設置されたセンサ50との検出時間差として約1.3ミリ秒の差に相当する。
【0085】
第3の実施の形態では、このようにして得られるスキュー量を搬送タイミングの差の代わりに用いて紙皺発生の予兆を判定する。すなわち、ステップS18では、時系列で求められたスキュー量の平均値及び標準偏差の少なくとも一方を算出して蓄積する。ステップS22では、スキュー量の平均値及び標準偏差の少なくとも一方の移動平均値を求める。ステップS24では、ステップS22で得られたスキュー量の平均値の移動平均値及びスキュー量の標準偏差の移動平均値の少なくとも一方に基づいて紙皺発生の予兆を判定する。すなわち、スキュー量の平均値の移動平均値及びスキュー量の標準偏差の移動平均値の少なくとも一方をそれぞれについて予め定められた閾値を超える場合には紙皺発生の予兆であるとしてステップS26にて警告を出力する。
【0086】
なお、スキュー量の平均値又は標準偏差に加えて、印刷記録媒体34の搬送タイミングの平均値又は標準偏差を組み合わせて紙皺発生の予兆を判定してもよい。すなわち、スキュー量の平均値又は標準偏差、印刷記録媒体34の搬送タイミングの平均値又は標準偏差を組み合わせて、少なくとも1つ又は複数の値が予め定めた紙皺判定のための閾値を超えた場合に警告を出力するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態における紙皺予兆監視装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における紙皺予兆監視装置を実現するコンピュータの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における紙皺予兆監視装置を適用した画像形成装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるセンサの配置を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における紙皺予兆監視処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における紙皺発生の予兆の判定を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態における紙皺発生の予兆の判定を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における紙皺発生の予兆の判定を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるセンサの配置を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるセンサの配置を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成部、2 原稿画像読取部、3 原稿カバー、5 プラテン、6 ライト、7-8 ミラー、10 レンズ、11 光電変換素子、13(13K,13Y,13M,13C) 画像形成部、14(14K,14Y,14M,14C) 光走査装置、15(15K,15Y,15M,15C) 感光体ドラム、16K 帯電器、17(17K,17Y,17M,17C) 現像器、18K クリーナ、19,20,21,24 ミラー、22 半導体レーザ、25 中間転写ベルト、26(26K,26Y,26M,26C) 一次転写ロール、27-31 ベルトローラ、33 二次転写ロール、34 印刷記録媒体(印刷用紙)、36 定着器、37 排紙トレイ、38-41 給紙トレイ、42 ピックアップロール、43-47 搬送ロール群、50 センサ、100 紙皺予兆監視装置、102 搬送タイミング検出手段、104 搬送タイミング蓄積手段、106 評価指標算出手段、108 紙皺予兆判定手段、110 警告出力手段、112 画像記録モード取得手段、114 画像記録密度取得手段、116 媒体種類情報取得手段、120 予兆出力手段、200 処理部、202 記憶部、204 入力部、206 出力部、300 画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷記録媒体の搬送路中に配置された印刷記録媒体の搬送のタイミングを検出する少なくとも1つのタイミング検出手段と、
前記タイミング検出手段によって検出された印刷記録媒体の搬送タイミングに基づいて印刷記録媒体の搬送時の紙皺発生の予兆を検出し、前記予兆を出力する予兆出力手段と、
を備えることを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、2つ以上の前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の前後に配置されていることを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、同一の前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の先端及び後端のそれぞれの搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の後に配置されていることを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項6】
請求項1に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、前記タイミング検出手段で検出された印刷記録媒体の搬送タイミングの差から求められたスキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項7】
請求項6に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記タイミング検出手段は、印刷記録媒体に対して画像形成を行う電子写真印刷機の定着器の前及び後の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体の種類毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体に記録された画像の記録密度の範囲毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体への画像の記録モード毎に求めた前記搬送タイミングの差の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項11】
請求項5又は6に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体の種類毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項12】
請求項5又は6に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体に記録された画像の記録密度の範囲毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項13】
請求項5又は6に記載の紙皺予兆監視装置であって、
前記予兆出力手段は、印刷記録媒体への画像の記録モード毎に求めた前記スキュー角の平均値又は標準偏差に基づいて前記予兆を検出することを特徴とする紙皺予兆監視装置。
【請求項14】
印刷記録媒体の搬送路中に配置された印刷記録媒体の搬送のタイミングを検出する少なくとも1つのタイミング検出手段によって検出された印刷記録媒体の搬送タイミング、に基づいて印刷記録媒体の搬送時の紙皺発生の予兆を検出し、前記予兆を出力する処理をコンピュータの処理部に実行させることを特徴とする紙皺予兆監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−132392(P2010−132392A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309134(P2008−309134)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】