説明

索端金具及び該索端金具を使用したワイヤロープの固定構造

【課題】ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープを索端金具から摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、落石防護柵やガードケーブル等の許容荷重の増加を図って安全性を高める索端金具及び該索端金具を使用したワイヤロープの固定構造を提供する。
【解決手段】ワイヤロープ7の端部を支柱に固定するための索端金具1であって、ワイヤロープ7の外周面に固定可能な楔部材2と、楔部材2を離脱不能に収納する中空テーパ部15を有する係合部材3と、ワイヤロープ7を挿通可能な中空筒状部17を有する金具本体と、係合部材3と金具本体を連結する継手部材5と、金具本体を支柱に固定するための固定具6とからなる索端金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防護柵やガードケーブル等において、ワイヤロープと支柱を固定するための索端金具及び該索端金具を使用したワイヤロープの固定構造に関し、特には、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープを索端金具から摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、落石防護柵やガードケーブル等の許容荷重の増加を図って安全性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
道路や駐車場、各種建築物への傾斜面からの落石を防止する落石防護柵や、車両の衝突等の非常事態からの安全性を確保するガードケーブルは、弾性域内で働く複数のワイヤロープと適度な剛性、靱性を有する支柱により構成され、落石や車両衝突時の衝撃に対してワイヤロープの引張りと支柱の変形によりエネルギーを吸収している。
【0003】
従来の索端金具はワイヤロープ端部を支柱に固定するものであり、例えば、ワイヤロープの端末部のよりを緩めてストランドの間に楔塊を介挿することにより、ワイヤロープを開口部に抜絡不能にブラケットに固定する。そして、そのブラケットを支柱に固定したボルト軸に螺合する手段が一般的に行われている。
【0004】
また、基端部に締結ダブルナットを螺合したボルト軸の先端を環状部又はフック部に形成してなり、支柱に固定したボルト軸の環状部又はフック部にワイヤロープの端部に付設した巻付グリップを掛けるようにした索端金具も提供されている(特許文献1)。そして、ワイヤロープの端部の処理手段として、円錐状管の大径外側にネジ部を螺設し、前記円錐状管の内側に合致するワイヤーロープを係合できる凹溝部を対向させて縦設したクサビと、前記円錐状管のネジ部に螺合できる縁つきナットとからなる手段も提供されている(特許文献2)。更に、ワイヤロープの端部に付設した巻付グリップを掛け通すヘッド部を支柱に固定したボルト軸に挟持ナットを介して連結する索端金具も提供されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3029289号
【特許文献2】特開平9−31877号
【特許文献3】実用新案登録第3044565号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の索端金具はいずれもワイヤロープ端部を支柱に固定する構成であるため、落石発生時や車両の衝突時には、落石や衝突の荷重が直接ワイヤロープに作用することとなり、ワイヤロープの許容荷重以上の荷重が作用した場合にはワイヤロープの破断、索端金具や支柱の変形などが発生することとなり、落石防護柵やガードケーブルとしての使命を果たすことができない。即ち、従来の索端金具はワイヤロープに、ワイヤロープ自体の許容荷重以上の荷重が作用すると、このエネルギーを吸収することができず、ワイヤロープが破断してしまうこととなる。
【0007】
近時は平成21年7月に富士山富士宮口の駐車場で起きた落石による死亡事故を受けて、落石防護柵やガードケーブルの安全性の向上が強く求められている。特に予期しない大きな落石や衝突があった場合においても、これらのエネルギーを吸収することができ、少なくとも落石や衝突車両が落石防護柵やガードケーブルを突き破ることを防止して停止させることによる安全性の確保が特に求められている。
【0008】
一方において、落石防護柵やガードケーブルの安全性を高めるために、落石防護柵やガードケーブルにおけるワイヤロープの許容荷重の設計値をむやみに大きくし、許容荷重の大きいワイヤロープを使用することは現実性に欠け、又経済効率上も実施が困難である。
【0009】
そこで、本発明は上記した従来の索端金具及び索端金具を使用したワイヤロープの固定構造の問題点を解決するとともに、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合においても、ワイヤロープを索端金具から摺動させて繰り出すことによって、その荷重を吸収し、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、ワイヤロープ自体の許容荷重の制約を超えて落石防護柵やガードケーブル等の許容荷重の増加を図って、より高い安全性を実現することのできる索端金具及び該索端金具を使用したワイヤロープの固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はその目的を達成するために、ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、ワイヤロープの外周面に固定可能な楔部材と、楔部材を離脱不能に収納する中空テーパ部を有する係合部材と、ワイヤロープを挿通可能な中空筒状部を有する金具本体と、係合部材と金具本体を連結する継手部材と、金具本体を支柱に固定するための固定具とからなる索端金具を基本として提供する。
【0011】
また、ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材と金具本体を継手部材を介して連結し、金具本体を支柱に固定する索端金具を提供する。
【0012】
そして、楔部材は複数に分割可能であるとともに、ワイヤロープに固定した際に、外周面をテーパ状に形成する構成、係合部材は一端部に、継手部材に係合するため径大の係合鍔部を形成する構成、金具本体は、一端部に継手部材と係合するための螺子溝を外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部を形成している構成を提供する。また、金具本体の他端部に螺子溝を刻設し、該螺子溝を支柱に挿通し、固定具としてのナットで螺合することにより、支柱に固定する構成、継手部材の一端部の開口部に、係合部材の係合鍔部と係止する環状鍔部を形成する構成、及び継手部材は内周面に、金具本体の螺子状鍔部と螺合する螺子溝を刻設する構成を提供する。
【0013】
より具体的には、ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材の一端部に形成された径大の係合鍔部と、金具本体の一端部に形成され、外周面に螺子溝を刻設した径大の螺子状鍔部を対面させて、一端部の開口部に係合部材の係合鍔部を係止する環状鍔部を形成してなる継手部材の内周面に刻設した螺子溝を金具本体の螺子状鍔部の螺子溝と螺合するとともに、継手部材の環状鍔部と係合部材の係合鍔部を相互に係合させることにより、金具本体と係合部材を一体に連結し、金具本体の他端部に形成された螺子溝を支柱に挿通し、固定具としてのナットを螺合することにより支柱に固定する索端金具を提供する。そして、ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動するように固定する。
【0014】
更に、上記した構成の索端金具を使用し、落石防護柵又はガードケーブルにおけるワイヤロープの索端を支柱に固定する索端金具を使用したワイヤロープの固定構造を提供する。そして、ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動する構造、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが摺動することによって索端金具からワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐ構造を提供する。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の本発明によれば、落石等によってワイヤロープに荷重が掛かった場合は、荷重が楔部材によるワイヤロープの固定力より小さければ、ワイヤロープは楔部材によって係合部材内の内周面に固定された状態を保ち、落石等を落石防護柵やガードケーブルの内方に支えることができる。一方、楔部材の固定力を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが楔部材,係合部材及び金具本体内を所定長さ摺動して索端金具から繰り出される。このとき、ワイヤロープの端部は金具本体の中に延長されているため、所定長さ摺動して索端金具から繰り出されるだけの余裕を有している。このようにワイヤロープを索端金具から繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐことができ、落石等を落石防護柵から飛び出すことなく、保持することができる。同様にガードケーブルに自動車等が衝突した場合においても、ガードケーブルの破損を防ぐことができ、車両等がガードケーブルから飛び出すことを防ぐことができる。
【0016】
よって、従来の索端を支柱に固定して使用するワイヤロープと同じ許容荷重のワイヤロープを使用しても、落石防護柵やガードケーブルの許容荷重を向上させることができ、経済的な負担を生じることなく、その安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる索端金具の全体正面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明にかかる索端金具の組付説明図。
【図4】本発明にかかる楔部材の中央横断面図。
【図5】本発明に索端金具の斜視図。
【図6】本発明にかかる索端金具の使用状態を示す斜視図。
【図7】本発明にかかるワイヤロープの使用状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて本発明にかかる索端金具及び該索端金具を使用したワイヤロープの固定構造の実施形態を説明する。図1は本発明にかかる索端金具の全体正面図、図2は図1のA−A断面図、図3はその組付説明図である。図において、1は索端金具であり、落石防護柵やガードケーブルにおいて、ワイヤロープ7を端末支柱等の支柱8に固定するための金具である。なお、本発明におけるワイヤロープ7には、PC鋼線その他のワイヤロープとして使用可能な索状体全般を含むものである。この索端金具1は、ワイヤロープ7の外周面に固定可能な楔部材2と、楔部材2を離脱不能に収納する中空テーパ部15を有する係合部材3と、ワイヤロープ7を挿通可能な中空筒状部17を有する金具本体4と、係合部材3と金具本体4を連結する継手部材5と、金具本体4を支柱8(図6参照)に固定するための固定具6から構成されている。
【0019】
楔部材2は中空部9を有し、一端部に大径の開口部10と他端部に小径の開口部11が開口されており、外周面12がテーパ状に形成されている。そして大径の開口部10から小径の開口部11に向けて、又小径の開口部11から大径の開口部10に向けて相互に1又は複数のスリット13,14が穿設されている(図4参照)。この楔部材2は一体として又は複数に分割されて構成されており、ワイヤロープ7の端部近傍の所定位置において、中空部9にワイヤロープ7を挿通した状態で圧縮することにより、ワイヤロープ7の外周面に所定圧力で固定される。前記したスリット13,14はワイヤロープ7への圧着を容易とするためのものである。なお、楔部材2の形状に限定はなく、係合部材3の中空テーパ部15内において、ワイヤロープ7を固定できる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0020】
係合部材3は、両端部に開口部を有する中空テーパ部15を有しており、この中空テーパ部15は楔部材2のテーパ状の外周面12とほぼ整合する傾斜面を有している。また、中空テーパ部15の径小側の開口部端面には環状停止部3aが形成されている。そのため、楔部材2を外周面に固定したワイヤロープ7を係合部材3の中空テーパ部15に挿通して楔部材2を中空テーパ部15に収納することにより、或いはワイヤロープ7を中空テーパ部15に挿通した後に楔部材2を固定して中空テーパ部15に収納することにより、楔部材2の小径の開口部11が環状停止部3aに係止された状態で、楔部材2は中空テーパ部15の径小方向(矢印X方向)に離脱不能に係合部材3に収納される。よって、ワイヤロープ7は係合部材3に固定されることとなる。また、中空テーパ部15の径小方向(矢印X方向)と反対方向の係合部材3の一端部には、継手部材5に係合するための径大の係合鍔部16が形成されている。
【0021】
このとき、肝要なことは係合部材3の中空テーパ部15内における楔部材2による楔部材2の許容荷重(固定力)がワイヤロープ7自体の許容荷重より小さくなるように設計しておく。即ち、楔部材2の許容荷重(固定力)<ワイヤロープ7の許容荷重の状態としておくことである。これにより、落石等によって所定値以上の荷重がワイヤロープ7に作用すると、ワイヤロープ7の許容荷重以上の荷重が掛かる前に、楔部材2の許容荷重(固定力)以上の荷重が掛かることとなり、その場合にはワイヤロープ7は楔部材2による固定に抗して摺動し、楔部材2から繰り出されることとなって、切断されたり、所定値以上の荷重が支柱に直接作用して、支柱が変形したり、倒壊することを防ぐことができる。具体的には楔部材2の許容荷重(固定力)を50kj程度の運動エネルギーに設定しておくとよい。よって、ワイヤロープ7に50kj以上の運動エネルギーの荷重がかかると、ワイヤロープ7は楔部材2による固定に抗して摺動を始める。なお、楔部材2の許容荷重(固定力)は目的やワイヤロープ7自体の許容荷重に応じて自由に設定すればよい。また、ワイヤロープ7にかかる荷重が楔部材2による固定力より小さければ、ワイヤロープ7は楔部材2から繰り出されることなく、荷重の原因となった落石等を支えることができる。
【0022】
金具本体4は、所定長さを有する棒状体であって、両端部に開口部を有しワイヤロープ7を摺動自在に挿通可能な中空筒状部17を有している。そして、金具本体4は、一端部に継手部材5と係合するための螺子溝18を外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部19を形成するとともに、他端部を外周面に螺子溝20を刻設した螺子状端部21としている。この螺子状端部21を支柱8に穿設した孔に挿通し、ナット等の適宜の固定具6で螺合することにより、支柱8に固定することができる。なお、螺子状鍔部19は係合部材3の係合鍔部16と略同径である。この金具本体4の中空筒状部17にワイヤロープ7の端部を挿入して延長しておくことによって、ワイヤロープ7は所定長さ摺動して索端金具1から繰り出されるだけの余裕を有している。
【0023】
継手部材5は、両端部に開口部を有する中空部22を有する筒状体であって、内周面に金具本体4の螺子状鍔部19と螺合する螺子溝23を刻設しているとともに、一端部の開口部に係合部材3の係合鍔部16を係止する環状鍔部24を形成している。
【0024】
次に上記構成の索端金具1の使用方法を説明する。先ず、落石防護柵やガードケーブル等において、支柱8と固定するためのワイヤロープ7の端部を係合部材3の中空テーパ部15に係合鍔部16がワイヤロープ7の端部側に位置するように挿通する。次にワイヤロープ7の外周面に楔部材2を圧着して固定した後、係合部材3の中空テーパ部15に楔部材2のテーパ状の外周面12を圧接させることによって、楔部材2を矢印X方向(係合鍔部16とは反対方向)に離脱不能に係合部材3に収納する。このとき、係合部材3を予め継手部材5の中空部22に挿通し、係合鍔部16を継手部材5の環状鍔部24に係止しておく。或いは楔部材2を外周面に固定したワイヤロープ7を係合部材3の中空テーパ部15に挿通し、楔部材2を中空テーパ部15に収納するようにしてもよい。要すれば、各部材が図2に示す位置関係にあればよい。
【0025】
この状態で、係合部材3から延長させたワイヤロープ7の端部を金具本体4の中空筒状部17に挿入するとともに、金具本体4の螺子状鍔部19を係合部材3の係合鍔部16と対面させて、継手部材5の螺子溝23と金具本体4の螺子状鍔部19の螺子溝18を螺合させることによって、係合部材3と金具本体4を一体に連結することができる。
【0026】
そして、図6,図7に示すように、落石防護柵25の支柱8の所定の位置に孔(図示略)を穿設し、その孔に金具本体の螺子状端部21を挿通し、ナット等の適宜の固定具6で螺合することにより、ワイヤロープ7を索端金具1を使用して支柱8に固定することができる。なお図6,図7において支柱8は索端支柱として図示したが、その他の中間支柱に固定する際にもそのまま使用することができる。また、ワイヤロープ7を利用して金網を敷設することも可能である。26は支柱8を補助するためのサポート材である。
【0027】
上記使用状態において、落石等によってワイヤロープ7に荷重が掛かった場合は、荷重が楔部材2の固定力より小さい荷重であれば、ワイヤロープ7は楔部材2によって係合部材3内の内周面に固定された状態を保ち、落石等を落石防護柵25の内方に支えることができる。一方、楔部材2の固定力の許容荷重を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、ワイヤロープ7が切断される前に、ワイヤロープ7は楔部材2による係合部材3の内周面への固定に抗して、ワイヤロープ7が楔部材2,係合部材3及び金具本体4内を矢印X方向に所定長さ摺動して索端金具1から繰り出される。このとき、ワイヤロープ7の端部は金具本体4の中空筒状部17の中に延長されているため、所定長さ摺動して索端金具1から繰り出されるだけの余裕を有している。このようにワイヤロープ7を索端金具1から繰り出すことにより、ワイヤロープ7の破断や支柱8の変形を防ぐことができる。
【実施例】
【0028】
実施例として、本発明にかかる索端金具1を使用してワイヤロープを高さ方向に等間隔で5本配置するとともに金網を敷設した、高さ1.5m、長さ9mの落石防護柵を製造した。また、従来例としてワイヤロープの索端を固定する従来の索端金具を使用して実施例と同様の落石防護柵を製造した。これらの落石防護柵について、質量2トンの球状のコンクリート塊を速度10m/秒(36km/時間)、運動エネルギー100kjの条件で衝突させる実験を行った。一般に落石防護柵の吸収可能エネルギーは55kjとされているので、実験した衝突エネルギーはおよそその2倍となる。
【0029】
従来の索端金具を使用した落石防護柵では、索端金具が変形し、ワイヤロープが索端金具から外れ、或いはワイヤロープが破断し、コンクリート塊が落石防護柵から飛び出してしまい、落石防護柵として機能しなかった。これに対して、本発明にかかる索端金具を使用した落石防護柵では、索端金具の形状に変化はなく、ワイヤロープを僅かに繰り出しており、コンクリート塊を停止させることができた。これは索端金具によって、ワイヤロープにかかる荷重を制御して調節することにより、許容荷重以上の荷重がワイヤロープに掛からないようにしたためである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上記載した本発明によれば、落石防護柵やガードケーブル等において、ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、ワイヤロープを索端金具から摺動させて繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐとともに、落石防護柵やガードケーブル等の許容荷重の増加を図って安全性を高めることができる。即ち、ワイヤロープの固定力を超える所定値以上の荷重が作用した場合には、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが係合部材から所定長さ摺動して繰り出される。このようにワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐことができ、落石等を落石防護柵から飛び出すことなく、保持することができる。よって、従来の索端を支柱に固定して使用するワイヤロープと同じ許容荷重のワイヤロープを使用しても、落石防護柵やガードケーブルの許容荷重を増加させることができ、経済的な負担を生じることなく、その安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…索端金具
2…楔部材
3…係合部材
3a…環状停止部
4…金具本体
5…継手部材
6…固定具
7…ワイヤロープ
8…支柱
9,22…中空部
10,11…開口部
12…外周面
13,14…スリット
15…中空テーパ部
16…係合鍔部
17…中空筒状部
18,20,23…螺子溝
19…螺子状鍔部
21…螺子状端部
24…環状鍔部
25…落石防護柵
26…サポート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、
ワイヤロープの外周面に固定可能な楔部材と、楔部材を離脱不能に収納する中空テーパ部を有する係合部材と、ワイヤロープを挿通可能な中空筒状部を有する金具本体と、係合部材と金具本体を連結する継手部材と、金具本体を支柱に固定するための固定具とからなることを特徴とする索端金具。
【請求項2】
ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、
ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材と金具本体を継手部材を介して連結し、金具本体を支柱に固定することを特徴とする索端金具。
【請求項3】
楔部材は複数に分割可能であるとともに、ワイヤロープに固定した際に、外周面がテーパ状に形成されている請求項1又は2記載の索端金具。
【請求項4】
係合部材は一端部に、継手部材に係合するため径大の係合鍔部を形成している請求項1,2又は3記載の索端金具。
【請求項5】
金具本体は、一端部に継手部材と係合するための螺子溝を外周面に刻設してなる径大の螺子状鍔部を形成している請求項1,2,3又は4記載の索端金具。
【請求項6】
金具本体の他端部に螺子溝を刻設し、該螺子溝を支柱に挿通し、固定具としてのナットで螺合することにより、支柱に固定する請求項1,2,3,4又は5記載の索端金具。
【請求項7】
継手部材の一端部の開口部に、係合部材の係合鍔部と係止する環状鍔部を形成してなる請求項1,2,3,4,5又は6記載の索端金具。
【請求項8】
継手部材は内周面に、金具本体の螺子状鍔部と螺合する螺子溝を刻設してなる請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の索端金具。
【請求項9】
ワイヤロープの端部を支柱に固定するための索端金具であって、
ワイヤロープの外周面に固定した楔部材を離脱不能に係合部材の中空テーパ部に収納し、係合部材から延長させたワイヤロープの端部を金具本体の中空筒状部に挿入するとともに、係合部材の一端部に形成された径大の係合鍔部と、金具本体の一端部に形成され、外周面に螺子溝を刻設した径大の螺子状鍔部を対面させて、一端部の開口部に係合部材の係合鍔部を係止する環状鍔部を形成してなる継手部材の内周面に刻設した螺子溝を金具本体の螺子状鍔部の螺子溝と螺合するとともに、継手部材の環状鍔部と係合部材の係合鍔部を相互に係合させることにより、金具本体と係合部材を一体に連結し、金具本体の他端部に形成された螺子溝を支柱に挿通し、固定具としてのナットを螺合することにより支柱に固定することを特徴とする索端金具。
【請求項10】
ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動するように固定する請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の索端金具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の索端金具を使用し、落石防護柵又はガードケーブルにおけるワイヤロープの索端を支柱に固定することを特徴とする索端金具を使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項12】
ワイヤロープが所定値以上の荷重によって、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、所定長さ摺動する請求項11記載の索端金具を使用したワイヤロープの固定構造。
【請求項13】
ワイヤロープに所定値以上の荷重が掛かった場合に、楔部材による係合部材の内周面への固定に抗して、ワイヤロープが摺動することによって索端金具からワイヤロープを繰り出すことにより、ワイヤロープの破断や支柱の変形を防ぐ請求項11記載の索端金具を使用したワイヤロープの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−58574(P2011−58574A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209549(P2009−209549)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(501490863)
【Fターム(参考)】