細街路評価収集方法および装置並びに収集された細街路評価に基づく地図情報更新システム
【課題】細街路について、運転者が手動で逐一設定を行うことなく、個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す評価を収集する。
【解決手段】細街路Rを走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段40と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段10と、車両挙動検出手段40によって検出された車両の挙動と記憶手段10に記憶された所定のパターンとを比較する挙動比較手段30と、挙動比較手段30による比較の結果、車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、その細街路Rがナビゲーション用の案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値であるコストCを増大させ、比較の結果、車両の挙動が所定のパターンに合致しないときは、コストCを増減させずにそのまま維持させることにより、個々の細街路RごとのコストCを収集する指標値収集手段20と、を備える。
【解決手段】細街路Rを走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段40と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段10と、車両挙動検出手段40によって検出された車両の挙動と記憶手段10に記憶された所定のパターンとを比較する挙動比較手段30と、挙動比較手段30による比較の結果、車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、その細街路Rがナビゲーション用の案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値であるコストCを増大させ、比較の結果、車両の挙動が所定のパターンに合致しないときは、コストCを増減させずにそのまま維持させることにより、個々の細街路RごとのコストCを収集する指標値収集手段20と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細街路評価収集方法および細街路評価収集装置並びに収集された細街路評価に基づく地図情報更新システムに関し、詳細には、個々の細街路の評価に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載のナビゲーション装置において現在用いられているデジタル地図(地図情報)のうち経路案内に用いられる道路は、そのリンクに、道路の種別(属性)を特定する情報が付されている。
【0003】
この道路の種別を特定する情報は、高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道、細街路などであるが、このうち細街路は、他の種別に属さない道路、すなわち高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道等を除いた残りの道路(いわゆる生活道路など)が全て区分けされており、対面通行可能な広い幅員の道路も、すれ違いができないほど狭い幅員の道路も、一括りにされている(特許文献1)。
【0004】
そして、幅員が狭い細街路は、運転に不慣れなドライバーにとって通行のしにくい道路であるため、経路を案内するナビゲーション装置では通常、細街路自体が、案内用の経路として選択される優先度(以下、選択優先度という。)の低いものとされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−041761号公報
【特許文献2】特開平9−287965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、全ての細街路が幅員の狭い道路とは限らず、細街路に区分されていても、国道、都道府県道、市町村道等に匹敵するような広い幅員を有する道路もある。
【0007】
そして、そのように広い幅員の道路であれば、例え細街路に区分されているものであったとしても、幅員の広さに応じた走行のしやすさという観点では、他の種別の道路(国道、都道府県道、市町村道等)と同程度と考えられるため、案内用の経路として他の種別の道路と同程度の優先度で選択されても、特段の問題は生じないと考えられる。
【0008】
一方、細街路に区分けられた道路のうち、対向車とすれ違いができない程度の幅員しかない道路については、案内用の経路として選択される優先度を、引き続き低く抑制しておくべきである。
【0009】
このように、細街路という種別に一括りにされた道路であっても、個々の道路の状況に応じて案内用の経路として選択される優先度を評価するのが好ましい。
【0010】
しかし、細街路という種別に区分される道路は、高速自動車国道や他の国道等と比較すると、地図データとして十分な整備や頻繁な更新が行われていないのが実状であり、細街路に区分けされている個々の道路について、案内経路としての評価を行うのは困難である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、運転者が手動で逐一設定を行うことなく、個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す評価を収集することのできる細街路評価収集方法および細街路評価収集装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
さらに、本発明は、そのようにして収集された細街路の評価に基づいてその細街路を含む地図情報を逐次更新することのできる細街路評価に基づく地図情報更新システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、評価対象の細街路を走行したときの、自車に対して行った運転操作に応じた車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動が、所定のパターンに合致したか否かに応じて、その細街路に対する評価(選択されにくい度合いを示す指標値による評価)を収集するものである。
【0014】
すなわち、本発明に係る細街路評価収集方法は、細街路を走行する車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動を、予め設定された所定のパターンと比較し、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることで、前記細街路ごとの前記指標値を収集する(案内経路として選択されにくさを評価する)ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る細街路評価収集装置は、細街路を走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段と、前記車両挙動検出手段によって検出された前記挙動と前記記憶手段に記憶された前記パターンとを比較する挙動比較手段と、前記挙動比較手段による比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させるように、前記細街路についての前記指標値を設定し、前記細街路に対応した前記指標値のことにより、前記細街路ごとの前記指標値を収集する(案内経路として選択されにくさを評価する)指標値収集手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、本発明の細街路評価収集方法および細街路評価収集装置における、予め設定されたパターンとしては、例えば、幅員の狭い道路における対向車を回避するために必要とされる車両の挙動のパターン(すれ違いパターン)や、幅員の狭い道路における曲がり角を曲がるために必要とされる車両の挙動のパターン(切り返しパターン)などを適用可能である。
【0017】
このような所定のパターンは、主として、車両の前進・後退という挙動の組合せであって、前進から後退に切り替えられた時点から前進に再度切り替えられる時点までの経過時間、およびその後退から前進に切り替えられた時点からの前進での走行距離などである。
【0018】
具体的には、例えば下記(1)の対向車とのすれ違いパターンや、(2)の切り返しを伴う転舵パターンは、上記所定のパターンに該当する。
(1)対向車とのすれ違いパターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動
(2)切り返しを伴う転舵パターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ、(e)その後、前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動((d)と(e)との間で、(b)と(d)との組合せを複数回繰り返す挙動((a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)や、(a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)など)も含む。)
ここで、例示した上記(1)の挙動は、通常に走行している((a)前進している)とき対向車と遭遇したため、停止して後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、対向車にすれ違いをさせた後、前進して((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え)通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0019】
また、例示した上記(2)の挙動は、通常に走行して曲がり角に達し、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れないため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0020】
このように構成された本発明に係る細街路評価収集方法によれば、細街路を走行する車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動を所定のパターンと比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、細街路が案内経路として選択されにくい度合いの指標値を増大させ、この指標値の大きい道路に対して、幅員が狭い等の理由により、案内経路として選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0021】
また、このように構成された本発明に係る細街路評価収集装置によれば、車両挙動検出手段が、細街路を走行する車両の挙動を検出し、挙動比較手段が、この車両挙動検出手段によって検出された車両の挙動を、記憶手段に記憶された所定のパターンと比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、指標値収集手段が、細街路が案内経路として選択されにくい度合いの指標値を増大させ、この指標値の大きい道路に対して、幅員が狭い等の理由により、選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0022】
例えば、自車が上記例示(1)に示した挙動を示す場合、走行している細街路が、減速することなく通常の走行状態のままで対向車とすれ違うのが困難な程度に幅員の狭い道路であることになり、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、車両がこのような挙動を呈しなければならない道路に対して、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値(コスト)を増大させることにより、この道路が案内経路として選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0023】
同様に、自車が上記例示(2)に示した挙動を示す場合、走行している細街路が、曲がり角を1回の操舵で曲がるのが困難な程度に幅員の狭い道路であることになり、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、車両がこのような挙動を呈しなければならない道路に対して、指標値を増大させることにより、この道路が選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0024】
一方、本発明に係る細街路評価収集方法は、検出された車両の挙動が所定のパターン(例えば上記(1)のすれ違いパターンや上記(2)の切り返しパターンなど)に合致しないときは、コストを増減させずにそのまま維持させるため、この道路に対するコストは増大せず、したがって、細街路のうち指標値が増大(選択優先度を低く評価)した他の道路と比較した相対的な評価として、この道路に対する選択優先度を高めた評価を行うことができる。
【0025】
同様に、本発明に係る細街路評価収集装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両の挙動が記憶手段に記憶された所定のパターン(例えば上記(1)のすれ違いパターンや上記(2)の切り返しパターンなど)に合致しないときは、指標値収集手段が、指標値を増減させずにそのまま維持させるため、この道路に対する指標値は増大せず、したがって、細街路のうち指標値が増大(選択優先度を低く評価)した他の道路と比較した相対的な評価として、この道路に対する選択優先度を高める評価を行うことができる。
【0026】
以上のように、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置によれば、細街路という一つの種別に区分されている道路であっても、個々の道路ごとに選択優先度を設定することができる。
【0027】
しかも、その選択優先度の設定は、運転者が手動で逐一行うのではなく、車両を走行させて、その挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0028】
なお、上記予め設定された所定のパターンとしては、上述した(1)すれ違いパターンや(2)切り返しパターンだけに限定されるものではなく、例えば、幅員が狭い道路であることに起因した、通常の走行における挙動(略定速での前進走行)とは異なる複数の挙動を組み合わせたパターンとして設定しておくことができる。
【0029】
また、本発明に係る地図情報更新システムは、地図情報記憶手段に記憶された地図情報について、各車両に搭載された細街路評価収集装置から送られた、細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値(評価)を、その地図情報における各細街路に対応付けて蓄積更新することにより、細街路ごとに、案内経路としての評価がなされた信頼性のある地図情報を提供可能としたものである。
【0030】
すなわち、本発明に係る地図情報更新システムは、案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された地図情報記憶手段と、前記地図情報記憶手段に記憶された前記地図情報を読み出して、前記地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を前記地図情報記憶手段に記憶させる地図情報更新手段と、1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置により評価された、前記細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値の供給を受ける指標値受信手段と、を備え、前記地図情報は、前記内容として含まれる個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値が対応付けられたものであり、前記地図情報更新手段は、前記指標値受信手段により受信された前記細街路ごとの指標値を、前記地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新することを特徴とする。
【0031】
このように構成された本発明に係る地図情報更新システムによれば、指標値受信手段が、車両に搭載された細街路評価収集装置により評価された細街路ごとの指標値(評価)を受信すると、地図情報更新手段が、地図情報記憶手段に記憶された地図情報を読み出し、指標値受信手段により受信された細街路ごとの指標値を、読み出した地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新したうえで、この更新された後の地図情報を、地図情報記憶手段に記憶させ直す。
【0032】
そして、この地図情報の内容として細街路ごとに対応付けられた評価は、実際に車両が走行した結果に基づいたものであるため、実状に精度よく対応した評価となり、ナビゲーション装置やナビゲーションシステムにおいて、この地図情報を利用した経路案内を行う場合に、個々の細街路に対応付けられた精度のよい評価に基づいて、経路案内を行うことで、従来のナビゲーション装置やナビゲーションシステムであれば、選択される優先度が一律に低かった細街路であっても、個々の道路ごとに選択される可能性が増減し、案内経路の選択自由度が高められ、経路選択の柔軟性が高められる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る細街路評価方法および細街路評価装置によれば、個々の細街路の選択優先度を、運転者が手動で逐一設定を行うことなく、走行する車両の挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0034】
しかも、個々の細街路に対して設定された選択優先度は、実際に車両が走行したことによって設定された選択優先度であるため、実状に相応したものとすることができる。
【0035】
また、本発明に係る地図情報更新システムによれば、本発明に係る細街路評価方法や細街路評価装置によって設定された細街路の選択優先度の評価に基づいて、その細街路を含む地図情報を逐次更新することのできる。
【0036】
したがって、そのように個々の細街路に対して選択優先度が設定された地図情報を、ナビゲーション装置による経路案内に用いることにより、細街路として一括りにされている道路であっても、個々の道路ごとに案内経路としての選択度合いに差異を与えることができ、ナビゲーション装置が提示する案内経路を多様化させることができる。
【0037】
また、本発明に係る地図情報更新システムによれば、実際に車両が走行して収集された細街路の評価に基づいてその細街路を含む地図情報を逐次更新することのでき、地図情報ににおける個々の細街路について、実状に精度よく対応した評価を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図であり、(a)は本発明の実施形態に係る細街路評価収集装置50、(b)は(a)の細街路評価収集装置を一部に備えた車載ナビゲーション装置、をそれぞれ示す。
【図2】図1(a)に示した細街路評価収集装置の作用であって、本発明の実施形態に係る細街路評価収集方法を示すフローチャート(その1)である。
【図3】図1(a)に示した細街路評価収集装置の作用であって、本発明の実施形態に係る細街路評価収集方法を示すフローチャート(その2)である。
【図4】コストを増加させる細街路の一例(その1)を示す図である。
【図5】コストを増加させる細街路の一例(その2)を示す図である。
【図6】コストを増加させる細街路の一例(その3)を示す図である。
【図7】コストを増加させる細街路の一例(その4)を示す図である。
【図8】コストを増加させる細街路の一例(その5)を示す図である。
【図9】コストを増加させない細街路の一例(その1)を示す図である。
【図10】コストを増加させない細街路の一例(その1)を示す図である。
【図11】コストを増加させない細街路の一例(その2)を示す図である。
【図12】コストを増加させない細街路の一例(その3)を示す図である。
【図13】コストを増加させない細街路の一例(その4)を示す図である。
【図14】コストを増加させない細街路の一例(その5)を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る地図情報更新システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る細街路評価収集装置および細街路評価収集方法並びにこの細街路評価収集装置によって収集された細街路評価に基づいた地図情報の更新システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0040】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る細街路評価収集装置50の基本的な構成を示すブロック図である。
【0041】
すなわち、この細街路評価収集装置50は、細街路Rを走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段40と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段10と、車両挙動検出手段40によって検出された挙動と記憶手段10に記憶されたパターンとを比較する挙動比較手段30と、挙動比較手段30による比較の結果、車両挙動検出手段40によって検出された挙動が記憶手段10に記憶されたパターンに合致したときは、細街路Rが、車載ナビゲーション装置により案内される経路(案内経路)として選択されにくい度合いを示す指標値(以下、コストCという。)を増大させ、比較の結果、車両挙動検出手段40によって検出された挙動が記憶手段10に記憶されたパターンに合致しないときは、コストCを増減させずにそのまま維持させることにより、細街路RごとのコストCを収集する指標値収集手段20と、を備えた構成である。
【0042】
この細街路評価収集装置50は、例えば、同図(b)の車載ナビゲーション装置100の一部として組み込まれて構成されている。
【0043】
すなわち、この車載ナビゲーション装置100は、自車の絶対位置・絶対方位を検出する例えばGPS(アンテナ、レシーバを含む)等の絶対位置方位検出部66と、ジャイロ等を利用した方位の変化を検出する相対方位検出部65と、車速パルス、バック(後退)信号のオン・オフ、キースイッチのアクセサリ(ACC)信号オン・オフ、およびパーキング信号オン・オフ等の自車の挙動である車両情報を検出する車両挙動インターフェース(I/F)67と、この車載ナビゲーション装置100の全体の制御を司るメインCPU61と、このメインCPU61の周辺回路部62と、ナビゲーション用の地図や各種操作や各種設定のメニュー等を表示する表示部72と、使用者による各種設定や選択等が入力される入力部71と、起動時等にメインCPU61によってアクセスされるFLASH−ROM、ナビゲーションプログラムや細街路評価収集プログラム等がロードされるダイナミックRAM(DRAM)、電源オフから電源オンに切り替えられた際にメモリの内容を保持して、電源オフ時にも内容の消失を防止するスタティックRAM(SRAM)、および表示部72用に設けられたビデオRAM(VRAM)を有する記憶部74と、表示部72および入力部71とCPU61とを間に設けられたユーザインターフェース(I/F)73と、FM放送波に含まれた交通情報等各種情報を抽出するFM多重放送受信・処理部63と、VICS(登録商標)による交通情報等を検出するVICS情報検出部(光ビーコン、電波ビーコン等)64と、使用者が発声した音声を入力情報として検出する音声認識部69と、ナビゲーションによる経路の案内を音声で出力する音声出力部70と、HDD(ハードディスクドライブ)やDVD−ROM、CD−ROMに記録されたナビゲーション用の地図情報(デジタル地図)およびナビゲーション用プログラム等を読み取る記憶メディア部68とを備えている。
【0044】
そして、この車載ナビゲーション装置100は、メインCPUおよびCPU周辺回路部62の制御の下、記憶メディア部68がHDD等からナビゲーション用プログラムおよび地図情報を読み出して記憶部74に一時記憶させ、一方、絶対位置方位検出部66で検出された絶対位置および絶対方位と相対方位検出部65で検出された方位の変化とを用いて、自車の逐次の位置を精度よく検出し、記憶部74に一時記憶された地図情報における、この検出された自車の位置に対応する周辺地図を表示部72に表示する。
【0045】
また、使用者が、入力部71に、目的地を入力すると、記憶部74に一時記憶されたナビゲーション用のプログラムが、自車の現在位置から目的地に至る案内経路を求めて、この案内経路を表示部72に表示するとともに、案内経路上における曲がり角等進路変更ポイントごとに、音声出力部70がその進路変更の案内を音声で出力して、道案内を行う。
【0046】
ここで、図1(a)の車両挙動検出手段40は同図(b)の車両挙動I/F67に対応し、同図(a)の記憶手段10は同図(b)の記憶部74に対応し、同図(a)の指標値収集手段20および挙動比較手段30は同図(b)のメインCPU61およびCPU周辺回路部62に対応している。
【0047】
また、ナビゲーション用の地図情報は、そこに含まれた道路の情報が、リンクとノードとによって表現されたデジタル地図であり、各リンクには、その道路の種別(属性)を特定する情報(高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道、細街路など)と、この道路の種別を特定する情報が「細街路」のときは、個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを表す指標値(コストC)が付されている。
【0048】
なお、このコストCは、車両I/F67(車両挙動検出手段40)により検出された自車の挙動が予め設定された所定のパターン(後述する対向車とのすれ違いパターンや、切り返し動作を伴う転舵パターンは、)に一致するときは、メインCPU61およびCPU周辺回路部62により増加され(C→C+1)、所定のパターンに一致しないときは、メインCPU61およびCPU周辺回路部62により増減なくそのまま維持されて(C→C)、記憶部74に記憶される。
【0049】
なお、この記憶部74に記憶された各細街路ごとのコストCは、車両のACC電源がオフに切り替えられても、消失することなく保持されるため、車両のACC電源が次回オンに切り替えられたとき、ACC電源がオフに切り替えられる直前の値を維持している。
【0050】
ここで、上述した、予め設定された車両の所定のパターンは、記憶部73に記憶されているが、使用者が入力部71に新たな挙動のパターンを入力することで、予め設定された所定のパターンとして追加的に登録、設定することもできるし、予め設定されている所定のパターンを書き換えることもできる。
【0051】
本実施形態において記憶部74(記憶手段10)に予め記憶されている所定のパターンは、下記の2つのパターン((1)対向車とのすれ違いパターン、(2)切り返しを伴う転舵パターン)である。ただし、これら2つの所定のパターンは例示に過ぎず、他の、コストCの増加となる挙動のパターンを、所定のパターンとして適用することももちろん可能である。
(1)対向車とのすれ違いパターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動
(2)切り返しを伴う転舵パターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ、(e)その後、前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動((d)と(e)との間で、(b)と(d)との組合せを複数回繰り返す挙動((a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)や、(a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)など)も含む。)
ここで、例示した上記(1)の挙動のパターンは、通常に走行している((a)前進している)とき対向車と遭遇したため、停止して後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、対向車にすれ違いをさせた後、前進して((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え)通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0052】
また、例示した上記(2)の挙動のパターンは、通常に走行して曲がり角に達し、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れないため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0053】
次に、本実施形態の細街路評価収集装置50の作用について説明する。
【0054】
まず、この細街路評価収集装置50(車載ナビゲーション装置100)を搭載した車両が、細街路Rを走行しているとき、車両挙動検出手段40が、細街路Rを走行する車両の挙動を検出し、挙動比較手段30が、この車両挙動検出手段40によって検出された車両の挙動を、記憶手段10に記憶された所定のパターン(上記(1)対向車とのすれ違いパターンおよび(2)切り返しを伴う転舵パターン)とそれぞれ比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、指標値収集手段20が、細街路Rがナビゲーション用の案内経路として選択されにくい度合いの指標値であるコストCの値を増加させ、このコストCの値が大きくなった道路に対して、幅員が狭い等の理由により、選択優先度(選択される優先度)を低くする評価を行い、この細街路Rに対応するリンクに、値の増加したコストCを対応付け直して、記憶手段40に記憶させ直す。
【0055】
例えば、図4に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは後退して退避部Rsで一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させて自車Aとすれ違いさせ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0056】
一方、例えば図9に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇しても(同図(a))、自車Aが、停止したり後退するなどの挙動がなく、そのまま前進走行を続行した場合(同図(2))、すなわち、(1)や(2)の所定のパターンに合致しないときは、細街路Rの幅員は広いと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増減させずにその値のまま維持させて、この細街路Rには、増減無しのコストCが対応付けられて記憶手段10に記憶される。
【0057】
そして、コストCの増加した細街路R(例えば図4の場合)は、対向車Bとのすれ違いの際に幅員が広くなった退避部Rsにおいてすれ違わなければならない程度に、幅員が狭いことになり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0058】
一方、コストCの増加しない細街路R(例えば図9の場合)は、対向車Bとのすれ違いの際に、自車Aが退避動作等の挙動を示す必要がない程度に幅員が広いことになり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては、他の国道や都道府県道、市町村道などと同様に選択されるものであっても問題は少ないと考えられ、この結果、案内経路として選択される優先度を低く評価する必要がない。
【0059】
そして、コストCが増加しないという評価の蓄積により、このコストCが増加しない細街路Rについては、コストCが増加し続ける細街路R(図4の場合)に対して、案内経路としての選択優先度を相対的に高める評価を行うこともできる。
【0060】
なお、上述した車両の挙動と所定のパターンとの関係は、これに限定されるものではない。
【0061】
すなわち、例えば図5に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは後退して退避スペースRtに後退で進入して一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させて自車Aの前を通って先に通過させ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0062】
また、例えば図6に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは対向車が曲がろうとしているT字路Rcを通り過ぎるいちまで後退して一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させてT字路Rcを曲がらせて細街路Rから抜け出させ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0063】
さらに、例えば図7に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき曲がり角に達し(同図(1))、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れない(同図(2))ため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し(同図(3))、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し(同図(4))、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し(同図(5))、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る(同図(6))、という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(2)の切り返しを伴う転舵パターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。すなわち、この細街路は幅員が狭いために、複数回の切り返し動作を行う必要があり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0064】
同様に、例えば図8に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき転回して反対方向に戻ろうとする場合(同図(1))、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し(同図(2))、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し(同図(3))、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し(同図(4))、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る(同図(5))、という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(2)の切り返しを伴う転舵パターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。すなわち、この細街路は幅員が狭いために、複数回の切り返し動作を行う必要があり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0065】
なお、図7,8に示した(2)切り返しを伴う転舵パターンにおける前進と後退との繰り返し回数は、上述した2往復に限定されるものではなく、3往復以上であってもよい。
【0066】
これらの挙動に対して、例えば図10に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、その後、前進しない(後退から1[分間]以内に前進に切り替えられない)場合は、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車と判定される。
【0067】
同様に、図11に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられた((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ)ものの、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに、再度後退して停止した挙動の場合も、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車(縦列駐車動作)と判定される。
【0068】
また、図12に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)転舵して、道路脇の広い領域Rpに進入し、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられた((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ)ものの、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに、再度後退して停止した挙動の場合も、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車と判定される。
【0069】
図13は、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、対向車Bに遭遇したため一旦停止したものの、対向車Bが退避部Rsに進入したため、自車Aは後退することなく、そのまま前進して通り過ぎた挙動を示している。
【0070】
この細街路Rは、車両A,Bのすれ違いができない程度に狭い幅員の道路であるため、本来はコストCを増加させるべき道路に相当する。
【0071】
しかし、上記の挙動は所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0072】
このように、幅員が狭い細街路Rであるにも拘わらず、コストCを増大させないのは、退避部Rsが対向車Bが走行する側に設けられていることから判断して、すれ違い動作の際に後退等のリスクを負うのは対向車B側にある、と考えるのが相当であるからである。
【0073】
つまり、自車Aが走行する側に退避部Rsが設けられている既述の図4の場合は、すれ違い動作の際に後退等のリスクを負うのは対向車A側にあるため、コストCが増加させられて、案内経路としての選択優先度が低く評価される。
【0074】
また、図14に示すように、自車Aが前進していない(同図(1))状態(ACC電源がオフの状態)から、後退しながら((a)後退し)転舵して(同図(2))、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられ((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ;図(3))、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに再度後退し((d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ;同図(4))、その後、前進に切り替えられ((e)その後、前進に切り替えられ;図(3))、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行((c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)した挙動の場合、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、駐車状態からの走り出しと判定される。
【0075】
上述した本実施形態の細街路評価収集装置50の具体的な作用、つまり車両の挙動が所定のパターン(1)または(2)に合致するか否かの判定処理と、合致したときのコストCの増加の処理と、合致しないときのコストCの維持の処理について、図3,4に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0076】
まず、車両のACC電源の信号がオンになっているか(車両が始動しているか)否かが、車両挙動I/F67により検出され、CPU周辺回路部62を介してメインCPU61により、ACC電源の信号がオンかオンでないかが判定され(ステップ1(S1))、ACC電源の信号がオンと判定したときは、メインCPU61は、記憶部74に設定された前進車速パルス検知フラグを初期的にオフにセットし(S2)、ACC電源がオンでないと判定したときは、オンになるのを待つ(S1→S1のループ処理)。
【0077】
メインCPU61が前進車速パルス検知フラグをオフにセットした(S2)後、車両挙動I/F67により前進車速パルスが検知されたか否かをメインCPU61が判定し(S3)、検知されたとメインCPU61が判定したときは、メインCPU61が記憶部74に設定されている前進車速パルス検知フラグをオンにセットし(S4)、次いで、車両挙動I/F67によりバック信号のオン(車両のトランスミッションが後退段にセレクトされている状態)が検知されたか否かをメインCPU61が判定する(S5)。
【0078】
一方、メインCPU61が前進車速パルスは検知されなかったと判定したときは、メインCPU61による処理は、ステップ4(S4)の処理を経由せずに、ステップ5(S5)の処理に進む。
【0079】
これらステップ3(S3)からステップ5(S5)の処理は、車両が前進からスタートしている(前進走行している挙動)か、後退からスタートしようとしている(駐車状態から後退で離脱しようとしている状態(実際に後退する前の状態))かを区別する処理である。
【0080】
ステップ5において、バック信号のオンが検知されたとメインCPU61が判定したときは、メインCPU61は、自車Aが現在存在している道路に対応した地図情報における道路のリンクを記憶部74に一時的に記憶させ(S6)、このリンクの種別が細街路であるか否かがメインCPU61によって判定される(S7)。
【0081】
リンクが細街路か否かの判定は、各リンクにそれぞれ対応付けられている道路の種別を特定する情報をメインCPU61が読み取ることで行われる。
【0082】
そして、本実施形態の細街路評価取得装置50は、リンクの種別が細街路であれば、案内経路として選択優先度の評価対象とし、細街路ではない種別(例えば、国道や都道府県道など)のリンク(道路)であれば、案内経路として選択優先度の評価対象としないため、メインCPU61は、その評価対象でないリンクのコストCについては増減させない(図4に示すS18)。
【0083】
なお、ステップ6(S6)において、バック信号のオンを検知したと判定した後にリンクを記憶させる理由は、所定のパターン(1)および(2)が、いずれも前進動作から後退動作に移行する挙動を含み、後退動作に移行する以前の段階で、自車Aの挙動が所定のパターン(1)または(2)に一致することはあり得ないからである。
【0084】
ステップ5(S5)においてバック信号のオンが検知されなかったとメインCPU61が判定したときは、車両のトランスミッションが未だ前進段にセレクトされていることになり、車両が後退動作を起こす前に必ず検知されるバック信号のオンを待つ。
【0085】
ただし、トランスミッションが前進段から後退段に切り替えられることなく、そのまま、ACC電源がオフに切り替えられる挙動も起こり得るため、単にバック信号のオンを待つのではなく、メインCPU61は、ACC電源がオフになったか否かも判定する(S15)。
【0086】
メインCPU61が、ACC電源がオフに切り替えられていないと判定したとき(車両挙動I/F67により、ACC電源のオフを検知されていないとき)は、ステップ2(S2)に戻り、ACC電源がオフに切り替えられていると判定したとき(車両挙動I/F67により、ACC電源のオフを検知されているとき)は、ステップ1(S1)に戻る(S15)。
【0087】
ステップ7において、自車Aが現在存在している道路に対応したリンクの種別が細街路であるとメインCPU61が判定したときは、次に、記憶部74に設定されている前進車速パルス検知フラグがオンか否かが、メインCPU61により判定される(S8)。
【0088】
ここで、前進車速パルス検知フラグがオンであれば、車両が前進からスタートした後に後退動作に切り替えられたことになる(S2〜S5)ため、所定のパターン(1)または(2)に合致する可能性があるが、一方、前進車速パルス検知フラグがオフであれば、車両が後退動作からスタートしたことになり(S2,S3,S5)、所定のパターン(1)および(2)に合致する可能性がない。
【0089】
したがって、メインCPU61が、前進車速パルス検知フラグがオフであると判定したときは、記憶部74に記憶されたリンクのコストCについては増減させない(S18)。
【0090】
メインCPU61が、前進車速パルス検知フラグがオンであると判定したときは、次に、車両挙動I/F67により後退車速パルスが検知されたか否かをメインCPU61が判定する(S9)。
【0091】
すなわち、ステップ5(S5)では、単にトランスミッションが後退段にセレクトされているか否か(バック信号が検知されたか否か)だけを判定する処理であり、車両が実際に後退で移動する挙動を起こさないと、後退での車速パルスは発生しない。
【0092】
したがって、このステップ9(S9)で後退車速パルスを検知したか否かを判定することは、実際に車両が後退で「移動した」か否かを判定するものである。
【0093】
メインCPU61が、後退車速パルスを検知したと判定したときは、次に、この後退動作が終了するのを待つ(S10→S19→S10のループ)。すなわち、前進挙動(S4)から後退挙動(S9)に切り替えられ、その後に、再度前進挙動に切り替えられるのを待つ。
【0094】
つまり、ステップ10(S10)において、車両挙動I/F67がバック信号のオフを検知したか否かをメインCPU61が判定するが、メインCPU61が、バック信号のオフを検知したと判定したときは、トランスミッションが後退段のセレクト状態から脱したことになり、後退挙動が終了したことになる。
【0095】
一方、ステップ9(S9)で、メインCPU61が、後退車速パルスを検知していないと判定したときは、次に、この後退車速パルスの検知を待つ(S9→S16→S17→S9のループ)。
【0096】
ただし、一旦、後退段がセレクトされた(S5)ものの、その後、後退車速パルスが検知されることなく、車両挙動I/F67によりパーキングブレーキ信号のオンが検知された(S16)ときは、メインCPU61は、車両が駐車状態になったと判定し、リンクのコストCを増減せずにそのまま維持させる(S18)。
【0097】
また、一旦、後退段がセレクトされた(S5)ものの、その後、後退車速パルスが検知されることなく、ACC電源がオフに切り替えられたときは(S17)、メインCPU61は、車両が駐車状態になったと判定し、リンクのコストCを増減せずにそのまま維持させる(S18)。
【0098】
次に、ステップ10(S10)において、メインCPU61が、バック信号のオフを検知していないと判定したときは、そのまま、後退挙動が継続されているか、またはACC電源がオフにされて駐車状態になったことになるが、ACC電源がオフにされたときは、所定のパターン(1)または(2)に合致することはないため、ACC電源がオフになった後まで、後退挙動が終了するのを待つ処理を継続する必要はない。
【0099】
そこで、ACC電源のオフが検知されたとメインCPU61が判定したとき(S19)は、後退挙動が終了するのを待つ処理(S10→S19→S10のループ)を脱して、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0100】
ステップ10(S10)において、メインCPU61が、バック信号のオフを検知したと判定したときは、次に、車両が前進するのを待つ(S11→S20→S11のループ)。
【0101】
つまり、ステップ11(S11)において、車両挙動I/F67が前進車速パルスを検知したか否かをメインCPU61が判定するが、メインCPU61が、前進車速パルスを検知したと判定したときは、車両が前進していることになる。
【0102】
一方、メインCPU61が、前進車速パルスを検知していないと判定したときは、トランスミッションが後退段のセレクト状態から脱した(S10)ものの、前進挙動に移行していないか、またはACC電源がオフにされて駐車状態になったことになるが、ACC電源がオフにされたときは、所定のパターン(1)または(2)に合致することはないため、ACC電源がオフになった後まで、前進挙動の開始を待つ処理を継続する必要はない。
【0103】
そこで、ACC電源のオフが検知されたとメインCPU61が判定したとき(S20)は、前進挙動の開始を待つ処理(S11→S20→S11のループ)を脱して、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0104】
次に、前進車速パルスの検知により車両の前進挙動を検出したとき(S11→S12)は、バック信号のオフ検知(S10)から前進車速パルス検知(S11)までに要した時間が1[分間]以内か否かを、メインCPU61が判定する(S12)。この時間の計測は、例えばCPU周辺回路部62等が備えている内部クロックなどを参照することによって行われる。
【0105】
ステップ12(S12)における判定において、その時間が1[分間]を超えるとメインCPU61が判定したときは、車両の挙動は駐車であると判定し、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0106】
一方、ステップ12(S12)における判定において、その時間が1[分間]以内であるとメインCPU61が判定したときは、次に、車両挙動I/F67が、その前進が20[m]以上継続したことを検知したか否かを、メインCPU61が判定する(S13)。
【0107】
この20[m]という距離の検知は、車両挙動I/F67が検知した前進車速パルスのパルス数をCPU周辺回路部62によって計数する等して行うことができる。
【0108】
ステップ13(S13)において、前進が20[m]以上継続したとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動が所定のパターン(1)(対向車とのすれ違いパターン)に合致するため、メインCPU61は、コストCを増加させる(C→C+1)処理を行い(S14)、ステップ1(S1)に戻る。
【0109】
一方、ステップ13(S13)において、前進が20[m]未満しか継続しなかったとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動は所定のパターン(1)(対向車とのすれ違いパターン)に合致はしないが、所定のパターン(2)(切り返しを伴う転舵パターン)に合致する可能性があるため、このステップ5(S5)に戻り、その後の処理を、上述した処理と同様に繰り返す。
【0110】
そして、その繰り返しの処理において、ステップ18(S18)の処理(リンクのコストCをそのまま維持させる処理)に達することなく、ステップ13(S13)まで戻り、このステップ13(S13)において、前進が20[m]以上継続したとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動が所定のパターン(2)(切り返しを伴う転舵パターン)に合致するため、メインCPU61は、コストCを増加させる(C→C+1)処理を行い(S14)、ステップ1(S1)に戻る。
【0111】
以上のようにして、記憶手段10には、各細街路R(に対応した各リンク)ごとにコストCが設定され、このコストCの大きさに応じて、メインCPU61は各細街路Rについおて、ナビゲーション用の案内経路としての選択優先度を評価する。
【0112】
すなわち、コストCの値が小さい細街路Rについては、対向車とのすれ違いにおいて難のある操作を要するパターン(1)や、転舵の際に何回も切り返し操作を行う必要があるパターン(2)に合致する挙動を呈さないため、例え細街路Rとして一括りにされている道路であっても、国道や都道府県道など細街路以外の種別の道路と同様に、ナビゲーション用の案内経路として選択されやすい評価とする。
【0113】
一方、コストCの値が大きい細街路Rについては、対向車とのすれ違いにおいて難のある操作を要するパターン(1)や、転舵の際に何回も切り返し操作を行う必要があるパターン(2)に合致する挙動を呈するため、ナビゲーション用の案内経路として選択される優先度を従来通り低い評価とする。
【0114】
以上のように、本実施形態に係る細街路評価収集装置およびその作用である細街路評価収集方法(本発明に係る細街路評価収集方法の一実施形態)によれば、細街路Rという一つの種別に区分されている道路であっても、個々の道路ごとに選択優先度を設定することができる。
【0115】
しかも、その選択優先度の設定は、運転者等使用者が手動で逐一行うのではなく、車両を走行させて、その挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0116】
なお、上記予め設定された所定のパターンとしては、上述した(1)すれ違いパターンや(2)切り返しパターンだけに限定されるものではなく、例えば、幅員が狭い道路であることに起因した、通常の走行における挙動(略定速での前進走行)とは異なる複数の挙動を組み合わせたパターンとして設定しておくことができる。
【0117】
図15は、本発明に係る地図情報更新システムの一実施形態を示すブロック図である。この実施形態の地図情報更新システム200は、車載されるものではなく、適当な基地局のサーバ等に接続されたものであり、記憶手段110(地図情報記憶手段)に記憶された地図情報(デジタル地図)について、各車両に搭載された細街路評価収集装置50,50,…(車載ナビゲーション装置100,100,…)から送られた、細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示すコストC(指標値)を、その地図情報における各細街路に対応付けて蓄積更新することにより、細街路ごとに、案内経路としての評価がなされた信頼性のある地図情報を提供可能としたものである。
【0118】
すなわち、この地図情報更新システム200は、案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された記憶手段110と、記憶手段110に記憶された地図情報を読み出して、地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を再び記憶手段110に記憶させる地図情報更新手段120と、1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置50,50,…(車載ナビゲーション装置100,100,…)により評価された、細街路RごとのコストCの供給を受ける指標値受信手段130と、を備え、地図情報は、その内容として含まれる個々の細街路RごとにコストCが対応付けられたものであり、地図情報更新手段120は、受信手段130により受信された細街路RごとのコストCを、地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新するものである。
【0119】
そして、このように構成された実施形態の地図情報更新システム200によれば、指標値受信手段130が、各車両にそれぞれ搭載された細街路評価収集装置50,50,…により評価された細街路RごとのコストCを受信すると、地図情報更新手段120が、記憶手段110に記憶された地図情報を読み出し、指標値受信手段130により受信された細街路RごとのコストCを、読み出した地図情報において対応する細街路Rの評価として蓄積して更新したうえで、この更新された後の地図情報を記憶手段110に記憶させ直す。
【0120】
そして、この地図情報の内容として細街路Rごとに対応付けられたコストCによる選択優先度の評価は、実際に車両が走行した結果に基づいたものであるため、実状に精度よく対応した評価となる。
【0121】
したがって、この記憶手段110に記憶された地図情報を、VICS(登録商標)等におけるFM電波や光ビーコン、電波ビーコン、またはその他の通信手段(携帯電話やPHSなどを利用した通信手段)を利用して、車載ナビゲーション装置100,100,…に配信し、各車両の車載ナビゲーション装置100,100,…は、この配信された地図情報を用いて経路案内を行うことで、個々の細街路Rごとに対応付けられた精度のよい評価(選択優先度についての評価)に基づいて経路案内を行うことができ、従来の車載ナビゲーション装置100であれば、選択される優先度が一律に低かった細街路であっても、個々の道路Rごとに選択される可能性が増減し、案内経路の選択自由度が高められ、経路選択の柔軟性が高められる。
【符号の説明】
【0122】
10 記憶手段
20 指標値収集手段
30 挙動比較手段
40 車両挙動検出手段
50 細街路評価収集装置
100 車載ナビゲーション装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、細街路評価収集方法および細街路評価収集装置並びに収集された細街路評価に基づく地図情報更新システムに関し、詳細には、個々の細街路の評価に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載のナビゲーション装置において現在用いられているデジタル地図(地図情報)のうち経路案内に用いられる道路は、そのリンクに、道路の種別(属性)を特定する情報が付されている。
【0003】
この道路の種別を特定する情報は、高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道、細街路などであるが、このうち細街路は、他の種別に属さない道路、すなわち高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道等を除いた残りの道路(いわゆる生活道路など)が全て区分けされており、対面通行可能な広い幅員の道路も、すれ違いができないほど狭い幅員の道路も、一括りにされている(特許文献1)。
【0004】
そして、幅員が狭い細街路は、運転に不慣れなドライバーにとって通行のしにくい道路であるため、経路を案内するナビゲーション装置では通常、細街路自体が、案内用の経路として選択される優先度(以下、選択優先度という。)の低いものとされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−041761号公報
【特許文献2】特開平9−287965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、全ての細街路が幅員の狭い道路とは限らず、細街路に区分されていても、国道、都道府県道、市町村道等に匹敵するような広い幅員を有する道路もある。
【0007】
そして、そのように広い幅員の道路であれば、例え細街路に区分されているものであったとしても、幅員の広さに応じた走行のしやすさという観点では、他の種別の道路(国道、都道府県道、市町村道等)と同程度と考えられるため、案内用の経路として他の種別の道路と同程度の優先度で選択されても、特段の問題は生じないと考えられる。
【0008】
一方、細街路に区分けられた道路のうち、対向車とすれ違いができない程度の幅員しかない道路については、案内用の経路として選択される優先度を、引き続き低く抑制しておくべきである。
【0009】
このように、細街路という種別に一括りにされた道路であっても、個々の道路の状況に応じて案内用の経路として選択される優先度を評価するのが好ましい。
【0010】
しかし、細街路という種別に区分される道路は、高速自動車国道や他の国道等と比較すると、地図データとして十分な整備や頻繁な更新が行われていないのが実状であり、細街路に区分けされている個々の道路について、案内経路としての評価を行うのは困難である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、運転者が手動で逐一設定を行うことなく、個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す評価を収集することのできる細街路評価収集方法および細街路評価収集装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
さらに、本発明は、そのようにして収集された細街路の評価に基づいてその細街路を含む地図情報を逐次更新することのできる細街路評価に基づく地図情報更新システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、評価対象の細街路を走行したときの、自車に対して行った運転操作に応じた車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動が、所定のパターンに合致したか否かに応じて、その細街路に対する評価(選択されにくい度合いを示す指標値による評価)を収集するものである。
【0014】
すなわち、本発明に係る細街路評価収集方法は、細街路を走行する車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動を、予め設定された所定のパターンと比較し、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることで、前記細街路ごとの前記指標値を収集する(案内経路として選択されにくさを評価する)ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る細街路評価収集装置は、細街路を走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段と、前記車両挙動検出手段によって検出された前記挙動と前記記憶手段に記憶された前記パターンとを比較する挙動比較手段と、前記挙動比較手段による比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させるように、前記細街路についての前記指標値を設定し、前記細街路に対応した前記指標値のことにより、前記細街路ごとの前記指標値を収集する(案内経路として選択されにくさを評価する)指標値収集手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、本発明の細街路評価収集方法および細街路評価収集装置における、予め設定されたパターンとしては、例えば、幅員の狭い道路における対向車を回避するために必要とされる車両の挙動のパターン(すれ違いパターン)や、幅員の狭い道路における曲がり角を曲がるために必要とされる車両の挙動のパターン(切り返しパターン)などを適用可能である。
【0017】
このような所定のパターンは、主として、車両の前進・後退という挙動の組合せであって、前進から後退に切り替えられた時点から前進に再度切り替えられる時点までの経過時間、およびその後退から前進に切り替えられた時点からの前進での走行距離などである。
【0018】
具体的には、例えば下記(1)の対向車とのすれ違いパターンや、(2)の切り返しを伴う転舵パターンは、上記所定のパターンに該当する。
(1)対向車とのすれ違いパターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動
(2)切り返しを伴う転舵パターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ、(e)その後、前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動((d)と(e)との間で、(b)と(d)との組合せを複数回繰り返す挙動((a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)や、(a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)など)も含む。)
ここで、例示した上記(1)の挙動は、通常に走行している((a)前進している)とき対向車と遭遇したため、停止して後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、対向車にすれ違いをさせた後、前進して((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え)通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0019】
また、例示した上記(2)の挙動は、通常に走行して曲がり角に達し、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れないため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0020】
このように構成された本発明に係る細街路評価収集方法によれば、細街路を走行する車両の挙動を検出し、この検出された車両の挙動を所定のパターンと比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、細街路が案内経路として選択されにくい度合いの指標値を増大させ、この指標値の大きい道路に対して、幅員が狭い等の理由により、案内経路として選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0021】
また、このように構成された本発明に係る細街路評価収集装置によれば、車両挙動検出手段が、細街路を走行する車両の挙動を検出し、挙動比較手段が、この車両挙動検出手段によって検出された車両の挙動を、記憶手段に記憶された所定のパターンと比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、指標値収集手段が、細街路が案内経路として選択されにくい度合いの指標値を増大させ、この指標値の大きい道路に対して、幅員が狭い等の理由により、選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0022】
例えば、自車が上記例示(1)に示した挙動を示す場合、走行している細街路が、減速することなく通常の走行状態のままで対向車とすれ違うのが困難な程度に幅員の狭い道路であることになり、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、車両がこのような挙動を呈しなければならない道路に対して、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値(コスト)を増大させることにより、この道路が案内経路として選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0023】
同様に、自車が上記例示(2)に示した挙動を示す場合、走行している細街路が、曲がり角を1回の操舵で曲がるのが困難な程度に幅員の狭い道路であることになり、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置は、車両がこのような挙動を呈しなければならない道路に対して、指標値を増大させることにより、この道路が選択される優先度(選択優先度)を低くする評価を行う。
【0024】
一方、本発明に係る細街路評価収集方法は、検出された車両の挙動が所定のパターン(例えば上記(1)のすれ違いパターンや上記(2)の切り返しパターンなど)に合致しないときは、コストを増減させずにそのまま維持させるため、この道路に対するコストは増大せず、したがって、細街路のうち指標値が増大(選択優先度を低く評価)した他の道路と比較した相対的な評価として、この道路に対する選択優先度を高めた評価を行うことができる。
【0025】
同様に、本発明に係る細街路評価収集装置は、車両挙動検出手段によって検出された車両の挙動が記憶手段に記憶された所定のパターン(例えば上記(1)のすれ違いパターンや上記(2)の切り返しパターンなど)に合致しないときは、指標値収集手段が、指標値を増減させずにそのまま維持させるため、この道路に対する指標値は増大せず、したがって、細街路のうち指標値が増大(選択優先度を低く評価)した他の道路と比較した相対的な評価として、この道路に対する選択優先度を高める評価を行うことができる。
【0026】
以上のように、本発明に係る細街路評価収集方法および細街路評価収集装置によれば、細街路という一つの種別に区分されている道路であっても、個々の道路ごとに選択優先度を設定することができる。
【0027】
しかも、その選択優先度の設定は、運転者が手動で逐一行うのではなく、車両を走行させて、その挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0028】
なお、上記予め設定された所定のパターンとしては、上述した(1)すれ違いパターンや(2)切り返しパターンだけに限定されるものではなく、例えば、幅員が狭い道路であることに起因した、通常の走行における挙動(略定速での前進走行)とは異なる複数の挙動を組み合わせたパターンとして設定しておくことができる。
【0029】
また、本発明に係る地図情報更新システムは、地図情報記憶手段に記憶された地図情報について、各車両に搭載された細街路評価収集装置から送られた、細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値(評価)を、その地図情報における各細街路に対応付けて蓄積更新することにより、細街路ごとに、案内経路としての評価がなされた信頼性のある地図情報を提供可能としたものである。
【0030】
すなわち、本発明に係る地図情報更新システムは、案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された地図情報記憶手段と、前記地図情報記憶手段に記憶された前記地図情報を読み出して、前記地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を前記地図情報記憶手段に記憶させる地図情報更新手段と、1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置により評価された、前記細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値の供給を受ける指標値受信手段と、を備え、前記地図情報は、前記内容として含まれる個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値が対応付けられたものであり、前記地図情報更新手段は、前記指標値受信手段により受信された前記細街路ごとの指標値を、前記地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新することを特徴とする。
【0031】
このように構成された本発明に係る地図情報更新システムによれば、指標値受信手段が、車両に搭載された細街路評価収集装置により評価された細街路ごとの指標値(評価)を受信すると、地図情報更新手段が、地図情報記憶手段に記憶された地図情報を読み出し、指標値受信手段により受信された細街路ごとの指標値を、読み出した地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新したうえで、この更新された後の地図情報を、地図情報記憶手段に記憶させ直す。
【0032】
そして、この地図情報の内容として細街路ごとに対応付けられた評価は、実際に車両が走行した結果に基づいたものであるため、実状に精度よく対応した評価となり、ナビゲーション装置やナビゲーションシステムにおいて、この地図情報を利用した経路案内を行う場合に、個々の細街路に対応付けられた精度のよい評価に基づいて、経路案内を行うことで、従来のナビゲーション装置やナビゲーションシステムであれば、選択される優先度が一律に低かった細街路であっても、個々の道路ごとに選択される可能性が増減し、案内経路の選択自由度が高められ、経路選択の柔軟性が高められる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る細街路評価方法および細街路評価装置によれば、個々の細街路の選択優先度を、運転者が手動で逐一設定を行うことなく、走行する車両の挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0034】
しかも、個々の細街路に対して設定された選択優先度は、実際に車両が走行したことによって設定された選択優先度であるため、実状に相応したものとすることができる。
【0035】
また、本発明に係る地図情報更新システムによれば、本発明に係る細街路評価方法や細街路評価装置によって設定された細街路の選択優先度の評価に基づいて、その細街路を含む地図情報を逐次更新することのできる。
【0036】
したがって、そのように個々の細街路に対して選択優先度が設定された地図情報を、ナビゲーション装置による経路案内に用いることにより、細街路として一括りにされている道路であっても、個々の道路ごとに案内経路としての選択度合いに差異を与えることができ、ナビゲーション装置が提示する案内経路を多様化させることができる。
【0037】
また、本発明に係る地図情報更新システムによれば、実際に車両が走行して収集された細街路の評価に基づいてその細街路を含む地図情報を逐次更新することのでき、地図情報ににおける個々の細街路について、実状に精度よく対応した評価を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図であり、(a)は本発明の実施形態に係る細街路評価収集装置50、(b)は(a)の細街路評価収集装置を一部に備えた車載ナビゲーション装置、をそれぞれ示す。
【図2】図1(a)に示した細街路評価収集装置の作用であって、本発明の実施形態に係る細街路評価収集方法を示すフローチャート(その1)である。
【図3】図1(a)に示した細街路評価収集装置の作用であって、本発明の実施形態に係る細街路評価収集方法を示すフローチャート(その2)である。
【図4】コストを増加させる細街路の一例(その1)を示す図である。
【図5】コストを増加させる細街路の一例(その2)を示す図である。
【図6】コストを増加させる細街路の一例(その3)を示す図である。
【図7】コストを増加させる細街路の一例(その4)を示す図である。
【図8】コストを増加させる細街路の一例(その5)を示す図である。
【図9】コストを増加させない細街路の一例(その1)を示す図である。
【図10】コストを増加させない細街路の一例(その1)を示す図である。
【図11】コストを増加させない細街路の一例(その2)を示す図である。
【図12】コストを増加させない細街路の一例(その3)を示す図である。
【図13】コストを増加させない細街路の一例(その4)を示す図である。
【図14】コストを増加させない細街路の一例(その5)を示す図である。
【図15】本発明の実施形態に係る地図情報更新システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る細街路評価収集装置および細街路評価収集方法並びにこの細街路評価収集装置によって収集された細街路評価に基づいた地図情報の更新システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0040】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る細街路評価収集装置50の基本的な構成を示すブロック図である。
【0041】
すなわち、この細街路評価収集装置50は、細街路Rを走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段40と、車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段10と、車両挙動検出手段40によって検出された挙動と記憶手段10に記憶されたパターンとを比較する挙動比較手段30と、挙動比較手段30による比較の結果、車両挙動検出手段40によって検出された挙動が記憶手段10に記憶されたパターンに合致したときは、細街路Rが、車載ナビゲーション装置により案内される経路(案内経路)として選択されにくい度合いを示す指標値(以下、コストCという。)を増大させ、比較の結果、車両挙動検出手段40によって検出された挙動が記憶手段10に記憶されたパターンに合致しないときは、コストCを増減させずにそのまま維持させることにより、細街路RごとのコストCを収集する指標値収集手段20と、を備えた構成である。
【0042】
この細街路評価収集装置50は、例えば、同図(b)の車載ナビゲーション装置100の一部として組み込まれて構成されている。
【0043】
すなわち、この車載ナビゲーション装置100は、自車の絶対位置・絶対方位を検出する例えばGPS(アンテナ、レシーバを含む)等の絶対位置方位検出部66と、ジャイロ等を利用した方位の変化を検出する相対方位検出部65と、車速パルス、バック(後退)信号のオン・オフ、キースイッチのアクセサリ(ACC)信号オン・オフ、およびパーキング信号オン・オフ等の自車の挙動である車両情報を検出する車両挙動インターフェース(I/F)67と、この車載ナビゲーション装置100の全体の制御を司るメインCPU61と、このメインCPU61の周辺回路部62と、ナビゲーション用の地図や各種操作や各種設定のメニュー等を表示する表示部72と、使用者による各種設定や選択等が入力される入力部71と、起動時等にメインCPU61によってアクセスされるFLASH−ROM、ナビゲーションプログラムや細街路評価収集プログラム等がロードされるダイナミックRAM(DRAM)、電源オフから電源オンに切り替えられた際にメモリの内容を保持して、電源オフ時にも内容の消失を防止するスタティックRAM(SRAM)、および表示部72用に設けられたビデオRAM(VRAM)を有する記憶部74と、表示部72および入力部71とCPU61とを間に設けられたユーザインターフェース(I/F)73と、FM放送波に含まれた交通情報等各種情報を抽出するFM多重放送受信・処理部63と、VICS(登録商標)による交通情報等を検出するVICS情報検出部(光ビーコン、電波ビーコン等)64と、使用者が発声した音声を入力情報として検出する音声認識部69と、ナビゲーションによる経路の案内を音声で出力する音声出力部70と、HDD(ハードディスクドライブ)やDVD−ROM、CD−ROMに記録されたナビゲーション用の地図情報(デジタル地図)およびナビゲーション用プログラム等を読み取る記憶メディア部68とを備えている。
【0044】
そして、この車載ナビゲーション装置100は、メインCPUおよびCPU周辺回路部62の制御の下、記憶メディア部68がHDD等からナビゲーション用プログラムおよび地図情報を読み出して記憶部74に一時記憶させ、一方、絶対位置方位検出部66で検出された絶対位置および絶対方位と相対方位検出部65で検出された方位の変化とを用いて、自車の逐次の位置を精度よく検出し、記憶部74に一時記憶された地図情報における、この検出された自車の位置に対応する周辺地図を表示部72に表示する。
【0045】
また、使用者が、入力部71に、目的地を入力すると、記憶部74に一時記憶されたナビゲーション用のプログラムが、自車の現在位置から目的地に至る案内経路を求めて、この案内経路を表示部72に表示するとともに、案内経路上における曲がり角等進路変更ポイントごとに、音声出力部70がその進路変更の案内を音声で出力して、道案内を行う。
【0046】
ここで、図1(a)の車両挙動検出手段40は同図(b)の車両挙動I/F67に対応し、同図(a)の記憶手段10は同図(b)の記憶部74に対応し、同図(a)の指標値収集手段20および挙動比較手段30は同図(b)のメインCPU61およびCPU周辺回路部62に対応している。
【0047】
また、ナビゲーション用の地図情報は、そこに含まれた道路の情報が、リンクとノードとによって表現されたデジタル地図であり、各リンクには、その道路の種別(属性)を特定する情報(高速自動車国道、自動車専用道路、国道、都道府県道、市町村道、細街路など)と、この道路の種別を特定する情報が「細街路」のときは、個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを表す指標値(コストC)が付されている。
【0048】
なお、このコストCは、車両I/F67(車両挙動検出手段40)により検出された自車の挙動が予め設定された所定のパターン(後述する対向車とのすれ違いパターンや、切り返し動作を伴う転舵パターンは、)に一致するときは、メインCPU61およびCPU周辺回路部62により増加され(C→C+1)、所定のパターンに一致しないときは、メインCPU61およびCPU周辺回路部62により増減なくそのまま維持されて(C→C)、記憶部74に記憶される。
【0049】
なお、この記憶部74に記憶された各細街路ごとのコストCは、車両のACC電源がオフに切り替えられても、消失することなく保持されるため、車両のACC電源が次回オンに切り替えられたとき、ACC電源がオフに切り替えられる直前の値を維持している。
【0050】
ここで、上述した、予め設定された車両の所定のパターンは、記憶部73に記憶されているが、使用者が入力部71に新たな挙動のパターンを入力することで、予め設定された所定のパターンとして追加的に登録、設定することもできるし、予め設定されている所定のパターンを書き換えることもできる。
【0051】
本実施形態において記憶部74(記憶手段10)に予め記憶されている所定のパターンは、下記の2つのパターン((1)対向車とのすれ違いパターン、(2)切り返しを伴う転舵パターン)である。ただし、これら2つの所定のパターンは例示に過ぎず、他の、コストCの増加となる挙動のパターンを、所定のパターンとして適用することももちろん可能である。
(1)対向車とのすれ違いパターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動
(2)切り返しを伴う転舵パターン
(a)前進した後に後退し、(b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ、(d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ、(e)その後、前進に切り替えられ、(c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行した挙動((d)と(e)との間で、(b)と(d)との組合せを複数回繰り返す挙動((a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)や、(a)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(b)→(d)→(e)→(c)など)も含む。)
ここで、例示した上記(1)の挙動のパターンは、通常に走行している((a)前進している)とき対向車と遭遇したため、停止して後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、対向車にすれ違いをさせた後、前進して((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え)通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0052】
また、例示した上記(2)の挙動のパターンは、通常に走行して曲がり角に達し、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れないため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る挙動を示している。
【0053】
次に、本実施形態の細街路評価収集装置50の作用について説明する。
【0054】
まず、この細街路評価収集装置50(車載ナビゲーション装置100)を搭載した車両が、細街路Rを走行しているとき、車両挙動検出手段40が、細街路Rを走行する車両の挙動を検出し、挙動比較手段30が、この車両挙動検出手段40によって検出された車両の挙動を、記憶手段10に記憶された所定のパターン(上記(1)対向車とのすれ違いパターンおよび(2)切り返しを伴う転舵パターン)とそれぞれ比較し、検出された車両の挙動が所定のパターンに合致したときは、指標値収集手段20が、細街路Rがナビゲーション用の案内経路として選択されにくい度合いの指標値であるコストCの値を増加させ、このコストCの値が大きくなった道路に対して、幅員が狭い等の理由により、選択優先度(選択される優先度)を低くする評価を行い、この細街路Rに対応するリンクに、値の増加したコストCを対応付け直して、記憶手段40に記憶させ直す。
【0055】
例えば、図4に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは後退して退避部Rsで一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させて自車Aとすれ違いさせ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0056】
一方、例えば図9に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇しても(同図(a))、自車Aが、停止したり後退するなどの挙動がなく、そのまま前進走行を続行した場合(同図(2))、すなわち、(1)や(2)の所定のパターンに合致しないときは、細街路Rの幅員は広いと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増減させずにその値のまま維持させて、この細街路Rには、増減無しのコストCが対応付けられて記憶手段10に記憶される。
【0057】
そして、コストCの増加した細街路R(例えば図4の場合)は、対向車Bとのすれ違いの際に幅員が広くなった退避部Rsにおいてすれ違わなければならない程度に、幅員が狭いことになり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0058】
一方、コストCの増加しない細街路R(例えば図9の場合)は、対向車Bとのすれ違いの際に、自車Aが退避動作等の挙動を示す必要がない程度に幅員が広いことになり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては、他の国道や都道府県道、市町村道などと同様に選択されるものであっても問題は少ないと考えられ、この結果、案内経路として選択される優先度を低く評価する必要がない。
【0059】
そして、コストCが増加しないという評価の蓄積により、このコストCが増加しない細街路Rについては、コストCが増加し続ける細街路R(図4の場合)に対して、案内経路としての選択優先度を相対的に高める評価を行うこともできる。
【0060】
なお、上述した車両の挙動と所定のパターンとの関係は、これに限定されるものではない。
【0061】
すなわち、例えば図5に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは後退して退避スペースRtに後退で進入して一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させて自車Aの前を通って先に通過させ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0062】
また、例えば図6に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき対向車Bと遭遇し、この細街路Rの幅員が狭いため対向車とのすれ違いが困難となった場合(同図(1))、自車Aは対向車が曲がろうとしているT字路Rcを通り過ぎるいちまで後退して一時停止し(同図(2))、この一時停止の期間中に、対向車Bに前進させてT字路Rcを曲がらせて細街路Rから抜け出させ(同図(3))、その後に、自車Aは通常の前進走行に戻る(同図(4))という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(1)の対向車とのすれ違いパターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0063】
さらに、例えば図7に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき曲がり角に達し(同図(1))、前進し((a)前進している)ながら転舵したところ、1回の操舵で曲がり切れない(同図(2))ため、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し(同図(3))、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し(同図(4))、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し(同図(5))、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る(同図(6))、という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(2)の切り返しを伴う転舵パターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。すなわち、この細街路は幅員が狭いために、複数回の切り返し動作を行う必要があり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0064】
同様に、例えば図8に示すように、自車Aが、細街路Rを通常走行(前進走行)しているとき転回して反対方向に戻ろうとする場合(同図(1))、停止して後退し((a)後退し)ながら切り返し(同図(2))、次いで前進し((b)後退から1[分間]以内に前進に切り替え、)ながら切り返し(同図(3))、再度後退し((d)前進で20[m]未満の走行で、後退に切り替え)ながら切り返し(同図(4))、再度前進して通常の走行((c)切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)に戻る(同図(5))、という一連の挙動が、車両挙動検出手段40によって検出されたとき、この挙動は、挙動比較手段30により、上記(2)の切り返しを伴う転舵パターンに合致すると判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させ、この細街路Rには、増加したコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。すなわち、この細街路は幅員が狭いために、複数回の切り返し動作を行う必要があり、車載ナビゲーション装置100によって提示される案内経路としては好ましくないため、案内経路として選択される優先度を低く評価する。
【0065】
なお、図7,8に示した(2)切り返しを伴う転舵パターンにおける前進と後退との繰り返し回数は、上述した2往復に限定されるものではなく、3往復以上であってもよい。
【0066】
これらの挙動に対して、例えば図10に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、その後、前進しない(後退から1[分間]以内に前進に切り替えられない)場合は、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車と判定される。
【0067】
同様に、図11に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)、道路脇(乃至退避領域)に寄せて停止し、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられた((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ)ものの、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに、再度後退して停止した挙動の場合も、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車(縦列駐車動作)と判定される。
【0068】
また、図12に示すように、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、一旦停止し、後退しながら((a)後退し)転舵して、道路脇の広い領域Rpに進入し、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられた((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ)ものの、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに、再度後退して停止した挙動の場合も、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、路肩への駐車と判定される。
【0069】
図13は、自車Aが通常に走行している((a)前進している)とき、対向車Bに遭遇したため一旦停止したものの、対向車Bが退避部Rsに進入したため、自車Aは後退することなく、そのまま前進して通り過ぎた挙動を示している。
【0070】
この細街路Rは、車両A,Bのすれ違いができない程度に狭い幅員の道路であるため、本来はコストCを増加させるべき道路に相当する。
【0071】
しかし、上記の挙動は所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。
【0072】
このように、幅員が狭い細街路Rであるにも拘わらず、コストCを増大させないのは、退避部Rsが対向車Bが走行する側に設けられていることから判断して、すれ違い動作の際に後退等のリスクを負うのは対向車B側にある、と考えるのが相当であるからである。
【0073】
つまり、自車Aが走行する側に退避部Rsが設けられている既述の図4の場合は、すれ違い動作の際に後退等のリスクを負うのは対向車A側にあるため、コストCが増加させられて、案内経路としての選択優先度が低く評価される。
【0074】
また、図14に示すように、自車Aが前進していない(同図(1))状態(ACC電源がオフの状態)から、後退しながら((a)後退し)転舵して(同図(2))、その後、後退から1[分間]以内に前進に切り替えられ((b)後退に切り替えられた時点からの経過時間が1[分間]以内に前進に切り替えられ;図(3))、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行せずに再度後退し((d)その切り替えられた後の前進で20[m]未満の走行で、再度、後退に切り替えられ;同図(4))、その後、前進に切り替えられ((e)その後、前進に切り替えられ;図(3))、その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行((c)その切り替えられた後の前進で20[m]以上走行)した挙動の場合、挙動比較手段30により、所定のパターン(1)にも(2)にも合致しないと判定され、この結果、指標値収集手段20は、この細街路RのコストCを増加させず、この細街路Rには、増加しないコストCが対応付けられた記憶手段10に記憶される。なお、この車両の挙動は、駐車状態からの走り出しと判定される。
【0075】
上述した本実施形態の細街路評価収集装置50の具体的な作用、つまり車両の挙動が所定のパターン(1)または(2)に合致するか否かの判定処理と、合致したときのコストCの増加の処理と、合致しないときのコストCの維持の処理について、図3,4に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0076】
まず、車両のACC電源の信号がオンになっているか(車両が始動しているか)否かが、車両挙動I/F67により検出され、CPU周辺回路部62を介してメインCPU61により、ACC電源の信号がオンかオンでないかが判定され(ステップ1(S1))、ACC電源の信号がオンと判定したときは、メインCPU61は、記憶部74に設定された前進車速パルス検知フラグを初期的にオフにセットし(S2)、ACC電源がオンでないと判定したときは、オンになるのを待つ(S1→S1のループ処理)。
【0077】
メインCPU61が前進車速パルス検知フラグをオフにセットした(S2)後、車両挙動I/F67により前進車速パルスが検知されたか否かをメインCPU61が判定し(S3)、検知されたとメインCPU61が判定したときは、メインCPU61が記憶部74に設定されている前進車速パルス検知フラグをオンにセットし(S4)、次いで、車両挙動I/F67によりバック信号のオン(車両のトランスミッションが後退段にセレクトされている状態)が検知されたか否かをメインCPU61が判定する(S5)。
【0078】
一方、メインCPU61が前進車速パルスは検知されなかったと判定したときは、メインCPU61による処理は、ステップ4(S4)の処理を経由せずに、ステップ5(S5)の処理に進む。
【0079】
これらステップ3(S3)からステップ5(S5)の処理は、車両が前進からスタートしている(前進走行している挙動)か、後退からスタートしようとしている(駐車状態から後退で離脱しようとしている状態(実際に後退する前の状態))かを区別する処理である。
【0080】
ステップ5において、バック信号のオンが検知されたとメインCPU61が判定したときは、メインCPU61は、自車Aが現在存在している道路に対応した地図情報における道路のリンクを記憶部74に一時的に記憶させ(S6)、このリンクの種別が細街路であるか否かがメインCPU61によって判定される(S7)。
【0081】
リンクが細街路か否かの判定は、各リンクにそれぞれ対応付けられている道路の種別を特定する情報をメインCPU61が読み取ることで行われる。
【0082】
そして、本実施形態の細街路評価取得装置50は、リンクの種別が細街路であれば、案内経路として選択優先度の評価対象とし、細街路ではない種別(例えば、国道や都道府県道など)のリンク(道路)であれば、案内経路として選択優先度の評価対象としないため、メインCPU61は、その評価対象でないリンクのコストCについては増減させない(図4に示すS18)。
【0083】
なお、ステップ6(S6)において、バック信号のオンを検知したと判定した後にリンクを記憶させる理由は、所定のパターン(1)および(2)が、いずれも前進動作から後退動作に移行する挙動を含み、後退動作に移行する以前の段階で、自車Aの挙動が所定のパターン(1)または(2)に一致することはあり得ないからである。
【0084】
ステップ5(S5)においてバック信号のオンが検知されなかったとメインCPU61が判定したときは、車両のトランスミッションが未だ前進段にセレクトされていることになり、車両が後退動作を起こす前に必ず検知されるバック信号のオンを待つ。
【0085】
ただし、トランスミッションが前進段から後退段に切り替えられることなく、そのまま、ACC電源がオフに切り替えられる挙動も起こり得るため、単にバック信号のオンを待つのではなく、メインCPU61は、ACC電源がオフになったか否かも判定する(S15)。
【0086】
メインCPU61が、ACC電源がオフに切り替えられていないと判定したとき(車両挙動I/F67により、ACC電源のオフを検知されていないとき)は、ステップ2(S2)に戻り、ACC電源がオフに切り替えられていると判定したとき(車両挙動I/F67により、ACC電源のオフを検知されているとき)は、ステップ1(S1)に戻る(S15)。
【0087】
ステップ7において、自車Aが現在存在している道路に対応したリンクの種別が細街路であるとメインCPU61が判定したときは、次に、記憶部74に設定されている前進車速パルス検知フラグがオンか否かが、メインCPU61により判定される(S8)。
【0088】
ここで、前進車速パルス検知フラグがオンであれば、車両が前進からスタートした後に後退動作に切り替えられたことになる(S2〜S5)ため、所定のパターン(1)または(2)に合致する可能性があるが、一方、前進車速パルス検知フラグがオフであれば、車両が後退動作からスタートしたことになり(S2,S3,S5)、所定のパターン(1)および(2)に合致する可能性がない。
【0089】
したがって、メインCPU61が、前進車速パルス検知フラグがオフであると判定したときは、記憶部74に記憶されたリンクのコストCについては増減させない(S18)。
【0090】
メインCPU61が、前進車速パルス検知フラグがオンであると判定したときは、次に、車両挙動I/F67により後退車速パルスが検知されたか否かをメインCPU61が判定する(S9)。
【0091】
すなわち、ステップ5(S5)では、単にトランスミッションが後退段にセレクトされているか否か(バック信号が検知されたか否か)だけを判定する処理であり、車両が実際に後退で移動する挙動を起こさないと、後退での車速パルスは発生しない。
【0092】
したがって、このステップ9(S9)で後退車速パルスを検知したか否かを判定することは、実際に車両が後退で「移動した」か否かを判定するものである。
【0093】
メインCPU61が、後退車速パルスを検知したと判定したときは、次に、この後退動作が終了するのを待つ(S10→S19→S10のループ)。すなわち、前進挙動(S4)から後退挙動(S9)に切り替えられ、その後に、再度前進挙動に切り替えられるのを待つ。
【0094】
つまり、ステップ10(S10)において、車両挙動I/F67がバック信号のオフを検知したか否かをメインCPU61が判定するが、メインCPU61が、バック信号のオフを検知したと判定したときは、トランスミッションが後退段のセレクト状態から脱したことになり、後退挙動が終了したことになる。
【0095】
一方、ステップ9(S9)で、メインCPU61が、後退車速パルスを検知していないと判定したときは、次に、この後退車速パルスの検知を待つ(S9→S16→S17→S9のループ)。
【0096】
ただし、一旦、後退段がセレクトされた(S5)ものの、その後、後退車速パルスが検知されることなく、車両挙動I/F67によりパーキングブレーキ信号のオンが検知された(S16)ときは、メインCPU61は、車両が駐車状態になったと判定し、リンクのコストCを増減せずにそのまま維持させる(S18)。
【0097】
また、一旦、後退段がセレクトされた(S5)ものの、その後、後退車速パルスが検知されることなく、ACC電源がオフに切り替えられたときは(S17)、メインCPU61は、車両が駐車状態になったと判定し、リンクのコストCを増減せずにそのまま維持させる(S18)。
【0098】
次に、ステップ10(S10)において、メインCPU61が、バック信号のオフを検知していないと判定したときは、そのまま、後退挙動が継続されているか、またはACC電源がオフにされて駐車状態になったことになるが、ACC電源がオフにされたときは、所定のパターン(1)または(2)に合致することはないため、ACC電源がオフになった後まで、後退挙動が終了するのを待つ処理を継続する必要はない。
【0099】
そこで、ACC電源のオフが検知されたとメインCPU61が判定したとき(S19)は、後退挙動が終了するのを待つ処理(S10→S19→S10のループ)を脱して、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0100】
ステップ10(S10)において、メインCPU61が、バック信号のオフを検知したと判定したときは、次に、車両が前進するのを待つ(S11→S20→S11のループ)。
【0101】
つまり、ステップ11(S11)において、車両挙動I/F67が前進車速パルスを検知したか否かをメインCPU61が判定するが、メインCPU61が、前進車速パルスを検知したと判定したときは、車両が前進していることになる。
【0102】
一方、メインCPU61が、前進車速パルスを検知していないと判定したときは、トランスミッションが後退段のセレクト状態から脱した(S10)ものの、前進挙動に移行していないか、またはACC電源がオフにされて駐車状態になったことになるが、ACC電源がオフにされたときは、所定のパターン(1)または(2)に合致することはないため、ACC電源がオフになった後まで、前進挙動の開始を待つ処理を継続する必要はない。
【0103】
そこで、ACC電源のオフが検知されたとメインCPU61が判定したとき(S20)は、前進挙動の開始を待つ処理(S11→S20→S11のループ)を脱して、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0104】
次に、前進車速パルスの検知により車両の前進挙動を検出したとき(S11→S12)は、バック信号のオフ検知(S10)から前進車速パルス検知(S11)までに要した時間が1[分間]以内か否かを、メインCPU61が判定する(S12)。この時間の計測は、例えばCPU周辺回路部62等が備えている内部クロックなどを参照することによって行われる。
【0105】
ステップ12(S12)における判定において、その時間が1[分間]を超えるとメインCPU61が判定したときは、車両の挙動は駐車であると判定し、リンクのコストCを増減させず(S18)に、ステップ1(S1)に戻る。
【0106】
一方、ステップ12(S12)における判定において、その時間が1[分間]以内であるとメインCPU61が判定したときは、次に、車両挙動I/F67が、その前進が20[m]以上継続したことを検知したか否かを、メインCPU61が判定する(S13)。
【0107】
この20[m]という距離の検知は、車両挙動I/F67が検知した前進車速パルスのパルス数をCPU周辺回路部62によって計数する等して行うことができる。
【0108】
ステップ13(S13)において、前進が20[m]以上継続したとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動が所定のパターン(1)(対向車とのすれ違いパターン)に合致するため、メインCPU61は、コストCを増加させる(C→C+1)処理を行い(S14)、ステップ1(S1)に戻る。
【0109】
一方、ステップ13(S13)において、前進が20[m]未満しか継続しなかったとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動は所定のパターン(1)(対向車とのすれ違いパターン)に合致はしないが、所定のパターン(2)(切り返しを伴う転舵パターン)に合致する可能性があるため、このステップ5(S5)に戻り、その後の処理を、上述した処理と同様に繰り返す。
【0110】
そして、その繰り返しの処理において、ステップ18(S18)の処理(リンクのコストCをそのまま維持させる処理)に達することなく、ステップ13(S13)まで戻り、このステップ13(S13)において、前進が20[m]以上継続したとメインCPU61が判定したときは、これまでの車両の挙動が所定のパターン(2)(切り返しを伴う転舵パターン)に合致するため、メインCPU61は、コストCを増加させる(C→C+1)処理を行い(S14)、ステップ1(S1)に戻る。
【0111】
以上のようにして、記憶手段10には、各細街路R(に対応した各リンク)ごとにコストCが設定され、このコストCの大きさに応じて、メインCPU61は各細街路Rについおて、ナビゲーション用の案内経路としての選択優先度を評価する。
【0112】
すなわち、コストCの値が小さい細街路Rについては、対向車とのすれ違いにおいて難のある操作を要するパターン(1)や、転舵の際に何回も切り返し操作を行う必要があるパターン(2)に合致する挙動を呈さないため、例え細街路Rとして一括りにされている道路であっても、国道や都道府県道など細街路以外の種別の道路と同様に、ナビゲーション用の案内経路として選択されやすい評価とする。
【0113】
一方、コストCの値が大きい細街路Rについては、対向車とのすれ違いにおいて難のある操作を要するパターン(1)や、転舵の際に何回も切り返し操作を行う必要があるパターン(2)に合致する挙動を呈するため、ナビゲーション用の案内経路として選択される優先度を従来通り低い評価とする。
【0114】
以上のように、本実施形態に係る細街路評価収集装置およびその作用である細街路評価収集方法(本発明に係る細街路評価収集方法の一実施形態)によれば、細街路Rという一つの種別に区分されている道路であっても、個々の道路ごとに選択優先度を設定することができる。
【0115】
しかも、その選択優先度の設定は、運転者等使用者が手動で逐一行うのではなく、車両を走行させて、その挙動に基づいて自動的に設定することができる。
【0116】
なお、上記予め設定された所定のパターンとしては、上述した(1)すれ違いパターンや(2)切り返しパターンだけに限定されるものではなく、例えば、幅員が狭い道路であることに起因した、通常の走行における挙動(略定速での前進走行)とは異なる複数の挙動を組み合わせたパターンとして設定しておくことができる。
【0117】
図15は、本発明に係る地図情報更新システムの一実施形態を示すブロック図である。この実施形態の地図情報更新システム200は、車載されるものではなく、適当な基地局のサーバ等に接続されたものであり、記憶手段110(地図情報記憶手段)に記憶された地図情報(デジタル地図)について、各車両に搭載された細街路評価収集装置50,50,…(車載ナビゲーション装置100,100,…)から送られた、細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示すコストC(指標値)を、その地図情報における各細街路に対応付けて蓄積更新することにより、細街路ごとに、案内経路としての評価がなされた信頼性のある地図情報を提供可能としたものである。
【0118】
すなわち、この地図情報更新システム200は、案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された記憶手段110と、記憶手段110に記憶された地図情報を読み出して、地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を再び記憶手段110に記憶させる地図情報更新手段120と、1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置50,50,…(車載ナビゲーション装置100,100,…)により評価された、細街路RごとのコストCの供給を受ける指標値受信手段130と、を備え、地図情報は、その内容として含まれる個々の細街路RごとにコストCが対応付けられたものであり、地図情報更新手段120は、受信手段130により受信された細街路RごとのコストCを、地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新するものである。
【0119】
そして、このように構成された実施形態の地図情報更新システム200によれば、指標値受信手段130が、各車両にそれぞれ搭載された細街路評価収集装置50,50,…により評価された細街路RごとのコストCを受信すると、地図情報更新手段120が、記憶手段110に記憶された地図情報を読み出し、指標値受信手段130により受信された細街路RごとのコストCを、読み出した地図情報において対応する細街路Rの評価として蓄積して更新したうえで、この更新された後の地図情報を記憶手段110に記憶させ直す。
【0120】
そして、この地図情報の内容として細街路Rごとに対応付けられたコストCによる選択優先度の評価は、実際に車両が走行した結果に基づいたものであるため、実状に精度よく対応した評価となる。
【0121】
したがって、この記憶手段110に記憶された地図情報を、VICS(登録商標)等におけるFM電波や光ビーコン、電波ビーコン、またはその他の通信手段(携帯電話やPHSなどを利用した通信手段)を利用して、車載ナビゲーション装置100,100,…に配信し、各車両の車載ナビゲーション装置100,100,…は、この配信された地図情報を用いて経路案内を行うことで、個々の細街路Rごとに対応付けられた精度のよい評価(選択優先度についての評価)に基づいて経路案内を行うことができ、従来の車載ナビゲーション装置100であれば、選択される優先度が一律に低かった細街路であっても、個々の道路Rごとに選択される可能性が増減し、案内経路の選択自由度が高められ、経路選択の柔軟性が高められる。
【符号の説明】
【0122】
10 記憶手段
20 指標値収集手段
30 挙動比較手段
40 車両挙動検出手段
50 細街路評価収集装置
100 車載ナビゲーション装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細街路を走行する車両の挙動を検出し、
この検出された車両の挙動を、予め設定された所定のパターンと比較し、
前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることで、前記細街路ごとの前記指標値を収集することを特徴とする細街路評価収集方法。
【請求項2】
細街路を走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、
車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段と、
前記車両挙動検出手段によって検出された前記挙動と前記記憶手段に記憶された前記パターンとを比較する挙動比較手段と、
前記挙動比較手段による比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることにより、前記細街路ごとの前記指標値を収集する指標値収集手段と、を備えたことを特徴とする細街路評価収集装置。
【請求項3】
案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された地図情報記憶手段と、
前記地図情報記憶手段に記憶された前記地図情報を読み出して、前記地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を前記地図情報記憶手段に記憶させる地図情報更新手段と、
1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置により評価された、前記細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値の供給を受ける指標値受信手段と、を備え、
前記地図情報は、前記内容として含まれる個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値が対応付けられたものであり、
前記地図情報更新手段は、前記受信手段により受信された前記細街路ごとの指標値を、前記地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新することを特徴とする地図情報更新システム。
【請求項1】
細街路を走行する車両の挙動を検出し、
この検出された車両の挙動を、予め設定された所定のパターンと比較し、
前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記検出された車両の挙動が前記所定のパターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることで、前記細街路ごとの前記指標値を収集することを特徴とする細街路評価収集方法。
【請求項2】
細街路を走行する車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、
車両の所定の挙動に対応したパターンが記憶された記憶手段と、
前記車両挙動検出手段によって検出された前記挙動と前記記憶手段に記憶された前記パターンとを比較する挙動比較手段と、
前記挙動比較手段による比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致したときは、前記細街路が案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値を増大させ、前記比較の結果、前記挙動が前記パターンに合致しないときは、前記指標値を増減させずにそのまま維持させることにより、前記細街路ごとの前記指標値を収集する指標値収集手段と、を備えたことを特徴とする細街路評価収集装置。
【請求項3】
案内経路を探索する際の基礎となる地図情報が記憶された地図情報記憶手段と、
前記地図情報記憶手段に記憶された前記地図情報を読み出して、前記地図情報の内容を更新し、この更新された後の地図情報を前記地図情報記憶手段に記憶させる地図情報更新手段と、
1または2以上の車両にそれぞれ搭載された各細街路評価収集装置により評価された、前記細街路ごとの、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値の供給を受ける指標値受信手段と、を備え、
前記地図情報は、前記内容として含まれる個々の細街路ごとに、案内経路として選択されにくい度合いを示す指標値が対応付けられたものであり、
前記地図情報更新手段は、前記受信手段により受信された前記細街路ごとの指標値を、前記地図情報において対応する細街路の評価として蓄積して更新することを特徴とする地図情報更新システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−281746(P2010−281746A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136587(P2009−136587)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]