説明

組電池装置

【課題】断熱や防水のためのチューブで電池セルを包む構成において、電池セルを効率的に冷却することができる組電池装置を提供する。
【解決手段】電池セル11を包む収納チューブ15と、収納チューブ15に包まれた複数の電池セル11を収納する筐体20と、筐体20内に熱交換媒体を通流させ、電池セル11の冷却を行うファン30と、組電池10に対する充電および放電の少なくともどちらか一方の電流を検出する電流センサと、電流センサからの検出値に応じてファン30の駆動量を算出する算出部および駆動量を収納チューブ15の熱伝達時間分遅らせてファン30に指令する指令部とを備えた制御装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池車両に搭載された組電池の冷却制御を備えた組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車などでは、複数の電池セルを組み合わせて高電圧を得るように構成した組電池(高圧バッテリ)が搭載されている。このような組電池では、充放電時の発熱により電池セルが過度に高温になると電池性能が低下するため、電池セルを冷却する必要がある。例えば、筐体内に組電池を収納するとともに冷却ファンを設け、充電時の電流値に応じて冷却ファンを駆動する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、断熱や防水を目的として、断熱用や防水用の部材で電池セルを覆う技術が提案されている(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63682号公報(段落0025、図1、図6)
【特許文献2】特開平7−132976号公報(図1)
【特許文献3】特開2000−82501号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、断熱目的や防水目的で電池セルに部材を被せた場合、電池セルから発生した熱が部材表面に達するまでに時間的なずれが生じ、電池セルを効率的に冷却できないという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、断熱や防水のための部材で電池セルを包む構成において、電池セルを効率的に冷却することができる組電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の電池セルを組み合わせてなる組電池の充放電を行なう組電池装置であって、収納チューブに包まれた電池セルを複数収納する筐体と、前記筐体内に熱交換媒体を通流させ、前記電池セルの冷却を行うポンプと、前記組電池に対する充電および放電の少なくともどちらか一方の電流を検出する検出装置と、前記検出装置からの検出値に応じて前記ポンプの駆動量を算出する算出部と、前記駆動量を前記収納チューブの熱伝達時間分遅らせて前記ポンプに指令する指令部とを備えた制御装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、組電池を充電する際または組電池から放電する際に発生する熱が電池セルから収納チューブの表面に達するまでの時間(熱伝達時間)分遅らせてポンプを駆動するので、電池セルの熱が収納チューブの表面に達したときにその検出値に応じた流量の熱交換媒体が収納チューブの周囲を流れることになり、電池セルの冷却タイミングを適切に設定でき、電池セルを効率的に冷却することが可能になる。なお、熱交換媒体としては、冷却風(空気)に限定されるものではなく、液体などの冷媒であってもよい。
【0008】
また、前記検出装置の検出値が大きいほど、前記熱伝達時間を短く設定することを特徴とする。
【0009】
検出装置の検出値つまり充電時の電流値または放電時の電流値が大きい(高い)ほど電池セルからの発熱量が増加するので、電池セルの熱が収納チューブの表面に達するまでの時間(熱伝達時間)が短くなる。このように構成することにより、電池セルの冷却タイミングを適切に設定することができ、電池セルをより効率的に冷却することが可能になる。
【0010】
また、前記組電池は外気冷却であって、車両の運転時間が増えるほど前記熱伝達時間を短く設定することを特徴とする。
【0011】
車両の運転時間(走行距離など)が増えるほど、収納チューブが磨耗するので、電池セルから収納チューブ表面に達するまでの時間(熱伝達時間)が短くなる。このように構成することにより、電池セルの冷却タイミングを適切に設定することができ、電池セルをより効率的に冷却することが可能になる。
【0012】
また、前記ポンプは、前記組電池が低温状態である場合には前記熱交換媒体を通流させて前記組電池の暖機を行なうように構成され、前記ポンプが暖機のための駆動を行なうときには、前記ポンプに遅らせて指令するのを禁止することを特徴とする。
【0013】
これによれば、組電池の暖機が必要となる状態(低温状態)である場合には、ポンプに遅らせて指令すること(熱伝達時間を設定すること)を禁止することにより、組電池の暖機を迅速に行うことができる。なお、組電池の暖機とは、例えば、加熱手段(ヒータなど)によって熱交換媒体を加熱するとともにポンプを駆動して熱交換媒体を組電池に供給して、組電池の各電池セルを性能低下させることなく効率的に充放電できる温度まで加熱することである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、断熱や防水のためのチューブで電池セルを包む構成において、電池セルを効率的に冷却することができる組電池装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の組電池装置を示す一部分解斜視図である。
【図2】電池セルと収納チューブを示す分解斜視図である。
【図3】電池温度と時間との関係の一例を示すグラフである。
【図4】本実施形態の組電池装置における冷却風の流れを示す断面図である。
【図5】燃料電池車両の構成を示すブロック図である。
【図6】本実施形態の組電池装置におけるファン制御を示すフローチャートである。
【図7】遅延タイムを設定するマップを示し、(a)は遅延タイムと電流との関係、(b)は遅延タイムと運転時間との関係である。
【図8】充放電電流、ファンDUTY、充放電発熱の変化を示すタイムチャートと、ある時刻における熱伝達と冷却風の状態を示す模式図であり、(a)は本実施形態における制御、(b)は従来における制御である。
【図9】本実施形態の組電池装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る組電池装置について図1ないし図8を参照して説明する。本実施形態に係る組電池装置1Aは、例えば、燃料電池自動車V(車両)に搭載され、燃料電池FC(図5参照)をアシストする機能を有している。なお、本実施形態の組電池装置1Aは、燃料電池自動車(FCEV)に限定されるものではなく、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)などの車両、または船舶や航空機などに適用することができる。
図1に示すように、本実施形態の組電池装置1Aは、複数の電池モジュールMからなる組電池10、筐体20、ファン(ポンプ)30、制御装置40、電流センサ(検出装置)41(図5参照)などで構成されている。
【0017】
電池モジュールMを構成する電池11A,11Bは、例えばリチウムイオン型の二次電池からなり、電極と電解液とを円筒状のケースに収納してなる電池セル11,11(図2参照)を一列に接続して構成したものである。また、電池11A,11Bは、その長手方向(軸方向)が、燃料電池自動車の前後方向に沿って配置され、図示しない端子を介して、電気的に直列に接続されている。組電池10として構成される電池セル11の本数は、例えば、燃料電池自動車Vに搭載される電動式の走行モータ43(図5参照)の定格出力に基づいて決定される。
【0018】
また、筐体20は、組電池10を収納する偏平な容器であり、その上面を構成する上パネル21と、底面を構成する2枚の底パネル22と、前面を構成する前パネル23と、後面を構成する後パネル24、側面を構成する2枚の側パネル25と、3本の支柱部材26と、2つのダミー部材27などで構成されている。
【0019】
また、筐体20は、燃料電池自動車Vの車体フレームを構成する前後フレーム31,31及びクロスメンバ32,32で囲まれた空間S(図4参照)の上方であって、右側の前後フレーム31側にずれて配置されている。そして、筐体20の左側であって、平面視において筐体20からはみ出た空間Sの略上方には、スペースが形成されており、このスペースにファン30が配置されている。
【0020】
また、2本の前後フレーム31および2本のクロスメンバ32の下面には、アンダカバー34が取り付けられており、空間Sの下方を封鎖している。よって、2本の前後フレーム31,31と、2本のクロスメンバ32,32とで囲まれた空間Sが、筐体20から排出された空気の流路として機能している(図4参照)。なお、対向するクロスメンバ32,32の中間位置において、前後フレーム31、31を接続するように、中間部材33が設けられている(図4参照)。
【0021】
3本の支柱部材26は、筐体20の左右方向の中央において、クロスメンバ32,32及び中間部材33の上面に、それぞれ立設されている。
【0022】
2本のダミー部材27は、アルミなどの金属で形成され、仮想的に電池セル11が配列している状況を形成するための前後方向に細長い部品で構成され、外形が半円柱状を呈している。そして、2本のダミー部材27は、支柱部材26の左右両側にそれぞれ取り付けられている。
【0023】
底パネル22,22は、前後フレーム31,31間において、クロスメンバ32,32と中間部材33に取り付けられている。左右方向(車幅方向)において配列する2枚の底パネル22,22は、左右方向に所定間隔離れており、2枚の底パネル22、22の間が、冷却風排出口22a(図4参照)となっている。よって、筐体20の下方の空間S(図4参照)は、冷却風排出口22aを介して、筐体20内と連通している。なお、筐体20の底壁部を、1枚の底パネルで構成してもよい。
【0024】
また、筐体20の上流には、吸気ダクト50が設けられている。この吸気ダクト50は、外部の空気を筐体20内に導くためのダクトであり、上流端に吸気口51aを有する吸気部51と、吸気部51の下流で二股に分岐した右分岐部52及び左分岐部53と、を備えている。右分岐部52の下流端は、右側の側パネル25に形成された冷却風導入口25a(図4参照)に接続されている。左分岐部53の下流端は左側の側パネル25に形成された冷却風導入口25a(図4参照)に接続されている。
【0025】
また、図示していないが、吸気口51aには、組電池装置1Aの各電池セル11を暖機する際に、加熱した空気を生成するためのヒータが設けられている。なお、ヒータとしては、熱線を格子状に配置したものなどで構成されている。よって、制御装置40によって、電池セル11の暖機が必要と判断された場合には、ヒータがONされることにより、吸気ダクト50から筐体20内に暖かい空気が導入され、各電池セル11が暖機されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、電池モジュールMは、電池11A,11B、端子12A,12B、導通部材13、キャップ14、収納チューブ15などで構成されている。
【0027】
電池11A,11Bは、それぞれ、2本の電池セル11,11が電気的に直列に接続されるように一列に配置して構成したものである。また、電池11Aの極と電池11Bの極とが互いに逆向きとなるように平行に配置されている。
【0028】
また、電池11A,11Bは、例えば、電池セル11と電池セル11との間が、金属製の連結部材(不図示)を溶接することによって連結固定されている。なお、各電池セル11は、いずれも円柱状で充放電可能なリチウムイオン二次電池から構成されているが、円柱状のものに限定されず、角型のものであってもよい。また、電池セル11は、リチウムイオン型のものに限定されず、ニッケル水素型のものなどであってもよい。
【0029】
端子12Aは、他の電池モジュールMの電池11Bの端子12Bと図示しないバスバを介して接続されるものであり、円盤状の基部12a1と、基部12a1の一面側の中心にねじ穴12a2が形成された突起部12a3とで構成され、電池11Aの一端に接合されている。また、端子12Bは、他の電池モジュールMの電池11Aの端子12Aと図示しないバスバを介して接続されるものであり、同様にして、基部12a1、ねじ穴12a2が形成された突起部12a3で構成されている。
【0030】
導通部材13は、金属製の板材で形成され、電池11Aの他端と電池11Bの他端とを電気的に接続して、電池11Aと電池11Bとを電気的に直列に接続するものである。
【0031】
キャップ14は、合成樹脂などの絶縁材料で形成され、電池11A,11B側が開放した凹部14aを有している。この凹部14aは、導通部材13の周面に倣う形状であり、導通部材13の周面よりも若干余裕を持って大きく形成されている。また、凹部14aの深さは、導通部材13とともに電池11A,11Bの端部が収まる深さで形成されている。
【0032】
このように端子12A,12Bが取り付けられた電池11A,11Bに、熱収縮性の収納チューブ15,15を被せて、所定温度の温風を当てることによって、収納チューブ15を熱収縮させる。これにより、収納チューブ15,15が電池11A,11Bの周面に密着した状態で包まれる。
【0033】
収納チューブ15は、ポリオレフィン樹脂などで形成され、熱収縮したときに、電池11A,11Bの外周面と、電池11A,11Bの端面の一部を覆うことができる長さ(大きさ)で形成されている。なお、ここでの端面とは、端子12A,12B側の基部12a1の面を意味し、キャップ14側においては、電池11A,11Bの電池セル11の面を意味している。
【0034】
収納チューブ15の仕様としては、例えば、直径が40mm、長さが108mmの電池セル11を使用し、ポリオレフィン(PO)製で、フィルムの厚さが0.2mmの収納チューブ15を使用した場合、充放電後に電池セル11から収納チューブ15の表面まで熱が到達するまでの時間(熱伝達時間Tm)が約5〜7s(秒)要するものが用いられる。この熱伝達時間Tmは、実験等によって求められ、使用される電池セル11の大きさ、収納チューブの材質やフィルムの厚さによって適宜変更されるものである。なお、熱伝達時間Tmの測定方法としては、例えば、電池セル11を収納した収納チューブ15のフィルムを挟んで内側と外側にそれぞれ熱伝対(温度センサ)を配置し、電池セル11を充電(または放電)させた状態で、内側と外側の温度変化を監視することによって求めることができる。
【0035】
また、図3に示すように、電池11A,11Bの温度(収納チューブ15の表面温度)は、破線で示すように比例的(所定時間毎の温度変化が常に一定)に増加するのではなく、実線で示すように充放電開始tの直後では電池11A,11Bの温度上昇の時間的変化が小さく、時間が経過するにつれて電池11A,11Bの温度上昇の時間的変化が大きくなるようになっている。
【0036】
そして、電池11A,11Bには導通部材13が当てられて、溶接などによって導通部材13が電池11A,11Bに接合される。電池11Aと電池11Bとが導通部材13を介して接続されることにより、組電池10を構成する各電池モジュールMの4本の電池セル11が電気的に直列に接続されるようになっている。
【0037】
さらに、キャップ14の凹部14aに所定のポッティング材(不図示)を所定量流し込み、導通部材13によって接続された電池11A,11Bを凹部14a内に押圧挿入して硬化させることによって、導通部材13と電池11A,11Bとの境界を含む電池11A,11Bの端部がポッティング材で封止される。これにより、キャップ14が取り付けられた電池11A,11B側からの水などの浸入が防止される。また、収納チューブ15で覆われた電池11A,11Bは、軸方向の中央部において連結固定部材16(図1参照)を介して互いに固定される。なお、ポッティング材としては、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0038】
また、電池11A,11Bの端子12A,12B側については、突起部12a3,12a3を挿通可能な環状のシール部材17(図1参照)に挿通して、筐体20の後パネル24に支持するように構成されている。これにより、シール部材17が取り付けられた電池11A,11B側からの水などの浸入が防止される。
【0039】
なお、図示していないが、端子12A,12Bの各突起部12a3は、後パネル24に形成された貫通孔(不図示)に挿通されて、後パネル24を挟んだ電池11A,11Bの逆側において、ボルト(不図示)をねじ穴12a2に螺合することによって、電池11A,11Bが筐体20に固定される。また、ボルト(不図示)で電池11A,11Bを固定する際に、電池モジュールMの電池11A(11B)と他の電池モジュールMの電池11B(11A)とをバスバ(導電部材)を介して連結する。
【0040】
図4に示すように、組電池10は、例えば、上段に7本(奥行きを含めると14本)の電池セル11が配列され、中段に6本(奥行きを含めると12本)の電池セル11が配置され、下段に7本(奥行きを含めると14本)の電池セル11が配列され、上段、中段および下段の電池セル11が左右方向において千鳥状に積層配置されている。
【0041】
そして、ファン30が作動すると、排気ダクト30aを介して空間Sの空気、筐体20内の空気が吸引されるようになっている。その結果、外部の空気が、吸気ダクト50(図1参照)を介して、筐体20の車幅方向の両側から、筐体20内に導入されるようになっている。
【0042】
そして、冷却風導入口25aから筐体20内に導入された冷却風は、電池11A,11A間、電池11B,11B間、電池11A,11B間、電池11A,11Bと上パネル21(または底パネル22)との間、を流れながら冷却される。
【0043】
そして、冷却風排出口22aから排出された冷却風は、空間S、排気ダクト30a、ファン30、排気ダクト30b(図1参照)を通って外部に排出される。
【0044】
図5に示すように、燃料電池自動車Vは、組電池(高圧バッテリ)10、ファン30、制御装置40、電流センサ41(検出装置)、温度センサ42で構成された組電池装置1A、燃料電池FC、走行モータ43、PDU44などで構成されている。
【0045】
燃料電池FCは、例えば固体高分子形の燃料電池であり、固体高分子からなる電解質膜をアノードとカソードとで挟んで膜電極接合体を構成し、この膜電極接合体を一対の導電性のセパレータで挟持して構成した単セルを複数積層した構造を有している。
【0046】
組電池10は、燃料電池自動車Vに搭載される燃料電池FCをアシストする充電電力を放電したり、燃料電池FCの発電電力や走行モータ43からの回生電力を充電するようになっている。
【0047】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)などで構成され、組電池10への充電電流および組電池10からの放電電流を検出する電流センサ41から充放電電流値を取得し、また温度センサ42から組電池10の温度(バッテリ温度)を取得する。なお、温度センサ42は、例えば、筐体20内の組電池10近傍に1箇所または複数個所に設けられている。
【0048】
また、制御装置40は、電流センサ41からの検出値(充放電電流値)に応じてファン30の駆動量を算出する算出部と、算出した駆動量を収納チューブ15の熱伝達時間Tm分遅らせてファン30に指令する指令部と、を備えている。ファン30の駆動量は、ファンDUTY(ファンデューティ)を変化させることにより、ファン30の回転速度を制御する。熱伝達時間Tmは、前記したように、電池セル11の大きさ(直径、長さ)や収納チューブ15のフィルム厚などに応じた値(時間)がRAMに予め記憶される。
【0049】
走行モータ43は、例えば永久磁石式の3相交流同期モータで構成され、燃料電池FCや組電池10から供給される電力によって燃料電池自動車Vに設けられた駆動輪を回転駆動させる。
【0050】
PDU44は、インバータ回路などで構成され、燃料電池FCや組電池10からの直流電力を交流電力に変換して交流電力を走行モータ43に供給し、また走行モータ43の回生電力を直流電力に変換して組電池10に充電する機能を有している。
【0051】
次に本実施形態の組電池装置1Aの動作について図6を参照して説明する。まず、燃料電池自動車Vが起動している際、ステップS1において、制御装置40は、温度センサ42によって検出したバッテリ温度Tが所定温度T1(例えば、10℃)より低いか否かを判断する。つまり、ステップS1の処理によって、組電池装置1A(組電池10)が低温状態であるかどうかが判断される。なお、組電池装置1Aが低温状態であるかどうかを判断する所定温度T1としては、10℃に限定されるものではなく、10℃よりも低い温度(例えば、5℃)に設定してもよく、あるいは10℃よりも高い温度に設定してもよく、電池セル11の性能などに応じて適宜変更することができる。
【0052】
そして、ステップS1において、制御装置40は、バッテリ温度が所定温度T1以上である(組電池10が低温状態ではない)と判断した場合には(No)、ステップS2に進み、電流センサ41によって充放電電流を検出する。なお、本実施形態では、充電電流と放電電流を検出するが、充電電流のみ、あるいは放電電流のみを検出する構成であってもよい。
【0053】
そして、ステップS3に進み、制御装置40は、ファン30のファンDUTY(0%〜100%)を決定して、ファン30の駆動量(組電池10に送る冷却風の流量)を設定する。
【0054】
そして、ステップS4に進み、制御装置40は、ファン30を駆動する際の遅延タイム(熱伝達時間Tm)を決定する。なお、遅延タイムは、例えば、図7(a)のマップに基づいて決定され、検出値(充放電電流値)が大きく(高く)なるほど遅延タイムを短く設定する。これは、充放電電流値が大きい(高い)ほど電池セル11からの発熱量が増加するので、電池セル11の熱が収納チューブ15の表面に達するまでの時間(熱伝達時間Tm)が短くなるからである。
【0055】
また、遅延タイム(熱伝達時間Tm)は、さらに図7(b)のマップに基づいて決定され、運転時間が長くなるほど遅延タイムを短く設定する。これは、車両の運転時間が増えるほど、収納チューブ15が磨耗して、フィルムの厚さが薄くなって、電池セル11から収納チューブ15の表面に伝達されるまでの時間(熱伝達時間Tm)が短くなるからである。なお、収納チューブ15が磨耗する理由としては、走行時に跳ね上げられた石などが吸気ダクト50を介して収納チューブ15の表面に衝突することによる磨耗、また電池セル11からの発熱の温度変化による磨耗などである。また、運転時間は、例えば、燃料電池自動車V(車両)を起動(IG−ON)している時間に基づいて判断してもよく、または、車両の走行距離に基づいて判断してもよい。
【0056】
そして、ステップS5において、図7(a)および/または図7(b)に示すマップに基づいて決定された遅延タイム(熱伝達時間Tm)分遅らせて、ファン30を、ステップS3で決定したファンDUTYに基づいた駆動量で駆動する。
【0057】
また、ステップS1において、制御装置40は、バッテリ温度が所定温度T1よりも低い(組電池10が低温状態である)と判断した場合には(Yes)、ステップS6に進み、前記した遅延タイムの決定(S2〜S4)を中止(バイパス)する。つまり、ファン30に遅延タイムだけ遅らせて指令することを禁止する。
【0058】
そして、ステップS7に進み、制御装置40は、組電池装置1Aの暖機を実行する。すなわち、制御装置40は、吸気ダクト50に設けられたヒータ(不図示)を駆動するとともに、ファン30を所定のファンDUTYで駆動する。これにより、ヒータで加熱された空気が吸気口51aから吸気ダクト50を介して筐体20内に導入される。加熱された空気は、電池11A,11Bの周囲を流れることによって、電池11A,11Bからなる組電池10が暖機される。
【0059】
なお、この暖機は、温度センサ42の検出値に基づいて所定温度(例えば、10℃)を超えたときに処理を終了(ヒータ:OFF、ファン:OFF)してもよく、あるいは暖機開始から所定時間が経過したときに処理を終了してもよい。なお、所定温度や所定時間は、予め実験やシミュレーション等によって決定される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の組電池装置1Aによれば、組電池10に対して充放電する際に発生する熱が電池セル11から収納チューブ15の表面に伝達されるまでの時間(熱伝達時間Tm、遅延タイム)分遅らせて、ファン30(ポンプ)を駆動する指令を出すので、電池セル11の熱が収納チューブ15の表面に達したときに、検出値に応じた流量の冷却風(熱交換媒体)が収納チューブ15の表面を流れるので、電池セル11の冷却タイミングを適切に設定でき、電池セル11を効率的に冷却することが可能になる。
【0061】
さらに詳述すると、図8(b)の従来例(比較例)に示すように、充放電電流の変動(破線)と同時にファンDUTY(実線)を変化させてファン30を駆動すると、充放電電流の変動(破線)に対して充放電発熱の変動(一点鎖線)が遅れて発生するので、つまり、実線のグラフと一点鎖線のグラフとに時間的なずれが生じている。このため、模式図(A)に示すように、電池セル11で発生した熱が収納チューブ15の表面に達する前に充放電電流に応じた流量の冷却風が流れてしまい、また模式図(B)に示すように、電池セル11で発生した熱が収納チューブ15の表面に達したときには実際に必要な流量よりも少ない流量の冷却風しか流れなくなる。よって、組電池10(電池11A,11B)を効率的に冷却することができなくなる。
【0062】
これに対して、図8(a)の本実施形態に示すように、充放電発熱の変動(一点鎖線)に応じてファンDUTY(実線)を変化させてファン30を駆動すると、つまり、実線のグラフと一点鎖線のグラフとが一致している。このため、模式図(A)に示すように、電池セル11で発生した熱がまだ収納チューブ15の表面に達しておらず、収納チューブ15の表面温度が低い状態のときには低い温度に応じた少ない流量の冷却風が流れ、また、模式図(B)に示すように、電池セル11で発生した熱が収納チューブ15の表面に達したときに、高い温度に対応した流量の冷却風が流れるようになっている。よって、組電池10(電池11A,11B)を効率的に冷却することができる。
【0063】
また、本実施形態の組電池装置1Aによれば、充放電電流値が大きい(高い)ほど遅延タイム(熱伝達時間Tm)を短く設定することで、電池セル11の冷却タイミングを適切に設定することができ、電池セル11をより効率的に冷却することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態の組電池装置1Aによれば、燃料電池自動車V(車両)の運転時間(走行距離など)が増えるほど遅延タイム(熱伝達時間Tm)を短く設定することで、電池セル11の冷却タイミングを適切に設定することができ、電池セル11をより効率的に冷却することが可能になる。
【0065】
また、本実施形態の組電池装置1Aによれば、組電池10の暖機が必要となる状態(低温状態)である場合には(S1、Yes)、ファン30の駆動を遅らせて制御すること(熱伝達時間Tmの設定)を禁止することにより、直ちに暖かい空気を組電池10に供給できるので、組電池10の暖機を迅速に行うことが可能になる。
【0066】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、図9に示す他の実施形態である組電池装置1Bを採用してもよい。この組電池装置1Bは、熱交換媒体として冷媒(水、不凍液など)を用いて組電池を冷却するものであり、複数の電池11A,11Bからなる組電池10が収納される筐体60、ラジエータ65、ウォータポンプ66(ポンプ)、配管67a〜67cなどで構成されている。
【0067】
筐体60は、組電池10を取り囲むように上パネル61、底パネル62、側パネル63a,63b、前パネル(不図示)、後パネル(不図示)で構成されている。側パネル63aには、冷媒導入口63a1が形成され、側パネル63bには、冷媒導出口63b1が形成されている。また、側パネル63aには、冷媒導入口63a1を覆うように冷媒導入部材64aが設けられ、側パネル63bには、冷媒導出口63b1を覆うように冷媒導出部材64bが設けられている。
【0068】
冷媒導出部材64bは、配管67aを介してラジエータ65と接続され、ラジエータ65は、配管67bを介してウォータポンプ66と接続され、ウォータポンプ66は、配管67cを介して冷媒導入部材64aと接続されている。
【0069】
なお、図示していないが、この組電池装置1Bについても、組電池装置1Aと同様に、電流センサ41からの検出値に応じてウォータポンプ66の駆動量を算出する算出部と、算出した駆動量を収納チューブ15の熱伝達時間Tm分遅らせてウォータポンプ66に指令する指令部とを備えた制御装置を備えている。また、組電池装置1Bにおいて暖機を実行する際には、ヒータなどを用いて冷媒を加熱するようになっている。
【0070】
制御装置によってウォータポンプ66が駆動されることにより、組電池10によって暖められた冷媒は、冷媒導出部材64bから排出され、配管67aを介してラジエータ65に導入される。ラジエータ65で放熱(冷却)された冷媒は、配管67b,67cを介して冷媒導入部材64aに導入され、組電池10(電池11A,11B)が冷却される。
【0071】
なお、組電池装置1Bでは、熱交換媒体として液体からなる冷媒を通流させているが、前記したように、各電池セル11(電池11A,11B)は、収納チューブ15で被覆され、一方の端部がキャップ14およびポッティング材で封止され、他方の端部がシール部材17で収納チューブ15内の気密性が保たれているので、組電池10が収納された筐体20内に冷媒が導入されたとしても、収納チューブ15内に冷媒が浸入することはなく、また電池モジュールMの端子12Aと端子12Bとが短絡することもない。
【0072】
前記した組電池装置1Bは、組電池装置1Aと同様に、電池セル11の熱が収納チューブ15の表面に達するまでの時間(熱伝達時間Tm)分遅らせてウォータポンプ66に駆動指令を与えることにより、各電池セル11を効率的に冷却することができる。
【0073】
なお、組電池装置1Bでは、筐体60の左右方向の一方から冷媒を導入し、他方から冷媒を導出する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、組電池装置1Aと同様に、筐体60の左右方向の両側から冷媒を導入し、筐体60の左右方向の中央部から冷媒を排出する構成であってもよい。
【0074】
なお、前記した各実施形態では、ヒータを用いて熱交換媒体(空気、冷媒)を加熱する例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、燃料電池FCの発電によって生じる熱を利用して熱交換媒体を加熱する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1A,1B 組電池装置
10 組電池
11 電池セル
15 収納チューブ
20,60 筐体
30 ファン(ポンプ)
40 制御装置
41 電流センサ(検出装置)
66 ウォータポンプ(ポンプ)
V 燃料電池自動車(車両)
Tm 熱伝達時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを組み合わせてなる組電池の充放電を行なう組電池装置であって、
収納チューブに包まれた電池セルを複数収納する筐体と、
前記筐体内に熱交換媒体を通流させ、前記電池セルの冷却を行うポンプと、
前記組電池に対する充電および放電の少なくともどちらか一方の電流を検出する検出装置と、
前記検出装置からの検出値に応じて前記ポンプの駆動量を算出する算出部と、前記駆動量を前記収納チューブの熱伝達時間分遅らせて前記ポンプに指令する指令部とを備えた制御装置と、を有することを特徴とする組電池装置。
【請求項2】
前記検出装置の検出値が大きいほど、前記熱伝達時間を短く設定することを特徴とする請求項1に記載の組電池装置。
【請求項3】
前記組電池は外気冷却であって、車両の運転時間が増えるほど前記熱伝達時間を短く設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組電池装置。
【請求項4】
前記ポンプは、前記組電池が低温状態である場合には前記熱交換媒体を通流させて前記組電池の暖機を行なうように構成され、前記ポンプが暖機のための駆動を行なうときには、前記ポンプに遅らせて指令するのを禁止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−277948(P2010−277948A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131907(P2009−131907)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】