説明

結晶化指数取得装置および結晶化指数取得方法

【課題】微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を容易かつ精度良く取得する。
【解決手段】結晶化指数取得装置1では、微結晶シリコン膜の理論誘電関数を複数の部分誘電関数モデルの合成として表現し、微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数κが、複数の部分誘電関数モデルのうち、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の高エネルギー側のピークに寄与する高エネルギーピークモデルの振幅に基づいて設定される。そして、複数の部分誘電関数モデルに含まれるパラメータ群の各パラメータを結晶化指数κにより表現し、結晶化指数κを変更することにより各パラメータの値を変更し、分光エリプソメータ3により取得された測定誘電関数に対する理論誘電関数のフィッティングが行われる。これにより、微結晶シリコン膜の結晶化指数κを容易かつ精度良く求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に形成された微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題への注目の高まりにより、クリーンな太陽光を利用する太陽電池の開発が行われており、特に、大面積化および低コスト化が可能な薄膜シリコン太陽電池が次世代の太陽電池として注目されている。薄膜シリコン太陽電池の製造では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりガラス基板上にシリコン膜が形成される。シリコン膜としては、アモルファスシリコン膜や、アモルファス成分と結晶成分とが混在する微結晶シリコン膜等が利用される。
【0003】
特許文献1は、多結晶半導体膜の結晶粒子の粒径を測定する技術に関する。特許文献1の検査方法では、評価対象の多結晶半導体薄膜(評価試料)の誘電率が、分光エリプソメータによる測定結果に基づいて求められる。そして、評価試料の誘電率が、平均粒径が既知の複数種類の多結晶半導体薄膜(標準試料)の誘電率と比較され、これにより算出された誘電率のピーク値の半値全幅との相関を取ることにより、評価試料の粒径が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−317433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、微結晶シリコン膜では、アモルファス成分と結晶成分との混在により、誘電関数が複雑になる。また、微結晶シリコン膜は、成膜の際に、膜厚の増加に従って結晶化の程度(すなわち、アモルファス成分と結晶成分の割合)が変化する。このため、微結晶シリコン膜のエリプソメトリー解析を行う際に、結晶化の程度を精度良く求めつつ解析を行おうとすると、解析すべきパラメータ数が非常に多くなってしまい、微結晶シリコン膜の光学特性を精度良く求めることが困難である。例えば、特許文献1では、多結晶半導体薄膜の誘電率のピーク値に注目して結晶粒子の粒径を求めることが提案されているが、誘電率のピーク値以外の部分を無視することになるため、粒径の算出精度を向上することに限界がある。
【0006】
また、微結晶シリコン膜における結晶化の程度を非破壊にて測定する方法としては、ラマン分光法が知られている。しかしながら、ラマン分光法では、測定に使用するレーザ光の波長によって測定可能な膜厚が決定されるため、微結晶シリコン膜のように膜厚方向で結晶化の程度が変化する場合であっても、膜厚方向において均一であるものと仮定された結晶化の程度を求めることになる。また、測定対象の膜厚が、測定可能な所定の膜厚よりも厚い場合や薄い場合、結晶化の程度を正しく求めることができない。さらに、ラマン分光法では、膜厚を測定することができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を容易かつ精度良く取得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、対象物上に形成された微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する結晶化指数取得装置であって、分光エリプソメータと、前記分光エリプソメータにて対象物上の微結晶シリコン膜に対して測定を行うことにより取得された測定スペクトルから測定誘電関数を求め、前記微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の値を変更して前記理論誘電関数の前記測定誘電関数に対するフィッティングを行うことにより、結晶化指数を求める演算部とを備え、前記理論誘電関数が、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の2つのピークのうち高エネルギー側のピークに寄与する高エネルギーピークモデルを含む複数の部分誘電関数モデルを合成することにより表現され、前記パラメータ群に前記高エネルギーピークモデルの振幅が含まれ、前記振幅が前記結晶化指数にて表現され、他の部分誘電関数モデルの少なくとも1つのパラメータも前記結晶化指数にて表現され、前記フィッティングの際に、前記結晶化指数が変更されることにより、前記結晶化指数にて表現されるパラメータが変更される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の結晶化指数取得装置であって、前記演算部において、前記フィッティングの際に前記微結晶シリコン膜の膜厚も変更され、前記結晶化指数と共に前記膜厚も求められる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の結晶化指数取得装置であって、前記複数の部分誘電関数モデルのそれぞれが、前記結晶化指数にて表現される少なくとも1つのパラメータを含む。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の結晶化指数取得装置であって、前記パラメータ群の各パラメータが、前記結晶化指数にて表現される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の結晶化指数取得装置であって、前記演算部が、前記フィッティングにおいて、微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用い、前記体積分率を変更することにより、前記理論誘電関数の振幅を変更する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の結晶化指数取得装置であって、前記演算部により、微結晶シリコン膜を膜厚方向において複数の層に分割し、前記複数の層のそれぞれについて、前記結晶化指数および前記体積分率を変更して前記フィッティングが行われる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶化指数取得装置であって、前記対象物が、太陽電池用の基板である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、対象物上に形成された微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する結晶化指数取得方法であって、a)分光エリプソメータにて対象物上の微結晶シリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルを取得し、前記測定スペクトルから測定誘電関数を求める工程と、b)前記微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の値を変更して前記理論誘電関数の前記測定誘電関数に対するフィッティングを行うことにより、結晶化指数を求める工程とを備え、前記理論誘電関数が、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の2つのピークのうち高エネルギー側のピークに寄与する高エネルギーピークモデルを含む複数の部分誘電関数モデルを合成することにより表現され、前記パラメータ群に前記高エネルギーピークモデルの振幅が含まれ、前記振幅が前記結晶化指数にて表現され、他の部分誘電関数モデルの少なくとも1つのパラメータも前記結晶化指数にて表現され、前記フィッティングの際に、前記結晶化指数が変更されることにより、前記結晶化指数にて表現されるパラメータが変更される。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の結晶化指数取得方法であって、前記b)工程において、前記フィッティングの際に前記微結晶シリコン膜の膜厚も変更され、前記結晶化指数と共に前記膜厚も求められる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の結晶化指数取得方法であって、前記複数の部分誘電関数モデルのそれぞれが、前記結晶化指数にて表現される少なくとも1つのパラメータを含む。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の結晶化指数取得方法であって、前記パラメータ群の各パラメータが、前記結晶化指数にて表現される。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項8ないし11のいずれかに記載の結晶化指数取得方法であって、前記b)工程において、前記フィッティングの際に、微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用い、前記体積分率を変更することにより、前記理論誘電関数の振幅を変更する。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の結晶化指数取得方法であって、前記b)工程において、微結晶シリコン膜を膜厚方向において複数の層に分割し、前記複数の層のそれぞれについて、前記結晶化指数および前記体積分率を変更して前記フィッティングが行われる。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項8ないし13のいずれかに記載の結晶化指数取得方法であって、前記対象物が、太陽電池用の基板である。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を容易かつ精度良く取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】結晶化指数取得装置を示す斜視図である。
【図2】コンピュータの構成を示す図である。
【図3】コンピュータが実現する機能構成を示すブロック図である。
【図4】微結晶シリコン膜の誘電関数を示す図である。
【図5】微結晶シリコン膜の測定誘電関数および理論誘電関数を示す図である。
【図6】微結晶シリコン膜の高エネルギーピークモデルを示す図である。
【図7.A】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.B】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.C】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.D】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.E】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.F】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.G】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図7.H】パラメータと結晶化指数との関係を示す図である。
【図8】結晶化指数を取得する処理の流れを示す図である。
【図9】微結晶シリコン膜の誘電関数を示す図である。
【図10】微結晶シリコン膜の分割態様を示す図である。
【図11.A】微結晶シリコン膜の偏光状態を示す図である。
【図11.B】微結晶シリコン膜の偏光状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る結晶化指数取得装置1を示す斜視図である。結晶化指数取得装置1は、対象物である薄膜シリコン太陽電池用のガラス基板9上に形成された微結晶シリコン膜中における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する装置である。ガラス基板9のサイズは、例えば1〜2m(メートル)角である。
【0025】
結晶化指数取得装置1は、ガラス基板9上を撮像する撮像部2、後述の測定スペクトルを取得するための分光エリプソメータ3、図1中のY方向に移動可能なY方向移動部41、図1中のX方向に移動可能なX方向移動部42、並びに、各種演算処理を行うCPUや各種情報を記憶するメモリ等により構成されたコンピュータ6を備え、コンピュータ6は結晶化指数取得装置1の各構成を制御する制御部としての役割を果たす。X方向移動部42はY方向移動部41上に設けられ、X方向移動部42には、撮像部2および分光エリプソメータ3が固定される。結晶化指数取得装置1では、分光エリプソメータ3による光の照射位置をガラス基板9上の各位置に自在に配置することが可能となっている。
【0026】
分光エリプソメータ3は、ガラス基板9の上方(図1中の(+Z)側)に配置される照明部31および受光部32を備え、照明部31からガラス基板9に向けて偏光した白色光が照射され、受光部32にてガラス基板9からの反射光が受光される。受光部32は、反射光が入射する検光子および反射光の分光強度を取得する分光器を有し、検光子の回転位置、および、分光器により取得された反射光の分光強度がコンピュータ6へと出力される。コンピュータ6では、複数の振動数(または、波長)の光のそれぞれの偏光状態として、p偏光成分とs偏光成分との位相差および反射振幅比角が求められる。すなわち、位相差および反射振幅比角の振動数スペクトル(以下、「測定スペクトル」と総称する。)が取得される。
【0027】
図2は、コンピュータ6の構成を示す図である。コンピュータ6は、各種演算処理を行うCPU61、基本プログラムを記憶するROM62および各種情報を記憶するRAM63をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク65、各種情報の表示を行うディスプレイ66、操作者からの入力を受け付けるキーボード67aおよびマウス67b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体60から情報の読み取りを行ったり記録媒体60に情報の書き込みを行う読取/書込装置68、並びに、外部との通信を行う通信部69が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0028】
コンピュータ6には、事前に読取/書込装置68を介して記録媒体60からプログラム600が読み出され、固定ディスク65に記憶される。そして、プログラム600がRAM63にコピーされるとともにCPU61がRAM63内のプログラム600に従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ6が、後述の演算部としての処理を行う。
【0029】
図3は、CPU61がプログラム600に従って動作することにより、CPU61、ROM62、RAM63、固定ディスク65等が実現する機能構成を示すブロック図である。図3において、演算部7の測定誘電関数演算部71および結晶化指数演算部73がCPU61等により実現される機能であり、記憶部72が固定ディスク65等により実現される機能である。なお、演算部7の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に電気的回路が用いられてもよい。
【0030】
次に、結晶化指数取得装置1における結晶化指数の測定原理について述べる。ここでは、CVD工程において、原料ガスであるモノシラン(SiH)の流量と水素(H)の流量との割合を変更しつつ、複数のシリコン基板上に微結晶シリコン膜を順次形成することにより、結晶化の程度が互いに異なる複数の微結晶シリコン膜が準備されているものとする。そして、これらの微結晶シリコン膜について、結晶化指数取得装置1の分光エリプソメータ3にて取得された測定スペクトルから誘電関数が求められる。なお、結晶化の程度が異なる複数の微結晶シリコン膜は、モノシランの流量と水素の流量との割合以外の条件(例えば、成膜時の温度や他のガスの流量、プラズマを発生させるための電圧)を変更することにより作製されてもよい。
【0031】
図4は、これらの微結晶シリコン膜の誘電関数を示す図である。誘電関数εは、実部であるεと虚部であるεとを含む複素関数にて表現され(すなわち、虚数単位をiとして(ε=ε+iε))、図4の縦軸は誘電関数の虚部εを示し、横軸は振動数に対応する光子エネルギーを示している。図4では、各微結晶シリコン膜の誘電関数の虚部εを示す線に、当該微結晶シリコン膜の形成時における水素の流量をモノシランの流量で割った値である水素希釈率Rの値(R=10,30,50,100)を付している。また、図4では、アモルファス成分を実質的に有しない結晶シリコン膜の誘電関数の虚部も、「c−Si」の符号を付して共に示す。なお、図4の誘電関数は、分光エリプソメータ3にて取得された測定スペクトルから求められたものであり、後述するTauc−LorentzモデルやHarmonicモデルを用いることなく求めたものである。
【0032】
図4に示す誘電関数のうち、R=10の誘電関数では、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の2つのピーク91,92に対応する成分はほとんど存在しないが、R=30,50,100の各誘電関数では、低エネルギー側のピーク91および高エネルギー側のピーク92(以下、「低エネルギーピーク91」および「高エネルギーピーク92」という。)に対応する変化が、光子エネルギーが3.4eVおよび4.25eVの近傍に存在する。これは、成膜時の水素希釈率Rが大きい微結晶シリコン膜では、膜中の結晶成分の割合が増大し、結晶成分に起因するピーク91,92の影響が顕在化することによるものと考えられる。
【0033】
図5は、R=50の微結晶シリコン膜の誘電関数を解析した結果を示すものである。図5中の複数の丸印は、分光エリプソメータ3による測定スペクトルから求められた誘電関数(以下、「測定誘電関数」という。)を示し、線93は、誘電関数をモデル化した理論誘電関数を示す。理論誘電関数93は、低エネルギーピーク91(図4参照)に寄与する部分誘電関数モデル94、高エネルギーピーク92(図4参照)に寄与する部分誘電関数モデル95、並びに、低エネルギーピーク91および高エネルギーピーク92に寄与するもの以外をモデル化した部分誘電関数モデル96を合成することにより表現される。
【0034】
以下の説明では、部分誘電関数モデル94〜96をそれぞれ、「低エネルギーピークモデル94」、「高エネルギーピークモデル95」および「バックグラウンドモデル96」という。本実施の形態では、低エネルギーピークモデル94およびバックグラウンドモデル96として、Tauc−Lorentzモデルを用い、高エネルギーピークモデル95として、Harmonicモデルが用いられる。
【0035】
図5に示すように、理論誘電関数93は、測定誘電関数に精度良く一致している。したがって、低エネルギーピークモデル94、高エネルギーピークモデル95およびバックグラウンドモデル96を合成することにより、微結晶シリコン膜の誘電関数を精度良く表現できることが理解される。
【0036】
ここで、上記3つの部分誘電関数モデルのうち、高エネルギーピークモデルに注目する。図6は、水素希釈率R=20,30,70,100にてそれぞれ成膜された微結晶シリコン膜について、図5に示すR=50の微結晶シリコン膜と同様に解析し、得られた3つの部分誘電関数モデルのうち高エネルギーピークモデルを図示したものである。図6では、図5に示すR=50の微結晶シリコン膜の高エネルギーピークモデルも共に示す。また、図6では、各微結晶シリコン膜の高エネルギーピークモデルを示す線に、各微結晶シリコン膜の形成時における水素希釈率Rの値を付している。
【0037】
図6に示すように、高エネルギーピークモデルの振幅は、水素希釈率Rが大きくなるに従って、すなわち、微結晶シリコン膜中の結晶成分の割合が増大するに従って漸次増大する。そこで、微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数κを、R=100の高エネルギーピークモデルの振幅に対する各Rの高エネルギーピークモデルの振幅の割合として設定する。具体的には、R=100のときに結晶化指数κは1となり、Rが小さくなるに従ってκも小さくなり、R=0のときにκも0となる。高エネルギーピークモデルの振幅は、結晶化指数κに正比例する。
【0038】
結晶化指数取得装置1では、測定対象となる微結晶シリコン膜の測定の事前処理として、上述の水素希釈率R=20,30,50,70,100にてそれぞれ成膜された微結晶シリコン膜の3つの部分誘電関数モデル(すなわち、低エネルギーピークモデル、高エネルギーピークモデルおよびバックグラウンドモデル)のパラメータと、結晶化指数κとの関係が、記憶部72(図3参照)に記憶される。
【0039】
図7.Aないし図7.Hはそれぞれ、各パラメータと結晶化指数κとの関係を示す図である。図7.Aないし図7.Cはそれぞれ、低エネルギーピークモデルのバンドギャップEg、半値全幅Cおよび振幅Aと結晶化指数κとの関係を示す。図7.Dは、高エネルギーピークモデルの半値全幅Cと結晶化指数κとの関係を示す。図7.Eないし図7.Hはそれぞれ、バックグラウンドモデルのバンドギャップEg、半値全幅C、ピーク位置のエネルギーEnおよび振幅Aと結晶化指数κとの関係を示す。
【0040】
結晶化指数取得装置1では、これらのパラメータ、および、結晶化指数κの設定基準である高エネルギーピークモデルの振幅が、後述するフィッティングの際に値が変更される理論誘電関数のパラメータ群となる。パラメータ群の各パラメータは、図7.Aないし図7.Hに示す関係にて、結晶化指数κにて表現される。なお、高エネルギーピークモデルの振幅は、上述のように結晶化指数κに比例しており、図示は省略する。本実施の形態では、各パラメータが、結晶化指数κの関数として表現される。図7.Aないし図7.Hでは、記憶部72に記憶される上記関数を実線にて示す。理論誘電関数に含まれる各パラメータと結晶化指数κとの関係は、例えば、表形式にて記憶部72に記憶されてもよい。
【0041】
図8は、ガラス基板9上の微結晶シリコン膜の結晶化指数κを取得する処理の流れを示す図である。結晶化指数取得装置1では、結晶化指数κが未知の微結晶シリコン膜が設けられたガラス基板9が搬入されると、分光エリプソメータ3にてガラス基板9上の微結晶シリコン膜の所定位置に対して測定を行うことにより測定スペクトルが取得される(ステップS11)。続いて、演算部7の測定誘電関数演算部71(図3参照)により、上記測定スペクトルから測定誘電関数が求められる(ステップS12)。
【0042】
次に、結晶化指数演算部73(図3参照)により、微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれる上記パラメータ群(すなわち、図7.Aないし図7.Hに示すパラメータ)の値、および、微結晶シリコン膜の膜厚の値を変更して、理論誘電関数の測定誘電関数に対するフィッティングが行われる。結晶化指数取得装置1では、当該フィッティングの際に、結晶化指数κが変更されることにより、結晶化指数κにより表現される(本実施の形態では、結晶化指数κの関数として表現される)上記パラメータ群の各パラメータの値が変更される。そして、理論誘電関数が測定誘電関数に最も近くなる結晶化指数κの値および膜厚の値が求められる(ステップS13)。
【0043】
以上に説明したように、結晶化指数取得装置1では、微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の各パラメータを結晶化指数κにより表現し、結晶化指数κを変更することにより各パラメータの値を変更して理論誘電関数の測定誘電関数に対するフィッティングが行われる。これにより、理論誘電関数に含まれるパラメータ群の各パラメータを個別に変更してフィッティングを行う場合に比べて、微結晶シリコン膜の結晶化指数κを容易かつ迅速に求めることができる。また、上記各パラメータを個別に変更する場合、局所解を求めてしまうおそれがあるが、各パラメータを結晶化指数κにて表現することにより、パラメータが局所解を取ることを防止することができ、フィッティングを容易かつ精度良く行うことができる。
【0044】
さらに、上述のように、理論誘電関数全体を測定誘電関数全体に対してフィッティングすることにより、理論誘電関数の一部の値(例えば、ピーク値)のみを測定誘電関数の対応する値に合わせる場合に比べて、結晶化指数κをより精度良く求めることができる。また、フィッティングの際に微結晶シリコン膜の膜厚も変更されることにより、当該膜厚も結晶化指数κと共に容易かつ精度良く求めることができる。なお、結晶化指数取得装置1の使用者の要求に応じて、求められた結晶化指数κおよび膜厚のうち、膜厚のみが出力されてもよい。
【0045】
結晶化指数取得装置1では、結晶化指数κが求められることにより、理論誘電関数の合成に利用される複数の部分誘電関数モデル(すなわち、低エネルギーピークモデル、高エネルギーピークモデルおよびバックグラウンドモデル)の各パラメータも精度良く求められ、高精度な理論誘電関数を得ることができる。その結果、微結晶シリコン膜のエリプソメトリー解析を容易かつ高精度に行うことが可能となる。
【0046】
結晶化指数取得装置1では、必ずしも、理論誘電関数に含まれるパラメータ群の全てのパラメータが結晶化指数κにて表現される必要はなく、複数の部分誘電関数モデルのそれぞれが、結晶化指数κにて表現される少なくとも1つのパラメータを含んでいればよい。これにより、それぞれが理論誘電関数の一部である全ての部分誘電関数モデルが結晶化指数κにより表現されることになるため、パラメータが局所解を取る可能性を低減することができる。その結果、フィッティングを容易かつ精度良く行うことができる。
【0047】
ところで、微結晶シリコン膜では、対象物上における成膜工程中に結晶化が進行するため、微結晶シリコン膜の対象物に近い部位では、対象物から遠い部位に比べて、結晶粒の境界である結晶粒界が多くなる。このため、水素希釈率R等の成膜条件が同じであっても、微結晶シリコン膜は、その膜厚によって誘電関数が異なる。
【0048】
図9は、水素希釈率R=50にて成膜された膜厚345Å(オングストローム)の微結晶シリコン膜、および、膜厚165Åの微結晶シリコン膜の誘電関数を示す図である。図9中の誘電関数は、分光エリプソメータ3による測定スペクトルから求められたものである。線81および線82はそれぞれ、膜厚345Åの微結晶シリコン膜の誘電関数における実部εおよび虚部εを示す。線83および線84はそれぞれ、膜厚165Åの微結晶シリコン膜の誘電関数における実部εおよび虚部εを示す。
【0049】
図9に示すように、膜厚165Åの微結晶シリコン膜における誘電関数のピーク位置は、実部εおよび虚部ε共に、膜厚345Åの微結晶シリコン膜における誘電関数のピーク位置とほぼ一致しており、膜厚165Åの微結晶シリコン膜における誘電関数の振幅は、膜厚345Åの微結晶シリコン膜における誘電関数の振幅に比べて小さい。これは、膜厚165Åの微結晶シリコン膜中の結晶粒界が、膜厚345Åの微結晶シリコン膜に比べて多いことに起因すると考えられる。微結晶シリコン膜中の結晶粒界の増減は、微結晶シリコン膜中のボイドの増減と解釈することができる。
【0050】
そこで、結晶粒界に起因して微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドの体積分率をfmSiC、基準とする膜厚345Åの微結晶シリコン膜の誘電関数をεref、真空の誘電関数をεとして、膜厚165Åの微結晶シリコン膜の誘電関数εは、有効媒質近似により数1を満たすとものと考える。
【0051】
【数1】

【0052】
数1中のfmSiCは、膜厚345Åの微結晶シリコン膜における結晶粒界の存在に起因すると仮定したボイドの体積分率と、膜厚165Åの微結晶シリコン膜における結晶粒界の存在に起因すると仮定したボイドの体積分率との差と捉えられてもよい。
【0053】
結晶化指数取得装置1では、図8のステップS13における結晶化指数演算部73(図3参照)によるフィッティングにおいて、結晶化指数κを取得する対象が比較的薄い微結晶シリコン膜の場合等、必要に応じて、上記ボイドの体積分率fmSiCをパラメータとして含む有効媒質理論(本実施の形態では、有効媒質近似)を用い、体積分率fmSiCを変更することにより、微結晶シリコン膜の理論誘電関数の振幅が変更される。
【0054】
上述の膜厚が異なる2種類の微結晶シリコン膜を例に取ると、膜厚345Åの微結晶シリコン膜については、上記有効媒質理論を用いることなく、精度良くフィッティングを行うことができた。また、膜厚165Åの微結晶シリコン膜については、有効媒質理論を用いない場合は、フィッティングの精度が低下し、上記有効媒質理論を用いることにより、精度良くフィッティングを行うことができた。その結果、2種類の微結晶シリコン膜の結晶化指数κはおよそ等しくなり、膜厚165Åの微結晶シリコン膜におけるボイドの体積分率fmSiCは、膜厚345Åの微結晶シリコン膜を基準として、1.9%となった。このように、結晶化指数取得装置1では、微結晶シリコン膜が比較的薄い場合であっても、有効媒質理論を用いることにより、結晶化指数κを精度良く求めることができる。その結果、比較的薄い微結晶シリコン膜のエリプソメトリー解析を容易かつ高精度に行うことが可能となる。
【0055】
次に、微結晶シリコン膜が比較的厚い場合の結晶化指数κの算出について説明する。上述のように、微結晶シリコン膜では、対象物上における成膜工程中に結晶化が進行するため、微結晶シリコン膜の対象物に近い部位では、対象物から遠い部位に比べて、結晶粒の境界である結晶粒界が多くなり、ボイドの体積分率fmSiCも大きくなる。また、微結晶シリコン膜が比較的厚い場合、微結晶シリコン膜の対象物に近い部位は、対象物から遠い部位に比べて結晶化指数κが小さくなる。
【0056】
そこで、結晶化指数演算部73では、図10に示すように、ガラス基板9上の微結晶シリコン膜5を、膜厚方向においてガラス基板9に近い方から第1層51、第2層52、第3層53および第4層54の複数の層に分割して(すなわち、微結晶シリコン膜5は、当該複数の層が膜厚方向に積層されたものであると仮定して)、ステップS13におけるフィッティングが行われる。本実施の形態では、当該フィッティングにおいて、上記複数の層51〜54に加えて、微結晶シリコン膜5の表面の微小な凹凸(以下、「表面層55」という。)についても考慮する。
【0057】
具体的には、第1層51、第2層52、第3層53および第4層54のそれぞれについて、上述の膜厚165Åの微結晶シリコン膜と同様に、結晶粒界の存在に起因して微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドを考慮する有効媒質理論を用い、各層の結晶化指数κ、膜厚およびボイドの体積分率をそれぞれ変更する。また、表面層55については、第4層54と同様の結晶化指数κを有する微結晶シリコン膜と空気の層とが同体積ずつ存在すると仮定して有効媒質理論を用い、結晶化指数κおよび膜厚をそれぞれ変更する。そして、これらの変更を行いつつ、第1層51〜第4層54、および、表面層55の理論誘電関数を合成した合成理論誘電関数と、測定誘電関数とのフィッティングが行われる。
【0058】
表1は、膜厚約800Åの微結晶シリコン膜5について上述のフィッティングを行って求められた各層の結晶化指数κ、膜厚およびボイドの体積分率を示す。また、図11.Aおよび図11.Bはそれぞれ、微結晶シリコン膜5の偏光状態を示す図である。図11.Aおよび図11.B中の複数の丸印は、分光エリプソメータ3により測定されたΨおよびΔ(すなわち、測定スペクトル)を示し、実線はそれぞれ、上述のフィッティングにより求められたΨおよびΔの理論スペクトルを示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、結晶化指数κの値は、ガラス基板9に最も近い第1層51が最も小さく、ガラス基板9から離れるに従って大きくなる。また、ボイドの体積分率は、ガラス基板9に最も近い第1層51が最も大きく、ガラス基板9から離れるに従って小さくなる。これは、対象物上における成膜工程中に結晶化が進行するという微結晶シリコン膜の性質に合致している。また、図11.Aおよび図11.Bに示すように、結晶化指数演算部73により求められた微結晶シリコン膜5の偏光状態に関する理論スペクトルは、分光エリプソメータ3による測定スペクトルに精度良く一致している。
【0061】
このように、結晶化指数取得装置1では、微結晶シリコン膜を膜厚方向において複数の層に分割し、複数の層のそれぞれについて、結晶化指数κ、膜厚およびボイドの体積分率を変更してフィッティングが行われることにより、比較的厚い膜の結晶化指数κの分布および膜厚を、精度良く求めることができる。結晶化指数取得装置1では、当該フィッティングは、各層の膜厚を固定して行われてもよい。この場合であっても、比較的厚い膜の結晶化指数κの分布を精度良く求めることができる。なお、微結晶シリコン膜の膜厚方向における分割数は、適宜変更されてよい。また、表面層55による影響が比較的小さい場合には、表面層55については考慮しなくてもよい。
【0062】
ところで、比較的厚い微結晶シリコン膜の解析を行う場合、微結晶シリコン膜の各層において、理論誘電関数に含まれるパラメータ群の各パラメータを個別に変更してフィッティングを行おうとすると、パラメータ数が非常に多くなってしまい、結晶化指数κの算出に多大な時間を要したり、パラメータが局所解を取ってしまうおそれがある。これに対し、結晶化指数取得装置1では、微結晶シリコン膜を分割した各層の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の各パラメータを、各層の結晶化指数κにより表現し、結晶化指数κを変更することにより各パラメータの値を変更して理論誘電関数の測定誘電関数に対するフィッティングが行われる。これにより、比較的厚い微結晶シリコン膜の結晶化指数κを容易かつ迅速に求めることができる。その結果、比較的厚い微結晶シリコン膜のエリプソメトリー解析を容易かつ高精度に行うことが可能となる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0064】
例えば、低エネルギーピークモデル、高エネルギーピークモデルおよびバックグラウンドモデルとして、上記実施の形態とは異なるモデルが用いられてもよい。例えば、高エネルギーピークモデルとして、Tauc−Lorentzモデルが用いられてもよい。
【0065】
結晶化指数取得装置1では、図7.Aないし図7.Hに示すパラメータ以外の部分誘電関数モデルのパラメータが、結晶化指数κにより表現され、理論誘電関数の測定誘電関数に対するフィッティングの際に、結晶化指数κの変更に伴って変更されてよい。
【0066】
結晶化指数取得装置1では、理論誘電関数は、必ずしも、低エネルギーピークモデル、高エネルギーピークモデルおよびバックグラウンドモデルを合成することにより表現される必要はなく、高エネルギーピークモデルを含む複数の部分誘電関数モデルを合成することにより表現されていればよい。フィッティングの際に値が変更されるパラメータ群についても、パラメータ群の全てのパラメータが結晶化指数κにて表現される必要はなく、当該パラメータ群に含まれる高エネルギーピークモデルの振幅、および、上記複数の部分誘電関数モデルに含まれる他の部分誘電関数モデルの少なくとも1つのパラメータが結晶化指数κにて表現されていればよい。これにより、微結晶シリコン膜の結晶化指数κを容易かつ精度良く取得することができる。
【0067】
結晶化指数取得装置1では、ガラス基板9以外の太陽電池用の基板や、プラスチックフィルム等、様々な対象物上に形成された微結晶シリコン膜の結晶化指数κを取得することが可能である。また、微結晶シリコン膜は、CVD法以外の手法にて形成されたものであってよい。
【0068】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 結晶化指数取得装置
3 分光エリプソメータ
5 微結晶シリコン膜
7 演算部
9 ガラス基板
51 第1層
52 第2層
53 第3層
54 第4層
55 表面層
91 低エネルギーピーク
92 高エネルギーピーク
93 理論誘電関数
94 低エネルギーピークモデル
95 高エネルギーピークモデル
96 バックグラウンドモデル
S11〜S13 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上に形成された微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する結晶化指数取得装置であって、
分光エリプソメータと、
前記分光エリプソメータにて対象物上の微結晶シリコン膜に対して測定を行うことにより取得された測定スペクトルから測定誘電関数を求め、前記微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の値を変更して前記理論誘電関数の前記測定誘電関数に対するフィッティングを行うことにより、結晶化指数を求める演算部と、
を備え、
前記理論誘電関数が、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の2つのピークのうち高エネルギー側のピークに寄与する高エネルギーピークモデルを含む複数の部分誘電関数モデルを合成することにより表現され、
前記パラメータ群に前記高エネルギーピークモデルの振幅が含まれ、前記振幅が前記結晶化指数にて表現され、他の部分誘電関数モデルの少なくとも1つのパラメータも前記結晶化指数にて表現され、
前記フィッティングの際に、前記結晶化指数が変更されることにより、前記結晶化指数にて表現されるパラメータが変更されることを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶化指数取得装置であって、
前記演算部において、前記フィッティングの際に前記微結晶シリコン膜の膜厚も変更され、前記結晶化指数と共に前記膜厚も求められることを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の結晶化指数取得装置であって、
前記複数の部分誘電関数モデルのそれぞれが、前記結晶化指数にて表現される少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載の結晶化指数取得装置であって、
前記パラメータ群の各パラメータが、前記結晶化指数にて表現されることを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の結晶化指数取得装置であって、
前記演算部が、前記フィッティングにおいて、微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用い、前記体積分率を変更することにより、前記理論誘電関数の振幅を変更することを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項6】
請求項5に記載の結晶化指数取得装置であって、
前記演算部により、微結晶シリコン膜を膜厚方向において複数の層に分割し、前記複数の層のそれぞれについて、前記結晶化指数および前記体積分率を変更して前記フィッティングが行われることを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶化指数取得装置であって、
前記対象物が、太陽電池用の基板であることを特徴とする結晶化指数取得装置。
【請求項8】
対象物上に形成された微結晶シリコン膜における結晶化の程度を示す結晶化指数を取得する結晶化指数取得方法であって、
a)分光エリプソメータにて対象物上の微結晶シリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルを取得し、前記測定スペクトルから測定誘電関数を求める工程と、
b)前記微結晶シリコン膜の理論誘電関数に含まれるパラメータ群の値を変更して前記理論誘電関数の前記測定誘電関数に対するフィッティングを行うことにより、結晶化指数を求める工程と、
を備え、
前記理論誘電関数が、結晶シリコン膜の誘電関数における虚部の2つのピークのうち高エネルギー側のピークに寄与する高エネルギーピークモデルを含む複数の部分誘電関数モデルを合成することにより表現され、
前記パラメータ群に前記高エネルギーピークモデルの振幅が含まれ、前記振幅が前記結晶化指数にて表現され、他の部分誘電関数モデルの少なくとも1つのパラメータも前記結晶化指数にて表現され、
前記フィッティングの際に、前記結晶化指数が変更されることにより、前記結晶化指数にて表現されるパラメータが変更されることを特徴とする炭素含有率取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の結晶化指数取得方法であって、
前記b)工程において、前記フィッティングの際に前記微結晶シリコン膜の膜厚も変更され、前記結晶化指数と共に前記膜厚も求められることを特徴とする結晶化指数取得方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の結晶化指数取得方法であって、
前記複数の部分誘電関数モデルのそれぞれが、前記結晶化指数にて表現される少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする結晶化指数取得方法。
【請求項11】
請求項10に記載の結晶化指数取得方法であって、
前記パラメータ群の各パラメータが、前記結晶化指数にて表現されることを特徴とする結晶化指数取得方法。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれかに記載の結晶化指数取得方法であって、
前記b)工程において、前記フィッティングの際に、微結晶シリコン膜中に生じると仮定したボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用い、前記体積分率を変更することにより、前記理論誘電関数の振幅を変更することを特徴とする結晶化指数取得方法。
【請求項13】
請求項12に記載の結晶化指数取得方法であって、
前記b)工程において、微結晶シリコン膜を膜厚方向において複数の層に分割し、前記複数の層のそれぞれについて、前記結晶化指数および前記体積分率を変更して前記フィッティングが行われることを特徴とする結晶化指数取得方法。
【請求項14】
請求項8ないし13のいずれかに記載の結晶化指数取得方法であって、
前記対象物が、太陽電池用の基板であることを特徴とする結晶化指数取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図7.C】
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【図7.D】
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【図7.E】
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【図7.F】
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【図7.G】
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【図7.H】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11.A】
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【図11.B】
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【公開番号】特開2012−181165(P2012−181165A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45940(P2011−45940)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】