説明

絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物を使用した低誘電絶縁膜の製造方法、その組成物より製造される半導体素子用低誘電絶縁膜およびその絶縁膜からなる半導体素子

本発明は、絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物を使用する低誘電絶縁膜の製造方法、その組成物から製造される半導体素子用低誘電絶縁膜およびその絶縁膜からなる半導体素子に関する。とくに、低誘電率を有し、かつ優れた機械的強度(弾性率)を有する絶縁膜を製造することができる絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物を用いる低誘電率絶縁膜の製造方法、その組成物から製造される半導体素子用低誘電絶縁膜およびその絶縁膜からなる半導体素子に関する。本発明のコーティング組成物は、低分子量の有機シロキサン樹脂および水からなり、そして、絶縁膜の低誘電率および機械的強度を顕著に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物を使用した低誘電絶縁膜の製造方法、その組成物より製造される半導体素子用低誘電絶縁膜およびその絶縁膜からなる半導体素子に関し、より詳しくは、誘電定数が低いとともに機械的強度(弾性率)が優れた絶縁膜を形成することができる絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物を使用した低誘電絶縁膜の製造方法、その組成物より製造される半導体素子用低誘電絶縁膜およびその絶縁膜からなる半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体素子の集積度が増加するに伴って配線密度が増加し、金属配線の間隔が徐々に狭くなっている。これによって金属配線間の寄生キャパシタンスが増加して、RC遅延、金属相互間の干渉(cross-talk)現象、消費電力の増加するという問題があり、そのため、配線用の低誘電物質を開発することが必要であった。
【0003】
従来のIC、LSIなどの半導体素子の層間絶縁材料は、誘電定数が4.0であるSiO2がほとんどであり、低誘電物質は、フッ素がドーピングされたシリケート(F−SiO2)が一部の素子に適用されている。しかし、F−SiO2の場合、フッ素の含量が増加するに従って熱的に不安定な状態になるため、誘電定数を3.5以下に低くするのは難しいという問題がある。これにより、最近、極性が低くて熱的に安定した多様な有機および無機高分子が提案されている。
【0004】
低誘電定数を有する有機高分子には、ポリイミド樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、芳香族炭化水素樹脂などが知られている。これら有機高分子は、ほとんどの誘電定数が3.2〜2.6であってガラス転移温度が低く、SiO2に比べて機械的強度が著しく落ち、線膨脹係数が非常に高いという問題がある。このように低い熱的安定性と弾性率および高い線膨脹係数を有する有機高分子は、素子または配線板の信頼性を低下させるおそれがある。
【0005】
前記のような有機高分子の熱的安定性の問題を解決するために、最近、アルコキシシラン系化合物を使用した有機シリケート高分子の開発が進められている。有機シリケート高分子は、アルコキシシラン化合物を有機溶媒の存在下で加水分解および縮合反応させて一定の分子量の高分子に形成する一般的な方法で製造される。アルコキシシラン系化合物であるポリメチルシルセスキオキサンまたはポリヒドロシルセスキオキサンの場合、3.0以下の比較的低い誘電定数を有し、450℃で熱的に安定である。しかし、ポリシルセスキオキサンは硬化工程中に発生する収縮応力により、1μm以上の厚さでクラックが発生しやすく、機械的強度が充分でないという問題がある。また、現在用いられているアルコキシシラン系絶縁物質はほとんどの誘電定数が2.7以上であるので、前記誘電定数を2.5以下に下げながら機械的特性を向上することが長期的な目標になっている。
【0006】
誘電定数が2.5以下である絶縁膜の製造方法として、塩基触媒を使用して加水分解および縮合反応させて分子量の大きいナノ微粒子の有機シリケートを製造し、これを硬化して多孔性絶縁膜を製造する方法が開示されている(特開2001−354903号公報)。
【0007】
また、多孔性絶縁膜の機械的強度を向上するために、酸触媒を使用して重合した有機シリケート高分子と、塩基触媒を使用して重合した有機シリケート高分子を混合した絶縁膜形成用コーティング組成物も報告されている。
【0008】
しかし、低分子量の酸触媒反応物と高分子量の塩基触媒反応物を混合する場合、機械的強度は向上できるが、誘電率が急激に増加する問題がある。とくに、塩基触媒の場合は反応が非常に速いため、これを安定化させるために塩基触媒を除去し、酸触媒を添加して保存性を向上させている。しかし、加水分解縮合反応に用いられた塩基触媒反応物に酸触媒を添加すると塩が生成される可能性があって、長期保存すると異物が発生するおそれがある。このため、絶縁膜形成用コーティング組成物に少量の水を添加し、塩異物の溶解度を高めて異物の発生を抑制する方法もあるが、保存性が良くなる代わりに絶縁膜の機械的強度を全く向上させられないという問題がある。
【0009】
このように、低誘電性を有しながらも優れた機械的強度と弾性率を有する絶縁膜を製造しようとする試みがあったが、半導体素子用低誘電絶縁膜または超低誘電の多孔性絶縁膜の絶縁性と機械的強度を同時に向上する、満足する程の結果はまだ得られていないのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記のような従来の技術の問題を解決するためのものであって、本発明の目的は、低誘電性を有すると同時に機械的強度(弾性率)が向上した絶縁膜形成用コーティング組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、低誘電性および機械的強度を著しく向上することができる半導体素子の低誘電絶縁膜の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、低誘電性および機械的強度が著しく向上した半導体素子の絶縁膜を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、低誘電性および機械的強度が優れた絶縁膜を含む半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために本発明は、a)重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体;b)有機溶媒;およびc)水を含む絶縁膜形成用コーティング組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、低誘電絶縁膜の製造方法であって、a)重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体を調製する工程;b)i)該調製された有機ポリシロキサン前駆体、ii)有機溶媒およびiii)水を混合して、絶縁膜形成用コーティング組成物を調製する工程;c)該絶縁膜形成用コーティング組成物を半導体素子の基材に塗布する工程;およびd)該塗布した絶縁膜形成用コーティング組成物を乾燥および焼成して絶縁膜を形成する工程を含む低誘電絶縁膜の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記方法で製造される半導体素子用低誘電絶縁膜であって、下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として有する有機ポリシロキサン重合体を含む半導体素子用低誘電絶縁膜。
【0017】
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリル、またはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
【0018】
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
【0019】
[化学式3]
【化1】

【0020】
(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【0021】
本発明はまた、前記方法で製造された半導体素子用絶縁膜からなる半導体素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低誘電性特性と機械的強度が同時に著しく向上した絶縁膜形成用コーティング組成物、この組成物が塗布されて硬化させた半導体素子用絶縁膜ならびにこの絶縁膜からなる半導体素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは低誘電性と機械的物性が同時に向上する絶縁膜製造のための組成物に関して研究し、酸触媒の存在下で製造された特定の低分子量の有機ポリシロキサン前駆体と特定量の水を含有する組成物を使用して絶縁膜を製造すれば、水を含有しなっかたりまたは微量の水を含有する組成物を使用して絶縁膜を製造する場合より低誘電性を示しながらも、機械的強度が優れた絶縁膜を得ることができるが、特定量以上に水を添加するとそれ以上機械的強度の向上は起こらず、保存性、コーティング性などの物性が低下するということを発見し、これをもとに本発明を完成した。
【0025】
半導体素子用低誘電絶縁膜は、有機ポリシロキサン前駆体を含む絶縁膜形成用コーティング組成物を基材に塗布し、焼成(bake)工程を経て製造され、前記焼成工程中に有機ポリシロキサンにあるシラノール基が縮合反応しながらSi−O−Si結合を形成する。この時に前記組成物内に水が存在する場合には、シラノール官能基と水が水素結合して、焼成工程中に分子間縮合反応(intermolecular condensation)を向上させて網目(network)構造を形成し、反応速度が速くなって架橋密度がさらに増加することができ、機械的強度が向上させることができる。
【0026】
本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物には、重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体、有機溶媒および水が含まれる。
【0027】
効果的に低誘電性特性と機械的強度を向上させるためには、前記有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量が500〜30,000であるのが好ましく、500〜10,000であるのがさらに好ましい。
【0028】
重量平均分子量が500未満であると、コーティング性が低下するおそれがある。また、有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量が30,000を超えると官能基の数も著しく減少して、機械的強度の増加効果が微々たるものとなる。また、重量平均分子量30,000以下の有機ポリシロキサン前駆体と重量平均分子量30,000を超える有機ポリシロキサン前駆体を混合する場合にも、低分子量の有機ポリシロキサン前駆体が高分子量の有機ポリシロキサン前駆体の気孔形成を抑制し、低誘電性を実現するのが難しくなる。
【0029】
また、有機ポリシロキサン前駆体の縮合反応可能な官能基全体に対するヒドロキシル基のモル比が80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがさらに好ましい。ヒドロキシル基の比率が80%未満であると水と作用する官能基の数が少なく、また、架橋密度が低くなって機械的特性の向上は期待し難い。
【0030】
また、有機ポリシロキサン前駆体の製造に用いられるシラン化合物において、シリコン原子当りの加水分解可能でない官能基数のモル比(官能基/Si)が0.35〜0.75のシラン化合物が、最終的に製造される絶縁膜の機械的強度および絶縁特性の側面から好ましい。前記官能基/Siの比率が0.35未満であると、機械的強度は優れているが低誘電特性が悪く、0.75を超えると、縮合反応性官能基が少ないためにその機械的強度向上が微々たるものとなり得、架橋密度が低くて機械的強度が優れたものにならない。
【0031】
前記有機ポリシロキサン前駆体としては、シリコン、酸素、炭素および水素を含む有機ポリシロキサン前駆体であればいずれのものでも用いることができ、好ましくは、分子内に、下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として含むものを用いることができる。
【0032】
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリル、またはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
【0033】
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
【0034】
[化学式3]
【化2】

【0035】
(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【0036】
本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物に用いられる前記有機溶媒は、絶縁膜のコーティング性に悪い影響を与えないものであればいずれのものでも用いることができるが、エーテル系溶媒またはエステル系溶媒を用いるのが好ましい。
【0037】
前記溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルまたはプロピレングリコールジプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、i−プロピルアセテート、n−ブチルアセテート、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテートまたはプロピレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;などより1種または2種以上混合して用いることができる。
【0038】
また、前記溶媒の中でも、とくに末端にヒドロキシル基を含まない非アルコール系エーテル系溶媒または非アルコール系エステル系溶媒を用いるのが、機械的強度改善の側面からさらに好ましい。
【0039】
前記有機溶媒は、前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部に対して、200〜2,000重量部で含まれるのが好ましい。有機溶媒の含量が200重量部未満であると、コーティング性が悪くなり、絶縁膜の保存安全性が落ちるおそれがあり、2,000重量部を超えると、充分な厚さの絶縁膜を得られない。
【0040】
本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物に用いられる水はシラン化合物を加水分解するのに用いられるが、最終のコーティング組成物には特定含量が含まれる。前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部に対して、4〜60重量部で含まれるのが好ましく、10〜40重量部で含まれるのがさらに好ましい。水の含量が4重量部未満であると、機械的強度および低誘電特性の向上が微々たるものであり、水の含量が60重量部を超えると機械的強度がそれ以上は向上しないうえ、コーティング溶媒との相溶性によってコーティング性が低下したり、溶液の保存安定性が悪くなる可能性がある。
【0041】
本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物は、2.5以下の誘電定数を有する絶縁膜を製造するため、そして、絶縁膜内に一定の大きさの気孔を均一に分布させるために気孔形成物質をさらに含むことができる。
【0042】
前記気孔形成物質としては、有機ポリシロキサン前駆体および有機溶媒と相溶性を有しながら、200〜450℃で熱分解可能であるものであればいずれのものでも用いることができ、好ましくは直鎖状有機分子もしくは高分子、架橋型有機分子もしくは高分子、超分枝(hyper-branched)型有機分子もしくは高分子、またはデンドリマー型有機分子もしくは高分子などを用いることができる。
【0043】
前記気孔形成物質の好ましい例としては、繰返し単位の炭素数が2〜12である脂肪族エーテルもしくはポリエーテル、脂肪族エステルもしくはポリエステル、脂肪族カーボネートもしくはポリカーボネートおよび脂肪族アクリレートもしくはポリアクリレートなどがあげられる。前記気孔形成物質の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で500〜100,000であるのが好ましく、500〜50,000であるのがより好ましい。
【0044】
また、前記気孔形成物質は、有機ポリシロキサン前駆体との相溶性を向上させるために分子内にシラン化合物の単位を含み得る。このシラン化合物を含有した気孔形成物質は、前記有機ポリシロキサン前駆体の製造時に添加して共重合させることができる。
【0045】
前記気孔形成物質は、有機ポリシロキサン前駆体100重量部に対して、100重量部以下で含まれるのが好ましく、5〜100重量部で含まれるのがより好ましい。気孔形成物質の含量が100重量部を超えると絶縁膜の機械的強度が低下する。
【0046】
前記絶縁膜形成用コーティング組成物は、重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体を調製する工程と、前記調製された有機ポリシロキサン前駆体を、有機溶媒および水と混合する工程を経て製造される。
【0047】
前記有機ポリシロキサン前駆体は、pH4以下、好ましくはpH1〜4の酸性条件で、シラン化合物と酸触媒および水、または水と有機溶媒の混合物と混合することによって、加水分解および縮合反応して製造される。
【0048】
前記重合に用いられるシラン化合物は、シリコン、酸素、炭素および水素を含むシラン化合物であればいずれのものでも用いることができ、好ましくは、前記化学式1〜3で表示されるシラン化合物より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを用いることができる。
【0049】
また、前記有機ポリシロキサン前駆体の製造時に用いられる酸触媒は、シラン化合物の加水分解および縮合反応を促進させる作用をする。酸触媒の例にはとくに制限はなく、好ましい例としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、オレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、p−アミノ安息香酸またはp−トルエンスルホン酸などがある。前記触媒は1種または2種以上を同時にまたは連続的に使用することができる。
【0050】
前記触媒の添加量は反応条件によって決定され得る。好ましくは、有機ポリシロキサン前駆体の製造に用いられるシラン化合物1モル当り2モル以下で用いることが好ましく、0.000001〜2モルを用いるのがより好ましい。前記触媒の量がシラン化合物1モル当り2モルを超えると、低濃度でも反応速度が非常に速くて分子量調節が難しく、ゲルが発生し易いという問題がある。
【0051】
前記有機ポリシロキサン前駆体は、水と有機溶媒の存在下で反応させて製造したり、有機溶媒なしで水だけの状態でバルクで反応させて製造したり、または、その両方の反応を組み合わせて製造することができる。
【0052】
この時に用いられる水の含量は、前記シラン化合物1モル当り3〜40モルであるのが好ましい。水の含量が3モル未満であると、官能基の加水分解反応が充分に起こらないために物性に悪い影響を与え、40モルを超えると反応溶液が不均一となる短所がある。
【0053】
前記有機ポリシロキサン前駆体の製造に用いられる有機溶媒は、シラン化合物またはシランオリゴマーの加水分解および縮合反応を妨げないものであれば、とくに制限されない。好ましくは、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼンまたはメチルエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンまたはアセチルアセトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジグライム、ジオキシン、ジメチルジオキシン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルまたはプロピレングリコールジプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、i−プロピルアセテート、n−ブチルアセテート、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテートまたはプロピレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;または、N−メチルピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などを用いることができる。前記有機溶媒は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
前記有機ポリシロキサン前駆体の製造時の加水分解および縮合反応の反応温度にはとくに制限はないが、0〜100℃の温度で反応させるのが好ましい。また、反応温度は、反応中に一定の温度に維持しても、断続的または連続的に温度を制御してもよい。
【0055】
前記反応過程で反応副産物である低級アルコールが発生するが、このような低級アルコールはコーティング性および絶縁膜の機械的物性を低下させ得る。また、反応副産物である低級アルコール以外に、高い沸点を有するアルコール溶媒が含まれる場合にも、機械的物性に悪い影響を与える、有機ポリシロキサン前駆体の官能基との置換反応が起こり得る。そのため、前記アルコール成分は、できるだけ少量であるのが好ましい。
【0056】
得られる有機ポリシロキサン前駆体は、分子内に前記化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として含んでいる。その重量平均分子量は、500〜30,000であるのが好ましい。
【0057】
前記有機ポリシロキサン前駆体を含む本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物の製造においては、前記有機ポリシロキサン前駆体の製造に用いられた有機溶媒をそのまま絶縁膜形成用コーティング組成物の有機溶媒として用いることができる。または、特定の有機溶媒が、有機ポリシロキサン前駆体を製造するときに用いられた有機溶媒から除去され、そして新たな溶媒が添加され得る。または、有機ポリシロキサン前駆体の製造に使用される有機溶媒のすべてが除去され、その代わりにコーティング性に優れる有機溶媒が添加され得る。
【0058】
前記コーティング性に優れた有機溶媒の好ましい例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルまたはプロピレングリコールジプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、i−プロピルアセテート、n−ブチルアセテート、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテートまたはプロピレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒などがあげられる。前記のなかから1種以上の溶媒を選択して、単独または組み合わせて使用することができる。
【0059】
さらに、前記溶媒のなかでも、末端にヒドロキシル基を有しない非アルコール系エーテル系溶媒または非アルコール系エステル系溶媒を用いるのが、機械的強度の面からより好ましい。
【0060】
前記方法で製造される絶縁膜形成用コーティング組成物は、i)前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部;ii)有機溶媒200〜2,000重量部;およびiii)水4〜60重量部を含むのが好ましい。
【0061】
また、前記組成物は、2.5以下の誘電定数を有する絶縁膜を製造するために気孔形成物質をさらに含み得る。
【0062】
前記気孔形成物質は、有機ポリシロキサン前駆体および有機溶媒と相溶性を有するとともに、200〜450℃で熱分解可能であるものであればいずれのものでも用いることができる。好ましくは、直鎖状有機分子もしくは高分子、架橋型有機分子もしくは高分子、超分枝型有機分子もしくは高分子またはデンドリマー型有機分子もしくは高分子などが用いられ得る。
【0063】
本発明では、絶縁膜形成用コーティング組成物を基材に塗布した後、乾燥および焼成して製造される半導体素子用の低誘電絶縁膜を提供する。
【0064】
前記基材は、シリコンウエハー、SiO2ウエハー、SiNウエハーまたは化合物半導体などを用いることができる。
【0065】
前記絶縁膜形成用コーティング組成物を塗布するためには通常のコーティング方法を用いることができる。好ましくは、スピンコート法、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などによって一定の厚さの膜が形成され得る。より好ましくは、半導体素子の多層回路用の層間絶縁膜を製造する場合には、スピンコート法が用いられ得る。
【0066】
前記絶縁膜の厚さは、コーティング組成物の粘度とスピンコーターの回転速度を変化させて制御され得る。通常半導体素子の多層回路構造において用いられる層間絶縁膜としては、絶縁膜は0.05〜2μmの厚さを有するのが好ましい。
【0067】
3次元構造を有する低誘電絶縁膜は、コーティング組成物を塗布して、乾燥および焼成することで形成され得る。乾燥は慣用的な方法で実施され得、そして前焼成および緩やかな焼成(soft-baking)工程が含まれ得る。前焼成工程において、有機溶媒は緩やかに蒸発され、そして緩やかな焼成工程中に、一定量の官能基が架橋される。残りの官能基は、焼成工程中にさらに反応する。
【0068】
好ましくは、乾燥工程は50〜250℃の温度で実施される。この温度が50℃未満であると、乾燥が充分でなくなり得る。また、250℃を超えると、充分に乾燥する前に効果が進行し、そのため、均一な絶縁膜を得ることが困難となる。
【0069】
また、焼成工程は、300℃以上の温度で実施するのが好ましく、300〜500℃の温度で実施するのがより好ましい。焼成温度が300℃未満であると、有機ポリシロキサン重合体の残留官能基の縮重合が不完全となるので絶縁膜の強度が低下し、残留官能基の存在により誘電特性が低下するおそれがある。また、焼成温度の上限は、本発明の低誘電絶縁膜の熱的安定性およびその絶縁膜を使用して製造された半導体素子の種類によって適切に調節され得る。
【0070】
前記乾燥工程と焼成工程は連続的に一定の速度で昇温しながら実施することもでき、また、断続的に実施することもできる。断続的に実施する場合、乾燥工程および焼成工程を各々1分〜5時間行うのが好ましい。この時の加熱器は、ホットプレート、オーブン、炉などを使用することができ、加熱雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどのような不活性気体雰囲気、酸素含有気体(たとえば、空気など)などの酸素雰囲気、真空状態またはアンモニアおよび水素を含有する気体雰囲気などで行うことができる。前記加熱方法は、乾燥工程と焼成工程を全て同じ加熱方法で実施することができ、各々他の方法で実施することもできる。
【0071】
また、本発明は、前記のように製造される絶縁膜およびこの絶縁膜からなる半導体素子を提供するが、得られた絶縁膜は絶縁性および機械的強度に優れているので、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)、システム大規模集積回路、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体素子用層間絶縁膜、半導体素子層間キャッピング膜、ハードマスク膜、エッチングストップ膜などとして有用である。その他、いろいろな用途の保護膜および絶縁膜としても使用可能であり、たとえば、半導体素子表面コーティング膜などの保護膜、多層配線基板の層間絶縁膜、液晶表示素子用保護膜、絶縁防止膜などに用いることができる。
【0072】
本発明による絶縁膜形成用コーティング組成物、この組成物を塗布して硬化した半導体素子の絶縁膜およびこの絶縁膜からなる半導体素子は、著しく向上した低誘電性と機械的強度が付与される。
【0073】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を例示するが、以下の実施例は本発明の例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲は以下の実施例には制限されない。
【実施例】
【0074】
実施例1
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
有機溶媒であるテトラヒドロフラン490gに、メチルトリメトキシシラン100.0gとテトラメトキシシラン111.75gを加えた。ついで、0.01N濃度の硝酸水溶液185gをゆっくり添加した。これを30分間室温で反応させた後、温度を徐々に上げて、還流しながら一晩反応(約16時間)させた。反応完了後、反応溶液をジエチルエーテル溶媒で希釈し、pHが中性になるまで水で洗浄した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて残っている水を完全に除去し、残りの有機層の溶媒を真空オーブンで完全に除去して有機ポリシロキサン前駆体を得た。この時に得られた有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量は2,500であった。得られた有機ポリシロキサン前駆体の縮合反応可能な官能基中、モル比で90%がヒドロキシル基であった。前記有機ポリシロキサン前駆体を、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒に20重量%溶液になるように溶解させて、絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0075】
(絶縁膜の製造)
前記製造した絶縁膜形成用コーティング組成物20gに水1.0gを添加した後、シリコンウエハー上にスピンコーティングして薄膜を得、80℃および150℃のホットプレート上で各々1分ずつ前焼成し、炉内を430℃まで昇温した後、1時間硬化して絶縁膜を得た。
【0076】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.98であり、弾性率は16.2GPa、硬度は2.45GPaであった。
【0077】
実施例2
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
実施例1と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0078】
(絶縁膜の製造)
前記絶縁膜形成用コーティング組成物20gに、水1.0gと、分子量が5,000でありポリエチレンオキシド(PEO)30重量%が含まれたポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレンオキシド(PPO)−ポリエチレンオキシド(PEO)のトリブロック共重合体をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに20重量%に溶解した溶液8.6gとを添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0079】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.26であり、弾性率は5.6Gpa、硬度は0.72GPaであった。
【0080】
比較例1
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
実施例1と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0081】
(絶縁膜の製造)
水を添加しないことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0082】
製造した絶縁膜の誘電定数は3.16であり、弾性率は14.6GPa、硬度は2.1GPaであった。
【0083】
比較例2
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
実施例1と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0084】
(絶縁膜の製造)
0.05gの水を添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0085】
製造した絶縁膜の誘電定数は3.14であり、弾性率は14.4GPa、硬度は2.09GPaであった。
【0086】
比較例3
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
有機溶媒であるテトラヒドロフラン490gに、メチルトリメトキシシラン100.0gとテトラメトキシシラン111.75gを加えた。ついで、0.01N濃度の硝酸水溶液46.0gをゆっくり添加した。これを30分間室温で反応させた後、温度を徐々に上げて、還流しながら一晩反応(約16時間)させた。反応完了後、反応溶液をジエチルエーテル溶媒で希釈し、pHが中性になるまで水で洗浄した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて残っている水を完全に除去し、残りの有機層の溶媒を真空オーブンで完全に除去して有機ポリシロキサン前駆体を得た。この時に得られた有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量は3,300であった。得られた有機ポリシロキサン前駆体の縮合反応可能な官能基中、モル比で60%がヒドロキシル基であった。前記有機ポリシロキサン前駆体をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒に20重量%溶液になるように溶解させて、絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0087】
(絶縁膜の製造)
0.5gの水を添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0088】
製造した絶縁膜の誘電定数は3.10であり、弾性率は12.4GPa、硬度は1.83GPaであった。
【0089】
比較例4
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
実施例1と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0090】
(絶縁膜の製造)
水を添加しないことを除いては、実施例2と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0091】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.33であり、弾性率は4.9GPa、硬度は0.60GPaであった。
【0092】
比較例5
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
蒸溜水104.1gとエタノール266.4gの混合溶液に、メチルトリメトキシシラン7.5g、テトラエトキシシラン11.46gを加えて、40%メチルアミン水溶液3.0gを添加して60℃で2時間反応させた。ついで、プロピレングリコールモノプロピルエーテル120gを添加し、溶液全体重量が60gになるまでロータリー蒸発器を使用して溶媒を蒸発させた。製造した有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量は890,000であった。
【0093】
(絶縁膜の製造)
製造した絶縁膜形成用コーティング組成物20gに、水1.0gを添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0094】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.21であり、弾性率は4.41GPa、硬度は0.60GPaであった。
【0095】
比較例6
(絶縁膜形成用コーティング組成物の製造)
比較例5と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0096】
(絶縁膜の製造)
水を添加しないことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0097】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.20であり、弾性率は4.31GPa、硬度は0.59GPaであった。
【0098】
比較例7
(絶縁膜形成用コーティング組成物Iの製造(塩基触媒反応))
比較例5と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0099】
(絶縁膜形成用コーティング組成物IIの製造(酸触媒反応))
有機溶媒であるテトラヒドロフラン300gに、メチルトリメトキシシラン100.0gとテトラメトキシシラン44.7gを加えた後、蒸溜水262.2gをさらに混合し、0.1N濃度の硝酸水溶液29.1gをゆっくり添加した。これを30分間室温で反応させた後、温度を徐々に上げて、還流しながら一晩反応(約24時間)させた。反応完了後、反応溶液をジエチルエーテル溶媒で希釈し、pHが中性になるまで水で洗浄した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて残っている水を完全に除去し、残りの有機層の溶媒を真空オーブンで完全に除去して有機ポリシロキサン前駆体を得た。得られた有機ポリシロキサン前駆体の重量平均分子量は1,680であった。前記有機ポリシロキサン前駆体をプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒に20重量%溶液になるように溶解させて、絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0100】
(絶縁膜の製造)
製造した絶縁膜形成用コーティング組成物Iを60g、絶縁膜形成用コーティング組成物IIを20g混合した溶液に3.0gの水を添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0101】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.49であり、弾性率は6.8GPa、硬度は1.0GPaであった。
【0102】
比較例8
(絶縁膜形成用コーティング組成物Iの製造(塩基触媒反応))
比較例5と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0103】
(絶縁膜形成用コーティング組成物IIの製造(酸触媒反応))
比較例7と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0104】
(絶縁膜の製造)
水を添加しないことを除いては、比較例7と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0105】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.48であり、弾性率は6.7GPa、硬度は1.0GPaであった。
【0106】
比較例9
(絶縁膜形成用コーティング組成物Iの製造(塩基触媒反応))
比較例5と同一の方法で絶縁膜形成用コーティング組成物を製造した。
【0107】
(絶縁膜の製造)
前記絶縁膜形成用コーティング組成物20gに、分子量が5,000でありポリエチレンオキシド(PEO)30重量%が含まれたポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレンオキシド(PPO)−ポリエチレンオキシド(PEO)トリブロック共重合体を20重量%含む溶液を0.3g添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で絶縁膜を製造した。
【0108】
製造した絶縁膜の誘電定数は2.33であり、弾性率は4.8GPa、硬度は0.56GPaであった。
【0109】
実施例1および2ならびに比較例1〜9で製造した絶縁膜の機械的強度と誘電率を下記の方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0110】
a)機械的強度−シリコンウエハー上に絶縁膜をスピンコーティングでコーティングして硬化した後、ナノインデンター(Nano Indenter)を使用して測定した。
【0111】
b)誘電率−MIS(metal insulator semiconductor)方式によってシリコンウエハー上に絶縁膜をスピンコーティングでコーティングして硬化した後、絶縁膜上にA1(アルミニウム)を蒸着し、1MHzで測定した。
【0112】
c)実施例1で製造した有機ポリシロキサン前駆体の縮合反応可能な官能基に対するヒドロキシル基のモル比を1H−NMRスペクトルで測定し、その結果を図1に示した。
【0113】
【表1】

【0114】
表1に示すように、実施例1および2の絶縁膜と比較例1〜4の絶縁膜とを比較すると、特定の低分子量の有機ポリシロキサン前駆体と特定量の水を含む絶縁膜形成用コーティング組成物から製造した実施例1の絶縁膜は、水を含まなかったり微量の水を含む比較例1〜4の絶縁膜より誘電率が低く、弾性率が高いことが分かる。
【0115】
また、気孔形成物質を添加して気孔を形成した実施例2と比較例4の絶縁膜においても、水を含む実施例2の絶縁膜が、低い誘電率と高い弾性率を示すことが分かる。
【0116】
一方で、比較例5〜9でみられるように、塩基反応による高分子量の有機ポリシロキサンを含有する場合、乾燥および硬化工程中での水による誘電特性および強度の向上が微々たるものであり、また、比較例5および9でみられるように、高分子量の有機ポリシロキサン前駆体を含むと効果的に誘電定数を低くすることはできるが、少量の低分子の有機ポリシロキサンが気孔形成を抑制し、誘電率が高まることが分かる。
【0117】
また、高分子量の有機ポリシロキサン前駆体と気孔形成物質を一緒に使用する比較例9の場合、気孔が効果的に形成されず、むしろ誘電定数が増加した。
【0118】
表1に示すように、本発明の絶縁膜形成用コーティング組成物によれば、低い誘電率を有し、かつ機械的強度が優れた絶縁膜を製造することができることが確認できる。
【0119】
前記のとおり、本発明は、低誘電率および顕著に向上した機械的強度を有する絶縁膜形成用コーティング組成物、その組成物をコーティングおよび硬化することによって製造される半導体素子用の絶縁膜ならびにその絶縁膜からなる半導体素子を提供する。
【0120】
本発明を好ましい実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変更や置換がなされ得ることは当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施例1で製造した有機ポリシロキサン前駆体のヒドロキシル基のモル比を1H−NMRスペクトルで測定したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体;
b)有機溶媒;および
c)水;
を含む絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項2】
a)前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部;
b)前記有機溶媒200〜2,000重量部;および
c)水5〜60重量部;
を含む請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項3】
前記有機ポリシロキサン前駆体における、有機ポリシロキサン前駆体の縮合反応が可能な官能基全体に対するヒドロキシル基のモル比が80%以上である請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項4】
前記有機ポリシロキサン前駆体における、シリコン原子に対する加水分解が可能でない官能基のモル比(官能基/Si)が0.35〜0.75である請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒が、非アルコール系エーテル系溶媒または非アルコール系エステル系溶媒である請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項6】
前記有機ポリシロキサン前駆体が、分子内に下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として含む請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
[化学式3]
【化1】

(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【請求項7】
d)気孔形成物質をさらに含む請求項1記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項8】
前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部に対して、d)5〜100重量部の気孔形成物質をさらに含む請求項7記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項9】
前記気孔形成物質が、200〜450℃で熱分解される直鎖状有機分子、直鎖状有機高分子、架橋型有機分子、架橋型有機高分子、超分枝型有機分子、超分枝型高分子、デンドリマー型有機分子およびデンドリマー型有機高分子からなる群より選択される1種以上の物質である請求項7記載の絶縁膜形成用コーティング組成物。
【請求項10】
低誘電絶縁膜の製造方法であって、
a)重量平均分子量が500〜30,000である有機ポリシロキサン前駆体を調製する工程;
b)i)該有機ポリシロキサン前駆体、ii)有機溶媒およびiii)水を混合して、絶縁膜形成用コーティング組成物を調製する工程;
c)該絶縁膜形成用コーティング組成物を半導体素子の基材に塗布する工程;および
d)該塗布した絶縁膜形成用コーティング組成物を乾燥および焼成して絶縁膜を形成する工程;
を含む低誘電絶縁膜の製造方法。
【請求項11】
前記有機ポリシロキサン前駆体が、
i)下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマー;
ii)酸触媒;および
iii)水または水と有機溶媒の混合物;
を混合し、加水分解および縮合反応させて製造される請求項10記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリル、またはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
[化学式3]
【化2】

(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【請求項12】
前記有機ポリシロキサン前駆体が、分子内に下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として含む請求項10記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリル、またはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
[化学式3]
【化3】

(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【請求項13】
前記コーティング組成物が、i)前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部;ii)前記有機溶媒200〜2,000重量部;およびiii)水4〜60重量部を含む請求項10記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
【請求項14】
前記組成物がiv)気孔形成物質をさらに含む請求項10記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
【請求項15】
前記組成物が、前記有機ポリシロキサン前駆体100重量部に対して、iv)5〜100重量部の気孔形成物質をさらに含む請求項14記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
【請求項16】
前記気孔形成物質が、200〜450℃で熱分解される直鎖状有機分子、直鎖状有機高分子、架橋型有機分子、架橋型有機高分子、超分枝型有機分子、超分枝型高分子、デンドリマー型有機分子およびデンドリマー型有機高分子からなる群より選択される1種以上の物質である請求項14記載の低誘電絶縁膜の製造方法。
【請求項17】
請求項10記載の方法で製造される半導体素子用低誘電絶縁膜であって、下記の化学式1〜3で表示されるシラン化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物、それより製造されるダイマーまたはオリゴマーを、加水分解および縮合反応した繰返し単位として有する有機ポリシロキサン重合体を含む半導体素子用低誘電絶縁膜。
[化学式1]
SiR1p24-p
(前記式で、
1は、水素、アリール、ビニル、アリル、またはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
2は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
pは1〜2の整数である)
[化学式2]
3q43-qSi−M−SiR5r63-r
(前記式で、
3およびR5は、独立して、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
4およびR6は、独立して、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
Mは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレンであり、
qおよびrは、各々0〜2の整数である)
[化学式3]
【化4】

(前記式で、
7は、水素、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
8は、水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ、または−(CH2a−SiR910であり(aは2または3であり)、
9は、フッ素、アリール、ビニル、アリルまたはフッ素で置換されるかもしくは置換されない直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルキルであり、
10は、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシであり、
mおよびnは、3〜7の整数である)
【請求項18】
請求項17に記載の半導体素子用低誘電絶縁膜からなる半導体素子。

【図1】
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【公表番号】特表2006−516156(P2006−516156A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518168(P2005−518168)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000747
【国際公開番号】WO2004/090058
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】