説明

緊急避難モード付ナビゲーションシステム

【課題】車を運転している時に近くに大規模災害が発生し、緊急避難を行う時に、車のキーを差したまま、またドアロックをせずに避難する際、その後救急隊員等がその車を他の場所に移動した時にその位置等の情報等をドライバーに知らせることができるようにした「緊急避難モード付ナビゲーションシステム」とする。
【解決手段】災害情報を受信して近くに大きな災害が発生したことを検出することにより自動的に、或いは手動によって緊急避難モードの作動を開始した後、キーを挿入したままドアロックせずにドライバーが避難すると、その後エンジンの始動を検出した時には、車両の現在位置、及び移動軌跡を予め登録した携帯電話に送信する。その際には、衝撃センサによる車両の損傷情報、燃料残量、更には車内撮影カメラを搭載している時にはその画像を送信しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型地震等の大規模災害発生時に、走行中の車両が路側等に停止し、運転者が車から降りて避難を行うときに作動する緊急避難モードの機能を備えたナビゲーションシステムに関し、特にこのような緊急避難時に車両にエンジンキーを付けたまま避難する際に、その後災害の救援隊員等がこの車両を別の箇所に移動するとき、ドライバーの携帯電話に車両の移動情報等を送信することができるようにした緊急避難モード付ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車を運転している時、大型地震が近くで発生した時、現在の車の運転の不安定さ等によって大型の地震が近くで発生したことを知ることができ、また、ラジオやテレビによって地震情報が逐一放送され、現在地の近くで大型地震が発生したことを知ることができる。その際にはドライバーは後方車両等に配慮しながらブレーキをかけ、できる限り速やかに道路の左側に寄って停車すると共にエンジンを切り、ドライバー等の連絡先のメモを残し、キーを差し込んだまま、ドアロックをせずに安全な場所に避難することが推奨されている。
【0003】
このような緊急避難は前記のような地震の時に限らず、堤防の決壊等による川の氾濫時等の急な水害発生時や、大規模火災発生時等における災害発生時にも同様に避難することが必要となる。このようにしてキーを差し込んだまま車両を離れることにより、その後災害救助作業や災害復旧作業等に際して、消防車や大型トラック、更には重機の通行のために道路に駐車した車両が邪魔になる時には、救急隊員や作業者がそれらの車両のキーによってエンジンを始動し、運転して邪魔にならない場所に移動することができる。
【0004】
なお、災害発生時に道路等に停車している車両が、救急車両の通過や救助活動の障害とならないように、キーがなくても暗証番号を入力することにより所定の短距離だけ移動できるようにした技術は特許文献1に開示されている。また、車両の駐車時に、係員にキーを渡して駐車作業をしてもらうバレーパーキング時に、車両が所定領域外に出たことを検出して車両の移動を制限する技術は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−144595号公報
【特許文献1】特開2010−922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、車を運転している時に大規模災害が近くで発生した時には、ドライバーは道路の左側に速やかに停止し、連絡先のメモをおいてキーを差したまま、またドアロックせずに安全な場所に避難することになっている。そのため、緊急車両の通過時や救援作業の妨げになる時には、それらの車を移動することが行われるが、その移動作業を急いでいる作業員等にとってはドライバー等への連絡を行っている時間はなく、作業終了後に車を移動したことを連絡することも行われない場合もあり得る。また、車のキーを差したまま、ドアロックせずに車を離れると、第三者がこの車を運転して別のところに移動し、乗り捨てて立ち去ることもあり、また、車両の盗難も考えられる。
【0007】
更に、大型災害発生地域内、或いは近接している地域では、道路上に前記のように駐車してドライバー等が避難した後、他の車の衝突によって、或いは落石や土砂によって、更には周囲の建物や立木が倒れることによって、車に大きな損傷が発生し、車が動かなくなっている場合も考えられる。その時には後にこの車をとりに行った際、運転できない状態に大破していることを知った時、そこで車の移動依頼等の検討を行わなければならなくなる。
【0008】
したがって本発明は、車を運転している時に近くに大規模災害が発生し、緊急避難を行う時に、車のキーを差したまま、またドアロックをせずに避難する際、その後救援隊員等がその車を他の場所に移動した時にその位置等の情報等をドライバーに知らせることができるようにした緊急避難モード付ナビゲーションシステムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記課題を解決するため、現在位置を検出する現在位置検出手段と、車内にキーを残したまま利用者が車外に避難する緊急避難時の作動モードにすることを指示する緊急避難モード作動指示手段と、緊急避難時に車両情報を送信する電話の番号を登録する緊急避難時車両情報送信電話登録手段と、エンジンの始動及び停止を検出するエンジン作動検出手段と、前記緊急避難用作動指示手段で緊急避難モードの作動指示を行った後に、前記エンジン作動検出手段でエンジンの始動を検出した時、前記現在位置検出手段で検出した車両の現在位置情報を、前記緊急避難時車両情報送信電話登録手段で登録している電話に対して送信する緊急避難時車両情報処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記緊急避難モード付ナビゲーションシステムにおいて、前記緊急避難モード作動指示手段では、利用者が手動で作動指示を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記緊急避難モード付ナビゲーションシステムにおいて、前記緊急避難モード作動指示手段は、災害情報受信手段で災害情報を受信し、当該災害情報の緊急避難地域に駐車したことを緊急避難地域内駐車検出手段で検出した時、緊急避難モードの作動を自動的に作動指示することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記緊急避難モード付ナビゲーションシステムにおいて、前記緊急避難モード作動指示手段は、災害情報受信手段で災害情報を受信し、現在路上駐車していることを検出した時、緊急避難モードの作動を自動的に作動指示することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記緊急避難モード付ナビゲーションシステムにおいて、前記緊急避難時情報処理手段で電話に送信する車両情報は、前記現在位置検出手段で検出した位置データから得られる車両移動軌跡データであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の緊急避難モード付ナビゲーションシステムは、前記緊急避難モード付ナビゲーションシステムにおいて、前記緊急避難時情報処理手段で携帯電話に送信する車両情報は、車両の損傷情報、または燃料残量、または車内撮影カメラ画像のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のように構成したので、車を運転している時に近くに大規模災害が発生し、緊急避難を行う時に、車のキーを差したまま、またドアロックをせずに避難する際、その後作業員等がその車を他の場所に移動した時にその位置を、また、第三者が別の場所に移動した時には車両の位置を、車両に搭載したナビゲーション装置を利用してドライバーに知らせることができる。また、移動軌跡、更に車両の損傷情報等の車両の各種情報を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例の作動フロー図である。
【図3】図2の車両情報送信先電話登録処理を行う作動フロー図である。
【図4】図2のキー抜取り警告処理を行う作動フロー図である。
【図5】図2の運転者緊急避難後の車両情報送信処理を行う作動フロー図である。
【図6】(a)は緊急避難時の車両情報送信先電話番号の手入力画面の例を示す図であり、(b)は手動モード作動時の車両情報送信先電話番号の確認画面例を示す図である。る。
【図7】緊急避難モード作動時のキー抜取り警告表示例を示す図である。
【図8】緊急避難モード設定中における警告画面の例を示す図である。
【図9】緊急避難中に携帯電話に送信された車両情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の機能ブロック図であり、本発明を各種の態様で実施することができるようにした例を示している。したがって本発明は、これらの機能ブロックの内、任意のものを選択して、各種の態様で実施することができる。なお、同図において各機能を行う機能部は、各機能を行う手段と言うこともできる。
【0018】
図1に示す例においては、従来から用いられているナビゲーション装置の中において、特に本発明を実施するために必要となる各種機能部のみを示しており、図示以外に例えばモニタへの地図表示機能、誘導経路案内機能等の種々の機能部を備えている。本発明による緊急避難時の車両情報を送信する作動モードを設定する緊急避難モード作動指示部1を備えており、自動作動指示部2に設定している時には、後述するように外部から取り込んだ災害情報等によって自動的に本発明の作動を行う。
【0019】
また、手動作動指示部3では、前記自動指示部2に自動モードで誘うする設定をしていない時、或いはそのような自動モードに設定していても自動作動しない状態で利用者が手動で強制的に作動させる時に緊急避難自車両情報送信作動を行う。作動停止部4では、本発明による一連の作動が行われた後、緊急避難モードを解除するために、暗証番号入力等を行うことによってモードの解除を行う。この緊急避難モード作動指示部1の指示により、本発明の各種機能部が作動を行い、また作動を終了する。
【0020】
キー抜取り警告処理部5では、キー挿抜検出部6においてこの車両のアクセサリースイッチ及びエンジンの始動停止を行うキーを抜いたか、挿入しているかを検出する。キー抜取り警告出力部7では、前記緊急避難モード作動指示部1によって自動的に、或いは手動によって作動指示がなされた時に、エンジンのキーを抜き取ったことを検出した際には、キーを抜かないようにビープ音や、例えば図7に示すようなモニタへの表示、更には同様の趣旨の音声案内によって警告出力を行う。
【0021】
エンジン作動検出部8では、エンジンの始動停止を行うキーの状態を検出するものであり、エンジン始動検出部9ではキーがONの位置にあることを検出し、エンジン停止検出部10ではキーがOFF或いはアクセサリスイッチ位置にあることを検出する。その内エンジン始動検出部8でエンジンの始動を検出した時には、後述する緊急避難時車両情報処理部35に出力して、緊急避難後にエンジンが始動したことをドライバー等の携帯電話にその情報を送信可能とする。また、エンジン停止検出部10でエンジンの停止を検出した時には、駐車位置判別部25で車両が駐車したものとして、後述するようにその位置の判別処理を行う。
【0022】
現在位置検出部11では、ナビゲーション装置の通常の機能として備えているGPS受信器12等からの信号等によって車両の現在位置を検出し、各種の機能部でこれを利用可能とする。車両移動検出部13ではその現在位置検出部11からの信号を順次記憶することにより、車両が移動したこと、及びその移動経路としての移動軌跡を検出する。その検出結果は図1の例では特に緊急避難時車両情報処理部35において、携帯電話34に送信するデータとして用いている。
【0023】
災害情報受信部14では、例えばラジオやテレビから放送される地震情報等の災害情報を通信部18によって受信する。その際には例えばVICS等の交通情報によって、或いは各種の車両への情報提供センターからの情報により災害情報を受信して取り込むことができる。その中の緊急避難地域情報受信部15では、受信した災害情報の中から、特に緊急避難を行うように指示されている地域の情報を取り込み、後述する駐車位置判別部25に出力して、現在の駐車位置がその地域内に存在するか等の判断用データとする。
【0024】
地図データ取込部17では、ナビゲーション装置が通常備えている地図データベース18から必要な地図データを取り込んで利用可能とする。図1の例においては駐車位置判別部25においてこのデータを用い、現在位置が緊急避難地域内か否かの判別を行い、また、緊急避難時車両情報処理部35において、携帯電話34に送信する車両移動情報用の地図データとしても用いている。車内カメラ画像取込部19では、特に車内の運転者を撮影するカメラ20の画像を取り込み、緊急避難時車両情報処理部35によって携帯電話34にこれを送信可能とする。
【0025】
緊急避難時車両情報送信電話番号登録部21では、後述するように緊急避難時車両情報処理部35で形成した車両情報を送信する携帯電話34等の電話番号を登録するものであり、その中の通信接続携帯電話検出部22では、ドライバー等が車内に持ち込んだ携帯電話がブルートゥース等の相互通信可能な通信機能を備え、同様の機能を備えたこのナビゲーション装置と自動的に通信を行う時、ナビゲーション装置が携帯電話の番号情報を取り込むことによって自動的にこの携帯電話を緊急避難時に車両の情報を受信する携帯電話として登録する。この作動は自動作動指示部2で前記のように自動モードで作動を行うものとしている時、前記電話番号の検出によって、これを自動的に登録することができ、ドライバーは格別の操作を行うことがなくても、一連の作動を行うことができるようになる。
【0026】
登録用画面出力部23では、予めこのナビゲーション装置の初期設定として、緊急時に車両の情報を送信する電話の番号を登録する際に、例えば図6(a)に示すような、所定の画面を出力する。また、そのような登録がなされていない時で、前記のようなブルートゥース等による自動登録が行われない時には、緊急避難モード作動指示部1で作動を開始する指示があった際には、電話番号を登録する登録用の同様の画面を出力する。なお、図6(b)には、予め登録してある電話が、現在でもこれで良いのかを確認するために表示する時の例を示している。このような画面によって、手入力登録部24は携帯電話の番号を登録する。
【0027】
駐車位置判別部25では、自動作動指示部2の指示により前記のように自動モードで作動を行う時、災害情報受信部14で災害情報を受信した際には、エンジン作動検出部8でエンジンを停止したことを検出した時には、緊急避難のために駐車を行ったものと判断し、そのときの現在位置がどのような位置であるかを判別する。図1に示す例においては、緊急避難地域内駐車検出部26で、前記のように災害情報受信部14で受信した情報の中の、緊急避難地域情報15に基づき、現在位置検出部11で検出した現在地が、地図データ取込部17で取り込んだ地図データにより緊急避難地域内に存在するか否かを検出する。
【0028】
図1の例では、駐車位置判別部25には更に各種の駐車位置の判別処理を行う例を示しており、緊急駐車推定部27では、その中の路上駐車検出部28において、前記のように災害の発生を検出した後、現在位置検出部11のデータと、地図データ取込部17で取り込んだ地図データによって、現在駐車した位置が路側に駐車施設が存在しない道路上であることを検出した時に、現在は路上駐車を行っていることを検出し、緊急のため路上に駐車しているものと推定する。
【0029】
緊急駐車推定部27では、そのほか前記のように災害発生時において路上駐車を行ったことを検出した時、更に周囲に特に目的地となりそうな施設がない場所であることを検出した際に、現在は災害発生のため緊急に路上駐車したものと判別するようにしても良い。常用駐車場駐車検出部29では、ナビゲーション装置に常日頃車両が駐車した位置のデータを蓄積する駐車位置蓄積データ30が存在する時、そのデータを読み込んで、現在駐車した位置は例えば家の駐車場、勤務先の駐車場等の常用している駐車場であることを検出した場合には、前記のように自動作動指示部2によって自動モードで作動を行った時でも、本発明によるその後の各種処理を行う必要がないものと判断するためのデータとして用いる。
【0030】
車両衝撃検出部31では、車両に設けた加速度センサ等の衝撃検出センサを用いて、災害発生時にドライバーが車から避難した後で、車両に何らかの衝撃が加わった時、これを検出する。その検出結果により、車両損傷推定部32では衝撃が加わった車両の位置、及び衝撃を受けた方向、その程度等によって予め入力してあるデータに基づき、車両の損傷の状況を推定する。
【0031】
それにより、車両後方から衝撃を検出した時には追突があったと推定し、またその衝撃の程度から車両の運転には支障がないと推定する。また、前方からの大きな衝撃を検出した時には、エンジンを含めて大きな損傷があったと推定し、レッカー移動等が必要になっていることを推定する。この情報は後述する緊急避難時車両情報処理部35に出力して、携帯電話34への送信データの一つとする。また、燃料残量検出部33では車両の現在の燃料の残量を検出し、緊急避難時車両情報処理部35によって、ドライバーの携帯電話等にこれを送信することを可能とする。
【0032】
緊急避難時車両情報処理部35では、運転者が緊急避難のため車両を離れている時に、各種の車両情報を処理する。その処理の一つとして、緊急避難モード作動中表示部36を備え、前記のようにドライバーがキーを挿入したまま緊急避難した後、他の人がこの車両を移動しようとした時、例えば図8に示すような警告表示を行う。それにより、この車を持ち去ろうとした人がエンジンを始動した時、この表示により車の移動が監視されていることを知り、車の移動が安易に行われないようにすることができ、車両の盗難の防止にも役立つこととなる。
【0033】
通信部36は、ドライバー等の緊急避難時において、ドライバーの携帯電話等の、前記緊急避難時車両情報送信電話番号登録部21で登録した電話に対して、その後の車両の各種情報を送信する。図1の例では送信用車両情報38として示した各種情報の内、必要なものを送信する。図1に示す送信用車両情報38としては、車両が移動した情報である車両移動情報39を送信可能としている。
【0034】
この時の車両移動情報39としては、最低限の情報として車両現在位置40の情報を送信可能とする。これは前記現在位置検出部11のデータと、地図データ取込部17からの地図データにより得ることができる。また車両移動軌跡41については、前記車両移動検出部13で検出した車両の移動データにより、緊急避難した後の車両の移動軌跡を携帯電話に送信可能とする。
【0035】
通信部37から携帯電話に送信する情報としては、そのほか前記車両損傷推定部32から取り込んだ車両損傷情報42の情報も送信することができる。更に前記燃料残量検出部33で検出した車両の現在の燃料残量43も送信可能とする。また、車内を撮影するカメラ20を備えている時には、その画像を取り込んで、車内撮影カメラ画像44として携帯電話に送信可能としている。なお、図1には車両情報を受信する電話として携帯電話を用いた例を示したが、近年広く利用されるようになっている、携帯電話と同様の機能、或いはそれ以上の機能を備えた固定電話を用いることもできる。
【0036】
図1に示すような機能ブロックからなるナビゲーションシステムにおいては、例えば図2に示すような作動フローにより実施することができる。図2に示す緊急避難時の車両情報処理の例においては、最初このシステムが自動的に作動を行う自動モードにしているか否かを判別する(ステップS1)。即ち、本発明における緊急避難時の車両情報処理の作動においては、ドライバー等の利用者が周囲の状況の判断によって手動で作動を開始する手動作動モードと、このような利用者による指示がなくても作動することができるように予め設定している自動モードとが存在し、ここでは少なくとも現在の車両が前記自動モードで作動する設定になっているか否かを判別する。この作動は、図1の緊急避難モード作動指示部1において、自動作動指示2がなされているか否かを検出することにより行われる。
【0037】
現在自動モードになっていると判別した時には、災害情報を受信したか否かを判別する(ステップS2)。この作動は図1の災害情報受信部1で、ラジオやテレビの災害情報を受信し、或いは交通情報や車両への各種情報を提供している情報センターからの災害情報を受信することにより行う。その災害情報の中には、例えば地震の震源地、地震の規模、各地の震度、その地震が激震の場合は緊急避難を行うべき地域の情報が含まれている。
【0038】
ステップS2で災害情報を受信したと判別した時には、現在位置を取得し(ステップS3)、次いで現在の自車両は災害情報における緊急避難地域内か否かを判別する(ステップS4)。その判別に際しては、図1の地図データ取込部17からの地図データで緊急避難地域の範囲を特定し、現在位置がその範囲内に存在するか否かを検出することにより行う。
【0039】
ステップS4において現在位置が緊急避難地域内であると判別した時には、エンジンを停止したか否かを判別する(ステップS5)。ここで未だエンジンを停止していないと判別した時にはステップS1に戻って前記作動を繰り返す。その際、自動モードか否かの判別で先と同様に自動モードになっている時、ステップS2では既に災害情報を受信したと判別し、ステップS3で車両の移動によって新たな現在位置を取得し、ステップS4でその現在位置が未だに緊急避難地域内であるか判別して、地域内である時には再びステップS5でエンジンを停止したか否かを判別する作動を継続する。
【0040】
前記のようにステップS4で自車両は現在災害情報における緊急避難地域内に存在すると判別した時において、ステップS5でエンジンを停止したと判別した際には、図2の例ではステップS6において駐車位置は路上か否かを判別している。即ち、図1の例においては、自動的に緊急避難モードに入り、エンジンが停止した時には、それは駐車したものと判断し、その駐車位置が路上であるか否かを判別する。
【0041】
ステップS6で駐車位置が路上ではないと判別した時には、次いでその駐車位置は通常使用している駐車場か否かを判別する。この判別に際しては、図1における緊急駐車推定部27における常用駐車場駐車検出部29で、例えば家の駐車場、或いは勤務先の駐車場等の常用駐車場として推定することできる。
【0042】
ステップS7で現在の駐車位置は前記のような通常使用している駐車場であると判別した時には、ステップS14に進んで、この処理を終了する。なお、この終了処理は図5のステップS50と同様である。即ち図2の例においては、現在駐車した位置が通常使用している駐車場である時には、前記のようにステップS2において自動モードによって処理を開始し、前記各処理を行った後でも、エンジンを停止した時の位置が通常使用している駐車場の時には、その後のキー抜取り警告処理や、ドアロック解除維持作動、及び運転者緊急避難後の車両情報送信処理等を行う必要はないものとしている。
【0043】
一方、前記ステップS1で自動モードになっていないと判別した時、及びステップS2で災害情報を受信していないと判別した時、更にはステップS4で自車両は現在災害情報における緊急避難地域内には無いと判別した時は共に、ステップS12に進んで、利用者が緊急避難モードに設定したか否かを判別する。ここで利用者が緊急避難モードに設定していないと判別した時にはステップS1に戻って前記作動を繰り返す。
【0044】
この処理の結果、ステップS1で予め自動的に作動するモードになっていると判別された場合でも、ステップS2において災害情報がが受信できない時に、利用者が緊急避難時の各種処理を行う作動を開始すると判断した時には、手動モードによって処理を開始することができる。また、災害情報を受信した時にでも、現在位置が緊急避難地域ではない、或いはその判断ができない場合には、ステップS12において利用者の判断で緊急避難時の各種処理を行わせることができる。
【0045】
ステップS12で利用者が緊急避難モードに設定したと判別した時には、前記ステップS6と同様にエンジンを停止したか否かを判別し(ステップS13)、未だエンジンを停止していないと判別した時にはステップS1に戻って、その後のモード変更等を確認して前記作動を継続する。
【0046】
前記自動モードでの作動中におけるステップS6において、駐車位置は路上であると判別した時、及び駐車位置は通常使用している駐車場ではないと判別した時、そのほか同図には示していないが、駐車位置の周囲には特に目的地となるような施設等が存在しないような場所であると判別した時、更には手動モードで作動している時にエンジンを停止した時には、いずれもステップS8に進み、図3に示すような車両情報送信先電話の登録確認処理を行う。
【0047】
その後、図4に示すようなキー抜取り警告処理を行い(ステップS9)、次いでドアロックを行わないようにドアロック解除維持の作動を行う(ステップS10)。それにより、ステップS9でキーの抜取り警告を行ってキーを差したまま車両から離れるように警告を行うと共に、その際にドアロックを行ってしまって、救援隊等がこの車両を移動するために車内に入ることができないようになることを防止する。更にその後、図5に示すような運転者緊急避難後の車両情報送信処理を行って(ステップS11)これらの一連の処理を終了する。
【0048】
図2のステップS8における車両情報送信先携帯電話登録確認処理を行うに際しては、例えば図3に示すような処理を行う。即ち図3に示す例においては最初、利用者所持携帯電話とナビゲーション装置は自動通信可能に接続しているか否かを判別する(ステップS21)。ここでは車両に搭載しているナビゲーション装置とドライバー等が車内に持ち込んだ携帯電話とが、ブルートゥース等の通信機能によって相互に通信可能に接続している時は、ステップS29に進んで、その携帯電話は情報送信先として最も確実性の高い電話として、優先的に登録を行う例を示している。
【0049】
ステップS21において利用者所持携帯電話とナビゲーション装置は自動通信可能に接続していないと判別した時には、ステップS22において車両情報受信用電話の登録をしているか否かを判別する。そのため、このナビゲーション装置においては予め、初期設定として例えば図6(a)に示すような画面を表示し、緊急避難時において車両情報を送信する携帯電話等の電話番号を入力して登録を行っておく。なお、ここで登録する電話は、前記のように携帯電話とすることが多いが、それ以外に近年広く利用されるようになってきた、携帯電話と同様の機能を備え、更にはパソコンと同様に大容量の通信データの記憶機能等を備えた固定電話を登録しておくこともできる。
【0050】
このように緊急連絡先として特定の電話を登録している時には、図3の例においてはステップS23において、登録済みの電話について、本当にこれで良いのかの確認用の画面を表示し、登録済みの電話以外の電話が適切であると判断した時には、その画面で新たな電話番号を入力して登録する。その際には例えば図6(b)に示すように、予め登録している電話の番号を表示し、他の電話の方が適切であると判断した時には、その時に適切と思われる電話の番号をこの画面によって入力し、確定操作によって登録する。なお、ここに新たな電話番号を入力せずに確定した時には、予め登録してある電話をそのまま利用することとなる。
【0051】
なお、前記の例においては、予め緊急避難時の連絡先を登録してあっても、その登録が数年前の古いデータであることを考慮し、その後の環境変化に対応するため、現在車両に持ち込まれている携帯電話を最優先し、更に以前登録した電話で良いのかの確認を行う例を示しているが、それ以外に、予め登録している電話を最優先とし、そのような登録を行っていない時に車内に持ち込まれた携帯電話を自動的に登録するようにしても良い。その際には登録済みの電話の確認画面を出力しなくても良い。
【0052】
図3の例においては、ステップS23で登録済携帯話の確認用画面を表示した後、ステップS24において新たな電話番号を入力したか否かを判別し、新たな電話番号を入力していない時には、登録済みの電話を車両情報受信用電話として使用することとする。また、新たな電話番号を入力した時には、その入力した電話番号を車両情報受信用電話として登録する(ステップS25)。
【0053】
前記ステップS22において、車両情報受信用電話の登録をしていないと判別した時には、ステップS26において、例えば図6(a)に示すような車両情報受信用電話の登録用画面を表示し、車両情報受信用電話の電話番号の入力を行う(ステップS27)。この入力を確定することによって、入力した電話番号を車両情報受信用電話として登録する(ステップS25)。これらの作動は、図1においては緊急避難時車両情報送信電話番号登録部21において行っている。
【0054】
前記のようにして車両情報送信先の携帯電話を登録した後は、ステップS30において、図4に示すようなキー抜取り警告処理を行う。即ち、前記図2のステップS9としてのキー抜取り警告処理は図4に示すように、最初キーを抜いたか否かの判別を行い(ステップS31)、抜いたと判別した時にはステップS32において、例えば図7に示すような緊急避難モードのためキーを抜かないように警告出力を行う。
【0055】
このような画面表示により利用者はキーを抜き出してはいけないことに気が付き、キーを挿入することとなる(ステップS33)。このようなキー抜取り警告処理を行った後は、図2のステップS10に進み、前記のようなドアロック解除維持作動を行い、次いで図5に示すような、運転者緊急避難後の車両情報送信処理を行う。
【0056】
図5に示す運転者緊急避難後の車両情報送信処理の例においては、最初車両に所定以上の衝撃が加わったか否かの判別を行っている(ステップS41)。ここで所定以上の衝撃が加わったと判別したときには、車両の損傷状況を推定する(ステップS42)。
【0057】
ここでは車両に設けたXYZ軸の3次元加速度センサ等を用い、車両に対する所定以上の衝撃が、例えば車両の後方から、または前方から、左右いずれかの側方から、更には車両の上方から加わったこと、及びその衝撃の程度を計測し、予め入力してあるデータによってそれらの衝撃による車両の損傷の状況を推定する。これらの作動は図1の車両衝撃検出部31の検出データによって、車両損傷推定部32が車両に対する損傷の程度を推定することによって行っている。
【0058】
その後、前記ステップS41で車両に所定以上の衝撃が加わっていないと判別した時と共にステップS43に進み、エンジンを始動したか否かを判別する。ここでエンジンを始動したと判別した時には、例えば図8に示すように、モニタに対して緊急避難モード中であり、車両の移動情報がこの車の持ち主やドライバー等に送信されることを表示する(ステップS44)。また、ステップS43においてエンジンを始動していないと判別した時には、ステップS41に戻って前記車両への衝撃検出作動を繰り返す。
【0059】
ステップS44において図8に示すような表示を行った後は、車両は移動したか否かを判別する(ステップS45)。ここで車両が移動したと判別した時には、登録した電話に車両の情報を送信する(ステップS46)。この時に送信する車両の情報としては各種のものを送信することができるが、図1の送信用車両情報38に示すような各種情報を送信することができる。但し、実際の使用に際しては、最低限車両の現在位置を送信するものとし、後は必要に応じて任意のものを選択して送信することができる。
【0060】
図5に示す登録した携帯電話に送信する車両情報としては、前記図1の送信用車両情報38と同様に、車両の現在位置や車両の移動軌跡等の車両の移動情報461、車両の損傷情報462、燃料残量463、車室内撮影カメラ画像464等を送信する例を示している。それにより災害の発生によって緊急避難したこの車両のドライバー等の利用者は、電話により車両が移動したことを知ると共に移動の状態を知ることができ、最終的に車両が到着した先、及びその他の各種車両情報も知ることができる。
【0061】
この時の携帯電話での表示例を図9に示しており、同図(a)及びその画面部分の拡大図である同図(b)に示すような各種の車両情報について、特に地図表示を選択した時、同図(c)及び(d)に示すような車両の現在位置、走行軌跡を地図と共に表示する。
【0062】
このような表示が行われる結果、以降においてこの車をその場所に容易に取りに行くことができる。その際には、車が損傷して移動できないこと、燃料が少ないこと等を知ることもできる。特に車室内撮影カメラ画像が送信されてくる時には、車両が盗難されようとしていること、犯人の画像、走行している場所をそのまま警察に連絡する等により、車両の盗難対策として有効となる。
【0063】
ステップS46で前記のような送信処理を行った後は、エンジンを停止したか否かを判別し(ステップS47)、未だエンジンを停止していないと判別した時にはステップS41に戻って前記作動を繰り返す。それに対してステップS47でエンジンを停止したと判別した時には、図8に示すような表示を停止し、警告表示を行っているモニタをオフする。
【0064】
次いで緊急避難モードを解除したか否かを判別し(ステップS49)、利用者がその後この車を取りに来た時、暗証番号を入力する等によって緊急避難モードを解除し(ステップS49)、通常の車両状態に戻して、前記一連の処理を終了する(ステップS50)。ステップS49で未だ緊急避難モードを解除していないと判別した時には、ステップS41に戻って前記作動を繰り返す。前記の例は本発明の実施例の一態様であり、更に各種の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 緊急避難モード作動指示部 2 自動作動指示部
3 手動作動指示部 4 作動停止指示部
5 キー抜取り警告処理部 6 キー挿抜検出部
7 キー抜取り警告出力部 8 エンジン作動検出部
9 エンジン始動 10 エンジン停止
11 現在位置検出部 12 GPS
13 車両移動検出部 14 災害情報受信部
15 緊急避難地域情報 16 通信部
17 地図データ取込部 18 地図データベース
19 車内撮影カメラ画像取込部 20 カメラ
21 緊急避難時車両情報送信電話番号登録部 22 通信接続携帯電話検出部
23 登録用画面出力部 24 手入力登録部
25 駐車位置判別部 26 緊急避難地域内駐車検出部
27 緊急駐車推定部 28 路上駐車検出部
29 常用駐車場駐車検出部 30 駐車位置蓄積データ
31 車両衝撃検出部 32 車両損傷推定部
33 燃料残量検出部 34 携帯電話
35 緊急避難時車両情報処理部 36 緊急避難モード作動中表示部
37 通信部 38 送信用車両情報
39 車両移動情報 40 車両現在位置
41 車両移動軌跡 42 車両損傷情報
43 燃料残量 44 車内撮影カメラ画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を検出する現在位置検出手段と、
車内にキーを残したまま利用者が車外に避難する緊急避難時の作動モードにすることを指示する緊急避難モード作動指示手段と、
緊急避難時に車両情報を送信する電話の番号を登録する緊急避難時車両情報送信電話登録手段と、
エンジンの始動及び停止を検出するエンジン作動検出手段と、
前記緊急避難用作動指示手段で緊急避難モードの作動指示を行った後に、前記エンジン作動検出手段でエンジンの始動を検出した時、前記現在位置検出手段で検出した車両の現在位置情報を、前記緊急避難時車両情報送信電話登録手段で登録している電話に対して送信する緊急避難時車両情報処理手段とを備えたことを特徴とする緊急避難モード付ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記緊急避難モード作動指示手段は、利用者が手動で作動指示を行うことを特徴とする請求項1記載の緊急避難モード付ナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記緊急避難モード作動指示手段は、災害情報受信手段で災害情報を受信し、当該災害情報の緊急避難地域に駐車したことを緊急避難地域内駐車検出手段で検出した時、緊急避難モードの作動を自動的に作動指示することを特徴とする請求項1記載の緊急避難モード付ナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記緊急避難モード作動指示手段は、災害情報受信手段で災害情報を受信し、現在路上駐車していることを検出した時、緊急避難モードの作動を自動的に作動指示することを特徴とする請求項1記載の緊急避難モード付ナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記緊急避難時情報処理手段で電話に送信する車両情報は、前記現在位置検出手段で検出した位置データから得られる車両移動軌跡データであることを特徴とする請求項1記載の緊急避難モード付ナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記緊急避難時車両情報処理手段で電話に送信する車両情報は、車両の損傷情報、または燃料残量、または車内撮影カメラ画像のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の緊急避難モード付ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42361(P2012−42361A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184497(P2010−184497)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】