説明

繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置

【課題】繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置において、寸法を過度に大きくすることなく、一部の層に十分な樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製容器を得ることである。
【解決手段】カーボン繊維30に樹脂を含浸させることにより得た樹脂含浸繊維32をライナー12に巻き付けるためのライナー回転装置36と、ライナー回転装置36のライナー12を配置する部分の下側に設けて、樹脂を収容した樹脂補充槽22とを備える。樹脂補充槽22は、補充槽上下移動機構38により上下方向に移動可能とする。樹脂補充槽22の上下位置を、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の巻き層の数に応じて変えることにより、ライナー12に巻き付けた複数の樹脂含浸繊維32の巻き層の内径寄り部分に含浸させた樹脂量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂量よりも多くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維供給部から送り出した繊維に、レジンバスで樹脂を含浸させることにより得た樹脂含浸繊維を、製品の形状を形作るライナーに巻き付けることにより繊維強化樹脂製容器を成形する繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から繊維強化樹脂により繊維強化樹脂製容器を成形することが考えられている。例えば、繊維強化樹脂製容器を成形する方法として、十分な強度を有する繊維、例えばカーボン繊維を用い、これに液状の熱硬化性樹脂を含浸させて、製品の形状を形作るライナーに巻き付け、熱硬化性樹脂を加熱硬化させることが考えられている。カーボン繊維は、有機高分子繊維を、例えば3000℃の高温で焼成し、極めて強度を高くできるので、例えば繊維強化樹脂製容器である高圧タンク等を、ライナーにカーボン繊維を巻き付ける、いわゆるフィラメントワインディング方法で製造することができる。カーボン繊維に樹脂を含浸させる方法として、温度制御された液体状の熱硬化性樹脂を満たした樹脂容器にカーボン繊維束を通過させることにより、カーボン繊維束に樹脂を含浸させることが考えられている。
【0003】
また、特許文献1には、補強繊維材によって強化された繊維強化プラスチックを回転により連続的に巻きとるマンドレルと、マンドレルの下に設けられ、予備含浸層で樹脂を含浸された補強繊維材にさらに樹脂液を含浸する含浸槽とを備える繊維強化プラスチック製品の製造装置が記載されている。含浸槽は、液位調節手段により樹脂液の液面とマンドレルの最下端が接触するように、樹脂液の液位を調節するとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−301047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された繊維強化プラスチック製品の製造装置の場合、繊維強化プラスチックの一部の層を構成する補強繊維にのみ、マンドレルの下に設けられた含浸層により樹脂を含浸させることは考慮されていない。このため、特許文献1に記載された製造装置の場合、繊維強化樹脂製容器の寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の、樹脂量が多いことを必要とする一部の層に十分な樹脂を含浸させることができない可能性がある。
【0006】
例えば、一般的に、カーボン繊維を使用したカーボン繊維強化樹脂(CFRP)等の繊維強化樹脂(FRP)製の容器であるタンクを、フィラメントワインディング方法で成形する際、カーボン繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維を、ライナーに数層から数十層巻き付ける工程を行う。このようにライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける工程において、ライナーでの樹脂含浸繊維の巻き取り時に繊維に張力が加わり、張力による巻き締め効果により、せっかく繊維間に樹脂を含浸させたのにもかかわらず、繊維強化樹脂の内層を構成する複数の繊維間から樹脂が外層側に染み出す傾向となる。すなわち、樹脂含浸繊維の積層数が多くなるのにしたがって、繊維強化樹脂の内層を構成する複数の繊維間から樹脂が外層側に染み出し、径方向外側から内側に向かうほど、全体の体積に占める繊維の割合である、繊維体積含有率であるVf(%)が高くなる傾向となる。Vfは、高くなるほど樹脂量が少なくなり、低くなるほど樹脂量が多いことを意味する。
【0007】
図4は、従来から考えられている方法により造られたカーボン繊維強化樹脂製タンクの1例の断面と、このタンクの部分拡大模式断面である(a)と、(a)の外層部分をさらに拡大した模式断面である(b)と、(a)の内層部分をさらに拡大した模式断面である(c)とを示している。図4に示すタンク10は、樹脂製のライナー12の周囲にカーボン繊維に樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維を巻き付け、樹脂を加熱硬化させることにより、ライナー12の周囲に繊維強化樹脂14を設けている。また、タンク10の長手方向両端部に口金16,18を固定している。また、CFRPである繊維強化樹脂14となる樹脂含浸繊維を巻き付けたものの外側にガラス繊維に樹脂を含浸したものを巻き付け、その後同時に加熱硬化させる、すなわち焼成することにより、繊維強化樹脂14の外側にGFRP(ガラス繊維強化樹脂)層であるガラス層20を設けている。
【0008】
図4の(b)(c)では、白丸によりカーボン繊維を、黒で塗りつぶした部分により樹脂を、それぞれ表している。図4(b)で示すように、繊維強化樹脂14の外層部分では、全体に占める樹脂量の割合が多いのに対して、図4(c)で示すように、繊維強化樹脂14の内層部分では、全体に占める樹脂量の割合は少ない。すなわち、繊維体積含有率である、Vfは、内層側で外層側に比べて高くなる。また、このような傾向は、繊維間に含浸した樹脂の粘度が低い場合に、樹脂の染み出し量が多くなるため、より顕著になる。
【0009】
また、繊維強化樹脂14製のタンク10は、使用圧が高くなるほど、強度確保のために繊維強化樹脂14の厚さを大きくする、すなわち、ライナー12に樹脂含浸繊維を巻く巻き層数を多くする必要があるため、巻き締め効果がより大きくなり、繊維強化樹脂14内層側のVfの上昇がより顕著になる。そして、タンク10内の圧力上昇により、最も大きな応力が加わる傾向となるのが内層であるため、内層のVfが過度に高い場合には、タンク10の疲労耐久性能が大幅に低下して、繊維強化樹脂14製のタンク10の内層部分に亀裂等の損傷が生じる可能性がないとはいえない。このため、繊維強化樹脂14のうち、特に内層部分のVfを最適に調節できる手段の実現が望まれている。
【0010】
一方、繊維強化樹脂14のVfを内層だけでなく外層も含め一律に低下させると、樹脂量が全体で多くなるため、タンク10の外径が大きくなってしまう原因となる。タンク10は、自動車用として使用する場合等、空間的な制約が多い状況で使用される場合には、タンク10の外径を小さくすることが特に望まれるため、タンク10のうち、内層部分のみのVfを効果的に低くし、内層部分のみで樹脂量を多くすることが望まれている。
【0011】
これに対して、特許文献1に記載された繊維強化プラスチック製品の製造装置は、繊維に対する樹脂の含浸状態をよくし、微細なボイドの発生を抑制解消することができる可能性がないとはいえない。ただし、特許文献1に記載された製造装置は、上記のように、繊維強化樹脂製容器の寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の、樹脂量が多いことを必要とする一部の層、例えば内径寄り部分の層に十分な樹脂を含浸させることができない可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置において、寸法を過度に大きくすることなく、一部の層に十分な樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製容器を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る繊維強化樹脂製容器の製造方法は、繊維供給部から送り出した繊維に、レジンバスで樹脂を含浸させることにより得た樹脂含浸繊維を、製品の形状を形作るライナーに巻き付けることにより繊維強化樹脂製容器を成形する繊維強化樹脂製容器の製造方法であって、ライナーの下側に配置し、樹脂を収容した樹脂補充槽の上下位置を、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の巻き層の数に応じて変えることにより、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の一部に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにすることを特徴とする繊維強化樹脂製容器の製造方法である。
【0014】
また、好ましくは、ライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける工程において、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の数が所定値以下である場合にのみ、樹脂補充槽の上下位置を所定の高さ以上とすることにより、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の内径寄り部分に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにする。
【0015】
また、より好ましくは、樹脂補充槽の上部に設けられた樹脂掻き取り部がライナーの外周面に対し遠近動するように、樹脂補充槽を水平方向に移動させることにより、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維に付着した余分な樹脂を掻き取り可能とする。
【0016】
また、本発明に係る繊維強化樹脂製容器製造装置は、上記の本発明に係る繊維強化樹脂製容器の製造方法により、繊維強化樹脂製容器を製造する繊維強化樹脂製容器製造装置であって、繊維供給部と、繊維供給部から送り出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、レジンバス通過後の樹脂含浸繊維を容器の形状を形作るライナーに巻き付ける巻取り部と、巻き取り部のライナーを配置する部分の下側に設けられた樹脂補充槽と、樹脂を収容した樹脂補充槽を上下方向に移動させる補充槽上下移動機構と、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の一部に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるように補充槽上下移動機構の駆動を制御する補充槽上下移動機構制御手段と、を備えることを特徴とする繊維強化樹脂製容器製造装置である。
【0017】
また、好ましくは、補充槽上下移動機構制御手段は、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の巻き層数が所定値を超える場合に樹脂補充槽を下降させ、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維と樹脂補充槽内の樹脂とが接しないように、補充槽上下移動機構の駆動を制御する。
【0018】
また、より好ましくは、樹脂補充槽の上部に設けられた樹脂掻き取り部と、樹脂補充槽を水平方向に移動させる補充槽水平移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置によれば、ライナーの下側に配置し、樹脂を収容した樹脂補充槽の上下位置を、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の巻き層の数に応じて変えることにより、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の一部に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにするので、全体の樹脂量を過度に多くして繊維強化樹脂製容器の寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の、樹脂量が多いことを必要とする一部の層に十分な樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製容器を得られる。例えば、ライナーへの樹脂含浸繊維の巻き付けに伴い、内層側から外層側へ複数の繊維間から樹脂が染み出す傾向となるのにもかかわらず、内層側の樹脂量を十分に確保しやすくできる。また、樹脂含浸繊維は、レジンバスからライナーに巻き取られる部分に送られるまでの間に例えば案内部やローラ等を通過することにより、しごかれる等で樹脂が取られるまたは垂れ落ちる傾向となる場合でも、本発明によれば樹脂含浸繊維に樹脂補充槽で樹脂を補充することができ、内層側の樹脂量を十分に確保しやすくできる。また、全体の樹脂量を過度に多くせずに済むため、繊維強化樹脂製容器の外径が過度に大きくなることを防止できる。この結果、繊維強化樹脂製容器の寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の、樹脂量が多いことを必要とする一部の層に十分な樹脂を含浸させた繊維強化樹脂製容器を得られる。例えば、内層側の樹脂量を十分に確保できた場合には、繊維強化樹脂製容器の疲労耐久性能を高くできる。
【0020】
また、樹脂補充槽の上部に設けられた樹脂掻き取り部がライナーの外周面に対し遠近動するように、樹脂補充槽を水平方向に移動させることにより、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維に付着した余分な樹脂を掻き取り可能とする構成によれば、樹脂補充槽を移動させる機構とは別に、樹脂掻き取り部を移動させる機構を設けることなく、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の樹脂付着量を精度よく調整しやすくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において述べる材料、成形条件等は、説明のための例であり、製品の仕様等に合わせ、適当な他の材料、成形条件を採用することができる。例えば、繊維として、カーボン繊維を説明するが、これ以外の適当な強度を有する繊維を使用することもできる。また、樹脂として、熱硬化型エポキシ樹脂を説明するが、これ以外の適当な接合強度を有する樹脂を使用することもできる。また、以下では、繊維強化樹脂容器を高圧ガスタンクとする場合について説明するが、繊維強化樹脂製容器を高圧ガスタンク以外とすることもできる。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態の1例の繊維強化樹脂製容器の製造方法により高圧ガスタンクを製造する繊維強化樹脂製容器製造装置である、タンク製造装置の一部の構成図である。また、図2は、図1のライナー12および樹脂補充槽22と、アイクチ案内部24とを、図1の左側から右側に見て、一部を断面にして示す図である。図1に示すように、タンク製造装置は、成形部26と、制御部である制御装置28とを備える。なお、図1、図2では、タンク製造装置の構成要素ではないが、成形製品の形状を形作るライナー12も図示している。
【0023】
成形部26は、原材料であるカーボン繊維30をセットし、すなわち巻き付け、送り出しを行う繊維供給部である図示しないクリールスタンドと、クリールスタンドから送り出された複数本のカーボン繊維30に液体状の熱硬化型エポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」とする。)を含浸させ、複数本の樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス34と、レジンバス34通過後の複数本の樹脂含浸繊維32を揃えてライナー12に向け導くアイクチ案内部24と、複数本の樹脂含浸繊維32を繊維強化樹脂製容器である、高圧ガスタンクの形状を形作るライナー12に巻き付ける巻取り部である、ライナー回転装置36とを備える。また、成形部26は、ライナー回転装置36の、ライナー12を配置する部分の下側に設けた樹脂補充槽22と、樹脂補充槽22を上下方向に移動させる補充槽上下移動機構38と、樹脂補充槽22を水平方向に移動させる補充槽水平移動機構40(図2)とを備える。
【0024】
原材料であるカーボン繊維30は、有機高分子繊維を約3000℃の高温で焼成したものからなり、その焼成したものを例えば24000本程度撚って集め、またはまっすぐに揃えた状態で集め、バインダ樹脂で軽く接着し、厚さ約200μm、幅3mmから10mm程度、または幅4mmから5mm程度の扁平なシート状または繊維束としたものを用いることができる。
【0025】
クリールスタンドは、シート状のカーボン繊維30を紙の筒に巻き付けた複数のボビンをセットし、固定滑車等を用いて位置を揃えて巻き出す機能を有する巻き出しスタンドである。3本ないし4本の樹脂含浸繊維32は、3本ないし4本を揃えて巻くパラレル巻きでライナー12に巻き付ける。
【0026】
カーボン繊維30は、クリールスタンドからいくつかのローラ等を経由し、アイクチ案内部24を通り、ライナー12に巻き付けられ、ライナー12は、ライナー回転装置36によりライナー12の長手軸周りに回転駆動される。ここで、ライナー回転装置36は、繊維巻取部の機能を有する。したがって、カーボン繊維30は、ライナー12の回転駆動によって張力が与えられ、その張力の下で、樹脂含浸繊維32がライナー12に緊密に巻き付けられることとなる。ライナー回転装置36とライナー12とにより、繊維巻取り成形部を構成する。また、ライナー12に巻き付ける樹脂含浸繊維32の複数の巻き層において、内径側から外径側に向け交互にフープ巻きとヘリカル巻きとを繰り返す。フープ巻きは、図1に示すように、ライナー12の略円周方向に樹脂含浸繊維32を巻き付けるものであり、ヘリカル巻きはフープ巻きよりもライナー12の円周方向に対し大きく傾斜した方向に、ライナー12に樹脂含浸繊維32を巻き付けるものである。このようにして樹脂含浸繊維32を巻き付けることにより繊維強化樹脂を構成すると、繊維強化樹脂の断面は、後述する図3(b)に示すような複数の層状となる。すなわち、繊維強化樹脂を構成する繊維の方向が、径方向に隣り合う層同士で異なるため、熱硬化させた後でも、断面が複数の層状として現れる。
【0027】
図1に戻り、レジンバス34は、3本ないし4本のカーボン繊維30に液体状の樹脂を含浸させる機能を有し、液体状のエポキシ樹脂を満たしたレジン槽42と、レジン槽42に一部が浸かっている樹脂掻い出しローラ44と、樹脂掻い出しローラ44の前後に配置される前ローラおよび後ローラとを備える。
【0028】
カーボン繊維30は、前ローラおよび後ローラの下側外周と、樹脂掻い出しローラ44の上側外周とに沿って張られ、レジンバス34から後ローラ側に引き出される。樹脂掻い出しローラ44は、回転することで、レジン槽42から液体状のエポキシ樹脂を外周に付着させ、その上側をカーボン繊維30が通過することでそのカーボン繊維30に樹脂が付着し、含浸する。
【0029】
また、レジン槽42は図示しないヒータを備えており、エポキシ樹脂は例えば40℃から50℃の範囲で加熱されて液体状となる。液体状のエポキシ樹脂はその温度を制御することで粘度管理が行われる。図示しない樹脂温度センサによりレジン槽42内の樹脂温度を測定可能としている。
【0030】
レジンバス34から引き出された3本ないし4本の樹脂含浸繊維32は、アイクチ案内部24に導入される。アイクチ案内部24は、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー12に巻き付けやすいように案内する機能を有し、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー12に向けて揃える揃え口と、揃え口をライナー12の外形に沿って移動させる移動機構等とを備える。揃え口は、ライナー12の長手軸方向と、ライナー12の幅方向(図1の表裏方向、図2の左右方向)に移動させるようにしている。
【0031】
また、ライナー12は、成形製品の形状を形作る芯材となるもので、例えば高圧ガスタンクを成形する場合は、タンクの内径に対応する筒である。筒の材質は例えば硬質樹脂を用いることができる。筒の直径は、例えば30cm程度で、その肉厚は数mm程度のものを用いることができる。ライナー12は、ライナー回転装置36に長手軸を中心とする回転可能に支持され、回転駆動機構によって長手軸周りに回転される。樹脂含浸繊維32は、ライナー12が回転駆動されることで、ライナー12外周に巻き取られる。ライナー12に巻き取られる量は、ライナー12の外周上の厚さにして数mmから10数mm程度である。エポキシ樹脂が含浸された樹脂含浸繊維32が所定巻き数、例えば巻き数30でライナー12に巻き付けられ、製品の形状が形作られると、その後硬化処理が行われ、エポキシ樹脂が硬化して、繊維強化樹脂製容器である高圧ガスタンクが成形される。
【0032】
また、樹脂補充槽22は、ライナー回転装置36のライナー12を配置する部分の下側に設けている。樹脂補充槽22は、断面矩形状の周壁部の底部を底板部により塞いでおり、周壁部を構成する1個の側壁部46(図2)の上端縁部を、樹脂補充槽22の上部に設けた樹脂掻き取り部としている。側壁部46は、ライナー12の長手軸と平行な内側面を有する。このような樹脂補充槽22の内側に液体状のエポキシ樹脂48を収容している。樹脂補充槽22は、樹脂含浸繊維32により構成する繊維強化樹脂の厚さ以上の深さを有する。樹脂補充槽22は、レジン槽42と同様に、ヒータを備え、収容したエポキシ樹脂48を例えば40℃から50℃の範囲で加熱して液体状とするように温度を制御し、粘度管理を行うようにすることもできる。また、樹脂補充槽22の側壁部46の外側(図2の左側)にギャップ検出センサ50を固定しており、ギャップ検出センサ50によりライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の外周面との間の隙間を検出可能としている。ギャップ検出センサ50の検出値は、制御部である制御装置28に入力される。
【0033】
また、樹脂補充槽22は、補充槽上下移動機構38と、補充槽水平移動機構40とにより、上下方向とライナー12の幅方向(図1の表裏方向、図2の左右方向)とにそれぞれ移動させる。補充槽上下移動機構38は、例えば、図1に示すように、樹脂補充槽22の底板部にその上部を結合した第1ピストン52と、第1ピストン52を上下方向の変位可能に収容する第1油圧シリンダ54と、第1油圧ユニット56とを備える。第1油圧ユニット56は、第1油圧シリンダ54内と第1油タンク57内とを通じさせるための油圧配管58と、第1油圧シリンダ54および第1油タンク57の間に配置した第1チェック弁60と、第1電磁弁62と、第1油圧ポンプ64とを備える。第1油圧ポンプ64は第1電動モータ(図示せず)により駆動可能としている。第1電磁弁62と第1電動モータとの駆動は、制御装置28により制御可能としている。
【0034】
制御装置28は、補充槽上下移動機構制御手段と、補充槽水平移動機構制御手段とを有する。補充槽上下移動機構制御手段は、第1電磁弁62と第1電動モータとに駆動制御信号を出力し、第1ピストン52に連結した樹脂補充槽22を上下方向に変位させる。例えば、樹脂補充槽22を上昇させる場合には、第1電動モータの起動により第1油圧ポンプ64から圧油を、第1チェック弁60を介して第1油圧シリンダ54の油圧空間に供給し、第1ピストン52および第1油圧シリンダ54からなる第1ロッドを伸張させる。余分な圧油は図示しないリリーフ弁を介して第1油タンク57に還流させる。これにより、樹脂補充槽22が上昇する。これに対して、樹脂補充槽22を下降させる場合には、第1電磁弁62を開放し、第1油圧ポンプ64を第1電動モータにより逆方向に回転させ、第1油圧シリンダ54内の圧油を第1油タンク57に還流させる。これにより、第1ロッドが縮小するため、樹脂補充槽22が下降する。
【0035】
また、図2に示すように、補充槽水平移動機構40は、例えば、補充槽上下移動機構38を構成する第1油圧シリンダ54の片側(図2の左側)にその一端を結合した第2ピストン66と、第2ピストン66を水平方向の移動可能に収容する第2油圧シリンダ68と、第2油圧ユニット70とを備える。第2油圧ユニット70は、第2油圧シリンダ68内と第2油タンク72内とを通じさせるための油圧配管74と、第2油圧シリンダ68および第2油タンク72の間に配置した第2チェック弁76と、第2電磁弁78と、第2油圧ポンプ80とを備える。第2油圧ポンプ80は第2電動モータ(図示せず)により駆動可能としている。第2電磁弁78と、第2電動モータとの駆動は、制御装置28により制御可能としている。また、第1油圧シリンダ54は、図示しないガイド部により水平方向の移動を案内されている。第1油圧シリンダ54の他側である、第1油圧シリンダ54を挟む第2ピストン66とは反対側にばね等の弾力付与手段82を設けており、弾力付与手段82により、第1油圧シリンダ54に第2油圧シリンダ68に向かう方向の弾力を付与している。
【0036】
補充槽水平移動機構制御手段は、第2電磁弁78と第2電動モータとに駆動制御信号を出力し、第2ピストン66に連結した第1油圧シリンダ54と、第1ピストン52と、樹脂補充槽22とを水平方向に変位させる。例えば、樹脂補充槽22を、水平方向でライナー12の長手軸に対し直交する方向の片側である、第2油圧シリンダから離れる方向(図2の右方)に変位させる場合には、第2電動モータの起動により第2油圧ポンプ80から圧油を、第2チェック弁76を介して第2油圧シリンダ68の油圧空間に供給し、第2ピストン66および第2油圧シリンダ68からなる第2ロッドを伸張させる。余分な圧油は図示しないリリーフ弁を介して第2油タンク72に還流させる。これにより、樹脂補充槽22が第2油圧シリンダ68から離れる方向に変位する。これに対して、樹脂補充槽22を、水平方向でライナー12の長手軸に対し直交する方向の他側である、第2油圧シリンダ68に近づく方向(図2の左方)に変位させる場合には、第2電磁弁78を開放し、第2油圧ポンプ80を第2電動モータにより逆方向に回転させ、第2油圧シリンダ68内の圧油を第2油タンク72に還流させる。これにより、第2ロッドが縮小するため、樹脂補充槽22が第2油圧シリンダ68に近づく方向に変位する。なお、第1油タンク57と第2油タンク72とは、共通の1個の油タンクとすることもできる。
【0037】
また、補充槽上下移動機構制御手段は、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の巻き層数が所定値以下、例えば5層以下の場合に樹脂補充槽22を所定高さ以上に上昇させ、図1、図2に示すように、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の下部が樹脂補充槽22内のエポキシ樹脂48に浸るように、補充槽上下移動機構38の駆動を制御する機能を有する。また、補充槽上下移動機構制御手段は、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の巻き層数が所定値、例えば5層を超える場合に樹脂補充槽22を所定高さよりも下降させ、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の最下端と樹脂補充槽22内のエポキシ樹脂48とが接しないように、補充槽上下移動機構38の駆動を制御する機能も有する。すなわち、補充槽上下移動機構制御手段は、ライナー12に巻き付けた複数の樹脂含浸繊維32の巻き層の内径寄り部分に含浸させたエポキシ樹脂48の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させたエポキシ樹脂48の量よりも多くなるように、補充槽上下移動機構38の駆動を制御する。
【0038】
また、補充槽水平移動機構制御手段には、ギャップ検出センサ50からの検出値と、ライナー12への樹脂含浸繊維32の巻き付け層数と、樹脂補充槽22の水平方向および上下方向の位置とを表す信号がそれぞれ入力されている。このために樹脂補充槽22の水平方向および上下方向の位置を位置検出センサ(図示せず)により検出可能とすることもできる。そして、補充槽水平移動機構制御手段は、樹脂を含むライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の外径が巻き付け層数に対応する所望の大きさとなるように、必要な場合に側壁部46の上端縁部をライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32に押し付け、余分なエポキシ樹脂48をそぎ落とすように、補充槽水平移動機構40の駆動を制御する機能を有する。なお、補充槽水平移動機構制御手段は、ギャップ検出センサ50からの検出値を受け取ることにより、側壁部46の上端縁部がライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32に常に押し付けられるように、補充槽水平移動機構40の駆動を制御することもできる。この場合には、補充槽水平移動機構制御手段は、側壁部46の上端縁部がライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32に押し当てられた状態で、樹脂補充槽22の水平方向の動きを停止させるようにする。
【0039】
このようなタンク製造装置を用いて高圧ガスタンクを製造する方法は、クリールスタンドから送り出したカーボン繊維30に、レジンバス34でエポキシ樹脂を含浸させることによりレジンバス34から樹脂含浸繊維32を供給し、樹脂含浸繊維32を製品の形状を形作るライナー12に巻き付けることにより高圧ガスタンクを成形する。また、ライナー12の下側に配置し、エポキシ樹脂48を収容した樹脂補充槽22の上下位置を、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の巻き層の数に応じて変える、すなわち、ライナー12に樹脂含浸繊維32を巻き付ける工程において、ライナー12に巻き付けた複数の樹脂含浸繊維32の巻き層の数が所定値以下、例えば5層以下である場合にのみ、樹脂補充槽22の上下位置を所定の高さ以上とすることにより、ライナー12に巻き付けた複数の樹脂含浸繊維32の巻き層の内径寄り部分に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の一部である、例えば内径側から6層以上の数層部分に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにする。
【0040】
また、樹脂補充槽22の側壁部46の上端縁部がライナー12の外周面に対し遠近動するように、樹脂補充槽22を水平方向に移動させることにより、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32に付着した余分な樹脂を掻き取り可能とする。
【0041】
このような本実施の形態の繊維強化樹脂製容器の製造方法および繊維強化樹脂製容器製造装置によれば、高圧ガスタンクの寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の樹脂量が多いことを必要とする内径寄り部分の層に十分な樹脂を含浸させることができる。すなわち、ライナー12の下側に配置し、エポキシ樹脂48を収容した樹脂補充槽22の上下位置を、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の巻き層の数に応じて変えることにより、ライナー12に巻き付けた複数の樹脂含浸繊維32の巻き層の内径寄り部分に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにするので、ライナー12への樹脂含浸繊維32の巻き付けに伴い、内層側から外層側へ複数の繊維間から樹脂が染み出す傾向となるのにもかかわらず、内層側の樹脂量を十分に確保しやすくできる。
【0042】
図3(a)(b)は、成形後の高圧ガスタンクの部分断面を、従来例の場合(a)と本実施の形態の場合(b)とでそれぞれ示す、上記の図4(a)に対応する図である。また、図3(a)(b)のそれぞれで、繊維強化樹脂中の繊維体積含有率であるVfの高低の程度を示している。例えば、図3(a)(b)のそれぞれで繊維強化樹脂は、巻き層数30の樹脂含浸繊維32により構成する。図3(a)(b)から分かるように、従来例の場合(図3(a))では、繊維体積含有率Vfが外径側に向かうほど低くなり、内径側に向かうほど高くなっている。すなわち、従来例では、内径寄り部分で樹脂量が少なくなり、外径寄り部分で樹脂量が多くなる傾向となる。これに対して、本実施の形態の場合(図3(b))の場合には、繊維体積含有率Vfを、ライナー12への巻き始めである最初の5層部分等で低くでき、すなわち樹脂量を多くできる。さらに、本実施の形態では、繊維体積含有率Vfは、ライナー12への巻き始めから5層を超えた数層部分で高くなり、外径側に向かうほど低くなっている。このように本実施の形態では、タンクの内径側で樹脂量を十分に確保しやすくできる。
【0043】
また、樹脂含浸繊維32は、レジンバス34からライナー12に巻き取られる部分に送られるまでの間に例えばアイクチ案内部24等を通過することにより、しごかれる等でエポキシ樹脂が取られるまたは垂れ落ちる傾向となる場合でも、本実施の形態によれば樹脂含浸繊維32に樹脂補充槽22でエポキシ樹脂48を補充することができ、内層側の樹脂量を十分に確保しやすくできる。また、全体の樹脂量を過度に多くせずに済むため、高圧ガスタンクの外径が過度に大きくなることを防止できる。この結果、高圧ガスタンクの寸法を過度に大きくすることなく、繊維強化樹脂の樹脂量が多いことを必要とする内径寄り部分の層に十分な樹脂を含浸させた高圧ガスタンクを得られ、高圧ガスタンクの疲労耐久性能を高くできる。
【0044】
また、樹脂補充槽22の側壁部46の上端縁部がライナー12の外周面に対し遠近動するように、樹脂補充槽22を水平方向に移動させることにより、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32に付着した余分な樹脂を掻き取り可能とするので、樹脂補充槽22を水平方向に移動させる機構とは別に、樹脂掻き取り部を移動させる機構を設けることなく、ライナー12に巻き付けた樹脂含浸繊維32の樹脂付着量を精度よく調整しやすくできる。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、クリールスタンドから送り出した複数のシート状または繊維束のカーボン繊維30に樹脂を含浸させ、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー12に巻き付ける場合を説明したが、本発明はこのような方法に限定するものではない。例えば、供給用ボビンから送り出した1本のシート状または繊維束のカーボン繊維に樹脂を含浸させることにより樹脂含浸繊維とし、この樹脂含浸繊維をライナー12に巻き付けるようにすることもできる。
【0046】
また、補充槽上下移動機構38と補充槽水平移動機構40とは、それぞれ本実施の形態で説明したような構成に限定するものではなく、種々の構造を採用できる。例えば、補充槽上下移動機構38と補充槽水平移動機構40とは、空気圧シリンダまたは電動アクチュエータを備える構成とし、空気圧または電動で、上下方向または水平方向に移動させる構成とすることもできる。また、樹脂掻き取り部は、例えば、ギャップ検出センサ50を取り付けた側壁部46と対向する、別の側壁部47(図2)の上端部により構成することもできる。また、上記の実施の形態において、上記の図4に示した従来から考えられている方法により造られたカーボン繊維強化樹脂製タンクの場合と同様に、カーボン繊維強化樹脂の外側にGFRP層であるガラス層を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態の製造方法により高圧ガスタンクを製造するタンク製造装置の一部の構成図である。
【図2】図1のライナーおよび樹脂補充槽と、アイクチ案内部とを、図1の左側から右側に見て、一部を断面にして示す図である。
【図3】成形後の高圧ガスタンクの部分断面を、従来例の場合(a)と本実施の形態の場合(b)とでそれぞれ示す、図4(a)に対応する図である。
【図4】従来から考えられている方法により造られたカーボン繊維強化樹脂製タンクの1例の断面と、このタンクの部分拡大模式断面である(a)と、(a)の外層部分をさらに拡大した模式断面である(b)と、(a)の内層部分をさらに拡大した模式断面である(c)とを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 タンク、12 ライナー、14 繊維強化樹脂、16,18 口金、20 ガラス層、22 樹脂補充槽、24 アイクチ案内部、26 成形部、28 制御装置、30 カーボン繊維、32 樹脂含浸繊維、34 レジンバス、36 ライナー回転装置、38 補充槽上下移動機構、40 補充槽水平移動機構、42 レジン槽、44 樹脂掻い出しローラ、46,47 側壁部、48 エポキシ樹脂、50 ギャップ検出センサ、52 第1ピストン、54 第1油圧シリンダ、56 第1油圧ユニット、57 第1油タンク、58 油圧配管、60 第1チェック弁、62 第1電磁弁、64 第1油圧ポンプ、66 第2ピストン、68 第2油圧シリンダ、70 第2油圧ユニット、72 第2油タンク、74 油圧配管、76 第2チェック弁、78 第2電磁弁、80 第2油圧ポンプ、82 弾力付与手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維供給部から送り出した繊維に、レジンバスで樹脂を含浸させることにより得た樹脂含浸繊維を、製品の形状を形作るライナーに巻き付けることにより繊維強化樹脂製容器を成形する繊維強化樹脂製容器の製造方法であって、
ライナーの下側に配置し、樹脂を収容した樹脂補充槽の上下位置を、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の巻き層の数に応じて変えることにより、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の一部に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにすることを特徴とする繊維強化樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化樹脂製容器の製造方法において、
ライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける工程において、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の数が所定値以下である場合にのみ、樹脂補充槽の上下位置を所定の高さ以上とすることにより、ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の内径寄り部分に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるようにすることを特徴とする繊維強化樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の繊維強化樹脂製容器の製造方法において、
樹脂補充槽の上部に設けられた樹脂掻き取り部がライナーの外周面に対し遠近動するように、樹脂補充槽を水平方向に移動させることにより、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維に付着した余分な樹脂を掻き取り可能とすることを特徴とする繊維強化樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の繊維強化樹脂製容器の製造方法により、繊維強化樹脂製容器を製造する繊維強化樹脂製容器製造装置であって、
繊維供給部と、
繊維供給部から送り出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、
レジンバス通過後の樹脂含浸繊維を容器の形状を形作るライナーに巻き付ける巻取り部と、
巻き取り部のライナーを配置する部分の下側に設けられた樹脂補充槽と、
樹脂を収容した樹脂補充槽を上下方向に移動させる補充槽上下移動機構と、
ライナーに巻き付けた複数の樹脂含浸繊維の巻き層の一部に含浸させた樹脂の量が、巻き層の他の部分の少なくとも一部に含浸させた樹脂の量よりも多くなるように補充槽上下移動機構の駆動を制御する補充槽上下移動機構制御手段と、を備えることを特徴とする繊維強化樹脂製容器製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維強化樹脂製容器製造装置において、
補充槽上下移動機構制御手段は、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維の巻き層数が所定値を超える場合に樹脂補充槽を下降させ、ライナーに巻き付けた樹脂含浸繊維と樹脂補充槽内の樹脂とが接しないように、補充槽上下移動機構の駆動を制御することを特徴とする繊維強化樹脂製容器製造装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の繊維強化樹脂製容器製造装置において、
樹脂補充槽の上部に設けられた樹脂掻き取り部と、
樹脂補充槽を水平方向に移動させる補充槽水平移動機構と、を備えることを特徴とする繊維強化樹脂製容器製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−296411(P2008−296411A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142741(P2007−142741)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】