説明

繊維強化熱可塑性材料に加圧する加圧装置、繊維配設装置、および繊維強化熱可塑性材料の配設方法

鋳型に対して繊維強化熱可塑性材料を加圧する加圧装置が記載されている。加圧装置(1)は、メインボディ(7)とメインボディの表面に設けられた加圧層(9)とを備えている。この場合において加圧層(9)は、有機材料、好ましくは、セラミック材料を用いて具現化され、鋳型の輪郭に適合するような構造をしているために、柔軟性を備えている。加圧装置の耐熱性が高まり、処理後の繊維強化熱可塑性材料の特性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連文献の参照〕
本出願は、独国特許出願第102009009186.6号(出願日:2009年2月16日)の出願日、および、米国仮特許出願第61/153,042号(出願日:2009年2月17日)の出願日の利益を受ける。各出願の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、繊維強化熱可塑性材料に加圧する加圧装置、繊維配設装置、および繊維強化熱可塑性材料の配設方法に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維の方向および位置が応力に適応している高い耐力を有する繊維強化プラスチック部材が、様々な技術分野において使用されるようになってきている。例えば、そのようなプラスチック部材は、航空機の製造に使用することができ、航空機の軽量化をもたらすことになる。このプラスチック部材は、予備含浸された繊維ストランドを積層することで製造できる。この場合、炭素繊維(CRP:炭素繊維強化プラスチック)およびガラス繊維(GRP:ガラス繊維強化プラスチック)を用いて、充填材として使用されるプラスチック材を強化できる。
【0004】
熱可塑性を有する繊維プラスチックの複合材から部材を製造している間、しばしば繊維強化プラスチックのテープが複数枚用いられる。これらのプラスチックテープは、別の上流工程において、前もって充填され、固められる。これらのプラスチックテープは、鋳型に積層されるかプレスされる直前に加熱され、加圧ローラーのような加圧装置によって積層地点において部材または鋳型の形状に合わせられ、固められる。部材の形状は、部材が置かれる鋳型の平面または曲面によって予め定められていてもよい。そのような自動化可能な方法は、テープ積層(tape laying)あるいは英語で“tape/tow replacement”もしくは“fiber placement”と呼ばれ、部材の完全構築にも部分的な補強にも用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例として繊維強化プラスチックテープの形態を取る繊維強化熱可塑性材料を配置する際に起こり得る問題には、雄鋳型または雌鋳型といった鋳型によって作成される部材の形状によって均一な加圧が制限され得るという問題、および/または、固定された加圧ローラーによってプラスチックテープの積層が一層困難になり、特に、湾曲した部材内で所望する繊維方向を実現することが困難になり得る。凹凸部材の湾曲によって、むらが生じたり、前もって充填されたプラスチックテープを鋳型にプレスすることが不可能になったりするといったことが起こり得る。これにより、圧密不良につながり得る。
【0006】
したがって、繊維強化熱可塑性材料に加圧する加圧装置には要求条件が存在し得る。この要求条件により、積層過程中における鋳型へのプラスチック材料の加圧を改善することができる。特に、複数個の鋳型に適応する方法で繊維強化プラスチック材料の複数のテープを複数通りの積層方向に好ましくは同時に積層可能な加圧装置であって繊維強化熱可塑性材料の積層中に長期的に生じる昇温等の動作条件に耐える加圧装置については、要求条件が存在し得る。さらに、そのような加圧装置を用いて鋳型に熱可塑性材料を配設する配設装置および配設方法にも要求条件が存在し得る。
【0007】
独立クレームの主題によってこの条件を満足させることができる。本発明の有利な実施形態は、サブクレームに規定されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に従って、鋳型に対して繊維強化熱可塑性材料を加圧する加圧装置が提案されている。上記加圧装置は、メインボディとメインボディの表面に設けられた加圧層とを備えている。上記加圧層は、有機材料を用いて具現化されている。さらに、上記加圧層は、加圧中に上記鋳型の輪郭に適合するような柔軟性を備えるように具現化されている。
【0009】
上述の本発明の一概念は、以下のアイデアに基づいて説明される。すなわち、多くの場合、従来の加圧装置は、有機材料を用いて(しばしばポリマーに基づいて)形成されるか、そのような有機材料でできた層を用いてコーティングされるか、その両者が行われる。このような有機材料は、しばしばそれ自体で、加圧されたときに鋳型の輪郭に適合するような一定の柔軟性を備えている。そのため、従来の加圧装置は、使用される製品材料により柔軟性を備えることができる。一般的には、デュロプラスチック(duroplastic)の繊維強化プラスチック材料が、そのような従来の加圧装置を用いて処理される。
【0010】
今日では、そのような従来の加圧装置において、繊維強化熱可塑性材料(例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)またはPPS(ポリフェニレン硫化物))の処理中に、処理に必要な処理温度の上昇のために問題が生じ得ることが認識されている。ここで、必要な処理温度は、デュロプラスチック材料の処理温度よりも実質的に高く、例えば、PEEKの摂氏350度よりも高い温度範囲になり得る。
【0011】
加圧装置のメインボディに取り付けられる加圧層をセラミック材料のような無機材料を用いて具現化することで、この問題を解決する解決法が認識された。そのような無機材料は、一般的に、上昇した温度に対してより高い耐久性を備えている。
【0012】
そのような無機材料(特にセラミック材料)は、多くの場合それ自体硬く脆いため、加圧層は、繊維強化材料が付着することになる鋳型の輪郭に加圧されたときに適合可能な程度の十分な柔軟性を有するように具現化されるべきである。必要な柔軟性は、従来の多くの加圧装置の場合と同様に、加圧層に使用される材料の材料特性に基づいて実現されることが好ましい。あるいは、必要な柔軟性は、適切な構造設計がなされた加圧層を用いて実現されてもよい。考えられる詳細な例については後で述べる。
【0013】
本発明において考えられる特徴、特性、利点、他の実施形態については後で詳細に述べる。
【0014】
加圧装置は、例えば繊維テープまたはテープの形で与えられる繊維強化熱可塑性材料を鋳型に加圧する目的で設計できる。上記鋳型は、例えば、その構造及び形状が、生産すべき部材の正または負の複製物を表すような鋳型である。加圧装置と鋳型とは、加圧過程中に互いに対して動くようになっていてもよい。加圧装置は、例えば、加圧ローラー、加圧スクイージまたは加圧シューのような形にデザインすることができる。
【0015】
加圧装置のメインボディは、所望する任意の形状を取ることができる。メインボディは、加圧装置に基本的な形状、例えばローラーまたはスクイージの形状を与えることができる。
メインボディは、硬く柔軟性のないものであっても構わない。メインボディは、所望する任意の材料、例えば、金属、プラスチック、またはセラミック等で作成できる。
【0016】
加圧層は、圧縮過程中に圧縮すべき繊維強化材料または鋳型の側にある、メインボディの表面上に設けることができる。メインボディがローラーの形状を呈している場合、加圧層をメインボディの柱面上に配置することができる。したがって、この場合、加圧層は回転中に鋳型に沿って回転可能であるので、略摩擦無く、鋳型に対して繊維強化材料を加圧することができる。加圧スクイージの場合、端部または加圧中に鋳型に接する側面に加圧層を配置できる。加圧層の厚みは、メインボディの寸法と比較して小さくてもよい。例えば、直径50mmのメインボディに厚さ1〜5mmの加圧層を設けてもよい。
【0017】
加圧層は、内在する柔軟性の結果として、加圧中に、略均一な接触圧力が加圧装置と鋳型との間に生じる程度に鋳型の輪郭に適合できるように、具現化されていることが好ましい。局所的に接触圧力が増加してしまうのをできる限り避けるべきである。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、加圧層はセラミック材を用いて具現化される。上記セラミック材は、摂氏350度より高い処理温度(例えば、好ましくは摂氏500度以上)でも加圧層に対するダメージが生じないような高い耐熱性を有し得る。セラミック材を用いることで、その耐薬品性の高さ、および/または、その耐熱性の高さのために、加圧層によって加圧された繊維強化熱可塑性材料が汚染されることを防ぐこともできる。さらに、適切なセラミック材を使用することで、その耐薬品性および耐熱性により、加圧層がオーバーヒートした場合の安全衛生上の問題を略回避することができる。例えば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(Cr23)およびこれらの混合物を、使用可能なセラミック材料として用いることができる。
【0019】
本発明の別の一実施形態によれば、加圧層がエアロゲルを用いて具現化される。エアロゲルは繊維強化されていてもよい。そのようなエアロゲルは、およそ0.02W/m*Kの範囲の非常に低い熱伝導率を有している。また、そのようなエアロゲルは、1MPa未満から100MPaの範囲の剛性を有するが、表面適応性をより良好にするために、剛性は、より低いほうが好ましい。エアロゲルは摂氏1200度までの温度耐性を有する。
【0020】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、加圧層は、その構造設計の結果として柔軟性を有するように具現化されていてもよい。換言すれば、加圧層は、材料に特有の特性によらずに、あるいは、材料に特有の特性だけによらずに、柔軟性を有し得るが、むしろ構造特性の結果として柔軟性を獲得することができる。例えば、多くのセラミック材料のように、固体状態(バルク)において硬く脆く柔軟性のない材料は、幾何学的構造を適切にした結果として一定の柔軟性が生じるように具現化することができる。薄肉の基礎構造、例えば、層の厚さおよび直径が500μm未満であるような、いわゆる粗紡、麻くず、組み紐、より糸、短いファイバーフリースは、十分な機械的柔軟性に貢献できる。同様に、これらの布半製品は、例えば各々厚さ100mm未満の複数のフィラメントから構成することができる。
【0021】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、加圧層は、織布材料、ゆるい繊維ウェブでできたスクリムを有する不織材料、メッシュ構造の繊維を有するフリース材料、および、複数の薄紙の層でできた多層スタックの少なくともいずれかを用いて具現化される。そのような材料は、セラミック繊維で構成可能な材料であることが好ましい。セラミック繊維の製品は、その温度耐性が摂氏1200度より大きく最大摂氏1600度までの温度耐性を備えることができる。また、セラミック繊維の製品は、その熱伝導率が0.4W/m*Kと非常に低い。セラミック繊維の製品は、例えば、独国のDietzenbachを所在地とするKager GmbH Industrieprodukteから提供されている。
【0022】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、加圧層は、摂氏350度(好ましくは摂氏600度であり、さらに好ましくは摂氏900度以上)を上限とする温度に耐える材料を用いて具現化される。換言すれば、加圧層の材料は、ダメージを残すことなく上述した温度に耐えなければならない。材料が、上述の高温でも加圧層がその構造および/またはその機能特性を維持するように温度に耐えると都合が良い。上述の高温状態は、繊維強化熱可塑性材料の処理中に起こり得るからである。
【0023】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、加圧層は、摂氏およそ1000度の温度範囲で1W/m*K(好ましくは0.5W/m*K)の熱伝導率を有する材料を用いて具現化される。加圧層は、その熱伝導率の低さによって、処理対象となる加熱された繊維強化熱可塑性材料と加圧装置のメインボディとの間の断熱性を良好にすることに貢献する。多くの場合において金属を含んでいるメインボディは、高い熱伝導率および熱容量を有するが、高温の熱可塑性材料から加圧装置への高レベルの熱伝導は、上述したように略避けられる。したがって、熱可塑性材料が加圧装置によって加圧中に急激に冷却されるのを防ぐことができる。もしそうでなければ熱可塑性材料内部の架橋結合および拡散が悪化する可能性がある。加圧層内部の熱伝導率が低いために処理対象となる熱可塑性材料の急激な熱損失が妨げられ、架橋結合および拡散が改善したために熱可塑性材料から最終的に製造される部材の品質も改善することができる。
【0024】
本発明の別の一実施形態によれば、加圧装置は、さらに、メインボディの温度を制御する温度制御ユニットを備えている。例えば、温度制御ユニットを用いてメインボディを高温になるよう加熱でき、これにより加圧中における高温の熱可塑性材料からメインボディへの熱伝導がさらに減ることになる。他方で、温度制御ユニットを用いて意図的にメインボディを冷却することができ、これにより、例えば高温の熱可塑性材料の加圧中に、継続的に熱がメインボディに流入することによってメインボディにダメージが残る、ということが防がれる。温度制御ユニットとしては、例えば、冷水器、空気冷却器、ペルチェ式クーラー、またはその他の類似する加熱ユニットを使用できる。
【0025】
本発明の別の一実施形態によれば、加圧層が、メインボディに接着される。非常に正確な機械加工をすることで(例えば、対応する金属のメインボディをローラーの形状に旋盤加工することで)、メインボディの形状を作成できる。次いで、加圧層がメインボディの表面に接着される。加圧層がセラミック材料でできている場合、この目的のために特殊なセラミック接着剤を使用できる。特殊な高温対応セラミック接着剤は、例えば、独国のWaldbronnを所在地とするPolyTec PT GmbH PolymereTechnologien(www.polytec-pt.de)から提供されている。必要な場合には、そのような接着材は、化学的手段または機械的手段によって引き剥がすことができ、そして、加圧層は、再度取り除くことができる。これにより、例えば、対応する磨耗の後に、あるいは、熱可塑性材料によって汚れたことに起因して、接着材を取り替えることができる。
【0026】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、加圧層を、管状織布の半製品を用いてメインボディに引き込むことができる。例えば、ストッキングと同様に、組み紐をメインボディに引き込むことができる。
【0027】
本発明の一態様によれば、上述した加圧装置を備えるのに加えて、さらに、繊維強化熱可塑性材料を加圧装置に供給する供給装置と、上記繊維強化熱可塑性材料を可塑化する温度まで加熱する加熱装置と、を備えている繊維配設装置が提案される。
【0028】
本発明の一態様によれば、鋳型に繊維強化熱可塑性材料を配置する配置方法であって、繊維強化熱可塑性材料を供給する供給工程と、上記繊維強化熱可塑性材料を可塑化する温度まで加熱する加熱工程と、上述した加圧装置を用いて上記鋳型に対して繊維強化熱可塑性材料を加圧する加圧工程と、を含んでいる配置方法が提案される。
【0029】
上記繊維配設装置または繊維配設方法において、繊維強化熱可塑性材料は、例えば、テープまたはマットの形態で提供または供給できる。繊維強化熱可塑性材料は、織物、または、例えばカーボン繊維やガラス繊維のような繊維でできたスクリムであってもよく、繊維は、例えば、PEEK、PEKKまたはPPSといった高品質の熱可塑性材料を用いて予備含浸される。換言すれば、熱可塑性材料でできた繊維をマトリックス状に配設できる。繊維の方向は、生成される部材内で予想されるひずみ方向に適応できる。繊維の強化は、一般的に、一方向強化として提供され、処理中のメインの力の流れに沿って配向している。
【0030】
繊維強化熱可塑性材料を処理可能にするために(とりわけ、繊維強化熱可塑性材料でできた各層を互いに積層可能にするために)、熱可塑性材料は、可塑化する温度まで加熱される。上記可塑化する温度にて、熱可塑性材料は、塑性的に変形可能である一方、他方で、架橋結合および拡散を通じて熱可塑性材料の隣接する層と結合可能である。一般的な処理温度、すなわち、熱可塑性材料に十分に高い粘性が与えられるような、融点より高い温度は、摂氏350度より大きい範囲にあってもよい。熱可塑性材料をそのような高温に加熱できるようにするために、例えば、加熱装置を用いて、温度が摂氏最大900度になる加熱ガスを熱可塑性材料にかけることができる。あるいは、加熱装置は、局所的には、例えばレーザーまたは赤外線ヒーターを用いて光学的に熱可塑性材料を加熱することもできる。
【0031】
このようにして可塑化した熱可塑性材料は、上述した加圧装置を用いて、鋳型、または、先行する方法ステップで適用された熱可塑性材料の層に対して加圧される。熱可塑性材料は、必要に応じて、依然から堆積していた材料の層に結合することができ、熱可塑性材料の冷却を通じて硬化する。
【0032】
ここで説明した有利的に具現化された加圧装置は、加圧層に柔軟性がある結果、および、高温の熱可塑性材料からメインボディへの熱伝導が小さく、処理中に生じる熱可塑性材料の冷却が遅い結果、熱可塑性材料の加圧を均一に行う。そのため、ラミネートによって形成される部材のラミネート強度を潜在的に非常に高くすることができる。
【0033】
本発明の各実施形態を参照しながら先に述べた特徴は、必要に応じて他の特徴と組み合わせることができる。特に、加圧装置または繊維配設装置について記載されている特徴は、繊維強化熱可塑性材料の配設方法について記載されている特徴と組み合わせることもできる。
【0034】
本発明の上述した又はその他の様態、特徴および利点は、添付の図面を参照することで以下の特定の実施形態の記載内容から導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る加圧装置を備えた繊維配設装置のおおまかなサイドビューの略図を示している。
【図2a】図2aは、本発明の実施形態に係る加圧装置のうちの図1で示した詳細部Aの拡張図を示している。
【図2b】図2bは、本発明の実施形態に係る加圧装置のうちの図1で示した詳細部Aの拡張図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
各図は略図であり、図中における同一または類似の参照符号は、同一または類似の要素を識別する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る、加圧装置1、供給装置11および加熱装置13を備えた繊維配設装置100を示している。加圧装置1は、サスペンション17によって導かれる加圧ローラー19と円柱状のメインボディ7を備えたローラーとを備え、それらの間に加圧層9を備えている。メインボディ7は、温度制御ユニット21によって温度制御されていてもよい。
【0038】
繊維強化熱可塑性材料3のラミネート層は、供給装置11によって供給される。加熱装置13は、ここでは赤外線ラジエータとして実装され、熱可塑性材料3を可塑化する温度になるように加熱できる。あるいは、レーザー、高温の空気、または、高温のガス源といった他の加熱装置を使用することもできる。熱可塑性材料は、加熱装置13によって、加圧ローラー19の直前の領域で可塑化するか、あるいは、溶解する。
【0039】
加圧装置1および当該装置上に配置された加圧ローラー19により、繊維強化熱可塑性材料でできたラミネート層は、鋳型5に対して圧せられて部材を再生するか、この鋳型5に前から堆積しているラミネート層に対して圧せられてラミネート複合材15を形成する。加圧装置1および鋳型5は、この目的のために、互いに動かすことができる。
【0040】
メインボディ7に取り付けられた加圧層9は、無機材料、好ましくはセラミック材料またはエアロゲルを含んでいる。このような構成により、加圧層9は、鋳型または鋳型に堆積したラミネート複合材15の非均一性を補償可能な程度に十分な機械的柔軟性を備える。
【0041】
図2aに示した、図1の領域Aの拡大図において、メインボディに取り付けられる、セラミック繊維でできた不織スクリムの加圧層9が示されている。図2bは、加圧層9がセラミック材料でできた複数の薄紙の層を用いて具現化されている、別の実施形態を示している。ラミネートの表面が粗くなったり、ラミネートが汚染してしまったりしないように、加圧層9に用いられる材料は、きめ細かな表面構造を有し、可能な限り低品質な接合剤を用いても接合が可能な材料である必要がある。
【0042】
最後に、本発明は、概略的に表すことができる。すなわち、本発明は、以下のように表すことができる。本発明の一実施形態によれば、高温セラミックのような無機材料が加圧装置の輪郭適応層として用いられる。固形ブロック状のセラミックは、それ自体硬く脆いために上述した加圧過程には不適切であるので、例えば、織布、不織材料、または複数の薄紙の層といった形でセラミック材料を設けることで十分な柔軟性および弾力性を確保する必要がある。
【0043】
加圧装置に用いられる上記材料は、高い処理温度に耐えることができ、鋳型の輪郭にしっかり適合できる。セラミックの良好な断熱特性が、熱可塑性材料でできた各ラミネート層を積層中に、架橋の形成および拡散の後押しになり得るという点が、さらなる利点となり得る。セラミックの良好な断熱特性によって、積層中のラミネートの冷却速度を低減できるからである。さらに、窒素や環境大気といった高温の気体を加圧装置内に導くことで、さらに冷却を遅くすることができる。これにより、潜在的に、ラミネートのラミネート間強度が高まることになる。
【0044】
最後に、“備える”や“有する”等といった用語は、他の要素の存在を排除するものではない点に留意すべきである。“1つの”という用語も、物体が複数存在することを排除するものではない。クレーム中の参照符号は、可読性を高めるためだけに用いられ、決してクレームによって保護される範囲を制限するものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 加圧装置
3 繊維強化熱可塑性材料
5 鋳型
7 メインボディ
9 加圧層
11 供給装置
13 加熱装置
15 ラミネート複合材
17 サスペンション
19 加圧ローラー
21 温度制御ユニット
100 繊維配設装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型に対して繊維強化熱可塑性材料を加圧する加圧装置(1)において、
メインボディ(7)を備えるとともに上記メインボディ(7)の表面に加圧層(9)を備え、
上記加圧層(9)は無機材料を用いて具現化されており、
上記加圧層は、加圧されたときに上記鋳型(5)の輪郭に適合するような柔軟性を備えるように具現化されている、ことを特徴とする加圧装置(1)。
【請求項2】
上記加圧層(9)が、セラミック材料またはエアロゲルを用いて具現化されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加圧装置。
【請求項3】
上記加圧層は、上記加圧層の構造設計の結果として柔軟性を有するように具現化されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の加圧装置。
【請求項4】
上記加圧層が、織布材料と不織材料と複数の薄紙の層でできた多層スタックとのうちの少なくともいずれかを用いて具現化される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項5】
上記加圧層(9)が、摂氏500度を上限とする温度に耐える材料を用いて具現化されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項6】
上記加圧層(9)が、熱伝導率が1W/m*K未満である材料を用いて具現化されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項7】
さらに、上記メインボディ(7)の温度を制御する温度制御ユニット(21)を備えている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項8】
上記メインボディ(7)はローラーの形状を呈しており、上記加圧層(9)は、上記メインボディの柱面に位置している、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項9】
上記加圧層が、上記メインボディに接着されている、ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項10】
上記加圧層が、管状織布の、または、縒って作られた布半製品として、上記メインボディに引き込まれている、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の加圧装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の加圧装置(1)と、
繊維強化熱可塑性材料を上記加圧装置(1)に供給する供給装置(11)と、
上記繊維強化熱可塑性材料を可塑化する温度まで加熱する加熱装置(13)と、を備えていることを特徴とする繊維配設装置(100)。
【請求項12】
鋳型に繊維強化熱可塑性材料を配設する配設方法において、
繊維強化熱可塑性材料(3)を供給する供給工程と、
上記繊維強化熱可塑性材料を可塑化する温度まで加熱する加熱工程と、
請求項1から10のいずれか1項に記載の加圧装置(1)を用いて上記鋳型に対して繊維強化熱可塑性材料を加圧する加圧工程と、を含んでいることを特徴とする配設方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2012−517366(P2012−517366A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549522(P2011−549522)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051374
【国際公開番号】WO2010/091997
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(311014956)エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー (54)
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany
【Fターム(参考)】