説明

置換イミダゾリルメチルピリジン及びピラジン誘導体並びにそれらのGABAA受容体リガンドとしての使用

GABA受容体と結合する置換イミダゾリルメチルピリジン及びピラジン誘導体を提供する。そうした化合物は、in vitro又はin vivoで、リガンドのGABA受容体との結合を調節するために使用され、特にヒト、飼い慣らされたコンパニオンアニマル及び家畜の様々な中枢神経系(CNS)障害の治療に有用である。本発明で提供する化合物は、単独、又は1種若しくは複数の他のCNS薬剤との併用で投与して、他のCNS薬剤の効果を増強することができる。そうした障害を治療するための薬剤組成物及び方法を提供し、またGABA受容体を検出するためのそうしたリガンドを用いる方法を提供する(例えば受容体局在化研究)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は2002年5月8日出願の米国仮出願番号第60/379,117号の優先権を請求するものであり、その開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、イミダゾリルメチルピリジン及びピラジン誘導体に関する。より具体的には、高選択性及び/又は高親和性でGABA受容体と結合する化合物に関する。本発明は、そうした化合物を含む薬剤組成物及び中枢神経系(CNS)疾患の治療でのそうした化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
GABA受容体スーパーファミリーは、主要な阻害性神経伝達物質であるγ−アミノ酪酸すなわちGABAがそれを介して作用する受容体のクラスの1つを表す。GABAは、哺乳動物の脳全体にわたって不均一ではあるが広く分布していて、塩素イオンコンダクタンス及び膜分極の変化を引き起こすGABA受容体と称されるタンパク質の複合体を介して、その作用の多くを媒介する。神経伝達物質作用の部位であることに加えて、抗不安薬及び鎮静用ベンゾジアゼピンを含む多くの薬物がこの受容体と結合する。GABA受容体は、常にではないが、一般にGABAに応答して開き、塩素イオンが細胞に入ることを可能にする塩素イオンチャンネルを含む。次にこれは、細胞膜電位の過分極によって、ニューロンの活動の遅延をもたらす。
【0004】
GABA受容体は5つのタンパク質サブユニットからなっている。これらのGABA受容体サブユニットに対する多くのcDNAがクローン化され、その一次構造が決定されている。これらのサブユニットは4個の膜貫通螺旋体の基本モチーフを共有しており、同時にそれらをいくつかのグループに分類するのに十分な配列の多様性がある。今日まで少なくとも6α、3β、3γ、1ε、1δ及び2ρのサブユニットが同定されている。天然のGABA受容体は一般に2α、2β及び1γサブユニットからなっている(Pritchett & Seeburg(1989)Science 245:1389−1392及びKnight et.al.,(1998)Recept.Channels 6:1−18)。様々な方向からの証拠(メッセージの振分け、ゲノムの局在化及び生物化学的研究などの結果)によって、天然に由来する主要な受容体の組合せはαβγ、αβγ、αβγ及びαβγであることが示唆されている(Mohler et al.(1995)Neuroch.Res.20(5):631−36)。
【0005】
α及びβサブユニットからのアミノ酸によって、GABAに対するGABA受容体結合部位(受容体複合体当たり2つ)が形成される。α及びγサブユニットからのアミノ酸は一緒になって、受容体当たり1つのベンゾジアゼピン部位を形成する。ベンゾジアゼピンは、GABA受容体と結びついたベンゾジアゼピン結合部位と相互作用することによって、その薬理作用を発揮する。ベンゾジアゼピン部位(ベンゾジアゼピン又はBDZ受容体と称されることがある)に加えて、GABA受容体は、複数の他のクラスの薬物のための相互作用の部位を含む。これらには、ステロイド結合部位、ピクロトキシン部位及びバルビツール酸部位が含まれる。GABA受容体のベンゾジアゼピン部位は、受容体と結合する他のクラスの薬物又はGABAのための相互作用の部位と重複しない受容体複合体上の別個の部位である(例えば、Cooper,et al.,The Biochemical Basis of Neuropharmacology,6th ed.,1991,pp.145−148,Oxford University Press,New York参照)。
【0006】
古典的でアロステリックな機序では、薬物のベンゾジアゼピン部位への結合はGABAに対するGABA受容体の親和性を増大させる。GABAのGABA受容体チャンネルを開く能力を向上させるベンゾジアゼピン及び関連薬物は、GABA増強のレベルに応じて、作動薬及び部分作動薬として知られている。同一部位を占有し、GABAの作用を逆調節するβ−カルボリン誘導体などの他のクラスの薬物は逆作動薬と称される。作動薬と逆作動薬の両方と同じ部位を占有するが、GABA活性に対しては殆んど影響を及ぼさない又は全く影響を及ぼさない第3のクラスの化合物が存在する。しかし、これらの化合物は作動薬又は逆作動薬の作用を阻止することになり、したがってGABA受容体拮抗薬と称される。
【0007】
ベンゾジアゼピン部位に作用する薬物の重要なアロステリックな調節効果は早期に認められており、様々なサブタイプ受容体での活性の分布が重点的な薬理学的発見の分野であった。ベンゾジアゼピン部位に作用する作動薬は抗不安性、鎮静作用及び催眠作用を示すことが知られており、同時に、この部位で逆作動薬として作用する化合物は、不安惹起、認識向上及び痙攣促進の作用を誘発する。ベンゾジアゼピンは抗不安薬として長い間薬剤としての使用を享受してきたが、これらの化合物は多くの好ましくない副作用を示すことが知られている。これらの副作用には、認知障害、鎮静作用、運動失調、エタノール効果の増強効果並びに耐薬性及び薬物依存の傾向が含まれる。
【0008】
GABA選択的リガンドは、ある種の他のCNS活性な化合物の効果を増強する作用もすることができる。例えば、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)は、単独で使用される場合より、GABA選択的リガンドと組合せて使用される場合に、より強い抗鬱活性を示し得るという証拠がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、置換イミダゾリルメチルピリジン及びピラジン誘導体を提供する。本発明の化合物は、ヒトGABA受容体を含むGABAを結合し、そうした受容体の作動薬、拮抗薬又は逆作動薬として作用する。したがって、これらの化合物は様々なCNS障害の治療に有用である。好ましい化合物は高い選択性及び/又は高い親和性でGABA受容体と結合する。
【0010】
広範な態様では、本発明は式Iで表される化合物及び薬剤として許容されるその塩若しくはプロドラッグを提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
式Iにおいて、
Wは、CH又はNを表し、
は、非置換、又はRから独立に選択される1〜4個の基で置換された5〜10員のアリール又はヘテロアリールを表し、
は、水素、ハロゲン、それぞれが、非置換、又はRから独立に選択される1〜3個の置換基で置換されたC〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C10シクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、(C〜Cヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル、又は(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキルを表し、
及びRは、それぞれ独立に
(a)水素、ハロゲン、ニトロ及びシアノ、並びに
(b)次式の基、
【化2】


(式中、(i)Gは結合部、C〜Cアルキレン、−NH−、−N(R)−、−(R)N−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−S(O)−、−CHC(=O)−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHC(=O)−、−C(=NR)−、HC=N−、−NRC(=O)−、−NHS(O)−又は−NRS(O)−であり、
(ii)R及びRは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル及び、1個の環又は2個の縮合環、懸垂(pendant)環若しくはスピロ環を有する3〜12員の飽和している、部分的に飽和していない芳香族炭素環及び複素環から独立に選択され、環のそれぞれは、非置換、又はRから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されており、
(iii)mは0、1又は2である)
から選択され、
は、出現ごとに独立にハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜C10シクロアルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルコキシ、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、ハロ(C〜C)アルキル、ハロ(C〜C)アルコキシ、オキソ、アミノ(C〜C)アルキル並びにモノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜C)アルキルから選択される。
【0013】
本発明は、生理学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に上記の化合物を含む薬剤組成物をさらに提供する。容器中のそうした薬剤組成物と、不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害又はアルツハイマー痴呆症などのCNS障害に罹患している患者の治療するための、或いは短期記憶を改善するための組成物を使用するための使用説明書とを含むパッケージされた薬剤調合物も提供する。
【0014】
他の態様では、そうした治療を必要とする患者に、薬剤として有効な量の上記の化合物を投与することを含む、ある種のCNS障害(不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害又はアルツハイマー痴呆症など)に罹患している患者の治療のための方法を提供する。患者はヒト又は他の哺乳動物であってよい。有効量の本発明の化合物を用いた、ある種のCNS障害に罹患しているヒト、飼い慣らされたコンパニオンアニマル(ペット)又は家畜の治療は本発明に包含される。
【0015】
薬剤として有効な量の上記化合物をそうした治療を必要とする患者に投与することを含む、患者の短期記憶を増強するための方法も提供する。患者はヒト又は他の哺乳動物であってよい。
【0016】
他の態様では、本発明は、CNS薬剤及び上記の化合物を患者に投与することを含む、CNS薬剤の治療効果を増強するための方法を提供する。
【0017】
(a)化合物のGABA受容体との結合を可能にする条件下で、サンプルを上記の化合物と接触させるステップと、(b)GABA受容体に結合している化合物のレベルを検出するステップとを含む、サンプル(例えば、組織切片)中のGABA受容体の有無を判定する方法をさらに提供する。
【0018】
他の態様で、本発明はさらに、GABA受容体を発現する細胞を、細胞の電気生理を検出し得る変化をもたらすのに十分な量の上記の化合物と接触させることを含むGABA受容体のシグナル伝達活性を変化させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の上記や他の態様は以下の詳細な説明を参照すれば明らかになるであろう。
【0020】
上記のように、本発明はヒトGABA受容体を含むGABA受容体と(好ましくは高親和性及び/又は高選択性で)結合する2−イミダゾール−1−イルメチル−ピリジン及び2−イミダゾール−1−イルメチル−ピラジン誘導体を提供する。特定の理論に何ら拘泥しようとするわけではないが、本発明で提供する化合物のベンゾジアゼピン部位との相互作用は結果としてこれらの化合物の生物学的活性をもたらすと考えられる。以下にさらに詳細に考察するように、本発明で提供する化合物は、in vivo及びin vitroでの様々な状況で使用することができる。
【0021】
定義
本発明の化合物は、一般に標準的な命名法を用いて説明される。化合物構造への言及には、一般に、示した構造の付加塩、水和物及びアシル化されたプロドラッグが包含される。本明細書に記載の化合物は1個又は複数の不斉中心又は不斉面を有することができる。オレフィン、C=N二重結合等の多くの幾何異性体も本明細書で記載する化合物に存在することができ、本発明はそうしたすべての安定した異性体を企図している。本発明の化合物のシス型及びトランス型幾何異性体について説明するが、これらは異性体の混合物として又は分離された異性体として単離することができる。特定の立体配置若しくは異性体の形態が特に指定されない限り、ある構造のすべてのキラル体(鏡像異性体及びジアステレオマー体)及びラセミ形態、並びにすべての幾何異性体が意図されているものとする。
【0022】
本明細書では、変数を含む一般式を用いて特定の化合物を表す。別段の指定のない限り、そうした式中の個々の変数はすべての他の変数とは独立に定義され、式中で2回以上出現する任意の変数は、各出現時に独立に定義される。したがって、例えばある基が0〜2個のRで置換されていると表された場合、その基は非置換、又は最大2個のR基で置換されていてよく、いずれの1個のRの定義は、その他のいずれのRの定義から独立である。さらに、そうした組合せが安定した化合物をもたらす場合に限り、置換基及び/又は変数の組合せが可能であることは明らかであろう。
【0023】
アリール基、ヘテロアリール基、炭素環又は複素環などの任意の基が、「1個又は複数の置換基によって置換されている」と表された場合、その基は、1個から、置換された基の原子価を超えない最大可能個数までの置換基を含むことができる。そうした基は、1〜4個の置換基で置換されていることが好ましく、1〜3個の置換基で置換されていることがより好ましい。そうした基は、ゼロ個又は1個のオキソ置換基で置換されていることがさらに好ましい。「置換されていてもよい」基は、非置換、又は1個から最大個数の指定された置換基で置換されていてよい。
【0024】
本明細書では、「アルキル」は分枝及び直鎖の炭化水素基を指す。好ましいアルキル基はC〜Cアルキル(すなわち1〜8個の炭素原子を有するアルキル基)であり、C〜Cアルキル及びC〜Cアルキルが特に好ましい。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル及び5−メチルペンチルが含まれる。アルキル基は、そのアルキル基の化学的に安定した任意の部分を介して当該の分子内の原子に結合していてよい。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルなどの、特定の数の炭素原子を有する飽和した環基を含むものとする。C〜C10シクロアルキル基は3〜10個の環員を有する。好ましいシクロアルキル基は4〜8個、より好ましくは5〜7個の環員を有する。
【0026】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個のヘテロ原子(すなわちN、S又はO)を含み、環員の残りが炭素である飽和した環基を指す。ヘテロシクロアルキル基は一般に3〜10個の環員、好ましくは4〜8個、より好ましくは5〜7個の環員を含む。ヘテロシクロアルキル基は一般に1〜3個のヘテロ原子を有する。ヘテロシクロアルキル基中には1個を超えないS又はO原子が存在することが好ましい。好ましいヘテロシクロアルキル基には、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チオモルホリニル及びピロリジニルが含まれる。
【0027】
「(シクロアルキル)アルキル」又は(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキル、シクロアルキル及びアルキルという用語は上記の定義通りであり、結合点はアルキル基上である。この用語は、これらに限定されないが、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル及びシクロヘキシルメチルを包含する。「(ヘテロシクロアルキル)アルキル」は上記のように環内に少なくとも1個のヘテロ原子を含む基を指す。
【0028】
本明細書では、「アルコキシ」は、先に定義したように酸素橋を介して結合したアルキル基を表す。好ましいアルコキシ基は1〜8個の炭素原子(すなわちC〜Cアルコキシ)を有する。アルコキシの例には、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n−ヘキトキシ、2−ヘキトキシ、3−ヘキトキシ及び3−メチルペントキシが含まれる。「C〜Cアルコキシ」(1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基)が好ましく、C〜Cアルコキシが特に好ましい。
【0029】
「アルケニル」は、鎖に沿って任意の安定点で出現し得る1個又は複数の不飽和炭素−炭素結合を含む直鎖状か又は分枝のどちらかの配置の炭化水素鎖を含むものとする。例えばエテニル及びピロペニルである。アルケニル基は一般に2〜約8個の炭素原子、より一般的には2〜約6個の炭素原子を含むことになる。「安定点」は、不飽和である場合に、化学的に安定した化合物(すなわち、単離して特性評価することができ、生物学的活性を試験できる化合物)をもたらす結合である。
【0030】
「アルキニル」は、鎖に沿って任意の安定点で出現し得る1個又は複数の三重炭素−炭素結合を含む直鎖状か又は分枝のどちらかの配置の炭化水素鎖を含むものとする。例えばエチニル及びプロピニルである。アルキニル基は一般に2〜約8個の炭素原子、より一般的には2〜約6個の炭素原子を有することになる。
【0031】
「炭素環」はすべて炭素−炭素結合(本明細書では炭素環と称する)で形成された少なくとも1個の環を含む基である。別段の指定がない限り、そうした環は芳香族又は非芳香族であってよい。炭素環は一般に1〜3個の縮合した炭素環又は懸垂炭素環、好ましくは1個の環又は2個の縮合した炭素環を有する。一般に各環は3〜8個(好ましくは5〜7個)の環員を有する。縮合した環系又は懸垂環系を含む炭素環は一般に9〜12個の環員を含有する。ある種の炭素環は上記のように飽和したシクロアルキル基である。他の炭素環は、「部分的に飽和した」もの(すなわち、環の中に、1個又は複数の二重又は三重結合を含むが、芳香族は含まない)又はアリール基(すなわち、1個若しくは複数の芳香族環のすべてのメンバーが炭素である1個又は複数の環を有する芳香族基)である。好ましいアリール基にはフェニル及びナフチルなどの5〜10員の基(すなわち単一の5〜7員環又は7〜10員の二環式の基)が含まれる。「アリールアルキル」基(ここで、アリール及びアルキルは上記定義の通りであり、結合点はアルキル基上である)も「炭素環」という用語に包含される。そうした基には、これに限定されないが、ベンジルが含まれる。炭素環内に存在する炭素原子は、もちろんさらに、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜C10シクロアルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルコキシ、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、ハロ(C〜C)アルキル、ハロ(C〜C)アルコキシ、オキソ、アミノ(C〜C)アルキル及びモノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜C)アルキルなど(これらに限定されない)の様々な環の置換基に結合していてよい。
【0032】
「複素環」は、少なくとも1個の環を含む基であって、その中の少なくとも1個の環原子がヘテロ原子(すなわちN、O又はS)であり、環原子の残りが炭素である基である。そうした環は複素環と称される。複素環は1〜4個のヘテロ原子を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、1個若しくは2個のヘテロ原子が好ましい。複素環は一般に1〜3個の縮合した環又は懸垂環(そのうちの少なくとも1個は複素環である)、好ましくは1個の環又は2個の縮合した環を有する。一般にそれぞれの環は3〜8個の環員(好ましくは5〜7個の環員)を含む。縮合した環又は懸垂環を含む複素環は一般に9〜12個の環員を含む。1個の複素環又は2個の縮合した環(合計3〜10個の環員に対して、環のうちの少なくとも1個は複素環である)を含む3〜10員の複素環基が好ましく、5〜10員の複素環基が特に好ましい。複素環は、任意選択で、炭素環について上述したような1個又は複数の置換基で置換されていてもよい。別段の指定のない限り、複素環は飽和されていても(すなわち上記のようなヘテロシクロアルキル)、部分的に飽和されていてもよい、又は芳香族(ヘテロアリール)であってもよい。本明細書では、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、N、O及びSからなる群から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子とからなる安定した5〜7員の単環式及び7〜10員の二環式複素芳香族環を意味する。ヘテロアリール基中、すなわち環系中のS原子とO原子の合計数は1以下であることが好ましい。「ヘテロアリールアルキル」という用語では、ヘテロアリール及びアルキルは上記の定義通りであり、親系への結合点はアルキル基上である。
【0033】
ヘテロアリール基の例には、これらに限定されないが、ピリミジニル、ピリジル、キノリニル、ベンゾチエニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イソインドリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チエニル、チアゾリル、インドリジニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾイソキソリル、ジヒドロ−ベンゾジオキシニル、フラニル、ピロリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、シンノリニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、イソクロマニル、クロマノニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソインドリニル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ピリドピリジニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、プリニル、ベンゾジオキソリル、トリアジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、プテリジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンズイソキサジニル、ベンズイソキサジニル、ベンゾキサジニル、ジヒドロベンズイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロマニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンズオキサゾリノニル、ピロリルN−オキシド、ピリミジニルN−オキシド、ピリダジニルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド、キノリニルN−オキシド、インドリルN−オキシド、インドリニルN−オキシド、イソキノリルN−オキシド、キナゾリニルN−オキシド、キノキサリニルN−オキシド、フタラジニルN−オキシド、イミダゾリルN−オキシド、イソオキサゾリルN−オキシド、オキサゾリルN−オキシド、チアゾリルN−オキシド、インドリジニルN−オキシド、インダゾリルN−オキシド、ベンゾチアゾリルN−オキシド、ベンズイミダゾリルN−オキシド、ピロリルN−オキシド、オキサジアゾリルN−オキシド、チアジアゾリルN−オキシド、トリアゾリルN−オキシド、テトラゾリルN−オキシド、ベンゾチオピラニルS−オキシド及びベンゾチオピラニルS、S−ジオキシドが含まれる。好ましいヘテロアリール基には、イミダゾリル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジニル及びオキサゾリルが含まれ、ピリジルが特に好ましい。
【0034】
「ハロゲン」という用語にはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0035】
本明細書では、「ハロアルキル」は、1個又は複数のハロゲンで置換されたアルキル基(例えば、vが1〜3の整数であり、wが1〜(2v+1)の整数である−C)を指す。ハロアルキル基の例には、これらに限定されないが、モノー、ジー及びトリフルオロメチル;モノー、ジー及びトリークロロメチル;モノー、ジー、トリー、テトラ−及びペンタ−フルオロエチル;並びにモノー、ジー、トリー、テトラ−及びペンタ−クロロエチルが含まれる。「ハロ(C〜C)アルキル」基は1〜8個の炭素原子を有する。
【0036】
「ハロアルコキシ」という用語は、酸素橋を介した先に定義したようなハロアルキル基を指す。「ハロ(C〜C)アルコキシ」基は1〜8個の炭素原子を有する。ハロアルコキシ基の例には、これらに限定されないが、モノー、ジー及びトリーフルオロメトキシが含まれる。
【0037】
本明細書では、「オキソ」は、ケト(C=O)基を指す。非芳香族環の置換基であるオキソ基は−CH−の−C(=O)−への転換をもたらす。芳香族環へのオキソ置換基の導入によって、芳香族性が破壊されることは明らかであろう。
【0038】
本明細書では、「置換基」は、当該分子内の原子と共有結合で結合している分子部分を指す。例えば、「環置換基」は、環員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)と共有結合で結合している、本明細書で考察してきたようなハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基又は他の基などの部分であってよい。「置換」という用語は、指定された原子上の原子価を超えないように、かつ置換によって化学的に安定した化合物(すなわち、単離して特性評価することができ、生物学的活性を試験できる化合物)が得られるように、分子構造中の水素原子を、上記のような置換基で置き換えることを指す。代表的な置換基には、これらに限定されないが、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜C10シクロアルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルコキシ、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、ハロ(C〜C)アルキル、ハロ(C〜C)アルコキシ、オキソ、アミノ(C〜C)アルキル及びモノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜C)アルキルが含まれる。
【0039】
2つの文字間又は記号間ではないダッシュ(「−」)は、置換基のための結合点を示すのに使用される。例えば、−CONHは炭素原子を介して結合する。
【0040】
「GABA受容体」という用語は、検出できる形でGABAと結合し、塩素イオンコンダクタンス及び膜分極の用量依存性の変化をもたらすタンパク質複合体を指す。一般に、天然由来の哺乳動物(特にヒト又はラット)のGABA受容体サブユニットを含む受容体が好ましい。しかし、任意の改変が、受容体がGABAと結合する能力を実質的に阻害しない(すなわち、受容体のGABAに対する結合親和性の少なくとも50%が保持される)という条件で、サブユニットを改変することができる。候補GABA受容体のGABAに対する結合親和性は本明細書で提供するような標準的リガンド結合アッセイを用いて評価することができる。「GABA受容体」という用語の範囲内に包含される様々なGABA受容体サブタイプが存在することは明らかであろう。これらのサブタイプには、これらに限定されないが、αβγ、αβγ、αβγ及びαβγの受容体サブタイプが含まれる。GABA受容体は、ラット皮質の調製物、又はクローン化されたヒトGABA受容体を発現する細胞などからの様々な供給源から得られる。個々のサブタイプは、標準的な技術(例えば、本明細書で説明するように、所望のサブユニットをコードするmRNAを宿主細胞中に導入することによって)を用いて容易に調製することができる。
【0041】
「プロドラッグ」は、本発明で提供する化合物の構成要件を完全には満足しないかもしれないが、患者への投与に続いてin vivoで改変され、本発明の活性な化合物を生成する化合物である。例えば、プロドラッグは本発明で提供する化合物のアシル化された誘導体であってよい。プロドラッグには、対象哺乳動物に投与された場合、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基が切断されて、それぞれ遊離したヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基を形成する任意の基と結合する化合物が含まれる。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、本発明で提供する化合物のうちのアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体が含まれる。
【0042】
「患者」は、本発明で提供する化合物で治療される任意の個体である。患者には、ヒト、並びにコンパニオンアニマル及び家畜などの動物が含まれる。患者はCNS障害に冒されていてよく、またそうした状態でなくてもよい(すなわち、治療が予防的なものであってよい)。
【0043】
「CNS障害」は、患者のGABA受容体調節に応答的である中枢神経系の疾患又は状態である。そうした障害には、不安症障害(例えば、パニック障害、強迫性障害、広場恐怖症、対人恐怖症、特異性恐怖症、気分変調、適応障害、別離不安症、気分循環症及び全般性不安症障害)、ストレス障害(例えば、心的外傷後ストレス障害、予期不安症急性ストレス障害及び急性ストレス障害)、鬱病性障害(例えば、鬱病、非定型鬱病、双極性障害及び双極性障害の鬱段階)、睡眠障害(例えば、原発性不眠症、概日リズム睡眠障害、睡眠異常症NOS、悪夢障害を含む睡眠時異常行動、夜驚障害、不安症及び/又は他の精神障害のあとの睡眠障害、鬱病並びに物質誘発性睡眠障害)、認知障害(例えば、認知欠陥、軽度認知障害(MCI)、加齢関連認知減退(ARCD)、外傷性脳損傷、ダウン症候群、アルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患、並びに卒中)、AIDS関連痴呆症、鬱病、不安症若しくは精神疾患関連痴呆症、注意欠陥障害(例えば、注意欠陥障害及び神経欠陥多動障害)、痙攣性障害(例えば癲癇)、ベンゾジアゼピン過量摂取並びに薬物及びアルコール耽溺が含まれる。
【0044】
「CNS薬剤」はCNS障害を治療又は予防するために用いられる任意の薬物である。CNS薬剤には、例えば、セロトニン受容体(例えば、5−HT1A)作動薬及び拮抗薬並びに選択性セロトニン再取込阻害剤(SSRIs);ニューロキニン受容体拮抗薬;コルチコトロピン放出因子受容体(CRF)拮抗薬;メラトニン受容体作動薬;ニコチン作動薬;ムスカリン剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びドーパミン受容体作動薬が含まれる。
【0045】
GABA受容体のKが1マイクロモル未満、好ましくは100ナノモル未満すなわち10ナノモル未満である場合、化合物は「高親和性」を有しているという。GABA受容体のKを測定するための代表的なアッセイを、本明細書では実施例3で提供する。Kがアッセイで使用される受容体サブタイプに左右されることは明らかであろう。すなわち、高親和性化合物は、「サブタイプ特異性」(すなわちKが、1つのサブタイプに対して他のサブタイプに対するより少なくとも10倍大きい)であってよい。少なくとも1つのGABA受容体サブタイプに対するKiが基準を超えて満たす場合、そうした化合物をGABA受容体に対して高親和性であるという。
【0046】
他の膜結合受容体への結合に対するKより、大きくても10分の1、好ましくは大きくても100分の1のKを有するGABA受容体にそれが結合する場合、化合物は「高選択性」を有しているという。具体的には、化合物はGABA受容体でより以下の受容体、すなわち、セロトニン、ドーパミン、ガラニン、VR1、C5a、MCH、NPY、CRF、ブラジキニン、NK−1、NK−3及びタキキニンで少なくとも10倍大きいKを有していなければならない。受容体でのKを測定するためのアッセイは標準的な結合アッセイプロトコルを用いて行うことができる。
【0047】
式Iの好ましい化合物は、Rが、非置換、又はRから独立に選択される1〜4個の基で置換された5員若しくは6員の芳香族環であるものである。代表的な好ましいR基には、非置換、又はハロゲン、シアノ、C〜Cアルキル、ハロ(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ及びハロ(C〜C)アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル及びチアゾリルが含まれる。好ましいRの置換基には、ハロゲン、OH、C〜Cアルキル及びCFが含まれる。Rは、例えば1個又は2個のフッ素などのハロゲンで置換されていてよい。
【0048】
好ましい化合物には、式IIのものが含まれる。
【化3】


式中、A及びBはそれぞれ独立にCH又はNであり、他の可変の位置は上記に定義の通りである。
【0049】
式I及びIIのRは好ましくはハロゲン、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル又はC〜CヘテロシクロアルキルC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキコシ又はハロゲン又は5員又は6員アリール又はヘテロアリールである。
【0050】
式I及びIIのR及びRは、好ましくは水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、並びに非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル又はメチルで置換された5〜7員の芳香族炭素環及び複素環から独立に選択される。R及びRは独立に、水素、C〜Cアルコキシ又は5〜7員の芳香族炭素環であり、ここで炭素環は、非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル若しくはメチルで置換されていることがより好ましい。さらに好ましくは、R及びRは独立に、水素、C〜Cアルコキシ或いはフェニルであり、フェニルは非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル若しくはメチルで置換されている。
【0051】
式I及びIIの好ましい化合物には、Rが、非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル又はメチルで置換されているフェニルであり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0052】
式I及びIIの好ましい化合物には、RがC〜Cアルコキシであり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0053】
式I及びIIの好ましい化合物には、Rが非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル若しくはメチルで置換されているフェニルであり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0054】
式I及びIIの好ましい化合物には、RがC〜Cアルコキシであり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0055】
本発明の代表的な化合物には以下のものが含まれる。
【化4】


2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン
【化5】


3−メトキシ−5−フェニル−2−(2−チアゾール−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン
【化6】


2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジメトキシ−ピラジン
【化7】


2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジエトキシ−ピリジン
【化8】


3,5−ジメトキシ−2−(2−チアゾール−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン
【化9】


3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシピラジン
【化10】


2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−3−ピリジン−2−イル−ピラジン
【化11】


2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ピリミジン
【化12】


2−[1−(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン
【化13】


2−[1−(5−メトキシ−3−ピペリジン−1−イル−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン
【0056】
上記に列挙した具体的な化合物は本発明で提供する化合物の例示であって、本発明の範囲を限定するものではないことは明らかであろう。上記したように、本発明の化合物はすべて、遊離塩基として又は生理学的に許容される酸付加塩として存在することができる。さらに、キラル化合物及びラセミ混合物はどちらも本発明に包含される。
【0057】
本発明で提供する化合物は、標準的なin vitroで受容体結合アッセイを用いて測定されるように、GABA受容体へのリガンド結合に、検出し得る変化をもたらす(調節する)。本明細書で「GABA受容体リガンド結合アッセイ」と称することは、実施例3で提供する標準的なin vitroの受容体結合アッセイを指すものとする。簡単に述べると、GABA受容体調製物を、フルマゼニルなどの標識されている(例えばH)リガンド及び標識されていない試験化合物と共にインキュベートする、競合アッセイを行うことができる。検出できる形でGABA受容体へのリガンド結合を調節する化合物と共にインキュベーションすると、化合物が存在しないときの結合している標識の量に比べて、GABA受容体調製物に結合した標識の量が増加又は減少することになる。そうした化合物は、1マイクロモル未満、より好ましくは500nM、100nM、20nM若しくは10nM未満のGABA受容体でのKiを示すことが好ましい。in vitroでの結合を測定するのに用いられるGABA受容体は、様々な供給源、例えば、ラット皮質の調製物から、又はクローン化されたヒトGABA受容体を発現する細胞から得ることができる。
【0058】
望むなら、本発明で提供する化合物は、これらに限定されないが、溶解性、経口でのバイオアベラビリティ、毒性、血清タンパク質結合、臨床的に関係するEKG作用の欠如並びにin vitro及びin vivoでの半減期を含むある種の薬理学的特性について評価することができる。当技術分野でよく知られている普通のアッセイを用いて、これらの特性を評価し、具体的な使用のための優れた化合物を特定することができる。例えば、水溶液中での溶解度は少なくとも500ng/mLであることが好ましい。バイオアベラビリティを予測するために用いられるアッセイには、Caco−2細胞単層などのヒト腸細胞単層間の輸送が含まれる。ヒトにおける化合物の血液脳関門通過は、化合物を投与した(例えば、静脈内)実験動物での化合物の脳内レベルから予測することができる。血清タンパク質結合はOravcova,et al.(1996)Journal of Chromatography 677:1−27に記載のものなどのアルブミン結合アッセイから予測することができる。化合物の半減期は有効量を達成するのに必要な化合物の投与頻度に反比例する。in vitroでの化合物の半減期は、Kuhnz and Gieschen(1998)Drug Metabolism and Disposition 26:1120−27に記載のように、ミクロソーム半減期のアッセイから予測できる。
【0059】
毒性及び副作用は任意の標準的方法を用いて評価することができる。一般に、本明細書では、「無毒性」という用語は、相対的な意味で理解されるべきものであり、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与するために米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration(「FDA」))によって認可されている、又は、確立されている基準に沿って、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与するためにFDAによって認可を受けやすい任意の物質を指すものとする。毒性は、実施例5に示す細胞ATPの産生に対する効果又は培養した肝細胞への毒性を検出するアッセイを用いても評価することができる。使用できる他のアッセイには、エイムステストなどの細菌性復帰突然変異アッセイ、並びに標準的な催奇性及び腫瘍原性アッセイが含まれる。ある用量(すなわち、in vivoで有効な濃度が得られる用量)での本明細で提供される化合物の投与が、心臓のQT間隔の延長(すなわち、モルモット、ミニブタ若しくはイヌで、心電図法で測定して)をもたらさないことが好ましい。5日間、好ましくは10日間、毎日投与した場合、そうした用量はまた、実験用げっ歯類(例えばマウス又はラット)で、対応する対照に対して、100%超、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下の肝臓重量対体重比増大を招く肝臓肥大を引き起こさない。そうした用量はまた、イヌ又は他の非げっ歯類哺乳動物で、が対応する未処理対照に対して、50%超、好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下の肝臓重量対体重比の増加を招く肝臓肥大を引き起こさないことが好ましい。
【0060】
以下により詳細に考察するように、検出する目的で、本発明で提供する化合物を、同位体標識又は放射能標識することができる。1個又は複数の原子が、通常自然界で見出される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する原子によって置き換えられること以外は、そうした化合物は上記のものと同一である。本発明で提供する化合物中に混入することができる同位体に例には、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が含まれる。さらに重水素(すなわちH)などの重同位体での置き換えは、より大きい代謝安定性、例えばin vivoでの半減期の増大又は投与所要量の減少から得られるある種の治療上の利点を与えることができ、その結果、ある状況では好ましいことがある。
【0061】
化合物の調製
本発明で提供する化合物は一般に標準的合成法を用いて調製することができる。出発材料は一般にSigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO)などからの市販品で容易に入手できる、又は本明細書で述べるようにして調製できる。スキームI及びIIに式Iの化合物の調製に適した代表的な手順の概要を示す。これらのスキームは、本発明を、そこに示されている特定の試薬と条件に範囲と趣旨を限定するものと解釈されるべきではない。当分野の技術者は、試薬と条件を変えることができ、他のステップを用いて本発明に包含される化合物を作製できることを理解されるであろう。ある場合は、所望の変換を達成するために反応基の保護が必要となることもある。一般に、そうした保護基の必要性、並びにそうした基を結合し離脱させるために必要な条件は、有機合成の分野の技術者に明らかであろう。以下のスキームでは、別段の記述のない限り、変数は式Iでの定義と同様である。
【0062】
(スキームI)
【化14】

【0063】
スキームIはある種の代表的イミダゾリルメチルピリジンの合成を示す。簡単に述べると、3,5−ジブロモ−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステルを、ナトリウムのアルコール中の攪拌溶液に加え、還流させてアルコキシ置換誘導体を得る。ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL)、続く塩化チオニルとの反応によって、クロロメチル置換ピリジンが得られ、次いでこれをイミダゾリルアリール又はヘテロアリールと反応させて、式IIIの化合物を得る。3,5−ジブロモ−2−シアノピリジンを、他の直接的な合成による変換にかけて、式Iによって包含される追加のR及びR置換基を導入できることは容易に明らかであろう。
【0064】
(スキームII)
【化15】

【0065】
スキームIIはある種の代表的イミダゾリルメチルピラジンの合成を示す。簡単に述べると、2−アミノ−マロニトリル4−トルエンスルホネートをNaOMe、続いてアルデヒド及びHClと反応させてピラジン2−カルボン酸2を得る。DIBAL、続くSOClとの反応によって2−クロロメチルピラジン4を得る。次いで、置換イミダゾール5との反応によって式IVの化合物が得られる。
【0066】
(スキームIII)
【化16】

【0067】
スキームIIIはスキームIIで使用したイミダゾール中間体5の合成のための2つの経路を示す。ステップ1では、アリール又はヘテロアリールアルデヒド6を、グリオキサールと水酸化アンモニウムで処理してイミダゾール中間体5を形成する。ステップ1’では、イミダゾール7をブチルリチウム、続いてトリ−n−ブチルすずクロリドで処理して化合物8を得る。これは分解を避けるために注意深く取り扱わなければならない。ステップ2’では、化合物8を用いて、パラジウムクロスカップリング反応でのアリール又はヘテロアリールハライドとの反応によって化合物9を得る。続くステップ3’の酸による化合物9の処理によって化合物5を得る。
【0068】
出発材料を変えることができ、他のステップを用いて本発明に包含される種々の化合物を作製できることは明らかであろう。
【0069】
ある種の状況では、本発明で提供する化合物は1個又は複数の不斉炭素原子を含有し、それによって化合物は様々な立体異性体として存在することができる。これらの化合物は、例えばラセミ化合物又は光学的に活性な形態であってよい。上記のように、すべての立体異性体は本発明に包含される。それでも、単一の鏡像異性体(すなわち、光学的に活性な形態)を得ることが望ましい。単一の鏡像異性体を調製するための標準的方法には不斉合成及びラセミ化合物の分割が含まれる。ラセミ化合物の分割は、分割剤の存在下での結晶化、又は例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィーなどの従来の方法によって実施することができる。
【0070】
上記のように、本発明は本明細書で述べる化合物の薬剤として許容される塩を包含する。本明細書で用いる、「薬剤として許容される塩」は、当技術分野で、一般に過度の毒性、炎症、アレルギー反応、又は他の問題及び合併症を伴うことなく、ヒト又は動物の組織と接触して使用するのに適していて、妥当な利益/リスク比と釣り合っていると考えられている酸又は塩基の塩である。当分野の技術者は、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩及び有機酸塩、並びにカルボン酸などの酸残基のアルカリ塩及び有機塩を含む、薬剤として許容される様々な無毒性の付加塩を理解されるであろう。具体的な薬剤としての塩には、これらに限定されないが、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルフィン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サルチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、例えば酢酸、nが0〜4であるHOOC−(CH−COOH等のカルボン酸などの酸の塩が含まれる。同様に、薬剤として許容されるカチオンには、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムが含まれる。当分野の技術者は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,p.1418(1985)にリストされているものを含む、本発明で提供する化合物の他の薬剤として許容される塩を理解されるであろう。したがって、本発明の開示は具体的に列挙した化合物のすべての薬剤として許容される塩を含むことを理解されたい。
【0071】
薬剤として許容される塩の調製のために広範囲の合成手順が利用できる。一般に薬剤として許容される塩は、塩基又は酸部分を含有する親化合物から通常の化学的方法によって合成することができる。簡単に述べると、そうした塩は、遊離酸若しくは塩基の形態のこれらの化合物を、化学量論量の適当な塩基若しくは酸と、水若しくは有機溶媒又はその混合液中(一般にエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水系媒体が好ましい)で反応させることによって調製できる。
【0072】
本発明で提供する化合物のプロドラッグは、改変物が切断されて親化合物となるような形で、化合物中に存在する官能基を改変することによって調製することができる。プロドラッグには、ヒドロキシ、アミン又はスルフヒドリル基が、対象哺乳動物に投与された場合に切断されて遊離したヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基をそれぞれ形成する任意の基と結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、本発明で提供する化合物中のアルコール官能基及びアミン官能基の酢酸、ギ酸及び安息香酸誘導体が含まれる。好ましいプロドラッグにはアシル化された誘導体が含まれる。当分野の技術者は、本発明で提供する化合物のプロドラッグの調製に使用できる様々な合成法を理解されるであろう。
【0073】
化合物は、少なくとも1個の放射能同位体である原子を含む前駆体を用いてその合成を行うことによって、放射能標識することができる。そうした放射能同位体は炭素(好ましくは14C)、水素(好ましくはH)、イオウ(好ましくは35S)又はヨウ素(好ましくは125I)から選択することが好ましい。放射能標識した化合物の合成は、Amersham Corporation,Arlington Heights,IL;Cambridge Isotope Laboratories,Inc.Andover,MA;SRI International,Menlo Park,CA;Wizard Laboratories,West Sacramento,CA;ChemSyn Laboratories,Lexena,KS;American Radiolabeled Chemicals,Inc.,St.Louis,MO;及びMoravek biochemicals Inc.,Brea,CAなどの放射能標識したプローブ化合物の注文合成を専門にしている放射能同位体の供給メーカーによって好都合に実施することができる。トリチウム標識された化合物は、トリチウム化酢酸中での白金触媒による交換、トリチウム化トリフルオロ酢酸中での酸触媒による交換、或いはトリチウムガスを用いた不均一触媒による交換によっても好都合に触媒的に調製される。そうした調製は、基質としての化合物を用いて先に列挙したどの供給メーカーによっても、注文した放射能標識として好都合に行うことができる。さらにある種の前駆体を、トリチウムガスを用いたトリチウム−ハロゲン交換、不飽和結合のトリチウムガス還元、又はトリチウム化ホウ素ナトリウムを用いた還元に、必要に応じてかけることができる。本発明の14C放射能標識した化合物を、スキームIに概説した合成のための出発材料として、14C放射能標識したシュウ酸ジエチル(American Radiolabeled Chemicals,St.Louis,MO、カタログ番号ARC−1127)を用いて調製することができる。
【0074】
薬剤組成物
本発明は、少なくとも1種の生理学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に、本明細書で提供する少なくとも1種の化合物を含む薬剤組成物も提供する。そうした化合物は、GABA受容体調節に対して応答性の障害を治療するために使用することができる(例えば、GABA受容体調節による不安症、鬱病、睡眠障害又は認知障害の治療)。薬剤組成物には、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水又はリン酸塩緩衝化生理食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、補助剤、ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤又はグルタチオン及び/又は保存剤を含むことができる。好ましい薬剤組成物はヒト又は他の動物(例えば、犬などのコンパニオンアニマル)への経口送達用に調剤される。望むなら、CNS薬剤などの他の活性成分も含むことができる。
【0075】
薬剤組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、経直腸又は非経口投与を含む適切な任意の形の投与のために調剤することができる。本明細書では、非経口という用語には、皮下、皮内、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、くも膜下腔内及び腹腔内注射、並びに類似の任意の注射又は輸液技術が含まれる。いくらかの実施形態では、経口使用に適した形態である組成物が好ましい。そうした形態には、例えば、錠剤、トローチ剤、ドロップ剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散性の粉剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬質若しくは軟質のカプセル剤、或いはシロップ剤又はエリキシル剤が含まれる。さらに他の実施形態では、本発明の組成物は凍結乾燥物として調剤することができる。
【0076】
経口使用のための組成物は、魅力的でかつ口当たりのよい調剤を提供するために、さらに甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤などの1種又は複数の成分を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適している生理学的に許容される賦形剤との混合物として、活性成分を含有する。そうした賦形剤には、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム)、顆粒化剤や崩壊剤(例えば、とうもろこしデンプン又はアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン又はアラビアゴム)及び滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が含まれる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、また胃腸管中での崩壊と吸収を遅延させ、それによって長期間にわたって持続した作用を提供するために、既知の技術でコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートなどの時間遅延材料を使用することができる。
【0077】
経口使用のための製剤を、活性成分が不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合されている硬質ゼラチンカプセル剤として、或いは、活性成分が水又はオイル媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油)と混合されている軟質ゼラチンカプセル剤として提供することができる。
【0078】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した1種又は複数の賦形剤との混合物として、活性物質を含む。そうした賦形剤は、懸濁化剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム)及び分散剤若しくは湿潤剤(例えば、レシチンなどの天然由来のリン脂質、ポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどの酸化エチレンと長鎖の脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどの酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトールとから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又はポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトール無水物とから誘導される部分エステルとの縮合生成物)である。水性懸濁剤は、1種又は複数の保存剤、例えばエチル若しくはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1種又は複数の着色剤、1種又は複数の香味剤及びスクロース若しくはサッカリンなどの1種又は複数の甘味剤を含むこともできる。
【0079】
油性懸濁剤は、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はココナッツ油)中、又は流動パラフィンなどの鉱物油中に活性成分を懸濁させることによって調剤することができる。油性懸濁剤は蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。上記のものなどの甘味剤及び/又は香味剤を加えて口当たりのよい経口調剤を提供することができる。そうした懸濁剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を加えて保存することができる。
【0080】
水の添加による水性懸濁剤の調剤に適した分散性の粉末若しくは顆粒は、活性成分を分散剤若しくは湿潤剤、懸濁化剤及び1種又は複数の保存剤との混合物で提供する。適切な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁化剤は前述のもので例示されている。甘味剤、香味剤及び着色剤などの追加の賦形剤も存在してよい。
【0081】
薬剤組成物は水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は植物油(例えば、オリーブ油又はラッカセイ油)又は鉱物油(例えば流動パラフィン)或いはその混合物でよい。適切な乳化剤は天然由来のゴム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、天然由来のリン脂質(例えば、大豆、レシチン、脂肪酸とヘキシトールから誘導されたエステル若しくは部分エステル)、無水物(例えば、ソルビタンモノオレエート)並びに脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)でよい。乳剤は甘味剤及び/又は香味剤を含むこともできる。
【0082】
シロップ剤及びエリキシル剤はグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味剤で調剤することができる。そうした製剤は1種又は複数の粘滑薬、保存剤、香味剤及び/又は着色剤を含むこともできる。
【0083】
薬剤組成物を、殺菌した注射可能な水性又は油性懸濁剤として調剤することができる。用いられる媒介物及び濃度に応じて、化合物を媒介物中に懸濁させるか、又は溶解させることができる。そうした組成物は、上記したものなどの適切な分散剤、湿潤剤及び/又は懸濁化剤を用いて知られている従来技術によって調剤することができる。用いてもよい許容される媒介物及び溶媒としては、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、殺菌した不揮発性油を溶媒又は懸濁媒体として使用することができる。この目的には、合成のモノグリセリド若しくはジグリセリドを含む任意の無菌性の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は注射可能な組成物の調剤に使用され、局部麻酔薬などの補助剤、保存剤及び/又は緩衝剤は媒介物中に溶解させることができる。
【0084】
薬剤組成物を座薬の形態で調剤することもできる(例えば経直腸投与のために)。そうした組成物は、通常の温度では固体であるが、経直腸の温度では液体であり、したがって、直腸内で溶融して薬物を放出することになる薬物を適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調剤することができる。適切な賦形剤には、例えばカカオバター及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0085】
ヒト以外の動物に投与するために、組成物を動物の餌若しくは飲料水に加えることもできる。その食事によって、動物が妥当な量の組成物を摂取するように、動物の餌若しくは飲料水組成物を調剤すると好都合である。餌若しくは飲料水のためのプレミックスとして組成物を提供することも好都合である。
【0086】
薬剤組成物を、徐放性製剤(すなわち、投与した後で化合物を徐々に放出させるカプセル剤などの製剤)として製剤することができる。そうした製剤は一般によく知られている技術を用いて調製し、例えば、経口、経直腸又は皮下注入によって、或いは所望の目標部位での注入によって投与することができる。そうした製剤で使用するための担体は、生体適合性であり、また生物分解性であってもよい。製剤は比較的一定レベルの活性化合物の放出を提供することが好ましい。徐放性製剤中に含有される化合物の量は、注入部位、放出の速度及び期待する期間並びに治療される若しくは予防される状態の性質によって決まる。
【0087】
本発明で提供する化合物は薬剤組成物中に一般に治療的に有効な量で存在する。治療的に有効な量は、CNS障害の症状の減少などの識別し得る患者利益をもたらす量である。好ましい濃度は、GABA受容体リガンドのGABA受容体との結合をin vitroで阻害するのに十分な濃度である。体重Kg当たり1日量約0.1mg〜約140mgの範囲の組成物提供投与レベルが好ましい(ヒトの患者当たり1日量約0.5mg〜約7g)。単一投与形態を作るために担体材料と一緒にできる活性成分の量は治療される宿主と投与の個別様式に応じて変わる。投与単位形態は一般に約1mg〜約500mgの活性成分を含有することになる。しかし、任意の個別患者に対する最適の用量は、用いられる個々の化合物の活性;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;投与の時間と経路;排泄速度;薬物併用などの任意の同時治療;及び治療を受けている個別疾患のタイプや重症度を含む様々な要素によって決まることになることを理解されるであろう。最適の投与は、当技術分野で知られている日常的な試験及び手順を用いて確立することができる。
【0088】
薬剤組成物は、不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害又はアルツハイマー痴呆症などのCNS障害を治療するためにパッケージすることができる。パッケージした薬剤製剤には、薬剤として有効な量の少なくとも1種の本明細書で述べる化合物を保持する容器と、容器に入れられた組成物がCNS障害の治療のために使用されるべきであることを示す使用説明書(例えば、ラベル)が含まれる。
【0089】
使用方法
いくつかの態様では、本発明はCNS障害の進行を阻害するための方法を提供する。すなわち、本明細書で提供する治療方法は、障害を治療するために使用する、又はCNS障害が認められない患者でのそうした疾患の開始を遅らせる若しくは予防するために使用することができる。CNS障害については以下にさらに詳細に考察し、従来技術で確立されている基準を用いて、診断又はモニタリングを行うことができる。或いは、さらに、本発明で提供する化合物を、短期記憶を改善するために患者投与することができる。上記のような投与及び治療投与計画で、患者には、ヒト、家庭用コンパニオンアニマル(犬などのペット)及び家畜用動物を含めることができる。
【0090】
投与の頻度は、用いる化合物と治療又は予防される個々の疾患に応じて異なってよい。大部分の障害の治療では、一般に、1日に4回以下の投与レジメンが好ましい。睡眠障害の治療には、迅速に効果的な濃度に到達する単一用量が望ましい。一般に、当分野の技術者に知られている、治療若しくは予防される状態に適したアッセイを用いて、患者の治療効果をモニターすることができる。
【0091】
好ましい実施形態では、そうした治療を必要とする患者に、本発明で提供する化合物を、CNS障害の症状を変えるのに十分な量で使用する。αβγ及びαβγ受容体サブタイプで作動薬として作用する化合物は、パニック障害、強迫性障害及び全般性不安症障害などの不安症障害;心的外傷後ストレス及び急性ストレス障害を含むストレス障害を治療するのに特に有用である。αβγ及びαββ受容体サブタイプで作動薬として作用する化合物は、抑鬱性障害又は双極性障害の治療及び睡眠障害の治療にも有用である。αβγ受容体サブタイプ或いはαβγ及びαβγ受容体サブタイプで逆作動薬として作用する化合物は、ダウン症候群、アルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患並びに卒中関連痴呆症に由来するものを含む認知障害の治療に特に有用である。αβγで逆作動薬として作用する本発明の化合物は、記憶障害のある患者の記憶、特に短期記憶の向上による、認知障害の治療に特に有用である。αβγ受容体サブタイプで作動薬として作用する化合物は癲癇などの痙攣性障害の治療に有用である。ベンゾジアゼピン部位で拮抗薬として作用する化合物は、ベンゾジアゼピン過量摂取の影響を逆転させること、及び薬物やアルコール耽溺の治療に有用である。
【0092】
本発明で提供する化合物及び組成物を用いて治療できるCNS障害には以下のものが含まれる。
鬱病、例えば、鬱病、非定型鬱病、双極性障害、双極性障害の鬱段階。
不安症、例えば、全般性不安症障害(GAD)、広場恐怖症、パニック障害+/−広場恐怖症、対人恐怖症、特異性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害(OCD)、気分変調、気分の動揺及び不安を伴う適応障害、別離不安症障害、予期不安症急性ストレス障害、適応障害、気分循環症。
睡眠障害、例えば、原発性不眠症を含む睡眠障害、概日リズム睡眠障害、睡眠異常症NOS、悪夢障害を含む睡眠時異常行動、夜驚障害、鬱病及び/又は不安症他の精神障害のあとの睡眠障害、物質誘発性睡眠障害。
認知欠陥、例えば、認知欠陥、アルツハイマー病、パーキンソン病、軽度認知障害(MCI)、加齢関連認知減退(ARCD)、卒中、外傷性脳損傷、AIDS関連痴呆症、鬱病、不安症及び精神疾患(統合失調症及び幻覚性障害を含む)に伴う痴呆症。
注意欠陥障害、例えば注意欠陥障害(ADD)及び神経欠陥多動障害(ADHD)。
言語障害、例えば運動性チック、間代性どもり、流暢性不全、言語閉塞(speech blockage)、構語障害、トゥーレット症候群及び痙攣性発語。
【0093】
本発明で提供する化合物及び組成物は患者の短期記憶(実働記憶)を改善するために使用することもできる。短期記憶喪失を改善するための薬剤として有効な量の化合物は、順方向数字列範囲テスト(forward digit span)及び系列暗記学習(serial rote learning)を含むどんな短期記憶機能の標準的試験でも満足させる大幅な改善をもたらすのに十分な量である。例えば、そうした試験は、患者が言葉や文字を思い出す能力を評価するように設計することができる。或いは、短期記憶機能を評価するために、より完全な神経生理的評価を用いることができる。短期記憶を改善するために治療を受ける患者は(そうする必要はないが)記憶欠陥で診断することができる、又はそうした欠陥の進行の素因となると考えられている。
【0094】
別の態様では、本発明は他のCNS薬剤の作用(又は治療効果)を増強する方法を提供する。そうした方法は、他のCNS薬剤と併用して有効量の本発明で提供する化合物を投与することを含む。CNS薬剤には、これらに限定されないが、以下のもの、すなわち不安症のためのセロトニン受容体(例えば5−HT1A)作動薬及び拮抗薬;不安症及び鬱病のためのニューロキニン受容体拮抗薬又はコルチコトロピン放出因子受容体(CRF)拮抗薬;睡眠障害のためのメラトニン受容体作動薬;またアルツハイマー痴呆症などの神経変性障害のためのニコチン作動薬、ムスカリン剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びドーパミン受容体作動薬が含まれる。ある実施形態では、本発明は、SSRIと併用して有効量の本発明のGABA作動薬化合物を投与することによって、選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRIs)の抗鬱活性を増強する方法を提供する。有効量の化合物は、他のCNS薬剤だけで治療された患者と比較した場合、患者の症状に検出可能な変化をもたらすのに十分な量である。
【0095】
併用投与は、Da−Rocha,et al.,J.Psychopharmacology(1997)11(3):211−218;Smith,et al.,Am.J.Psychiatry(1998)155(10):1339−45;又はLe,et al.,Alcohol and Alcoholism(1996)31(suppl.):127−132に開示されているものと同様の方法で実施することができる。またPCT国際公開公報第WO99/47142号、同WO99/47171号、同WO99/47131号及び同WO99/37303号も参照されたい。
【0096】
本発明は、Ro15−1788又はGABAなどのベンゾジアゼピン化合物のGABA受容体との結合を阻害する方法にも関する。そうした方法には、本発明で提供する化合物を、GABA受容体を発現する細胞と接触させることを含む。前記化合物は、in vitroでGABA受容体とのベンゾジアゼピンの結合又はGABAの結合を阻害するのに十分な量で存在する。この方法には、in vivoで(例えば、本発明で提供する化合物を、in vitroでベンゾジアゼピン化合物又はGABAのGABA受容体への結合を阻害するのに十分な量で与えられた患者に)ベンゾジアゼピン化合物のGABA受容体との結合を阻害することが含まれる。1つの実施形態では、そうした方法はベンゾジアゼピン薬物過量摂取を治療するのに有用である。ベンゾジアゼピン化合物のGABA受容体との結合を阻害するのに十分な量である化合物の量は、実施例3で述べるアッセイなどのGABA受容体結合アッセイによって容易に決定できる。
【0097】
別の態様では、本発明は、本発明で提供する化合物のためのin vitroでの様々な使用を提供する。例えば、そうした化合物を、組織切片などのサンプルでのGABA受容体の検出と局在化のためのプローブとして、受容体活性のためのアッセイでの正の対照として、GABA受容体への候補薬剤の結合能力を測定するための標準物及び試薬として、又はポジトロン放出断層撮影(PET)画像化用又は単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)用のラジオトレーサーとして使用することができる。そうしたアッセイは、生体でのGABA受容体の特性評価に使用することができる。このような化合物は、可能性のある薬剤のGABA受容体への結合能力の測定における、標準物及び試薬としても有用である。
【0098】
サンプル中のGABA受容体の有無の決定方法では、GABA受容体との結合を可能にする条件下で、サンプルを、本発明で提供する化合物と共にインキュベートすることができる。次いで、サンプル中のGABA受容体に結合している化合物の量を検出する。例えば、化合物を、よく知られている様々な技術のどれかを用いて標識し(例えば、本明細書で説明するトリチウムなどの放射性核種で放射能標識し)、サンプル(例えば、培養細胞の調製物、組織調製物又はその一部分であってよい)と共にインキュベートすることができる。適切なインキュベーション時間は、一般にある期間の時間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって測定することができる。インキュベーションに続いて、結合していない化合物を除去し、使用標識のための任意の方法(例えば、放射能標識した化合物に対するオートラジオグラフィー又はシンチレーション計数法;発光性基及び蛍光性基を検出するために分光法を使用することができる)を用いて結合している化合物を検出する。対照として、対応したサンプルを、放射能標識した化合物及びより多い量の標識されていない化合物と同時に接触させることができる。次いで、未結合の標識された化合物と標識されていない化合物を、同じ方法で取り除き、結合している標識を検出する。対照物中より、試験サンプル中に検出可能な標識がより多い量であることは、サンプルにカプサイチン受容体が存在することを示している。培養細胞若しくは組織サンプル中での、GABA受容体の受容体オートラジオグラフィー(受容体マッピング)を含む検出アッセイは、KuharのCurrent Protocols in Pharmacology(1998)John Wiley & Sons,New York、sections 8.1.1〜8.1.9に記載のようにして実施することができる。
【0099】
例えば、本発明で提供する化合物は細胞又は組織サンプル中のGABA受容体を検出するために使用することができる。これは、複数の対応した細胞又は組織サンプルを調製することによって行うことができる。そのうちの少なくとも1つは実験サンプルとして調製し、少なくとも1つは対照サンプルとして調製する。実験サンプルは、それ以前に本明細書で提供するどの化合物とも接触していない、少なくとも1つの対応した細胞又は組織サンプルを、最初に測定されたモル濃度で、選択化合物の検出可能的に標識された調製物を含む実験溶液と接触させる(RO15−1788とGABA受容体の細胞及び組織サンプル内での結合を可能にする条件下で)ことによって調製する。対照サンプルは、実験サンプルと同様の方法で調製され、より高いモル濃度で、同一化合物の標識されていない調合物も含有する。
【0100】
次いで、実験サンプル及び対照サンプルを洗浄して、未結合の検出可能なように標識された化合物を除去する。次いで、残留する結合した検出可能なように標識された化合物の量を測定し、実験サンプル及び対照サンプル中の検出可能なように標識された化合物の量を比較する。どの対照サンプルで検出されたものより、少なくとも1つの洗浄実験サンプル中でより多い量の検出可能な標識の検出を示している比較から、実験サンプル中にGABA受容体が存在することが実証される。
【0101】
この手順で使用する検出可能なように標識された化合物は、放射性の標識又は直接的若しくは間接的に発光する標識で標識することができる。この手順で、組織切片が用いられ、検出可能なように標識された化合物が放射性同位体で標識されている場合、結合している標識された化合物はオートラジオグラフ的に検出することができ、オートラジオグラムが得られる。実験サンプル又は対照サンプル中の検出可能な標識の量は、オートラジオグラムを見て、オートラジオグラムの曝露密度を比較することによって測定することができる。
【0102】
本発明で提供する化合物は、よく知られている様々な細胞培養法及び細胞分離法で使用することもできる。例えば、選別、アッセイ及び培養における増殖のためのGABA受容体発現細胞の固定化での使用のために、化合物を、組織培養プレート又は他の細胞培養支持体の内側表面に結合させることができる。そうした連結は、上記方法などの任意の適切な技術、並びに他の標準的な技術で実施することができる。化合物は、in vitroでの細胞の同定及び選別を容易にするために使用することもでき、それによってGABA受容体を発現する細胞の選択が可能になる。そうした方法で使用する化合物は、本明細書で説明したように標識することが好ましい。1つの実施形態では、フルオレセインなどの蛍光性のマーカーに結合している化合物を細胞と接触させ、次いでこれを蛍光標識式細胞選別法(FACS)で分析する。
【0103】
他の態様では、GABA受容体を、リガンドの受容体との結合に適した条件下で、十分な量の本発明で提供する化合物と接触させることを含む、in vitro又はin vivoで、リガンドのGABA受容体との結合を調節するための方法を提供する。GABA受容体は、溶液中、培養細胞若しくは単離細胞の調製物中、又は患者の中に存在してもよい。GABA受容体は哺乳動物の脳内に存在するものが好ましい。一般に、受容体と接触させる化合物の量は、例えば実施例3に示すような結合アッセイ中で、in vitroでGABA受容体とのリガンド結合を調節するのに十分でなければならない。
【0104】
本明細書ではまた、GABA受容体を、リガンドの受容体との結合に適した条件下で、in vitro又はin vivoのどちらかで十分な量の上記化合物と接触させることによって、細胞GABA受容体のシグナル伝達活性(特に塩素イオンイオンコンダクタンス)を変化させるための方法も提供する。GABA受容体は、溶液中、培養細胞若しくは単離細胞の調製物中、又は患者の中に存在してもよく、化合物の量は、in vitroでGABA受容体のシグナル伝達活性を変化させるのに十分な量でよい。一般に、受容体と接触させる化合物の量は、例えば実施例3に示すような結合アッセイ中で、in vitroでGABA受容体とのリガンド結合を調節するのに十分でなければならない。シグナル伝達活性に対する効果は、標準的な技術を用いて、細胞の電気生理の変化で評価することができる。受容体が動物中に存在している場合、細胞の電気生理の変化は、動物の食物摂取行動の変化として検出することができる。GABA受容体のシグナル伝達活性を変化させるのに十分な量である化合物の量は、実施例4に示すアッセイなどのGABA受容体シグナル伝達アッセイによって測定することができる。in vivoでGABA受容体を発現する細胞は、これらに限定されないが、ニューロン細胞又は脳細胞でよい。そうした細胞を、化合物を含有する体液との接触、例えば脳脊髄液との接触によって、本発明の化合物と接触させることができる。in vitroでのGABA受容体のシグナル伝達活性の変化は、そうした細胞が、GABAの存在下で本発明の化合物と接触するときの、GABA受容体を発現する細胞の電気生理の検出し得る変化から測定できる。
【0105】
細胞内記録又はパッチ−クランプ記録を、細胞の電気生理の変化を数量化するために使用することができる。本発明の化合物を与えられた動物の行動の再現性のある変化も、GABA受容体を発現する動物の細胞の電気生理に変化が起こったことを示すために用いることができる。
【0106】
以下の実施例を、限定するためではなく例示のために提供する。別段の指定がない限り、すべての試薬及び溶媒は、標準的な市販品グレードであり、さらなる精製をしないで使用される。出発材料及び種々の中間物は、市販の供給源から得ることができる、市販の有機化合物から調製される、或いはよく知られている合成方法を用いて調製される。
【実施例1】
【0107】
代表的なイミダゾリルメチルピリジンの調製
この実施例は、代表的なイミダゾリルメチルピリジンである、2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジエトキシ−ピリジン(化合物4)の合成を示す。
【0108】
【化17】

【0109】
1.3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−カルボン酸エチルエステルの調製
上記にまとめたように、文献の手順(Bull.Chem.Soc.Japan(1970)43:3210−3214)を用いて、3,5−ジブロモ−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステルを調製する。EtOH(5mL)中のNa(78mg、3.39ミリモル)の攪拌溶液に、3,5−ジブロモ−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル(0.5g、1.69ミリモル)を加え、5時間還流させる。減圧下で大部分の溶媒を蒸発させた後、飽和NHCl溶液で残留物を中和してEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄してNaSOで乾燥し、濃縮する。有機性残留物を50%EtOAc/ヘキサンで精製して3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−カルボン酸エチルエステルを粘性液体(250mg、60%)として得る。

【0110】
2.(3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−イル)−メタノールの調製
CHCl(10mL)中の3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−カルボン酸エチルエステル溶液(250mg、1.04ミリモル)に、THF中のDIBALの溶液(1N、3mL)を加え、室温で20分間攪拌する。過剰の試薬をグラウバー塩(NaSO・10HO)でクエンチし、ろ過し、濃縮して(3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−イル)−メタノール(166mg、収率80%)を得る。

【0111】
3.2−クロロメチル−3,5−ジエトキシ−ピリジンの調製
CHCl(5mL)中の(3,5−ジエトキシ−ピリジン−2−イル)−メタノール(166mg、0.84ミリモル)の溶液に、CHCl中のSOCl(1mL)の2.0M溶液を加える。反応混合物を室温で30分間攪拌し、トルエンで希釈し、濃縮して2−クロロメチル−3,5−ジエトキシ−ピリジンをHCl塩として得る。これを次のステップで直接使用する。
【0112】
4.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジエトキシ−ピリジン(化合物4)の調製
DMF(5mL)中の2−クロロメチル−3,5−ジエトキシ−ピリジン(174mg、0.69ミリモル)の溶液に、2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジン(112mg、0.69ミリモル)を加え、反応物を室温で終夜攪拌する。反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出してブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮する。残留物を数滴のNHOHを含有する8%MeOH−CHClの溶出液でカラムクロマトグラフィーによって精製して2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジエトキシ−ピリジン(118mg、49%)を得る。

【実施例2】
【0113】
代表的なイミダゾリルメチルピラジンの調製
この実施例は代表的なイミダゾリルメチルピラジンの合成を示す。
A.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン(化合物1)
【化18】

【0114】
1.3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−カルボン酸メチルエステルの調製
メタノール(60mL)中の2−アミノ−マロンニトリル−4−トルエンスルホン酸(5.0g、19.3ミリモル)の溶液に、N雰囲気下で室温でNaOMe(MeOH中に25重量/重量%、5.2mL、22.7ミリモル)を加える。2時間後、酢酸(0.204g、3.4ミリモル)を加える。混合物を0℃に冷却し、混合物にベンズアルデヒド(3g、19.9ミリモル)を加える。混合物をこの温度でさらに2時間攪拌し、次いで、終夜をかけて徐々に室温まで温める。この混合物に濃塩酸(9.2g、80ミリモル)を加え、混合物を室温で週末にわたって混合する。真空下で溶媒を除去する。この粗混合物に飽和NHCl(50mL)とDCM(100mL)を加える。有機層を分離し、水層をDCM(2×50mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥して溶媒を除去する。カラムクロマトグラフィー分離(シリカゲル、DCM)によって3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−カルボン酸メチルエステル1.0gを黄色の固形物として得る。
【0115】
2.(3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−イル)−メタノールの調製
THF(20mL)中の3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−カルボン酸メチルエステル(150mg、0.58ミリモル)の溶液に、DIBAL−H(DCM中に1M、1mL、1ミリモル)をN雰囲気下で0℃で滴下する。混合物をこの温度で0.5時間攪拌する。DIBAL−H(DCM中に1M、0.8mL、0.8ミリモル)の他方の部分を加える。0.5時間後、反応物を、飽和NHCl(1mL)、次いでNaOH(1.5M、2mL)でクエンチする。混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し、溶媒を除去する。粗生成物をPTLC(シリカゲル;DCM中の10%MeOH)で精製して、(3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−イル)−メタノール60mgをオイル状物として得る。
【0116】
3.2−クロロメチル−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジンの調製
DCM(5mL)中の(3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン−2−イル)−メタノール(60mg、0.28ミリモル)の溶液にSOCl(5当量)を室温で加える。混合物を室温でさらに1時間攪拌する。溶媒と揮発性物質を真空下で除去して乾燥させ、2−クロロメチル−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン65mgをオイル状物として得る。
【0117】
4.2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジンの調製
a.2−フルオロピリジン−6−カルボキシアルデヒドの調製
THF 30mL中の0℃でのジイソプロピルアミン(6.54mL、1.2当量)の溶液に、n−ブチルリチウム(17.1mL、ヘキサン中に2.5M)の溶液を滴下する。0℃で15分間攪拌を継続し、次いで反応物を−78℃に冷却する。冷却された溶液に2−フルオロ−6−メチルピリジン(4.00mL、38.9ミリモル)を滴下する。反応混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いでDMF(4.52mL、1.5当量)でクエンチする。この反応を−78℃で30分間保持し、次いで0℃に温める。冷たい溶液を、過ヨウ素酸ナトリウム(24.9g)の水120mLとの混合液に0℃で加える。反応混合物を1時間かけて室温まで徐々に温め、次いで室温で24時間攪拌する。反応混合物を、セライト充てん物を通してろ過し、沈殿物を除去し、充てん物をエーテルで洗浄する。有機層を分離し、重炭酸ナトリウム水溶液(1×40mL)、次いで0.25MのKHPO(1×40mL)、次いでブライン(1×40mL)で洗浄する。有機溶液を乾燥し(NaSO)、真空下で濃縮する。
【0118】
b.2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジンの調製
ステップa(上記)からの粗アルデヒドのメタノール(12mL)中の溶液に、グリオキサール水溶液(6.21mL、水中に40重量%で)を滴下する。溶液を0℃に冷却し、水酸化アンモニウム水溶液(6.0mL、水中に28重量%)を加える。反応物を1時間かけて徐々に室温まで温め、次いで室温でさらに3時間攪拌する。真空下で大部分のメタノールを除去し、反応混合物を水(10mL)で希釈し、酢酸エチル(30mL)で抽出する。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、ヘキサン(15mL)で希釈してシリカゲル充てん物(1/4インチ深さ×(1+1/4)インチ径)に通し、充てん物をさらに2:1の酢酸エチル/ヘキサン(20mL)で洗浄する。一緒にした溶出液を真空下で濃縮して粗2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジンを得る。
【0119】
5.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン(化合物1)の調製
2−クロロメチル−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン(70mg、0.30ミリモル)、2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジン(48mg、0.294ミリモル)及びKCO(123mg、0.9ミリモル)のDMF(5mL)中の混合物を、45℃で16時間攪拌する。冷却して、反応物を飽和NHCl(2mL)でクエンチしてDCM(3×10mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し、溶媒を除去する。PTLC分離(DCM中に10%のMeOH)によって、2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン91mgをオイル状物として得る。

【0120】
B.3−メトキシ−5−フェニル−2−(2−チアゾル−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン(化合物2)
【化19】

【0121】
1.2−(1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾールの合成
【化20】

【0122】
a.1−エトキシメチル−2−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾールの調製
1.6Mのn−BuLi(12.0mL、19.2ミリモル)を、THF(30mL)中の1−エトキシメチル−1H−イミダゾール(2.20g、17.4ミリモル;本質的にTangらの(1978)J.Am.Chem.Soc.100:3918と同様にして調製した)の溶液に、N雰囲気下で−78℃で徐々に加える。反応混合物を−78℃で20分間攪拌し、さらに塩化トリブチルすず(5.7mL、20.9ミリモル)を徐々に加える。反応混合物を−78℃で10分間攪拌し、次いで室温まで温める。室温で1.5時間攪拌後、真空下で反応混合物を濃縮する。残留物をヘキサンで摩砕してろ過し、ろ液を真空下で濃縮する。残留物を再度ヘキサンで摩砕してろ過し、ろ液を真空下で濃縮する。得られたオイルのH NMRは、1−エトキシメチル−2−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾール:1−エトキシメチル−1H−イミダゾールの2:1混合物を示している。さらに精製することなく、この物質を次の反応で使用する。選択されたH NMR共鳴(400MHz,CDCl)はδ 7.21(s,1H)、7.14(s,1H)、5.24(s,2H)ppmである。
【0123】
b.2−(1−エトキシメチル−1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾールの調製
トルエン(20mL)中の粗1−エトキシメチル−2−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾール(前の実験による)、2−ブロモチアゾール(1.05mL、11.6ミリモル、1.0当量、粗1−エトキシメチル−2−トリブチルスタンナニル−1H−イミダゾールのH NMRの積分に基づく)及びPd(PPh(0.67g、0.58ミリモル)の溶液を80℃で18時間攪拌する。室温に冷却後、反応混合物をNaHCO飽和水溶液に注加し、CHClで2回抽出する。一緒にした抽出物をNaSOで乾燥し、真空下で濃縮する。2:1のヘキサン−EtOAc(+0.5%EtN)を溶出させて、残留物をシリカゲルでフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。生成物を含有する画分を濃縮してシリカゲルでフラッシュクロマトグラフィーにかける。2:1のヘキサン−EtOAc(+0.5%EtN)による溶出によって、2−(1−エトキシメチル−1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾール(26%)を鮮明な黄色のオイル状物として得る。

【0124】
c.2−(1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾールの調製
濃塩酸(10mL)を、2−(1−エトキシメチル−1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾール(940mg、4.49ミリモル)の1:1EtOH−HOの24mL中の溶液に室温で加える。溶液を還流下で3時間攪拌する。次いで反応混合物を0℃に冷却し、10NのNaOH水溶液約12mLを加えて塩基性にする。濃塩酸を用いて混合物を逆滴定して約pH4にする。固形のNaHCOを飽和点まで加えて約pH8にする。次いで混合物をTHFとEtOAcの混合物で2回抽出する。一緒にした抽出物をNaSOで乾燥し、濃縮してオイル状の固形物とし、これを少量のCHClで摩砕する。ろ過によって固形物を収集する。ろ液を濃縮し、オイル状固形物をCHClで再度摩砕する。2回目に得られた固形物をろ過によって収集して1回目に得られた固形物と一緒にする。生成物の2−(1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾールがやや灰白色の固形物として得られる。

【0125】
2.3−メトキシ−5−フェニル−2−(2−チアゾル−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン(化合物2)の合成
DMF(7mL)中の2−クロロメチル−3−メトキシ−5−フェニル−ピラジン(90mg、0.38ミリモル;上記のようにして調製)、2−(1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾール(55mg、0.363ミリモル)及びKCO(159mg、1.15ミリモル)の混合物を45℃で16時間攪拌する。冷却して反応物を飽和NHCl(3mL)でクエンチし、DCM(3×15mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し溶媒を除去する。PTLC分離(シリカゲル;DCM中に10%のMeOH)によって3−メトキシ−5−フェニル−2−(2−チアゾル−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン78mgをオイル状物として得る。

【0126】
他の化合物は、次のスキームで概略を示し、以下により詳細に示すようにして調製することができる。
【化21】

【0127】
C.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジメトキシピラジン(化合物3)
【化22】

【0128】
1.3,5−ジクロロピラジン−2−カルボアルデヒドの調製
THF(200mL)にn−ブチルリチウム(ヘキサン中に2.5M、8mL、20ミリモル)をN雰囲気下で−30℃で加え、続いて2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(3.5mL、20.5ミリモル)を加える。混合物を室温に温めてこの温度で10分間攪拌する。混合物を−78℃に冷却後、THF(25mL)中の2,6−ジクロロピラジン(2.5g、16.75ミリモル)を加え、混合物をこの温度で1時間攪拌する。混合物にギ酸エチル(2mL、24.4ミリモル)を加え、混合物をこの温度でさらに2時間攪拌する。反応物を飽和NHCl(25mL)でクエンチして室温に温め、酢酸エチル(200mL)で希釈する。有機層を分離して乾燥し、溶媒を除去する。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の15%酢酸エチル)によって、3,5−ジクロロピラジン−2−カルボアルデヒド2.4gをオイル状物として得る。
【0129】
2.3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒドの調製
メタノール(5mL)中の3,5−ジクロロピラジン−2−カルボアルデヒド(150mg、0.85ミリモル)の溶液に、ナトリウムメトキシド(MeOH中に25重量/重量%、458mg、2.1ミリモル)を加える。混合物を室温で終夜攪拌した後、反応物を飽和NHCl(1mL)でクエンチし、溶媒を真空下で除去して乾燥させる。DCM(20mL)を加え、溶液を乾燥し、溶媒を除去して3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒド140mgをオイル状物として得る。
【0130】
3.(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノールの調製
MeOH(8mL)中の3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒド(120mg、0.71ミリモル)の溶液に、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(40mg、1.1ミリモル)を加える。混合物をこの温度で0.5時間攪拌した後、反応物を飽和NHCl(0.7mL)でクエンチし、真空下で溶媒を除去して乾燥させる。DCM(20mL)を加えて溶液を乾燥し、溶媒を除去して(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノール118mgをオイル状物として得る。
【0131】
4.2−クロロメチル−3,5−ジメトキシ−ピラジンの調製
DCM(5mL)中の(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノール(100mg、0.59ミリモル)の溶液に、室温でSOCl(5当量)を加える。混合物を室温でさらに1時間攪拌する。真空下で溶媒と揮発性物質を除去して乾燥させ、2−クロロメチル−3,5−ジメトキシ−ピラジン110mgをオイル状物として得る。
【0132】
5.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジメトキシ−ピラジン(化合物3)の調製
2−クロロメチル−3,5−ジメトキシ−ピラジン(115mg、0.61ミリモル)、2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジン(98mg、0.60ミリモル)及びKCO(250mg、1.81ミリモル)のDMF(7mL)中の混合物を45℃で16時間攪拌する。冷却して反応物を飽和NHCl(3mL)でクエンチし、DCM(3×15mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥して溶媒を除去する。PTLC(シリカゲル)分離(DCM中に10%のMeOH)によって、2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジメトキシ−ピラジン123mgをオイル状物として得る。LRMSの計算値315.30、結果316.20(MH+)。
【0133】
D.3,5−ジメトキシ−2−(2−チアゾル−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン(化合物5)
【化23】

【0134】
DMF(10mL)中の2−クロロメチル−3,5−ジメトキシ−ピラジン(140mg、0.74ミリモル)、2−(1H−イミダゾール−2−イル)−チアゾール(106mg、0.70ミリモル)及びKCO(307mg、2.22ミリモル)の混合物を45℃で16時間攪拌する。冷却して反応物を飽和NHCl(5mL)でクエンチし、DCM(3×15mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し、溶媒を除去する。PTLC(シリカゲル)分離(DCM中に10%のMeOH)によって、3,5−ジメトキシ−2−(2−チアゾル−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジン170mgをオイル状物として得る。

【0135】
E.3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−ピラジン(化合物6)
【化24】

【0136】
1.3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒドの調製
メタノール(5mL)中の3,5−ジクロロピラジン−2−カルボアルデヒド(150mg、0.85ミリモル)の溶液に、0℃でナトリウムメトキシド(MeOH中に25重量/重量%、183mg、0.85ミリモル)を加える。混合物を0℃で2時間、次いで室温で終夜攪拌した後、反応物を飽和NHCl(1mL)でクエンチし、真空下で溶媒を除去して乾燥させる。DCM(20mL)を加え、溶液を乾燥し、溶媒を除去して3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒド140mgをオイル状物として得る。
【0137】
2.(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノールの調製
MeOH(15mL)中の3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボアルデヒド(560mg、3.24ミリモル)の溶液に、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(183mg、4.83ミリモル)を加える。この温度で混合物を0.5時間攪拌後、反応物を飽和NHCl(1mL)でクエンチし、真空下で溶媒を除去して乾燥させる。DCM(50mL)を加え、溶液を乾燥し、溶媒を除去して(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノール550mgをオイル状物として得る。
【0138】
3.3−クロロ−2−クロロメチル−5−メトキシ−ピラジンの調製
DCM(5mL)中の(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イル)−メタノール(100mg、0.57ミリモル)の溶液に、室温でSOCl(5当量)を加える。混合物を室温でさらに1時間攪拌する。真空下で溶媒と揮発性物質を除去して乾燥させて3−クロロ−2−クロロメチル−5−メトキシ−ピラジン110mgをオイル状物として得る。
【0139】
4.3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−ピラジン(化合物6)の調製
3−クロロ−2−クロロメチル−5−メトキシ−ピラジン(350mg、1.81ミリモル)、2−フルオロ−6−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリジン(266mg、1.63ミリモル)及びKCO(750mg、5.43ミリモル)のDMF(10mL)中の混合物を45℃で16時間攪拌する。冷却して反応物を飽和NHCl(3mL)でクエンチし、DCM(3×20mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し溶媒を除去する。PTLC(シリカゲル)分離(DCM中に10%のMeOH)によって3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−ピラジン370mgをオイル状物として得る。

【0140】
F.2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−3−ピリジン−2−イル−ピラジン(化合物7)の合成
【化25】

【0141】
3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−ピラジン(80mg、0.25ミリモル)、2−トリブチルスタニルピリジン(138mg、0.37ミリモル)及びPdCl(PPh(18mg、0.026ミリモル)のトルエン(10mL)中の混合物を密封管中で、110℃で16時間加熱する。冷却して混合物をDCM(20mL)で希釈し、ろ過する。溶媒を除去した後、残留物をPTLC(シリカゲル;DCM中に5%のMeOH)で精製して2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−3−ピリジン−2−イル−ピラジン78mgを得る。

【0142】
G.2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(化合物8)
【化26】

【0143】
1.2−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリミジン塩酸塩の合成
2−シアノピリミジン(8.0g、76ミリモル、本質的にLiebigs Ann.Chem.2,1981,333−341によって調製した)とアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(8g、76ミリモル)の混合物を100℃で4時間加熱し、冷却してMeOH 100mLと濃塩酸5mLを加える。攪拌しながら混合物を還流下で30時間加熱し、冷却し、真空下で蒸発させて乾燥する。i−PrOHの50mLを残留物に加え、攪拌しながら混合物を還流下で30分間加熱し、冷却する。ろ過によって結晶物を収集してエーテルで洗浄し、乾燥して標記化合物を得る。

【0144】
2.2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(化合物8)の合成
3−クロロ−2−クロロメチル−5−メトキシピラジン(141mg、0.73ミリモル)、2−(1H−イミダゾール−2−イル)−ピリミジン(105mg、0.72ミリモル)とKCO(307mg、2.22ミリモル)のDMF(10mL)中の混合物を45℃で16時間攪拌する。冷却して反応物を飽和NHCl(5mL)でクエンチし、DCM(3×15mL)で抽出する。一緒にした有機層を乾燥し、溶媒を除去する。PTLC分離(シリカゲル;DCM中に10%のMeOH)によって、2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン120mgをオイル状物として得る。

【0145】
H.2−[1−(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(化合物9)
【化27】

【0146】
THF(5mL)中の2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(30mg、0.094ミリモル)の溶液に、ナトリウムメトキシド(メタノール中に25重量/重量%、0.5mL)を加える。混合物を1時間還流させる。冷却して、飽和NHCl(0.7mL)を加えて反応物をクエンチする。真空下で溶媒を除去し、残留物にDCM(30mL)を加える。次いで、混合物乾燥し、溶媒を除去して2−[1−(3,5−ジメトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン21mgをオイル状物として得る。

【0147】
I.2−[1−(5−メトキシ−3−ピペリジン−1−イル−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(化合物10)
【化28】

【0148】
2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン(30mg、0.099ミリモル)とピペリジン(1mL)の混合物を密封管中で、110℃で1時間加熱する。冷却して、真空下で揮発性物質を除去し、残留物をPTLC(シリカゲル;DCM中に10%のMeOH)で精製して2−[1−(5−メトキシ−3−ピペリジン−1−イル−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジン35mgを得る。

【実施例3】
【0149】
リガンド結合アッセイ
本質的に、Thomas及びTallman(J.Bio.Chem.(1981)156:9838−9842及びJ.Neurosci.(1983)3:433−440)に記載の結合アッセイを用いて、GABA受容体のベンゾジアゼピン部位に対する本発明の化合物の高親和性を確認した。
【0150】
ラットの皮質組織を切断して25体積(重量/体積)の緩衝液A(0.05MのトリスHCl緩衝液、4℃でpH7.4)にホモジナイズした。組織ホモジネートを冷却状態(4℃)で、20,000×gで20分間遠心分離にかけた。上清をデカントし、同一体積の緩衝液中でペレットを再度ホモジナイズし、20,000×gで遠心分離にかけた。この遠心分離ステップの上清をデカントし、ペレットを−20℃で終夜保存した。次いでペレットを解凍して25体積の緩衝液A(当初の重量/体積)に再懸濁させ、20,000×gで遠心分離にかけ、上清をデカントした。この洗浄ステップをもう1度繰り返した。最終的にペレットを50体積の緩衝液Aの中に再懸濁させた。
【0151】
100μlの組織ホモジネート、100μlの放射性リガンド、(0.5nM H−Ro15−1788[H−フルマゼニル]、特異活性80Ci/ミリモル)及び試験化合物又は対照(以下参照)を含有するインキュベーション物を、緩衝液Aで合計500μlの体積にした。4℃で30分間インキュベーションを行い、次いでワットマン(Whatman)GFBフィルターで迅速にろ過して遊離リガンドと結合リガンドを分離した。ろ過物を新鮮な緩衝液Aで2回洗浄し、液体シンチレーションカウンターでカウントした。10μMジアゼパム(Research Biochemicals International,Natick,MA)でのH Ro15−1788の変位によって、非特異的結合(対照)を測定した。データを3回採取して平均をとり、各化合物について特異的結合(合計特異的結合=合計−非特異性)の阻害率を計算した。
【0152】
阻害率を測定するための上記方法によって、得られた曲線当たり10−12M〜10−5Mの化合物濃度範囲にわたる最大で11ポイントについて競合結合曲線が得られた。Ki値はチェン−プルソフ(Cheng−Prussof)の式によって計算した。上記に示した各化合物をこの方法で試験し、それぞれ<1μMのKiを有していることが分かった。本発明の好ましい化合物は100nM未満のKi値を示し、より好ましい本発明の化合物は10nM未満のKi値を示す。
【実施例4】
【0153】
電気生理
以下のアッセイを用いて、本発明の化合物が、GABA受容体のベンゾジアゼピン部位での作動薬、拮抗薬又は逆作動薬として作用するかどうか決定する。
【0154】
アッセイは、本質的にWhite及びGurley(NeuroReport 6:1313−1316、1995)及びWhite,Gurley,Hartnett,Stirling,and Gregory(Receptors and Channels 3:1−5、1995)に記載のように、改変することなく実施する。電気生理学的記録は2つの電極電圧−クランプ技術を用いて−70mVの膜保持電位で実施する。アフリカツメガエルの卵母細胞を酵素的に単離し、α、β及びγサブユニットをそれぞれ4:1:4の比で混合した非ポリアデニル化cRNAを注入する。Whiteらの文献に記載されているα、β及びγサブユニットの9つの組合せのうち、好ましい組合せはαβγ、αβγ、αβγ及びαβγである。各組合せでのサブユニットcRNAのすべてがヒトクローンである、又はラットクローンであることが好ましい。これらのクローン化サブユニットのそれぞれの配列はジェンバンク(GENBANK)から入手できる。例えば、ヒトα,ジェンバンク受託番号X14766、ヒトα,ジェンバンク受託番号A28100;ヒトα,ジェンバンク受託番号A28102;ヒトα,ジェンバンク受託番号A28104;ヒトβ,ジェンバンク受託番号M82919;ヒトβ,ジェンバンク受託番号Z20136;ヒトγ,ジェンバンク受託番号X15376;ラットα,ジェンバンク受託番号L08490、ラットα,ジェンバンク受託番号L08491;ラットα,ジェンバンク受託番号L08492;ラットα,ジェンバンク受託番号L08494;ラットβ,ジェンバンク受託番号X15467;ラットβ,ジェンバンク受託番号X15468;及びラットγ,ジェンバンク受託番号L08497である。各サブユニットの組合せについて、各構成サブユニットに対する十分なメッセージが注入されると、1μM GABAに施用された場合で、>10nAの電流の振幅がもたらされる。
【0155】
化合物は最大誘発可能GABA電流の<10%を誘発するGABA濃度(例えば、1μM〜9μM)に対して評価する。濃度/効果の関係を評価するために、各卵母細胞を、評価される化合物(試験化合物)に、濃度を増大させて曝す。試験化合物の効力を電流振幅の変化率として計算する。すなわち100((Ic/I)−1)で、式中Icは試験化合物の存在下で観察されたGABA誘発電流振幅であり、Iは試験化合物が存在しないで観察されたGABA誘発電流振幅である。
【0156】
試験化合物のベンゾジアゼピン部位に対する特異性は、濃度/作用曲線を完成させて測定する。先に用いた試験化合物を除去するために卵母細胞を十分に洗浄した後、卵母細胞をGABA+1μM RO15−1788に曝し、続いてGABA+1μM RO15−1788+試験化合物に曝す。化合物の添加による変化率を上記のようにして計算する。1μM RO15−1788が存在しないで観察される電流振幅の変化率から、RO15−1788の存在下で観察される変化率を差し引く。これらの正味の値を標準的方法による平均の効力及びEC50値の計算に用いる。平均の効力及びEC50値を評価するために、濃度/効果データを細胞について平均をとり、ロジスティック方程式に当てはめる。
【実施例5】
【0157】
MDCK細胞毒性アッセイ
この実施例はMadin Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞の細胞毒性アッセイを用いた化合物毒性の評価を示す。
【0158】
1μLの試験化合物を透明な底の96ウェルプレート(PACKARD,Meriden,CT)の各ウェルに加え、アッセイでの化合物の最終濃度を10マイクロモル、100マイクロモル又は200マイクロモルにする。試験化合物の入っていない溶媒を対照ウェルに加える。
【0159】
MDCK細胞、ATCC番号CCL−34(American Type Culture Collection,Manassas,VA)を、ATCC製造情報シートの指示書に従って、殺菌した状態に保持する。集密的なMDCK細胞をトリプシン処理し、収集し温かい(37℃)媒体(VITACELL Minimum Essential Medium Eagle,ATCCカタログ番号30−2003)で、0.1x10細胞/mlの濃度に希釈する。細胞の入っていない100μLの温かい媒体を含む5つの標準曲線対照ウェルを除いて、100μLの希釈された細胞を各ウェルに加える。次いで、プレートを37℃で95%O、5%COの条件下で常に振とうさせながら2時間インキュベートする。インキュベーションした後、ウェル当たり50μLの哺乳動物の細胞溶解溶液を加え、ウェルをPACKARD TOPSEALステッカーで覆い、プレートを、適当な振とう機で約700rpmで2分間振とうさせる。
【0160】
毒性を引き起こす化合物は、未処理細胞に比べて、ATPの産生を減少させることになる。処理MDCK細胞及び未処理MDCK細胞でのATPの産生を測定するために、一般にPACKARD、(Meriden,CT)ATP−LITE−M発光ATP検出キット、製品番号6016941を、メーカーの使用説明書に従って使用する。PACKARD ATP LITE−M試薬を室温に平衡化させる。平衡化させた後、凍結乾燥した基質溶液を5.5mLの基質緩衝液溶液中で元に戻す(キットから)。凍結乾燥させたATP標準溶液を脱イオン水中で元に戻して10mMの保存液を得る。5つの対照ウェルについて、連続的に希釈したPACKARD標準液10μLを標準曲線対照ウェルのそれぞれに加え、連続する各ウェル中で200nM、100nM、50nM、25nM及び12.5nMの最終濃度を得る。PACKARD基質溶液(50μL)をすべてのウェルに加え、次いでこれにカバーをし、プレートを、適当な振とう機で約700rpmで2分間振とうさせる。白色のPACKARDステッカーを各プレートの底部に付着させ、プレートをホイルに包んでサンプルを暗順応させ、暗所に10分間置く。次いで、ルミネッセンスカウンター(例えば、PACKARD TOPCOUNTマイクロプレートシンチレーション及びルミネッセンスカウンター、又はTECAN SPECTRAFLUOR PLUS)を用いて22℃でルミネッセンスを測定し、標準曲線からATPレベルを計算する。試験化合物で処理した細胞のATPレベルを未処理細胞について測定されたレベルと比較する。好ましい試験化合物10μMで処理した細胞は未処理細胞の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のATPレベルを示す。100μM濃度の試験化合物を用いる場合、好ましい試験化合物で処理した細胞は、未処理細胞で検出されるATPレベルの少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%のATPレベルを示す。
【0161】
上述してきたものは、本発明の好ましい実施形態を説明するものであり、本発明の趣旨と範囲を逸脱しないで変更を行うことができることを理解されたい。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によって以外は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物、又は薬剤として許容されるこれらの塩:
【化1】


[式中、
Wは、CH又はNを表し、
は、非置換、又はRから独立に選択される1〜4個の基で置換された5〜10員のアリール又はへテロアリールを表し、
は、水素、ハロゲン、それぞれが、非置換、又はRから独立に選択される1〜3個の置換基で置換されたC〜Cアルコキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C10シクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、(C〜C10シクロアルキル)C〜Cアルキル、(C〜Cヘテロシクロアルキル)C〜Cアルキル又は5員若しくは6員アリール若しくはヘテロアリールを表し、
及びRは、それぞれ独立に
(a)水素、ハロゲン、ニトロ及びシアノ、並びに
(b)次式の基:
【化2】


(式中、
(i)Gは結合、C〜Cアルキル、−NH−、−N(R)−、−(R)N−、−O−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR−、−S(O)−、−CHC(=O)−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHC(=O)−、−C(=NR)−、HC=N−、−NRC(=O)−、−NHS(O)−又は−NRS(O)−であり、
(ii)R及びRは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、及び1個の環又は2個の縮合環、懸垂(pendant)環若しくはスピロ環を有する3〜12員の炭素環及び複素環から独立に選択され、環のそれぞれは、非置換、又はRから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されており、
(iii)mは0、1又は2である)
から選択され、
が、出現ごとに独立にハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ、C〜C10シクロアルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルキル、(C〜C10シクロアルキル)アルコキシ、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、ハロ(C〜C)アルキル、ハロ(C〜C)アルコキシ、オキソ、アミノ(C〜C)アルキル並びにモノ及びジ(C〜Cアルキル)アミノ(C〜C)アルキルから選択される]。
【請求項2】
が、非置換、又はRから独立に選択される1〜3個の基で置換された5員若しくは6員のアリール若しくはヘテロアリールである請求項1記載の化合物又は塩。
【請求項3】
が、非置換、又はハロゲン、C〜Cアルキル、ハロ(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ及びハロ(C〜C)アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジル又はチアゾリルである請求項2記載の化合物又は塩。
【請求項4】
が、非置換、又は1若しくは2個のハロゲンで置換されているピリジル、ピリミジル又はチアゾリルである請求項3記載の化合物又は塩。
【請求項5】
がハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ或いは5員若しくは6員の複素環アルキル又はヘテロアリールである請求項1記載の化合物又は塩。
【請求項6】
が、ハロゲン、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアルキルである請求項5記載の化合物又は塩。
【請求項7】
及びRが、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロC〜Cアルキル、並びに5〜7員の芳香族炭素環及び複素環から選択され、前記炭素環及び複素環は非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル若しくはメチルで置換されている請求項1記載の化合物又は塩。
【請求項8】
及びRが独立に、水素、ハロゲン、メトキシ、エトキシ、メチル又はフェニルであって、前記フェニルは非置換、又はハロゲン、トリフルオロメチル若しくはメチルで置換されている請求項7記載の化合物又は塩。
【請求項9】
が、非置換、又はハロゲン、C〜Cアルキル、ハロ(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ及びハロ(C〜C)アルコキシから独立に選択される1〜3個の基で置換されたピリジル又はピリミジルであり、
が、ハロゲン、C〜Cアルコキシ又はC〜Cアルキルであり、
及びRは独立に、水素、ハロゲン、C〜Cアルコキシ又は置換されていてもよいフェニルである請求項1記載の化合物又は塩。
【請求項10】
GABA受容体結合のアッセイにおいて、1マイクロモル以下のKを示す請求項1記載の化合物。
【請求項11】
GABA受容体結合のアッセイにおいて、1マイクロモル以下のKを示す請求項1記載の化合物。
【請求項12】
GABA受容体結合のアッセイにおいて、10ナノモル以下のKを示す請求項1記載の化合物。
【請求項13】
2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3−メトキシ−5−フェニルピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項14】
3−メトキシ−5−フェニル−2−(2−チアゾール−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項15】
2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジメトキシピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項16】
2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−3,5−ジエトキシピリジンである請求項1記載の化合物。
【請求項17】
3,5−ジメトキシ−2−(2−チアゾール−2−イル−イミダゾール−1−イルメチル)−ピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項18】
3−クロロ−2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項19】
2−[2−(6−フルオロ−ピリジン−2−イル)−イミダゾール−1−イルメチル]−5−メトキシ−3−ピリジン−2−イル−ピラジンである請求項1記載の化合物。
【請求項20】
2−[1−(3−クロロ−5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ピリミジンである請求項1記載の化合物。
【請求項21】
2−[1−(3,5−メトキシ−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジンである請求項1記載の化合物。
【請求項22】
2−[1−(5−メトキシ−3−ピペリジン−1−イル−ピラジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−ピリミジンである請求項1記載の化合物。
【請求項23】
生理学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に請求項1記載の化合物を含む薬剤組成物。
【請求項24】
注射可能流体剤、エアロゾル剤、クリーム剤、ゲル剤、丸薬、カプセル剤、シロップ剤、経皮パッチとして調剤されている請求項23記載の薬剤組成物。
【請求項25】
不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害又はアルツハイマー痴呆症の治療方法であって、そうした治療を必要とする患者に、治療に有効な量の請求項1記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項26】
CNS薬剤及び請求項1記載の化合物を患者に投与することを含むCNS薬剤の治療効果を増強させる方法。
【請求項27】
治療に有効な量の請求項1記載の化合物を患者に投与することを含む患者の短期記憶を改善する方法。
【請求項28】
(a)請求項1記載の化合物とGABA受容体との結合を可能にする条件下で、サンプルを前記化合物と接触させること、及び
(b)GABA受容体と結合している化合物のレベルを検出し、それによって前記サンプル中のGABA受容体の有無を決定すること、
を含む、サンプル中のGABA受容体の有無を決定する方法。
【請求項29】
前記化合物が放射性同位体で標識されており、(b)が、
(i)結合していない化合物を結合している化合物から分離すること、及び
(ii)前記サンプル中の結合している化合物を検出すること、
を含む請求項28記載の方法。
【請求項30】
結合している化合物の有無を、オートラジオグラフィー法を用いて検出する請求項29記載の方法。
【請求項31】
GABA受容体を発現する細胞を、前記細胞の電気生理を検出し得る変化をもたらすのに十分な量の請求項1記載の化合物と接触させ、それによって、GABA受容体シグナル伝達活性を変化させることを含むGABA受容体のシグナル伝達活性を変化させる方法。
【請求項32】
前記細胞が組換えによって異種のGABA受容体を発現し、前記細胞の電気生理の変化を細胞内記録又はパッチクランプ記録によって検出する請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記細胞が動物中でインビボ(in vivo)で接触しているニューロン細胞であり、前記溶液が体液であり、前記細胞の電気生理の前記変化を動物の行動の変化として検出する請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記動物がヒトであり、前記細胞が脳細胞であり、前記体液が脳脊髄液である請求項33記載の方法。
【請求項35】
容器中の請求項23記載の薬剤組成物と、不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害又はアルツハイマー痴呆症に罹患している患者の治療用の組成物を使用するための使用説明書とを含むパッケージした薬剤調合物。
【請求項36】
不安症、鬱病、睡眠障害、注意欠陥障害、アルツハイマー痴呆症又は短期記憶喪失の治療用医薬品の製造のための請求項1記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2006−515278(P2006−515278A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549883(P2004−549883)
【出願日】平成15年5月7日(2003.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/014348
【国際公開番号】WO2004/041809
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(503012926)ニューロジェン コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】