説明

自動溶接機の位置検出システム

【課題】
サーチ動作により得られた測距データを元に、以後サーチ動作を行うことなく、異なる画像処理パラメータを適用した際の画像解析結果をティーチペンダント上で確認できる自動溶接機の位置検出システムを提供する。
【解決手段】
ティーチペンダントTPのキーボード41から再画像解析を行う指示があったとき、ロボット制御装置RCは、ロボット制御装置RCが備える記憶部の第1記憶領域に記憶した測距データに基づき調整入力された画像処理パラメータに従って溶接継手の画像解析を行う。ロボット制御装置RCはその画像解析に基づき溶接継手の開先形状に関する特徴点を含む開先情報を取得し、ディスプレイ42は調整入力された画像処理パラメータに従って得られた画像解析データを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動溶接機の位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動溶接機の位置検出システムでは、マニピュレータ(ロボット)の溶接トーチに付設されたレーザ変位センサからレーザをワークに照射しながら、マニピュレータを動作させることによりワークの位置ずれを検出し、その位置ずれを溶接プログラムに反映している。
【0003】
前記システムでは、前記位置ずれの検出のために、一方向サーチ機能を有している。この一方向サーチ機能は、図15に示すよう任意の一方向(サーチ方向)にレーザ変位センサLSを動作させて検出点P1を検出し、基準点P0と検出点P1のずれ(ずれ量)を算出して、ワークWの一方向のずれ量をずれ量補正ファイルFへ保存する機能である。なお、基準点P0は、ワークWが元位置に位置した場合にレーザ変位センサLSが検出する点である。そして、算出されたずれ量を溶接プログラムに反映することで実ワーク上を溶接できる。なお、図15中、アプローチ点APは、レーザ変位センサLSのレーザ光が投射開始するポイントを示している。
【0004】
一方向サーチ動作は、以下の手順で行われる。
図16(a)に示すように、ロボット制御装置RCでは、既ティーチングされた教示データであるプログラムによる再生動作で一方向サーチ命令の直前点に到達すると、レーザ変位センサ制御装置LUにレーザ照射指令を出力し、その後一方向サーチ命令を出力する。このレーザ照射指令に応じてレーザ変位センサ制御装置LUはレーザ変位センサLSをレーザON状態にするとともに、一方向サーチ命令の実行でレーザ変位センサLSは距離測定を開始する。又、同時にロボット制御装置RCの制御によりマニピュレータの溶接トーチとともにレーザ変位センサLSはサーチ目標点に向かって動作を開始する。そして、レーザ変位センサLSは、レーザ光を投射し得られた測距データをレーザ変位センサ制御装置LUに出力する。レーザ変位センサ制御装置LUは前記測距データに基づいて高さ検出を行い、この高さが決められた基準高さとなるまで計測を継続する。
【0005】
図16(b)に示すように、レーザ変位センサLSがワークWを検出すると、すなわち前記高さ検出の結果が、基準高さとなると、レーザ変位センサ制御装置LUはレーザ変位センサLSのレーザを消灯させ、ロボット制御装置のタッチ検出入力をONする。ロボット制御装置RCはタッチ検出入力を受信するとマニピュレータを停止し、予め教示していた基準点とサーチ時に停止した点とのずれ量を計算し、ずれ量補正ファイルに格納する。このように、レーザ変位センサを使って単に物体へのタッチ検出入力をロボット制御装置に入力することでワークの位置ずれを検出できる。
【0006】
又、レーザ変位センサにより得られた前記測距データは、レーザ変位センサ制御装置LUのメモリに保存される。そして、レーザ変位センサ制御装置LUは予め設定入力された画像処理パラメータに基づいて前記測距データに対して画像処理を行って画像データを得、その画像データに対する特徴点や、必要な物理量を求めるようにしている。そして、その画像処理の結果は、ティーチペンダント(図示しない)のディスプレイで表示されるようにしている。
【0007】
なお、特許文献1には、レーザ溶接継手の開先断面検出にて得られた溶接継手の形状に応じて溶接トーチの狙い位置及び溶接条件を自動選択して溶接を行い、開先情報による検出がokか否かの判断手段が開示されている。特許文献2には、スキャナー式レーザセンサで計測されている画像データ又は画像解析結果をティーチペンダントに表示する視覚センサ付ロボット装置が開示されている。又、特許文献3には、視覚センサカメラが捉えた映像又はメモリに格納された画像を映し出す画像表示用モニタをティーチペンダントに取付けた画像処理装置が開示されている。又、特許文献4には、視覚センサカメラを用いたシステムであって、ティーチペンダントの代わりに設けられた画像処理装置教示操作盤がモニタディスプレイを有するとともにロボットの教示操作機能を有していることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−334366号公報
【特許文献2】特開平09−183087号公報
【特許文献3】特開平5−66825号公報
【特許文献4】特開2001−135689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、レーザ変位センサにより得られた測距データは、画像処理パラメータに基づいて画像処理が行われ、その画像処理の結果は、ティーチペンダント(図示しない)のディスプレイで表示するようにしている。しかし、ワークの開先形状、光沢、加工精度により適切な画像処理パラメータは異なる。
【0009】
このため、システムの導入当初や、開先ないし表面状態の異なるワークに対して新しく教示を行う際には、画像処理パラメータを適宜変更した上でサーチ動作を行い、ティーチペンダントのディスプレイ上で画像解析結果を確認する作業を繰り返して、最適な画像処理パラーメータを探索する作業がしばしば発生する。この探索作業ではサーチ開始位置に毎回ロボットを作動させて、サーチ動作を繰り返す必要がある。このため、この探索作業の間は、ロボットを動作させる時間に加え、複数の作業者がいる場合には、他の者がワーク周辺での作業ができない問題があった。この結果、システム導入や新規教示にかかる時間が増大する問題があった。又、画像データに対する特徴点を正しく認識できなかった場合に再調整を行うことになるが、この場合にも、調整のためにロボットをサーチ動作させる必要があった。
【0010】
なお、特許文献1乃至特許文献4には、画像処理パラメータのチェックをどのように行い、或いは画像処理パラメータの設定をティーチペンダントから行うことは記載されていない。
【0011】
本発明の目的は、サーチ動作により得られた測距データを元に、以後サーチ動作を行うことなく、異なる画像処理パラメータを適用した際の画像解析結果をティーチペンダント上で確認できる自動溶接機の位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、溶接継手に対しレーザ光を投射して、測距データを取得するレーザ変位センサと、前記レーザ変位センサを溶接トーチとともに溶接線を横断する方向にサーチ動作させるマニピュレータと、前記測距データを記憶する第1記憶手段と、前記測距データに基づき画像処理パラメータに従って前記溶接継手の画像解析を行い、同画像解析に基づき前記溶接継手の開先形状に関する特徴点を含む開先情報を取得する開先情報取得手段を備えた自動溶接機の位置検出システムにおいて、前記開先情報、及び画像解析された後の加工測距データ(以後、開先情報、及び画像解析された後の加工測距データを画像解析データという)を記憶する第2記憶手段と、前記画像解析データを表示する表示部、前記画像処理パラメータを調整入力するパラメータ入力部、及び調整入力された画像処理パラメータに従って再画像解析を行う指示を入力する再画像解析指示入力部を備えた可搬式操作手段とを備え、前記再画像解析指示入力部から再画像解析を行う指示があった際、前記開先情報取得手段は第1記憶手段の測距データに基づき前記調整入力された画像処理パラメータに従って前記溶接継手の画像解析を行って新たな画像解析データを作成し、前記表示部は、前記新たな画像解析データを表示することを特徴とする自動溶接機の位置検出システムを要旨とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記可搬式操作手段には、前記パラメータ入力部にて調整入力された画像処理パラメータを記憶する第3記憶手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記第2記憶手段は、画像処理パラメータ調整入力前(以下、画像処理パラメータ調整前という)の画像解析データを記憶する記憶領域と、画像処理パラメータ調整入力後(以下、画像処理パラメータ調整後という)の画像解析データを記憶する記憶領域を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2において、前記第2記憶手段は、画像処理パラメータ調整前と調整後の画像解析データをそれぞれファイル化して記憶することを特徴とする。
【0016】
請求項5は、請求項4において、前記第2記憶手段は、互いに異なる画像処理パラメータで画像解析されて得られた画像解析データをファイル化する毎に、作成したファイルのファイル名に互いに異なる識別符号を付与することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項4において、前記可搬式操作手段には、第1記憶手段に記憶した測距データ、第2記憶手段に記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、又は画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、いずれか1つのデータを選択して表示部に切換え表示する表示切換手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項4において、前記表示部は、第1記憶手段に記憶した測距データ、第2記憶手段に記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、及び画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、1つのデータを表示する表示モードと、少なくとも2つのデータを同時に表示する表示モードを有し、前記可搬式操作手段には、前記表示モードを選択する表示モード選択入力手段が設けられ、前記表示モード選択入力手段による表示モードの選択入力に応じて前記表示部がいずれかの表示モードを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、サーチ動作により得られた測距データを元に、以後サーチ動作を行うことなく、異なる画像処理パラメータを適用した際の画像解析結果をティーチペンダント上で確認できる自動溶接機の位置検出システムを提供することができる。この結果、システム導入ないし新規教示における画像処理の調整時間を短縮できる効果がある。
【0020】
請求項2の発明によれば、第3記憶手段を備えることにより、パラメータ入力部にて調整入力された画像処理パラメータを記憶でき、この記憶された画像処理パラメータにより、開先情報の再取得を行うことができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、画像処理パラメータ調整前の画像解析データと、調整後の画像解析データを記憶する記憶領域をそれぞれ有する。この結果、それぞれの画像処理パラメータに従って得られた画像解析データを表示部に表示することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、画像処理パラメータ調整前と、画像処理パラメータ調整後のそれぞれの画像処理パラメータに従って得られた画像解析データを表示部に表示することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、1プログラムである教示データ内に複数のサーチ動作がある場合には、その再生動作が行われ、測距データが第1記憶手段に格納されるとともに、画像処理パラメータに従って画像解析された画像解析データが第2記憶手段に記憶される。このとき、開先形状が異なることにより、異なる画像処理パラメータで画像解析されて得られた画像解析データはファイル化される毎に、各ファイルに対して互いに異なる識別符号が付与されたファイル名が作成される。
【0024】
この後、異なる画像処理パラメータに従って得られた画像解析データに対し、可搬式操作手段の再画像解析指示入力部にて画像処理パラメータが調整入力されると、ファイル単位毎に調整入力された、画像処理パラメータに従って溶接継手の画像解析を行うことができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、表示切換手段により、第1記憶手段に記憶した測距データ、第2記憶手段に記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、又は画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、いずれか1つのデータを選択して表示部に切換え表示することができる。この結果、画像処理パラメータの有無や或いは調整の変更の効果を確認することができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、測距データ、画像処理パラメータ調整前後の画像解析データのうち、1つのデータを表示する表示モードと、少なくとも2つのデータを同時に表示する表示モードを有することにより、画像処理パラメータの有無、及び調整有無の効果を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る自動溶接機の位置検出システムを溶接ロボットの制御装置10に適用した一実施形態を図1〜13を参照して説明する。
図1は溶接ロボットの制御装置10の構成を示すブロック図である。溶接ロボットの制御装置10は、ワーク(作業対象物)Wに対してアーク溶接を自動で行うように制御するものである。溶接ロボットの制御装置10は、溶接作業を行うマニピュレータMと、マニピュレータMを制御するロボット制御装置RCと、ワークWの形状を検出するセンサとしてのレーザ変位センサLSとを備える。
【0028】
又、ロボット制御装置RCには、可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。ティーチペンダントTPにはテンキーや各種のキーからなるキーボード41及び液晶表示装置等からなるディスプレイ42が設けられている。前記キーボード41により各種の教示データがロボット制御装置RCに入力される。本実施形態のティーチペンダントTPは可搬式操作手段に相当する。本実施形態のキーボード41は、パラメータ入力部、再画像解析指示入力部、表示切換手段に相当する。又、ディスプレイ42は表示部に相当する。
【0029】
マニピュレータMは、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。最も先端側に位置するアーム13の先端部には、作業ツールとしての溶接トーチ14が設けられる。溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対して溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。なお、前後とは、溶接トーチ14が溶接線に沿って進行する方向を前とし、その180度反対方向を後ろとする。又、左右とは進行する方向を人が向いたときを基準として、左右という。
【0030】
ロボット制御装置RCは、図3に示すようにコンピュータからなる。すなわち、ロボット制御装置RCはCPU(中央処理装置)20や、マニピュレータMを制御するための各種プログラムや、各種の開先形状に応じて用意された複数の画像解析プログラムを記憶する書換可能なEEPROM21や、作業メモリとなるRAM22や、各種データを記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部23を備える。本実施形態では、CPU20は、画像解析手段、開先情報取得手段に相当する。
【0031】
記憶部23は、第1記憶領域23a、第2記憶領域23b、第3記憶領域23c、及び第4記憶領域23dを有する。
第1記憶領域23aはレーザ変位センサLSにて測定されて得られた測距データを記憶するための領域であり、本発明の第1記憶手段に相当する。
【0032】
第2記憶領域23bは、画像処理パラメータ(後述する)調整前の開先情報及び画像解析された後の加工測距データ(以後、開先情報及び、画像解析された後の加工測距データを画像解析データという)を記憶する領域Paと、画像処理パラメータ調整後の画像解析データを記憶する領域Pbからなる。第2記憶領域23bは第2記憶手段に相当する。
【0033】
第3記憶領域23cは、キーボード41にて調整前に入力された画像処理パラメータを記憶する領域Qaと、キーボード41にて調整入力された画像処理パラメータを記憶する領域Qbを有する。第3記憶領域23cは第3記憶手段に相当する。
【0034】
第4記憶領域23dは、基準点を取得するための一方向サーチが行われた後に実行される一方向サーチにおいて、開先形状の特徴点等を得るための画像解析データを記憶するための領域である。
【0035】
又、記憶部23には、図示はしないが、前記キーボード41により入力された教示データを記憶する教示データ記憶領域も備えている。
ロボット制御装置RCは、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチ14を動作させる。又、ロボット制御装置RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPSに対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0036】
レーザ変位センサLSは、レーザの発光及び受光によりワークWまでの距離を測定する走査型のレーザ変位センサであり、溶接トーチ14に搭載される。レーザ変位センサLSは、レーザをワークWに向けて発光する発光部と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部等(ともに図示しない)を備える。前記発光部で発光されたレーザは、ワークWで乱反射され、受光部で受光される。受光部は、例えばCCDラインセンサにより構成されており、受光量分布の重心位置からワークWまでの距離を測定するようにされている。
【0037】
又、ロボット制御装置RCは、レーザ変位センサLSを駆動制御し、測定される距離情報からワークWの開先形状を検出する。
次に、ロボットの制御装置10における開先情報取得機能のための一方向サーチの手順を図10、図11(a)、(b)を参照して説明する。
【0038】
なお、上記機能を実現するために、前提条件として、前記レーザ変位センサLSのレーザ照射方向がツール座標系のいずれかの軸と平行となるようにセンサヘッドLSaが取り付けされ、図2(a)にはツールである溶接トーチ14が示されており、ツール座標系は図2(a)のように表わされる。そして、本実施形態では、図2(b)に示すように溶接トーチ14に対して、レーザ変位センサLSのセンサヘッドLSaはレーザ照射方向がZ−方向となるように取付けされている。
【0039】
又、ロボット制御装置RCには、溶接作業が行われる前に、溶接が行われる際のマニピュレータMの動作及び溶接条件等を示す教示データがティーチペンダントTPを介して入力され記憶部23の図示しない教示データ記憶領域に記憶されている。
【0040】
(1) まず、ロボット制御装置RCは前記教示データに従ってマニピュレータMを再生動作させて、レーザ変位センサLSを図4に示すように一方向にサーチ動作を行い、予め基準点を、ファイル名を付与してファイル化して記憶部23の第2記憶領域23bの領域Paに記憶する。この基準点の取得の仕方については説明の便宜上後述する。
【0041】
(2) 次に、ロボット制御装置RCは、マニピュレータMをリターンさせた後、教示データに従って再生動作(すなわち、一方向にサーチ動作)させ、開先情報取得命令の直前点にレーザ変位センサLSが到達すると、図10に示すようにレーザ変位センサLSにレーザ照射指令を出力する。同時に、ロボット制御装置RCは予めティーチペンダントTPにて入力されていた画像解析のため検出パターン番号、該検出パターン番号に対応するとともに予めティーチペンダントTPにて入力された検出パラメータ及びデータサンプリング周期を加味してEEPROM21に記憶している画像解析プログラムを実行する。
【0042】
ここで、検出パラメータとは、ロボット制御装置RCで画像解析時に使用される数値の集合である。検出パラメータは、検出パターン番号に対応して複数個有するものであり、検出パターン番号により検出パラメータの意味が変化する。
【0043】
なお、検出パラメータの例については後述する。
なお、ロボット制御装置RCはレーザ変位センサLSにレーザ照射指令を出力した時点での、マニピュレータMの位置をロボット座標系のサーチ開始点座標(すなわち、測距データ)として記憶部23の第1記憶領域23aに記憶する。
【0044】
(3) この後、前記レーザ照射指令に応じてレーザ変位センサLSは距離測定(すなわち、測距データの取得)を開始し、同時にマニピュレータMの溶接トーチ14はサーチ終了点に向かって動作を開始する。そして、レーザ光を投射し得られた測距データがレーザ変位センサLSからロボット制御装置RCに入力される。
【0045】
ロボット制御装置RCでは、レーザ照射中、前記データサンプリング周期で定めた周期でレーザ変位センサLSから受信した測距データ(すなわち、距離データ)を、記憶部23の第1記憶領域23aに保存していく(図11(a)参照)。
【0046】
(4) マニピュレータMがサーチ終了点に到達すると、ロボット制御装置RCはレーザ消灯指令をレーザ変位センサLSに送信する(図11(b)参照)。その指令を受けてレーザ変位センサLSは消灯する。このとき、ロボット制御装置RCは、レーザ変位センサLSにレーザ消灯指令を出力した時点での、マニピュレータMの位置をロボット座標系のサーチ終了点(すなわち、測距データ)として、記憶部23の第1記憶領域23aに記憶する。
【0047】
(5) サーチ動作終了後、ロボット制御装置RCは時系列で得られた測距データに対して画像処理を行う。この画像処理が行われているデータを以下、画像データという。そして、メモリ上の該画像データに対する特徴点を求める。又、ロボット制御装置RCは開先に応じてギャップ量や開先角度といった物理量を求める。なお、特徴点、及び物理量の求め方についての詳細な説明は例を挙げて後述する。
【0048】
(特徴点と物理量)
ここで、開先情報である特徴点と物理量を溶接継手としてのV字継手、重ね継手及び円弧位置を例にして説明する。
【0049】
(V字継手)
V字継手の場合、図5に示すように、左右の溶接母材(ワークW)の開先において、両溶接部材上面の延長平面Eに位置する開先の中点Pを特徴点としている。V字継手の場合、ギャップ量、開先深さ、開先角度θ1、開先角度θ2を物理量としている。ギャップ量Gは図5に示すように開先の左右の溶接母材の互いに離間した端の縁部の距離(左右の溶接母材の開先端間距離)である。開先深さHは、開先溝の深さである。開先角度θ1は、一方の溶接母材の開先側の角度であり、開先角度θ2は他方の溶接母材の開先側の角度である。
【0050】
(重ね継手)
重ね継手の場合、図6に示すように、上板Uの端角(上板角という)のポイントを特徴点としている。又、上板Uと下板Sの離間距離を物理量であるギャップ量としている。なお、重ね継手のギャップ量は、レーザ変位センサLSから下板Sまでの測距データと上板Uまでの測距データとの差を取って、その値から、予め設定されている上板Uの板厚を引くことにより得ることができる。
【0051】
(特徴点と物理量の算出)
ここで、ロボット制御装置RCが行う画像解析による特徴点及び物理量の算出について説明する。この画像解析は、表1に示される検出パターン番号に対応した画像解析プログラムがロボット制御装置RCのCPU20にて読み込まれて下記(1)〜(10)の順序で実行される。なお、下記説明中、該CPU20が実行するときに参考とされる検出パラメータは表1に示された検出パラメータ1〜9に記載されているものである。これらの検出パラメータは、特徴点及び物理量を算出するための検出条件である。
【0052】
ここで、表1に記載されている検出パターン番号、データサンプリング周期、検出パラメータ1〜9は画像処理パラメータに相当する。この画像処理パラメータは、ティーチペンダントTPのキーボード41にて入力されて、記憶部23の第3記憶領域23cの画像処理パラメータ調整前を記憶する領域Qaに格納されている。
【0053】
検出パラメータ1及び検出パラメータ2は、データの上限値及び下限値をそれぞれ規定する。検出パラメータ3及び検出パラメータ4は開先内のオフセット量及び直線長さをそれぞれ規定する。検出パラメータ5は、特徴点となるねらい位置を規定するものであり、「0」は開先溝の最深部を、「1」は開先溝の左上縁部を、「2」は開先溝の右上縁部を、「3」は開先の中点を、「4」は近似直線交点を指定する。どれを特徴点とするかは、オペレータが予めティーチペンダントTPから入力することにより、画像解析プログラムに設定される。
【0054】
検出パラメータ6は端点検出の閾値を規定する。検出パラメータ7は開先外のオフセット量を規定する。検出パラメータ8は画像データに対するフィルタ処理のためのフィルタモードを規定し、「0」は、フィルタなし、「1」は移動平均、「2」はメディアン、「3」は移動平均とメディアンの両処理を意味する。どのフィルタ処理が行われるかは、オペレータが予めティーチペンダントTPからの入力により、画像解析プログラムに設定される。検出パラメータ9は、フィルタ窓幅を規定する。
【0055】
【表1】

(1)まず、ロボット制御装置RCは検出パラメータ8でフィルタモードを設定する。
【0056】
(2)次に、ロボット制御装置RCは検出パラメータ9で指定したフィルタ窓幅で画像データを前記設定されたフィルタモードに従ってフィルタ処理する。
(3)続いて、ロボット制御装置RCは測距距離から検出パラメータ1(データ上限値)〜検出パラメータ2(データ下限値)の範囲外のデータを除外し、その中でデータ最深部を探索する(図7参照)。図7において、黒点は測距データ取得時のサンプリング点を示している。
【0057】
(4)次に、ロボット制御装置RCは最深部から検出パラメータ3で指定したオフセット量離れた位置を中心に、開先両端にそれぞれ検出パラメータ4で指定した直線長さの近似直線を引く(図7参照)。
【0058】
(5)続いて、ロボット制御装置RCは、測距したサンプリング点のうち、各直線から検出パラメータ6で指定した距離(すなわち、端点検出の閾値)離れ始める点を左右の開先端とする(図7参照)。
【0059】
(6)次に、ロボット制御装置RCは検出パラメータ5で特徴点を指定する(図7参照)。なお、本実施形態では、予めオペレータの入力により画像解析プログラムには「3」が選択されているものとする。なお、交差角としては、各々鋭角となる角度を選択する。
【0060】
(7)続いて、ロボット制御装置RCは左右の溶接母材の開先端間距離をギャップ量Gとする(図7参照)。
(8)次に、ロボット制御装置RCは開先左端から検出パラメータ7で指定したオフセット量分、左に移動した位置を中心に左開先外近似直線を引く。同様に右開先外近似直線を引く(図7参照)。
【0061】
(9)続いて、ロボット制御装置RCは左開先外近似直線と最深部の距離を開先深さとする(図7参照)。
(10)そして、ロボット制御装置RCは左開先部近似直線と左開先外近似直線の交差角を開先角度θ1、右開先部近似直線と右開先外近似直線の交差角を開先角度θ2とする(図7参照)。
【0062】
なお、重ね継手やV字継手では傾きが急峻に変化する場所が存在するが、そうではない場合にも開先情報取得機能は適用できる。例えば円弧位置を探索することもできる。円弧位置での画像解析手順は以下(1)〜(7)の通りである。
【0063】
この画像解析は、表2に示される検出パターン番号に対応した画像解析プログラムがロボット制御装置RCのCPU20にて読み込まれて実行される。なお、画像解析プログラムの選択は、予めオペレータの入力により決定される。そして、該CPU20が実行するときに参考とされる検出パラメータは表2に示された検出パラメータ1〜6に記載されているものである。この場合、これらの検出パラメータは、特徴点を算出するための検出条件である。
【0064】
ここでの検出パラメータ1は頂点探索時の区間長さを規定する。又、検出パラメータ2は、頂点からの下がり量を規定する。検出パラメータ3は、点A,B探索時の高さ差分閾値である。検出パラメータ4は探索する円弧の半径を規定する。検出パラメータ5は画像データに対するフィルタ処理のためのフィルタモードを規定し、「0」は、フィルタなし、「1」は移動平均、「2」はメディアン、「3」は移動平均とメディアンの両処理を意味する。どのフィルタ処理が行われるかは、オペレータが予めティーチペンダントTPから入力することにより、画像解析プログラムに設定される。検出パラメータ6は、フィルタ窓幅を規定する。
【0065】
【表2】

(1)ロボット制御装置RCは検出パラメータ5でフィルタモードを設定する。
【0066】
(2)次に、ロボット制御装置RCは検出パラメータ6で指定したフィルタ窓幅で画像データを前記設定されたフィルタモードに従ってフィルタ処理する。
(3)続いて、ロボット制御装置RCは頂点をサンプリング点を基にラフに探索する(図9参照)。図9の黒点は測距データ取得時のサンプリング点を示している。
【0067】
(4)そして、ロボット制御装置RCは頂点から検出パラメータ4以上離れたデータは除外する。
(5)次に、ロボット制御装置RCは頂点から、検出パラメータ2下がった位置を探索する。(4)で整形したデータ(以下、整形データという)の左端から探索を開始し、
((測距データ)−(頂点−検出パラメータ2))<検出パラメータ3
となる点を点Aとする。同様に整形データ右端から探索を行い、点Bを求める。
【0068】
(6)続いて、ロボット制御装置RCは点A〜点Bの中点Cを計算する。
(7)そして、ロボット制御装置RCは、左右方向はCの座標、上下方向は頂点の高さの座標の位置を特徴点とする。
【0069】
(特徴点の座標の算出)
さて、話を元に戻して、ロボット制御装置RCのCPU20は、画像処理で得られた画像データ上の特徴点と、サーチ開始点及びサーチ終了点のロボット座標より、ロボット座標での特徴点座標を求め、前記物理量とともに、記憶部23の第4記憶領域23dに格納する。
【0070】
ここで、前記特徴点は、サーチ方向及びレーザ照射方向に分けて求められる。以下、サーチ方向の特徴点の位置を「左右位置」、レーザ照射方向の特徴点の位置を「上下位置」と呼ぶ。このとき、左右位置、上下位置は以下のように求められる。
【0071】
【数1】

このようにして、画像解析が終了すると、開先情報(特徴点と物理量)、及び画像解析された後の加工測距データを、CPU20は、ティーチペンダントTPに出力する。ティーチペンダントTPのディスプレイ42は、その表示領域Da(図12参照)に画像解析結果(すなわち、開先情報(特徴点と物理量)、及び画像解析された後の加工測距データ)をグラフ化して表示するとともに、表示領域Db(図16参照)に対して各種の物理量を表示する。なお、本実施形態では表示領域Dbには、開先(レーザ)データのデータ個数も示される。
【0072】
なお、表示領域Daにおいては、横軸はレーザ変位センサLSの移動時間(秒)で示しているが、秒の代わりにレーザ変位センサLSが移動した距離(mm)で表示してもよい。
【0073】
(基準点の位置)
そして、最初の一方向サーチ動作時にはこれらの特徴点がそれぞれ基準点(基準位置)として、ファイル名を付与してファイル化して第2記憶領域23bの領域Paに記憶される。その様子を図8に示す。なお、図8は説明の便宜上サーチ方向がロボット座標系のX軸と平行に図示しているが、実際のサーチは必ずしもX軸と平行である必要はない。
【0074】
このようにして、基準点(基準位置)を取得した後は、前述した施工されるワークWに対して同じように一方向サーチ動作を行う。
(ずれ量の算出)
上記のようにして、一方向サーチ動作を行った後、ロボット制御装置RCは、第4記憶領域23dに記憶した特徴点の座標と先に第2記憶領域23bの領域Paに、ファイル名を付与してファイル化して記憶した基準点の座標からずれ量を以下の式で算出し、ずれ量補正ファイルを作成して記憶部23の図示しない記憶領域に格納する。
【0075】
【数2】

本実施形態では、このようにレーザ変位センサという一次元の検出しかできないセンサで、二次元の開先情報(すなわち、特徴点および物理量)の取得を一方向サーチと同じ動作で行うことができる。なお、ここで、二次元といっているのは、X軸とZ軸を含む平面上で前記開先情報が得られることをいっている。
【0076】
(画像処理パラメータのチェック)
ところで、上記のように構成された位置検出システムとしての溶接ロボットの制御装置10において、一回の一方向サーチ動作を行った後、作業者が画像処理パラメータのチェックを行う場合は、下記のように行われる。
【0077】
作業者はティーチペンダントTPのキーボード41を操作して、ティーチペンダントTPを画像処理パラメータの調整モードに設定する。調整モードにおいては、作業者はキーボード41を操作してディスプレイ42に、調整したい開先形状に応じた画像処理パラメータのパラメータ調整画面を表示させ、この状態でキーボード41を操作して、画像処理パラメータを調整入力する。
【0078】
そして、この後、作業者はティーチペンダントTPのキーボード41を操作して、再画像解析を行う指示の入力を行う。
ロボット制御装置RCのCPU20は、前記再画像解析を行う指示に応じて、第1記憶領域23aに記憶されている測距データに基づき、第3記憶領域23cの領域Qbに格納された調整後の画像処理パラメータに従って溶接継手の画像解析を行う。そして、CPU20は、調整後の画像処理パラメータに従って得られた画像解析データを、ファイル名を付与してファイル化して第2記憶領域23bの領域Pbに記憶する。
【0079】
このようにして、画像処理パラメータ調整後の画像解析データ(すなわち、開先情報(特徴点と物理量)、及び画像解析された後の加工測距データ)は、画像処理パラメータ調整前の場合と同様に前述した図12に示す表示領域Daや、図13に示す表示領域Dbに示される。作業者は、ディスプレイ42に表示された内容をみて、画像処理パラメータが所望のものであるか否かをチェックする。
【0080】
なお、このチェックの際、キーボード41に設けられた表示切換キー(図示しない)を操作して、画像処理パラメータ調整前の画像解析データ(すなわち、開先情報(特徴点と物理量)、及び画像解析された後の加工測距データ)を第2記憶領域23bの領域Paから読み出して、ディスプレイ42に切換表示させてもよい。このように構成すれば、画像処理パラメータ調整前後の両方の画像解析データを交互に見ることができる。
【0081】
前記表示切換キー(図示しない)を有するキーボード41は、表示切換手段に相当する。
なお、必要であれば、作業者は以後同様にパラメータ調整画面をディスプレイ42に表示させて、画像処理パラメータを調整入力し、再画像解析を行う指示を繰り返し行い、作業者が画像処理パラメータのチェックを行うことにより、所望の画像処理パラメータを求めても良い。
【0082】
そして、所望の画像処理パラメータが得られたとき、作業者はティーチペンダントTPのキーボード41を操作して、画像処理パラメータの保存指示入力を行う。この保存指示入力に応じて調整入力された画像処理パラメータは、ロボット制御装置RCに出力され、記憶部23において第3記憶領域23cの領域Qbに格納される。
【0083】
なお、領域Qbに格納される調整後の画像処理パラメータは、表1に示すV字開先用検出パラメータである画像処理パラメータの例では、検出パターン番号、データサンプリング周期、及び検出パラメータ1〜9の値である。ここで、表1において、検出パラメータ5の値が「0」から「1」に変更された場合であっても、実際に調整された検出パラメータのみ領域Qbに格納されるのではなく、表1で示された全てのパラメータが領域Qbに格納される。
【0084】
なお、調整前の画像処理パラメータは、記憶部23の第3記憶領域23cの領域Qaに格納されている。
本実施形態の溶接ロボットの制御装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
(1) 本実施形態の溶接ロボットの制御装置10では、ロボット制御装置RCに、画像解析データを記憶する第2記憶領域23b(第2記憶手段)を有する記憶部23が設けられている。又、可搬式操作手段としてのティーチペンダントTPに画像解析データを表示するディスプレイ42(表示部)、画像処理パラメータを調整入力するとともに、調整入力された画像処理パラメータに従って再画像解析を行う指示を入力するキーボード41(パラメータ入力部及び再画像解析指示入力部)が設けられている。
【0086】
そして、キーボード41(再画像解析指示入力部)から再画像解析を行う指示があったとき、ロボット制御装置RCのCPU20(開先情報取得手段)は、記憶部23の第1記憶領域23a(第1記憶手段)に記憶した測距データに基づき前記調整入力された画像処理パラメータに従って溶接継手の画像解析を行い、新たな画像解析データを取得する。又、ティーチペンダントTPのディスプレイ42は、調整入力された画像処理パラメータに従って得られた画像解析データを表示するようにした。
【0087】
この結果、本実施形態の溶接ロボットの制御装置10では、サーチ動作により得られた測距データを元に、以後サーチ動作を行うことなく、異なる画像処理パラメータを適用した際の画像解析結果をティーチペンダントTP上で確認できるとともに、システム導入ないし新規教示における画像処理の調整時間を短縮できる効果がある。
【0088】
(2) 本実施形態の溶接ロボットの制御装置10では、ティーチペンダントTP(可搬式操作手段)に、キーボード41(パラメータ入力部)にて調整入力された画像処理パラメータを記憶する第3記憶領域23c(第3記憶手段)を備えるようにした。
【0089】
この結果、第3記憶領域23cを備えることにより、キーボード41(パラメータ入力部)にて調整入力された画像処理パラメータを記憶でき、この記憶された画像処理パラメータにより、開先情報の再取得を行うことができる。
【0090】
(3) 本実施形態の溶接ロボットの制御装置10では、記憶部23の第2記憶領域23b(第2記憶手段)は、画像処理パラメータ調整前の画像解析データを記憶する領域Pa(記憶領域)と、画像処理パラメータ調整後の画像解析データを記憶する領域Pb(記憶領域)を備えるようにした。
【0091】
この結果、本実施形態では、画像処理パラメータ調整前及び画像処理パラメータ調整後のそれぞれの画像処理パラメータに従って得られた画像解析データをティーチペンダントTPのディスプレイ42(表示部)に表示することができ、画像処理パラメータのチェックを容易にできる。
【0092】
(4) 本実施形態の溶接ロボットの制御装置10では、記憶部23の第2記憶領域23b(第2記憶手段)は、画像処理パラメータ調整前と調整後の画像解析データをそれぞれファイル化して記憶するようにした。
【0093】
この結果、本実施形態では、画像処理パラメータ調整前と、画像処理パラメータ調整後のそれぞれの画像処理パラメータに従って得られた画像解析データをファイルを読み出すことでティーチペンダントTPのディスプレイ42(表示部)に表示することができるとともに、画像処理パラメータの再調整を行うことができる。
【0094】
(5) 本実施形態では、ティーチペンダントTP(可搬式操作手段)には、記憶部23の第2記憶領域23bの領域Pa,Pbのそれぞれに記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、及び画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、いずれか1つのデータをディスプレイ42(表示部)に切換え表示するようにした。すなわち、ティーチペンダントTPには、切換表示するための表示切換キー(図示しない)を有するキーボード41(表示切換手段)を備えるようにした。
【0095】
この結果、画像処理パラメータの変更の効果を確認することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
【0096】
○ 前記実施形態において、開先断面形状が異なる部位を複数有する溶接継手に対してレーザ変位センサLSに一方向サーチ動作を行わせた際に、開先断面形状が異なる部位毎に複数のサーチ動作により得られたその開先断面形状毎の測距データに対して、その開先断面形状に応じた画像処理パラメータに従って画像解析が行われるようにする。
【0097】
このときにその開先断面形状毎に得られた画像解析データをファイル化するに当たり、そのファイル名の先頭ないし末尾に自動的に識別符号としての番号を昇順或いは降順に追加して、記憶部23の第2記憶領域23bの領域Paに対して保存する。この後、画像処理パラメータの再調整を行って、調整後の画像処理パラメータに従って得られた画像解析データをファイル化する際に、そのファイル名の先頭ないし末尾に自動的に識別符号としての番号を昇順或いは降順に追加して、記憶部23の第2記憶領域23bの領域Pbに対して保存する。
【0098】
なお、ファイル名に付与する識別符号は番号の代わりに、例えば、アルファベット順に英記号を付与するようにしてもよい。
このようにすると、1プログラムである教示データ内に複数のサーチ動作がある場合には、その再生動作が行われ、測距データが第1記憶領域23a(第1記憶手段)に格納されるとともに、画像処理パラメータに従って画像解析された画像解析データが第2記憶領域23b(第2記憶手段)に記憶される。
【0099】
このとき、開先形状が異なることにより、異なる画像処理パラメータで画像解析されて得られた画像解析データはファイル化される毎に、各ファイルに対して互いに異なる番号や異なるアルファベットが付与されたファイル名が作成される。
【0100】
この後、異なる画像処理パラメータに従って得られた画像解析データに対し、ティーチペンダントTPのキーボード41にて画像処理パラメータが調整入力されると、ファイル単位毎に調整入力された、画像処理パラメータに従って溶接継手の画像解析を行うことができる。
【0101】
○ 前記実施形態では、ティーチペンダントTPのディスプレイ42に対して、画像処理パラメータ調整前及び調整後の画像解析データを切換表示させるようにした。この構成に加えて、図14(a)に示すように同時に、画像処理パラメータ調整前及び調整後の画像解析データをディスプレイ42に表示するようにしてもよい。
【0102】
すなわち、ティーチペンダントTPのキーボード41を表示モード選択キー(図示しない)を有する構成として、キーボード41を表示モード選択入力手段として機能させる。そして、該表示モード選択キーを操作することにより、図14(a)に示すように、ディスプレイ42の表示領域42aに画像処理パラメータ調整前の画像解析データを表示し、ディスプレイ42の表示領域42bに画像処理パラメータ調整後の画像解析データを表示する表示モードにする。なお、表示領域42a,42bの上下位置関係を逆にしてもよい。前記各データの表示される態様は、グラフであっても、表形式であってもよい。
【0103】
○ 前記実施形態では、ティーチペンダントTPのディスプレイ42に対して、画像処理パラメータ調整前及び調整後の画像解析データを切換表示させるようにした。さらにこの構成に加えて、図14(b)に示すように同時に、測距データ、画像処理パラメータ調整前及び調整後の画像解析データをディスプレイ42に表示する表示モードを有するにしてもよい。
【0104】
すなわち、ティーチペンダントTPのキーボード41を表示モード選択キー(図示しない)を有する構成として、キーボード41を表示モード選択入力手段として機能させる。そして、該表示モード選択キーを操作して、図14(b)に示すように、ディスプレイ42の表示領域42cに第1記憶領域23aに記憶した測距データが表示され、表示領域42dに画像処理パラメータ調整前の画像解析データが表示され、表示領域42eに画像処理パラメータ調整後の画像解析データが表示される表示モードにする。なお、前記各データの表示される態様は、グラフであっても、表形式であってもよい。
【0105】
○ 前記実施形態では、ティーチペンダントTPには、記憶部23の第2記憶領域23bの領域Pa,Pbのそれぞれに記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、及び画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、いずれか1つのデータをディスプレイ42(表示部)に切換え表示するようにした。
【0106】
この構成に代えて、第1記憶領域23aに記憶した測距データと、第2記憶領域23bの領域Paに記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データのいずれか一方を選択して、これらのデータをディスプレイ42に表示するキーを有するキーボード41に設けてもよい。
【0107】
或いは、第1記憶領域23aに記憶した測距データと、第2記憶領域23bの領域Pbに記憶した画像処理パラメータ調整後の画像解析データのいずれか一方を選択して、これらのデータをディスプレイ42に表示するキーを有するキーボード41に設けてもよい。
【0108】
このようにした場合、画像処理パラメータの有無の効果を確認することができる。
○前記実施形態では、表示部であるディスプレイ42は液晶ディスプレイに限定されるものではなく、有機EL、プラズマディスプレイ等の他のディスプレイで構成されていてもよい。
【0109】
○ 前記実施形態の構成に代えて、レーザ変位センサ制御装置LUを有する図16に示す従来例の構成に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】(a)は一実施形態のロボットの制御装置のブロック図、(b)は同じくティーチペンダントTPの概略図。
【図2】(a)はツール座標系の説明図、(b)はレーザ変位センサLSの取付状態を示すレーザ変位センサLSの斜視図。
【図3】ロボット制御装置RCのブロック図。
【図4】一方向サーチ動作の説明図。
【図5】V字継手の特徴点、物理量の説明図。
【図6】重ね継手の特徴点、物理量の説明図。
【図7】V字継手の画像解析の手順の説明図。
【図8】特徴点、物理量のロボット座標上への変換の様子を示す説明図。
【図9】円弧位置の画像解析の説明図。
【図10】同じく開先情報取得機能の動作を説明する説明図。
【図11】(a)、(b)は同じく開先情報取得機能の動作を説明する説明図。
【図12】画像解析結果をグラフ化してティーチペンダントTPのディスプレイに表示した説明図。
【図13】各種の物理量をティーチペンダントTPのディスプレイに表示した説明図。
【図14】(a)、(b)は他の実施形態のティーチペンダントTPのディスプレイ42の表示領域を示す説明図。
【図15】一方向サーチ機能の説明図。
【図16】(a)〜(c)は一方向サーチの説明図。
【符号の説明】
【0111】
M…マニピュレータ、LS…レーザ変位センサ、RC…ロボット制御装置、
TP…ティーチペンダント(可搬式操作手段)、
20…CPU(画像解析手段、開先情報取得手段)
23…記憶部、23a…第1記憶領域(第1記憶手段)、
23b…第2記憶領域(第2記憶手段)、23c…第3記憶領域(第3記憶手段)、
41…キーボード(パラメータ入力部、再画像解析指示入力部、表示切換手段、表示モード選択入力手段)、42…液晶ディスプレイ(表示部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接継手に対しレーザ光を投射して、測距データを取得するレーザ変位センサと、前記レーザ変位センサを溶接トーチとともに溶接線を横断する方向にサーチ動作させるマニピュレータと、前記測距データを記憶する第1記憶手段と、前記測距データに基づき画像処理パラメータに従って前記溶接継手の画像解析を行い、同画像解析に基づき前記溶接継手の開先形状に関する特徴点を含む開先情報を取得する開先情報取得手段を備えた自動溶接機の位置検出システムにおいて、
前記開先情報、及び画像解析された後の加工測距データ(以後、開先情報、及び画像解析された後の加工測距データを画像解析データという)を記憶する第2記憶手段と、
前記画像解析データを表示する表示部、前記画像処理パラメータを調整入力するパラメータ入力部、及び調整入力された画像処理パラメータに従って再画像解析を行う指示を入力する再画像解析指示入力部を備えた可搬式操作手段とを備え、
前記再画像解析指示入力部から再画像解析を行う指示があった際、前記開先情報取得手段は第1記憶手段の測距データに基づき前記調整入力された画像処理パラメータに従って前記溶接継手の画像解析を行って新たな画像解析データを作成し、前記表示部は、前記新たな画像解析データを表示することを特徴とする自動溶接機の位置検出システム。
【請求項2】
前記可搬式操作手段には、前記パラメータ入力部にて調整入力された画像処理パラメータを記憶する第3記憶手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動溶接機の位置検出システム。
【請求項3】
前記第2記憶手段は、画像処理パラメータ調整入力前(以下、画像処理パラメータ調整前という)の画像解析データを記憶する記憶領域と、画像処理パラメータ調整入力後(以下、画像処理パラメータ調整後という)の画像解析データを記憶する記憶領域を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動溶接機の位置検出システム。
【請求項4】
前記第2記憶手段は、画像処理パラメータ調整前と調整入力後の画像解析データをそれぞれファイル化して記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動溶接機の位置検出システム。
【請求項5】
前記第2記憶手段は、
互いに異なる画像処理パラメータで画像解析されて得られた画像解析データをファイル化する毎に、作成したファイルのファイル名に互いに異なる識別符号を付与することを特徴とする請求項4に記載の自動溶接機の位置検出システム。
【請求項6】
前記可搬式操作手段には、第1記憶手段に記憶した測距データ、第2記憶手段に記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、又は画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、いずれか1つのデータを選択して表示部に切換え表示する表示切換手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の自動溶接機の位置検出システム。
【請求項7】
前記表示部は、
第1記憶手段に記憶した測距データ、第2記憶手段に記憶した画像処理パラメータ調整前の画像解析データ、及び画像処理パラメータ調整後の画像解析データのうち、1つのデータを表示する表示モードと、少なくとも2つのデータを同時に表示する表示モードを有し、
前記可搬式操作手段には、前記表示モードを選択する表示モード選択入力手段が設けられ、
前記表示モード選択入力手段による表示モードの選択入力に応じて前記表示部がいずれかの表示モードを実行することを特徴とする請求項4に記載の自動溶接機の位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−221281(P2008−221281A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63319(P2007−63319)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】