説明

自動車の下部車体構造

【課題】上方に隆起して車両前後方向に延びるトンネル部4を有するフロアパネル1と、トンネル部4の車幅方向両外方に車両前後方向に延びる1対のサイドフレーム5,5とを備えた自動車の下部車体構造において、車体の曲げ剛性及び捩り剛性を向上させられるようにする。
【解決手段】トンネル部4と協働してその上方に閉断面を形成するトンネルレインホースメント8を設け、その前端部をダッシュクロスメンバ6を介して、また後端部をリヤクロスメンバ7を介して、それぞれ両サイドフレーム5,5に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の下部車体構造に関し、車体の曲げ剛性及び捩り剛性を向上させる対策に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、このフロアパネルの車両前後方向の前端上方位置に車幅方向に延びるように設けられたカウルボックスと、これらフロアパネル及びカウルボックスを互いに接続するように設けられていて、上端フランジがカウルボックスの底壁に接合されてなるダッシュパネルと、このダッシュパネルの車幅方向中央から後方に向かって延びるようにフロアパネル上に設けられたトンネル部と、車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドフレームとを備えてなる自動車の下部車体構造としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このものでは、上記ダッシュパネルのエンジンルーム側にダッシュクロスメンバを設けてその両端を両側のサイドフレームに結合することで、上記ダッシュパネル近傍の強度を確保できるようになされている。
【0004】
また、上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央部分を後方に延設し、その延設部でトンネル部内を仕切って閉断面形状を形成することで、トンネル部の強度を高め、このトンネル部で正面からの衝突荷重を吸収してサイドフレームにかかる衝撃荷重の負担を軽減できるようになされている。
【0005】
さらに、上記トンネル部の上には、延設部の後端に上下に重なる位置から、フロアパネル上に車幅方向に延びかつトンネル部を跨ぐように設けられたクロスメンバの位置に至る範囲にトンネルレインホースメントを設け、このトンネルレインホースメントとトンネル部との間に閉断面を形成することで、上記トンネル部による衝突荷重の吸収能力を大きくするようになされている。
【特許文献1】実開平3−126778号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例では、例えばオープンカーにも対応させることを考えた場合には、十分な車体の曲げ剛性及び捩り剛性が得られるとはいい難く、したがって、未だ改良の余地がある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ダッシュクロスメンバ及びリヤクロスメンバを効果的に連結できるようにすることで、オープンカーにも対応できる程度に車体の曲げ剛性及び捩り剛性をさらに向上させられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、トンネルレインホースメントを後方に向けてさらに延長し、このトンネルレインホースメントによりダッシュクロスメンバ及びリヤクロスメンバを互いに連結することで、いわゆるバックボーンフレーム構造を形成し、これにより車体の曲げ剛性及び捩り剛性をさらに向上させることができるようにした。
【0009】
具体的には、本発明では、車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、該フロアパネルの車幅方向中央に車両前後方向に延びるようにフロアパネル上に上方に隆起して設けられたトンネル部と、該トンネル部の車幅方向両外方において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドフレームとを備えた自動車の下部車体構造が前提である。
【0010】
そして、上記トンネル部の車室側の面と協働して該トンネル部の上方に閉断面を形成するトンネルレインホースメントが設けられているものとし、その上で、上記トンネルレインホースメントの前端部を、車幅方向に延びるクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに連結するとともに、上記トンネルレインホースメントの後端部を、車幅方向に延びるリヤクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに連結することとする。
【0011】
尚、上記の構成において、フロアパネルの車幅方向両側端縁において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドシルを備えており、上記トンネルレインホースメントの前端部が、フロアパネル前端から上方かつ車幅方向へ延びるダッシュパネルを介して上記1対のサイドシルに連結される場合には、上記トンネルレインホースメントの後端部を、上記1対のサイドシルにリヤクロスメンバを介して連結するようにしてもよい。
【0012】
また、何れの場合においても、上記トンネルレインホースメントを、上記トンネル部の側壁部に接合するようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、該フロアパネルの車幅方向中央に車両前後方向に延びるようにフロアパネル上に上方に隆起して設けられたトンネル部と、該トンネル部の車幅方向両外方において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドフレームとを備えた自動車の下部車体構造に対し、上記トンネル部の車室側の面と協働して該トンネル部の上方に閉断面を形成するトンネルレインホースメントを設け、その上で、上記トンネルレインホースメントの前端部をダッシュクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに、また後端部をリヤクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに連結してバックボーンフレーム構造を形成するようにしたので、車両の曲げ剛性及び捩り剛性を向上させてオープンカーへの対応化も図れるようになる。その際に、上記トンネルレインホースメントとトンネル部とが協働して閉断面を形成するようにしているので、上記曲げ剛性及び捩り剛性を共に大幅に向上させることができる。
【0014】
また、フロアパネルの車幅方向両側端縁において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドシルを備えていて、上記トンネルレインホースメントの前端部が、フロアパネル前端から上方かつ車幅方向へ延びるダッシュパネルを介して上記1対のサイドシルに連結される場合には、上記トンネルレインホースメントの後端部を、上記1対のサイドシルにリヤクロスメンバを介して連結してもバックボーンフレーム構造を形成することができるので、この場合にも、上記の場合と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車の下部車体構造の全体構成を模式的に示している。同図において、1は車室の床面を形成するフロアパネルであり、このフロアパネル1の車両前後方向の前端上方位置には、図2に示すように、車幅方向に延びるように設けられたカウルボックス2が配置されている。また、これら
フロアパネル1及びカウルボックス2間には、両者を互いに接続するように設けられていて上端フランジ3aが該カウルボックス2の底壁に接合されてなるダッシュパネル3が配置されている。さらに、それらダッシュパネル3及びフロアパネル1の車幅方向中央には、上方に隆起しかつ下面が開口された断面逆凹字状のトンネル部4が車両前後方向に延びるように設けられている。また、上記フロアパネル1の下面側には、車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドフレーム5,5が配置されている。
【0017】
そして、上記ダッシュパネル3の側には、上記両サイドフレーム5,5のフロント部5a,5a同士を連結するとともに、ダッシュパネル3と協働して閉断面を形成するダッシュクロスメンバ6が、ダッシュパネル3に沿ってトンネル部4を跨ぐように設けられている。一方、車室後方の位置では、サイドフレーム5,5のリヤ部5b,5b同士をその前側において連結する前側リヤクロスメンバ7が車幅方向に延びるように設けられている。さらに、上記トンネル部4上には、このトンネル部4と協働して閉断面を形成するトンネルレインホースメントとしてのトンネルトップレインホースメント8が車両前後方向に延びるように設けられている。そして、上記トンネルトップレインホースメント8の前端は上記ダッシュクロスメンバ6の車幅方向中央に、また後端側はトンネルトップリヤレインホースメント8aを介して上記リヤクロスメンバ7の車幅方向中央にそれぞれ連結されている。
【0018】
具体的には、上記ダッシュパネル3は、図4にも示すように、車室床面の前端近傍において前側に向かって水平に延びるフロア部と、このフロア部から前側に向かって斜め上方に延びる傾斜部と、この傾斜部から略上方に向かって延びる縦壁部とからなっており、フロア部の後端でフロアパネル1の前端に接合されている一方、上記上端フランジ3aは縦壁部の上端に設けられていて、前側に向かって屈曲した形状に形成されている。そして、上記トンネル部4は、フロアパネル1からダッシュパネル3のフロア部及び傾斜部に亘り、例えばフロアパネル1及びダッシュパネル3とは別のパネル部材を用いて下方に開口された断面逆凹字状に設けられている。その際に、トンネル部4の前端側は断面形状が大きくされていて、この内部にエンジンEの後半部が配置されるようになっている。上記トンネルトップレインホースメント8は、図2に示すように、下方に向かって開放された断面逆凹字状をなしており、トンネル部4の上面壁を上方から覆う状態でレインホースメント8の両側壁の下端がトンネル部4の両側壁の上端に接合されていることで、トンネル部4の上面壁と協働して閉断面を形成している。つまり、本実施形態では、上記レインホースメント8をトンネル部4の上に配置することで、いわばハイマウントバックボーンフレーム構造を形成している。
【0019】
本実施形態に係る自動車は、図20に示すように、フロント側に縦置きに搭載されたエンジンEで後輪を駆動するFR車であるが、そのエンジンEとしてはロータリエンジンが搭載されていて、レシプロエンジンよりも小型であることを活用し、上記エンジンEの配置をエンジンルームから上記トンネル部4内の前端側に寄せてミッドシップ化することで自動車全体のヨー慣性モーメントの低減を図っている。そして、上記エンジンEに駆動連結された変速装置から延びるプロペラシャフトを上記トンネル部4内に配置するようにしている。その際に、上記ロータリエンジンEの潤滑装置をドライサンプ式としてオイルパンを浅くすることで、その配置を低くして自動車全体の低重心化を図っている。
【0020】
上記サイドフレーム5,5は、前輪21及び後輪22の近傍位置でそれぞれキックアップしており、その前側のキックアップ部から前方に位置するフロント部5a,5a、及びリヤ側のキックアップ部から後方に位置するリヤ部5b,5bはそれぞれ水平方向にストレートに延びている。また、フロアパネル1の両側縁には、各々、車両前後方向に延びるように設けられた1対のサイドシル19,19が配置されており、各サイドシル19の前後両端は、各々のサイドフレーム5に結合されている。尚、図1の20は、フロアパネル1上に車幅方向に延びるように設けられていて、サイドシル19,19、サイドフレーム5,5及びトンネルトップレインホースメント8を連結するセンタクロスメンバである。
【0021】
上記ダッシュクロスメンバ6は、図5〜図7に示すように、各々、上記ダッシュパネル3のエンジンルーム側に配置されていて各々のサイドフレーム5に結合されてなる両側1対の室外側メンバ6a,6aと、ダッシュパネル3の車室側に配置されていて上記室外側メンバ6a,6a同士を連結する室内側メンバ6bとからなっている。つまり、上記各室外側メンバ6aは、トンネル部4の側壁に沿って上方中央に向かって円弧状に延びるように設けられ、ダッシュパネル3に対面する部分は後方に向かって、またサイドフレーム5のフロント部5a基端に対面される部分は下方に向かってそれぞれ開放された形状をなしている。そして、周縁には、ダッシュパネル3の縦壁部に接合されるフランジ及びフロント部5a基端に接合されるフランジが共に外向きに形成されている。また、トンネル部4の前端開口の内壁面に接合される部分は屈曲せずに略ストレートな断面形状をなしている。
【0022】
一方、上記室内側メンバ6bは、フロント面側及び下面側が共に開放された筐体状をなしていて、その周縁には外向きフランジが周設されている。そして、図8にも示すように、上記フロント面側がダッシュパネル3の縦壁部に、また下面側がトンネル部4の前端側上面壁にそれぞれ接合されている。
【0023】
上記サイドフレーム5のフロント部5a基端は、図3に示すように、後方に向かって両側壁間の間隔が拡大するラッパ状になされている。また、運転席側である右側では、ダッシュパネル3に図外のステアリングホイールのシャフトを挿通するための貫通孔23が設けられており、これに応じて、上記フロント部5aの基端では、その上面壁が上方に隆起する弯曲形状とされている一方、その下面壁には貫通孔が設けられている。また、上記ダッシュパネル3の貫通孔周りには、ステアリングホイール用の1対のロア取付ブラケット24,24が設けられている。尚、上記ダッシュクロスメンバ6による剛性アップをさらに図るために、サスペンション装置のタワーとダッシュクロスメンバ6とをパフォーマンスロッド等を介して連結するようにしてもよい。
【0024】
上記カウルボックス2は、自動車の前方下方視界を良好にするために、その低位置化及び小型化が図られていて、図2に示すように、カウルボックス2の車幅方向中間部は全体に低くされている。これに対し、カウルボックス2の左右両側部分は、車両制動装置のマスターバック25を取り付けるための取付座面を確保する上で十分に下げることはできず、上記中間部よりも高くなっている。そして、上記カウルボックス2の中間部と、上記室内側メンバ6bとの間には、カウルボックス2の内部底面を室内側メンバ6b内に連通する水抜きパイプ9が配設されている。また、室内側メンバ6b及び室外側メンバ6a間の各結合部では、ダッシュパネル3に水抜き孔3bがそれぞれ設けられている。
【0025】
上記カウルボックス2の下方には、図2に示すように、車幅方向の中間部から助手席側(同図の右側)の部分にかけて、車両空調装置のヒータユニット26、クーラユニット27及びブロワ28が順に配置されている。そして、上記ブロワ28は、カウルボックス2の底壁に設けられた略矩形状の開口部2aを通してその吸込口28aをカウルボックス2の内部に臨ませた状態で配置されている。具体的には、上記カウルボックス2の内部には、図9及び図10に示すように、上記開口部2aの形状に倣った断面形状を有していて上下両端が開口された角筒状のタワー29が開口部2aの周縁に接合された状態に配置されている。このタワー29は、下端開口縁に外向きフランジ29aを有していて、この外向きフランジ29aにおいてカウルボックス2の底壁に接合されている。また、タワー29の上端近傍部分は、下端側の部分よりも断面形状が小さくされており、両者間の接続箇所は略水平な段部29bとされている。そして、この段部29bから上端までの部分は略同じ断面形状をなすバッフル部29cとされている。つまり、上記ブロワ28は、その吸込口28aの周縁を上記段部29bに下方から気密状態に接合されて上記吸込口28aがバッフル部29cに臨むように配置されている。換言すると、上記タワー29は、ブロワ28の取付ブラケットとバッフルとを兼用するようになされている。これらにより、図12に示すように、専用のバッフル部材bを用いるとともにブロワ28′をその吸込口28a′がカウルボックス2′の底壁の位置に位置付けられるようにする場合に比べて、図11に示すように、それよりも高くなる位置に配置することができるので、カウルボックス2の位置を低くしたのにも拘らず、上記の場合にブロワ28′の下方に形成される足元スペースh′に比べて十分な足元スペースh(>h′)を確保することができる。
【0026】
一方、上記ダッシュパネル3の運転席側部分(図2の右側部分)では、上述のようにそのエンジンルーム側にマスターバック25が取り付けられている。上記マスターバック25の背後には、図13及び図14に示すように、右前輪21のホイールハウス30が迫っている。そして、上記マスターバック25の背後に位置するホイールハウス30の部分は、マスターバック25の脱着スペースを確保できるように、取外し可能とされている。つまり、ホイールハウス30の一部に開口30aが設けられていて、その開口縁には複数本のボルト31,31,…が軸部をホイールハウス30から突出させる状態に埋設固定されている。そして、上記開口30aに対し、各ボルト軸部が挿通可能なボルト挿通孔32a,32a,…を有する蓋部材32が配置されていて、上記各ボルト31を挿通孔32aに挿通させた状態に開口30aに蓋部材32を被せて各ボルト31にナット33を螺着させている。これらにより、マスターバック25の脱着に支障をきたすことなく、フロント側のホイールハウス30をダッシュパネル3側に近接させることができるので、その分だけホイールベースを短くして自動車のヨー慣性モーメントの低減化を図ることができる。
【0027】
尚、上記蓋部材32を設けるに当たり、図15に示すように、ホイールハウス30の開口の位置から後方に向かって水平に延設してダッシュパネル3への接合フランジ部32bを形成する一方、車幅方向側の縁部にエプロンレインホースメント63の側面への接合フランジ部32cを形成するようにすれば、ダッシュパネル3の剛性をさらにアップさせることができる。また、サスペンション装置のダンパのばねレートが可変式である場合には、その調整ボックスで蓋部材を構成するようにしてもよい。すなわち、図16に示すように、調整ボックス34の周りに取付片35,35,…を突設して各取付片35にボルト挿通孔32aを設けるのである。これにより、従来では一般にタイヤを取り外して行われるばねレートの調整を、エンジンルーム側で行うことができるようになる。
【0028】
上記運転席側のダッシュパネル3の足元部分には、トンネル部4の側壁を側方に膨出させた状態でフットレスト36が形成されている。一方、上記トンネル部4の前端側には、自動車のエンジンEの後半部と、このエンジンEの後端部に連結されたクラッチ装置と、このクラッチ装置の後端部に連結された変速装置とが配置されている。そして、トンネル部4内には、上記フットレスト36の膨出部分を利用してエンジンEのインテークマニホルド37が配置されている。そこで、図17及び図18に示すように、上記フットレスト36の一部を切り欠いて、インテークマニホルド用のサービスホール38を設けている。また、その切欠き形状に合わせて、上記サービスホール38を脱着可能に閉じるための蓋部材39が設けられている。この蓋部材39は、複数箇所においてボルト40,40,…でフットレスト36及びトンネル部4に取り付けられている。尚、その際に、図19に示すように、上記フットレスト36に対する各ボルト40の取付方向を車両前後方向に揃えておくようにしてもよい。
【0029】
また、図20〜図22に示すように、上記エンジンEに接続されているフロントハーネス41は、後方に引き回されてスタータ42の後側からトンネル部4の側壁の貫通孔43を通って室内側に引き出されている。そして、助手席側の座席の前方のフロア上にはエンジンEの制御を行うコンピユータボックス44が配置されていて、このコンピユータボックス44に上記フロントハーネス41が接続されている。これらにより、エンジンルーム側に引き出すことなくフロントハーネス41を配線することができる。尚、上記コンピユータボックス44を、助手席の足元に配置するようにしてもよい。
【0030】
次に、上記下部車体構造のリヤ側について説明する。図1に示すように、上記前側リヤクロスメンバ7のさらにリヤ側には、車幅方向に延びるように設けられ、かつ両端が各々のフロントサイドフレーム5のリヤ部5bにそれぞれ連結された後側リヤクロスメンバ11が配置されている。そして、これら前後リヤクロスメンバ7,11間には、各々、車両前後方向に対し斜め水平方向に延びるように設けられていて、前端が前側リヤクロスメンバ7及びトンネルトップリヤレインホースメント8a間の結合部に結合されている一方、後端が上記各々のサイドフレーム5のリヤ部5bに結合されてなる両側1対のダイアゴナルメンバ10,10が配置されている。そして、図23に示すように、これらダイアゴナルメンバ10,10の上方に燃料タンクTが配置されている。
【0031】
上記燃料タンクTの周りには、さらに、前後2つのアッパリヤクロスメンバ12,13が配置されている。つまり、前側リヤクロスメンバ7の上には、リヤ側に向かって斜め上方に傾斜するように設けられていて、下端が前側リヤクロスメンバ7及びトンネルトップリヤレインホースメント8a間の結合部に結合されたタワーとしてのダイアゴナルタワー14が配置されており、このダイアゴナルタワー14の上端に上記前側アッパリヤクロスメンバ12がその車幅方向中央において結合されている。また、後側リヤクロスメンバ11の上には、各々、車幅方向両側位置から上方に向かって互いに近接する方向に延びるように設けられていて、下端が上記後側リヤクロスメンバ11及びサイドフレームリヤ部5b間の結合部に結合されている一方、上端同士が互いに結合されてなる両側1対のタンククロスメンバ15,15が配置されており、これらタンククロスメンバ15,15の上端に上記後側リヤクロスメンバ11がその車幅方向中央において結合されている。また、これら前後のアッパリヤクロスメンバ12,13間には、各々、車両前後方向に対し斜め水平方向に延びるように設けられていて、前端が前側アッパリヤクロスメンバ12及びダイアゴナルタワー14間の結合部に結合されている一方、後端が後側アッパリヤクロスメンバ13の両端部に結合されてなる両側1対のアッパダイアゴナルメンバ16,16が配置されている。上記のうち、ダイアゴナルタワー14は、前側リヤクロスメンバ7及び前側アッパリヤクロスメンバ12間の空きスペースを利用して、またタンククロスメンバ15,15は、後側リヤクロスメンバ11及び後側アッパリヤクロスメンバ13間の空きスペースを利用してそれぞれ配置されている。
【0032】
さらに、上記前後のアッパリヤクロスメンバ12,13、ダイアゴナルタワー14、アッパダイアゴナルメンバ16,16及びタンククロスメンバ15,15は、図26に概略的に示すように、下端が開口された有底筒状をなしかつその開口端の両側縁に外向きフランジが形成された形状のバルクヘッドパネル46により覆われている。上記フランジはサイドフレームの上面に接していて、図24に右側の後輪の場合についてリヤ側から示すように、その先端はタイヤハウス47に接続されている。そして、上記タイヤハウス47上にはタイヤハウスレインホースメント48が配置されている。このタイヤハウスレインホースメント48は、図25に示すように、車両前後方向に延びる幅の広い縦壁部48aと、この縦壁部48aの後辺から車幅方向外側に向かって延びる幅の狭い縦壁部48bとがL字状に接続した形状をなしていて、その周縁にはフランジ48cが形成されている。前後方向の縦壁部48aの下辺は、タイヤハウス47の上面形状に倣う円弧状に切り欠かれた形状をなしていて、その部分のフランジ48cにおいてタイヤハウス47に接合されている。一方、車幅方向の縦壁部48bの側辺はクォータパネル49に接合されている。また、タイヤハウスレインホースメント48の上辺側のフランジ48cは、バルクヘッドパネル46からクォータパネル49に向けて水平に配置された補助パネル46aに接合されている。尚、図24において、60はトランクルーム内においてサイドフレームリヤ部5bの上面に載置されかつ上記クォータパネル49の下端に接合されるトランクフロアサイドパネルであり、61は上記クォータパネル49に連続するように設けられたリヤバンパである。
【0033】
そして、上記バルクヘッドパネル46の右側のフランジ上、つまり右側のサイドフレームロア部5bの上方空間は後方のトランクルーム53に向かって開放されていて、図26及び図27に示すように、上記空間に自動車のバッテリ50が配置されている。つまり、上記バッテリ50を取り出す際には、図27に仮想線で示すように、サイドフレームリヤ部5b上を移動させることができる。一方、バルクヘッドパネル46の左側のサイドフレームロア部5bの上方空間には、燃料タンクTからの蒸発ガスを一時的に蓄えておくためのキャニスタ51が配置されている。尚、これらの空間にはそれ以外のものを収容してもよく、図26に仮想線で示すようにコンピユータボックス52を配置することもできる。また、図28に示すように、サイドフレームロア部5aの上方空間を車室側にも開放して、スキー板54等の長尺物を収容できるようにしてもよい。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、自動車の下部車体構造において、両側1対のサイドフレーム5,5のフロント部5a,5a同士を連結するダッシュクロスメンバ6と、上記サイドフレーム5,5のリヤ部5b,5b同士を連結する前側リヤクロスメンバ7とを、車幅方向中央位置においてトンネルトップレインホースメント8によって連結することでハイマウントバックボーンフレーム構造を形成するようにしているので、車両の曲げ剛性及び捩り剛性を大幅に向上させることができ、オープンカーにも十分に対応できるようになる。
【0035】
さらに、自動車の後面衝突時に、その衝突荷重を、両側1対のサイドフレーム5,5だけでなく、図29に示すように、ダイアゴナルメンバ10,10及び前側リヤクロスメンバ7を介してトンネルトップレインホースメント8にも入力させることができるので、上記衝突荷重を効率よく分散でき、その分だけ後面衝突に対する性能を向上させることができる。一方、自動車の前面衝突時の衝突荷重についても、サイドフレーム5,5及びトンネルトップレインホースメント8にそれぞれ分散して入力させることができるので、正面衝突に対する性能も向上させることができる。
【0036】
その際に、上記下部車体構造のリヤ部において、前後2つのリヤクロスメンバ7,11及びその両クロスメンバ7,11間のダイアゴナルメンバ10,10に、ダイアゴナルタワー14と、両側1対のタンククロスメンバ15,15と、これらタワー14及びタンククロスメンバ15,15を上記ダイアゴナルメンバ10,10の上方位置で前後に連結するアッパダイアゴナルメンバ16,16とを加えて強固な枠体構造を形成するようにしているので、リヤ部の曲げ剛性を大幅に向上させることができ、よって、下部車体構造全体としての曲げ剛性も向上させることができる。また、上記タンククロスメンバ15,15及びアッパダイアゴナルメンバ16,16を各クロスメンバ7,11,12,13に対し斜めに結合させているので、上記枠体構造は優れた捩り剛性も発揮でき、よって、下部車体構造全体としての捩り剛性の向上にも寄与することができる。さらに、上記各部材によって燃料タンクTを取り囲むようにしているので、自動車の後面衝突時における燃料タンクTの損傷を大幅に抑えることもできる。
【0037】
また、上記ダッシュクロスメンバ6を、ダッシュパネル3のエンジンルーム側に配置された両側1対の室外側メンバ6a,6aと、ダッシュパネル3の車室側に配置されていて、上記エンジンルーム側部材同士を連結する室内側メンバとで構成するようにしたので、上記ダッシュクロスメンバ6に邪魔されることなく、図8に仮想線で示すように、カウルボックス2の底壁とダッシュパネル3の上端フランジ3aとをエンジンルーム側からスポット溶接することができる。
【0038】
さらに、上記カウルボックス2の車幅方向中央部とダッシュクロスメンバ6の室内側メンバ6bとの間に水抜きパイプ9を設けるようにしたので、自動車の前方下方視界を改善する際に、カウルボックス2からの良好な排水性を確保しつつ、カウルボックス2の中央部を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の下部車体構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】車室前端部の要部をトンネル部及びトンネルトップレインホースメントの縱断面と併せて示す正面図である。
【図3】サイドフレームのフロント部基端を示す分解斜視図である。
【図4】トンネル部の前端近傍部分を示す斜視図である。
【図5】ダッシュクロスメンバの要部を示す分解斜視図である。
【図6】ダッシュクロスメンバの要部を示す横断平面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図2のIX−IX線断面図である。
【図10】ブロワ用のタワーを示す斜視図である。
【図11】運転席側及び助手席側におけるカウルボックスの高さ位置を模式的に示す側面図である。
【図12】従来のブロア取付構造によるブロア下方の足元空間を模式的に示す側面図である。
【図13】ダッシュパネルの背面にマスタバックが取り付けられている状態を示す断面図である。
【図14】マスタバックを取り外す状態を示す断面図である。
【図15】マスタバック取外し用の蓋部材の変形例を示す横断平面図である。
【図16】蓋部材の別の変形例を示す斜視図である。
【図17】フットレストのサービスホールが蓋部材で閉じられた状態を示す斜視図である。
【図18】サービスホールが開けられた状態を示す斜視図である。
【図19】サービスホールの蓋部材の変形例を示す図17相当図である。
【図20】エンジンハーネスの取回し状態をコンピュータボックスの配置と併せて概略的に示す平面図である。
【図21】コンピュータボックスの配置を示す側面図である。
【図22】図21のXXII−XXII線断面図である。
【図23】燃料タンク周りの下部車体構造を模式的に示す側面図である。
【図24】右後輪のタイヤハウス周りをリヤ側から示す正面図である。
【図25】タイヤハウスレインホースメントを示す斜視図である。
【図26】燃料タンク周りをリヤ側から模式的に示す正面図である。
【図27】バッテリの収容状態を模式的に示す側面図である。
【図28】長尺物としてのスキー板の収容状態を模式的に示す側面図である。
【図29】正面及び後面衝突時の衝突入力の分散化を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フロアパネル
3 ダッシュパネル
4 トンネル部
5 サイドフレーム
6 ダッシュクロスメンバ
7 前側リヤクロスメンバ(リヤクロスメンバ)
8 トンネルトップレインホースメント(トンネルレインホースメント)
19 サイドシル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、該フロアパネルの車幅方向中央に車両前後方向に延びるようにフロアパネル上に上方に隆起して設けられたトンネル部と、該トンネル部の車幅方向両外方において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドフレームとを備えた自動車の下部車体構造であって、
上記トンネル部の車室側の面と協働して該トンネル部の上方に閉断面を形成するトンネルレインホースメントが設けられ、
上記トンネルレインホースメントの前端部は、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに連結されるとともに、
上記トンネルレインホースメントの後端部は、車幅方向に延びるリヤクロスメンバを介して上記1対のサイドフレームに連結されていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項2】
車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、該フロアパネルの車幅方向中央に車両前後方向に延びるようにフロアパネル上に上方に隆起して設けられたトンネル部と、上記フロアパネルの車幅方向両側端縁において車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた両側1対のサイドシルとを備えた自動車の下部車体構造であって、
上記トンネル部の車室側の面と協働して該トンネル部の上方に閉断面を形成するトンネルレインホースメントが設けられ、
上記トンネルレインホースメントの前端部は、フロアパネル前端から上方かつ車幅方向へ延びるダッシュパネルを介して上記1対のサイドシルに連結されるとともに、
上記トンネルレインホースメントの後端部は、車幅方向に延びるリヤクロスメンバを介して上記1対のサイドシルに連結されていることを特徴とする自動車の下部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車の下部車体構造において、
上記トンネルレインホースメントは、上記トンネル部の側壁部に接合されることを特徴とする自動車の下部車体構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−160262(P2006−160262A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28461(P2006−28461)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【分割の表示】特願平7−276027の分割
【原出願日】平成7年10月24日(1995.10.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】