自動車の前後輪駆動装置
【課題】後輪駆動用の第2パワーユニットのモータの小型化を可能にして,第2パワーユニットのコンパクト化を図り,第2パワーユニットの車両への搭載性を良好にし得る自動車の前後輪駆動装置を提供する。
【解決手段】前輪2fを駆動する第1パワーユニット3fと,後輪2rを駆動する第2パワーユニット3rとを備え,その第2パワーユニット3rを,モータ10と,このモータ10の出力軸10aの出力を後輪2rに伝達する減速装置11とで構成した自動車の前後輪駆動装置において,後輪2rに,前記モータ10より小型の補助モータ15の出力軸15aをクラッチ17を介して連結すると共に,前記補助モータ15の出力軸10aにエアコンディショナ20のコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチ17の接続により,前記モータ10及び補助モータ15の出力を合算して後輪2rに伝達するようにした。
【解決手段】前輪2fを駆動する第1パワーユニット3fと,後輪2rを駆動する第2パワーユニット3rとを備え,その第2パワーユニット3rを,モータ10と,このモータ10の出力軸10aの出力を後輪2rに伝達する減速装置11とで構成した自動車の前後輪駆動装置において,後輪2rに,前記モータ10より小型の補助モータ15の出力軸15aをクラッチ17を介して連結すると共に,前記補助モータ15の出力軸10aにエアコンディショナ20のコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチ17の接続により,前記モータ10及び補助モータ15の出力を合算して後輪2rに伝達するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,前輪を駆動する第1パワーユニットと,後輪を駆動する第2パワーユニットとを備え,その第2パワーユニットを,モータと,このモータの出力軸の出力を後輪に伝達する減速装置とで構成した,自動車の前後輪駆動装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,かゝる自動車の前後輪駆動装置において,第1パワーユニットの作動状態に関係なく,エアコンディショナのコンプレッサを駆動し得るように,モータ及び後輪間の伝動経路にクラッチを介装し,このクラッチ及びモータ間の伝動経路に,モータの出力により駆動されるエアコンディショナのコンプレッサを連結してなるものが,例えば特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,上記従来のものでは,後輪駆動用の第2パワーユニットのモータが,エアコンディショナ用のコンプレッサの駆動をも負担することで,大型化するを余儀なくされ,このためスペース上の理由から第2パワーユニットの車体への搭載性が悪化する傾向がある。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,後輪駆動用の第2パワーユニットのモータの小型化を可能にして,第2パワーユニットのコンパクト化を図り,第2パワーユニットの車体への搭載性を良好にし得る自動車の前後輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,前輪を駆動する第1パワーユニットと,後輪を駆動する第2パワーユニットとを備え,その第2パワーユニットを,モータと,このモータの出力軸の出力を後輪に伝達する減速装置とで構成した,自動車の前後輪駆動装置において,後輪に,前記モータより小型の補助モータの出力軸をクラッチを介して連結すると共に,前記補助モータの出力軸にエアコンディショナのコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチの接続により,前記モータ及び補助モータの出力を合算して後輪に伝達するようにしたことを第1の特徴とする。尚,前記モータは,後述する本発明の実施形態中の第2モータ10に対応する。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記減速装置を,前記モータの出力回転を減速して負荷側に伝達する減速装置と,この減速装置の出力を左右の後輪に分配する差動装置とで構成し,前記モータの出力軸に前記補助モータをクラッチを介して連結したことを第2の特徴とする。尚,前記差動装置は,後述する本発明の実施形態中の第2差動装置12に対応する。
【0008】
さらに本発明は,第2の特徴に加えて,第2パワーユニットの目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ及び補助モータに配分すべく,後輪の目標トルクが,補助モータの効率が良いS領域にあるか,又は第2モータの効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップから補助モータの効率点が最大になるトルクを設定して,補助モータのトルクの不足分を第2モータのトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップから第2モータの効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータのトルクの不足分を補助モータのトルクで補うようにしたことを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,クラッチの接続により,エアコンディショナのコンプレッサを駆動し得る補助モータの出力トルクを第2モータの出力トルクに合算させることで,後輪の駆動力を効果的に増強することができ,自動車の不整地に対する走破性を高めることができる。したがって,補助モータを備えた分,第2モータの小型化,特に小径化が可能となり,第2パワーユニット全体のコンパクト化に寄与し,第2パワーユニットの車体への搭載性の向上をもたらすことができる。またクラッチの遮断により,補助モータを単独でエアコンディショナを自由に作動することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴によれば,モータ及び補助モータは,それぞれの出力トルクを後輪に伝達する減速装置を共用することになり,第2パワーユニットのコンパクト化に一層寄与し得る。
【0011】
本発明の第3の特徴によれば,常に,総合効率の高い状態で第2モータ及び補助モータを作動させることになり,消費電力の節減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車の前後輪駆動装置の概要平面図。
【図2】図1の2矢視図。
【図3】前記前後輪駆動装置の電子制御ブロック図。
【図4】前記前後輪駆動装置中の第2パワーユニット系を主体にした詳細な電子制御ブロック図。
【図5】前記第2パワーユニットの運転制御表。
【図6】前記前後輪駆動装置の総合運転制御表
【図7】前後輪駆動装置の第2モータ及び補助モータの効率領域線図。
【図8】モータ効率マップ(車速に対する第2モータ及び補助モータの駆動トルク,並びに総合トルクの特性線図)。
【図9】前記第2パワーユニットの制御用フローチャート。
【図10】図7の制御フローチャートの一部に続くフローチャート。
【図11】本発明の第2実施形態を示す,図1との対応図。
【図12】図11の12矢視図。
【図13】本発明の第3実施形態を示す,図1との対応図。
【図14】図13の14矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
先ず,図1〜図10に示す本発明の第1実施形態の説明より始める。
【0015】
図1及び図2において,自動車の前後輪駆動装置1は,左右一対の前輪2f,2fを駆動する第1パワーユニット3fと,左右一対の後輪2r,2rを駆動する第2パワーユニット3rとを備える。第1パワーユニット3fは,内燃機関4と,この内燃機関4の出力側に連結される,発電及び回生ブレーキ機能を持つ第1モータ5と,この第1モータ5の回転を変速して負荷側に伝達するベルト式無段変速機6と,この変速機6の出力を左右の前輪2f,2fに分配する第1差動装置7とよりなっている。
【0016】
一方,第2パワーユニット3rは,発電及び回生ブレーキ機能を持つ第2モータ10と,この第2モータ10の出力軸10aの回転を減速して負荷側に伝達する減速装置11と,この減速装置11の出力を左右の後輪2r,2rに分配する第2差動装置12とを備える。減速装置11は,第2モータ10の出力軸10aの回転を一段減速する1次減速ギヤ列11aと,この1次減速ギヤ列11aの従動ギヤの回転をもう一段減速して第2差動装置12に伝達する2次減速ギヤ列11bとよりなっており,2次減速ギヤ列11bの従動ギヤの一側面に第2差動装置12のデフケース12aが一体的に連結される。2次減速ギヤ列11bは,第2モータ10及び1次減速ギヤ列11a間に配置される。
【0017】
第2パワーユニット3rは,更に,前記第2モータ10と共に,前記減速装置11及び第2差動装置12を介して後輪2r,2rを駆動し得る,第2モータ10よりも小型の補助モータ15を備える。この補助モータ15の出力軸15aは,同軸上に並ぶ中間軸16,クラッチ17及び補助減速ギヤ列18を介して第2モータ10の出力軸10aに連結され,クラッチ17の接続時,補助モータ15の出力軸15aの回転を一段減速して第2モータ10の出力軸10aに伝達し得るようになっている。また補助モータ15の出力軸15aには,エアコンディショナ(以下,単にエアコンという。)20のコンプレッサが直結される。補助減速ギヤ列18は,第2モータ10及び1次減速ギヤ列11a間に配置される。
【0018】
而して,第1及び第2パワーユニット3f,3rの同時作動により前輪2f,2f及び後輪2r,2rの4輪を同時に駆動することができる。その際,特に,第2パワーユニット3rの作動には,次の三態様がある。
(1)クラッチ17を遮断状態にして,第2モータ10の出力のみで後輪2r,2rを駆動する態様。
(2)クラッチ17を遮断状態にして,第2モータ10の出力のみで後輪2r,2rを駆動しながら,補助モータ15の作動によりエアコン20のコンプレッサを単独で自由に駆動する態様。
(3)クラッチ17を接続状態にして,第2モータ10及び補助モータ15の合算した出力により後輪2r,2rを駆動すると共に,エアコン20のコンプレッサを駆動する態様。
【0019】
上記(3)の態様によれば,エアコン20のコンプレッサを駆動し得る補助モータ15の出力を第2モータ10の出力に合算させることで,後輪2r,2rの駆動力を効果的に増強することができ,自動車の不整地に対する走破性を高めることができる。したがって,補助モータ15を備えた分,第2モータ10の小型化,特に小径化が可能となり,第2パワーユニット3r全体のコンパクト化に寄与し,第2パワーユニット3rの車体への搭載性の向上をもたらす。
【0020】
また第2モータ10を減速装置11を介して後輪に連結し,補助モータ15を第2モータ10の出力軸10aにクラッチ17を介して連結したことで,第2モータ10及び補助モータ15は,それぞれの出力トルクを後輪2r,2rに伝達する減速装置11を共用することになり,第2パワーユニット3rのコンパクト化に寄与し得る。
【0021】
図3において,MG−ECU22は,それに入力される車両の各種運転情報23に基づいて,目標トルクの設定及びエアコン20の目標制御量(温度,風量等)の設定をした後,運転パターンの判定を行い,次いでモータ効率マップ(図8)による判定制御,クラッチ17の切り換え及びエアコン20の作動判定を統括的に行う。その結果に基づき,第1モータ用ECU24は,第1PDU25を介して第1モータ5の駆動及び回生の制御を行い,第2モータ用ECU26は,第2PDU27を介して第2モータ10の駆動及び回生の制御を行い,補助モータ用ECU28は,第3PDU29を介して補助モータ15の駆動の制御を行い,変速用ECU38は,変速機6の変速制御を行う。またMG−ECU22は,前記判定結果に基づきクラッチ17の接続及び遮断を制御する。さらにエアコン用ECU30は,MG−ECU22からの司令信号により,エアコン20のコンプレッサの作動を制御し,機関用ECU31は,MG−ECU22からの司令信号により第1パワーユニット3fの内燃機関4における燃料噴射量や点火時期を制御し,バッテリ用ECU32は,MG−ECU22からの司令信号により図示しないバッテリの充放電を制御する。
【0022】
図4により,MG−ECU22による第1モータ5,第2モータ10及び補助モータ15の制御を更に詳しく説明する。MG−ECU22は,アクセルペダル開度やブレーキスイッチのオン・オフの状態等からドライバの加減速要求を認識し,また車速や機関回転数,車両の加減速度等の運転情報23を認識し,これら認識に基づいて,車両の要求総合トルクと,前輪2f,2f及び後輪2r,2rへのトルク配分割合と,変速機6の変速位置とを演算し,そして第1パワーユニット3fの各部の制御値(内燃機関4の燃料噴射量,点火時期,第1モータ5の目標トルク値,変速機6の変速位置等)と,第2パワーユニット3rの各部の目標制御値(第2モータ10及び補助モータ15の目標トルク値等)を演算する。またエアコンスイッチのオン・オフの状態及びエアコン設定温度からドライバのエアコン20に対する要求を認識し,エアコン20の目標制御値(温度,風量,湿度等)を演算する。そして,演算した第2パワーユニット3rの各部の目標制御値とエアコン20の目標制御値とに基づいて,第2パワーユニット3rの運転判定を行い,前記第2モータ用ECU26,補助モータ用ECU28及びエアコン用ECU30に司令信号を出力する。
【0023】
MG−ECU22が行う第2パワーユニット3rの運転判定には,図5に示すように,7パターンがある。こゝで,パターン4及び7においてモータ効率マップ(図8)による判定制御が必要であり,それについて以下に説明する。
【0024】
第2パワーユニット3rの目標トルク値を,総合モータ効率が最も高い割合で第2モータ10及び補助モータ15に配分することが重要であり,その配分の算出方法を説明する。
【0025】
先ず,第2モータ10から後輪2r,2rに与える車軸トルクTrr 及び補助モータ15から後輪2r,2rに与える車軸トルクTsubを求める。
【0026】
Trr =Trrmot×ηrrmot ×irr ×ηgbox
Tsub=Tsubmot ×ηsubmot×isub×ηsubg×irr ×ηgbox
但し,Trrmot・・・・第2モータ10の出力トルク
Tsubmot ・・・補助モータ15の出力トルク
ηrrmot ・・・第2モータ10の効率
ηsubmot・・・補助モータ15の効率
irr ・・・・・減速装置11の減速比
isub・・・・・補助減速ギヤ列18の減速比
ηgbox・・・・減速装置11の伝達効率
ηsubg・・・・補助減速ギヤ列18の伝達効率
[目標トルクと各パラメータとの関係]
後輪2r,2rの目標トルク(Trt)と,第2モータ10及び補助モータ15の出力トルク,電流及び効率との関係を次のように整理する。
【0027】
Trt =Trr+Tsub
Trr =Trrmot×irr ×ηgbox
Tsub=Tsubmot ×isub×ηsubg×irr ×ηgbox
Trrmot=E×Irr ×ηrrmot
Tsubmot =E×Isubmot ×ηsubmot
但し,E・・・・・第2モータ10及び補助モータ15への供給電圧
Irr ・・・・第2モータ10への供給電流
Isubmot ・・補助モータ15への供給電流
[第2モータ10のトルク設定]
基本的には,第2モータ10の出力軸10a上でのトルク効率から判定する。
【0028】
上式を変形して,
Trt =A×(Irr×ηrrmot + Isubmot ×ηsubmot×B)
上式中,A=E×irr × ηgbox
B=isub×ηsubg
こゝで,第2モータ10側の電流値及び補助モータ15側の電流値の総和(Irrmot + Isubmot)が最小になるようにする。
[モータ効率マップ(図8)からのトルク設定(第2モータ10の出力軸10a上の効率で判定する。)]
第2モータ10及び補助モータ15の効率と,補助減速ギヤ列18の減速比と,伝達効率の積から判定する。
【0029】
図7のS領域・・・・ηsubmot ≧ 1/B × ηrrmot
S領域は,補助モータ15の効率が良い場合(例えば図7中の点P参照)であり,モータ効率マップ(図8)から補助モータ15の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ15のトルクの不足分を第2モータ10のトルクで補う。
【0030】
図7のM領域・・・・ηsubmot < 1/B × ηrrmot
M領域は第2モータ10の効率が良い場合であり,モータ効率マップ(図8)から第2モータ10の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ10のトルクの不足分を補助モータ15のトルクで補う。
【0031】
尚,図7において,S領域の面積がM領域のそれより大きいことは,補助モータ15のトルクを最大に設定する頻度が高いことを意味する。
【0032】
図8は車速に対する各モータの駆動トルクの特性を示すモータ効率マップであり,図中の線Mは第2モータ10の特性,線Sは補助モータ15の特性,線MSは両モータ10,15の合算特性を示す。同図において通常走行時の運転点の一例について説明すると,例えば,図8に示す低車速Vでの運転時のように,後輪2r,2rの必要トルクが,そのときの補助モータ15の最大トルクより大きく且つ第2モータ10の最大トルクより小さい場合には,補助モータ15の最大トルクに,不足分を第2モータ10のトルクで補うようにして両モータ10,15を作動することにより,総合モータ効率を最良に維持することができる。
【0033】
尚,自動車の前後輪駆動装置の総合運転制御は,図6より理解し得るであろう。
【0034】
これまでの制御手順を図9及び図10に示す制御フローチャートにより説明する。
【0035】
図9において,第1ステップS1でエアコン20の作動要求の有無を判断し,YES時には第2ステップS2に進みで後輪2r,2rのトルク要求の有無を判断し,NO時には第3ステップS3に進みでエアコン20のトルクの目標値を設定し,次に第4ステップS4に進み,補助モータ15を作動してエアコン20のコンプレッサを駆動した後,第5ステップS5でクラッチ17を接続状態にする。
【0036】
また前記第2ステップS2でYESと判断されると,第6ステップS6に進んで後輪2r,2rのトルクとエアコン20のトルクとの和の目標値を設定し,次に第7ステップS7に進んで前進走行が否かを判断し,YES時には,図10の第12ステップS12に移行し,モータ効率マップ(図8)から車速に対応した第2モータ10及び補助モータ15のトルク配分比を算出し,そして第13ステップS13に進んでηsubmot ≧ 1/B × ηrrmot を判定し,YES時,即ち前記S領域(図7)と判定されると,第14ステップS14で補助モータ15に最大トルクを発生させ,そして第15ステップS15でクラッチ17を接続状態にし,次に第16ステップS16で,補助モータ15のトルク不足分(目標トルク値−補助モータ15の最大トルク)だけ第2モータ10にトルクを発生させる。
【0037】
第13ステップS13でNOと判定されたとき,即ち前記M領域(図7)と判定されると,第17ステップS17に進み,目標トルク値が第2モータ10のトルクより大きいか否かを判定し,YES時,即ち第2モータ10のトルク不足時には第18ステップS18に進んで第2モータ10のトルクの不足分を補うように補助モータ15を作動させ,そして第19ステップS19でクラッチ17を接続状態にする。
【0038】
また第17ステップS17でNOと判定されたとき,即ち第2モータ10のトルクで充分と判定されると,第20ステップS20へ進み,第2モータ10のみを作動状態にする。
【0039】
図9に戻り,前記第7ステップS7でNOと判定されたとき,即ち後進と判定されたときは,第8ステップS8に進んで,クラッチ17を遮断状態にすると共に補助モータ15を作動してエアコン20を駆動しながら,第2モータ10を後進方向に作動させる。即ち,後進時には,補助モータ15はエアコン20の作動にのみ関与する。
【0040】
前記第1ステップS1でNOと判定されたときは,第10ステップS10に進んで後輪2r,2rのトルク要求の有無を判定し,YES時には第11ステップS11に進んで後輪トルクの目標値を設定し,次いで図10の第12ステップS12に移行し,その後は前述の通りである。
【0041】
以上のように,第2パワーユニット3rの目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ10及び補助モータ15に配分するに当たり,後輪2r,2rの目標トルクが,補助モータ15の効率が良いS領域にあるか,又は第2モータ10の効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップ(図8)から補助モータ15の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ15のトルクの不足分を第2モータ10のトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップ(図8)から第2モータ10の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ10のトルクの不足分を補助モータ15のトルクで補うようにしたので,常に,総合効率の高い状態で第2モータ10及び補助モータ15を作動させることになり,消費電力の節減を図ることができる。
【0042】
次に,図11及び図12示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0043】
この第2実施形態は,中間軸16に,1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤより小径の補助出力ギヤ35を取り付け,これを1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤに噛合させた点,並びに補助モータ15を,第2モータ10の軸方向投影面内に配置した点を除けば,前実施形態と同様の構成であり,図11及び図12中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0044】
この第2実施形態によれば,補助モータ15を,第2モータ10の軸方向投影面内に配置し得るので,特に,第2パワーユニット3rの前後方向寸法L1(図12参照)の短縮化が可能になる。
【0045】
最後に,図13及び図14に示す本発明の第3実施形態について説明する。
【0046】
この第3実施形態は,補助モータ15を,第2モータ10の周囲にそれと平行に隣接配置し,中間軸16に,1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤより小径の補助出力ギヤ35を取り付け,これをアイドルギヤ36を介して1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤに噛合させた点を除けば,前記第1実施形態と前実施形態と同様の構成であり,図13及び図14中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0047】
この第3実施形態によれば,第2モータ10周りへの補助モータ15の隣接配置により,特に,第2パワーユニット3rの軸方向寸法L2(図13参照)の短縮化が可能になる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,補助モータ15は,減速装置11に連結することもできる。またクラッチ17としては,電磁クラッチ,油圧クラッチ等,その形式を問わず使用可能である。また補助モータ15のエアコン20に対する駆動系に一方向クラッチを設け,車両の後進時には,エアコン20に干渉されることなく,補助モータ15を後進側に作動させてそのトルクを第2モータ10の後進トルクに合算させ得るようにすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・・・前後輪駆動装置
2f・・・・・・前輪
2r・・・・・・後輪
3f・・・・・・第1パワーユニット
3r・・・・・・第2パワーユニット
10・・・・・・モータ(第2モータ)
10a・・・・・同モータの出力軸
11・・・・・・減速装置
15・・・・・・補助モータ
15a・・・・・同モータの出力軸
17・・・・・・クラッチ
20・・・・・・エアコンデショナ
【技術分野】
【0001】
本発明は,前輪を駆動する第1パワーユニットと,後輪を駆動する第2パワーユニットとを備え,その第2パワーユニットを,モータと,このモータの出力軸の出力を後輪に伝達する減速装置とで構成した,自動車の前後輪駆動装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,かゝる自動車の前後輪駆動装置において,第1パワーユニットの作動状態に関係なく,エアコンディショナのコンプレッサを駆動し得るように,モータ及び後輪間の伝動経路にクラッチを介装し,このクラッチ及びモータ間の伝動経路に,モータの出力により駆動されるエアコンディショナのコンプレッサを連結してなるものが,例えば特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,上記従来のものでは,後輪駆動用の第2パワーユニットのモータが,エアコンディショナ用のコンプレッサの駆動をも負担することで,大型化するを余儀なくされ,このためスペース上の理由から第2パワーユニットの車体への搭載性が悪化する傾向がある。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,後輪駆動用の第2パワーユニットのモータの小型化を可能にして,第2パワーユニットのコンパクト化を図り,第2パワーユニットの車体への搭載性を良好にし得る自動車の前後輪駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,前輪を駆動する第1パワーユニットと,後輪を駆動する第2パワーユニットとを備え,その第2パワーユニットを,モータと,このモータの出力軸の出力を後輪に伝達する減速装置とで構成した,自動車の前後輪駆動装置において,後輪に,前記モータより小型の補助モータの出力軸をクラッチを介して連結すると共に,前記補助モータの出力軸にエアコンディショナのコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチの接続により,前記モータ及び補助モータの出力を合算して後輪に伝達するようにしたことを第1の特徴とする。尚,前記モータは,後述する本発明の実施形態中の第2モータ10に対応する。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記減速装置を,前記モータの出力回転を減速して負荷側に伝達する減速装置と,この減速装置の出力を左右の後輪に分配する差動装置とで構成し,前記モータの出力軸に前記補助モータをクラッチを介して連結したことを第2の特徴とする。尚,前記差動装置は,後述する本発明の実施形態中の第2差動装置12に対応する。
【0008】
さらに本発明は,第2の特徴に加えて,第2パワーユニットの目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ及び補助モータに配分すべく,後輪の目標トルクが,補助モータの効率が良いS領域にあるか,又は第2モータの効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップから補助モータの効率点が最大になるトルクを設定して,補助モータのトルクの不足分を第2モータのトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップから第2モータの効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータのトルクの不足分を補助モータのトルクで補うようにしたことを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,クラッチの接続により,エアコンディショナのコンプレッサを駆動し得る補助モータの出力トルクを第2モータの出力トルクに合算させることで,後輪の駆動力を効果的に増強することができ,自動車の不整地に対する走破性を高めることができる。したがって,補助モータを備えた分,第2モータの小型化,特に小径化が可能となり,第2パワーユニット全体のコンパクト化に寄与し,第2パワーユニットの車体への搭載性の向上をもたらすことができる。またクラッチの遮断により,補助モータを単独でエアコンディショナを自由に作動することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴によれば,モータ及び補助モータは,それぞれの出力トルクを後輪に伝達する減速装置を共用することになり,第2パワーユニットのコンパクト化に一層寄与し得る。
【0011】
本発明の第3の特徴によれば,常に,総合効率の高い状態で第2モータ及び補助モータを作動させることになり,消費電力の節減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車の前後輪駆動装置の概要平面図。
【図2】図1の2矢視図。
【図3】前記前後輪駆動装置の電子制御ブロック図。
【図4】前記前後輪駆動装置中の第2パワーユニット系を主体にした詳細な電子制御ブロック図。
【図5】前記第2パワーユニットの運転制御表。
【図6】前記前後輪駆動装置の総合運転制御表
【図7】前後輪駆動装置の第2モータ及び補助モータの効率領域線図。
【図8】モータ効率マップ(車速に対する第2モータ及び補助モータの駆動トルク,並びに総合トルクの特性線図)。
【図9】前記第2パワーユニットの制御用フローチャート。
【図10】図7の制御フローチャートの一部に続くフローチャート。
【図11】本発明の第2実施形態を示す,図1との対応図。
【図12】図11の12矢視図。
【図13】本発明の第3実施形態を示す,図1との対応図。
【図14】図13の14矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
先ず,図1〜図10に示す本発明の第1実施形態の説明より始める。
【0015】
図1及び図2において,自動車の前後輪駆動装置1は,左右一対の前輪2f,2fを駆動する第1パワーユニット3fと,左右一対の後輪2r,2rを駆動する第2パワーユニット3rとを備える。第1パワーユニット3fは,内燃機関4と,この内燃機関4の出力側に連結される,発電及び回生ブレーキ機能を持つ第1モータ5と,この第1モータ5の回転を変速して負荷側に伝達するベルト式無段変速機6と,この変速機6の出力を左右の前輪2f,2fに分配する第1差動装置7とよりなっている。
【0016】
一方,第2パワーユニット3rは,発電及び回生ブレーキ機能を持つ第2モータ10と,この第2モータ10の出力軸10aの回転を減速して負荷側に伝達する減速装置11と,この減速装置11の出力を左右の後輪2r,2rに分配する第2差動装置12とを備える。減速装置11は,第2モータ10の出力軸10aの回転を一段減速する1次減速ギヤ列11aと,この1次減速ギヤ列11aの従動ギヤの回転をもう一段減速して第2差動装置12に伝達する2次減速ギヤ列11bとよりなっており,2次減速ギヤ列11bの従動ギヤの一側面に第2差動装置12のデフケース12aが一体的に連結される。2次減速ギヤ列11bは,第2モータ10及び1次減速ギヤ列11a間に配置される。
【0017】
第2パワーユニット3rは,更に,前記第2モータ10と共に,前記減速装置11及び第2差動装置12を介して後輪2r,2rを駆動し得る,第2モータ10よりも小型の補助モータ15を備える。この補助モータ15の出力軸15aは,同軸上に並ぶ中間軸16,クラッチ17及び補助減速ギヤ列18を介して第2モータ10の出力軸10aに連結され,クラッチ17の接続時,補助モータ15の出力軸15aの回転を一段減速して第2モータ10の出力軸10aに伝達し得るようになっている。また補助モータ15の出力軸15aには,エアコンディショナ(以下,単にエアコンという。)20のコンプレッサが直結される。補助減速ギヤ列18は,第2モータ10及び1次減速ギヤ列11a間に配置される。
【0018】
而して,第1及び第2パワーユニット3f,3rの同時作動により前輪2f,2f及び後輪2r,2rの4輪を同時に駆動することができる。その際,特に,第2パワーユニット3rの作動には,次の三態様がある。
(1)クラッチ17を遮断状態にして,第2モータ10の出力のみで後輪2r,2rを駆動する態様。
(2)クラッチ17を遮断状態にして,第2モータ10の出力のみで後輪2r,2rを駆動しながら,補助モータ15の作動によりエアコン20のコンプレッサを単独で自由に駆動する態様。
(3)クラッチ17を接続状態にして,第2モータ10及び補助モータ15の合算した出力により後輪2r,2rを駆動すると共に,エアコン20のコンプレッサを駆動する態様。
【0019】
上記(3)の態様によれば,エアコン20のコンプレッサを駆動し得る補助モータ15の出力を第2モータ10の出力に合算させることで,後輪2r,2rの駆動力を効果的に増強することができ,自動車の不整地に対する走破性を高めることができる。したがって,補助モータ15を備えた分,第2モータ10の小型化,特に小径化が可能となり,第2パワーユニット3r全体のコンパクト化に寄与し,第2パワーユニット3rの車体への搭載性の向上をもたらす。
【0020】
また第2モータ10を減速装置11を介して後輪に連結し,補助モータ15を第2モータ10の出力軸10aにクラッチ17を介して連結したことで,第2モータ10及び補助モータ15は,それぞれの出力トルクを後輪2r,2rに伝達する減速装置11を共用することになり,第2パワーユニット3rのコンパクト化に寄与し得る。
【0021】
図3において,MG−ECU22は,それに入力される車両の各種運転情報23に基づいて,目標トルクの設定及びエアコン20の目標制御量(温度,風量等)の設定をした後,運転パターンの判定を行い,次いでモータ効率マップ(図8)による判定制御,クラッチ17の切り換え及びエアコン20の作動判定を統括的に行う。その結果に基づき,第1モータ用ECU24は,第1PDU25を介して第1モータ5の駆動及び回生の制御を行い,第2モータ用ECU26は,第2PDU27を介して第2モータ10の駆動及び回生の制御を行い,補助モータ用ECU28は,第3PDU29を介して補助モータ15の駆動の制御を行い,変速用ECU38は,変速機6の変速制御を行う。またMG−ECU22は,前記判定結果に基づきクラッチ17の接続及び遮断を制御する。さらにエアコン用ECU30は,MG−ECU22からの司令信号により,エアコン20のコンプレッサの作動を制御し,機関用ECU31は,MG−ECU22からの司令信号により第1パワーユニット3fの内燃機関4における燃料噴射量や点火時期を制御し,バッテリ用ECU32は,MG−ECU22からの司令信号により図示しないバッテリの充放電を制御する。
【0022】
図4により,MG−ECU22による第1モータ5,第2モータ10及び補助モータ15の制御を更に詳しく説明する。MG−ECU22は,アクセルペダル開度やブレーキスイッチのオン・オフの状態等からドライバの加減速要求を認識し,また車速や機関回転数,車両の加減速度等の運転情報23を認識し,これら認識に基づいて,車両の要求総合トルクと,前輪2f,2f及び後輪2r,2rへのトルク配分割合と,変速機6の変速位置とを演算し,そして第1パワーユニット3fの各部の制御値(内燃機関4の燃料噴射量,点火時期,第1モータ5の目標トルク値,変速機6の変速位置等)と,第2パワーユニット3rの各部の目標制御値(第2モータ10及び補助モータ15の目標トルク値等)を演算する。またエアコンスイッチのオン・オフの状態及びエアコン設定温度からドライバのエアコン20に対する要求を認識し,エアコン20の目標制御値(温度,風量,湿度等)を演算する。そして,演算した第2パワーユニット3rの各部の目標制御値とエアコン20の目標制御値とに基づいて,第2パワーユニット3rの運転判定を行い,前記第2モータ用ECU26,補助モータ用ECU28及びエアコン用ECU30に司令信号を出力する。
【0023】
MG−ECU22が行う第2パワーユニット3rの運転判定には,図5に示すように,7パターンがある。こゝで,パターン4及び7においてモータ効率マップ(図8)による判定制御が必要であり,それについて以下に説明する。
【0024】
第2パワーユニット3rの目標トルク値を,総合モータ効率が最も高い割合で第2モータ10及び補助モータ15に配分することが重要であり,その配分の算出方法を説明する。
【0025】
先ず,第2モータ10から後輪2r,2rに与える車軸トルクTrr 及び補助モータ15から後輪2r,2rに与える車軸トルクTsubを求める。
【0026】
Trr =Trrmot×ηrrmot ×irr ×ηgbox
Tsub=Tsubmot ×ηsubmot×isub×ηsubg×irr ×ηgbox
但し,Trrmot・・・・第2モータ10の出力トルク
Tsubmot ・・・補助モータ15の出力トルク
ηrrmot ・・・第2モータ10の効率
ηsubmot・・・補助モータ15の効率
irr ・・・・・減速装置11の減速比
isub・・・・・補助減速ギヤ列18の減速比
ηgbox・・・・減速装置11の伝達効率
ηsubg・・・・補助減速ギヤ列18の伝達効率
[目標トルクと各パラメータとの関係]
後輪2r,2rの目標トルク(Trt)と,第2モータ10及び補助モータ15の出力トルク,電流及び効率との関係を次のように整理する。
【0027】
Trt =Trr+Tsub
Trr =Trrmot×irr ×ηgbox
Tsub=Tsubmot ×isub×ηsubg×irr ×ηgbox
Trrmot=E×Irr ×ηrrmot
Tsubmot =E×Isubmot ×ηsubmot
但し,E・・・・・第2モータ10及び補助モータ15への供給電圧
Irr ・・・・第2モータ10への供給電流
Isubmot ・・補助モータ15への供給電流
[第2モータ10のトルク設定]
基本的には,第2モータ10の出力軸10a上でのトルク効率から判定する。
【0028】
上式を変形して,
Trt =A×(Irr×ηrrmot + Isubmot ×ηsubmot×B)
上式中,A=E×irr × ηgbox
B=isub×ηsubg
こゝで,第2モータ10側の電流値及び補助モータ15側の電流値の総和(Irrmot + Isubmot)が最小になるようにする。
[モータ効率マップ(図8)からのトルク設定(第2モータ10の出力軸10a上の効率で判定する。)]
第2モータ10及び補助モータ15の効率と,補助減速ギヤ列18の減速比と,伝達効率の積から判定する。
【0029】
図7のS領域・・・・ηsubmot ≧ 1/B × ηrrmot
S領域は,補助モータ15の効率が良い場合(例えば図7中の点P参照)であり,モータ効率マップ(図8)から補助モータ15の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ15のトルクの不足分を第2モータ10のトルクで補う。
【0030】
図7のM領域・・・・ηsubmot < 1/B × ηrrmot
M領域は第2モータ10の効率が良い場合であり,モータ効率マップ(図8)から第2モータ10の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ10のトルクの不足分を補助モータ15のトルクで補う。
【0031】
尚,図7において,S領域の面積がM領域のそれより大きいことは,補助モータ15のトルクを最大に設定する頻度が高いことを意味する。
【0032】
図8は車速に対する各モータの駆動トルクの特性を示すモータ効率マップであり,図中の線Mは第2モータ10の特性,線Sは補助モータ15の特性,線MSは両モータ10,15の合算特性を示す。同図において通常走行時の運転点の一例について説明すると,例えば,図8に示す低車速Vでの運転時のように,後輪2r,2rの必要トルクが,そのときの補助モータ15の最大トルクより大きく且つ第2モータ10の最大トルクより小さい場合には,補助モータ15の最大トルクに,不足分を第2モータ10のトルクで補うようにして両モータ10,15を作動することにより,総合モータ効率を最良に維持することができる。
【0033】
尚,自動車の前後輪駆動装置の総合運転制御は,図6より理解し得るであろう。
【0034】
これまでの制御手順を図9及び図10に示す制御フローチャートにより説明する。
【0035】
図9において,第1ステップS1でエアコン20の作動要求の有無を判断し,YES時には第2ステップS2に進みで後輪2r,2rのトルク要求の有無を判断し,NO時には第3ステップS3に進みでエアコン20のトルクの目標値を設定し,次に第4ステップS4に進み,補助モータ15を作動してエアコン20のコンプレッサを駆動した後,第5ステップS5でクラッチ17を接続状態にする。
【0036】
また前記第2ステップS2でYESと判断されると,第6ステップS6に進んで後輪2r,2rのトルクとエアコン20のトルクとの和の目標値を設定し,次に第7ステップS7に進んで前進走行が否かを判断し,YES時には,図10の第12ステップS12に移行し,モータ効率マップ(図8)から車速に対応した第2モータ10及び補助モータ15のトルク配分比を算出し,そして第13ステップS13に進んでηsubmot ≧ 1/B × ηrrmot を判定し,YES時,即ち前記S領域(図7)と判定されると,第14ステップS14で補助モータ15に最大トルクを発生させ,そして第15ステップS15でクラッチ17を接続状態にし,次に第16ステップS16で,補助モータ15のトルク不足分(目標トルク値−補助モータ15の最大トルク)だけ第2モータ10にトルクを発生させる。
【0037】
第13ステップS13でNOと判定されたとき,即ち前記M領域(図7)と判定されると,第17ステップS17に進み,目標トルク値が第2モータ10のトルクより大きいか否かを判定し,YES時,即ち第2モータ10のトルク不足時には第18ステップS18に進んで第2モータ10のトルクの不足分を補うように補助モータ15を作動させ,そして第19ステップS19でクラッチ17を接続状態にする。
【0038】
また第17ステップS17でNOと判定されたとき,即ち第2モータ10のトルクで充分と判定されると,第20ステップS20へ進み,第2モータ10のみを作動状態にする。
【0039】
図9に戻り,前記第7ステップS7でNOと判定されたとき,即ち後進と判定されたときは,第8ステップS8に進んで,クラッチ17を遮断状態にすると共に補助モータ15を作動してエアコン20を駆動しながら,第2モータ10を後進方向に作動させる。即ち,後進時には,補助モータ15はエアコン20の作動にのみ関与する。
【0040】
前記第1ステップS1でNOと判定されたときは,第10ステップS10に進んで後輪2r,2rのトルク要求の有無を判定し,YES時には第11ステップS11に進んで後輪トルクの目標値を設定し,次いで図10の第12ステップS12に移行し,その後は前述の通りである。
【0041】
以上のように,第2パワーユニット3rの目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ10及び補助モータ15に配分するに当たり,後輪2r,2rの目標トルクが,補助モータ15の効率が良いS領域にあるか,又は第2モータ10の効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップ(図8)から補助モータ15の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ15のトルクの不足分を第2モータ10のトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップ(図8)から第2モータ10の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ10のトルクの不足分を補助モータ15のトルクで補うようにしたので,常に,総合効率の高い状態で第2モータ10及び補助モータ15を作動させることになり,消費電力の節減を図ることができる。
【0042】
次に,図11及び図12示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0043】
この第2実施形態は,中間軸16に,1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤより小径の補助出力ギヤ35を取り付け,これを1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤに噛合させた点,並びに補助モータ15を,第2モータ10の軸方向投影面内に配置した点を除けば,前実施形態と同様の構成であり,図11及び図12中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0044】
この第2実施形態によれば,補助モータ15を,第2モータ10の軸方向投影面内に配置し得るので,特に,第2パワーユニット3rの前後方向寸法L1(図12参照)の短縮化が可能になる。
【0045】
最後に,図13及び図14に示す本発明の第3実施形態について説明する。
【0046】
この第3実施形態は,補助モータ15を,第2モータ10の周囲にそれと平行に隣接配置し,中間軸16に,1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤより小径の補助出力ギヤ35を取り付け,これをアイドルギヤ36を介して1次減速ギヤ列11aの駆動ギヤに噛合させた点を除けば,前記第1実施形態と前実施形態と同様の構成であり,図13及び図14中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0047】
この第3実施形態によれば,第2モータ10周りへの補助モータ15の隣接配置により,特に,第2パワーユニット3rの軸方向寸法L2(図13参照)の短縮化が可能になる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,補助モータ15は,減速装置11に連結することもできる。またクラッチ17としては,電磁クラッチ,油圧クラッチ等,その形式を問わず使用可能である。また補助モータ15のエアコン20に対する駆動系に一方向クラッチを設け,車両の後進時には,エアコン20に干渉されることなく,補助モータ15を後進側に作動させてそのトルクを第2モータ10の後進トルクに合算させ得るようにすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・・・前後輪駆動装置
2f・・・・・・前輪
2r・・・・・・後輪
3f・・・・・・第1パワーユニット
3r・・・・・・第2パワーユニット
10・・・・・・モータ(第2モータ)
10a・・・・・同モータの出力軸
11・・・・・・減速装置
15・・・・・・補助モータ
15a・・・・・同モータの出力軸
17・・・・・・クラッチ
20・・・・・・エアコンデショナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(2f)を駆動する第1パワーユニット(3f)と,後輪(2r)を駆動する第2パワーユニット(3r)とを備え,その第2パワーユニット(3r)を,モータ(10)と,このモータ(10)の出力軸(10a)の出力を後輪(2r)に伝達する減速装置(11)とで構成した,自動車の前後輪駆動装置において,
後輪(2r)に,前記モータ(10)より小型の補助モータ(15)の出力軸(15a)をクラッチ(17)を介して連結すると共に,前記補助モータ(15)の出力軸(10a)にエアコンディショナ(20)のコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチ(17)の接続により,前記モータ(10)及び補助モータ(15)の出力を合算して後輪(2r)に伝達するようにしたことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の前後輪駆動装置において,
前記減速装置(11)を,前記モータ(10)の出力回転を減速して負荷側に伝達する減速装置(11)と,この減速装置(11)の出力を左右の後輪(2r)に分配する差動装置(12)とで構成し,前記モータ(10)の出力軸(10a)に前記補助モータ(15)をクラッチ(17)を介して連結したことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の前後輪駆動装置において,
第2パワーユニット(3r)の目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ(10)及び補助モータ(15)に配分すべく,後輪(2r)の目標トルクが,補助モータ(15)の効率が良いS領域にあるか,又は第2モータ(10)の効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップから補助モータ(15)の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ(15)のトルクの不足分を第2モータ(10)のトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップから第2モータ(10)の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ(10)のトルクの不足分を補助モータ(15)のトルクで補うようにしたことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【請求項1】
前輪(2f)を駆動する第1パワーユニット(3f)と,後輪(2r)を駆動する第2パワーユニット(3r)とを備え,その第2パワーユニット(3r)を,モータ(10)と,このモータ(10)の出力軸(10a)の出力を後輪(2r)に伝達する減速装置(11)とで構成した,自動車の前後輪駆動装置において,
後輪(2r)に,前記モータ(10)より小型の補助モータ(15)の出力軸(15a)をクラッチ(17)を介して連結すると共に,前記補助モータ(15)の出力軸(10a)にエアコンディショナ(20)のコンプレッサを直接的に連結し,前記クラッチ(17)の接続により,前記モータ(10)及び補助モータ(15)の出力を合算して後輪(2r)に伝達するようにしたことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の前後輪駆動装置において,
前記減速装置(11)を,前記モータ(10)の出力回転を減速して負荷側に伝達する減速装置(11)と,この減速装置(11)の出力を左右の後輪(2r)に分配する差動装置(12)とで構成し,前記モータ(10)の出力軸(10a)に前記補助モータ(15)をクラッチ(17)を介して連結したことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の前後輪駆動装置において,
第2パワーユニット(3r)の目標トルク値を,総合効率が最も高い割合で第2モータ(10)及び補助モータ(15)に配分すべく,後輪(2r)の目標トルクが,補助モータ(15)の効率が良いS領域にあるか,又は第2モータ(10)の効率が良いM領域にあるかを判断し,S領域時には,モータ効率マップから補助モータ(15)の効率点が最大になるトルクを設定し,補助モータ(15)のトルクの不足分を第2モータ(10)のトルクで補い,またM領域時には,同じくモータ効率マップから第2モータ(10)の効率点が最大になるトルクを設定して,第2モータ(10)のトルクの不足分を補助モータ(15)のトルクで補うようにしたことを特徴とする,自動車の前後輪駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−193700(P2011−193700A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59849(P2010−59849)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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