説明

自動車の前部構造

【課題】この発明は、エンジンルーム等の車体前部のサービス性、見栄えの向上を図るとともに、フェンダパネルを取外すことなく車体側フードヒンジを着脱できる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フードヒンジ10を構成するヒンジブラケット11を覆うとともに、内端から下方に延びる折返部7aを形成したフェンダパネル7を備え、ヒンジブラケット11を取付けた車体側フードヒンジ取付部から前方に所定範囲で、フェンダパネル7の内端とエプロンパネル4との間に、折返部7aが形成されていない空間40を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の前部構造に関し、特に、カウル側部のフェンダ内方にフードヒンジを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体前部のフードパネルを開閉自在に支持するフードヒンジを、車体側のカウル側部に取付け、この車体側フードヒンジの取付部をフェンダパネルで覆う構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、エンジンルーム内での作業を行う際には、ボンネットステー等を使ってフードパネルを開けたままの状態にして作業に取り掛かることが多い。しかしながら、エンジンルーム内に備えられた大型の部品を取出す作業等においては、ボンネットステーを用いてフードパネルを開けたままにしたとしても、フードパネルの後端が、エンジンルーム後部の上方に位置することになるため、フードパネルの存在により前記作業が困難となってしまう。
【0004】
そこで、近年では、フードヒンジの位置をより後方に配設し、フードパネルの回動中心をより後方にシフトさせる構造が提案されている。
【0005】
【特許文献1】実開平6−74576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フードパネルやフードヒンジの破損等が発生した場合、これらの取外しを行うことも考えられる。このような背景から、車体側フードヒンジが車体に対して着脱可能とすることが要求される。
【0007】
ここで、前記特許文献1に開示の構造においては、上述したように、車体側フードヒンジの取付部がフェンダパネルに覆われているとともに、フェンダパネルには、その内端から下方に延びる折返部が形成されている。このため、前記特許文献1に開示のフェンダパネルの場合、作業者が車体側フードヒンジを取外そうとしても、前記折返部に阻まれて、前記フードヒンジの取付部へ外部からアクセスできないという問題がある。
【0008】
従って、前記特許文献1に開示の構造においては、車体側フードヒンジの取外し作業を行う前に、フェンダパネルの取外し作業を行わなければならないという煩わしさがある。
【0009】
この発明は、エンジンルーム等の車体前部のサービス性、見栄えの向上を図るとともに、フェンダパネルを取外すことなく車体側フードヒンジを着脱できる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車の前部構造は、自動車の前部構造であって、エンジンルームの左右の側壁を形成するエプロンパネルと、前記エンジンルーム後端で前記エプロンパネル間を橋渡すように形成したカウルクロスメンバと、カウル側部の前記エプロンパネルに取付けたフードヒンジと、車体側フードヒンジを覆うとともに、内端から下方に延びる折返部を形成して前記エプロンパネルに取付けられるフェンダパネルとを備え、前記車体側フードヒンジを取付けた車体側フードヒンジ取付部から前方に所定範囲で、前記フェンダパネルの内端と前記エプロンパネルとの間に作業空間部を形成したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、前記取付部において車体側フードヒンジを着脱可能とすることで、エンジンルームにおけるサービス性を向上させることができる。さらに、前記フェンダパネルが前記車体側フードヒンジを覆っているため、車体前部の見栄えを向上させることもできる。
【0012】
さらに、前記取付部から前方に、所定範囲で作業空間部を形成することにより、前記フェンダパネルを取外さなくとも、前記折返部が形成されない部分の空間を利用して車体側フードヒンジの着脱作業を行うことが可能となる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記車体側フードヒンジ取付部近傍の側部では、上端に沿って前記カウルクロスメンバを覆うとともに、その内方側では上方に膨出する膨出部を形成して、該膨出部にて前記カウルクロスメンバを覆うカウルグリルを備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、前記膨出部が内方側に配設されていることにより、前記膨出部における歩行者保護の機能を確保できる。さらに、車体側フードヒンジの着脱作業時に用いられる工具の回動軌跡から前記膨出部を離間させることができるため、前記工具の回動スペースを確保できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記カウルグリルの膨出部に外気導入孔を設けるとともに、前記膨出部の前端及び側端に沿ってシール部材を設けたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前記空気導入孔により、車室内空調用の空気を導くことができるとともに、シール部材により、前記エンジンルームの熱気が外気導入孔に流れ込むことを抑制できる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記膨出部の側部を徐々に後退するように形成したことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、前記工具の回動スペースを確保しつつも、前記外気導入孔による外気導入の範囲を拡大させることができる。さらに、前記シール部材によるシールの範囲をより側端側に広げることができるため、シール性の悪化を抑制することもできる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記車体側フードヒンジを、フード側のヒンジ部に連結した縦壁部と、該縦壁部の下端から車外側に向かって延び、前記エプロンパネルに取付けられる横壁部とから構成したことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、車体側フードヒンジの取付部をより車外側へ配設することが可能になるため、前記作業空間部における車幅方向の幅を確保でき、前記工具の回動スペースをより広く確保することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、前記車体側フードヒンジが、前記縦壁部と前記横壁部との間に傾斜部を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、車体側フードヒンジの上下方向の剛性を向上させることができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、前記傾斜部の前端側が、上方に向かうにしたがって車両後方側に後退するように傾斜していることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、前記工具の回動スペースを広く確保することができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、前記作業空間部において、前記車体側フードヒンジ取付部の車外側に側壁を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、前記着脱作業時に車体側フードヒンジの取付用の各部品がフェンダパネル内側の奥に入り込んで取出しにくくなってしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、前記取付部において車体側フードヒンジを着脱可能とすることで、エンジンルームにおけるサービス性を向上させつつ、前記フェンダパネルを、車体側フードヒンジを覆う形状とすることで、車体前部における見栄えを向上させることができる。
さらに、前記取付部から前方に、所定範囲で作業空間部を形成することにより、前記フェンダパネルを取外さなくとも、前記折返部が形成されない部分の空間を利用して車体側フードヒンジの着脱作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1はこの発明の実施形態に係る自動車の前部構造を備えた車両の前方の斜視図であり、図2は、図1におけるA−A線矢視断面図である。なお、図中において矢印(F)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示し、矢印(IN)は車両内方、矢印(OUT)は車両外方を示す。
【0029】
図1に示す空間1は車体前部に設けられた上方に開口する開口2を、一点鎖線で示すフードパネル3により閉塞されるようにしたエンジンルームであって、エンジンルーム1は、左右側壁がエプロンパネル4により形成されており、エンジン及び、シュラウドに固定されたラジエータ装置(いずれも不図示)等が備えられる。
【0030】
なお、図1に示す部材5は、車両のサスペンション装置(不図示)を固定するためのサスペンションタワーであり、サスペンションタワー5は、エプロンパネル4の後部に設けられている。
【0031】
エプロンパネル4の上端部には、車体前後方向へ延びる断面略コ字状のエプロンレインフォースメント6が設けられており、該エプロンレインフォースメント6は、エプロンパネル4に接合固着され、エプロンパネル4とともに車体前後方向へ延びる閉断面を形成している。
【0032】
また、エプロンパネル4には、車体前部の側壁を構成するフェンダパネル7が取付けられている。フェンダパネル7は、その内端から下方に延びる折返部7aが形成されており、その下端には、車幅方向内側に延びる水平部7bが形成されている。そして、フェンダパネル7は、水平部7bの後端にて、上方に延びる板状のブラケット8にボルト9で締結されている。フェンダパネル7は、このブラケット8を介してエプロンパネル4に取付けられている。
【0033】
図1に示す部材10は、フードパネル3を回動可能に枢支させて開閉可能とするためのフードヒンジ10であり、フェンダパネル7によりフードヒンジ10のヒンジブラケット11が覆われている。本実施形態では、フェンダパネル7の内端側の、ヒンジブラケット11を覆う部位の縁部7cが、上方に凹んだ形状をなしており、折返部7a、水平部7bが形成されていない部位となっている。このため、開口15が形成され、ヒンジブラケット11の周囲は、フードパネル3の開口2側に開放された空間となっている。
【0034】
フードヒンジ10は、主に、ヒンジブラケット11とヒンジ部12とからなり、ヒンジブラケット11は、エプロンレインフォースメント6の後端部上方に設けられたカウルトップパネル20の横壁部20aに立設される。ヒンジ部12は、ピン13を介して後端が枢支される一方、先端がフードパネル3のフードインナパネル3a(図2参照)後端の側端位置で固着されている。ここで、カウルトップパネル20は、横壁部20aと、車外側において横壁部20aに対して上方に略垂直に延びる側壁部20bを備えている。
【0035】
ヒンジブラケット11は、図2に示すように、横壁部11aと、傾斜部11bと、上端近傍にピン13が取付けられ、ヒンジ部12に連結された縦壁部11cとから構成されており、横壁部11aは、縦壁部11cの下端から車外側に向けて延びている。ヒンジブラケット11は、車外側に向けて延びる横壁部11aがカウルトップパネル20の横壁部20aの取付部にて、ボルト14、14により締結されている。
【0036】
また、図1、図2に示すように、ヒンジブラケット11の取付部近傍の車内側側部には、カウルパネル21、ダッシュアッパパネル22の前方にて車幅方向に延びるカウルグリル30が配設されている。
【0037】
カウルグリル30は樹脂製のものが用いられており、エンジンルーム1後端で左右のエプロンパネル4間を橋渡すように形成された、図2に示すカウルクロスメンバ23を覆っている。カウルグリル30は、ヒンジブラケット11の取付部近傍の側部では、横壁部31により上端に沿ってカウルクロスメンバ23を覆い、前記取付部の内方側では、上方に膨出した膨出部32によりカウルクロスメンバ23を覆っている。
【0038】
横壁部31は、図1、図2に示すように、カウルトップパネル20と略同じ高さ位置に設定され、他方、膨出部32は、前後2箇所で上方に膨出する部位が形成されている。
【0039】
近年、車両と歩行者が衝突した場合、車両前部が歩行者に接触した後に、その反動で歩行者がフードパネル3上に載る際の衝撃値を低減することが求められている。本実施形態では、カウルグリル30に膨出部32を備えているため、フードパネル3の上方から荷重が加わった際には、膨出部32を車両下方へ変形させ、荷重エネルギを吸収することができる。このように、膨出部32は、衝突時における歩行者保護の機能を有している。
【0040】
また、膨出部32では、後側の前壁に複数の孔部が形成された網目状の外気導入孔33が形成され、前側上部には、膨出部32の前端及び側端に沿って車幅方向に延びるラバー製のシール部材34が配設されている。空気導入孔33は、車室内空調用の空気を導くために形成されたものである。シール部材34は、フードパネル3が閉じられた状態の時、図示のように、フードパネル3のフードインナパネル3aの下面と略隙間なく当接するようになっている。
【0041】
このような構成により、カウルグリル30の側端では、横壁部31、膨出部32の側壁でエンジンルーム1の熱気が外気導入孔33に流れ込むことを防止し、カウルグリル30の前端では、シール部材34及びフードインナパネル3aとの当接により、前記熱気が外気導入孔33に流れ込むことが抑制されている。
【0042】
また、膨出部32は、平面視で車幅方向中央において最も前方に膨出しており、車両側部に近づくにつれて徐々に後退する形状をなしている。これにより、本実施形態では、ヒンジブラケット11の周囲の空間と、膨出部32の前記後退により形成された空間とで、水平方向に大きく広がる空間40が形成されている。この空間40は、前記取付部から前方に所定範囲で、フェンダパネル7の内端と、エプロンパネル4との間に形成されている。
【0043】
ところで、空間40の下方では、図2に示すように、カウルトップパネル20がその下方でダッシュアッパパネル22に接合されており、ダッシュアッパパネル22は、その下端でエプロンパネル4に接合されている。これにより、ヒンジブラケット11(フードヒンジ10)は、間接的にエプロンパネル4に取付けられている。
【0044】
なお、カウルグリル30は、横壁部31が、ファスナー35によりカウルサイドブラケット24に固定されることで車体に取付けられている。
【0045】
図3は、図1におけるB−B線矢視断面図を示しており、ダッシュアッパパネル22は、図3に示すように、カウルパネル21とともに閉断面を形成しつつ、その前端がカウルクロスメンバ23の後端に接合されている。また、カウルクロスメンバ23は、途中でボルト25B、ナット25Nにより、カウルクロスレインフォースメント26に締結されており、その前方にて閉断面を形成している。この閉断面は、所謂カウルボックスと呼ばれる部位となる。
【0046】
なお、図3にて図示されている部材27は、フロントウインドウであり、フロントウインドウ27は、その下部にてカウルパネル21により支持、固定されている。
【0047】
ところで、本実施形態では、エンジンルーム1内に備えられた大型の部品を取出す場合や、フードパネル3やフードヒンジ10の破損等が発生した場合を考慮して、ボルト14、14により、車体に対してフードパネル3が着脱可能となっている。
【0048】
上述した作業が必要な場合、図示のものはあくまでも一例に過ぎないが、例えば、図4に示すような、ボルト14、14の頭部と嵌合可能に形成された孔部51、52を両端に有し、その間にハンドル53が形成された工具50が用いられる。
【0049】
図5は、本実施形態に係る自動車の前部構造を備えた車両の前方の平面図を示しており、フードパネル3を車体から取外す場合、作業者は、先ず、フードパネル3を開いた状態で、車両側部から工具50を持った側の手を延ばし、開口15からヒンジブラケット11の取付部にアクセスする。
【0050】
次に、作業者は、図示のように、ボルト14の頭部に工具50の孔部51を嵌合させ、工具50を図中矢印のように反時計周りに複数回回動させる。これにより、ボルト14、14の締結状態を緩め、ヒンジブラケット11、ひいてはフードパネル3を車体から取外すことができる。
【0051】
このように、フェンダパネル7の縁部7cにおいて折返部7aを形成せず、フードパネル3の開口2側に解放された空間40を形成することにより、該空間40を利用して、フェンダパネル7を取外すことなく、作業者は前記取付部に容易にアクセスし、作業を行うことができる。また、逆に、取外したフードパネル3を再び車体に取付ける際においても、フェンダパネル7を取外すことなく作業を行うことができる。
【0052】
以上より、本実施形態では、フードパネル3が着脱可能とされているため、エンジンルーム1におけるサービス性を向上させることができる。さらに、折返部7aが形成されていない部分により、前記取付部に容易にアクセスできるため、本実施形態のようにフェンダパネル7の内端を車内側に延ばしてヒンジブラケット11を覆う形状とすることができる。これにより、車体前部における見栄えを向上させることができる。
【0053】
さらに、前記取付部から前方に、工具50の回動スペースを考慮した所定の範囲で空間40が形成されているため、フェンダパネル7を取外さなくとも、図示のように、折返部7aが形成されない部分の空間40を利用してヒンジブラケット11の着脱作業を行うことが可能となる。
【0054】
ここで、カウルトップパネル20の側壁部20bは、前記取付部の車外側の側壁となっている。これにより、フェンダパネル7を取外すことなく前記作業が行えるが故に、ヒンジブラケット11の着脱作業時、ボルト14等の部品が、二点鎖線で示すようにフェンダパネル7の内側の奥に入り込んで取出しにくくなってしまうことを防止できる。
【0055】
また、膨出部32が内方側に配設されていることにより、膨出部32における歩行者保護の機能を確保できるとともに、工具50を使っての作業時、膨出部32を工具50の回動軌跡から離間させることができるため、工具50の回動スペースを確保できる。
【0056】
なお、工具50の回動スペースをより広く確保するには、図中二点鎖線で示すように、膨出部32の側端を略直角に形成することも考えられる。しかしながら、この場合、膨出部32の幅が狭まるため、歩行者保護の機能を有する範囲が狭まる他、外気導入孔33の導入量が減少し、シール部材34によるシールの範囲も狭まるという不都合がある。
【0057】
そこで、本実施形態のように、膨出部32を、車両側部に近づくにつれて徐々に後退する形状とすることで、工具50の回動スペースを確保しつつも、側端を二点鎖線で示すように直角に形成した場合に比べて外気導入孔33による外気導入の範囲を拡大させることができる。さらに、シール部材34によるシールの範囲をより側端側に広げることができるため、シール性の悪化を抑制することもできる。
【0058】
但し、工具50の回動スペースを確保する方法は、上述したものに必ずしも限定されない。例えば、工具50の回動軌跡と同じ高さ位置において、膨出部32の、工具50の回動軌跡と重なる側壁に、内方へ凹む凹部を形成し、工具50と膨出部32との干渉を回避するような構成としてもよい。
【0059】
図6は、フードヒンジ10の正面図を示しており、ヒンジブラケット11において、横壁部11aが、縦壁部11cの下端から車外側に向けて延びていることで、ヒンジブラケット11の取付部をより車外側へ配設することが可能になっている。これにより、空間40における車幅方向の幅を確保でき、工具50の回動スペースをより広く確保することができる。
【0060】
ここで、工具50の回動スペースをより広く確保しようとすると、前記取付部をより車外側へ位置させることになるが、その場合、前記取付部と縦壁部11cとの間の距離Lは大きくなる。仮に、図6の二点鎖線で示すように、傾斜部11bを形成せず、ヒンジブラケット11をL字状に形成した場合、上述したように距離Lを大きく設定すると、ヒンジブラケット11は、上下方向の剛性が低下した部材となってしまう。そこで、本実施形態では、上述したように、横壁部11aと縦壁部11cとの間に傾斜部11bを形成しており、この傾斜部11bにより、上下方向の剛性の向上を図りつつ、工具50の回動スペースを広く確保することを可能にしている。
【0061】
また、ヒンジブラケット11の剛性の向上を目的とするならば、例えば、図7の二点鎖線で示すように、縦壁部11cを備えず、車内側を傾斜部11bのみで形成することもできる。しかしながら、実線で示すように、傾斜部11b、縦壁部11cの両者を備えるほうが、工具50のハンドル53と当接する位置をより車内側とすることができる。つまり、傾斜部11b及び縦壁部11cを備えた構成とすることにより、車内側への回動スペースを広く確保することができる。
【0062】
また、傾斜部11bは、図8(a)に示すように、その前端側が上方に向かうにしたがって車両後方側に後退するように傾斜している。仮に、図8(b)に示すヒンジブラケット111のように、横壁部111aと縦壁部111cとの間の傾斜部111bが、車両後方に傾斜していない場合、ハンドル53がヒンジブラケット111に当接する位置がより前方になってしまい、工具50の回動スペースが制限されてしまうこととなる。従って、図8(a)に示す本実施形態のヒンジブラケット11のように、傾斜部11bを車体後方側に傾斜させることで、工具50の回動スペースを広く確保することができる。
【0063】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車体側フードヒンジは、ヒンジブラケット11に対応し、
以下同様に、
作業空間部は、空間40に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車の前部構造を備えた車両の前方の斜視図。
【図2】図1におけるA−A線矢視断面図。
【図3】図1におけるB−B線矢視断面図。
【図4】フードパネルの着脱作業を行うための工具を示す斜視図。
【図5】本発明の実施形態に係る自動車の前部構造を備えた車両の前方の平面図。
【図6】フードヒンジを示す正面図。
【図7】図6に示すヒンジブラケットの取付部のボルトに、図4に示す工具を嵌合させた状態を示す正面図。
【図8】ヒンジブラケットの形状と図4に示す工具の回動スペースとの関係を説明するための斜視図。
【符号の説明】
【0065】
1…エンジンルーム
4…エプロンパネル
7…フェンダパネル
7a…折返部
10…フードヒンジ
11…ヒンジブラケット
11a…横壁部
11b…傾斜部
11c…縦壁部
12…ヒンジ部
20b…側壁部
23…カウルクロスメンバ
30…カウルグリル
32…膨出部
33…外気導入孔
34…シール部材
40…空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部構造であって、
エンジンルームの左右の側壁を形成するエプロンパネルと、
前記エンジンルーム後端で前記エプロンパネル間を橋渡すように形成したカウルクロスメンバと、
カウル側部の前記エプロンパネルに取付けたフードヒンジと、
車体側フードヒンジを覆うとともに、内端から下方に延びる折返部を形成して前記エプロンパネルに取付けられるフェンダパネルとを備え、
前記車体側フードヒンジを取付けた車体側フードヒンジ取付部から前方に所定範囲で、前記フェンダパネルの内端と前記エプロンパネルとの間に作業空間部を形成した
自動車の前部構造。
【請求項2】
前記車体側フードヒンジ取付部近傍の側部では、上端に沿って前記カウルクロスメンバを覆うとともに、
その内方側では上方に膨出する膨出部を形成して、該膨出部にて前記カウルクロスメンバを覆うカウルグリルを備えた
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記カウルグリルの膨出部に外気導入孔を設けるとともに、
前記膨出部の前端及び側端に沿ってシール部材を設けた
請求項2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記膨出部の側部を徐々に後退するように形成した
請求項3記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記車体側フードヒンジを、フード側のヒンジ部に連結した縦壁部と、
該縦壁部の下端から車外側に向かって延び、前記エプロンパネルに取付けられる横壁部とから構成した
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
前記車体側フードヒンジは、前記縦壁部と前記横壁部との間に傾斜部を備える
請求項5記載の自動車の前部構造。
【請求項7】
前記傾斜部の前端側は、上方に向かうにしたがって車両後方側に後退するように傾斜している
請求項6記載の自動車の前部構造。
【請求項8】
前記作業空間部において、前記車体側フードヒンジ取付部の車外側に側壁を備えた
請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−37153(P2008−37153A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210731(P2006−210731)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】