説明

自動車用フロントフェンダの組付装置

【課題】車体に対するフロントフェンダの位置や車体のサイドパネルとフロントフェンダとの間の隙間を適確に決定し、且つ容易に取付けることができると共に、フロントフェンダの撓みを防止することができる自動車用フロントフェンダの組付装置を提供する。
【解決手段】車体のエンジンルームのフレームに整合するフレームに整合するフレーム16に、エンジンルームのフレームの前面側に形成された一対の孔を基準として挿通する基準ピン22と、フロントフェンダを位置決めするための位置決めブロック34や位置決め部40と、フェンダステイを挟持して位置決めする第一位置決め治具28と、フロントフェンダの一部を支持して位置決めする第二位置決め治具28と、フロントフェンダとサイドパネルとの段差及び隙間を決定するための第三位置決め治具30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車体にフロントフェンダを取付けるための自動車用フロントフェンダの組付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のフロントフェンダを車体に組付ける場合においては、フロントフェンダが一枚の鋼板で形成され、剛性が低く且つ撓みやすいため、治具上に載置して取付けることが困難であるので、ロボット等を用いてフロントフェンダの複数個所を支持しながら組付けを行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このようなロボットを用いたものでは、装置が大掛かりになるだけでなく、機種が大きく変化した場合にフロントフェンダの位置決めや押圧量の調整という点で追従できないものであった。そこで、多くの機種の変化にも容易に追従できるものとして、組付け治具で被組付け体であるフロントエンドモジュールを把持し、その組付け治具によって車体とフロントエンドモジュールとの位置決めを行った後、車体にフロントエンドモジュールを組付けるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、治具を用いて車体のエンジンフードにフロントフェンダを取付ける場合に、車体とフロントフェンダとの間の隙間を決定するために隙間調整部材を用いるものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平3−227784号公報
【特許文献2】特開2003−40161号公報
【特許文献3】特開平9−309460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術では、組付け治具にフロントエンドモジュールを把持するため、総重量が重くなり、助力装置を介してはいるものの、例えば、車体が常に動いている状況での組付け作業においては、治具全体が揺動した際にその後の車体に対するフロントエンドモジュールの位置決めが困難になるという課題がある。
【0006】
また、治具によるフロントエンドモジュールの位置決め把持が複数のピンによって行われているため、位置決めに手間が掛かる虞があるという課題がある。
さらに、ピンのみによってフロントエンドモジュールを把持するため、フロントエンドモジュールが撓みやすくなる虞があるという課題がある。
【0007】
そして、特許文献3の技術では、隙間調整部材がなんら他の機構と協働してエンジンフードとフロントフェンダとの間の隙間を決定するものではないため、隙間を決定するための作業が煩わしいという課題がある。
【0008】
そこで、この発明は、車体に対するフロントフェンダの位置や車体のサイドパネルとフロントフェンダとの間の隙間を適確に決定し、且つ容易に取付けることができると共に、フロントフェンダの撓みを防止することができる自動車用フロントフェンダの組付装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車体(例えば、実施形態における車体1)のエンジンルーム(例えば、実施形態におけるエンジンルーム3)のフレーム(例えば、実施形態におけるバルクヘッド164、ダッシュボードアッパ4、サイドフレーム10、ホイールハウス11、フロントアッパメンバ5)に整合するフレーム体(例えば、実施形態におけるフレーム16)を車体に位置決めした状態で、フロントフェンダ(例えば、実施形態におけるフロントフェンダ35)を前記フレーム体を介して前記車体に取付けるための自動車用フロントフェンダの組付装置(例えば、実施形態におけるフロントフェンダ組付装置15)であって、前記フレーム体に、前記車体のエンジンルームのフレームの前面側に形成された一対の孔(例えば、実施形態におけるバルクヘッド取付け孔7,7)を基準として挿通する基準ピン(例えば、実施形態における基準ピン22)
と、前記車体の側面に取付けられるフロントフェンダを位置決めするための複数の基準部材(例えば、実施形態における位置決めブロック34、位置決め部40、誘いこみガイド63、固定ガイド97、位置決めブロック109)と、該複数の基準部材のうちの一つの基準部材(例えば、実施形態における誘いこみガイド63)に隣接して設けられ、フェンダステイ(例えば、実施形態におけるフェンダステイ12)を挟持して位置決めする第一の位置決定手段(例えば、実施形態における第一位置決め治具28)と、前記複数の基準部材のうちの一つの基準部材(例えば、実施形態における固定ガイド97)に隣接して設けられ、前記フロントフェンダの一部を支持して位置決めする第二の位置決定手段(例えば、実施形態における第二位置決め治具29)と、前記複数の基準部材のうちの一つの基準部材(例えば、実施形態における位置決めブロック109)に隣接して設けられ、前記フロントフェンダとサイドパネルとの段差及び隙間を決定するための押圧部材(例えば、実施形態におけるダンパ125)と隙間決定部材(例えば、実施形態における隙間決定部材136)並びに前記フロントフェンダを前記エンジンルーム側へと押し込むサイド押圧部材(例えば、実施形態におけるダンパ120)とを備えて成る第三の位置決定手段(例えば、実施形態における第三位置決め治具30)とを備えたことを特徴とする。
このように構成することで、予め車体に自動車用フロントフェンダの組付装置を基準ピンを用いてセットした後、その自動車用フロントフェンダ組付装置を介してフロントフェンダを車体に組付けることができる。
また、複数の基準部材と第二の位置決め手段によってフロントフェンダの複数個所を位置決め、支持することができると共に、第三の位置決め手段によってフロントフェンダとサイドパネルとの段差及び隙間を決定することができる。
さらに、第一の位置決め手段によってフェンダステイを挟持して位置決めすることができる。
そして、第三の位置決め手段が備えている隙間決定部材によってフロントフェンダとサイドパネルとの間の隙間を決定することができる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、前記第二の位置決定手段は、隣接して設けられている前記基準部材と直交する位置に前記フロントフェンダの端面を押圧する移動自在な可動ガイド部材(例えば、実施形態における可動ガイド98)を備えて成ることを特徴とする。
このように構成することで、フロントフェンダの組付装置に対するずれを防止することができる。
また、フロントフェンダの端面に無理な荷重や捩れが生じることを防止できる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記第三の位置決定手段に設けた前記隙間決定部材は、前記フロントフェンダと前記サイドパネルとの隙間位置の変化に追従できるように移動自在であることを特徴とする。
このように構成することで、フロントフェンダやサイドパネルの製作精度のバラツキによる隙間位置の変化に隙間決定部材が追従することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、予め車体に自動車用フロントフェンダの組付装置を基準ピンを用いてセットした後、その自動車用フロントフェンダ組付装置を介してフロントフェンダを車体に組付けることができる。このため、組付装置等の治具によってフロントフェンダを把持した後、フロントフェンダを車体に取付けることがない。よって、作業効率を向上させることができると共に、フロントフェンダの撓みを防止することができる。
また、複数の基準部材と第二の位置決め手段によってフロントフェンダの複数個所を位置決め、支持することができると共に、第三の位置決め手段によってフロントフェンダとサイドパネルとの段差及び隙間を決定することができる。このため、フロントフェンダの車体に対する位置決めが容易にでき、作業効率を向上させることができる。
さらに、第一の位置決め手段によってフェンダステイを挟持して位置決めすることができる。このため、より正確にフロントフェンダを車体に対して位置決めを行うことができ、取付けることができる。
そして、第三の位置決め手段が備えている隙間決定部材によってフロントフェンダとサイドパネルとの間の隙間を決定することができる。このように、第三の位置決め手段と隙間決定部材とを互いに協働させることで隙間を決定するための作業を省略しつつ、隙間を決定させることができる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、自動車用フロントフェンダの組付装置に対するずれを防止することができる。このため、フロントフェンダの組付装置に対する位置決め、すなわち、フロントフェンダの車体に対する位置決めを確実なものにすることができる。
また、フロントフェンダの端面に無理な荷重や捩れが生じることを防止できる。このため自動車用フロントフェンダの組付装置に組付けることによって生じるフロントフェンダの撓みを防止することができる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、フロントフェンダやサイドパネルの製作精度のバラツキによる隙間位置の変化に隙間決定部材が追従することができる。このため、フロントフェンダとサイドパネルとの間の隙間を常に一定の間隔に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るフロントフェンダ組付装置15をセットする車体1の前部を示す斜視図である。車体1は、生産ラインを移動するコンベア上に載置され、各ステーションにおいて部品が組みつけられるものである。
尚、以下の実施形態の説明及び図中、車幅方向をX方向、車体前後方向(以下、単に前後方向という)をY方向、車体上下方向をZ方向とする。
同図に示すように、車体1の前部には一対のサイドフレーム10,10が車体1の前後方向に沿うように設けられている。このサイドフレーム10は車体1の骨格部材となるものである。サイドフレーム10の前端には車幅方向にバンパビーム13が接続され、ここにバンパ(不図示)が取付けられるようになっている。
【0016】
このバンパビーム13の裏側にはバルクヘッド164が設けられている。バルクヘッド164は、ラジエータ(不図示)を支持するものであって、車幅方向に延設されているバルクヘッドロアメンバ9と、バルクヘッドロアメンバ9の上方に配置されているバルクヘッドアッパ6と、これらバルクヘッドロアメンバ9とバルクヘッドアッパ6との間を跨るように設けられたバルクヘッドサイドステイ8及びバルクヘッドセンタステイ14とで構成されている。バルクヘッドアッパ6には左右一対のバルクヘッド取付け孔7,7が形成されている。
【0017】
サイドフレーム10の後端は、車幅方向に延設されたクロスメンバ165に支持されており、フロアパネル(不図示)の下面に接続されている。また、サイドフレーム10の後端は、サイドシル166の前端に連結されている。さらに、このサイドシル166の前端にはフロントピラーロアスチフナ167が接続され、このフロントピラーロアスチフナ167の上端にフロントピラーアッパスチフナ168が接続されている。
【0018】
また、フロントピラーアッパスチフナ168の下端には車幅方向にダッシュボードアッパ4が接続されている。このダッシュボードアッパ4の下部にはフロアパネルに連結するダッシュボードロア(不図示)が取り付けられている。さらに、フロントピラーアッパスチフナ168の下端にはフロントアッパメンバ5が接続されている。このフロントアッパメンバ5の先端にはホイールハウス11がサイドフレーム10の略中央まで延出して設けられている。したがって、主としてバルクヘッド164と、ダッシュボードアッパ4と、サイドフレーム10と、ホイールハウス11及びフロントアッパメンバ5がエンジンルーム3を区画するフレームとして構成されている。
【0019】
このエンジンルーム3の両側には、後述するフロントフェンダ35がサイドフレーム10、ホイールハウス11及びフロントアッパメンバ5を覆うように設けられている。また、前述したサイドシル166、フロントピラーロアスチフナ167及びフロントピラーアッパスチフナ168の外側には外板としてのサイドパネル2が取り付けられている。したがって、車体1の前部は、これらサイドパネル2、フロントフェンダ35及びエンジンルーム3を覆うエンジンフード(不図示)で外板を構成している。
【0020】
ここで、左右のホイールハウス11には、一対のフェンダステイ12,12がそれぞれボルト77によって締結固定されている。フェンダステイ12はフロントフェンダ35と車体1とを連結するためのものであって、車幅方向外側に延設されたX方向延設部12aと前方向に延設されたY方向延設部12bとがL字型を成すように形成されている。このフェンダステイ12のY方向延設部12bには車幅方向外側に向く取付け孔154が形成されている。
【0021】
図2に示すように、フロントフェンダ35は、車体1にセットされたフロントフェンダ組付装置15によって車体1に対する位置を決定して、車体1に取り付けられるようになっている。
フロントフェンダ35は一枚の鋼板材で形成されており、その前部は車幅方向外側に向かって膨出する湾曲形成部35cを備え、後部はフロントドア(不図示)の外面に外観上連続するものである。この湾曲形成部35cの前側縁の上下方向略中央には取付け座144が車幅方向内側に向かい、取付け面を前方に向けて設けられている。この取付け座144は、車体1の前方に設けられるヘッドライト(不図示)を取付けるためのものである。
【0022】
また、フロントフェンダ35の前部の下部角部35aには下方に向かって延出する舌片145が形成されている。舌片145の下部は車幅方向内側に屈曲しており、その先端には車幅方向外側に向いた取付け座146が下方に向かって延出するように形成されている。この取付け座146は、フェンダステイ12に締結固定される部分であって、取付け座146の略中央に取付け孔147が形成されている。フェンダステイ12は、この取付け座146とフェンダステイ12のY方向延設部12bとが互いに車幅方向で重合するように配置されている。
【0023】
フロントフェンダ35の前部の上部角部35bの上縁には取付け座88が車幅方向内側に向かって略水平に設けられている。この取付け座88には取付け孔148が形成され、取付け座88と車体1とが締結固定されるようになっている。また、フロントフェンダ35の上部角部35bの後方にもフロントフェンダ35の上縁に取付け座142が車幅方向内側に向かって略水平に設けられている(図16参照)。この取付け座142には取付け孔143が形成され、取付け座142と車体1とが締結固定されるようになっている。
【0024】
さらに、フロントフェンダ35の後縁の上下方向略中央には取付け座149が後方に向い、取付け面を車幅方向外側に向けて設けられている。この取付け座149には取付け孔150が形成され、取付け座149と車体1とが締結固定されるようになっている。そして、フロントフェンダ35のホイールアーチ部の後部下縁には取付け座151が車幅方向内側に向い、取付け面を前方に向けて設けられている。この取付け座151には取付け孔152が形成され、取付け座151と車体1とが締結固定されるようになっている。
【0025】
フロントフェンダ組付装置15は、車体1のバルクヘッドアッパ6に形成されている一対のバルクヘッド取付け孔7,7にその前部を位置決めした状態で載置し、サイドパネル2上にその後部を載置することによって車体1にセットされるようになっている。
【0026】
図3に示すように、フロントフェンダ組付装置15は、エンジンルーム3の上部を車幅方向で横断するように配置される梯子状のフレーム16を有している。
具体的にフレーム16は、車幅方向に延出する第一フレーム17と、この第一フレーム17の後方側であって車幅方向に延出する第二フレーム18とを備えている。
【0027】
第一フレーム17には、第一フレーム17と第二フレーム18との間を跨るように三つの連結バー19a,19b,19cが設けられている。これら連結バー19a,19b,19cの内、中央の連結バー19bは第一フレーム17及び第二フレーム18の略中央に配置されている。連結バー19a,19cは、バルクヘッドアッパ6に形成されたバルクヘッド取付け孔7,7の車幅方向の対応する位置に配置されている。尚、連結バー19a,19cは、フロントフェンダ組付装置15を車体1にセットする際に作業者の把持部として用いられるようになっている。
【0028】
連結バー19a,19cの前端には一対のブラケット20,20がボルト23によって締結固定されている。ブラケット20は、車体1に対するフロントフェンダ組付装置15の前部の位置決めを行うためものである。このブラケット20は、板状の部材で曲折形成されたものであって、連結バー19a,19cに支持される受座46と、受座46から前下がりに傾斜して延出する支持部47と、支持部47からさらに前方に向かって延出する舌片部21とが一体に形成されている。
【0029】
舌片部21にはバルクヘッド取付け孔7に対応する部分に基準ピン22がZ方向下方に向かって設けられている。この基準ピン22がバルクヘッド取付け孔7に挿通されることによって、車体1に対するフロントフェンダ組付装置15の前部におけるX方向、Z方向及びフロントフェンダ組付装置15全体のY方向の位置が決定されるようになっている。
【0030】
第一フレーム17の両端部よりも内側寄りには、各々第三フレーム24,24の前端部が接続され、この第三フレーム24,24の後部は第二フレーム18の両端部に接続され、後端が後方に延出している。
第三フレーム24,24の後端には、第二フレーム18の内側に斜めに跨るように補強バー25,25がそれぞれ設けられている。また、第三フレーム24,24の略中間部には、第一フレーム17の端部との間に跨る補強バー27,27がそれぞれ設けられている。
【0031】
さらに、第三フレーム24,24と第二フレーム18との連結部分と、連結バー19a,19cと第一フレーム17との連結部分との間には、これらを跨るように補強バー26,26がそれぞれ設けられている。ここで、第三フレーム24,24と第二フレーム18との連結部分には円環状に形成された吊ボルト139,139がそれぞれプレート140,140を介して設けられている。
【0032】
吊ボルト139は、不図示の助力装置とフロントフェンダ組付装置15とを連結するものである。各吊ボルト139には、ワイヤ141の一端が連結され、ワイヤ141の他端は結束されて助力装置に吊下される円環状の連結部材153が取付けられている。
ここで、助力装置とは自動車の組立ラインに設けられている設備であって、主にメインラインを移動する車体に部品や治具を運搬する際の作業者にかかる肉体的負担を軽減するための装置である。
【0033】
フロントフェンダ組付装置15の第一フレーム17の両側端には、各々第一位置決め治具28,28が設けられている。また、第三フレーム24、24と第二フレーム18との連結部分には、各々第二位置決め治具29,29が設けられている。さらに、第三フレーム24,24の後端には各々第三位置決め治具30,30がアーム31,31を介して設けられている。これら第一位置決め治具28、第二位置決め治具29、第三位置決め治具30は、フロントフェンダ35の車体1に対する位置決めを行うものである。
【0034】
アーム31は、第三フレーム24の後端、具体的には補強バー25との連結部分にボルト36によって締結固定されている第一アーム32と、第一アーム32にボルト37によって締結固定されている第二アーム33とで構成されている。
第一アーム32は、板状の部材で形成されており、この第一アーム32には位置決めブロック34が車幅方向外側に向かって設けられている。この位置決めブロック34は、フロントフェンダ35のX方向の位置決めを行うものであって、位置決めブロック34の先端34aの外縁にフロントフェンダ35の内面が当接するようになっている。
【0035】
第二アーム33は、板状の部材で曲折形成されたものであって、第一アーム32に支持される第一受座41と、第一受座41から後上がりに傾斜している第一傾斜部42と、第一傾斜部42から傾斜角度を変えて後方に延出する第二傾斜部43と、第二傾斜部43から後方に向かって延出する支持部44と、支持部44から後上がりに傾斜し、第三位置決め治具30が締結固定される第二受座45とが一体に形成されている。
【0036】
ここで、第二アーム33において、第二傾斜部43と支持部44には複数の孔39が第二アーム33の長手方向に沿って連設され、軽量化を図っているが、この複数の孔39の内の一つには円環状に形成された位置決め部40が車幅方向外側に向かって取付けられている。この位置決め部40は、フロントフェンダ35のX方向の位置決めを行うものであって、位置決め部40の外周面40aにフロントフェンダ35の内面が当接するようになっている。また、位置決め部40の下方には、前述したフロントフェンダ35の取付け座142が配置されるため、位置決め部40の内径は、取付け座142の締結固定に用いられる工具(不図示)と位置決め部40とが干渉しない大きさに設定されている。
【0037】
ここで、図2に詳示するように、第三位置決め治具30が締結固定されている第二アーム33の第一受座41と支持部44との間の高さL2、並びに第一傾斜部42と第二傾斜部43の傾斜角度及び長さは、車体1のダッシュボードアッパ4に干渉しないように設定されている。つまり、フロントフェンダ組付装置15は、アーム31の形状を変更したものを用意しておけば、このアーム31を変更するだけで多種多様な車種用のフロントフェンダ組付装置15とすることが可能になる。同様に、基準ピン22が設けられたブラケット20も舌片部21と受座46との間の高さL1、並びに支持部47の傾斜角度及び長さ等を変更したものを使用することで多種多様な車種に対応できる汎用性を確保できる。
【0038】
図4〜図7は、フロントフェンダ組付装置15の左右に設けられている一対の第一位置決め治具28,28の内、車体1の左側にある第一位置決め治具28を示すものであり、図4は第一位置決め治具28とフロントフェンダ35とがセットされている状態を示す斜視図、図5は図4のA矢視図、図6、図7は図4のB矢視図である。
【0039】
図4〜図7に示すように、第一位置決め治具28は、フロントフェンダ35の下部角部35a及びフェンダステイ12の位置決めを行うものであって、第一フレーム17の端部から下方に延出しているクランク状に形成されたアーム50と、このアーム50の下部後端に設けられた車幅方向に延設するベース48とを備えている。アーム50は、第一フレーム17にボルト90によって締結固定されている。また、このアーム50には複数の孔76が形成され軽量化を図っている。
【0040】
アーム50の上下方向略中央の下寄りには、板状の部材でくの字に形成された誘いこみガイド63が車幅方向外側に向かって開くように設けられている。この誘いこみガイド63は、フロントフェンダ35の下部角部35aの位置決めを行うものであって、屈曲部分には溝64が前後方向に沿うように形成されている。下部角部35aの頂部は、この誘いこみガイド63の溝64に案内されることによって車体1に対するZ方向の位置が決定されるようになっている。
【0041】
図5に示すように、アーム50の下部後端には、位置決め爪58がベース48を介してボルト65によって締結固定されている。位置決め爪58はフェンダステイ12のY方向の位置決めを行うものであって、略L字状に形成されたブラケット66を有している。このブラケット66には、下方に向かって延出する一対の爪67,67が前後方向に並設されている。
【0042】
爪67,67は、それぞれ鉛直下方に延出する鉛直部68,68と、これら鉛直部68,68の下部から互いに離反する方向に屈曲する傾斜部69とが棒状の部材で一連に形成されたものである。これら鉛直部68,68の間の距離L3はフェンダステイ12のX方向延設部12aの厚さと略一致するように設定されている。すなわち、フェンダステイ12のX方向延設部12aは、フロントフェンダ組付装置15を車体1にセットする際、位置決め爪58の傾斜部69,69によって鉛直部68,68間に案内され、その後、鉛直部68,68間に嵌り込むことによってY方向の位置が決定されるようになっている。
【0043】
図4に示すように、アーム50の下部外面には、車体1外側から視て略T字状に形成された固定ブロック57がボルト59によって締結固定されている。固定ブロック57は、後述する可動ブロック70と共にフェンダステイ12のY方向延設部12bを挟持することによってフェンダステイ12のX方向及びZ方向の位置決めを行うものである。
【0044】
図6、図7に示すように、この固定ブロック57の下部は、外側(図6中右側)に屈曲するフェンダステイ12に対応するようにL字状に形成されたもので、各々フェンダステイ12の外面と上面とに当接する側壁57aと下壁57bとを有している。
【0045】
また、固定ブロック57の下部に設けた貫通孔には筒状に形成されたガイドパイプ61が挿入されている(図6参照)。このガイドパイプ61は、フェンダステイ12に設けられているナット71と同軸上になるように配置されている。さらに、固定ブロック57には、ガイドパイプ61の上方にガイドピン74の先端が内面側(図6中左方向)に向かって突出するように設けられている。
【0046】
固定ブロック57の内面側には可動ブロック70が固定ブロック57と対向するように配置されている。可動ブロック70は、固定ブロック57と共にフェンダステイ12のY方向延設部12bを挟持することによって、フェンダステイ12のX方向及びZ方向の位置決めを行うものである。可動ブロック70には後述するトグルレバー49がシャフト55を介して連結されており、この可動ブロック70が固定ブロック57に対して接近、離反するようにスライド可能に設けられている。可動ブロック70の下部は、フェンダステイ12の内面(図6中左側)に対応するように形成されており、各々フェンダステイ12の内面と下面とに当接する側壁70aと上壁70bとを有している。
【0047】
可動ブロック70のナット71に対応する部分には凹部72が形成されている。この凹部72は、可動ブロック70とナット71とが互いに干渉しないようにするためのものである。この凹部72に位置決めピン62が車幅方向外側に向かってナット71及びガイドパイプ61と同軸上に設けられている。
【0048】
この位置決めピン62は、フェンダステイ12に設けられたナット71に貫通し、さらに、固定ブロック57のガイドパイプ61内にスライド自在に挿通されることで、可動ブロック70、フェンダステイ12及び固定ブロック57の相対位置を確実に、且つ正確に決定すると共に、両ブロック70,57によって挟持されているフェンダステイ12のずれを防止するようになっている。
【0049】
また、可動ブロック70にはガイド孔73が形成され、このガイド孔73には固定ブロック57に設けられたガイドピン74がスライド自在に挿通されている。よって、可動ブロック70はガイドピン74に沿い、固定ブロック57に向かって正確にスライドできると共に、シャフト55を中心にして回動が規制された状態になっている。
【0050】
また、可動ブロック70の上部内面側には、凹部78が形成されている。この凹部78にはシャフト55の一端に取り付けたナット79が係止されている。一方、シャフト55の他端にはトグルレバー49が回動自在に連結されている。
【0051】
図4に示すように、トグルレバー49は、ベース48上にボルト56によって締結固定されたブラケット52を備えている。このブラケット52にレバー部53が上下方向に配置された軸Z1を中心にして車幅方向に回動自在に軸支されている。このレバー部53に前述したシャフト55の他端がリンク部材(不図示)を介して回動自在に連結されている。また、ブラケット52には筒状のシャフトサポート54が車幅方向外側に向かって設けられ、このシャフトサポート54内にシャフト55が車幅方向にスライド自在に挿通されている。
【0052】
すなわち、レバー部53を車幅方向内側(図4中矢印C方向)に向かって回動すると、シャフト55は車幅方向外側(図4中矢印E方向)に向かってシャフトサポート54内をスライドし、可動ブロック70と固定ブロック57とによってフェンダステイ12のY方向延設部12bを挟持する挟持状態になる(図7参照)。そして、固定ブロック57の側壁57aと可動ブロック70の側壁70aとによって、フェンダステイ12のX方向の位置決めが行われ、固定ブロック57の下壁57bと可動ブロックの上壁70bとによって、フェンダステイ12のZ方向の位置決めが行われるようになっている。一方、レバー部53を車幅方向外側(図4中矢印D方向)に向かって回動すると、シャフト55は車幅方向内側(図4中矢印F方向)に向かってスライドし、可動ブロック70が固定ブロック57から離反する開放状態になる(図6参照)。
【0053】
図8、図9は、フロントフェンダ組付装置15の左右に設けられている一対の第二位置決め治具29,29の内、車体1の左側の第二位置決め治具29の斜視図である。
図8、図9に示すように、第二位置決め治具29は、フロントフェンダ35の上部角部35b(図2、図3参照)の位置決めを行うものであって、板状のベース80上にトグルレバー81を備えたものである。
具体的にはベース80上にボルト85によってブラケット90が締結固定され、ベース80とブラケット90との間には一対のスペーサ93が介在している。このスペーサ93は、ベース80に対するトグルレバー81の高さを調整するためのものであって、ベース80上にボルト155によって締結固定されている。
【0054】
ブラケット90の車幅方向外側にはレバー部82が前後方向に配置された軸Y1を中心にして車幅方向に回動自在に軸支されている。
また、ブラケット90には、軸Y1の車幅方向内側に前後方向に沿う軸Y2を中心にして支持部材86の一端が車幅方向に回動自在に軸支されている。
【0055】
一方、支持部材86の他端には筒部95が軸Y2に略直角に設けられ、この筒部95内には棒状の位置決めピン83がナット94によって取付けられている。位置決めピン83は、フロントフェンダ35の上部角部35bにおける取付け座88をクランプ(支持)するものであって、上部角部35bの取付け座88に形成されている角孔89に挿通されるようになっている。尚、角孔89は、取付け座88上における取付け孔148の前方に形成されている。
この位置決めピン83の先端には先細り部96が形成されている。この先細り部96によってフロントフェンダ35の角孔89に位置決めピン83が滑らかに挿通するようになっている。
【0056】
また、支持部材86の長手方向略中央部分とレバー部82の長手方向略中央部分とがリンク部材84を介して連結されている。リンク部材84はコの字状に形成されており、先端側が支持部材86を挟持するようにして回動自在に連結されている一方、基端側がレバー部82に回動自在に連結されている。これにより、位置決めピン83はレバー部82に連動して移動されるようになっている。
【0057】
すなわち、図8に示すように、位置決めピン83が角孔89に挿通されていないアンクランプ状態から、レバー部82を軸Y1を中心にして車幅方向外側(図8中矢印G方向)に向かって回動すると、位置決めピン83が軸Y2を中心にして車幅方向外側(図8中矢印H方向)に向かって回動されるようになっている。そして、第二位置決め治具29はフロントフェンダ35の角孔89に位置決めピン83が挿通されたクランプ状態になる(図9参照)。
【0058】
ベース80の前部には、固定ガイド97が車幅方向外側に突出するように設けられている。この固定ガイド97は、フロントフェンダ35の上部角部35bのX方向の位置決めを行うものであって、固定ガイド97の先端97aの外縁にフロントフェンダ35の上部角部35b内面が当接するようになっている。
【0059】
また、ベース80の前部には、可動ガイド98が設けられている。可動ガイド98は、フロントフェンダ35の上部角部35bを後方(図8中矢印I方向)に向かって押圧するためのものである。可動ガイド98は、ベース80に取付けられ前後方向に延設された板状の支持部材99に、車幅方向に延設された押圧部100がスライド自在に設けられたものである。
【0060】
支持部材99上には、押圧部100を後方(図8中矢印I方向)に向かって付勢するコイルバネ102が設けられている。コイルバネ102の後端は、支持部材99にボルト103によって固定されている。一方、コイルバネ102の前端は、押圧部100に設けられたピン104に係合されている。
【0061】
押圧部100の上部角部35bに対応する部分には、上下方向に延設された押圧板101が設けられている。押圧板101の上部には前方に向かって屈曲する傾斜部105が形成されている。この傾斜部105によって、例えば、フロントフェンダ35がフロントフェンダ組付装置15にラフにセットされた場合であっても、押圧板101がフロントフェンダ35の上部角部35bに沿うようにして正確に案内されるようになっている。
【0062】
図10〜図12は、フロントフェンダ組付装置15の左右に設けられている一対の第三位置決め治具30,30の内、車体1の左側にある第三位置決め治具30を示すものであり、図10、図12は斜視図、図11は図10のO−O線に沿う縦断面図である。
図10〜図12に示すように、第三位置決め治具30は、フロントフェンダ35とサイドパネル2との間の隙間S及び段差を良好に決定するためのものであって、取付けベース106上にホルダーユニット108を備えている。この第三位置決め治具30は、フロントフェンダ35とサイドパネル2とが互いに対向している位置に配置されている。
【0063】
取付けベース106は、第二アーム33から車幅方向外側に向かって延出した状態で、第二アーム33の第二受座45上にボルト38によって締結固定されている。取付けベース106の車幅方向外側の裏面にはセットブロック119が形成されている。このセットブロック119は、車体1に対するフロントフェンダ組付装置15の後部のX方向及びZ方向の位置を決定するためのものであって、サイドパネル2に当接するようになっている。
【0064】
取付けベース106の前方には位置決めブロック109がボルト110によって締結固定されている。この位置決めブロック109は、フロントフェンダ35の後部のX方向及びZ方向の位置決めを行うものであって、位置決めブロック109の先端109aの外縁がフロントフェンダ35の上部とサイドパネル2の上部との間を跨るように当接するようになっている。
【0065】
また、取付けベース106上にはホルダーユニット108を軸支する軸受ブラケット107が設けられている。軸受ブラケット107には一対の軸受部128,128が設けられている。これら軸受部128,128の間には軸受ブラケット122が支点ピン124を介して前後方向に沿う軸Y4を中心に回動自在に設けられている。この軸受ブラケット122には取付けベース106とは反対側にホルダーユニット108がボルト129によって締結固定されている。
【0066】
ホルダーユニット108は、車体1に対してフロントフェンダ35の位置決めを行うと共にフロントフェンダ35をロックするものであって、ホルダー支持部材118と、このホルダー支持部材118にシャフト115を介して取付けられているトグルレバー111とを備えている。
ホルダー支持部材118は、軸受ブラケット122上のアングル121に外側に延出する延出部156が設けられたものであって、軸受ブラケット122にボルト129によって締結固定されている。
【0067】
延出部156の前面側には前後方向に延設されたダンパ120がブラケット157を介して設けられている。ダンパ120は、フロントフェンダ35のサイドパネル2に対する外面側の段差を良好に決定するためのものであって、フロントフェンダ35とサイドパネル2とに跨るようにして配置されている。また、このダンパ120は、ウレタンゴム等で形成されており、フロントフェンダ35やサイドパネル2への損傷を防止するようになっている。
また、延出部156にはフロントフェンダ35とは反対側の外面側にシャフト接続部130が設けられている。このシャフト接続部130にはシャフト115の一端がナット131によって連結されている。シャフト115の他端にはトグルレバー111が回動自在に連結されている。
【0068】
トグルレバー111は、ブラケット112を備えている。このブラケット112の車幅方向外側には略くの字に形成されたレバー部113が前後方向に沿う軸Y3を中心に回動自在に軸支されている。このレバー部113の屈曲部114とシャフト115の他端とが一対のリンク部材116,116を介して連結されている。リンク部材116,116は板状の部材で形成されたもので、その両端がそれぞれレバー部113とシャフト115とに回動自在に連結されている。
【0069】
ブラケット112には、レバー部113が軸支されているのと反対側にシャフトサポート117が設けられている。このシャフトサポート117内にシャフト115がスライド自在に挿通されている。
また、ブラケット112の裏面には押圧部126が設けられている。押圧部126は、フロントフェンダ35のZ方向の位置決めを行うためのものであって、ブラケット112に当接するベース158を備えている。
【0070】
このベース158には支持部材159がベース158に対して略直角に設けられている。支持部材159の下端にはアングル160が設けられている。このアングル160は、フロントフェンダ35及びサイドパネル2に対応するようにL字状に形成されている。
【0071】
このアングル16には前後方向に延設するダンパ125がフロントフェンダ35とサイドパネル2との間を跨るように設けられている。ダンパ125は、ウレタンゴム等で形成されており、押圧部126によるフロントフェンダ35及びサイドパネル2への負傷を防止するようになっている。
【0072】
このダンパ125と前述した位置決めブロック109との間の距離L4は、トグルレバー111の操作によって変化するようになっている。
すなわち、トグルレバー111のレバー部113を下方(図11中矢印H方向)に向かって回動すると、トグルレバー111のブラケット112が上方(図11中矢印J方向)に向かってスライドし、ダンパ125と第二ブロック127との間の距離L4はフロントフェンダ35の第三位置決め治具30に対応する部分の上下方向の幅L5(図10参照)と略一致するようになっている。
【0073】
一方、レバー部113を上方(図11中矢印I方向)に向かって回動すると、トグルレバー111のブラケット112が下方(図11中矢印K方向)に向かってスライドし、ダンパ125と第二ブロック127との間の距離L4は幅L5と比較して長くなる。つまり、フロントフェンダ35のサイドパネル2に対向する部分のZ方向の位置決めは、そのフロントフェンダ35の対応する部分が第二ブロック127とダンパ125に挟持される(ロックされる)ことによって初めて位置が決定するようになっている。
【0074】
尚、第三位置決め治具30がアンロック状態(図12参照)からロック状態(図10参照)へと操作される途中過程においては、アングル121に設けられたダンパ120によって、フロントフェンダ35が内側(車体1側)に向かって押圧される。これにより、取付けベース106に設けられている位置決めブロック109と、フロントフェンダ35の内面とが確実に当接され、フロントフェンダ35のX方向の位置決めが確実に行われるようになっている。
【0075】
また、ホルダー支持部材118には延出部156の車幅方向外側に舌片132がホルダーユニット108の長手方向に沿うように突出して設けられている。この舌片132には隙間決定部133がボルト134によって締結固定されている。
隙間決定部133は、フロントフェンダ35とサイドパネル2との間に隙間Sを形成するためのものであって、上面視略T字状に形成されたホルダー135内にL字状に形成された隙間決定部材136がスライド自在に設けられている。
【0076】
図13、図14に示すように、隙間決定部材136の先端は、段付の先細り形状に形成されており、第一先細り部137の先端に介挿部162が形成され、この介挿部162の先端に第二先細り部138が形成された状態になっている。
介挿部162は、フロントフェンダ35とサイドパネル2との間の隙間Sに介挿され、隙間Sを決定するものである。つまり、介挿部162の厚さL6が隙間Sとなる。また、介挿部16の先端に第二先細り部138が形成されることによって、隙間決定部材136が無理なくスライドしながらサイドパネル2とフロントフェンダ35との間に介挿部162を入れることができるようになっている。
【0077】
また、隙間決定部材136の基端側にはスプリング161が設けられ、隙間決定部材136とホルダー135とがスプリング161を介して連結された状態になっている。このスプリング161は、隙間決定部材136を前後方向後方(図13中矢印G方向)に向かって付勢するものである。
このスプリング161によって、隙間決定部材136が常にサイドパネル2側(前後方向後方)に付勢され、例えば、フロントフェンダ35とサイドパネル2との製作精度の誤差によって隙間位置が変化した場合であっても、フロントフェンダ35とサイドパネル2との間に適正な隙間Sを形成することができるようになっている。
【0078】
次に、この発明の実施形態によるフロントフェンダ35の車体1への組付け手順を説明する。
まず、助力装置(不図示)に連結部材153によって吊下されたフロントフェンダ組付装置15を作業者が把持し、車体1のエンジンルーム3上に載置する。このとき、車体1のバルクヘッドアッパ6に形成されている一対のバルクヘッド取付け孔7,7にフロントフェンダ組付装置15の基準ピン22,22を挿通することによって車体1に対するフロントフェンダ組付装置15のY方向前部におけるX方向、Y方向及びZ方向の位置が決定する。
【0079】
また、サイドパネル2上に第三位置決め治具30に設けられているセットブロック119が載置されることにより、フロントフェンダ組付装置15の後部のX方向及びZ方向の位置が決定する。このとき、フロントフェンダ組付装置15の第一位置決め治具28を開放状態(図6参照)、第二位置決め治具29をアンクランプ状態(図8参照)、第三位置決め治具30をアンロック状態(図12参照)にすべく、各トグルレバー49,81,11のレバー部53,82,113をそれぞれ開放しておく。
【0080】
車体1へのフロントフェンダ組付装置15のセットが完了すると、次に、第一位置決め治具28のトグルレバー49を操作することによって第一位置決め治具28の可動ブロック70を開放状態(図6参照)から挟持状態(図7参照)へと動作させる。すると、フェンダステイ12のY方向延設部12bが可動ブロック70と固定ブロック57とによって挟持され、フェンダステイ12のX方向及びZ方向の位置が決定する。また、フェンダステイ12のX方向延設部12aが第一位置決め治具28に設けられている位置決め爪58に嵌まり込むことによってフェンダステイ12のY方向の位置が決定する。
【0081】
尚、可動ブロック70に設けられている位置決めピン62が、フェンダステイ12に設けられたナット71及び固定ブロック57に設けられたガイドパイプ61に挿通することによって、可動ブロック70、フェンダステイ12及び固定ブロック57の相対位置を確実に、且つ正確に決定すると共に、両ブロック70,57のフェンダステイ12への挟持力を強固にし、フェンダステイ12のずれを防止している。尚、フェンダステイ12は、車体1にフロントフェンダ組付装置15がセットされるまで、仮組みの状態(ラフに固定された状態)になっている。
【0082】
次に、このフロントフェンダ組付装置15にフロントフェンダ35をセットする(図2参照)。
まず、フロントフェンダ35の上部角部35bを第二位置決め治具29に設けられている固定ガイド97の先端97aの外縁及び可動ガイド98の押圧板101に当接させる。
【0083】
また、第一アーム32に設けられた位置決めブロック34の先端34aの外縁にフロントフェンダ35の内面を当接させる(図15参照)。さらに、第二アーム33に取付けられている位置決め部40の外周面40aにフロントフェンダ35の内面を当接させる(図16参照)。すると、フロントフェンダ35の特に上部の車体1に対するX方向の位置が決定する。
一方、フロントフェンダ35の特に前部のZ方向の位置決めにおいては、第一位置決め治具28に設けられた誘いこみガイド63にフロントフェンダ35の下部角部35aの頂部が案内されることによって決定する。
【0084】
次に、第二位置決め治具29のトグルレバー81を操作することによって、第二位置決め治具29に設けられた位置決めピン83をアンクランプ状態(図8参照)からクランプ状態(図9参照)へと動作させる。すると、位置決めピン83がフロントフェンダ35を僅かに車体1側(図9中矢印M方向)へと引き込むようにして取付け座88に形成されている角孔89に挿通される。これにより、取付け座88が形成されているフロントフェンダ35の上部角部35bが位置決めピン83によって支持される。また、位置決めピン83がフロントフェンダ35の上部角部35bを僅かに車体1側に引き込むことにより、上部角部35bの内面が確実に当接し、フロントフェンダ35の上部角部35bのX方向の位置決めが確実に行われる。
【0085】
次に、第三位置決め治具30のホルダーユニット108を操作することによって、ホルダーユニット108をアンロック状態(図12参照)からロック状態(図10参照)へと動作させる。
アンロック状態からロック状態への動作手順としては、まず、ホルダーユニット108を第三位置決め治具30の軸Y4を中心にして車体1側(図12中矢印N方向)に向かって回動し、ダンパ120を車体1側に向かって押圧しつつ、隙間決定部材136をフロントフェンダ35とサイドパネル2との間の隙間Sに介挿させる。
【0086】
そして、ダンパ125をフロントフェンダ35及びサイドパネル2の下端側に移動させた後、トグルレバー111を車体1側(図11中矢印H方向)に向かって回動させることによりロック状態になる。すると、フロントフェンダ35及びサイドパネル2が共に第三位置決め治具30の位置決めブロック109とダンパ125とによって挟持される。また、ダンパ120、位置決めブロック109及びダンパ125によって、サイドパネル2に対するフロントフェンダ35の位置が良好に決定される。さらに、隙間決定部材136によって、サイドパネル2とフロントフェンダ35との間の浮間Sが良好に決定される。
【0087】
尚、フロントフェンダ35をフロントフェンダ組付装置15にセットした際のフロントフェンダ35とサイドパネル2との間の隙間Sが小さく、隙間決定部材136を隙間Sに介挿することによってフロントフェンダ35がY方向前方にずれた場合であっても、第二位置決め治具29の可動ガイド98は、コイルバネ102に抗して前方にスライドするようになっている。したがって、隙間Sは、常に適正な大きさに確保された状態になっている。
【0088】
次に、車体1にフロントフェンダ35を締結固定する。
まず、第一位置決め治具28によってフェンダステイ12を仮組み状態からボルト77,77によって増し締めする(図3、図5参照)。そして、図3に示すように、フロントフェンダ35の各取付け座149,142,88,151,146をそれぞれボルトを用いて車体1に締結固定する。
【0089】
車体1にフロントフェンダ35を締結固定した後、第一位置決め治具28のトグルレバー49を操作することによって、第一位置決め治具28の可動ブロック70を挟持状態(図7参照)から開放状態(図6参照)へと動作させる。また、第二位置決め治具29のトグルレバー81を操作することによって、第二位置決め治具29に設けられた位置決めピン83をクランプ状態(図9参照)からアンクランプ状態(図8参照)へと動作させる。さらに、第三位置決め治具30のホルダーユニット108を操作することによって、ホルダーユニット108をロック状態(図10参照)からアンロック状態(図12参照)へと動作させる。そして、フロントフェンダ組付装置15を車体1から取り外し、フロントフェンダ35の車体1への組付けが完了する。
【0090】
フロントフェンダ35の車体1への組付けが完了した後、作業者は再びフロントフェンダ組付装置15を把持し、そのフロントフェンダ組付装置15を次のフロントフェンダ35を組付ける車体1へと移動させる。
【0091】
したがって、上述の実施形態によれば、予め車体1にフロントフェンダ組付装置15をセットし、その後、フロントフェンダ組付装置15に設けられた固定ガイド97、可動ガイド98、位置決めブロック34、位置決め部40及び誘いこみガイド63にフロントフェンダ35を当接し、そして、第一位置決め治具28、第二位置決め治具29及び第三位置決め治具30のトグルレバー49,81,11を操作するだけで車体1に対するフロントフェンダ35の位置決めを行うことができる。このため、フロントフェンダ35を無理に把持することなく、フロントフェンダ35の撓みを防止すると共に、フロントフェンダ35の組付け作業効率を向上させることができる。
【0092】
また、第一位置決め治具28の固定ブロック57、可動ブロック70及び位置決め爪58によって、フェンダステイ12の位置決めが行われるため、より正確にフロントフェンダ35の車体1に対する位置決めを行い、取付けることができる。
さらに、第三位置決め治具30の第二ブロック127とダンパ125とがフロントフェンダ35とサイドパネル2とを共に挟持し、且つ第三位置決め治具30のダンパ120がフロントフェンダ35を車体1側に押圧することによって、確実にフロントフェンダ35をサイドパネル2に対して良好な位置に決定することができる。
【0093】
そして、第三位置決め治具30に設けられた隙間決定部133によって、フロントフェンダ35のサイドパネル2に対する位置決めを行いつつ、フロントフェンダ35をサイドパネル2に対して良好な隙間Sに決定することができる。このため、隙間Sを決定するためだけの作業を省略することができ、フロントフェンダ35の組付け作業を簡略化することができる。
【0094】
また、第二位置決め治具29の可動ガイド98によって、フロントフェンダ35とサイドパネル2との間の隙間Sに隙間決定部材136を介挿した際にフロントフェンダ35が前方にずれた場合であっても、フロントフェンダ35に対して無理な力や捩れを生じさせることがない。このため、フロントフェンダ組付装置15にセットすることによるフロントフェンダ35の撓みを防止することができる。
【0095】
さらに、第二位置決め治具29に設けられている可動ガイド98がフロントフェンダ35の上部角部35bを後方(図8中矢印I方向)へと押圧することによってフロントフェンダ35がY方向前方へと傾倒することを防止することができる。よって、より確実にフロントフェンダ35の位置決めを行うことができる。
【0096】
そして、第一位置決め治具28、第二位置決め治具29及び第三位置決め治具30にそれぞれトグルレバー49,81,111が設けられているため、第一位置決め治具28における挟持状態(図7参照)、第二位置決め治具29におけるクランプ状態(図9参照)、第三位置決め治具30におけるロック状態(図10参照)をそれぞれ保持することができる。
【0097】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態における車体の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフロントフェンダ組付装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるフロントフェンダ組付装置の車体への組付け状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における車体の左側の第一位置決め治具とフロントフェンダとがセットされている状態を示す斜視図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】図4のB矢視図である。
【図7】図4のB矢視図である。
【図8】本発明の実施形態における車体の左側の第二位置決め治具の斜視図である。
【図9】本発明の実施形態における車体の左側の第二位置決め治具の斜視図である。
【図10】本発明の実施形態における第三位置決め治具の斜視図である。
【図11】図10のO−O線に沿う縦断面図である。
【図12】本発明の実施形態における第三位置決め治具の斜視図である。
【図13】本発明の実施形態における隙間決定部の平面図である。
【図14】本発明の実施形態における隙間決定部の動作を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態における位置決めブロックの斜視図である。
【図16】本発明の実施形態における位置決め部の斜視図である。
【符号の説明】
【0099】
1 車体
2 サイドパネル
3 エンジンルーム
4 ダッシュボードアッパ(エンジンルームのフレーム)
5 フロントアッパメンバ(エンジンルームのフレーム)
7 バルクヘッド取付け孔(孔)
10 サイドフレーム(エンジンルームのフレーム)
11 ホイールハウス(エンジンルームのフレーム)
12 フェンダステイ
12a X方向延設部
12b Y方向延設部
15 フロントフェンダ組付装置(自動車用フロントフェンダの組付装置)
16 フレーム(フレーム体)
22 基準ピン
28 第一位置決め治具(第一の位置決定手段)
29 第二位置決め治具(第二の位置決定手段)
30 第三位置決め治具(第三の位置決定手段)
34 位置決めブロック(基準部材)
35 フロントフェンダ
40 位置決め部(基準部材)
63 誘いこみガイド(基準部材)
97 固定ガイド(基準部材)
98 可動ガイド(可動ガイド部材)
109 位置決めブロック(基準部材)
120 ダンパ(サイド押圧部材)
125 ダンパ(押圧部材)
126 押圧部
133 隙間決定部
136 隙間決定部材
164 バルクヘッド(エンジンルームのフレーム)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のエンジンルームのフレームに整合するフレーム体を車体に位置決めした状態で、フロントフェンダを前記フレーム体を介して前記車体に取付けるための自動車用フロントフェンダの組付装置であって、前記フレーム体に、前記車体のエンジンルームのフレームの前面側に形成された一対の孔を基準として挿通する基準ピンと、前記車体の側面に取付けられる前記フロントフェンダを位置決めするための複数の基準部材と、該複数の基準部材のうちの一つの基準部材に隣接して設けられ、フェンダステイを挟持して位置決めする第一の位置決定手段と、前記複数の基準部材のうちの一つの基準部材に隣接して設けられ、前記フロントフェンダの一部を支持して位置決めする第二の位置決定手段と、前記複数の基準部材のうちの一つの基準部材に隣接して設けられ、前記フロントフェンダとサイドパネルとの段差及び隙間を決定するための押圧部材と隙間決定部材並びに前記フロントフェンダを前記エンジンルーム側へと押し込むサイド押圧部材とを備えて成る第三の位置決定手段とを備えたことを特徴とする自動車用フロントフェンダの組付装置。
【請求項2】
前記第二の位置決定手段は、隣接して設けられている前記基準部材と直交する位置に前記フロントフェンダの端面を押圧する移動自在な可動ガイド部材を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロントフェンダの組付装置。
【請求項3】
前記第三の位置決定手段に設けた前記隙間決定部材は、前記フロントフェンダと前記サイドパネルとの隙間位置の変化に追従できるように移動自在であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用フロントフェンダの組付装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−6866(P2008−6866A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176858(P2006−176858)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】