説明

自動運転装置

【課題】 自車両の自動運転を行うにあたり、自車両の周囲における交通環境に応じた走行制御を行うことにより、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる自動運転装置を提供する。
【解決手段】 自動運転装置における自動制御ECU1は、走行中の道路に対して道なりに走行させる自動運転制御を行うにあたり、自車両が走行する車線の状態を検出し、検出した車線の状態に基づいて、自動運転制御を行う。たとえば、自車両が走行する道路に自車走行車線が道なり走行可能である道なり車線があるにも係わらず、自車両が道なり車線でない車線を走行している場合には、自車両を道なり車線に移動させる進路を生成する。また、自車両が走行する道路に道なり車線が複数ある場合には、道なり走行に好適となる道なり車線に自車両を移動させる進路を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転装置に係り、特に、車両を走行中の道路に対して道なりに走行させる自動運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を道なりに走行させる自動運転装置として、従来、移動体の走行路に沿って道なりに走行させる移動ロボットの走行領域判別装置がある(たとえば、特許文献1参照)。この走行領域判別装置は、走行可能領域と走行不能領域とを分類し、走行可能領域に沿って道なりに移動体を走行させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−175932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された走行領域判別装置においては、走行可能領域に沿って移動体を走行させるのみである。このため、移動体が車両である場合には、周囲の交通環境等については考慮されずに走行制御が行われる。したがって、他車両の交通を妨害し、交通渋滞を招く原因になる可能性があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、自車両の自動運転を行うにあたり、自車両の周囲における交通環境に応じた走行制御を行うことにより、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる自動運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係る自動運転装置は、車両を走行中の道路に対して道なりに走行させる自動運転制御を行う自動運転装置であって、自車両が走行中の車線の状態である走行車線状態を検出する走行車線状態検出手段を有し、走行車線状態検出手段の検出結果に基づいて自動運転制御を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る自動運転装置においては、走行車線状態検出手段の検出結果に基づいて自動運転制御を行っている。このため、自車両が走行する走行車線の状態に応じて自動運転制御を行うことができるので、他車両の流れに沿った自動運転を行うことができる。したがって、自車両の周囲環境に応じた走行制御を行うことにより、自車両の自動運転を行うにあたり、自車両の周囲における交通環境に応じた走行制御を行うことができ、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる。本発明における走行車線状態には、道路における車線の数、道なり車線であるか否かなどの車線の特性、直進車線であるか右左折専用車線であるかなどが含まれる。
【0008】
ここで、自車両が走行可能な車線が複数存在する場合に、自車両が走行中の車線の種別を検出する走行車線種別検出手段をさらに備え、走行車線種別検出装置の検出結果に基づいて自車両が走行する車線を選択する態様とすることができる。
【0009】
このように、自車両が走行可能な車線が複数存在する場合に、自車両が走行中の車線の種別を検出することにより、状況に応じて自車両が走行する車線を選択することができる。その結果、他車両の流れに逆らわない走行を行うことができるので、自車両の周囲における交通環境の妨げをさらに好適に防止することができる。
【0010】
また、走行車線種別検出手段が、自車両が走行している車線が追い越し車線であることを検出したときに、自車両を走行車線に車線変更するように制御する態様とすることができる。
【0011】
このように、自車両が走行している車線が追い越し車線であることを検出したときに、自車両を走行車線に車線変更することにより、自動運転によって追い越し車線の走行を長時間行わないようにすることができる。その結果、追い越し車線における交通の妨げを防止することができる。
【0012】
さらには、走行車線状態検出手段が、自車両が走行している車線が混雑していることを検出したときに、自車両を別の車線に車線変更するように制御する態様とすることができる。
【0013】
このように、自車両が走行している車線が混雑していることを検出したときに、自車両を別の車線に車線変更することにより、混雑している車線を避けて走行することができる。このため、複数の車線における交通量の平均化に寄与することができる。したがって、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる。
【0014】
また、走行車線種別検出手段が、自車両が走行している車線がドライバの進行意思を示す属性を有する車線であることを検出したときに、その車線の属性にしたがって走行する態様とすることができる。
【0015】
このように、ドライバの進行意思を示す属性を有する車線の属性にしたがって走行することにより、ドライバの意思に沿った自動運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動運転装置によれば、自車両の自動運転を行うにあたり、自車両の周囲における交通環境に応じた走行制御を行うことにより、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る自動運転装置のブロック構成図である。
【図2】自動運転装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に続く処理手順を示すフローチャートである。
【図4】自車両が走行する際に最適となる車線を選択する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る自動運転装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る自動運転装置は、走行制御ECU(Electronic control unit)1を備えている。走行制御ECU1には、自動運転切替情報検出部2、車線情報検出部3、および交通状況検出部4が接続されている。さらに、走行制御ECU1には、車両走行制御部5が接続されている。
【0020】
自動運転切替情報検出部2は、ドライバの手が届く位置に設けられたON/OFFスイッチを備えている。ON/OFFスイッチは、ドライバの操作によってONとOFFとを切り替えることができるスイッチである。自動運転切替情報検出部2は、ドライバがこのON/OFFスイッチをONにすると、走行制御ECU1に対して自動運転開始情報を送信する。自動運転切替情報検出部2は、その反対にドライバがON/OFFスイッチをOFFにすると、走行制御ECU1に対して自動運転終了情報を送信する。
【0021】
また、自動運転切替情報検出部2としては、ドライバ状態検出手段を備えるものや、音声センサを設けるものなどを用いることもできる。ドライバ状態検出手段を備える自動運転切替情報検出部2は、たとえばドライバ状態検出手段として運転席に着座するドライバの顔を撮像可能な位置に配置されたCCDカメラを備えており、CCDカメラで撮像されたドライバの顔の画像に対して画像検出等を施すこと等によって、ドライバの覚醒度を検出する。ここで検出した覚醒度が所定のしきい値より低く、ドライバが居眠り状態などの運転不適切状態となっている場合に、走行制御ECU1に対して自動運転開始情報を送信する。また、自動運転開始情報を送信した後、検出した覚醒度が所定のしきい値より高く、ドライバが居眠り状態などの運転適切状態に復帰している場合に、走行制御ECU1に対して自動運転終了情報を送信する。
【0022】
さらに、音声センサを備える自動運転切替情報検出部2では、ドライバの声を検出する音声センサと、ドライバが発生した音声が自動運転を開始することを意図する音声であるか否かを検出する音声解析部を備えている。ここで、音声センサで検出したドライバの音声が自動運転の開始を意図するものであると判断した場合に、走行制御ECU1に対して自動運転開始情報を送信する。また、音声センサで検出したドライバの音声が自動運転の終了を意図するものであると判断した場合に、走行制御ECU1に対して自動運転終了情報を送信する。
【0023】
車線情報検出部3は、車両の周囲を撮像可能とされた周囲撮像CCDカメラおよび周囲撮像CCDカメラで撮像された画像を画像処理する画像処理装置を備えている。車線情報検出部3では、周囲撮像CCDカメラで撮像した画像に画像処理を施すことにより、自車両の周囲における白線や標識を検出する。車線情報検出部3は、検出した白線や標識に基づいて、自車両が走行する車両に関する車線情報を生成する。
【0024】
車線情報検出部3で生成する車線情報としては、自車両が走行する自車両車線および自車両車線の周囲における他車線のそれぞれの特性などである。これらの特性としてはたとえば道路に複数の車線がある場合における左右位置、直進、右折、左折の専用車線の種類などを挙げることができる。車線情報検出部3は、生成車線情報を走行制御ECU1に送信する。
【0025】
また、車線情報検出部3としては、ナビゲーションシステムやインフラ情報取得装置などを用いることもできる。ナビゲーションシステムは、自車両の現在位置(自車両位置)や走行方向の検出および目的地までの経路案内などを行うシステムである。ナビゲーションシステムにおける現在位置検出では、GPS[Global PositioningSystem]を利用した現在位置測位とマップマッチングなどを利用して現在位置を検出している。ナビゲーションシステムは、地図情報などが格納された地図データベースを備えている。この地図データベースに格納された地図情報に基づいて、自車両が走行する車線情報を抽出し、生成車線情報として走行制御ECU1に送信する。
【0026】
インフラ情報取得装置は、たとえば光ビーコン受信機を備えており、道路に設けられた路側装置から供給されるインフラ情報を受信する。このインフラ情報には、自車両が走行する道路の車線に関する車線情報が含まれている。インフラ情報取得装置では、受信したインフラ情報から、自車両が走行する車線に関する車線情報を抽出し、生成車線情報として走行制御ECU1に送信する。
【0027】
交通状況検出部4は、車両の周囲を撮像する周囲撮像CCDカメラおよび画像処理装置を備えている。交通状況検出部4では、周囲撮像CCDカメラで撮像した画像に画像処理装置によって画像処理を施すことにより、自車両の周囲を走行する他車両の状況、たとえば他車両の有無、他車両の走行車線、走行車線ごとの混雑状況などに関する交通状況を検出する。交通状況検出部4は、検出した交通状況に関する交通状況情報を走行制御ECU1に送信する。
【0028】
本実施形態では、車線情報検出部3および交通状況検出部4は、いずれも車両の周囲を撮像する周囲撮像CCDカメラおよび画像処理装置を備えている。このため、本実施形態では、これらの周囲撮像CCDカメラおよび画像処理装置が、車線情報検出部3および交通状況検出部4を兼用とする態様とされている。また、交通状況検出部4としては、車両の周囲に設けられた距離センサや上記のインフラ情報取得装置を用いることもできる。距離センサでは、自車両の周囲における他車両との距離を検出し、検出した他車両との距離に基づいて自車両の周囲を走行する他車両の状況に関する交通状況を検出する。
【0029】
また、走行制御ECU1は、自動運転切替判断部11および道なり走行進路生成部12を備えている。自動運転切替判断部11は、自動運転切替情報検出部2から送信された自動運転開始情報を受信した場合に、自車両の自動運転を開始すると判断する。また、自動運転の開始を判断した後に、自動運転切替情報検出部2から自動運転終了情報を受信した場合に、自車両の自動運転を終了すると判断する。
【0030】
自動運転切替判断部11は、自動運転を開始すると判断した場合には、自動運転開始信号を道なり走行進路生成部12に出力する。また、自動運転を終了すると判断した場合には、自動運転終了信号を道なり走行進路生成部12に出力する。
【0031】
道なり走行進路生成部12は、自動運転切替判断部11から自動運転開始信号が出力された場合に、自車両の走行進路を生成する。また、自動運転終了信号が出力された場合には、走行進路の生成を終了する。道なり走行進路生成部12は、走行進路を生成する際に、車線情報検出部3から送信された生成車線情報および交通状況検出部4から送信された交通状況情報を利用する。
【0032】
たとえば、交通状況検出部4から送信された交通状況情報に信号や標識などの情報が含まれている場合には、これらの情報に応じた交通ルールに従う走行進路を生成する。また、他車両や歩行者、障害物などの情報が含まれている場合には、これらとの接触を回避する走行進路を生成する。
【0033】
道なり走行進路生成部12は、生成した自車両の走行進路に応じた走行進路情報を車両走行制御部5に送信する。この走行進路情報が車両走行制御部5に送信されることにより、自動運転が行われる。ここでの走行進路には、道なり走行を行うための道なり走行進路が含まれる。また、道なり走行進路生成部12は、走行進路の生成を終了した際には、車両走行制御部5に対する走行進路情報の送信を終了する。この走行進路情報の送信が終了することにより、自動運転が終了して手動運転に切り替わる。
【0034】
車両走行制御部5は、スロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、シフト位置、ステアリング、ウィンカーなどの運転操作素子を自動的に操作して、ドライバの操作の有無に係わらず、車両を走行させる走行制御を行う。車両走行制御部5では、各種運転操作素子を自動操作することによって、走行制御ECU1における道なり走行進路生成部12から送信された走行進路情報に応じた走行進路に沿って自車両を自動走行させる。
【0035】
次に、本実施形態に係る自動運転装置における処理手順について説明する。図2は、本実施形態に係る自動運転装置における処理手順を示すフローチャート、図3は、図2に続く処理手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る自動運転装置では、ドライバの指示により、またはドライバ状態に応じて自動運転が必要と判断した際に、道なり走行が可能な場合には道なり走行を行い、道なり走行が不能である場合には、その他の走行手段によって自車両の自動運転を行う。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係る自動運転装置においては、手動運転が行われている際に、まず、自動運転切替判断部11において、進路生成開始指示の有無を判断する(S11)。進路生成開始指示の有無は、自動運転切替情報検出部2から送信される自動運転開始情報の受信の有無によって判断する。その結果、自動運転開始情報を受信しておらず、進路生成開始指示がないと判断した場合には、進路生成開始指示があるまで、ステップS1を繰り返す。
【0037】
一方、自動運転開始情報を受信し、進路生成開始指示があると判断した場合には、自動運転が開始される。自動運転が開始されると、自車両が走行している車線が右折専用車線および左折専用車線のいずれかであるか否か判断する(S12)。自車両が走行している車線が右折専用車線および左折専用車線のいずれかであるか否かの判断は、車線情報検出部3から送信される生成車線情報に基づいて行われる。
【0038】
その結果、自車両が走行している車線が右折専用車線および左折専用車線のいずれかであると判断した場合には、道なり走行進路生成部12において、車線の種類に応じて、右折進路または左折進路を生成する(S13)。なお、右折専用車線または左折専用車線ではなく、右折と直進、左折と直進、または右左折と直進が可能である車線である場合には、直進を優先する。その後、右折または左折が完了したか否かを判断する(S14)。ここで、右折または左折が完了していない場合には、ステップS12に戻って、同様の処理を繰り返す。
【0039】
一方、右折または左折が完了していると判断した場合には、自動運転切替判断部11において、進路生成終了指示があるか否かを判断する(S15)。進路生成終了指示の有無は、自動運転切替情報検出部2から送信される自動運転終了情報の受信の有無によって判断する。
【0040】
その結果、自動運転終了情報を受信しておらず、進路生成終了指示がないと判断した場合には、ステップS14に戻り、右折または左折が完了しているか否かの判断を繰り返す。一方、自動運転終了情報を受信し、進路生成終了指示があると判断した場合には、自動運転から手動運転に切り替わり、自動運転装置による処理を終了する。
【0041】
このように、本実施形態に係る自動運転装置では、自車両が走行している車線が右折専用車線および左折専用車線のいずれかである場合には、車線の種類に応じて、右折進路または左折進路を生成している。右折専用車線または左折専用車線を走行する自車両を運転するドライバには、右折または左折を行う意思があると考えられる。
【0042】
このため、自車両が走行する車線(以下「自車走行車線」という)の属性である右折や左折に応じた進路を生成することができるので、ドライバの意図に沿って自動運転ができるので、自動運転を行ったとしても、道路の流れを滞らせないようにすることができる。したがって、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる。
【0043】
また、ステップS12において、自車両が走行している車線が右折専用車線および左折専用車線のいずれでもないと判断した場合には、図3に示すフローチャートに進む。ここでは、道なり走行進路生成部12において、自車両が走行している道路に、道なり走行が可能となる車線(以下「道なり車線」という)が存在しているか否かを判断する(S21)。道なり車線が存在しているか否かの判断は、車線情報検出部3から送信される生成車線情報に基づいて行われる。
【0044】
ここで、道なり走行が可能でない車線としては、T字路車線、進入禁止車線、分岐車線であって、どちらが道なり車線となるは判断不能となる車線などが挙げられる。これらの道なり走行可能でない車線以外の車線が、道なり車線となる。また、生成車線情報がエラーとなった場合には、道なり走行が可能であるか否かの判断がつかないため、道なり走行が可能でない車線と擬制して判断する。
【0045】
ここでの判断の結果、自車両が走行している車線に道なり車線が存在していないと判断した場合には、道なり以外の道路へ進む車線に向けて車線変更する進路を生成する(S27)。道なり以外の道路としては、走行中の道路に方向が近い道路、道幅が大きい道路、左折方向を向いた道路などとすることができる。
【0046】
その後、自動運転切替判断部11において、進路生成終了指示があるか否かを判断する(S28)。その結果、自動運転終了情報を受信しておらず、進路生成終了指示がないと判断した場合には、ステップS21に戻り、自車両が走行している道路に、道なり車線が存在しているか否かの判断を繰り返す。一方、自動運転終了情報を受信し、進路生成終了指示があると判断した場合には、自動運転から手動運転に切り替わり、自動運転装置による処理を終了する。
【0047】
たとえば、自動運転切替判断部11から自動運転終了信号が出力されない場合に、道なり走行が可能でない車線を走行していると、自動運転を継続することが困難となる。このとき、道なり車線が存在しない場合に、道なり以外の道路へ進む車線に向けて車線変更する進路を生成することにより、即座に手動運転に復帰できない場合でも、自動運転を継続することができる。
【0048】
また、ステップS21において、自車両が走行する道路に道なり車線があると判断した場合には、自車走行車線が道なり車線であるか否かの判断を行う(S22)。道なり車線であるか否かの判断は、車線情報検出部3から送信される生成車線情報に基づいて行われる。
【0049】
その結果、自車走行車線が道なり車線でないと判断した場合には、道なり車線に向けて車線変更する進路を生成する(S23)。このように、自車走行車線が道なり車線でない場合に、道なり車線に向けて車線変更する進路を生成することにより、道なり車線を走行する制御を行うことができる。
【0050】
たとえば、自動運転切替情報検出部2において、一時的に手動運転が困難となる状態を検出した場合に、自動運転として、緊急自動停車による運転代行を行うことがある。この場合、極力長時間自動運転を継続することが望まれるが、道なり車線でないと自動運転を行うことができないときに、道なり車線を走行していないと自動運転ができないこととなる。この点、道なり車線に向けて車線変更する進路を生成することにより、道なり走行運転を継続することができる。
【0051】
したがって、たとえば目的地設定などを行うことなく、走行継続するための自動運転を簡易な操作によって即座に開始することができる。また、一時的な緊急事態、たとえば日差しや対向車両のライトによる前方の視認が困難となった事態が生じた場合に、不必要な緊急停車や緊急発進を避けることができる。したがって、自車両の周囲における交通環境の妨げを好適に防止することができるとともに、自車両の走行効率の低下を防止することができる。
【0052】
一方、自車走行車線が道なり車線であると判断した場合には、自車両が走行する道路に道なり車線が複数あるか否かを判断する(S24)。その結果、道なり車線が複数でない(単数である)と判断した場合には、走行中の車線を継続して走行する進路を生成する(S25)。このように、走行中の道路における道なり車線が単数である場合には、この道なり車線の走行を継続させることにより、自動運転を好適に継続することができる。
【0053】
その後、自動運転切替判断部11において、進路生成終了指示があるか否かを判断し(S28)、進路生成終了指示がないと判断した場合には、ステップS21に戻り、自車両が走行している道路に、道なり車線が存在しているか否かの判断を繰り返す。一方、進路生成終了指示があると判断した場合には、自動運転から手動運転に切り替わり、自動運転装置による処理を終了する。
【0054】
また、ステップS24において、道なり車線が複数であると判断した場合には、複数の道なり車線のうち、自車両が走行するために好適となる車線を選択することができる。そこで、自車両が走行する際に最適となる車線を選択する(S26)。自車両が走行する際に最適となる車線を選択する手順は、図4に示すフローチャートに沿って行われる。図4は、自車両が走行する際に最適となる車線を選択する手順を示すフローチャートである。
【0055】
図4に示すように、自車両が走行するために最適となる車線を選択する際には、まず、自車走行車線が混雑しているか否かを判断する(S31)。ここで、自車走行車線が混雑していないと判断した場合には、自車走行車線が、自車両が走行している道路における一番左側の道なり車線であるか否かを判断する(S32)。その結果、自車走行車線が一番左側の道なり車線であると判断した場合には、走行中の車線を継続して走行する進路を生成して(S33)、ステップS28に戻る。
【0056】
道なり走行を行う場合、混雑している車線を走行すると、前後に位置する他車両との間で十分な車間距離を保つことができないことが多く、前後に位置する他車両と接触する可能性が高くなる。一方、混雑しておらず、すいている車線を走行する場合には、十分な車間距離をとることができ、他車両との接触を回避し易く、さらには急発進、急停止といった効率の低い走行を回避することができる。このため、混雑している車線を走行するよりも、混雑しておらず、すいている車線を走行することが好適となる。
【0057】
また、車線の左右関係について見てみると、一般に、左側車線が走行車線となり、右側車線が追い越し車線となっていることが多く、追い越し車線では、交通の流れが速い場合が多くなっている。このような交通の流れが速い追い越し車線において道なり走行を行っていると、交通の妨げとなる可能性があり、逆に交通の流れに乗ってしまうと、制限速度を超過することも考えられるため、左側車線を走行することが好適となる。したがって、自動運転による道なり走行を行う際には、混雑していない左側車線を走行することが最適となる。
【0058】
ステップS32において、自車走行車線が、自車両が走行している道路における一番左側の道なり車線であると判断した場合には、混雑していない左側車線を走行していることとなる。したがって、走行中の車線を継続して走行する進路を生成する(S33)ことにより、自動運転を好適に継続することができる。
【0059】
また、ステップS32において、自車走行車線が、自車両が走行している道路における一番左側の道なり車線でないと判断した場合には、一番左側の道なり車線が混雑しているか否かを判断する(S34)。その結果、一番左側の道なり車線が混雑していないと判断した場合には、一番左側の道なり車線を走行することが好適となる。このため、左側車線へ車線変更する進路を生成して(S35)、ステップS28に戻る。
【0060】
一方、一番左側の道なり車線が混雑していると判断した場合には、左側の車線を走行するよりも自車両が現在走行している混雑してない車線を走行する方が好適となる。したがって、この場合には、現在走行中の自車走行車線を継続して走行する進路を生成し(S33)、その後、ステップS28に戻る。
【0061】
さらに、ステップS31において、自車走行車線が混雑していると判断した場合には、隣接する道なり車線が混雑しているか否かを判断する(S36)。その結果、隣接する道なり車線が混雑していると判断した場合には、自車走行車線および隣接する道なり車線のいずれも混雑していることとなる。この場合には、車線変更することなくそのまま走行した方が他車両などと接触する可能性も低く、自車両の周囲における交通環境の妨げを好適に防止することができる。したがって、この場合には、(S33)、その後、ステップS28に戻る。
【0062】
一方、隣接する道なり車線が混雑していないと判断した場合には、隣接する道なり車線を走行した方が他車両との接触を好適に回避しながら自車両の周囲における交通環境の妨げを好適に防止することができる。したがって、この場合には、隣接する道なり車線へ車線変更する進路を生成して(S37)、ステップS28に戻る。このようにして、自車両が走行するために最適となる車線を選択する。
【0063】
このように、本実施形態に係る自動運転装置においては、自車両が走行する道路に道なり車線がある場合に、道なり車線を走行していない場合には、道なり車線に移動する進路を生成する。このため、たとえば一時的な緊急事態が生じた場合でも、不必要な緊急停車や緊急発進を防ぐことができるとともに、自車両の走行効率の低下を防止することができる。
【0064】
また、自車両が走行する道路に複数の道なり車線がある場合に、自車両が走行するために好適となる車線を選択している。具体的に、自車走行車線が走行車線である左側車線でなく、追い越し車線である右側車線である場合には、左側車線に移動する進路を生成する。さらに、自車両が走行している道路が混雑している場合には、混雑していない道路に移動する進路を生成する。このため、したがって、自車両の周囲環境に応じた走行制御を行うことにより、自車両の自動運転を行うにあたり、自車両の周囲における交通環境に応じた走行制御を行うことができ、自車両の周囲における交通環境の妨げを防止することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、自車走行車線が右左折専用車線であるか、自車両が走行する道路に道なり走行が可能となる道なり車線があるか、その場合に、自車走行車線が道なり車線であるか否かによって生成する進路を設定している。また、道なり車線が複数あるか、その場合、自車走行車線が左側車線であるか、さらには、自車走行車線や隣接車線が混雑しているか否かによって、生成する進路を設定している。これに対して、これらの判断における任意の一部を利用して進路を生成する態様とすることもできる。
【0066】
また、上記実施形態では、ステップS36において、自車走行車線および隣接車線のいずれもが混雑していると判断した場合に、現在走行中の車線を継続して走行する進路を生成している。これに対して、自車走行車線および隣接車線のいずれもが混雑していると判断した場合に、一番左の道なり車線が混雑しているか否かを判断し、一番左の道なり車線が混雑していなければ左側車線へ進路変更する進路を生成する態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0067】
1…走行制御ECU、2…自動運転切替情報検出部、3…車線情報検出部、4…交通状況検出部、5…車両走行制御部、11…自動運転切替判断部、12…道なり走行進路生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行中の道路に対して道なりに走行させる自動運転制御を行う自動運転装置であって、
自車両が走行中の車線の状態である走行車線状態を検出する走行車線状態検出手段を有し、
走行車線状態検出手段の検出結果に基づいて前記自動運転制御を行うことを特徴とする自動運転装置。
【請求項2】
自車両が走行可能な車線が複数存在する場合に、自車両が走行中の車線の種別を検出する走行車線種別検出手段をさらに備え、
前記走行車線種別検出装置の検出結果に基づいて自車両が走行する車線を選択する請求項1に記載の自動運転装置。
【請求項3】
前記走行車線種別検出手段が、自車両が走行している車線が追い越し車線であることを検出したときに、自車両を走行車線に車線変更するように制御する請求項2に記載の自動運転装置。
【請求項4】
前記走行車線状態検出手段が、自車両が走行している車線が混雑していることを検出したときに、自車両を別の車線に車線変更するように制御する請求項2に記載の自動運転装置。
【請求項5】
前記走行車線種別検出手段が、自車両が走行している車線がドライバの進行意思を示す属性を有する車線であることを検出したときに、その車線の属性にしたがって走行する請求項1に記載の自動運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−162132(P2011−162132A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29271(P2010−29271)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】