説明

色素沈着および瘢痕組織を除去するための液体、方法および装置

本発明は、皮膚の部位から色素沈着および瘢痕組織を除去する非外科的な方法である。この方法は、皮膚の部位を、複数の針を整列させてなる針アレイで繰り返し穿刺することを含んでなる。針が皮膚内に挿入されると、針および皮膚表面が清浄な溶液で洗浄される。針が皮膚から引き抜かれると、清浄な溶液の流れが止まり、針の作用によって放出された細胞液および色素を含んだ汚れた溶液が、表面から除去される。本発明はまた、針を清浄にし、かつ、細胞に含まれる色素を破壊するのを助けるために使用される溶液、ならびに皮膚の表面を出入りするように針を動かし、針の動きと溶液の流れの同調をもたらすように、たとえば、この方法の効果を最大にするように、特に設計された装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容上の処置の分野に関する。特に皮膚の部位から色素沈着および瘢痕組織を非外科的に除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着部位は、意図的に、たとえば入れ墨によって、作り出されることもあるが、たとえば、創傷治癒、そばかす、しみ、(生来の)あざなどのように自然の経過の結果として生じる場合もある。美容上もしくは他のさまざまな理由で、人々はしばしば、皮膚から色素沈着部位を除去したいと思う。色素沈着の原因を治療しようとして、またはそれを覆い隠そうとして、局所軟膏がしばしば用いられる。しかしながら、色素は真皮において細胞の不可欠な部分となっているため、色素沈着を除去することは容易なことではなく、色素を内包する細胞を破壊して置き換えることによってのみ、効果的に達成することができる。色素沈着を除去する既知の方法には以下のものがある。
【0003】
- 皮膚剥離術:皮膚に「やすりをかけて」(すなわち、擦り減らして)、色素沈着を有する皮膚層を除去する;
- 凍結外科手術:色素沈着部位を除去前に凍結する;ならびに
- 切除術:皮膚外科医が外科用メスで色素沈着した皮膚を切除し、切創を縫合して閉じる。皮膚の面積が広い一部の例では、身体の別の部分からの皮膚移植片が必要となることもある。
【0004】
上記の方法は、一般にかなり痛みを伴い、白斑を残すことが多く、時に瘢痕を残すこともある。
【0005】
レーザーは、上記の方法に代わる、より正確で一般に損傷の少ない方法を提供する。それぞれの処置法は、1回の治療として、または複数回の一連の治療として実施される。患者は局所麻酔もしくは局部麻酔を必要とすることもあるが、必要としないこともある。レーザーは、短パルスの強い光を生じることによって色素を取り除くが、そうした光は皮膚の最上層を通り抜けて、選択的に色素に吸収される。レーザーエネルギーによって、色素は断片化されて、より小さい粒子となり、その後身体の免疫系によって除去される。特に入れ墨の除去を目的とする、レーザー治療に関わる問題の1つは、レーザーエネルギーの吸収が色に依存すること、しかも既存のレーザーはある特定の色の範囲にある色素を除去するためにしか使用できないことである。その上、場合によっては灼熱感、瘢痕化、過度の色素沈着(処置部位の皮膚における多量の色)、および低色素沈着(処置部位に正常な皮膚の色がない)などの、レーザー処置の副作用が存在する。
【0006】
皮膚の色素沈着部位を取り除く、外傷の少ない方法が、本願出願人による国際特許出願WO2004/107995およびWO2005/020828に記載されており、その記述は、そこに引用された参考文献を含めて、参照することによってその全体を本明細書に含めるものとする。上記公報に記載の方法によれば、皮膚の色素沈着部位は、入れ墨機械もしくは同様の装置に取り付けられた、複数の針を整列させてなる針アレイ(an array of needles)によって繰り返し穿刺される。最初の出願に記載の方法では、一定期間にわたって針で皮膚を穿刺した後、穿刺された部分を適当な吸収パッドで覆う。パッドは1つもしくは複数の物質、たとえば食塩水を含有しており、それが、穿刺部分で損傷された細胞の内部から放出された色素が皮膚の外層に移動して、パッドに吸収されるのを、助ける。第2の出願に記載の装置は、装置に取り付けて皮膚を繰り返し穿刺するために用いられる仲介部材を含んでなる。この仲介部材は、皮膚と接触しており、穿刺された皮膚部位で皮膚の表面に上がってきた細胞液および色素を引き出す手段、ならびに針および皮膚表面を、所望ならば適当な液体で洗浄する手段を提供する。
【0007】
もう一つの美容上の問題は瘢痕組織であるが、これは皮膚組織が損傷後に治癒するときに生じる。外科的処置法を用いて瘢痕組織を除去することができるが、場合によっては、局所用薬剤の塗布によって瘢痕組織をより自然な色および肌理に戻すことができる。起こりうる危険、ならびに外科手術の合併症を回避し、皮膚の完全な治癒をもたらし、外科的処置法および薬物治療のいずれよりも迅速な成果をもたらす、瘢痕組織を除去する方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術の方法の限界を克服する、色素沈着および瘢痕組織を完全に除去する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
本発明のさらなる目的および利点は、説明が進むにつれて明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、皮膚の部位において瘢痕組織(scar tissue)および色素沈着(pigmentation)を除去(eradication)するためにサリチル酸を使用することである。サリチル酸は、皮膚の部位に適用されるが、水溶液の状態であって、その溶液が血流に入ると有毒であると思われる濃度より低い濃度である。
【0011】
好ましい実施形態において、皮膚の部位は、サリチル酸が適用される間、繰り返し穿刺される。穿刺は、針アレイを用いて行うことができる。溶液は針の上に流れ、皮膚が穿刺されるたびに針を洗う。
【0012】
好ましい実施形態において、サリチル酸の濃度は2%〜5%である。色素沈着は、入れ墨によるもの、または自然の経過(natural process)によるもの、たとえば、創傷治癒、そばかす、しみ、もしくは、(生来の)あざとすることができる。
【0013】
別の態様において、本発明は、皮膚の部位から瘢痕組織および色素沈着を除去するための装置である。その装置は以下の部分を含む。
【0014】
(a)ギア組立部に接続したシャフトに往復運動をもたらす、モーターおよびギア組立部を含んでなるハンドル部分;
(b)シャフトを囲む筒状部分であって、前記管状部分の一端は皮膚穿刺装置に接続されており、皮膚と気密シールを形成するのに適した先端部を有する、前記筒状部分;
(c)先端部付近でシャフトに取り付けられた、複数の針を整列させてなる針アレイ;
(d)針アレイより上でシャフトに取り付けられたピストンであって、このピストンがピストンより上の筒状部分の内側の容積と、それより下の容積とを分離する液圧シール(hydraulic seal)を与える、前記ピストン;
(e)吸引手段に接続されている、筒状部分内の出口ポート;ならびに
(f)溶液貯留装置に接続されている、筒状部分内の入口ポート。
【0015】
本発明の装置の特徴は、モーターが作動しているとき、針アレイが、交互に、先端部から押し出されて皮膚の部位を穿刺し、それによって色素を含有する真皮の細胞が機械的に損傷され、そして、皮膚部位から先端部内へ引き戻されることである。シャフトが下向きに動く毎回の動作の間、出口ポートは閉じられ、入口ポートが開放されており、溶液貯留部分に入っている溶液が針の上に流れて針を洗い、そして前記皮膚部位の表面上に流れる。上向きの毎回の動作の間、前記入り口ポートは閉じられて出口ポートが開き、下方動作の間に皮膚部位の表面上に流れた溶液、および、前記の針の動きによって放出された細胞液および色素が、吸引手段によって前記筒状部分から吸い出される。このように入口および出口手段の開閉が同調することによって、前記先端部において清浄な液と汚れた液との完全な分離がなされ、皮膚を穿刺する針がいつも清浄であることが保証され、かつ、真皮内に浸透する液体の量を最小にする。
【0016】
本発明の装置の好ましい実施形態において、ピストンは特別に設計された円筒状バルブである。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の皮膚穿刺装置を用いて、皮膚の部位から瘢痕組織および色素沈着を除去する方法である。その方法は以下のことを含む。
【0018】
(a)溶液貯留部分に溶液を供給すること;
(b)溶液貯留部分および吸引手段を前記装置に接続すること;ならびに
(c)所定の時間、前記装置のモーターを作動させること。
【0019】
前記溶液は、EDTA、DMSO、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パパイン、ブロメライン、高張食塩水、サリチル酸、アロエ、ビンデンチス(Bidentis)、カランコエ、ユーカリ、カモミール、キンセンカ、セージ(Salvia officinalis)、ヘリクリサム(Helichrysum arenarium)、および過酸化水素、からなる群から選択される化学物質の溶液である。
【0020】
本発明の方法の好ましい実施形態において、溶液は、濃度2%〜5%のサリチル酸の水溶液である。
【0021】
上記および他の本発明の特徴および利点はすべて、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態についての、例証となるが限定的でない下記の説明によって、さらに理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、上記国際特許出願に記載の装置および方法を使用することによって得られる美容処置の結果を改善するために、本発明者らが行った研究の成果である。改善研究は、処置のあらゆる態様において、処置時間を減らすこと、処置の終了から、良好な目に見える結果が得られる時点までの期間を短縮すること、処置費用を減らすこと、ならびに、もともと色素の沈着していた部位の色と自然の皮膚の色との差を最小にすること、を包含する。
【0023】
装置の基本設計および操作は、すでに説明されている。しかしながら、下記に説明するある特定の改善は、その操作効率を向上させる目的で装置に対してなされた。処置結果の最大の改善は、溶液の種類、および処置されるべき部位の表面に該溶液を適用する方法に起因するものであった。EDTA、DMSO、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パパイン、ブロメライン、高張食塩水、サリチル酸、アロエ、ビデンチス(Bidentis)、カランコエ、ユーカリ、カモミール、キンセンカ、セージ(Salvia officinalis)、ヘリクリサム(Helichrysum arenarium)、および過酸化水素などの多くのさまざまな溶液が考慮された。上記のうちEDTA、DMSO、サリチル酸、過酸化水素、および高張食塩水が、今回、さらに検討するために選択された。予備的な実験の結果として、本発明者らは、色素を含有する細胞を機械的に破壊するために下記に説明するように皮膚を繰り返し穿刺することを、色素沈着部位をサリチル酸の水溶液で洗うことと併せて行うことによって、色素を除去するすぐれた結果が得られることを見出した。さらにまた、同じ方法が瘢痕組織に適用されると、瘢痕組織の除去、および瘢痕組織の健康な皮膚による置き換えに有効であることが明らかになった。
【0024】
これまでに実施された実験において、2%から5%までのサリチル酸を含有する水溶液が使用された。その溶液は皮膚の表面に適用されるだけであって、色素を含有する細胞内に直接注入されはしないが、その一部は針によって生じた穴を通って浸透し、細胞の周辺部に達し、針が真皮内部の細胞を損傷するのに役立つことは明らかである。ヒトに安全に使用することができる、処置の濃度対時間の上限を決定するために、今後さらに毒性試験が行われる。特別な場合にのみ、当該部位を清潔に保つために、短い間、処置された部位に軽く包帯を巻くことが必要と感じられることが明らかになった。場合によっては上記WO2004/107995に記載のパッドを当てることによって本明細書に記載の処置の結果が改善されるだろう。
【0025】
図1は、本発明の装置10の外観を示す。上記、ならびに上記で引用された2つの国際特許出願に記載のように、本発明の装置は、従来の入れ墨機械にいろいろな意味で非常によく似ている。容易に操作するために、装置10は、ハンドル部分12、筒状部分18、および装置を作動させるための引き金16を含む、ピストルのような形をしている。
【0026】
ハンドル12の内側にモーターがあり、モーターは装置の筒状部分18の内部にあるシャフトに、ギア組立部(gear assembly)を介して接続されている。モーターが回転すると、ギアは往復動作をシャフトに伝える;それによって、シャフトを筒状部分内部で前後に動かす。電源は、外部もしくは内部の電池、または外部電源、たとえば電源コード14を介して6-12ボルトで0-1アンペアの電流を供給する変圧器、とすることができる。
【0027】
前記筒状部分の先端部20、出口ポート22、および入口ポート24も図1に示す。先端部20は、それが皮膚に押し当てられたときに、筒状部分の内部を外側から隔てる気密シールを形成する形状をしている。ポート22および24は、それぞれ吸引源および液体供給容器に接続される(どちらも図には示されず、ここでは詳細に記載されていない)。
【0028】
図2Aおよび2Bは、装置10の筒状部分18の内部を示す略断面図である。これらの図は、装置の操作をより簡単に説明するために、非常に簡略化され、一部の部品の位置が配置し直されている。シャフト26に円筒状バルブ28および針アレイ30が固定されている。シャフト26がモーターによって上下に動くにつれて、針アレイ30は交互に、皮膚36の外層を貫通して真皮内へ押し出され、皮膚から円筒18の先端部20内に引き上げられる。
【0029】
アレイ内の針の数は、他にも要因はあるが特に、装置の大きさに依存する。典型的なアレイは、たとえば、7から38本までの針を有することができる。装置は、ピストン26がもっとも下の位置にあるとき、針が先端部20から伸びて、0〜3 mmの深さまで皮膚を貫通するように設計されるが、正確な深さは、処置すべき部位の位置に左右され、さらに針先が真皮を貫いてその下にある脂肪層内に達しないように決定される。
【0030】
円筒状バルブ28は、本質的に、バルブ28より上の筒状部分の内側の容積と、それより下の容積とを分離する、液圧シールを与える円筒形のピストンである。バルブ28には、その側面に2つの開口部、入口穴34および出口穴32がある。これらの開口部はいずれも、液体供給容器内の液体が、交互に、針および皮膚表面を洗う目的で入口ポート24および入口穴34を通って流れ、出口穴32および出口ポート22を通って筒状部分18の先端部20から吸い出されるように、バルブ28の底部につながっている。円筒状バルブの機能は、1回毎の動作の一環として、処置されるべき皮膚の部位を清浄な液体で洗うこと、ならびに後半の動作として、前半の動作の間に先端部20内に集められた液体および色素をそこから吸い出すことを確実にすることである。
【0031】
洗浄と吸引のタイミングは、連続的に針を新たな溶液で洗い、細胞液および色素を除去するために、ならびに、清潔な針だけが皮膚を突き刺すことを確実にするために、重要である。そのタイミングを図2Aおよび2Bにおいて説明する。下向きの動作で(図2A)、入口穴34は入口ポート24と並び、液体供給容器から出た液体が針30および皮膚表面上に流れることを可能にする。同時に、出口穴32と出口ポート22は揃わないので吸引源は先端部20の内部につながらない。上向きの動作で(図2B)針が皮膚から抜き出されると、穴とポートの並びが反対になり、液体は先端部20に入らないようになる一方、吸引によって装置の先端部から液体および色素が引き込まれる。このように操作することによって、一方では、清浄な液体と「汚れた」液体の間の完全な分離が生じ、他方では、液体が先端部に流れ込む状態とそれが先端から吸い出される状態間のほとんど瞬時の変化が存在することが認められる。針で生じた穴を通って浸透し、真皮内で針によって損傷された細胞に到達する溶液量を最小にするために、「汚れた」液体は、針が皮膚から引き出されるときに先端部から吸引される。各サイクルの間に針を洗って、最初のサイクルで針に付着した色素および細胞物質が次のサイクルで真皮内に戻らないようにすることが重要である。
【0032】
一連の実験は、本方法の有効性、特に処置の最適化におけるサリチル酸の役割を調べるために実施された。下記の実施例は、こうした実験のなかから選択されているが、本発明を説明するためにのみ提供されるものである。それらはいかなる形においても、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0033】
いくつかの入れ墨を豚の皮膚に施した。それぞれの入れ墨は、無地のブルーグレー色で塗りつぶされた約1cm×1cmの大きさの正方形とした。入れ墨を施して2か月後に、この正方形は図4Aに掲載された写真に見られるような外観を呈した。図3は、上記入れ墨のうち4つを、異なる種類の溶液を用いて本発明の方法に従って処置した14日後に、撮影された写真のコピーである。正方形1は蒸留水で処置したが、本質的に色の減少は認められなかった。正方形2は、2%サリチル酸水溶液を用いて処置した。図中に認められる瘢痕は、写真撮影の数日後には、痕跡を残さずに消え去り、約90%の色の減少が観察された。正方形3は17% EDTAを含有する溶液を用いて処置した。60%の色の減少が認められたが、瘢痕は消失しなかった。正方形4はH2O2で処置し、その結果40-60%の色の減少をもたらした。
【実施例2】
【0034】
いくつかの入れ墨を豚の皮膚に施した。それぞれの入れ墨は、無地のブルーグレー色で塗りつぶされた約1cm×1cmの大きさの正方形とした。入れ墨を施して2か月後に、図4Aに示す写真上に1から5までの数字を付した5つの正方形のそれぞれを、本発明の方法に従って処置した。それぞれの正方形に対する処置は、上記の装置を用いて3分間、皮膚を繰り返し穿刺することからなる。機械を動かすと、針および皮膚表面はサリチル酸の5%水溶液で周期的に洗った。全部で10 ccの溶液が、それぞれの正方形のために使用された(すなわち、〜10 cc/cm2)。この最初の処置の後、これら5つの部位にはそれ以上の処置は施されなかった。18日後に、図4Bに示す写真が撮影された。この写真で、もとのブルーグレー色がすべて消え、ブタの自然な皮膚色よりわずかに暗いピンク色をした正方形の痕跡だけが残っているのを見ることができる。
【実施例3】
【0035】
図5Aに、茶色いかさぶたの周りの赤紫色の色素沈着部位の写真を示す。かさぶたの周りの色素沈着部位を上記の方法を用いて、10分間皮膚を繰り返し穿刺することによって処置した。処置の間、100ccの5%サリチル酸水溶液(〜10cc/cm2)を用いて針および皮膚表面をきれいにした。その部位を清潔に保つために数日間処置部位を乾燥した包帯で覆ったが、薬物療法は適用しなかった。その後、皮膚は手当てせずにおいた。処置の15日後、その間にかさぶたは乾燥して剥落し、図5Bに示す写真が撮影された。図5Bにおいて、瘢痕組織がなくなって色素沈着部位の色が、自然な皮膚色よりわずかに灰色がかった色に変化しているのをはっきりと見ることができる。
【0036】
本発明の実施形態は例証のために記載したが、当然のことながら、本発明は、その精神から逸脱することなく、特許請求の範囲を超えることもなしに、数多くの変更、修正、および改変を伴って実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の装置を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、図1に示す装置の筒状部分の略断面図である。
【図3】図3は、異なる種類の溶液を用いて入れ墨から色素を除去する実験の結果を示す、写真の写しである。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の方法に従ってサリチル酸を用いて豚の皮膚上の入れ墨部位を処置した結果を示す、前後の写真の写しである。
【図5】図5Aおよび5Bは、本発明の方法に従ってサリチル酸を用いて皮膚の色素沈着部位を処置した結果を示す、前後の写真の写しである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の部位において瘢痕組織および色素沈着を除去するためのサリチル酸の使用であって、前記サリチル酸は水溶液の状態であり、それは前記皮膚部位の表面に適用され、溶液が血流に入ると有毒であると思われる濃度より低い濃度である、前記使用。
【請求項2】
皮膚の部位が、溶液が適用される間、繰り返し穿刺される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
皮膚の部位が、複数の針を整列させてなる針アレイによって繰り返し穿刺され、前記皮膚部位が穿刺されるたびに、溶液が前記の針の上に流れて針を洗う、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
サリチル酸の濃度が2%〜5%である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
色素沈着が入れ墨によるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
色素沈着が自然の経過によるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
自然の経過が、(a)創傷治癒、(b)そばかす、(c)しみ、(d)あざ、からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
皮膚の部位から瘢痕組織および色素沈着を除去するための装置であって、
(a)ギア組立部に接続したシャフトに往復運動をもたらす、モーターおよびギア組立部を有するハンドル部分;
(b)シャフトを囲む筒状部分であって、前記筒状部分の一端は前記ハンドルに接続されており、および、前記筒状部分の他端は前記皮膚の部位と気密シールを形成するのに適した先端部を有する、前記筒状部分;
(c)先端部付近でシャフトの端部に取り付けられた、複数の針を整列させてなる針アレイ;
(d)針アレイより上でシャフトに取り付けられたピストンであって、このピストンがピストンより上の筒状部分の内側の容積と、それより下の容積とを分離する液圧シールを与える、前記ピストン;
(e) 吸引手段に接続されている、前記筒状部分内の出口ポート;ならびに
(f) 溶液貯留手段に接続されている、前記筒状部分内の入口ポート、
を含んでなり、
前記モーターの作動によって、前記針アレイが、交互に、前記先端部から押し出されて、前記皮膚部位を穿刺し、それによって色素を含有する真皮内の細胞が機械的に損傷され、そして、前記皮膚部位から前記先端部内へ引き戻される;
その際、前記シャフトが下向きに動く毎回の動作の間、出口ポートは閉じられ、入口ポートは開放されており、前記溶液貯留部分に入っている溶液が前記針の上に流れて針を洗い、そして前記皮膚部位の表面上に流れる;および、
上向きの毎回の動作の間、前記入り口ポートは閉じられて前記出口ポートが開き、下方動作の間に前記皮膚部位の表面上に流れた溶液、および、前記の針の動きによって放出された細胞液および色素が、前記吸引手段によって前記筒状部分から吸い出される;前記入口および出口手段の開閉が同調することによって、前記先端部において清浄な液と汚れた液との完全な分離がなされていることが保証され、かつ、前記同調が、真皮内に浸透する前記液体の量を最小にする、
ことを特徴を有する前記装置。
【請求項9】
ピストンが円筒バルブである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7に記載の皮膚穿刺装置を用いて、皮膚の部位から瘢痕組織および色素沈着を除去する方法であって、
(a)溶液貯留部分に溶液を供給すること;
(b)溶液貯留部分および吸引手段を前記装置に接続すること;ならびに
(c)所定の時間、前記装置のモーターを作動させること、
を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
溶液が、EDTA、DMSO、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パパイン、ブロメライン、高張食塩水、サリチル酸、アロエ、ビデンチス(Bidentis)、カランコエ、ユーカリ、カモミール、キンセンカ、セージ(Salvia officinalis)、ヘリクリサム(Helichrysum arenarium)、および過酸化水素からなる群から選択される化学物質を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶液が、2%〜5%の濃度のサリチル酸の水溶液である、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−507773(P2009−507773A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524671(P2008−524671)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000876
【国際公開番号】WO2007/015232
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508031933)ホーク メディカル テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】