説明

薄膜トランジスタの製造方法

【課題】印刷法を用いて薄膜トランジスタを製造する場合において、前処理などを必要とせずに微細パターンを形成可能であり、トランジスタ特性の面内均一性に優れるとともに、インキの利用効率に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性の基板上に形成されたゲート電極41、ゲート絶縁膜、ソース電極43、ドレイン電極44、半導体層45及び封止層46を有する薄膜トランジスタ1を製造する薄膜トランジスタの製造方法であって、インキ供給手段を用いて凹凸パターンが形成された印刷用版にインキを供給するインキ供給工程と、インキの予備乾燥を経た後に凸版を用いて非画線部のインキ液膜を除去するインキ液膜除去工程と、印刷用版上に残った画線部のインキ液膜を基板40に転写して、半導体層45及び封止層46のうち少なくとも一方を形成するインキ液膜転写工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、情報技術の目覚しい発展により、ノート型パソコンや携帯情報端末等を用いて、情報の送受信が頻繁に行われている。近い将来、場所を選ばずに情報をやり取り可能なユビキタス社会が来るであろうことは、周知の事実である。そのような社会においては、より軽量・薄型の情報端末が望まれる。
現在、半導体材料の主流はシリコン系であり、その製造方法としては、フォトリソグラフィーを用いたものが一般的である。
【0003】
一方で、印刷技術を用いて電子部材を製造するプリンタブルエレクトロニクスが注目されている。
プリンタブルエレクトロニクスでは、印刷技術を用いることで、フォトリソグラフィーよりも装置や製造コストが下がり、また、真空や高温を必要としないことから、プラスチック基板が利用可能である等のメリットが挙げられる。
【0004】
この場合、半導体材料としては、有機溶媒に可溶な有機半導体や、酸化物半導体前駆体等を用いることが多い。その理由は、半導体層を、印刷法により形成できるためである。
印刷技術を用いて有機半導体層を形成する技術としては、以下の技術がある。
例えば、特許文献1に記載されている技術では、インクジェット法により、有機半導体層を形成している。
【0005】
また、例えば、特許文献2に記載されている技術では、フレキソ印刷により、有機半導体層を形成している。
また、例えば、特許文献3に記載されている技術では、凸版オフセット印刷により、有機半導体層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005‐210086号公報
【特許文献2】特開2006‐63334号公報
【特許文献3】特開2009‐224665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術のように、インクジェット法により、有機半導体層を形成する場合、一般的に、有機半導体は、溶媒に対する溶解度が低いため、ノズル近傍において有機半導体が析出して、吐出不良が発生するという問題を有している。
また、微細パターンをインクジェット法により実現するためには、パターン形成部の周囲に隔壁を設ける必要や、光照射等を用いて、予め、基板表面の濡れ性を制御する必要などがあるため、煩雑である上に、低コスト化には不向きである。
【0008】
また、有機半導体材料として低分子多結晶系の材料を用いる場合には、特に、ボトムコンタクト型トランジスタにおいて、ソース電極、ドレイン電極表面とゲート絶縁膜表面とで表面自由エネルギーが異なるため、ソース電極、ドレイン電極とゲート絶縁膜の境界部で有機半導体の結晶状態が不連続となり、トランジスタ特性が劣化することが知られている。
【0009】
また、特許文献2に記載されている技術のように、フレキソ印刷により、有機半導体層を形成する場合、アニロックスから有機半導体溶液をフレキソ版に転写する際に、フレキソ版の凸部がアニロックスの凹部に入る場合と、土手の部分にかかる場合とで、転写される液量が異なり、成膜された膜厚にばらつきが生じる。そして、膜厚のばらつきは、薄膜トランジスタの特性のばらつきとなる。
【0010】
また、特許文献3に記載されている技術のように、凸版オフセット印刷により、有機半導体層を形成する場合、離型性を有するブランケット全面にインキを塗布した後、不要な部分を除去することで所望のパターンを得るため、インキの利用効率が悪く低コスト化に寄与できない。
この場合、除去したインキを再度回収して利用することも可能であるが、凸版オフセット印刷で一般的に用いられるブランケットは、シリコーン製であり、残留シリコーンオリゴマーがインキに混入するため、インキを再度精製する必要がある。
【0011】
上記の事情を鑑み、本発明では、印刷法を用いて半導体層を形成する場合において、前処理などを必要とせずに微細パターンを形成可能であり、トランジスタ特性の面内均一性に優れるとともに、インキの利用効率に優れた、薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、少なくとも、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース電極と、ドレイン電極と、半導体層及び封止層と、を絶縁性の基板上に形成した薄膜トランジスタを製造する薄膜トランジスタの製造方法であって、
インキ供給手段を用いて凹凸パターンが形成された印刷用版にインキを供給するインキ供給工程と、
前記インキの予備乾燥を経た後に凸版を用いて非画線部のインキ液膜を除去するインキ液膜除去工程と、
前記印刷用版上に残った画線部のインキ液膜を前記基板に転写して、前記半導体層及び前記封止層のうち少なくとも一方を形成するインキ液膜転写工程と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記印刷用版は、シリコーン樹脂から形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した発明であって、前記印刷用版に形成されている凹凸パターンは、ストライプ状に形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記ストライプ状に形成されている凹凸パターンは、最終的に形成される前記半導体層の長軸方向に平行な向きで形成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項3または請求項4に記載した発明であって、前記インキ液膜除去工程において、前記印刷用版に形成されている凹凸パターンのストライプ方向と直交させて、前記非画線部のインキ液膜を除去することを特徴とするものである。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記インキ供給手段は、アニロックスであることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記インキは、有機半導体溶液であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記インキは、酸化物半導体の前駆体溶液または酸化物半導体のナノ粒子分散液であることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記封止層は、エッチングストッパー層であることを特徴とするものである。
【0015】
次に、本発明のうち、請求項10に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記インキ液膜転写工程において前記封止層の下層に前記半導体層を形成し、さらに、前記封止層をマスクとして、前記封止層の下層に形成された前記半導体層をパターニングすることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項11に記載した発明は、請求項10に記載した発明であって、前記半導体層のパターニング方法を、エッチング法とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、凹凸パターンが形成された印刷用版を用い、非画線部のインキ液膜を除去した後に印刷用版上に残った画線部のインキ液膜を基板に転写して、半導体層や封止層を形成することにより、前処理などを必要とせずに微細パターンを形成することが可能となり、トランジスタ特性の面内均一性と、インキの利用効率に優れた薄膜トランジスタを製造することが可能となる。
【0017】
また、請求項1に記載した発明であれば、凹凸パターンが形成された印刷用版にインキを供給することで、選択的に凸部にのみインキを供給することが可能となり、従来の凸版オフセット印刷と比較して、インキの利用効率が高くなるため、薄膜トランジスタの低コスト化に寄与することが可能となる。
また、低分子多結晶系の有機半導体を用いて、ボトムコンタクト型のトランジスタを作製する際には、表面エネルギーが均一な印刷用版上で結晶を析出させてから転写することで、ソース電極、ドレイン電極とゲート絶縁膜の境界部における結晶状態の不連続性を回避することが可能となるため、優れたトランジスタ特性を実現することが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載した発明であれば、印刷用版をシリコーン樹脂にすることで、インキの剥離性が高くなるため、除去や転写の際に、印刷用版へのインキ残りを軽減することが可能となる。
また、請求項3に記載した発明であれば、印刷用版の凹凸をストライプ状とすることで、インキの利用効率を高くすることが可能であるとともに、例えば、ドット形状等と比較して、ストライプ方向にインキの液量が均一化されるため、画線部におけるインキ液膜のばらつきを低減することが可能となり、トランジスタ特性の面内均一性を向上させることが可能となる。
【0019】
また、請求項4に記載した発明であれば、印刷用版におけるストライプ状の凹凸が、最終的に形成される半導体層の長軸方向に平行であることにより、短軸方向に平行である場合と比較して、インキの利用効率を高くすることが可能となる。
また、請求項5に記載した発明であれば、凸版を用いた非画線部のインキ液膜の除去が印刷用版のストライプ方向と直交していることにより、規則的に配列したトランジスタのチャネル部に、半導体層を選択的に形成することが可能となるとともに、印刷用版上のストライプ形半導体パターンをドット形状にすることが可能となるため、隣接した画素間におけるリーク電流を低減することが可能となる。
【0020】
また、請求項6に記載した発明であれば、アニロックスを用いてインキを供給することにより、印刷用版の凸部へ選択的にインキを供給することが可能となり、インキの利用効率を向上させることが可能となる。
また、請求項7に記載した発明であれば、インキとして有機半導体溶液を用いることで、低温プロセスを用いた薄膜トランジスタの製造が可能となり、プラスチック基板を利用することが可能となる。したがって、安価な薄膜トランジスタ基板が製造可能となるだけではなく、フレキシブルデバイスの実現が可能となる。
【0021】
また、請求項8に記載した発明であれば、インキとして酸化物半導体の前駆体溶液やナノ粒子分散液を用いることにより、有機半導体の場合と比較して、高いトランジスタ特性を実現することが可能となる。
また、請求項9に記載した発明であれば、封止層をエッチングストッパー層とすることにより、トップコンタクト型の薄膜トランジスタを製造する場合においても、バックチャネルを保護することが可能となるため、高いトランジスタ特性を実現することが可能となる。
【0022】
また、請求項10に記載した発明であれば、上述したインキ液膜転写工程で封止層を形成することにより、薄膜トランジスタのチャネル部のみに、選択的に封止層を形成することが可能となる。このため、例えば、スピンコート法で基板の全面に形成された有機半導体層や、インクジェット法等で大まかにパターニングされた有機半導体層の不要な部分を、溶媒やエッチャント、プラズマ等を用いて除去することが可能となるため、成膜方法によらず、半導体層を微細パターンとすることが可能となる。
【0023】
また、請求項11に記載した発明であれば、請求項10に記載した発明における半導体層のパターニング方法をエッチング法とすることにより、熱処理や光照射等により、溶媒に不溶となった半導体層の場合においても、不要な部分を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の製造方法を用いて製造される薄膜トランジスタの一例を示す概略模式図である。
【図2】図1のa−b線断面図である。
【図3】本発明の凹凸パターンを有する印刷用版の実施形態の一例を示す概略模式図である。
【図4】本発明の凸版の実施形態の一例を示す概略模式図である。
【図5−1】実施例1に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図5−2】実施例1に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図5−3】実施例1に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図6−1】本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図6−2】本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図7−1】実施例2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図7−2】実施例2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図7−3】実施例2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図7−4】実施例2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図8−1】実施例3に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図8−2】実施例3に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【図9−1】本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図9−2】本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図10】比較例に示す薄膜トランジスタの一例を示す概略模式図である。
【図11】本発明の製造方法を用いて製造される薄膜トランジスタの一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
本発明は、図1及び図2中に示す薄膜トランジスタ1を製造する、薄膜トランジスタの製造方法である。なお、図1は、本発明の製造方法を用いて製造される薄膜トランジスタ1の一例を示す概略模式図であり、図2は、図1のa−b線断面図である。
【0026】
図1及び図2中に示すように、薄膜トランジスタ1は、絶縁性の基板40上に形成された、ゲート電極41と、ゲート絶縁膜42と、ソース電極43と、ドレイン電極44と、半導体層45と、封止層46を有している。
また、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、インキ供給工程と、インキ液膜除去工程と、インキ液膜転写工程を有している。
【0027】
インキ供給工程は、インキ供給手段を用いて凹凸パターンが形成された印刷用版に、インキを供給する工程である。
具体的には、インキ供給工程では、凹凸パターンを形成する方法として、凹凸パターンが形成された印刷用版に、例えば、アニロックス等からインキを供給し、凸部へ選択的にインキ液膜を形成する方法を用いる。
【0028】
インキ液膜除去工程は、インキの予備乾燥を経た後に、凸版を用いて非画線部のインキ液膜を除去する工程である。
具体的には、インキ液膜除去工程では、インキ供給工程で形成された凹凸パターンの非画線部に対応する部分を凸部とした凸版を用いて、印刷用版からインキを除去する。
インキ液膜転写工程は、印刷用版上に残った画線部のインキ液膜を基板40に転写して、半導体層45及び封止層46のうち少なくとも一方を形成する工程である。
【0029】
具体的には、インキ液膜転写工程では、インキ液膜除去工程において印刷用版上に残った画線部に対応する部分のインキ液膜を、基材40に転写することで、所望のパターンを得る。
ここで、印刷用版の凸部に形成されたインキ液膜は、凸版で非画線部のインキ液膜を除去する前に予備乾燥することが好ましい。その理由は、液状のインキの場合、印刷用版の非画線部から完全に凸版にインキを転写することは、インキの凝集力が低いため困難であるが、予備乾燥を経ることによりインキの凝集力が増加して、完全転写することが可能になるためである。
【0030】
また、本実施形態において、印刷用版に用いられる材料は、特に限定されるものではないが、インキ液膜の形成、除去版による非画像部のインキ除去、基材40への転写が可能なものが用いられる。
また、印刷用版に用いられる材料は、変形の少ない材料が好ましいが、ある程度の柔軟性が求められる。
【0031】
このような材料としては、シリコーン系エラストマー、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることが可能である。また、ブランケット表面の濡れ性を調製するため、ブランケット表面に、フッ素樹脂及びシリコーンの塗布、プラズマ処理、UVオゾン洗浄処理などの表面処理を施しても良い。
また、本実施形態において、凸版に用いられる材料は、特に限定されるものではないが、一般的に用いられる材料として、ガラス、石英、SUSや銅等の金属、アクリレートやメタクリレート等の感光剤を含む樹脂や、不飽和ポリエステルエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等の感光性基を含む樹脂等を用いることが可能であるが、特に、寸法安定性や加工性等の観点から、ガラスや石英等を用いることが好ましい。
【0032】
また、凸版は、必要に応じて凹部に撥インキ処理等を施すことが可能である。この場合、撥インキ処理としては、シリコーンやシランカップリング剤を用いた化学的処理や、フッ素プラズマなどの物理的処理等が挙げられるが、長期安定性等を考慮すると、ガラスや金属表面に対するシランカップリング処理を用いることが好ましい。
この場合、カップリング剤としては、用いるインキによって異なるが、撥水性や撥油性の高いフッ素元素やシロキサン基が含まれるものを用いることが好ましい。
【0033】
また、上記の例として、長鎖フルオロアルキルシラン、加水分解性基含有シロキサン、フルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本実施形態において、インキ供給手段として用いられる方法は、特に限定されるものではないが、一般的に用いられる方法としては、スロットダイコートやキャピラリーコート、アニロックス等が好ましい。その理由は、凸部へ選択的にインキを供給することで、インキの利用効率を向上させることができるためであり、キャピラリーコートやアニロックス等が望ましいが、印刷タクト時間等を考慮すると、アニロックスが最も好ましい。
【0034】
また、本実施形態において、半導体材料として用いられる材料は、特に限定されるものではないが、インキ化を考慮すると、有機半導体材料や酸化物半導体材料を用いることが望ましい。
有機半導体材料としては、ポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、及びそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料を用いることが可能である。
【0035】
また、有機半導体材料としては、ペンタセン、テトラセン、銅フタロシアニン、ペリレン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS−ペンタセン)、及びそれらの誘導体のような低分子有機半導体材料や、加熱処理等で有機半導体に変換される前駆体を用いることが可能である。
また、有機半導体材料としては、カーボンナノチューブまたはフラーレン等の炭素化合物や、半導体ナノ粒子分散液等も、半導体層の材料として用いることが可能である。また、亜鉛やインジウム、ガリウムなどの金属塩化物、金属アセテート、金属硝酸塩等を用いることも可能である。
【0036】
また、半導体層45を全面に成膜した後に、封止層46をマスクとして半導体層45をパターニングする場合には、上述した半導体材料の他にも、真空成膜可能なアモルファスシリコン等のシリコン系半導体材料や、酸化亜鉛等の酸化物半導体等も用いることが可能である。
また、本実施形態において、封止材料として用いる材料は、特に限定されるものではないが、一般的に用いられる材料としては、フッ素系樹脂やポリビニルアルコール等が挙げられる。しかしながら、封止材料として用いる材料は、これらに限定されるものではない。また、封止層46には、必要に応じて遮光性を付与することも可能である。
【0037】
また、本実施形態において、基材40に用いる材料は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート等のフレキシブルなプラスチック材料、石英等のガラス基板やシリコンウェハー等を用いることが可能である。
以下、本発明の薄膜トランジスタの製造方法について、実施例を用いて説明する。
(実施例1)
図3中に示す印刷用版10を、以下のように作製した。なお、図3は、本発明の凹凸パターンを有する印刷用版の実施形態の一例を示す概略模式図である。
【0038】
ガラスのエッチングにより、印刷用版の凹凸を反転させた基板を作製し、次に、この基板にシリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製TSE3455T)を流し込み、凸部11と凹部12からなる凹凸パターンを有する印刷用版10を作製した。
また、図4中に示す凸版20を以下のように作製した。なお、図4は、本発明の凸版の実施形態の一例を示す概略模式図である。
【0039】
ガラスのエッチングにより、形成される半導体層の非画線部に対応する部分を凸部とした凸版20を作製した。
また、薄膜トランジスタを、図5中に示す方法により作製した。なお、図5は、実施例1に記載した、本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
薄膜トランジスタの基材として、ポリイミド(宇部興産製)を用いた。
【0040】
そして、図5(a)中に示すように、アルミニウムをスパッタ法により100[nm]成膜し、ポジレジストを用いたフォトリソ、エッチング、レジスト剥離により、ゲート電極41を形成した。
次に、ゲート絶縁材料として、ポリイミド(三菱ガス化学製ネオプリム)を用いてダイコーターにより塗布し、180[℃]で1時間乾燥させてゲート絶縁膜を形成した。
【0041】
次に、図5(b)中に示すように、蒸着法により金を50[nm]成膜し、ポジレジストを用いたフォトリソ、エッチング、レジスト剥離により、ソース電極43とドレイン電極44を形成した。
ここで、画線部のパターンは、図6中に示す方法により作製した。なお、図6は、本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【0042】
半導体材料として、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS−ペンタセン)(Aldrich製)を用いた。また、テトラリン(関東化学製)に2重量[%]で溶解させたものを、インキとして用いた。
そして、アニロックスより印刷用版10にインキを供給し、印刷用版の凸部11にインキ液膜31を形成した。次に、室温で5分の予備乾燥を行い、凸版20を用いて、非画線部のインキ液膜32を除去した。
【0043】
次に、図6(e)中に示すように、印刷用版10上に残された画線部のインキ液膜33を、薄膜トランジスタ基材のチャネル部に相当する部分に転写し、90[℃]で1時間乾燥させて、図5(c)中に示すように、半導体層45を形成した。
半導体層45を形成した後、封止材料としてポリビニルアルコール(Aldrich製)を純水に5重量[%]で溶解させたインキを用い、半導体層45と同様の方法で、図5(d)中に示すように、封止層46を形成した。
【0044】
この結果、実施例1では、トランジスタ特性に優れた薄膜トランジスタを形成することが可能であった。
(実施例2)
実施例2の印刷用版と凸版は、実施例1と同様の方法で作製した。
実施例2の薄膜トランジスタは、図7中に示す方法により作製した。なお、図7は、実施例2に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【0045】
薄膜トランジスタの基材40として、ポリエチレンナフタレート(帝人デュポン製)を用いた。
そして、銀ナノ粒子を分散させたインキ(ハリマ化成製)を用い、図7(a)中に示すように、インクジェット法でゲート電極41を形成した。
次に、ゲート絶縁材料として、ポリ(4−ビニルフェノール)(Aldrich製)とメラミン樹脂(三和ケミカル製)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学製)に溶解させた溶液を用い、ダイコーターにより塗布した後に、180[℃]で1時間乾燥させて、ゲート絶縁膜を形成した。
【0046】
次に、銀ナノ粒子を分散させたインキ(ハリマ化成製)を用い、インクジェット法を用いて、図7(b)中に示すように、ソース電極43とドレイン電極44を形成した。
さらに、半導体材料として、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS−ペンタセン)(Aldrich製)を用い、テトラリン(関東化学製)に2重量[%]で溶解させたものをインキとして用いて、この半導体インキをスピンコート法により塗布し、図7(c)中に示すように、基板全面に半導体層45を形成した。
【0047】
ここで、画線部のパターンは、図6中に示す方法により作製した。
封止材料として、ポリビニルアルコール(Aldrich製)を純水に5重量[%]で溶解させたインキを用いた。
そして、アニロックスより印刷用版10にインキを供給し、印刷用版の凸部11にインキ液膜32を形成した。次に、室温で2分の予備乾燥を行い、凸版20を用いて、非画線部のインキ液膜32を除去した。
【0048】
さらに、印刷用版上に残された画線部のインキ液膜33を、薄膜トランジスタ基材のチャネル部に相当する部分に転写した後、90[℃]で1時間乾燥させて、図7(d)中に示すように、封止層46を形成した。
次に、封止層46をマスクとして、露出している半導体層45をトルエンで洗浄することにより、図7(e)中に示すように、半導体層45のパターニングを行った。
【0049】
この結果、実施例2では、トランジスタ特性に優れた薄膜トランジスタを形成することが可能であった。
(実施例3)
実施例3の印刷用版と凸版は、実施例1と同様の方法で作製した。
実施例3の薄膜トランジスタは、図8中に示す方法により作製した。なお、図8は、実施例3に記載の本発明の薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【0050】
薄膜トランジスタの基材40として、ガラスを用いた。
そして、アルミニウムを、スパッタ法により100[nm]成膜し、ポジレジストを用いたフォトリソ、エッチング、レジスト剥離により、図8(a)中に示すように、ゲート電極41を形成した。
次に、ターゲットとしてSiNの焼結体を用い、スパッタ法によりSiONを300[nm]積層し、ゲート絶縁膜とした。
【0051】
そして、ターゲットとしてInGaZnOを用い、シャドウマスクを用いたスパッタ法によって、図8(b)中に示すように、40[nm]の膜厚を有する半導体層45を作製した。
ここで、画線部のパターンは、図9中に示す方法により作製した。なお、図9は、本発明の印刷用版上での画線部に対応するインキ液膜の作製方法の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【0052】
エッチングストッパー材料として、ポリ(4−ビニルフェノール)(Aldrich製)とメラミン樹脂(三和ケミカル製)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学製)に溶解させた溶液を用いた。
そして、アニロックスより印刷用版10へインキを供給し、印刷用版の凸部11にインキ液膜を形成した後、室温で2分の予備乾燥を行い、凸版20を用いて、非画線部のインキ液膜32を除去した。
【0053】
次に、印刷用版上に残された画線部のインキ液膜33を、薄膜トランジスタ基材の半導体層上に転写し、180[℃]で1時間乾燥させて、図8(c)中に示すように、封止層46を形成した。なお、実施例3の封止層46は、エッチングストッパー層を兼ねている。
さらに、封止層46には、ビア47(コンタクト・ホール)を設けた。
【0054】
次に、インジウム錫酸化物をスパッタ法により100[nm]成膜し、ポジレジストを用いたフォトリソ、エッチング、レジスト剥離により、図8(d)中に示すように、ソース電極43とドレイン電極44を形成した。
この結果、実施例3では、トランジスタ特性に優れた薄膜トランジスタを形成することが可能であった。
(比較例)
比較例では、図10中に示す薄膜トランジスタ1を作製した。なお、図10は、比較例に示す薄膜トランジスタの一例を示す概略模式図である。
【0055】
印刷用版は、実施例1と同様の方法で作製した。
また、凸版による非画線部のインキ液膜除去をしない以外は、実施例1と同様の方法で薄膜トランジスタを作製した。
その結果、比較例では、隣接する画素間でリーク電流が観測されたため、オフ電流が増加し、優れたトランジスタ特性は得られなかった。
(変形例)
なお、本発明の製造方法を用いて製造される薄膜トランジスタ1の構成は、図1及び図2中に示した構成に限定されるものではなく、例えば、図11中に示すように、封止層46が形成されていない構成としてもよい。なお、図11は、本発明の製造方法を用いて製造される薄膜トランジスタの一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 薄膜トランジスタ
10 印刷用版
11 凸部
12 凹部
20 凸版
31 インキ液膜
32 非画線部インキ液膜
33 画線部インキ液膜
40 基板
41 ゲート電極
42 ゲート絶縁膜
43 ソース電極
44 ドレイン電極
45 半導体層
46 封止層
47 ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース電極と、ドレイン電極と、半導体層及び封止層と、を絶縁性の基板上に形成した薄膜トランジスタを製造する薄膜トランジスタの製造方法であって、
インキ供給手段を用いて凹凸パターンが形成された印刷用版にインキを供給するインキ供給工程と、
前記インキの予備乾燥を経た後に凸版を用いて非画線部のインキ液膜を除去するインキ液膜除去工程と、
前記印刷用版上に残った画線部のインキ液膜を前記基板に転写して、前記半導体層及び前記封止層のうち少なくとも一方を形成するインキ液膜転写工程と、を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記印刷用版は、シリコーン樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記印刷用版に形成されている凹凸パターンは、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記ストライプ状に形成されている凹凸パターンは、最終的に形成される前記半導体層の長軸方向に平行な向きで形成されていることを特徴とする請求項3に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記インキ液膜除去工程において、前記印刷用版に形成されている凹凸パターンのストライプ方向と直交させて、前記非画線部のインキ液膜を除去することを特徴とする請求項3または請求項4に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記インキ供給手段は、アニロックスであることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記インキは、有機半導体溶液であることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記インキは、酸化物半導体の前駆体溶液または酸化物半導体のナノ粒子分散液であることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記封止層は、エッチングストッパー層であることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記インキ液膜転写工程において前記封止層の下層に前記半導体層を形成し、さらに、前記封止層をマスクとして、前記封止層の下層に形成された前記半導体層をパターニングすることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記半導体層のパターニング方法を、エッチング法とすることを特徴とする請求項10に記載した薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−77713(P2013−77713A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216952(P2011−216952)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】