説明

薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜および該絶縁膜を備えた薄膜トランジスタ素子

【課題】低温条件下かつ溶液塗布プロセスにより形成可能であり、薄膜トランジスタにおける電気特性であるヒステリシス、On/Off比が良好な薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜及び該絶縁膜を備えた薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】必須成分として(A)アルケニル基を有する化合物、(B)SiH基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物を低温条件下によるポストベイクしたゲート絶縁膜を用いることにより、良好なトランジスタ特性が発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、低温条件下で簡便な溶液塗布プロセスにより形成可能であり、かつ、良好なトランジスタ特性を発現する薄膜トランジスタを提供すること。
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイとして注目を浴びる電子ペーパーなどをはじめとしたフレキシブルディスプレイ開発のため、プラスチックフィルムを基板として低温かつ印刷法等の簡便に形成できる薄膜トランジスタが盛んに研究開発されており、半導体材料としてペンタセン、ポリチオフェン化合物を用いる有機TFTやZnO化合物を用いる酸化物TFT(特許文献1)が提案されており、中には液晶ディスプレイで用いられているaSiTFT並みの特性を有する半導体材料も見出されている。
【0003】
一方、低温プロセスによるトランジスタ製造において半導体材料のみならず、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等の絶縁膜についても低温形成が必須であり、ポリビニルアルコール(特許文献2)やシリコン系ポリマー(特許文献3)などの有機材料を絶縁膜として用いたトランジスタが提案されているが、半導体特性として未だ満足するものが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−158147号公報
【特許文献2】特開2004−349319号公報
【特許文献3】特開2007−43055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情から、本発明の目的は、簡便な溶液塗布プロセスにより形成可能な絶縁膜を有し、かつ、良好なトランジスタ特性を発現する薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、下記特長を有する薄膜トランジスタを用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0007】
1). 必須成分として(A)アルケニル基を有する化合物、(B)SiH基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物より形成されることを特徴とする薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0008】
2). 成分(A)が1分子中に少なくとも2個以上アルケニル基を有する有機化合物、鎖状及び、環状ポリシロキサンから少なくとも1種類から選ばれることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0009】
3). 成分(A)が、下記一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
で表される構造を含むことを特徴とする1)または、2)に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0012】
4). 成分(A)が下記一般式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中Rは水素原子または炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってよく、nは1〜10、mは0〜10、ただしm+n≧2、の数を表す)で表される構造を含むことを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0015】
5). 成分(B)が、下記一般式(I)
【0016】
【化3】

【0017】
構造を含み、SiH基を含有する化合物であることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0018】
6). 化合物(B)が、下記一般式(III)
【0019】
【化4】

【0020】
で表される構造を含むことを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の硬化性組成物の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0021】
7). 化合物(B)が、下記一般式(IV)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜10、mは0〜10、ただしm+n≧2、の数を表す)で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である1)〜6)のいずれか一項に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【0024】
8). 1)〜7)のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜を備えた薄膜トランジスタ素子。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低温条件下で簡便な溶液塗布プロセスにより形成可能であり、特性に優れる薄膜トランジスタを与え得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1〜3に係る薄膜トランジスタの構造図である。
【図2】本発明の実施例4〜9に係る薄膜トランジスタの構造図である。
【図3】本発明の実施例4に係るXRD測定の回折ピークを示す。
【図4】本発明の実施例5に係るXRD測定の回折ピークを示す。
【図5】本発明の実施例6に係るXRD測定の回折ピークを示す。
【図6】本発明の実施例4に係るAFM測定の形状観察像である。
【図7】本発明の実施例5に係るAFM測定の形状観察像である。
【図8】本発明の実施例6に係るAFM測定の形状観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細を説明する。
本発明で得られる薄膜トランジスタとは、電界効果トランジスタ(FET)を示し、ソース、ドレイン、ゲート電極から形成されている3端子型、およびバックゲートを含む4端子型のトランジスタのことであり、ゲート電極に電圧印加することで発生するチャネルの電界によりソース/ドレイン間の電流を制御する薄膜型のトランジスタを示す。また、半導体層とゲート電極を隔てる絶縁層が本発明で得られるゲート絶縁膜を示す。
【0028】
トランジスタ構造としては、ゲート電極の配置に関してボトムゲート型、トップゲート型、さらにはソース/ドレイン電極の配置に関し、ボトムコンタクト型、トップコンタクト型など適用する表示デバイス構造に応じて様々な組み合わせ、配置で設計可能であり、特にはその構造は限定されない。
【0029】
このトランジスタにおいて、アクティブマトリクス型のフラットパネルディスプレイにおける画素トランジスタとして広く用いられている。ディスプレイを安定的に駆動させるためトランジスタの特性として、閾値電圧、ヒステリシス、ON/OFF比が重要特性として挙げられる。
【0030】
ここで言う閾値電圧とは、トランジスタがON状態となり半導体層に電流が流れ始める電圧値を示し、トランジスタの電流伝達特性においてソース/ドレイン間に流れる電流I、ゲート印加電圧Vとした際の(I1/2 とV 間のグラフにおいて線形部分の延長線とV 軸との交点より算出される。
【0031】
またヒステリシスとは、トランジスタ反復動作に対し電流伝達特性の再現動作性を示し、反復動作時の閾値電圧の差で表される。ディスプレイとした際の安定した駆動のためには、ヒステリシスが5V以下であることが好ましく、2V以下であることがさらに好ましい。
【0032】
ON/OFF電流比とは、トランジスタの電流伝達特性におけるソース/ドレイン間に流れる電流Iの最大電流値と最小電流値の比(Ion/Ioff)で表され、大きければ大きいほどスイッチとしての機能に優れることを示し、駆動に大電流を要する方式の駆動も可能となることより10以上であることが好ましい。キャリア移動度についてもTFTデバイスの良し悪しを示す重要な指標であり、値が大きいほどTFT素子として優れている事を示し、0.05以上であることが好ましい。
【0033】
ただし実際のデバイスとして駆動させる際、上記物性をひとつでも満足しないものは致命的であり、全ての特性を満足する事が必要となる。ON/OFF電流値およびキャリア移動度が高い素子はヒステリシスが大きくなりやすく、低ヒステリシスと高ON/OFF電流値およびキャリア移動度を両立するトランジスタデバイスである事が好ましい。
【0034】
またソース/ドレイン電極Vd間およびゲート電極に印加する電圧Vは、特に限定はされないが、−50〜50Vの範囲で使用する半導体材料、および駆動方式に応じ適宜選択して印加してもよい。トランジスタとしての消費電力が抑制できるという観点より、−50〜50Vであることが好ましく、0〜20Vの範囲で駆動するトランジスタがさらに好ましい。
【0035】
(トランジスタの形成方法)
薄膜トランジスタの形成温度については、フレキシブルディスプレイなどへの展開のためにはプラスチック基板での形成可能であることが必要であり、寸法安定性などの観点より150℃以下での形成がこの好ましく、120℃以下で形成できることがさらに好ましい。この形成温度を達成するためには、トランジスタの電極層、半導体層、絶縁膜層の個々が低温条件で形成されることが必要となる。
【0036】
ただし、低温条件で形成されたトランジスタについては、上記トランジスタ特性を満足するものが得られにくく、特に絶縁膜を低温で形成したトランジスタについては、上記にあるようなディスプレイ駆動に必要な特性に関し、満足のいく特性発現がなされにくい。
【0037】
半導体層としては様々な素材のものが提案されており、ペンタセン系、オリゴチオフェン系、フタロシアニン系等の有機半導体化合物、Si系やZnO系の無機物半導体が挙げられる。有機半導体であれば、低温で半導体層を形成できるため、全て低温プロセス化できるという観点で好ましい。また、Si系やZnO系の無機半導体であれば、絶縁膜形成を塗布プロセス化することにより製膜のタクトタイム短縮などが見込めるので好ましい。
また、無機半導体、有機半導体に関わらず、半導体層の厚みは、10〜500nmの範囲が好ましい。スパッタリング、CVD、蒸着法の真空プロセスを用いた場合では、製膜速度は、0.01〜0.5nm/secの範囲であることが好ましい。
【0038】
また半導体層の形成方法に関しては、蒸着、塗布など様々な工法が提案されており、特に限定されないが、150℃以下のような低温で形成可能であり、プラスチック基板上での形成が可能となることからスパッタ、蒸着、塗布法で形成できることが好ましく、印刷プロセスのような簡便なプロセスを用いて量産できることよりコストメリットの観点から塗布法で形成できるものが好ましい。
【0039】
電極材料に関しては、特に限定せず使用することができるが、簡便に入手できるAu、Al、Pt、Mo、Ti、Cr、Ni、Cu、ITO、PEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクなどが好適に用いられる。抵抗が低く、高い導電性を得られることよりAl、Mo、Ti、Cr、Ni、Cuなどが好ましく、また透明性が必要な箇所に適用できる観点からは、ITO、PEDOT/PSSが好ましく、電極表面が酸化されにくくの安定性に優れるという観点からは、Au、Ptが好ましく、印刷プロセスにより形成できることよりPEDOT/PSS等の導電性高分子、導電ペースト、メタルインクが好ましく用いられる。
【0040】
さらに絶縁膜材料、例えばゲート絶縁膜やパッシベーション膜に関しても、様々な材料が適用できる。薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁膜とは、ゲート電極と半導体層との間に形成される絶縁膜であり、微小な電流リークでも動作不良に影響することから極めて高い絶縁信頼性が必要となる部材である。またパッシベーション膜については、半導体素子を保護する役目を担う絶縁膜であり、ゲート絶縁膜と同様、高い絶縁信頼性が必要となる部材である。
【0041】
形成方法に関しても、CVD法、スパッタリング、蒸着、塗布など様々な工法が提案されている。ただし印刷プロセスによるフレキシブルディスプレイなどへの展開のためには半導体材料同様、塗布により形成できるものが好ましく、高い絶縁性を有する樹脂組成物が好適に用いられる。さらに塗布方法に関しても特に限定されるものではなく、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェットまたはドロップキャスティングなどの方法で成膜することができる。また成膜する基材の状態に合わせ適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整を行っても良い。
【0042】
このように塗布プロセスで形成できる絶縁膜材料として、様々な樹脂化合物が 適用・検討されているが、絶縁信頼性などに欠け上記トランジスタ特性において満足する材料およびそれを用いる薄膜トランジスタは得られていない。
【0043】
(ゲート絶縁膜材料について)
また本発明のゲート絶縁膜材料について説明する。
溶液で塗布することが可能で、高い絶縁性を発現する薄膜となるものであれば特に限定されるものではないが、特に形成される薄膜において、薄膜での絶縁性に優れ、その他製造プロセス中に暴露されるエッチング液、現像液、溶剤等の薬液への耐性が高いという観点より、ポリシロキサン系化合物であることが好ましい。またこの樹脂組成物に含まれるポリシロキサン系化合物としては、シロキサン単位(Si−O−Si)を含有する化合物、重合体を示し、構造上特に限定されるものではない。
【0044】
また、これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる硬化物は硬度が高くより絶縁信頼性に優れ、またM単位(XSiO1/2)、またはD単位(XSiO2/2)の含有率が高いものほど硬化物はより柔軟で低応力なものが得られる。
【0045】
(架橋反応について)
より信頼性の高い絶縁膜を得る為には、熱もしくは光エネルギーを外部より加えて架橋させ高い絶縁性を発現させることが好ましい。一般に架橋反応に関しては、エポキシ基のカチオン重合や酸無水物、アミン架橋やビニル基、アクリロイル基のラジカル架橋などが知られており多く用いられているが、150℃以下のような低温条件では架橋反応が完結しない為、これらをゲート絶縁膜とした場合良好な特性の有機トランジスタが得られにくく好ましくない。架橋反応としては、反応後に未反応部位が残りにくく、絶縁性に優れる薄膜が形成できることからヒドロシリル化反応組成物であることが好ましく、ゲート絶縁膜としても好適に用いることができる。
【0046】
(A)アルケニル基を有する化合物
本発明における必須成分(A)について説明する。
電気絶縁性に優れる点で(A)成分としてポリシロキサン化合物が好ましい。ポリシロキサン系化合物であれば、アルケニル基の中でもビニル基が1分子中に2個以上有していれば特に限定せず使用できる。
【0047】
アルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、テトラビニルシクロシロキサン、下記SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示される。環状シロキサンとしては一般式(II)で表される化合物を用いることができる。具体的には、テトラビニルシクロシロキサンが挙げられる。
【0048】
これらポリシロキサン系化合物を用いることで薄膜の絶縁耐圧性が優れる観点より好ましい。一般に絶縁耐圧性とは薄膜に電圧を印加した際の絶縁破壊する電圧値で表され、薄膜トランジスタ素子とした際の絶縁膜の長期信頼性を示す指標となる。アルケニル化合物としてポリシロキサン系化合物を用いたほうが有機系化合物と比べ、薄膜中におけるシロキサン単位(Si−O−Si)の含有率が高くなり、より絶縁耐圧性に優れる薄膜を得る
ことができる。
【0049】
また、アルケニル基を有する化合物の例としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれる原子より構成される化合物であって、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を2個以上有する有機化合物であっても構わない。またSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0050】
上記有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類でき、有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0051】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0052】
有機化合物の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン
、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロへキセン、ビニルシクロペンテン、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテルなどが挙げられる。
【0053】
また、構造中に下記一般式(I)で表される構造を含むことにより、構造上緻密となり絶縁性、耐圧性に優れる絶縁膜となりうる観点より好ましい。
【0054】
【化6】

【0055】
当該構造は、汎用のイソシアヌル環含有化合物が挙げられる。イソシアヌル環含有化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(3−メルカプトプロピオニロオキシエチル)イソシアヌレートなどを用いて当該構造を目的とするする化合物に導入することができる。なかでも製膜性や安定した薄膜トランジスタ特性を得られることからトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0056】
なお、アルケニル基を有する化合物(A)としては、一般式(I)の構造を有する化合物、一般式(II)の構造を有する化合物それぞれを単独で用いてもよいが、それらを併用して用いてもかまわない。また、一般式(I)の構造を有する化合物、および/または一般式(II)の構造を有する化合物を主成分(50重量%以上、さらには75重量%以上、特には90重量%以上)として他のアルケニル化合物を併用してもかまわない。
【0057】
(B)SiH基を有する化合物
本発明における必須成分(B)について説明する。
SiH基を有する化合物については、強靭な薄膜が得られるという観点より、あらかじめポリシロキサン化合物同士または有機化合物とポリシロキサン化合物とを部分的に反応させているオリゴマーも用いることが好ましい。部分的に反応させる方法としては特には限定されるものではないが、加水分解縮合と比較して反応後に電気的および熱的に安定なC−Si結合を形成し、また反応制御が容易で未反応部分が残りにくいという観点より、ヒドロシリル化反応を適用することが好ましい。
【0058】
部分的に反応させる化合物としては、上記SiH基を有するシロキサン化合物とアルケニル基を有するシロキサン化合物または有機化合物を適宜組み合わせて用いることができる。また上記ヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、公知のヒドロシリル化触媒を用いればよい。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0059】
ポリシロキサン化合物としては、ジメチルヒドロシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、側鎖にSiH基を有する環状、鎖状のポリシロキサン等が挙げられる。環状ポリシロキサンとしては、一般式(IV)の構造を有する化合物が好適に用いることができ、m+nが3以上、中でもnが3以上、特にはn=4である化合物が好ましい。
【0060】
その具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−メチルー3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジメチルー5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジプロピル−5,7−ジハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−7−ヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示さ
れる。特に入手性の観点より、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0061】
また予め部分的にヒドロシリル化反応を行う際のアルケニル化合物としては、上記に例示されているアルケニル化合物であれば限定せず使用することができる。
特に下記一般式(I)で表される構造を含むアルケニル化合物であることにより、構造上緻密となり絶縁性、耐圧性に優れる絶縁膜となりうる観点より好ましい。
【0062】
【化7】

【0063】
具体的な化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレートなど用いて当該構造を目的とするする化合物に導入することができるが挙げられ、樹脂組成物の架橋反応に応じて適宜選択して使用することができる。なかでも、製膜性と安定した薄膜トランジスタ特性を得られることからトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0064】
また、SiH基を有する化合物(B)として下記一般式(III)で表される構造を含む化合物を用いると、誘電率を向上させることができるため好ましい。一般に薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としてはより高い電子移動度が得られやすいという観点から誘電率は高いほうが好ましく、下記構造を含有することで高い電子移動度を示す優れた特性の薄膜トランジスタを得ることができる。
【0065】
【化8】

【0066】
さらにSiH基を有する化合物(B)において、さらに上記例示のSiH基含有化合物とアルケニル基を分子中に1つ有する化合物をヒドロシリル化させる事により、得られる薄膜において架橋密度を下げクラック抑制など柔軟性を付与することもできる。使用できる化合物は特に限定はなく使用することができる。
【0067】
具体的には、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族等のエーテル系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール、4−tertブトキシスチレン、アリルアニソール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン等のシリコン化合物類、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ系化合物類、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のアクリル系化合物類が挙げられる。
【0068】
さらに、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等が挙げることができる。
【0069】
特に薄膜表面において水接触角が低く半導体材料等の濡れ性が良好になりやすく、積層する電極との密着性が良好になりやすいという観点より、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ系化合物類や1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール、4−tertブトキシスチレン、アリルアニソール等の芳香族系化合物類が特に好ましい。

またSiH基を有する化合物(B)としては、一般式(III)の構造を有する化合物、一般式(IV)の構造を有する化合物それぞれを単独で用いてもよいが、それらを併用して用いてもかまわない。また、一般式(III)の構造を有する化合物、および/または一般式(IV)の構造を有する化合物を主成分(50重量%以上、さらには75重量%以上、特には90重量%以上)として他のSiH基を有する化合物を併用してもかまわない。
【0070】
(C)ヒドロシリル化触媒
本発明における必須成分(C)について説明する。
ヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、公知のヒドロシリル化触媒を用いればよい。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0071】
(溶媒)
樹脂組成物を均一に塗布するために溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0072】
特に均一な膜が形成しやすい観点より、トルエン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、等が好ましい。
【0073】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる樹脂組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1gであり、好ましい使用量の上限は10gである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【実施例】
【0074】
当該発明の手法を用いて下記実施例および比較例で作成した薄膜トランジスタについて、半導体パラメーターアナライザー(Agilent4156)を用い電流伝達特性を評価し得られたトランジスタの電流伝達特性を下記の方法によって算出した結果およびゲート絶縁膜の特性を表1、表2に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
この結果からもわかるように、本発明により得られる薄膜トランジスタは、低温で形成が可能であり低ヒステリシスと高いON/OFF比、キャリア移動度とを両立する優れた特性を有している事が分かる。
【0078】
(電流伝達特性)
作製したトランジスタにおいてソース/ドレイン間に−40Vの電圧を印加した状態で、ゲート電極に20〜−40Vで印加した際のソース/ドレイン間電流量(I)をプロットし電流伝達特性とした。
【0079】
(ヒステリシス)
トランジスタ反復動作時において、閾値電圧の差をヒステリシスとして算出した。
【0080】
(ON/OFF電流比)
オン時の電流Ionは、電流伝達特性の曲線において飽和領域での最大電流値とし、オフ時の電流Ioffは、オフ状態の最小電流から求めた。ON/OFF電流比Ion/Ioffは、オン状態の最大電流値とオフ状態の最小電流値との比から算出した。
【0081】
(閾値電圧)
閾値電圧Vthは電流伝達特性における飽和領域間(ゲート電圧V=30〜40V)における接線のX切片電圧値を閾値電圧Vthとした。
【0082】
(キャリア移動度)
キャリア移動度μは下記計算式を用いて、電流伝達特性でのゲート電圧V=40VにおけるI値を代入して算出した。
【0083】
μ=2(L×I)/(W×(ε/d)×(V−Vth
L:チャネル長(80μm) W:チャネル幅(2mm)
ε:誘電率(2.57E−11) d:膜厚
:ゲート電圧 Vth:閾値電圧
:ソースドレイン間電流。
【0084】
(合成実施例1)
300mL四つ口フラスコにトルエン72.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72.4gを入れて気相部を窒素置換した後、内温105℃とし、トリアリルイソシアヌレート10g、トルエン10g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0063gの混合液を滴下した。H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。溶剤のトルエンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物Aを得た。H−NMR測定により、9.2mmol/gのSiH基を有するポリシロキサン化合物であった。
【0085】
(合成実施例2)
300mL四つ口フラスコにトルエン72.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72.4gを入れて気相部を窒素置換した後、内温105℃とし、ビスフェノールSジアリルエーテル20g、トルエン20g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0063gの混合液を滴下した。H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。溶剤のトルエンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物Bを得た。H−NMR測定により、7.0mmol/gのSiH基を有するポリシロキサン化合物であった。
【0086】
(合成実施例3)
300mL四つ口フラスコにトルエン72.4g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン72.4gを入れて気相部を窒素置換した後、内温50℃とし、アリルグリシジルエーテル51.58g、トルエン51.58gおよび白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液0.012g(白金として3wt%含有)の混合液を添加した。H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、続いて内温105℃とし、トリアリルイソシアヌレート24.9g、トルエン24.9g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.012gの混合液を滴下した。
【0087】
H−NMRでアリル基が消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。溶剤のトルエンを減圧留去し、ポリシロキサン系化合物Cを得た。H−NMR測定により、3.8mmol/gのSiH基を有するポリシロキサン化合物であった。
【0088】
(製造実施例1)
得られたポリシロキサン系化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)4.0gを混合し、樹脂組樹脂組成物1とした。
【0089】
(製造実施例2)
得られたポリシロキサン系化合物A1g、1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)4.0gを混合し、樹脂組樹脂組成物2とした。
【0090】
(製造実施例3)
得られたポリシロキサン系化合物B1g、トリアリルイソシアヌレート0.73g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0017g、1−エチニルシクロヘキサノール0.0017g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)4.0gを混合し、樹脂組樹脂組成物3とした。
【0091】
(製造実施例4)
得られたポリシロキサン系化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.76g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有) 0.0017g、2−メチルー3−ブチンー2−オール0.0035g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)7.0gを混合し、樹脂組樹脂組成物4とした。
【0092】
(製造実施例5)
得られたポリシロキサン系化合物A1g、トリアリルイソシアヌレート0.76g、DMS−H11(Gelest製、SiH基含有ポリシロキサン化合物)0.0176g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有) 0.0017g、2−メチルー3−ブチンー2−オール0.0035g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)7.1gを混合し、樹脂組樹脂組成物5とした。
【0093】
(製造実施例6)
得られたポリシロキサン系化合物A0.33g、得られたポリシロキサン系化合物C0.66g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート0.74g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有) 0.0017g、2−メチルー3−ブチンー2−オール0.0035g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)7.0gを混合し、樹脂組樹脂組成物6とした。
【0094】
(製造比較例1)
ポリビニルフェノール(分子量:8500、Aldrich製)1g、Poly(melamine−co−formaldehyde)methylate1.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤、PGMEA)8g溶解させ樹脂組成物7とした。
【0095】
(製造比較例2)
エチルシリケート40(コルコート株式会社製)1gに、メチルイソブチルケトン8g、RHODORSIL−PI2074(カチオン重合開始剤、ローディア製)の2−アセトキシ−1−メトキシプロパン25wt%溶液0.05gを加え樹脂組成物8とした。
【0096】
(実施例1〜3、比較例1、2)
n型高ドープSi基板を導電層とし、ゲート電極とした。その上に製造実施例および比較製造例で得られた樹脂組成物1〜3および7,8を1000rpm、30secの条件でスピンコートにより塗布し、150℃、1hでポストベイクしゲート絶縁膜2を形成した。さらに蒸着(アルバック社製VPC1100)により蒸着レート1Å/secで、1000Åの厚さにペンタセンの有機半導体層3を形成させ、その上にチャネル長さ80μm、チャネル幅2mmのマスクを用いて蒸着によって厚さ300Åのソース/ ドレインAu電極4,5を形成し薄膜トランジスタを製作した。
【0097】
(比較例3)
5000Åの熱酸化膜付きn型高ドープSi基板をゲート電極1およびゲート絶縁膜2とした。この基板をヘキサメチルジシラザン(HMDS、東京化成製)24h室温で浸漬させ110℃、10minさらに蒸着(アルバック社製VPC1100)により蒸着レート1Å/secで、1000Åの厚さにペンタセンの有機半導体層3を形成させ、その上にチャネル長さ80μm、チャネル幅2mmのマスクを用いて蒸着によって厚さ300Åのソース/ ドレインAu電極10、11を形成し薄膜トランジスタを製作した。
【0098】
(実施例4〜6、比較例4)
ガラス基板6にアルミ(Al)を用いて厚さ500Åのゲート電極7を形成し、その上に製造実施例および製造比較例で得られた樹脂組成物4〜7を2000rpm、30secの条件でスピンコートにより塗布し、120℃、10minでポストベイクしゲート絶縁膜8を形成した。さらに蒸着(アルバック社製VPC1100)により蒸着レート1Å/secで、1000Åの厚さにペンタセンの有機半導体層9を形成した。その上にチャネル長さ80μm、チャネル幅2mmのマスクを用いて蒸着によって厚さ300Åのソース/ ドレインAu電極10,11を形成し薄膜トランジスタを製作した。
【0099】
(実施例7〜9)
ガラス基板6にアルミ(Al)を用いて厚さ500Åのゲート電極7を形成し、その上に製造実施例で得られた樹脂組成物4〜6を2000rpm、30secの条件でスピンコートにより塗布し、120℃、10minでポストベイクしゲート絶縁膜8を形成した。さらにTipsペンタセン(アルドリッチ製)の0.3wt%クロロホルム溶液をスピンコートにより塗布し、80℃、30min乾燥させることでTipsペンタセンの有機半導体層9を形成した。その上にチャネル長さ80μm、チャネル幅2mmのマスクを用いて蒸着によって厚さ300Åのソース/ ドレインAu電極10,11を形成し薄膜トランジスタを製作した。
【0100】
・表面水接触角測定
ガラス基板30×30mm上に製造実施例および製造比較例で得られた樹脂組成物4〜7をスピンコートにより1.0μm厚で製膜し、ホットプレートにて120℃、10minでポストベイクして薄膜サンプルを得た(比較例4は180℃、1hでポストベイクで実施)。接触角計(協和界面化学製、DM−301)を用い、膜表面の水接触角を測定した。
【0101】
・誘電率測定Mo膜(2000Å)付ガラス基板上に製造実施例および製造比較例で得られた樹脂組成物4〜7を2000rpm、20secの条件でスピンコートにより塗布し、120℃、10minでポストベイクし薄膜を形成した(比較例4は180℃、1hでポストベイクで実施)。真空蒸着製膜装置により厚さ500Å、3mmφのアルミ電極を形成し、コンデンサを製作した。
【0102】
このコンデンサを半導体パラメーターアナライザ(Keithley4200)を用いて1kHz、10V印加時での薄膜の静電容量(F)を測定し、ε=C×t/ε×A
C:静電容量(F) t:膜厚(m) A:面積(m
ε:真空の誘電率(8.85X10−12
の式より比誘電率(ε)を算出した。(薄膜の膜厚は段差計(Dektak6M、アルバック製)用いて測定)。
【0103】
(XRD測定)
上記実施例4〜6により作製した薄膜トランジスタのペンタセン膜についてXRD測定を行い、結晶解析を行った結果を図3〜5に示す。
測定装置:X‘Pert RO MPD(PANalytical社製)
測定範囲:2Θ=3〜50°、X線強度:45kV,40mA。
【0104】
(AFM測定)
上記実施例4〜6により作製した薄膜トランジスタのペンタセン膜についてAFM測定を行い、結晶表面形状観察を行った結果を図6〜8に示す。得られた画像データよりn=5で抽出した結晶グレインの面積を計算し、その平均値をグレインサイズとした。
測定装置:XE−100(Park Systems社製)
測定範囲:5μm×5μm。
【符号の説明】
【0105】
1.基板(Si)
2.ゲート絶縁膜
3.有機半導体
4.ソース/ドレイン電極
5.ソース/ドレイン電極6.基板(ガラス)
7.ゲート電極
8.ゲート絶縁膜
9.有機半導体
10.ソース/ドレイン電極
11.ソース/ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須成分として(A)アルケニル基を有する化合物、(B)SiH基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物より形成されることを特徴とする薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項2】
成分(A)が1分子中に少なくとも2個以上アルケニル基を有する有機化合物、鎖状及び、環状ポリシロキサンから少なくとも1種類から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項3】
成分(A)が、下記一般式(I)
【化1】

で表される構造を含むことを特徴とする請求項1または、2に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項4】
成分(A)が下記一般式(II)
【化2】

(式中Rは水素原子または炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってよく、nは1〜10、mは0〜10、ただしm+n≧2、の数を表す)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項5】
成分(B)が、下記一般式(I)
【化3】

構造を含み、SiH基を含有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項6】
化合物(B)が、下記一般式(III)
【化4】

で表される構造を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項7】
化合物(B)が、下記一般式(IV)
【化5】

(式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜10の有機基を表し、nは1〜10、mは0〜10、ただしm+n≧2、の数を表す)で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物より形成される薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ用ゲート絶縁膜を備えた薄膜トランジスタ素子。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160698(P2012−160698A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184192(P2011−184192)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】