薄膜状の金属酸化物の製造方法
【課題】安価であって、高品質であり、かつ光取出し効率に優れた薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、該光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、該光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、露光部を露光することにより、露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、第2露光ステップの後に、露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、該光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、該光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、露光部を露光することにより、露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、第2露光ステップの後に、露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状の金属酸化物の製造方法に関し、特に光取り出し効率を向上させる微細凹凸を有する薄膜状の金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色LED(Light Emitting Diode)に用いられる窒化ガリウム系半導体の屈折率は、2.5程度であり、空気の屈折率は略1である。スネルの法則よると、窒化ガリウム半導体から空気に向けて光が透過するときの半導体と空気との臨界角は、23.5°程度である。このため、窒化ガリウム半導体と空気相との界面の法線に対し23.5°以上の角度で入射した光は全反射する。
【0003】
非特許文献1には、半導体内で発生した光から外部に取り出すことができる割合を算出するための式が開示されている。その式とは、取り出し得る光の割合の上限をηとし、上記の臨界角をθとすると、η=2π(1−cosθ)/4π=(1−cosθ)/2で表される。この式に基づくと、窒化ガリウム半導体から空気に向けて取り出すことのできる光の割合は、4.1%程度と算出される。
【0004】
一般的に窒化ガリウム半導体は、表裏の二面を有し、その両面から光を取り出すことができる。表面と裏面とが同一の割合で光を取り出すことができると仮定すると、窒化ガリウム半導体から空気中への光取り出し効率は、8.2%程度となる。よって、半導体内で発生した光の大半は、外部に取り出されていないことがわかる。
【0005】
光取り出し効率を向上するための試みとして、特許文献1〜3の発光素子では、透明電極層の表面に凹凸を形成する技術が開示されている。このように透明電極層の表面に凹凸を形成することにより、60%程度まで光取り出し効率を向上させることができる。
【0006】
この光取り出し効率をさらに向上させるために、たとえば特許文献4には、LEDの光取り出し効率に最も影響される部分、すなわち空気相とp型窒化ガリウム層との界面に、発光波長よりも短いピッチの微細凹凸を形成する技術が開示されている。このような微細凹凸を形成することにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0007】
しかし、p型窒化ガリウムは加工性が悪いため、プラズマエッチングに大量の塩素ガスを用いる必要がある。塩素ガスを加工用に用いると、真空装置にダメージを与えてしまうという問題、および発光ダイオードの一部にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0008】
しかも、p型窒化ガリウムは電気伝導性が悪いため、p型窒化ガリウム表面の全面に透明電極を形成しなければならない。かかる透明電極を作成すると、p型窒化ガリウムの表面に形成された凹凸が埋没し、発光効率が低下するという問題があった。もし仮に透明電極を薄膜で全面に形成したところで、透明電極の抵抗値が高くなるため、発光効率が低下するという問題もあった。
【0009】
このような問題を一掃する手法としては、透明電極の表面に凹凸構造を作製することが考えられる。しかし、LEDを構成する透明電極の材料であるインジウム酸化錫(ITO:Indium Tin Oxide)は屈折率が1.9程度であるため、屈折率2.5のp型窒化ガリウムと比べて0.6程度の差がある。この差が光取り出し効率を低減させる一因となる。このような光取り出し効率の低減を回避するためには、屈折率が窒化ガリウム基板に近い金属酸化物、とりわけチタン酸化物からなり、発光波長よりも短いピッチの微細凹凸を有する膜を透明電極上に作製すればよい。
【0010】
窒化ガリウムの屈折率に近い屈折率を有する薄膜状の金属酸化物を作製する方法としては、真空機器を用いるスパッタ成膜法と、ゾルゲル法とがある。スパッタ成膜法は、真空機器の設備が大掛かりなものであり、製造コストが高くなる傾向にある。これに対し、ゾルゲル法は、小規模な設備で成膜することができ、製造コストが低廉である。このような理由から、たとえば特許文献5、非特許文献3、および非特許文献4では、ゾルゲル法で薄膜状の金属酸化物を作製する方法の検討がなされている。
【0011】
非特許文献3および4には、干渉露光法を用いてパターニングを行なう方法が開示されている。この方法は、金属アルコキシド、プロパノール、βジケトン、および塩酸を含む水溶液を基板上に塗布した上で、干渉露光法により光の反応した部分のみを選択的に重合を促進させることにより、パターニングを行なうというものである。
【0012】
一方、特許文献5に開示されている薄膜状の金属酸化物を作製する方法は、金属酸化物の前駆体を塗布した後に、乾燥、露光(エネルギー照射)、現像、焼成という一連の動作を行なうというものである。このようにして作製された薄膜状の金属酸化物に対し、ナノインプリントおよびフォトリソグラフィを行なうことにより、微細凹凸を有するレジストを作製する。そして、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行なうことにより、薄膜状の金属酸化物の表面に微細凹凸を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3448441号公報
【特許文献2】特許第4093943号公報
【特許文献3】特表2004−511080号公報
【特許文献4】特開2007−95745号公報
【特許文献5】特許第2825411号公報
【特許文献6】特開2006−270001号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】原口雅宣、他2人、「LED照明の最近の動向−フォトニック結晶LED−」、OplusE、2007年6月、p.582−p.586
【非特許文献2】Ja-Yeon Kim et al.,「Enhanced light extraction from GaN-based green light-emitting diode with photonic crystal」,Applied Physics Letters 91,(2007),181109 1-3
【非特許文献3】Hiroyo Segawa et al.,「Fabrication of TiO2-Organic Hybrid Dot Arrays Using Nanosecond Laser Interference Lithography」,Journal of the American Ceramic Society,(2006),89[11]3507-3510
【非特許文献4】瀬川浩代、「有機−無機ハイブリッド材料の光パターニングとその形状制御」、日本ゾル−ゲル学会第5回セミナー講演論文集、(2008)、p.1−p.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献5のように面積を限定せずに大面積でパターニングを行なうと、焼結および乾燥の工程で、有機物を燃焼させるときに薄膜状の金属酸化物が収縮して、亀裂が生じる。亀裂が発生した薄膜状の金属酸化物に対し、その表面に微細凹凸を作製しても光取り出し効率を向上させることができない。
【0016】
一方、非特許文献3および非特許文献4では、金属酸化物の前駆体を塗布した後に、干渉露光法を用いて細かいドット状の光を多数照射することにより、1μm2以下の突起物をピッチ1μmの間隔で形成する方法が開示されている。このように1μm2程度まで小さくすることにより、膜割れ等の影響を受けることなく微細凹凸を作成することができる。この方法は、特許文献5で開示されている方法と同様に、レジスト等のエッチングマスクを形成する必要がなく、光を照射した部分のみに金属酸化物を作製することができる。
【0017】
しかしながら、干渉露光法での露光面積は小さく、かつ露光時間も長いことから、高強度のレーザを用いる必要があり、ウエハレベルでは実用的ではない。また、金属酸化物を高屈折率化する工程で金属酸化物を700℃まで温度上昇させて焼成することにより、透明電極、とりわけITOの抵抗値が変わるという問題もある。
【0018】
さらに、ITOからなる透明電極は、表面エネルギーが小さいため密着力が弱く、1μm2程度の大きさの薄膜状の金属酸化物は、現像工程で剥がれやすい。もし仮に微細凹凸を形成できたとしても、その後の電極形成工程、およびチップ分断工程で容易に剥がれてしまう。
【0019】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価であって、高品質であり、かつ光取出し効率に優れた薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、多様な環境においても微細凹凸の形状が損なわれない薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、該光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、該光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、露光部を露光することにより、露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、第2露光ステップの後に、露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
上記の薄膜状の金属酸化物を形成するステップの後に、薄膜状の金属酸化物上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターンを形成するステップと、薄膜状の金属酸化物の一部をフッ素系ガスによりドライエッチングするステップと、レジストマスクパターンを除去するステップとを含むことが好ましい。
【0022】
薄膜状の金属酸化物は、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含むことが好ましく、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含むことが好ましい。薄膜状の金属酸化物は、その屈折率が2以上2.6以下であることが好ましく、その膜厚が50nm以上360nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安価であって、高品質であり、かつ光取出し効率に優れた薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することができる。本発明により製造される薄膜状の金属酸化物は、多様な環境においても微細凹凸の形状が損なわれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物を含む発光ダイオードの模式的な断面図である。
【図2】発光基板上に金属溶液を塗布した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図3】光重合材料膜を部分的に露光しているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図4】光重合材料膜に対し現像を行なっているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図5】露光部に対し、さらに露光しているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図6】露光部を焼成することにより薄膜状の金属酸化物を形成したときの状態を示す模式的な断面図である。
【図7】薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図8】薄膜状の金属酸化物の一部をドライエッチングにより除去した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図9】レジストマスクパターンを除去した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図10】厚みおよび大きさを変えて作製した薄膜状のチタン酸化物の状態を示す模式図である。
【図11】(a)は、屈折率が1.9の薄膜状のチタン酸化物のX線分光分析法による元素量分析の結果を示したグラフであり、(b)は、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物のX線分光分析法による元素量分析の結果を示したグラフである。
【図12】薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚を代えたときのその端面のキレを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物を説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表わすものではない。
【0026】
<薄膜状の金属酸化物>
図1は、本発明により作製される薄膜状の金属酸化物を含む発光ダイオードの模式的な断面図である。本実施の形態で作製された薄膜状の金属酸化物9は、図1に示されるように、発光基板6上に形成されるものである。ここで、発光基板6は、平坦面状に形成された主表面Aと、この主表面Aと反対側に位置する主表面Bとを備える。
【0027】
そして、発光基板6の主表面A上に、薄膜状の金属酸化物9を形成することが好ましく、特に発光基板6の透明電極5上に薄膜状の金属酸化物9を形成することがより好ましい。発光基板6の主面上に、薄膜状の金属酸化物9を設けることにより、発光基板6の発光層3で発生する光の取り出し効率を向上させることができる。
【0028】
本発明により作製される薄膜状の金属酸化物9は、金属酸化物薄膜7に密着させて微細凹凸8を設けることが好ましい。これにより環境変化にも対応し得る程度に金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との密着性を確保することができる。金属酸化物薄膜7および微細凹凸8はいずれも、透光性を有する材料であり、同一の材料からなることが好ましい。金属酸化物薄膜7および微細凹凸8が同一材料からなる場合、金属酸化物薄膜7から微細凹凸8に光が入射するときに、その界面で反射しにくくなり、光取り出し効率を向上させることができる。なお、本発明の薄膜状の金属酸化物9は、必ずしも微細凹凸8を備えているもののみに限られるものではなく、単に金属酸化物薄膜7のみからなるものであってもよい。
【0029】
なお、発光基板6上に金属酸化物薄膜7を設けることなく、微細凹凸8のみを形成してもよいが、その場合、微細凹凸8と透明電極5との間で剥離が生じやすい他、微細凹凸8が欠損する可能性もあり好ましくない。
【0030】
また、金属酸化物薄膜7と透明電極5との接触面積は、金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との接触面積よりも広いことが好ましい。これにより金属酸化物薄膜7を構成する材料の格子定数と、透明電極5を構成する材料の格子定数とが異なっていても、金属酸化物薄膜7と透明電極5との接着性を確保することができる。
【0031】
<発光基板>
本発明において、発光基板6は、透明基板1と、該透明基板1の主表面上に形成されたn型半導体層2と、該n型半導体層2の主表面上に形成された発光層3と、該発光層3の主表面上に形成されたp型半導体層4と、該p型半導体層4の主表面上に形成された透明電極5とを備える。
【0032】
発光基板6に用いられる透明基板1としては、特に限定することなくいかなるものをも用いることができるが、透光性および耐熱性を有する材料を用いることが好ましい。このような透明基板1の材料としては、たとえばITO、窒化ガリウム、サファイアなどを挙げることができる。
【0033】
また、発光ダイオードがたとえば青色ダイオードである場合、n型半導体層2、発光層3、およびp型半導体層4にはそれぞれ、n型GaN、InGaN、およびp型GaNを代表的な材料として用いることができる。また、透明電極5には、ITO、ZnO等を代表的な材料として用いることができる。
【0034】
次に、発光基板6が発光するメカニズムを説明する。まず、n型半導体層2に電源の負極を接続し、p型半導体層4または透明電極5に電源の正極を接続する。これによりn型半導体層2から発光層3内に電子が導入されるとともに、p型半導体層4から発光層3に正孔が導入される。そして、発光層3内で正孔と電子とが結合したときに、禁制帯幅(バンドギャップ)に相当するエネルギが光として放出される。
【0035】
一方、n型半導体層2、発光層3、およびp型半導体層4に対し、一定のエネルギを有する光を照射すると、n型半導体層2および発光層3内の電子が励起される。この励起された電子が、基底状態に戻るときに発光層3において発光現象が起こる。
【0036】
(実施の形態1)
<薄膜状の金属酸化物の製造方法>
本実施の形態に係る薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極5上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜11を形成するステップと(図2)、該光重合材料膜11を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部18を2以上形成する第1露光ステップと(図3)、光重合材料膜11に対しアルコール系の現像液14を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと(図4)、該露光部18を露光することにより、露光部18の重合反応を促進する第2露光ステップと(図5)、該第2露光ステップの後に、露光部18を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物9を形成するステップと(図6)を含むことを特徴とする。
【0037】
このように光重合材料膜11を形成するステップの後に、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部18をパターン状に区切ることにより、露光部18が透明基板1から剥がれにくくなるとともに、薄膜状の金属酸化物9に亀裂が発生するのを抑制することができる。ここで、露光部18とは、第1露光ステップで露光されることにより、金属アルコキシドの一部が重合してゲル状になった部分のことをいう。この部分が、第2露光ステップ、焼成ステップを経て、薄膜状の金属酸化物9になる。
【0038】
薄膜状の金属酸化物9をゾルゲル法によって作製するときに、その上面の面積が3μm2未満であると、パターニングしたときにその端面がぼやけて露光されるため好ましくない。また、0.2mm2を超えると、後の焼成ステップなどで薄膜状の金属酸化物に亀裂が発生する場合があり好ましくない。以下に、本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法の各ステップを説明する。
【0039】
<光重合材料膜を形成するステップ>
図2は、発光基板上に金属溶液を塗布した後の状態を示す模式的な断面図である。本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法においては、まず、透明基板1上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布する。これにより図2に示されるように、透明基板1上に、金属アルコキシドを含む光重合材料膜11を形成することができる。金属溶液を塗布する方法としては、たとえばスピンコート法、ディップコート法、バーコーターコート法などを挙げることができる。なお、以下において、本ステップのことを塗布ステップと記することもある。
【0040】
ここで、上記の金属溶液は、金属アルコキシドおよびケトン基を有する有機材料を含むものである。第2露光ステップにおいて、ケトン基を有する有機材料が金属アルコキシドと結合することにより、光を吸収する特性を持つキレート環を形成する。このキレート環が光を吸収したときにπ軌道からπ*軌道に遷移し、開環して金属アルコキシド同士が重合し、金属酸化物が生成される。
【0041】
この金属溶液に含まれる金属アルコキシドとしては、光が入射した部分のみ重合される性質を有するものであることが好ましく、このような性質を有する材料としてはたとえばチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、ペンタエトキシタンタル、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、タンタルメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ニオブペンタエトキシドなどを挙げることができる。金属溶液中には、金属アルコキシドを0.5質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。また、上記の金属溶液に用いる溶媒としては、アルコールを用いることが好ましく、より好ましくは1−プロパノールである。
【0042】
また、後述する第2露光ステップにおいて、光重合材料膜11内の有機物同士を重合させるという観点からは、感光剤を含むことが好ましい。上記の感光剤としては、たとえばチバスペシャリティケミカルズが市販しているIRUGACUREシリーズ、DAROCUREシリーズなどを挙げることができる。
【0043】
金属溶液に含まれるケトン基としては、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート(MeAcAc:2-(Methacryloyloxy)ethyl Acetoacetate)、ジベンゾイルメタン(DBM:Dibenzoylmethane)などを挙げることができる。
【0044】
<第1露光ステップ>
図3は、光重合材料膜に対し、マスクを被せた上で露光したときの状態を示す模式的な断面図である。第1露光ステップでは、上記で塗布した光重合材料膜11に対し、透明電極5の上面の面積よりも小さい3μm2以上0.2mm2以下の面積の領域が空いたマスク10を密着させた上で、マスク10の上方から紫外線を含む光13を照射する。
【0045】
このように光重合材料膜11のうちの残留させたい部分を露光し、除去したい部分はマスク10で覆って露光されないようにする。これにより露光された部分の増感剤のみが反応して、金属アルコキシドなどの成分が重合し、露光部18が形成される。かかる露光部18の上面の面積は、3μm2以上0.2mm2以下であることを特徴とする。このような露光部18の上面の面積とすることにより、後の第2露光ステップおよび焼成ステップにおいて、薄膜状の金属酸化物に割れが発生するのを抑制するとともに、透明電極から薄膜状の金属酸化物が剥離されにくくなる。なお、露光部18の上面の面積は、図3に示されるように、発光基板6のチップサイズよりも一回り小さいことが好ましい。
【0046】
一方、光重合材料膜11のうちのマスクで覆われた部分は、光重合材料膜11の状態から変化することなく非露光部となる。第1露光ステップで露光するときの露光量としては、1J/cm2以上30J/cm2以下であることが好ましい。1J/cm2未満であると、後の現像ステップで透明基板1上の露光部18が除去されてしまう可能性がある。一方、30J/cm2を超えると、露光時間が長くなりすぎるため、生産上不都合が生じるだけでなく、露光部の端面がぼやけてしまう場合がある。
【0047】
<現像ステップ>
図4は、光重合材料膜に対し現像を行なっているときの状態を示す模式的な断面図である。現像ステップでは、図4に示されるように、現像液14により短分子の金属酸化物からなる非露光部を発光基板6から除去する。一方、発光基板6上の露光部18は、耐性を有するゲル状となっているため、現像液に対しての溶解性が低く、そのまま残存する。このように現像液14に対する溶解性の違いを利用することにより、任意の形状の露光部18を形成することができる。
【0048】
ここでの現像液14は、短分子の金属酸化物を溶解させるが、高分子の金属酸化物は溶解しにくいという性質のものを用いる必要がある。このような現像液14としては、アルコール系現像液を用いることが好ましい。アルコール系現像液は、未露光部を除去するだけでなく、露光部18に含まれる有機物を除去する効果もある。これらの相乗効果により薄膜状の金属酸化物9の屈折率および結晶化度を向上させることができる。アルコール系現像液の中でも、エトキシエタノール等の有機溶剤を用いると、さらに薄膜状の金属酸化物9の屈折率を向上させることができる。
【0049】
<第2露光ステップ>
図5は、露光部に対しさらに露光するときの状態を示す模式的な断面図である。第2露光ステップでは、図5に示されるように、発光基板6の露光部18が形成されている側の面上から紫外線を含む光13を露光することにより、露光部18の金属酸化物の重合を促進するとともに、金属酸化物のゾルが光を吸収し、その内部で光触媒反応が生じる。ここで、金属酸化物の重合反応とは、ケトン基と金属アルコキシドが結合してできるキレート環に、紫外光が吸収されることにより、キレート環が開環し、金属イオンと酸素との結合が生成する反応である。これにより金属酸化物の結晶を生成することができる。
【0050】
さらに、光触媒反応によりゾル中に微量に存在する水分子やアルコールが反応して、OHラジカルを生成し、このOHラジカルが有機物を分解する。これにより金属酸化物の微粒子が互いに凝集し、後の露光ステップを経て、結晶化度が高く、かつ高屈折率の薄膜状の金属酸化物を作製することができる。このような第2露光ステップにより、焼成する温度を500℃以上の高温にしなくとも露光部18に含まれる有機物を除去することができる。
【0051】
第2露光ステップで露光する光は、紫外線を含み、かつその露光量が600J/cm2以上であることが好ましい。これにより上記の光触媒反応が生じやすく、結晶化度を高めることができ、もって薄膜状の金属酸化物を高屈折率化することができる。このような第2ステップの露光量は、3000J/cm2以上であることがより好ましい。
【0052】
また、第2露光ステップで露光される光の強度は、2000mW/cm2以上20000mW/cm2以下であることが好ましい。20000mW/cm2を超えると、透明基板1の材質によっては変質する可能性がある。また、第2露光ステップで露光される光の強度がたとえば2000mW/cm2である場合、5分以上露光することにより600J/cm2以上のエネルギーを露光することが好ましい。また、第2露光ステップで露光される光の強度がたとえば20000mW/cm2である場合、30秒以上露光することが好ましい。これにより薄膜状の金属酸化物の屈折率の向上が顕著となる。
【0053】
<焼成するステップ>
図6は、露光部を焼成することにより薄膜状の金属酸化物を形成したときの状態を示す模式的な断面図である。上記の露光部18に対し、500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物の屈折率を高めることができる。このような焼成ステップを行なうことにより、透明電極5の特性を損なうことなく、露光部18に残留する有機物を完全燃焼させる。このように有機物を完全燃焼させることにより、薄膜状の金属酸化物9の結晶化度を高めるとともに、その屈折率を高めることができる。この焼成の温度が500℃を超えると、透明基板1の材質が変わってしまう他、たとえば透明電極5に用いられるITOの特性が変化する可能性がある。
【0054】
以上の各工程により、発光基板6から薄膜状の金属酸化物9が剥がれにくく、かつ薄膜状の金属酸化物9に亀裂がない状態で形成することができる。しかも、本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、従来よりも低温で焼成することができ、プラズマを使用しなくてもよい。このことから、発光基板6が有する性能を劣化させにくいというメリットもある。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法では、実施の形態1で作製した薄膜状の金属酸化物9の表面に、微細凹凸8を形成することを特徴とする。このような微細凹凸8は、薄膜状の金属酸化物9上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターン12を形成するステップと(図7)、該薄膜状の金属酸化物9の一部をフッ素系ガス15によりドライエッチングするステップと(図8)、レジストマスクパターン12を除去するステップと(図9)により形成される。このように薄膜状の金属酸化物9の表面に微細凹凸8を設けることにより、光取り出し効率を高めることができる。以下においては、薄膜状の金属酸化物の表面に微細凹凸8を形成するための各ステップを説明する。
【0056】
<レジストマスクパターンを形成するステップ>
図7は、実施の形態1で作製した薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクパターンを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。図7に示されるように、薄膜状の金属酸化物9に対し、500nm以下のピッチの凹凸構造を有するレジストマスクパターン12を形成することが好ましい。ここで、レジストマスクパターン12を形成する方法としては、フォトリソグラフィー、ナノインプリント、または微粒子を並べる方法を用いることができる。かかるレジストマスクパターン12は、レジスト材料からなるものである。
【0057】
外気と薄膜状の金属酸化物との界面において、全反射角よりも大きな入射角で入射した光を取り出すためには、発光基板から発光する光の発光波長をλ、屈折率をn、入射角をθとしたときに、λ/(n・sinθ)以下のピッチの微細凹凸を形成する必要がある。このような微細凹凸を形成することにより、全反射角よりも大きな入射角で入射した光が回折し、発光基板の表面から光を取り出すことができる。
【0058】
上記の数式から発光基板が青色発光ダイオードの波長領域の光を発光する場合、500nm以下のピッチの微細凹凸を形成することが好ましいことが導かれる。そして、このようなピッチの微細凹凸を形成するためには、レジストマスクパターンは、500nm以下のピッチの微細凹凸を形成することが必要である。ここで、500nm以下のピッチの微細凹凸とは、隣接する2つの凸部間の距離が500nm以下であることを意味する。ここで、レジストマスクパターンの微細凹凸のピッチは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により測定された値を用いる。
【0059】
<ドライエッチングするステップ>
図8は、薄膜状の金属酸化物の一部をドライエッチングにより除去した後の状態を示す模式図である。図8に示されるように、上記で作製したレジストマスクパターン12の表面のうちの薄膜状の金属酸化物9が露出している部分に対し、フッ素系ガス15を用いてドライエッチングすることにより、薄膜状の金属酸化物9の一部を除去する。これにより薄膜状の金属酸化物9の表面に500nm以下のピッチの微細凹凸8を形成する。
【0060】
ここでのドライエッチングは、フッ素系ガス15をRIEのプラズマにより分解したフッ素系ラジカルを薄膜状の金属酸化物9に作用させることにより行なわれる。このようなRIEを用いたフッ素系ラジカルによるドライエッチングは、レジストマスクパターン12の除去速度よりも薄膜状の金属酸化物9の除去速度が速い。このため、金属酸化物薄膜7上に500nm以下のピッチの微細凹凸8を作製することができる。
【0061】
<レジストマスクパターンを除去するステップ>
図9は、レジストマスクパターンを除去した後の状態を示す模式的な断面図である。レジストマスクパターン12の除去は、酸素プラズマによる洗浄、オゾン水による洗浄、UV光とオゾンとを組み合わせた洗浄、または有機溶媒による洗浄のいずれかの方法により行なうことができる。
【0062】
これらの中でも薄膜状の金属酸化物9に影響を与えることなくレジストマスクパターン12を除去するという観点から、図9に示されるように、酸素ガスのプラズマ16により発生する酸素ラジカルによってレジストマスクパターン12を除去することが好ましい。
【0063】
以上の各ステップを行なうことにより、透明電極5上に平坦層からなる金属酸化物薄膜7を形成し、さらに微細凹凸8を形成した薄膜状の金属酸化物9を形成することができる。このような微細凹凸8を有する薄膜状の金属酸化物9は、LEDの光取り出し効率を向上させることができる。しかも、後の工程で、発光ダイオードをチップ分断しても薄膜状の金属酸化物9に割れが発生しにくく、また微細凹凸8の欠損も生じにくい。
【0064】
このようにして作製される薄膜状の金属酸化物9は、チタン酸化物を主成分として含むことが好ましく、より具体的には、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含有することが好ましい。これにより薄膜状の金属酸化物の結晶性を高めることができ、屈折率を高くすることができる。チタン酸化物が90質量%未満であると、有機物の残存量が多くなり、屈折率が低くなるという問題があり、99質量%を超えると、実用上ゾルゲル法で作製することができないという問題がある。
【0065】
チタン酸化物には種々の結晶構造があるが、その中でもアナターゼ型であることが好ましい。アナターゼ型のチタン酸化物は、その屈折率が2.6よりも大きくなることはないが、最大で2.52程度まで上昇させることができる。屈折率を2.5以上にすることにより、発光ダイオード等に用いる窒化ガリウムの屈折率と近似し、発光ダイオードの光取り出し効率を向上させることができる。
【0066】
また、アナターゼ型のチタン酸化物は、第2露光ステップにおける光触媒反応により加水分解反応が促進されて、有機物をOHラジカルにて分解させることができる。これにより焼成するステップでの温度を高温にする必要がないというメリットもある。
【0067】
本実施の形態で作製される薄膜状の金属酸化物9は、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含むことが好ましく、より好ましくは7%以下の炭素原子を含むことである。このような割合で炭素原子を含むことにより、薄膜状の金属酸化物9の屈折率を低下させることができる。10%を超えると、炭素原子が多すぎることにより、薄膜状の金属酸化物9の結晶構造の緻密さが失われ、その屈折率が低くなる。なお、薄膜状の金属酸化物9に含まれる炭素原子の厚み方向の平均は、X線分光分析法(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)を用いて測定した値を採用するものとする。
【0068】
本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物9は、その屈折率が2以上2.6以下であることが好ましい。これにより窒化ガリウムとの屈折率差が低くなり、その光取り出し効率を低下させにくくすることができる。屈折率が2未満であると、パターニングしたときの端面を所望の形状にすることができず、特に発光ダイオードの電極が覆われてしまい、通電できなくなる可能性がある。一方、屈折率が2.6を超えると、窒化ガリウムとの屈折率差が大きくなって、窒化ガリウムとの界面で全反射が生じ、発光ダイオードの発光効率が低下する。
【0069】
<薄膜状の金属酸化物の膜厚>
図10は、薄膜状の金属酸化物の膜厚および上面の面積を変えて作製したときの状態を示す模式図である。本実施の形態の製造方法のうちの塗布ステップ、第1露光ステップ、現像ステップ、第2露光ステップ、および焼成ステップという一連の各ステップを1サイクル行なうことにより、220μm×600μm(すなわち0.138mm2の上面の面積)の薄膜状の金属酸化物を60nm、120nm、および200nmの3種類の膜厚で作製し、それらを光学顕微鏡(製品名:LV150A(ニコン株式会社製))により観察した画像である。
【0070】
図10から明らかなように、焼成後の膜厚が200nmになるように薄膜状の金属酸化物9を作製した場合、薄膜状の金属酸化物9が収縮することにより、それに亀裂が生じている。一方、220μm×600μmの薄膜状の金属酸化物を60nmおよび120nmの膜厚で作製した場合、薄膜状の金属酸化物中に亀裂はほとんど生じることはなく、その歩留まりは90%以上である。
【0071】
以上の結果から、膜厚が厚くなればなるほど膜収縮エネルギーが大きくなり、膜割れしやすくなることが明らかである。また、120nmを超える膜厚の薄膜状の金属酸化物を一連の各ステップを1サイクルで作製すると、薄膜状の金属酸化物内に亀裂が発生したり、薄膜状の金属酸化物が剥がれやすくなったりする。
【0072】
上記の一連の各ステップの1サイクルで形成する薄膜状の金属酸化物は、その厚みが50nm以上120nm以下であることが好ましい。そして、120nmを超える膜厚の薄膜状の金属酸化物を形成する場合、上記の一連の各ステップを2サイクル以上行なって形成することが好ましい。これにより360nm以下の薄膜状の金属酸化物を作製することができる。また、薄膜状の金属酸化物9が金属酸化物薄膜7および微細凹凸8からなる場合、その合計厚みが50nm以上360nm以下であることが好ましい。
【0073】
図10の「380μm×2mm」の欄のaおよびbには、上記の各ステップを1サイクル行なうことにより、380μm×2mm(すなわち0.76mm2の上面の面積)の薄膜状の金属酸化物を作製し、それを光学顕微鏡により観察した画像を示している。図10に示されるように、薄膜状の金属酸化物を60nm、87nm、105nm、120nm、および200nmの間の5種類の膜厚で作製した。
【0074】
図10に示されるように、380μm×2mmの大きさの薄膜状の金属酸化物は、105nmの膜厚を超えると、膜収縮のエネルギーが欠陥部分に集中するため、微細凹凸を作製する部分でも薄膜状の金属酸化物に割れや剥離が生じた。このことから、亀裂のない状態で光取り出し効果の高い膜厚をできる限り作製するためには、LEDのラージチップサイズに相当する、0.2mm2以下の上面の面積でパターニングすることが重要である。
【0075】
本実施の形態で作製される薄膜状の金属酸化物9は、その膜厚が50nm以上360nm以下であることが好ましい。このような膜厚の金属酸化物は、光取り出し効率が高く、かつ簡便に作製することができる。50nm未満であると、薄膜状の金属酸化物を所望の形状とすることができず、360nmを超えると、歩留まりが73%まで低下することになるため好ましくない。
【0076】
<薄膜状の金属酸化物の用途>
本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウムを含む発光ダイオードの透明電極上に形成することが好ましい。発光ダイオードに用いられる窒化ガリウムは、その屈折率が高いことにより、他の部材との界面で全反射が生じやすく、光取り出し効率が低くなりやすい。
【0077】
そこで、発光ダイオードの透明電極上に薄膜状の金属酸化物を形成することにより、発光ダイオードの光取り出し効率を高めるとともに、同一の光量でも低消費電力にすることができ、発熱を抑えることができる。本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウム系発光ダイオード、光触媒機能つきガラス、色素増感太陽電池に好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
<光重合材料膜を形成するステップ>
まず、青色LED発光基板6を準備した。青色LED発光基板6としては、厚みが700μmであって、その大きさが幅20mm×長さ20mmのサファイア基板に対し、n型GaNからなるn型半導体層2と、InGaNを含む発光層3と、p型GaNからなるp型半導体層4と、ITOからなる透明電極5とが形成されたものを用いた。
【0080】
次に、青色LED基板上に塗布するための金属溶液を非特許文献3に基づいて準備した。まず、チタニウムブトキシド(キシダ化学株式会社製)と、ケトン基を有するエチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート(キシダ化学株式会社製)と、1−プロパノールとを混合し、15分間攪拌した撹拌溶液を準備した。
【0081】
次に、DAROCURE(チバスペシャリティケミカルズ社製)を感光剤として溶解させた溶液を準備した。この溶液を上記の撹拌溶液に滴下し、室温で3時間攪拌することにより金属溶液を作製した。
【0082】
このようにして作製した金属溶液をスピンコーター(製品名:SPN(トキワ真空機材製))を用いて、スピンコートすることにより、透明電極5が形成された青色LED発光基板6上に光重合材料膜11を形成した(図2)。
【0083】
<第1露光ステップ>
上記の光重合材料膜11を形成した青色LED発光基板6をマスクアライナー(製品名:PLA521F(Canon株式会社))にセットし、図3に示されるように、紫外線を含む光を発光するランプ(製品名:DEEP-UVランプ(ウシオ電機株式会社製))からマスクを通して光重合材料膜11に紫外線を含む光13を照射した。マスクは、幅250mm×長さ600mmの格子状の孔が2μmの間隔で形成されたものを用いた。これにより光重合材料膜11のうちの光が入射した部分のチタニウムブトキシドのみが重合した。かかる格子状の孔から光が照射した部分、すなわち露光部18は、後述の現像ステップで現像液に対して不活性になり、後の第2露光ステップ、および焼成ステップを経て薄膜状の金属酸化物となる。
【0084】
<現像ステップ>
上記の第1露光ステップで露光した発光基板6を、図4に示されるように、2−エトキシエタノール(キシダ化学株式会社)からなるエッチング液に1分間浸漬させることにより、光重合材料膜11のうちの露光されていない部分(非露光部)を除去した。
【0085】
<第2露光ステップ>
上記の現像ステップで残存した露光部18に対し、さらに5500W/cm2の強度の紫外線を含む光を15分間露光することにより、露光部18を構成するTiO2前駆体の重合を促進させるとともに、それに含まれる有機物を分解した。
【0086】
<薄膜状の金属酸化物を形成するステップ>
最後に、上記で得られた青色LED発光基板6をホットプレート上に配置し、400℃で1時間の焼成を行なうことにより、図6に示されるような本実施例の薄膜状の金属酸化物9を形成した。このようにして作製された薄膜状の金属酸化物の膜厚を触針式表面形状測定器(製品名:DEKTAK(アルバック株式会社製))を用いて測定したところ、60nmであることが明らかとなった。また、光重合材料膜の段階ではその屈折率が1.79(平均)であったが、第2露光ステップおよび焼成ステップを経た後の、薄膜状の金属酸化物の屈折率を測定すると、その屈折率は最小でも2.12まで向上しており、最大では2.47まで向上していることがわかった。なお、屈折率は、反射分光膜厚計(製品名:FE3000(大塚電子株式会社製))を用いて測定したものである。
【0087】
(実施例2)
上記の実施例1と同様の方法により、発光基板6上に薄膜状の金属酸化物を作製した。そして、かかる薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクパターンを形成した後にドライエッチングを行なうことにより、金属酸化物薄膜7の表面上に微細凹凸8が形成された薄膜状の金属酸化物9を形成した。以下に各ステップを述べる。
【0088】
<レジストマスクパターンを形成するステップ>
実施例1で作製した薄膜状の金属酸化物9を含むウエハを界面活性剤水溶液に浸漬させた後に、純水により洗浄した。そして、洗浄後の薄膜状の金属酸化物に対し、スピンコートによりレジスト樹脂(製品名:PAK01(東洋合成工業株式会社製))を塗布した。
【0089】
その後、レジスト樹脂を真空下に設置し、1500Paから2500Paにて石英モールド(製品名:NIM400UL(NTT−ATナノファブリケーション製))を押し付けることによりナノインプリントを行なった。そして、図7に示されるように積算露光量が1000mJ/cm2となる条件で紫外光を照射することにより、発光波長よりも短いピッチのレジストマスクパターンを作製した。このようなレジストマスクパターンのピッチは、300nmであった。
【0090】
<ドライエッチングするステップ>
上記の300nmのピッチを有するレジストマスクパターンに対し、CHF3ガスを導入して、RFプラズマの電力を100WにしてRIEエッチングを行なった。そして、透明電極5までがエッチングにより除去されないように、エッチング量を調整した。これにより金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との2層構造の薄膜状の金属酸化物9を形成した。このようにして形成された微細凹凸8のピッチは、マスクパターンと同一の形状を再現し、300nmであった。
【0091】
<レジストマスクパターンを除去するステップ>
次に、薄膜状の金属酸化物9上に残ったレジストマスクパターン12を酸素ガスのRIEにてアッシングを行なった。これにより図1に示すような金属酸化物薄膜7上に微細凹凸8を備えた薄膜状の金属酸化物を作製した。
【0092】
<炭素の含有量と薄膜状の金属酸化物の屈折率との関係>
次に、薄膜状の金属酸化物に含まれる炭素の含有量と、薄膜状の金属酸化物の屈折率との関係を調べた。薄膜状の金属酸化物は、チタン酸化物を主成分として構成したものを用いた。この薄膜状の金属酸化物のことを以下においては「薄膜状のチタン酸化物」と記す。以下において、薄膜状のチタン酸化物の屈折率は、反射分光膜厚計(製品名:FE3000(大塚電子株式会社製))を用いて測定した値を示し、薄膜状のチタン酸化物中の炭素の含有率は、X線分光分析装置(製品名:QuanteraSXM(ULVAC−PHI社製))を用いて測定した値を示す。
【0093】
図11(a)は、屈折率が1.9の薄膜状のチタン酸化物の膜厚方向の組成比を示すグラフであり、図11(b)は、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物の膜厚方向の組成比を示すグラフである。図11(a)に示されるように、屈折率が1.9の薄膜状の金属酸化物は、その炭素含有量が15%程度であるのに対し、図11(b)に示されるように、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物は、その炭素含有量が10%以下である。このことから、炭素の含有量が少ないほど金属酸化物の屈折率が高くなる傾向にあることがわかる。よって、高屈折率の金属酸化物を作製するためには、炭素原子の残存量が少なくする必要があることが明らかである。
【0094】
<薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚と端面のキレとの関係>
図12は、薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚を代えたときのその端面のキレを示す図である。図12に示されるように、屈折率が2.1以上の薄膜状の金属酸化物は、その端面のキレがよいのに対し、屈折率が2以下の薄膜状の金属酸化物は、その端面のキレが悪いことがわかった。このように屈折率2以下の薄膜状の金属酸化物の端面のキレが悪いのは、薄膜状の金属酸化物中の有機物、とりわけ炭素原子の含有量が多いことによるものと考えられる。
【0095】
以上の結果から、本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物は、安価であって、高品質である。このような薄膜状の金属酸化物を青色LEDに用いることにより、その光取出し効率を高めることができる。
【0096】
本発明において上記で好適な実施形態を説明した薄膜状の金属酸化物は、上記に限定されるものではなく、上記以外の構成とすることもできる。
【0097】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の製造方法により製造される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウム系発光ダイオード、光触媒機能つきガラス、色素増感太陽電池に好適に用いられる。また、青色LEDの光取り出し構造、各種光学膜、および光触媒コーティングに応用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 透明基板、2 n型半導体層、3 発光層、4 p型半導体層、5 透明電極、6 発光基板、7 金属酸化物薄膜、8 微細凹凸、9 金属酸化物、10 マスク、11 光重合材料膜、12 レジストマスクパターン、13 光、14 現像液、15 フッ素系ガス、16 酸素ガスのプラズマ、18 露光部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状の金属酸化物の製造方法に関し、特に光取り出し効率を向上させる微細凹凸を有する薄膜状の金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色LED(Light Emitting Diode)に用いられる窒化ガリウム系半導体の屈折率は、2.5程度であり、空気の屈折率は略1である。スネルの法則よると、窒化ガリウム半導体から空気に向けて光が透過するときの半導体と空気との臨界角は、23.5°程度である。このため、窒化ガリウム半導体と空気相との界面の法線に対し23.5°以上の角度で入射した光は全反射する。
【0003】
非特許文献1には、半導体内で発生した光から外部に取り出すことができる割合を算出するための式が開示されている。その式とは、取り出し得る光の割合の上限をηとし、上記の臨界角をθとすると、η=2π(1−cosθ)/4π=(1−cosθ)/2で表される。この式に基づくと、窒化ガリウム半導体から空気に向けて取り出すことのできる光の割合は、4.1%程度と算出される。
【0004】
一般的に窒化ガリウム半導体は、表裏の二面を有し、その両面から光を取り出すことができる。表面と裏面とが同一の割合で光を取り出すことができると仮定すると、窒化ガリウム半導体から空気中への光取り出し効率は、8.2%程度となる。よって、半導体内で発生した光の大半は、外部に取り出されていないことがわかる。
【0005】
光取り出し効率を向上するための試みとして、特許文献1〜3の発光素子では、透明電極層の表面に凹凸を形成する技術が開示されている。このように透明電極層の表面に凹凸を形成することにより、60%程度まで光取り出し効率を向上させることができる。
【0006】
この光取り出し効率をさらに向上させるために、たとえば特許文献4には、LEDの光取り出し効率に最も影響される部分、すなわち空気相とp型窒化ガリウム層との界面に、発光波長よりも短いピッチの微細凹凸を形成する技術が開示されている。このような微細凹凸を形成することにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0007】
しかし、p型窒化ガリウムは加工性が悪いため、プラズマエッチングに大量の塩素ガスを用いる必要がある。塩素ガスを加工用に用いると、真空装置にダメージを与えてしまうという問題、および発光ダイオードの一部にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0008】
しかも、p型窒化ガリウムは電気伝導性が悪いため、p型窒化ガリウム表面の全面に透明電極を形成しなければならない。かかる透明電極を作成すると、p型窒化ガリウムの表面に形成された凹凸が埋没し、発光効率が低下するという問題があった。もし仮に透明電極を薄膜で全面に形成したところで、透明電極の抵抗値が高くなるため、発光効率が低下するという問題もあった。
【0009】
このような問題を一掃する手法としては、透明電極の表面に凹凸構造を作製することが考えられる。しかし、LEDを構成する透明電極の材料であるインジウム酸化錫(ITO:Indium Tin Oxide)は屈折率が1.9程度であるため、屈折率2.5のp型窒化ガリウムと比べて0.6程度の差がある。この差が光取り出し効率を低減させる一因となる。このような光取り出し効率の低減を回避するためには、屈折率が窒化ガリウム基板に近い金属酸化物、とりわけチタン酸化物からなり、発光波長よりも短いピッチの微細凹凸を有する膜を透明電極上に作製すればよい。
【0010】
窒化ガリウムの屈折率に近い屈折率を有する薄膜状の金属酸化物を作製する方法としては、真空機器を用いるスパッタ成膜法と、ゾルゲル法とがある。スパッタ成膜法は、真空機器の設備が大掛かりなものであり、製造コストが高くなる傾向にある。これに対し、ゾルゲル法は、小規模な設備で成膜することができ、製造コストが低廉である。このような理由から、たとえば特許文献5、非特許文献3、および非特許文献4では、ゾルゲル法で薄膜状の金属酸化物を作製する方法の検討がなされている。
【0011】
非特許文献3および4には、干渉露光法を用いてパターニングを行なう方法が開示されている。この方法は、金属アルコキシド、プロパノール、βジケトン、および塩酸を含む水溶液を基板上に塗布した上で、干渉露光法により光の反応した部分のみを選択的に重合を促進させることにより、パターニングを行なうというものである。
【0012】
一方、特許文献5に開示されている薄膜状の金属酸化物を作製する方法は、金属酸化物の前駆体を塗布した後に、乾燥、露光(エネルギー照射)、現像、焼成という一連の動作を行なうというものである。このようにして作製された薄膜状の金属酸化物に対し、ナノインプリントおよびフォトリソグラフィを行なうことにより、微細凹凸を有するレジストを作製する。そして、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行なうことにより、薄膜状の金属酸化物の表面に微細凹凸を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3448441号公報
【特許文献2】特許第4093943号公報
【特許文献3】特表2004−511080号公報
【特許文献4】特開2007−95745号公報
【特許文献5】特許第2825411号公報
【特許文献6】特開2006−270001号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】原口雅宣、他2人、「LED照明の最近の動向−フォトニック結晶LED−」、OplusE、2007年6月、p.582−p.586
【非特許文献2】Ja-Yeon Kim et al.,「Enhanced light extraction from GaN-based green light-emitting diode with photonic crystal」,Applied Physics Letters 91,(2007),181109 1-3
【非特許文献3】Hiroyo Segawa et al.,「Fabrication of TiO2-Organic Hybrid Dot Arrays Using Nanosecond Laser Interference Lithography」,Journal of the American Ceramic Society,(2006),89[11]3507-3510
【非特許文献4】瀬川浩代、「有機−無機ハイブリッド材料の光パターニングとその形状制御」、日本ゾル−ゲル学会第5回セミナー講演論文集、(2008)、p.1−p.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献5のように面積を限定せずに大面積でパターニングを行なうと、焼結および乾燥の工程で、有機物を燃焼させるときに薄膜状の金属酸化物が収縮して、亀裂が生じる。亀裂が発生した薄膜状の金属酸化物に対し、その表面に微細凹凸を作製しても光取り出し効率を向上させることができない。
【0016】
一方、非特許文献3および非特許文献4では、金属酸化物の前駆体を塗布した後に、干渉露光法を用いて細かいドット状の光を多数照射することにより、1μm2以下の突起物をピッチ1μmの間隔で形成する方法が開示されている。このように1μm2程度まで小さくすることにより、膜割れ等の影響を受けることなく微細凹凸を作成することができる。この方法は、特許文献5で開示されている方法と同様に、レジスト等のエッチングマスクを形成する必要がなく、光を照射した部分のみに金属酸化物を作製することができる。
【0017】
しかしながら、干渉露光法での露光面積は小さく、かつ露光時間も長いことから、高強度のレーザを用いる必要があり、ウエハレベルでは実用的ではない。また、金属酸化物を高屈折率化する工程で金属酸化物を700℃まで温度上昇させて焼成することにより、透明電極、とりわけITOの抵抗値が変わるという問題もある。
【0018】
さらに、ITOからなる透明電極は、表面エネルギーが小さいため密着力が弱く、1μm2程度の大きさの薄膜状の金属酸化物は、現像工程で剥がれやすい。もし仮に微細凹凸を形成できたとしても、その後の電極形成工程、およびチップ分断工程で容易に剥がれてしまう。
【0019】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価であって、高品質であり、かつ光取出し効率に優れた薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、多様な環境においても微細凹凸の形状が損なわれない薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、該光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、該光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、露光部を露光することにより、露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、第2露光ステップの後に、露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
上記の薄膜状の金属酸化物を形成するステップの後に、薄膜状の金属酸化物上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターンを形成するステップと、薄膜状の金属酸化物の一部をフッ素系ガスによりドライエッチングするステップと、レジストマスクパターンを除去するステップとを含むことが好ましい。
【0022】
薄膜状の金属酸化物は、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含むことが好ましく、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含むことが好ましい。薄膜状の金属酸化物は、その屈折率が2以上2.6以下であることが好ましく、その膜厚が50nm以上360nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安価であって、高品質であり、かつ光取出し効率に優れた薄膜状の金属酸化物の製造方法を提供することができる。本発明により製造される薄膜状の金属酸化物は、多様な環境においても微細凹凸の形状が損なわれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物を含む発光ダイオードの模式的な断面図である。
【図2】発光基板上に金属溶液を塗布した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図3】光重合材料膜を部分的に露光しているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図4】光重合材料膜に対し現像を行なっているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図5】露光部に対し、さらに露光しているときの状態を示す模式的な断面図である。
【図6】露光部を焼成することにより薄膜状の金属酸化物を形成したときの状態を示す模式的な断面図である。
【図7】薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図8】薄膜状の金属酸化物の一部をドライエッチングにより除去した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図9】レジストマスクパターンを除去した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図10】厚みおよび大きさを変えて作製した薄膜状のチタン酸化物の状態を示す模式図である。
【図11】(a)は、屈折率が1.9の薄膜状のチタン酸化物のX線分光分析法による元素量分析の結果を示したグラフであり、(b)は、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物のX線分光分析法による元素量分析の結果を示したグラフである。
【図12】薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚を代えたときのその端面のキレを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物を説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表わすものではない。
【0026】
<薄膜状の金属酸化物>
図1は、本発明により作製される薄膜状の金属酸化物を含む発光ダイオードの模式的な断面図である。本実施の形態で作製された薄膜状の金属酸化物9は、図1に示されるように、発光基板6上に形成されるものである。ここで、発光基板6は、平坦面状に形成された主表面Aと、この主表面Aと反対側に位置する主表面Bとを備える。
【0027】
そして、発光基板6の主表面A上に、薄膜状の金属酸化物9を形成することが好ましく、特に発光基板6の透明電極5上に薄膜状の金属酸化物9を形成することがより好ましい。発光基板6の主面上に、薄膜状の金属酸化物9を設けることにより、発光基板6の発光層3で発生する光の取り出し効率を向上させることができる。
【0028】
本発明により作製される薄膜状の金属酸化物9は、金属酸化物薄膜7に密着させて微細凹凸8を設けることが好ましい。これにより環境変化にも対応し得る程度に金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との密着性を確保することができる。金属酸化物薄膜7および微細凹凸8はいずれも、透光性を有する材料であり、同一の材料からなることが好ましい。金属酸化物薄膜7および微細凹凸8が同一材料からなる場合、金属酸化物薄膜7から微細凹凸8に光が入射するときに、その界面で反射しにくくなり、光取り出し効率を向上させることができる。なお、本発明の薄膜状の金属酸化物9は、必ずしも微細凹凸8を備えているもののみに限られるものではなく、単に金属酸化物薄膜7のみからなるものであってもよい。
【0029】
なお、発光基板6上に金属酸化物薄膜7を設けることなく、微細凹凸8のみを形成してもよいが、その場合、微細凹凸8と透明電極5との間で剥離が生じやすい他、微細凹凸8が欠損する可能性もあり好ましくない。
【0030】
また、金属酸化物薄膜7と透明電極5との接触面積は、金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との接触面積よりも広いことが好ましい。これにより金属酸化物薄膜7を構成する材料の格子定数と、透明電極5を構成する材料の格子定数とが異なっていても、金属酸化物薄膜7と透明電極5との接着性を確保することができる。
【0031】
<発光基板>
本発明において、発光基板6は、透明基板1と、該透明基板1の主表面上に形成されたn型半導体層2と、該n型半導体層2の主表面上に形成された発光層3と、該発光層3の主表面上に形成されたp型半導体層4と、該p型半導体層4の主表面上に形成された透明電極5とを備える。
【0032】
発光基板6に用いられる透明基板1としては、特に限定することなくいかなるものをも用いることができるが、透光性および耐熱性を有する材料を用いることが好ましい。このような透明基板1の材料としては、たとえばITO、窒化ガリウム、サファイアなどを挙げることができる。
【0033】
また、発光ダイオードがたとえば青色ダイオードである場合、n型半導体層2、発光層3、およびp型半導体層4にはそれぞれ、n型GaN、InGaN、およびp型GaNを代表的な材料として用いることができる。また、透明電極5には、ITO、ZnO等を代表的な材料として用いることができる。
【0034】
次に、発光基板6が発光するメカニズムを説明する。まず、n型半導体層2に電源の負極を接続し、p型半導体層4または透明電極5に電源の正極を接続する。これによりn型半導体層2から発光層3内に電子が導入されるとともに、p型半導体層4から発光層3に正孔が導入される。そして、発光層3内で正孔と電子とが結合したときに、禁制帯幅(バンドギャップ)に相当するエネルギが光として放出される。
【0035】
一方、n型半導体層2、発光層3、およびp型半導体層4に対し、一定のエネルギを有する光を照射すると、n型半導体層2および発光層3内の電子が励起される。この励起された電子が、基底状態に戻るときに発光層3において発光現象が起こる。
【0036】
(実施の形態1)
<薄膜状の金属酸化物の製造方法>
本実施の形態に係る薄膜状の金属酸化物の製造方法は、透明電極5上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜11を形成するステップと(図2)、該光重合材料膜11を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部18を2以上形成する第1露光ステップと(図3)、光重合材料膜11に対しアルコール系の現像液14を用いて現像することにより、第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと(図4)、該露光部18を露光することにより、露光部18の重合反応を促進する第2露光ステップと(図5)、該第2露光ステップの後に、露光部18を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物9を形成するステップと(図6)を含むことを特徴とする。
【0037】
このように光重合材料膜11を形成するステップの後に、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部18をパターン状に区切ることにより、露光部18が透明基板1から剥がれにくくなるとともに、薄膜状の金属酸化物9に亀裂が発生するのを抑制することができる。ここで、露光部18とは、第1露光ステップで露光されることにより、金属アルコキシドの一部が重合してゲル状になった部分のことをいう。この部分が、第2露光ステップ、焼成ステップを経て、薄膜状の金属酸化物9になる。
【0038】
薄膜状の金属酸化物9をゾルゲル法によって作製するときに、その上面の面積が3μm2未満であると、パターニングしたときにその端面がぼやけて露光されるため好ましくない。また、0.2mm2を超えると、後の焼成ステップなどで薄膜状の金属酸化物に亀裂が発生する場合があり好ましくない。以下に、本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法の各ステップを説明する。
【0039】
<光重合材料膜を形成するステップ>
図2は、発光基板上に金属溶液を塗布した後の状態を示す模式的な断面図である。本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法においては、まず、透明基板1上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布する。これにより図2に示されるように、透明基板1上に、金属アルコキシドを含む光重合材料膜11を形成することができる。金属溶液を塗布する方法としては、たとえばスピンコート法、ディップコート法、バーコーターコート法などを挙げることができる。なお、以下において、本ステップのことを塗布ステップと記することもある。
【0040】
ここで、上記の金属溶液は、金属アルコキシドおよびケトン基を有する有機材料を含むものである。第2露光ステップにおいて、ケトン基を有する有機材料が金属アルコキシドと結合することにより、光を吸収する特性を持つキレート環を形成する。このキレート環が光を吸収したときにπ軌道からπ*軌道に遷移し、開環して金属アルコキシド同士が重合し、金属酸化物が生成される。
【0041】
この金属溶液に含まれる金属アルコキシドとしては、光が入射した部分のみ重合される性質を有するものであることが好ましく、このような性質を有する材料としてはたとえばチタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、ペンタエトキシタンタル、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、タンタルメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ニオブペンタエトキシドなどを挙げることができる。金属溶液中には、金属アルコキシドを0.5質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。また、上記の金属溶液に用いる溶媒としては、アルコールを用いることが好ましく、より好ましくは1−プロパノールである。
【0042】
また、後述する第2露光ステップにおいて、光重合材料膜11内の有機物同士を重合させるという観点からは、感光剤を含むことが好ましい。上記の感光剤としては、たとえばチバスペシャリティケミカルズが市販しているIRUGACUREシリーズ、DAROCUREシリーズなどを挙げることができる。
【0043】
金属溶液に含まれるケトン基としては、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート(MeAcAc:2-(Methacryloyloxy)ethyl Acetoacetate)、ジベンゾイルメタン(DBM:Dibenzoylmethane)などを挙げることができる。
【0044】
<第1露光ステップ>
図3は、光重合材料膜に対し、マスクを被せた上で露光したときの状態を示す模式的な断面図である。第1露光ステップでは、上記で塗布した光重合材料膜11に対し、透明電極5の上面の面積よりも小さい3μm2以上0.2mm2以下の面積の領域が空いたマスク10を密着させた上で、マスク10の上方から紫外線を含む光13を照射する。
【0045】
このように光重合材料膜11のうちの残留させたい部分を露光し、除去したい部分はマスク10で覆って露光されないようにする。これにより露光された部分の増感剤のみが反応して、金属アルコキシドなどの成分が重合し、露光部18が形成される。かかる露光部18の上面の面積は、3μm2以上0.2mm2以下であることを特徴とする。このような露光部18の上面の面積とすることにより、後の第2露光ステップおよび焼成ステップにおいて、薄膜状の金属酸化物に割れが発生するのを抑制するとともに、透明電極から薄膜状の金属酸化物が剥離されにくくなる。なお、露光部18の上面の面積は、図3に示されるように、発光基板6のチップサイズよりも一回り小さいことが好ましい。
【0046】
一方、光重合材料膜11のうちのマスクで覆われた部分は、光重合材料膜11の状態から変化することなく非露光部となる。第1露光ステップで露光するときの露光量としては、1J/cm2以上30J/cm2以下であることが好ましい。1J/cm2未満であると、後の現像ステップで透明基板1上の露光部18が除去されてしまう可能性がある。一方、30J/cm2を超えると、露光時間が長くなりすぎるため、生産上不都合が生じるだけでなく、露光部の端面がぼやけてしまう場合がある。
【0047】
<現像ステップ>
図4は、光重合材料膜に対し現像を行なっているときの状態を示す模式的な断面図である。現像ステップでは、図4に示されるように、現像液14により短分子の金属酸化物からなる非露光部を発光基板6から除去する。一方、発光基板6上の露光部18は、耐性を有するゲル状となっているため、現像液に対しての溶解性が低く、そのまま残存する。このように現像液14に対する溶解性の違いを利用することにより、任意の形状の露光部18を形成することができる。
【0048】
ここでの現像液14は、短分子の金属酸化物を溶解させるが、高分子の金属酸化物は溶解しにくいという性質のものを用いる必要がある。このような現像液14としては、アルコール系現像液を用いることが好ましい。アルコール系現像液は、未露光部を除去するだけでなく、露光部18に含まれる有機物を除去する効果もある。これらの相乗効果により薄膜状の金属酸化物9の屈折率および結晶化度を向上させることができる。アルコール系現像液の中でも、エトキシエタノール等の有機溶剤を用いると、さらに薄膜状の金属酸化物9の屈折率を向上させることができる。
【0049】
<第2露光ステップ>
図5は、露光部に対しさらに露光するときの状態を示す模式的な断面図である。第2露光ステップでは、図5に示されるように、発光基板6の露光部18が形成されている側の面上から紫外線を含む光13を露光することにより、露光部18の金属酸化物の重合を促進するとともに、金属酸化物のゾルが光を吸収し、その内部で光触媒反応が生じる。ここで、金属酸化物の重合反応とは、ケトン基と金属アルコキシドが結合してできるキレート環に、紫外光が吸収されることにより、キレート環が開環し、金属イオンと酸素との結合が生成する反応である。これにより金属酸化物の結晶を生成することができる。
【0050】
さらに、光触媒反応によりゾル中に微量に存在する水分子やアルコールが反応して、OHラジカルを生成し、このOHラジカルが有機物を分解する。これにより金属酸化物の微粒子が互いに凝集し、後の露光ステップを経て、結晶化度が高く、かつ高屈折率の薄膜状の金属酸化物を作製することができる。このような第2露光ステップにより、焼成する温度を500℃以上の高温にしなくとも露光部18に含まれる有機物を除去することができる。
【0051】
第2露光ステップで露光する光は、紫外線を含み、かつその露光量が600J/cm2以上であることが好ましい。これにより上記の光触媒反応が生じやすく、結晶化度を高めることができ、もって薄膜状の金属酸化物を高屈折率化することができる。このような第2ステップの露光量は、3000J/cm2以上であることがより好ましい。
【0052】
また、第2露光ステップで露光される光の強度は、2000mW/cm2以上20000mW/cm2以下であることが好ましい。20000mW/cm2を超えると、透明基板1の材質によっては変質する可能性がある。また、第2露光ステップで露光される光の強度がたとえば2000mW/cm2である場合、5分以上露光することにより600J/cm2以上のエネルギーを露光することが好ましい。また、第2露光ステップで露光される光の強度がたとえば20000mW/cm2である場合、30秒以上露光することが好ましい。これにより薄膜状の金属酸化物の屈折率の向上が顕著となる。
【0053】
<焼成するステップ>
図6は、露光部を焼成することにより薄膜状の金属酸化物を形成したときの状態を示す模式的な断面図である。上記の露光部18に対し、500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物の屈折率を高めることができる。このような焼成ステップを行なうことにより、透明電極5の特性を損なうことなく、露光部18に残留する有機物を完全燃焼させる。このように有機物を完全燃焼させることにより、薄膜状の金属酸化物9の結晶化度を高めるとともに、その屈折率を高めることができる。この焼成の温度が500℃を超えると、透明基板1の材質が変わってしまう他、たとえば透明電極5に用いられるITOの特性が変化する可能性がある。
【0054】
以上の各工程により、発光基板6から薄膜状の金属酸化物9が剥がれにくく、かつ薄膜状の金属酸化物9に亀裂がない状態で形成することができる。しかも、本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法は、従来よりも低温で焼成することができ、プラズマを使用しなくてもよい。このことから、発光基板6が有する性能を劣化させにくいというメリットもある。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態の薄膜状の金属酸化物の製造方法では、実施の形態1で作製した薄膜状の金属酸化物9の表面に、微細凹凸8を形成することを特徴とする。このような微細凹凸8は、薄膜状の金属酸化物9上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターン12を形成するステップと(図7)、該薄膜状の金属酸化物9の一部をフッ素系ガス15によりドライエッチングするステップと(図8)、レジストマスクパターン12を除去するステップと(図9)により形成される。このように薄膜状の金属酸化物9の表面に微細凹凸8を設けることにより、光取り出し効率を高めることができる。以下においては、薄膜状の金属酸化物の表面に微細凹凸8を形成するための各ステップを説明する。
【0056】
<レジストマスクパターンを形成するステップ>
図7は、実施の形態1で作製した薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクパターンを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。図7に示されるように、薄膜状の金属酸化物9に対し、500nm以下のピッチの凹凸構造を有するレジストマスクパターン12を形成することが好ましい。ここで、レジストマスクパターン12を形成する方法としては、フォトリソグラフィー、ナノインプリント、または微粒子を並べる方法を用いることができる。かかるレジストマスクパターン12は、レジスト材料からなるものである。
【0057】
外気と薄膜状の金属酸化物との界面において、全反射角よりも大きな入射角で入射した光を取り出すためには、発光基板から発光する光の発光波長をλ、屈折率をn、入射角をθとしたときに、λ/(n・sinθ)以下のピッチの微細凹凸を形成する必要がある。このような微細凹凸を形成することにより、全反射角よりも大きな入射角で入射した光が回折し、発光基板の表面から光を取り出すことができる。
【0058】
上記の数式から発光基板が青色発光ダイオードの波長領域の光を発光する場合、500nm以下のピッチの微細凹凸を形成することが好ましいことが導かれる。そして、このようなピッチの微細凹凸を形成するためには、レジストマスクパターンは、500nm以下のピッチの微細凹凸を形成することが必要である。ここで、500nm以下のピッチの微細凹凸とは、隣接する2つの凸部間の距離が500nm以下であることを意味する。ここで、レジストマスクパターンの微細凹凸のピッチは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により測定された値を用いる。
【0059】
<ドライエッチングするステップ>
図8は、薄膜状の金属酸化物の一部をドライエッチングにより除去した後の状態を示す模式図である。図8に示されるように、上記で作製したレジストマスクパターン12の表面のうちの薄膜状の金属酸化物9が露出している部分に対し、フッ素系ガス15を用いてドライエッチングすることにより、薄膜状の金属酸化物9の一部を除去する。これにより薄膜状の金属酸化物9の表面に500nm以下のピッチの微細凹凸8を形成する。
【0060】
ここでのドライエッチングは、フッ素系ガス15をRIEのプラズマにより分解したフッ素系ラジカルを薄膜状の金属酸化物9に作用させることにより行なわれる。このようなRIEを用いたフッ素系ラジカルによるドライエッチングは、レジストマスクパターン12の除去速度よりも薄膜状の金属酸化物9の除去速度が速い。このため、金属酸化物薄膜7上に500nm以下のピッチの微細凹凸8を作製することができる。
【0061】
<レジストマスクパターンを除去するステップ>
図9は、レジストマスクパターンを除去した後の状態を示す模式的な断面図である。レジストマスクパターン12の除去は、酸素プラズマによる洗浄、オゾン水による洗浄、UV光とオゾンとを組み合わせた洗浄、または有機溶媒による洗浄のいずれかの方法により行なうことができる。
【0062】
これらの中でも薄膜状の金属酸化物9に影響を与えることなくレジストマスクパターン12を除去するという観点から、図9に示されるように、酸素ガスのプラズマ16により発生する酸素ラジカルによってレジストマスクパターン12を除去することが好ましい。
【0063】
以上の各ステップを行なうことにより、透明電極5上に平坦層からなる金属酸化物薄膜7を形成し、さらに微細凹凸8を形成した薄膜状の金属酸化物9を形成することができる。このような微細凹凸8を有する薄膜状の金属酸化物9は、LEDの光取り出し効率を向上させることができる。しかも、後の工程で、発光ダイオードをチップ分断しても薄膜状の金属酸化物9に割れが発生しにくく、また微細凹凸8の欠損も生じにくい。
【0064】
このようにして作製される薄膜状の金属酸化物9は、チタン酸化物を主成分として含むことが好ましく、より具体的には、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含有することが好ましい。これにより薄膜状の金属酸化物の結晶性を高めることができ、屈折率を高くすることができる。チタン酸化物が90質量%未満であると、有機物の残存量が多くなり、屈折率が低くなるという問題があり、99質量%を超えると、実用上ゾルゲル法で作製することができないという問題がある。
【0065】
チタン酸化物には種々の結晶構造があるが、その中でもアナターゼ型であることが好ましい。アナターゼ型のチタン酸化物は、その屈折率が2.6よりも大きくなることはないが、最大で2.52程度まで上昇させることができる。屈折率を2.5以上にすることにより、発光ダイオード等に用いる窒化ガリウムの屈折率と近似し、発光ダイオードの光取り出し効率を向上させることができる。
【0066】
また、アナターゼ型のチタン酸化物は、第2露光ステップにおける光触媒反応により加水分解反応が促進されて、有機物をOHラジカルにて分解させることができる。これにより焼成するステップでの温度を高温にする必要がないというメリットもある。
【0067】
本実施の形態で作製される薄膜状の金属酸化物9は、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含むことが好ましく、より好ましくは7%以下の炭素原子を含むことである。このような割合で炭素原子を含むことにより、薄膜状の金属酸化物9の屈折率を低下させることができる。10%を超えると、炭素原子が多すぎることにより、薄膜状の金属酸化物9の結晶構造の緻密さが失われ、その屈折率が低くなる。なお、薄膜状の金属酸化物9に含まれる炭素原子の厚み方向の平均は、X線分光分析法(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)を用いて測定した値を採用するものとする。
【0068】
本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物9は、その屈折率が2以上2.6以下であることが好ましい。これにより窒化ガリウムとの屈折率差が低くなり、その光取り出し効率を低下させにくくすることができる。屈折率が2未満であると、パターニングしたときの端面を所望の形状にすることができず、特に発光ダイオードの電極が覆われてしまい、通電できなくなる可能性がある。一方、屈折率が2.6を超えると、窒化ガリウムとの屈折率差が大きくなって、窒化ガリウムとの界面で全反射が生じ、発光ダイオードの発光効率が低下する。
【0069】
<薄膜状の金属酸化物の膜厚>
図10は、薄膜状の金属酸化物の膜厚および上面の面積を変えて作製したときの状態を示す模式図である。本実施の形態の製造方法のうちの塗布ステップ、第1露光ステップ、現像ステップ、第2露光ステップ、および焼成ステップという一連の各ステップを1サイクル行なうことにより、220μm×600μm(すなわち0.138mm2の上面の面積)の薄膜状の金属酸化物を60nm、120nm、および200nmの3種類の膜厚で作製し、それらを光学顕微鏡(製品名:LV150A(ニコン株式会社製))により観察した画像である。
【0070】
図10から明らかなように、焼成後の膜厚が200nmになるように薄膜状の金属酸化物9を作製した場合、薄膜状の金属酸化物9が収縮することにより、それに亀裂が生じている。一方、220μm×600μmの薄膜状の金属酸化物を60nmおよび120nmの膜厚で作製した場合、薄膜状の金属酸化物中に亀裂はほとんど生じることはなく、その歩留まりは90%以上である。
【0071】
以上の結果から、膜厚が厚くなればなるほど膜収縮エネルギーが大きくなり、膜割れしやすくなることが明らかである。また、120nmを超える膜厚の薄膜状の金属酸化物を一連の各ステップを1サイクルで作製すると、薄膜状の金属酸化物内に亀裂が発生したり、薄膜状の金属酸化物が剥がれやすくなったりする。
【0072】
上記の一連の各ステップの1サイクルで形成する薄膜状の金属酸化物は、その厚みが50nm以上120nm以下であることが好ましい。そして、120nmを超える膜厚の薄膜状の金属酸化物を形成する場合、上記の一連の各ステップを2サイクル以上行なって形成することが好ましい。これにより360nm以下の薄膜状の金属酸化物を作製することができる。また、薄膜状の金属酸化物9が金属酸化物薄膜7および微細凹凸8からなる場合、その合計厚みが50nm以上360nm以下であることが好ましい。
【0073】
図10の「380μm×2mm」の欄のaおよびbには、上記の各ステップを1サイクル行なうことにより、380μm×2mm(すなわち0.76mm2の上面の面積)の薄膜状の金属酸化物を作製し、それを光学顕微鏡により観察した画像を示している。図10に示されるように、薄膜状の金属酸化物を60nm、87nm、105nm、120nm、および200nmの間の5種類の膜厚で作製した。
【0074】
図10に示されるように、380μm×2mmの大きさの薄膜状の金属酸化物は、105nmの膜厚を超えると、膜収縮のエネルギーが欠陥部分に集中するため、微細凹凸を作製する部分でも薄膜状の金属酸化物に割れや剥離が生じた。このことから、亀裂のない状態で光取り出し効果の高い膜厚をできる限り作製するためには、LEDのラージチップサイズに相当する、0.2mm2以下の上面の面積でパターニングすることが重要である。
【0075】
本実施の形態で作製される薄膜状の金属酸化物9は、その膜厚が50nm以上360nm以下であることが好ましい。このような膜厚の金属酸化物は、光取り出し効率が高く、かつ簡便に作製することができる。50nm未満であると、薄膜状の金属酸化物を所望の形状とすることができず、360nmを超えると、歩留まりが73%まで低下することになるため好ましくない。
【0076】
<薄膜状の金属酸化物の用途>
本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウムを含む発光ダイオードの透明電極上に形成することが好ましい。発光ダイオードに用いられる窒化ガリウムは、その屈折率が高いことにより、他の部材との界面で全反射が生じやすく、光取り出し効率が低くなりやすい。
【0077】
そこで、発光ダイオードの透明電極上に薄膜状の金属酸化物を形成することにより、発光ダイオードの光取り出し効率を高めるとともに、同一の光量でも低消費電力にすることができ、発熱を抑えることができる。本実施の形態により作製される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウム系発光ダイオード、光触媒機能つきガラス、色素増感太陽電池に好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
<光重合材料膜を形成するステップ>
まず、青色LED発光基板6を準備した。青色LED発光基板6としては、厚みが700μmであって、その大きさが幅20mm×長さ20mmのサファイア基板に対し、n型GaNからなるn型半導体層2と、InGaNを含む発光層3と、p型GaNからなるp型半導体層4と、ITOからなる透明電極5とが形成されたものを用いた。
【0080】
次に、青色LED基板上に塗布するための金属溶液を非特許文献3に基づいて準備した。まず、チタニウムブトキシド(キシダ化学株式会社製)と、ケトン基を有するエチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート(キシダ化学株式会社製)と、1−プロパノールとを混合し、15分間攪拌した撹拌溶液を準備した。
【0081】
次に、DAROCURE(チバスペシャリティケミカルズ社製)を感光剤として溶解させた溶液を準備した。この溶液を上記の撹拌溶液に滴下し、室温で3時間攪拌することにより金属溶液を作製した。
【0082】
このようにして作製した金属溶液をスピンコーター(製品名:SPN(トキワ真空機材製))を用いて、スピンコートすることにより、透明電極5が形成された青色LED発光基板6上に光重合材料膜11を形成した(図2)。
【0083】
<第1露光ステップ>
上記の光重合材料膜11を形成した青色LED発光基板6をマスクアライナー(製品名:PLA521F(Canon株式会社))にセットし、図3に示されるように、紫外線を含む光を発光するランプ(製品名:DEEP-UVランプ(ウシオ電機株式会社製))からマスクを通して光重合材料膜11に紫外線を含む光13を照射した。マスクは、幅250mm×長さ600mmの格子状の孔が2μmの間隔で形成されたものを用いた。これにより光重合材料膜11のうちの光が入射した部分のチタニウムブトキシドのみが重合した。かかる格子状の孔から光が照射した部分、すなわち露光部18は、後述の現像ステップで現像液に対して不活性になり、後の第2露光ステップ、および焼成ステップを経て薄膜状の金属酸化物となる。
【0084】
<現像ステップ>
上記の第1露光ステップで露光した発光基板6を、図4に示されるように、2−エトキシエタノール(キシダ化学株式会社)からなるエッチング液に1分間浸漬させることにより、光重合材料膜11のうちの露光されていない部分(非露光部)を除去した。
【0085】
<第2露光ステップ>
上記の現像ステップで残存した露光部18に対し、さらに5500W/cm2の強度の紫外線を含む光を15分間露光することにより、露光部18を構成するTiO2前駆体の重合を促進させるとともに、それに含まれる有機物を分解した。
【0086】
<薄膜状の金属酸化物を形成するステップ>
最後に、上記で得られた青色LED発光基板6をホットプレート上に配置し、400℃で1時間の焼成を行なうことにより、図6に示されるような本実施例の薄膜状の金属酸化物9を形成した。このようにして作製された薄膜状の金属酸化物の膜厚を触針式表面形状測定器(製品名:DEKTAK(アルバック株式会社製))を用いて測定したところ、60nmであることが明らかとなった。また、光重合材料膜の段階ではその屈折率が1.79(平均)であったが、第2露光ステップおよび焼成ステップを経た後の、薄膜状の金属酸化物の屈折率を測定すると、その屈折率は最小でも2.12まで向上しており、最大では2.47まで向上していることがわかった。なお、屈折率は、反射分光膜厚計(製品名:FE3000(大塚電子株式会社製))を用いて測定したものである。
【0087】
(実施例2)
上記の実施例1と同様の方法により、発光基板6上に薄膜状の金属酸化物を作製した。そして、かかる薄膜状の金属酸化物に対し、レジストマスクパターンを形成した後にドライエッチングを行なうことにより、金属酸化物薄膜7の表面上に微細凹凸8が形成された薄膜状の金属酸化物9を形成した。以下に各ステップを述べる。
【0088】
<レジストマスクパターンを形成するステップ>
実施例1で作製した薄膜状の金属酸化物9を含むウエハを界面活性剤水溶液に浸漬させた後に、純水により洗浄した。そして、洗浄後の薄膜状の金属酸化物に対し、スピンコートによりレジスト樹脂(製品名:PAK01(東洋合成工業株式会社製))を塗布した。
【0089】
その後、レジスト樹脂を真空下に設置し、1500Paから2500Paにて石英モールド(製品名:NIM400UL(NTT−ATナノファブリケーション製))を押し付けることによりナノインプリントを行なった。そして、図7に示されるように積算露光量が1000mJ/cm2となる条件で紫外光を照射することにより、発光波長よりも短いピッチのレジストマスクパターンを作製した。このようなレジストマスクパターンのピッチは、300nmであった。
【0090】
<ドライエッチングするステップ>
上記の300nmのピッチを有するレジストマスクパターンに対し、CHF3ガスを導入して、RFプラズマの電力を100WにしてRIEエッチングを行なった。そして、透明電極5までがエッチングにより除去されないように、エッチング量を調整した。これにより金属酸化物薄膜7と微細凹凸8との2層構造の薄膜状の金属酸化物9を形成した。このようにして形成された微細凹凸8のピッチは、マスクパターンと同一の形状を再現し、300nmであった。
【0091】
<レジストマスクパターンを除去するステップ>
次に、薄膜状の金属酸化物9上に残ったレジストマスクパターン12を酸素ガスのRIEにてアッシングを行なった。これにより図1に示すような金属酸化物薄膜7上に微細凹凸8を備えた薄膜状の金属酸化物を作製した。
【0092】
<炭素の含有量と薄膜状の金属酸化物の屈折率との関係>
次に、薄膜状の金属酸化物に含まれる炭素の含有量と、薄膜状の金属酸化物の屈折率との関係を調べた。薄膜状の金属酸化物は、チタン酸化物を主成分として構成したものを用いた。この薄膜状の金属酸化物のことを以下においては「薄膜状のチタン酸化物」と記す。以下において、薄膜状のチタン酸化物の屈折率は、反射分光膜厚計(製品名:FE3000(大塚電子株式会社製))を用いて測定した値を示し、薄膜状のチタン酸化物中の炭素の含有率は、X線分光分析装置(製品名:QuanteraSXM(ULVAC−PHI社製))を用いて測定した値を示す。
【0093】
図11(a)は、屈折率が1.9の薄膜状のチタン酸化物の膜厚方向の組成比を示すグラフであり、図11(b)は、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物の膜厚方向の組成比を示すグラフである。図11(a)に示されるように、屈折率が1.9の薄膜状の金属酸化物は、その炭素含有量が15%程度であるのに対し、図11(b)に示されるように、屈折率が2.2の薄膜状のチタン酸化物は、その炭素含有量が10%以下である。このことから、炭素の含有量が少ないほど金属酸化物の屈折率が高くなる傾向にあることがわかる。よって、高屈折率の金属酸化物を作製するためには、炭素原子の残存量が少なくする必要があることが明らかである。
【0094】
<薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚と端面のキレとの関係>
図12は、薄膜状の金属酸化物の屈折率および膜厚を代えたときのその端面のキレを示す図である。図12に示されるように、屈折率が2.1以上の薄膜状の金属酸化物は、その端面のキレがよいのに対し、屈折率が2以下の薄膜状の金属酸化物は、その端面のキレが悪いことがわかった。このように屈折率2以下の薄膜状の金属酸化物の端面のキレが悪いのは、薄膜状の金属酸化物中の有機物、とりわけ炭素原子の含有量が多いことによるものと考えられる。
【0095】
以上の結果から、本発明の製造方法により作製された薄膜状の金属酸化物は、安価であって、高品質である。このような薄膜状の金属酸化物を青色LEDに用いることにより、その光取出し効率を高めることができる。
【0096】
本発明において上記で好適な実施形態を説明した薄膜状の金属酸化物は、上記に限定されるものではなく、上記以外の構成とすることもできる。
【0097】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の製造方法により製造される薄膜状の金属酸化物は、窒化ガリウム系発光ダイオード、光触媒機能つきガラス、色素増感太陽電池に好適に用いられる。また、青色LEDの光取り出し構造、各種光学膜、および光触媒コーティングに応用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 透明基板、2 n型半導体層、3 発光層、4 p型半導体層、5 透明電極、6 発光基板、7 金属酸化物薄膜、8 微細凹凸、9 金属酸化物、10 マスク、11 光重合材料膜、12 レジストマスクパターン、13 光、14 現像液、15 フッ素系ガス、16 酸素ガスのプラズマ、18 露光部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、
前記光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、
前記光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、前記第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、
前記露光部を露光することにより、前記露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、
前記第2露光ステップの後に、前記露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含む、薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記薄膜状の金属酸化物を形成するステップの後に、前記薄膜状の金属酸化物上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターンを形成するステップと、
前記薄膜状の金属酸化物の一部をフッ素系ガスによりドライエッチングするステップと、
前記レジストマスクパターンを除去するステップとを含む、請求項1に記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜状の金属酸化物は、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含む、請求項1または2に記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜状の金属酸化物は、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記薄膜状の金属酸化物は、その屈折率が2以上2.6以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜状の金属酸化物は、その膜厚が50nm以上360nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項1】
透明電極上に金属アルコキシドを含む金属溶液を塗布することにより、光重合材料膜を形成するステップと、
前記光重合材料膜を部分的に露光することにより、3μm2以上0.2mm2以下の上面の面積の露光部を2以上形成する第1露光ステップと、
前記光重合材料膜に対しアルコール系の現像液を用いて現像することにより、前記第1露光ステップで露光されていない部分を除去するステップと、
前記露光部を露光することにより、前記露光部の重合反応を促進する第2露光ステップと、
前記第2露光ステップの後に、前記露光部を500℃以下の温度で焼成することにより、薄膜状の金属酸化物を形成するステップとを含む、薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記薄膜状の金属酸化物を形成するステップの後に、前記薄膜状の金属酸化物上に、500nm以下のピッチの凹凸を有するレジストマスクパターンを形成するステップと、
前記薄膜状の金属酸化物の一部をフッ素系ガスによりドライエッチングするステップと、
前記レジストマスクパターンを除去するステップとを含む、請求項1に記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜状の金属酸化物は、90質量%以上99質量%以下のチタン酸化物を含む、請求項1または2に記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜状の金属酸化物は、その厚み方向の平均で10%以下の炭素原子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記薄膜状の金属酸化物は、その屈折率が2以上2.6以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜状の金属酸化物は、その膜厚が50nm以上360nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜状の金属酸化物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−216643(P2011−216643A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82857(P2010−82857)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]