融着接続方法
【課題】複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを容易かつ短時間で融着接続することができる方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る融着接続方法は光ファイバ整列工程および融着工程を備える。光ファイバ整列工程では、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるともに、光ファイバ101〜1016の端面位置を含む一定範囲において光ファイバ101〜1016が並列配置され、その並列配置の際に隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触した状態とされていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が可能な状態とされる。融着工程では、並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面と、光導波体20のチャネル型の光導波路211〜2116それぞれの端面とが、互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【解決手段】本発明に係る融着接続方法は光ファイバ整列工程および融着工程を備える。光ファイバ整列工程では、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるともに、光ファイバ101〜1016の端面位置を含む一定範囲において光ファイバ101〜1016が並列配置され、その並列配置の際に隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触した状態とされていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が可能な状態とされる。融着工程では、並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面と、光導波体20のチャネル型の光導波路211〜2116それぞれの端面とが、互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
或る光ファイバの端面と他の光ファイバの端面とを光学的に接続する際に、光コネクタを用いて接続する場合の他、各々の端面同士を突き合わせて融着接続する場合がある。一方、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを接続する際には、コネクタ接続や融着接続の他、紫外線硬化樹脂のような使用波長帯で透過率が高い接着剤を用いて接続する場合がある。接着剤による接続は長期信頼性の点で不利である。これに対して、融着接続は、接続点における光の損失が小さく信頼性が高いという利点がある。
【0003】
そこで、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを接続する際にも、融着接続することが行われる場合がある。非特許文献1に記載された技術は、基板上に形成された光導波路型回折格子素子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)を光導波体として用い、このAWGに含まれる複数本の入出力用光導波路それぞれの端面と複数本の光ファイバそれぞれの端面とを融着接続するものである。
【非特許文献1】松本和久、他、「PLCと光ファイバのCO2レーザー多芯融着接続」、1997年電子情報通信学会総合大会予稿集、C-3-58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光ファイバはクラッド径が通常125μmであって細径であるのに対して、光導波体は一般に平板形状であることから、光ファイバおよび光導波体それぞれの熱容量は大きく相違する。このことから、光ファイバの端面と光導波体の端面とを融着接続する際には、加熱位置,加熱強度および加熱時間について精密な制御が必要である。非特許文献1に記載された技術では、加熱源としてCO2レーザを用いて複数本のファイバと平面導波路とを融着接続しているが、最適な条件で接続するために光ファイバを1本ずつ順次に融着接続している。
【0005】
光導波体に対して光ファイバを1本ずつ順次に融着接続すると、熱容量が小さい光ファイバが急速に加熱されて該光ファイバが変形する場合があり、また、充分な接続強度が得られない場合がある。また、或る光ファイバを融着接続した後に次の光ファイバを融着接続しようとすると、先の接続時に受けた熱履歴の影響が残っていて、先の接続時と同じ条件ではうまく接続できないことから、1本毎に異なる加熱条件で制御する必要がある。このように、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する従来の方法では、加熱制御が容易でなく、また、所要時間が長い。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを容易かつ短時間で融着接続することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る融着接続方法は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、(1) 複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバを密接して並列配置する光ファイバ整列工程と、(2)光ファイバ整列工程において密接して並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置が揃えられるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバが密接して並列配置される。その後の融着工程において、密接して並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とが互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0009】
ここで、「複数本の光ファイバを密接して並列配置する」状態とは、隣接する光ファイバが互いに別個のものであるが互いに近接し或いは接触していて、または、隣接する光ファイバが溶融一体化されていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が容易に可能な状態をいう。このような状態とされ端面位置が揃えられて並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面は光導波体の端面に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、複数本の光ファイバの全体の熱容量と光導波体の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易である。
【0010】
なお、「光導波体」とは、端面において所定方向の或る範囲に亘って光入出力端が離散的または連続的に存在し、光を内部に閉じ込めて導波させ得るものである。例えば、「光導波体」は、共通の基板に複数本のチャネル型の光導波路が形成されたもの、基板にスラブ型の光導波路が形成されたもの、屈折率分布の有無に拘らず外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得るもの、等である。
【0011】
本発明に係る融着接続方法は、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置近傍が加熱溶融して一体化された状態とするのが好適である。この場合には、複数本の光ファイバが端面を含む一定範囲あるいは端面付近で一体化されているので、取扱が容易であり、また、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が確実に行われ得る。
【0012】
本発明に係る融着接続方法は、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバを並列配置し加熱溶融して一体化し、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で複数本の光ファイバを切断することにより、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるのが好適である。複数本の光ファイバぞれぞれの端面位置を揃えた後に一体化してもよいが、一体化した後に切断するのが好ましく、このようにすることにより、複数本の光ファイバぞれぞれの端面位置(切断位置)を容易に揃えることができる。
【0013】
また、他の本発明に係る融着接続方法は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、(1) 複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバを並列配置し、その並列配置した複数本の光ファイバを一定範囲において固定部材により一体化した状態とする光ファイバ整列工程と、(2)光ファイバ整列工程において並列配置されて固定部材により一体化された複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この融着接続方法では、並列配置されて固定部材により一体化された複数本の光ファイバは、相互間で熱伝導が容易に可能な状態となる。このような状態とされた複数本の光ファイバそれぞれの端面は光導波体の端面に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、複数本の光ファイバの全体の熱容量と光導波体の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを容易かつ短時間で融着接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
先ず、本発明に係る融着接続方法の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例を示す図である。この光部品1は、16本の光ファイバ101〜1016と、16本のチャネル型の光導波路211〜2116が共通の基板に形成された光導波体20とを備えて構成されている。
【0019】
光ファイバ101〜1016それぞれは、石英ガラスを主成分としており、コアおよびクラッドを有していて、一定のクラッド径125μmを有している。光ファイバ101〜1016それぞれは、光導波体20に対して融着接続される端面位置を含む一定範囲において、この順に並列配置されていて、隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触された状態となっている(nは1以上15以下の任意の整数)。また、光ファイバ101〜1016は、光導波体20に対して融着接続される端面位置において各々のコアが一定ピッチ125μmで配置されている。
【0020】
光導波体20は、石英ガラスを主成分とする平板形状のものであり、16本のチャネル型の光導波路211〜2116が基板に形成されたものである。光導波路211〜2116それぞれは、光ファイバ101〜1016に対して融着接続される端面位置において、この順に一定ピッチ125μmで形成されている。例えば、光導波体20はAWGであり、光導波路211〜2116は光入出力用の光導波路である。
【0021】
そして、この光部品1では、光ファイバ10nの端面とチャネル型の光導波路21nの端面とが互いに融着接続されていて、光ファイバ10nと光導波路21nとの間で光導波が可能になっている(nは1以上16以下の任意の整数)。本実施形態に係る融着接続方法は、このような光部品1を製造する際に用いられるものであり、図2に示されるように光ファイバ整列工程および融着工程を備える。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。この光ファイバ整列工程では、16本の光ファイバ101〜1016が用意されて、各々の端面位置を含む或る範囲に亘って被覆樹脂が除去されてクラッドが露出される。そして、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるともに、光ファイバ101〜1016の端面位置を含む一定範囲において光ファイバ101〜1016が密接して並列配置され、その並列配置の際に隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触した状態とされていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が可能な状態とされる。
【0023】
なお、光ファイバ整列工程において、2組の8芯リボンファイバ(コアピッチ250μm)それぞれの先端部の被覆樹脂が除去され、これら2組の8芯リボンファイバが互いに重ねられて、16本の光ファイバ101〜1016が並列配置されるようにしてもよい。また、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるように光ファイバ101〜1016が並列配置されてもよいし、光ファイバ101〜1016が並列配置された後に一括切断により各々の端面位置が揃えられた状態とされてもよい。
【0024】
図4は、第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる融着工程を説明する図である。この融着工程では、前の光ファイバ整列工程において並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面と、光導波体20のチャネル型の光導波路211〜2116それぞれの端面とが、互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0025】
なお、融着工程において、加熱源としてCO2レーザが用いられるのが好適である。また、そのレーザ光の照射領域Aの形状は、各々の端面同士の突き合わせ位置の全てを含むストライプ形状(図5参照)であるのが好適であり、その照射領域Aにおいて略一定の照射強度であるのが好適である。このような照射領域Aとするには、シリンドリカルレンズを含む集光光学系(図6参照)が用いられてもよいし、回折型光学部品を利用したビームホモジナイザを含む光学系(例えば文献「SEIテクニカルレビュー、第166号、pp.13-18、2005年3月」を参照)が用いられてもよい。
【0026】
また、図4に示されるように、ファイバ31,32、モニタ光源41,42、およびパワーメータ51,52を用いて、光ファイバ101〜1016と光導波体20の光導波路211〜2116とを調芯して、その調芯後に加熱溶融して接続するのが好ましい。この調芯に際して、モニタ光源41は光ファイバ101の他端に接続され、モニタ光源42は光ファイバ1016の他端に接続される。パワーメータ51は光ファイバ31を介して光導波体20の光導波路211の他端に接続され、パワーメータ52は光ファイバ32を介して光導波体20の光導波路2116の他端に接続される。光ファイバ31,32はコア径が大きいグレーティドインデックス(GI)光ファイバであるのが好適であり、この場合には、光導波路211,2116の他端から光ファイバ31,32への光結合効率が高い。
【0027】
調芯の際に、モニタ光源41から出力された光のうち光ファイバ101,光導波路211および光ファイバ31を経てパワーメータ51により受光される光のパワーがモニタされるとともに、モニタ光源42から出力された光のうち光ファイバ1016,光導波路2116および光ファイバ32を経てパワーメータ52により受光される光のパワーがモニタされる。そして、これら2つの受光強度が大きくなるように、光ファイバ101〜1016と光導波体20の光導波路211〜2116とが調芯される。
【0028】
また、加熱溶融の為のCO2レーザ光が照射されている時の光量変化をモニタして、照射条件の最適化を行うこともできる。光量モニタには、図4中に示したようにコア径が大きいGIファイバ31,32を突き合わせ結合させて測定してもよいし、あるいは、空間型の光パワーセンサを設置してもよい。また、図中では光ファイバ101および光ファイバ1016について光量をモニタしているが、他の光ファイバ102〜1015について光量変化をモニタすれば、より詳細な照射条件の調整も可能となる。
【0029】
本実施形態では、光ファイバ101〜1016のうち隣接する光ファイバが互いに接触した状態とされて相互間で熱伝導が容易に可能な状態とされ、端面位置が揃えられて並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面が光導波体20の光導波路211〜2116に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、光ファイバ101〜1016の全体の熱容量と光導波体20の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易であり、さらには融着接続部の強度も向上する。
【0030】
(第2実施形態)
【0031】
次に、本発明に係る融着接続方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例は、図1に示されたものと同様である。また、第2実施形態に係る融着接続方法も、第1実施形態の場合と同様に、図2に示されるように光ファイバ整列工程および融着工程を備える。ただし、光ファイバ整列工程の具体的内容の点で、第1実施形態と第2実施形態とでは相違する。
【0032】
図7は、第2実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。本実施形態における光ファイバ整列工程では、被覆樹脂が除去された16本の光ファイバ101〜1016が並列配置され加熱溶融されて一体化され、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で光ファイバ101〜1016が切断されることにより、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられる。
【0033】
この工程において、16本の光ファイバ101〜1016が並列配置される際に、16本の光ファイバ101〜1016は、長手方向の或る位置において把持部61a,61bにより把持され、また、他の位置において把持部62a,62bにより把持される。これら把持部61a,61b,62a,62bは、各光ファイバの位置決めをする為の溝部を有しているのが好ましい。把持部61a,61bと把持部62a,62bとの間の間隔は例えば40mm程度である。
【0034】
また、この工程において、例えば、加熱源としてバーナ70が用いられる。このバーナ70は、光ファイバ101〜1016の配列面に平行であって長手方向に垂直な方向にトラバースされる。バーナ70のトラバースの幅は、光ファイバ101〜1016の配列幅より大きいのが好ましい。バーナ70のトラバースは例えば25往復である。一体化される長手方向範囲は例えば4mm程度である。光ファイバ101〜1016は、バーナ70による加熱により軟化して自重により湾曲するが、この加熱時に長手方向に張力が付与されることにより、その湾曲が抑制され得る。張力は例えば50gfである。
【0035】
図8は、第2実施形態に係る融着接続方法において切断された光ファイバ101〜1016の切断面を示す図である。一体化された長手方向範囲の何れかの位置で光ファイバ101〜1016が切断されると、光ファイバ101〜1016の切断面は、この図に示されるように、各々のコアが一定ピッチ125μmで配置されたものとなる。また、この一体化された光ファイバ101〜1016の切断面は、各光ファイバの端面位置が揃えられたものとなっており、光導波体20の端面に対して融着接続されるべきものとなっている。
【0036】
第2実施形態における光ファイバ整列工程に続く融着工程は、第1実施形態の場合と同様である。第2実施形態に係る融着接続方法は、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる他、以下のような効果をも奏することができる。すなわち、融着工程の際に、光ファイバ101〜1016が端面付近で一体化されているので、取扱が容易であり、また、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が確実に行われ得る。また、一体化した後に切断することにより、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置(切断位置)を容易に揃えることができる。なお、光ファイバそれぞれの端面位置を揃えた後に端面位置近傍を加熱溶融し一体化することで、端面位置を含む一定範囲で密接して並列配置された状態としてもよい。
【0037】
(第3実施形態)
【0038】
光ファイバ整列工程において複数本の光ファイバを並列配置するために種々の部品や冶具が用いられてもよい。例えば、図11に示されるように、複数本の光ファイバ10それぞれの端面位置が揃えられるとともに、複数本の光ファイバ10それぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバ10が互いに接触されて並列配置され、その並列配置した複数本の光ファイバ10が端面位置を含む一定範囲において固定部材11に挿入されて一体化された状態とされる。
【0039】
そして、その固定部材11とともに複数本の光ファイバ10の端部が切断または研磨されることにより、複数本の光ファイバ10の各端面位置が揃えられる。固定部材11は、好適には、光ファイバ10と同じ材料(石英ガラス)からなる。そして、続く融着工程において、固定部材11により一体化された複数本の光ファイバ10それぞれの端面と光導波体20の端面とが互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0040】
或いは、図12に示されるように、複数本の光ファイバ10は、互いに直接接触してはいないが、並列配置させた状態として固定部材11に挿入され、これらが共に一体化されてもよく、このようにすることにより、固定部材11を介してそれぞれの光ファイバ10が熱伝導容易なように接触していてもよい。
【0041】
固定部材11は、図11や図12に示されるようにブロック状のものに形成した穴部に光ファイバ10を挿入する形態のものだけでなく、図13に示されるように溝を形成した板状の固定部材11上に光ファイバ10を整列させて一体化する形態のものでもよいし、図14に示されるように2分割した部材11Aおよび11Bにより光ファイバ10を上下から挟み込むような形態のものでもよい。
【0042】
図11または図12に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図15に示されるように、光ファイバ10と同じ材料(石英ガラス)からなる凹形状の部材11aの当該凹部に複数の光ファイバ10が配列され、この上に蓋としての部材11bが被せられて、バーナまたは赤外ランプ等による加熱により部材11a,11bが溶融されて複数の光ファイバ10と一体化されて製造される。なお、部材11aの凹部の高さは、光ファイバ10のクラッド径に応じて設定され、部材11aの凹部の幅は、光ファイバ10のクラッド径および本数に応じて設定される。
【0043】
また、図11または図12に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図16に示されるように、凹形状の部材11aの当該凹部に複数の光ファイバ10が配列され、この上に蓋としての部材11bが被せられ、さらに、これらの間にできる隙間にSiO2ガラスパウダ12が充填されて、加熱により部材11a,11b,光ファイバ10およびSiO2ガラスパウダ12が溶融されて複数の光ファイバ10と一体化されて製造される。
【0044】
また、図13に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図17に示されるように、凹形状の部材11aの当該凹部にSiO2ガラスパウダ12が一定厚で容れられ(同図(a))、これらが加熱されることでSiO2ガラスパウダ12が溶融されて軟化されたSiO2ガラス13とされ、この軟化されたSiO2ガラス13上に複数の光ファイバ10が配列されて(同図(b))、製造される。
【0045】
或いは、部材11は光ファイバ10の材料より融点が高い材料(例えばSiC)からなり、上述した方法によりファイバ同士が溶融一体化され、または、軟化されたSiO2ガラス上に配列固定された後に、一体化された複数本の光ファイバ10を部材11a,11bから取り出して製造される。
【0046】
(変形例)
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、融着工程の際に用いられる加熱源は、上記実施形態ではCO2レーザが用いられたが、十分な加熱が得られれば、他のレーザが用いられてもよいし、また、光ファイバの端面同士の融着接続に通常用いられている放電融着やヒータが用いられてもよい。
【0048】
複数本の光ファイバと融着接続されるべき光導波体は、上記実施形態では複数本のチャネル型の光導波路が共通の基板に形成されたものであったが、一般には、端面において所定方向の或る範囲に亘って光入出力端が離散的または連続的に存在し、光を内部に閉じ込めて導波させ得るものである。その他、光導波体は、基板にスラブ型の光導波路が形成されたものや、屈折率分布の有無に拘らず外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得るもの、等であってもよい。
【0049】
例えば、図9に示されるように、光導波体20Aがコア23およびクラッド24を含み、コア23がスラブ型の光導波路となっていて、そのコア23の端面と並列配置された複数本の光ファイバ10の各端面とが互いに融着接続されてもよい。また、図10に示されるように、外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得る光導波体20Bの端面と、並列配置された複数本の光ファイバ10の各端面とが、互いに融着接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る融着接続方法の工程を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる融着工程を説明する図である。
【図5】融着工程における照射領域の形状を示す図である。
【図6】融着工程において用いられる光学系を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る融着接続方法において切断された光ファイバ101〜1016の切断面を示す図である。
【図9】光導波体の他の例を示す図である。
【図10】光導波体の他の例を示す図である。
【図11】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図12】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図13】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図14】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図15】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【図16】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【図17】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1…光部品、101〜1016…光ファイバ、20…光導波体、211〜2116…光導波路、11…固定部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
或る光ファイバの端面と他の光ファイバの端面とを光学的に接続する際に、光コネクタを用いて接続する場合の他、各々の端面同士を突き合わせて融着接続する場合がある。一方、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを接続する際には、コネクタ接続や融着接続の他、紫外線硬化樹脂のような使用波長帯で透過率が高い接着剤を用いて接続する場合がある。接着剤による接続は長期信頼性の点で不利である。これに対して、融着接続は、接続点における光の損失が小さく信頼性が高いという利点がある。
【0003】
そこで、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを接続する際にも、融着接続することが行われる場合がある。非特許文献1に記載された技術は、基板上に形成された光導波路型回折格子素子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)を光導波体として用い、このAWGに含まれる複数本の入出力用光導波路それぞれの端面と複数本の光ファイバそれぞれの端面とを融着接続するものである。
【非特許文献1】松本和久、他、「PLCと光ファイバのCO2レーザー多芯融着接続」、1997年電子情報通信学会総合大会予稿集、C-3-58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光ファイバはクラッド径が通常125μmであって細径であるのに対して、光導波体は一般に平板形状であることから、光ファイバおよび光導波体それぞれの熱容量は大きく相違する。このことから、光ファイバの端面と光導波体の端面とを融着接続する際には、加熱位置,加熱強度および加熱時間について精密な制御が必要である。非特許文献1に記載された技術では、加熱源としてCO2レーザを用いて複数本のファイバと平面導波路とを融着接続しているが、最適な条件で接続するために光ファイバを1本ずつ順次に融着接続している。
【0005】
光導波体に対して光ファイバを1本ずつ順次に融着接続すると、熱容量が小さい光ファイバが急速に加熱されて該光ファイバが変形する場合があり、また、充分な接続強度が得られない場合がある。また、或る光ファイバを融着接続した後に次の光ファイバを融着接続しようとすると、先の接続時に受けた熱履歴の影響が残っていて、先の接続時と同じ条件ではうまく接続できないことから、1本毎に異なる加熱条件で制御する必要がある。このように、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する従来の方法では、加熱制御が容易でなく、また、所要時間が長い。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを容易かつ短時間で融着接続することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る融着接続方法は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、(1) 複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバを密接して並列配置する光ファイバ整列工程と、(2)光ファイバ整列工程において密接して並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置が揃えられるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバが密接して並列配置される。その後の融着工程において、密接して並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とが互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0009】
ここで、「複数本の光ファイバを密接して並列配置する」状態とは、隣接する光ファイバが互いに別個のものであるが互いに近接し或いは接触していて、または、隣接する光ファイバが溶融一体化されていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が容易に可能な状態をいう。このような状態とされ端面位置が揃えられて並列配置された複数本の光ファイバそれぞれの端面は光導波体の端面に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、複数本の光ファイバの全体の熱容量と光導波体の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易である。
【0010】
なお、「光導波体」とは、端面において所定方向の或る範囲に亘って光入出力端が離散的または連続的に存在し、光を内部に閉じ込めて導波させ得るものである。例えば、「光導波体」は、共通の基板に複数本のチャネル型の光導波路が形成されたもの、基板にスラブ型の光導波路が形成されたもの、屈折率分布の有無に拘らず外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得るもの、等である。
【0011】
本発明に係る融着接続方法は、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置近傍が加熱溶融して一体化された状態とするのが好適である。この場合には、複数本の光ファイバが端面を含む一定範囲あるいは端面付近で一体化されているので、取扱が容易であり、また、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が確実に行われ得る。
【0012】
本発明に係る融着接続方法は、光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバを並列配置し加熱溶融して一体化し、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で複数本の光ファイバを切断することにより、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるのが好適である。複数本の光ファイバぞれぞれの端面位置を揃えた後に一体化してもよいが、一体化した後に切断するのが好ましく、このようにすることにより、複数本の光ファイバぞれぞれの端面位置(切断位置)を容易に揃えることができる。
【0013】
また、他の本発明に係る融着接続方法は、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、(1) 複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバを並列配置し、その並列配置した複数本の光ファイバを一定範囲において固定部材により一体化した状態とする光ファイバ整列工程と、(2)光ファイバ整列工程において並列配置されて固定部材により一体化された複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この融着接続方法では、並列配置されて固定部材により一体化された複数本の光ファイバは、相互間で熱伝導が容易に可能な状態となる。このような状態とされた複数本の光ファイバそれぞれの端面は光導波体の端面に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、複数本の光ファイバの全体の熱容量と光導波体の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを容易かつ短時間で融着接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
先ず、本発明に係る融着接続方法の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例を示す図である。この光部品1は、16本の光ファイバ101〜1016と、16本のチャネル型の光導波路211〜2116が共通の基板に形成された光導波体20とを備えて構成されている。
【0019】
光ファイバ101〜1016それぞれは、石英ガラスを主成分としており、コアおよびクラッドを有していて、一定のクラッド径125μmを有している。光ファイバ101〜1016それぞれは、光導波体20に対して融着接続される端面位置を含む一定範囲において、この順に並列配置されていて、隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触された状態となっている(nは1以上15以下の任意の整数)。また、光ファイバ101〜1016は、光導波体20に対して融着接続される端面位置において各々のコアが一定ピッチ125μmで配置されている。
【0020】
光導波体20は、石英ガラスを主成分とする平板形状のものであり、16本のチャネル型の光導波路211〜2116が基板に形成されたものである。光導波路211〜2116それぞれは、光ファイバ101〜1016に対して融着接続される端面位置において、この順に一定ピッチ125μmで形成されている。例えば、光導波体20はAWGであり、光導波路211〜2116は光入出力用の光導波路である。
【0021】
そして、この光部品1では、光ファイバ10nの端面とチャネル型の光導波路21nの端面とが互いに融着接続されていて、光ファイバ10nと光導波路21nとの間で光導波が可能になっている(nは1以上16以下の任意の整数)。本実施形態に係る融着接続方法は、このような光部品1を製造する際に用いられるものであり、図2に示されるように光ファイバ整列工程および融着工程を備える。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。この光ファイバ整列工程では、16本の光ファイバ101〜1016が用意されて、各々の端面位置を含む或る範囲に亘って被覆樹脂が除去されてクラッドが露出される。そして、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるともに、光ファイバ101〜1016の端面位置を含む一定範囲において光ファイバ101〜1016が密接して並列配置され、その並列配置の際に隣接する光ファイバ10nと光ファイバ10n+1とが互いに接触した状態とされていて、その結果、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が可能な状態とされる。
【0023】
なお、光ファイバ整列工程において、2組の8芯リボンファイバ(コアピッチ250μm)それぞれの先端部の被覆樹脂が除去され、これら2組の8芯リボンファイバが互いに重ねられて、16本の光ファイバ101〜1016が並列配置されるようにしてもよい。また、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられるように光ファイバ101〜1016が並列配置されてもよいし、光ファイバ101〜1016が並列配置された後に一括切断により各々の端面位置が揃えられた状態とされてもよい。
【0024】
図4は、第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる融着工程を説明する図である。この融着工程では、前の光ファイバ整列工程において並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面と、光導波体20のチャネル型の光導波路211〜2116それぞれの端面とが、互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0025】
なお、融着工程において、加熱源としてCO2レーザが用いられるのが好適である。また、そのレーザ光の照射領域Aの形状は、各々の端面同士の突き合わせ位置の全てを含むストライプ形状(図5参照)であるのが好適であり、その照射領域Aにおいて略一定の照射強度であるのが好適である。このような照射領域Aとするには、シリンドリカルレンズを含む集光光学系(図6参照)が用いられてもよいし、回折型光学部品を利用したビームホモジナイザを含む光学系(例えば文献「SEIテクニカルレビュー、第166号、pp.13-18、2005年3月」を参照)が用いられてもよい。
【0026】
また、図4に示されるように、ファイバ31,32、モニタ光源41,42、およびパワーメータ51,52を用いて、光ファイバ101〜1016と光導波体20の光導波路211〜2116とを調芯して、その調芯後に加熱溶融して接続するのが好ましい。この調芯に際して、モニタ光源41は光ファイバ101の他端に接続され、モニタ光源42は光ファイバ1016の他端に接続される。パワーメータ51は光ファイバ31を介して光導波体20の光導波路211の他端に接続され、パワーメータ52は光ファイバ32を介して光導波体20の光導波路2116の他端に接続される。光ファイバ31,32はコア径が大きいグレーティドインデックス(GI)光ファイバであるのが好適であり、この場合には、光導波路211,2116の他端から光ファイバ31,32への光結合効率が高い。
【0027】
調芯の際に、モニタ光源41から出力された光のうち光ファイバ101,光導波路211および光ファイバ31を経てパワーメータ51により受光される光のパワーがモニタされるとともに、モニタ光源42から出力された光のうち光ファイバ1016,光導波路2116および光ファイバ32を経てパワーメータ52により受光される光のパワーがモニタされる。そして、これら2つの受光強度が大きくなるように、光ファイバ101〜1016と光導波体20の光導波路211〜2116とが調芯される。
【0028】
また、加熱溶融の為のCO2レーザ光が照射されている時の光量変化をモニタして、照射条件の最適化を行うこともできる。光量モニタには、図4中に示したようにコア径が大きいGIファイバ31,32を突き合わせ結合させて測定してもよいし、あるいは、空間型の光パワーセンサを設置してもよい。また、図中では光ファイバ101および光ファイバ1016について光量をモニタしているが、他の光ファイバ102〜1015について光量変化をモニタすれば、より詳細な照射条件の調整も可能となる。
【0029】
本実施形態では、光ファイバ101〜1016のうち隣接する光ファイバが互いに接触した状態とされて相互間で熱伝導が容易に可能な状態とされ、端面位置が揃えられて並列配置された光ファイバ101〜1016それぞれの端面が光導波体20の光導波路211〜2116に対して一括して融着接続されるので、その融着接続に要する時間は短縮され得る。また、光ファイバ101〜1016の全体の熱容量と光導波体20の熱容量との差は従来技術と比べて小さく、両者を一括して融着接続するので、融着接続の際の加熱制御が容易であり、さらには融着接続部の強度も向上する。
【0030】
(第2実施形態)
【0031】
次に、本発明に係る融着接続方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例は、図1に示されたものと同様である。また、第2実施形態に係る融着接続方法も、第1実施形態の場合と同様に、図2に示されるように光ファイバ整列工程および融着工程を備える。ただし、光ファイバ整列工程の具体的内容の点で、第1実施形態と第2実施形態とでは相違する。
【0032】
図7は、第2実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。本実施形態における光ファイバ整列工程では、被覆樹脂が除去された16本の光ファイバ101〜1016が並列配置され加熱溶融されて一体化され、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で光ファイバ101〜1016が切断されることにより、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置が揃えられる。
【0033】
この工程において、16本の光ファイバ101〜1016が並列配置される際に、16本の光ファイバ101〜1016は、長手方向の或る位置において把持部61a,61bにより把持され、また、他の位置において把持部62a,62bにより把持される。これら把持部61a,61b,62a,62bは、各光ファイバの位置決めをする為の溝部を有しているのが好ましい。把持部61a,61bと把持部62a,62bとの間の間隔は例えば40mm程度である。
【0034】
また、この工程において、例えば、加熱源としてバーナ70が用いられる。このバーナ70は、光ファイバ101〜1016の配列面に平行であって長手方向に垂直な方向にトラバースされる。バーナ70のトラバースの幅は、光ファイバ101〜1016の配列幅より大きいのが好ましい。バーナ70のトラバースは例えば25往復である。一体化される長手方向範囲は例えば4mm程度である。光ファイバ101〜1016は、バーナ70による加熱により軟化して自重により湾曲するが、この加熱時に長手方向に張力が付与されることにより、その湾曲が抑制され得る。張力は例えば50gfである。
【0035】
図8は、第2実施形態に係る融着接続方法において切断された光ファイバ101〜1016の切断面を示す図である。一体化された長手方向範囲の何れかの位置で光ファイバ101〜1016が切断されると、光ファイバ101〜1016の切断面は、この図に示されるように、各々のコアが一定ピッチ125μmで配置されたものとなる。また、この一体化された光ファイバ101〜1016の切断面は、各光ファイバの端面位置が揃えられたものとなっており、光導波体20の端面に対して融着接続されるべきものとなっている。
【0036】
第2実施形態における光ファイバ整列工程に続く融着工程は、第1実施形態の場合と同様である。第2実施形態に係る融着接続方法は、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる他、以下のような効果をも奏することができる。すなわち、融着工程の際に、光ファイバ101〜1016が端面付近で一体化されているので、取扱が容易であり、また、隣接する光ファイバの相互間で熱伝導が確実に行われ得る。また、一体化した後に切断することにより、光ファイバ101〜1016それぞれの端面位置(切断位置)を容易に揃えることができる。なお、光ファイバそれぞれの端面位置を揃えた後に端面位置近傍を加熱溶融し一体化することで、端面位置を含む一定範囲で密接して並列配置された状態としてもよい。
【0037】
(第3実施形態)
【0038】
光ファイバ整列工程において複数本の光ファイバを並列配置するために種々の部品や冶具が用いられてもよい。例えば、図11に示されるように、複数本の光ファイバ10それぞれの端面位置が揃えられるとともに、複数本の光ファイバ10それぞれの端面位置を含む一定範囲において複数本の光ファイバ10が互いに接触されて並列配置され、その並列配置した複数本の光ファイバ10が端面位置を含む一定範囲において固定部材11に挿入されて一体化された状態とされる。
【0039】
そして、その固定部材11とともに複数本の光ファイバ10の端部が切断または研磨されることにより、複数本の光ファイバ10の各端面位置が揃えられる。固定部材11は、好適には、光ファイバ10と同じ材料(石英ガラス)からなる。そして、続く融着工程において、固定部材11により一体化された複数本の光ファイバ10それぞれの端面と光導波体20の端面とが互いに突き合わされて各々の端面同士が一括して融着接続される。
【0040】
或いは、図12に示されるように、複数本の光ファイバ10は、互いに直接接触してはいないが、並列配置させた状態として固定部材11に挿入され、これらが共に一体化されてもよく、このようにすることにより、固定部材11を介してそれぞれの光ファイバ10が熱伝導容易なように接触していてもよい。
【0041】
固定部材11は、図11や図12に示されるようにブロック状のものに形成した穴部に光ファイバ10を挿入する形態のものだけでなく、図13に示されるように溝を形成した板状の固定部材11上に光ファイバ10を整列させて一体化する形態のものでもよいし、図14に示されるように2分割した部材11Aおよび11Bにより光ファイバ10を上下から挟み込むような形態のものでもよい。
【0042】
図11または図12に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図15に示されるように、光ファイバ10と同じ材料(石英ガラス)からなる凹形状の部材11aの当該凹部に複数の光ファイバ10が配列され、この上に蓋としての部材11bが被せられて、バーナまたは赤外ランプ等による加熱により部材11a,11bが溶融されて複数の光ファイバ10と一体化されて製造される。なお、部材11aの凹部の高さは、光ファイバ10のクラッド径に応じて設定され、部材11aの凹部の幅は、光ファイバ10のクラッド径および本数に応じて設定される。
【0043】
また、図11または図12に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図16に示されるように、凹形状の部材11aの当該凹部に複数の光ファイバ10が配列され、この上に蓋としての部材11bが被せられ、さらに、これらの間にできる隙間にSiO2ガラスパウダ12が充填されて、加熱により部材11a,11b,光ファイバ10およびSiO2ガラスパウダ12が溶融されて複数の光ファイバ10と一体化されて製造される。
【0044】
また、図13に示される光ファイバ整列構造体は、例えば、図17に示されるように、凹形状の部材11aの当該凹部にSiO2ガラスパウダ12が一定厚で容れられ(同図(a))、これらが加熱されることでSiO2ガラスパウダ12が溶融されて軟化されたSiO2ガラス13とされ、この軟化されたSiO2ガラス13上に複数の光ファイバ10が配列されて(同図(b))、製造される。
【0045】
或いは、部材11は光ファイバ10の材料より融点が高い材料(例えばSiC)からなり、上述した方法によりファイバ同士が溶融一体化され、または、軟化されたSiO2ガラス上に配列固定された後に、一体化された複数本の光ファイバ10を部材11a,11bから取り出して製造される。
【0046】
(変形例)
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、融着工程の際に用いられる加熱源は、上記実施形態ではCO2レーザが用いられたが、十分な加熱が得られれば、他のレーザが用いられてもよいし、また、光ファイバの端面同士の融着接続に通常用いられている放電融着やヒータが用いられてもよい。
【0048】
複数本の光ファイバと融着接続されるべき光導波体は、上記実施形態では複数本のチャネル型の光導波路が共通の基板に形成されたものであったが、一般には、端面において所定方向の或る範囲に亘って光入出力端が離散的または連続的に存在し、光を内部に閉じ込めて導波させ得るものである。その他、光導波体は、基板にスラブ型の光導波路が形成されたものや、屈折率分布の有無に拘らず外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得るもの、等であってもよい。
【0049】
例えば、図9に示されるように、光導波体20Aがコア23およびクラッド24を含み、コア23がスラブ型の光導波路となっていて、そのコア23の端面と並列配置された複数本の光ファイバ10の各端面とが互いに融着接続されてもよい。また、図10に示されるように、外表面で光を全反射させながら内部で光を伝搬させ得る光導波体20Bの端面と、並列配置された複数本の光ファイバ10の各端面とが、互いに融着接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る融着接続方法により製造されるべき光部品1の構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る融着接続方法の工程を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係る融着接続方法に含まれる融着工程を説明する図である。
【図5】融着工程における照射領域の形状を示す図である。
【図6】融着工程において用いられる光学系を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る融着接続方法に含まれる光ファイバ整列工程を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る融着接続方法において切断された光ファイバ101〜1016の切断面を示す図である。
【図9】光導波体の他の例を示す図である。
【図10】光導波体の他の例を示す図である。
【図11】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図12】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図13】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図14】複数本の光ファイバの並列配置の他の例を示す図である。
【図15】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【図16】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【図17】複数本の光ファイバの並列配置された光ファイバ整列構造体の製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1…光部品、101〜1016…光ファイバ、20…光導波体、211〜2116…光導波路、11…固定部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、
前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において前記複数本の光ファイバを密接して並列配置する光ファイバ整列工程と、
前記光ファイバ整列工程において密接して並列配置された前記複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、
を備えることを特徴とする融着接続方法。
【請求項2】
前記光ファイバ整列工程において、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置近傍が加熱溶融して一体化された状態とする、ことを特徴とする請求項1記載の融着接続方法。
【請求項3】
前記光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバを並列配置し加熱溶融して一体化し、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で前記複数本の光ファイバを切断することにより、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃える、ことを特徴とする請求項2記載の融着接続方法。
【請求項4】
複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、
前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において前記複数本の光ファイバを並列配置し、その並列配置した前記複数本の光ファイバを前記一定範囲において固定部材により一体化した状態とする光ファイバ整列工程と、
前記光ファイバ整列工程において並列配置されて前記固定部材により一体化された前記複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、
を備えることを特徴とする融着接続方法。
【請求項1】
複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、
前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において前記複数本の光ファイバを密接して並列配置する光ファイバ整列工程と、
前記光ファイバ整列工程において密接して並列配置された前記複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、
を備えることを特徴とする融着接続方法。
【請求項2】
前記光ファイバ整列工程において、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置近傍が加熱溶融して一体化された状態とする、ことを特徴とする請求項1記載の融着接続方法。
【請求項3】
前記光ファイバ整列工程において、複数本の光ファイバを並列配置し加熱溶融して一体化し、その一体化した長手方向範囲の何れかの位置で前記複数本の光ファイバを切断することにより、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃える、ことを特徴とする請求項2記載の融着接続方法。
【請求項4】
複数本の光ファイバそれぞれの端面と光導波体の端面とを融着接続する方法であって、
前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を揃えるとともに、前記複数本の光ファイバそれぞれの端面位置を含む一定範囲において前記複数本の光ファイバを並列配置し、その並列配置した前記複数本の光ファイバを前記一定範囲において固定部材により一体化した状態とする光ファイバ整列工程と、
前記光ファイバ整列工程において並列配置されて前記固定部材により一体化された前記複数本の光ファイバそれぞれの端面と前記光導波体の端面とを互いに突き合わせて各々の端面同士を一括して融着接続する融着工程と、
を備えることを特徴とする融着接続方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−180995(P2008−180995A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15332(P2007−15332)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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