説明

表皮付き中空成形品およびその製造方法

【課題】 表皮末端が貼着される中空成形品の外縁に分割金型のコンプレッションにより中実状の突出部を形成するとともに、突出部を表面壁の外縁の全周にわたって形成することで、エアの圧力に因らず金型の型締め圧力により表皮末端部分の形状を形成し、成形性の良好な表皮付き中空成形品を得る。
【解決手段】 表皮付き中空成形品1は、熱可塑性プラスチックからなる表面壁2および裏面壁3を有する中空成形品本体5と、表面壁2に一体に貼着された表皮6からなる。中空成形品本体5の外縁に側面壁より外方へ張り出した突出部12を形成して、表皮6の末端を突出部12に一体に貼着する。突出部12は略平坦な表面壁2の外縁の全周にわたって中実状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性プラスチックからなる表面壁および裏面壁を有する中空成形品本体の表面壁に、表皮材を一体に貼着した表皮付き中空成形品およびその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明に係る表皮付き中空成形品は、例えば、カーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)、リアパーセルシェルフなどの自動車用内装品または内装壁パーティション、扉などのパネル状の建築用品などに用いられるものである。
【背景技術】
【0003】
表面壁に繊維シートを貼着して、外観性を向上させるとともに触感を向上させた表皮付き中空成形品およびその製造方法は、特公平5−20259号公報に記載されており、それにはピンチオフ部によりパリソンと繊維シートを積層薄肉化した接合部分の端面を外方に突出するように切除する技術について紹介されている。
【0004】
また、熱可塑性プラスチックをブロー成形することにより製造される発泡状態の表面壁および裏面壁を有するとともに、少なくとも一方の壁の外表面に表皮材を一体に貼着した板状の表皮付きブロー成形品およびその製造方法は、国際公開2006−43703公報に記載されている。
【特許文献1】特公平5−20259号公報
【特許文献2】国際公開2006−43703公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡ブロー成形により中空成形品を製造する場合、一般に気泡セルが潰れて発泡倍率が低下することを防止するために、パリソン内に導入するエアの圧力は通常のブロー成形時よりも低く設定される。このため、表皮を分割金型間に配置して一体に表皮付き中空成形品を製造する際に、表皮が貼着される表面壁側のコーナー部分がエアによって十分に引き伸ばされないためにキャビティ面に沿った形状に附形できず、成形不良となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、表皮末端が貼着される中空成形品の外縁に分割金型のコンプレッションにより中実状の突出部を形成するとともに、突出部を表面壁の外縁の全周にわたって形成することで、エアの圧力に因らず金型の型締め圧力により表皮末端部分の形状を形成し、成形性の良好な中空成形品およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る表皮付き中空成形品は、熱可塑性プラスチックからなる表面壁および裏面壁を有する中空成形品本体と、前記表面壁に一体に貼着された表皮からなり、前記中空成形品本体の外縁には側面壁より外方へ張り出した突出部が形成されており、前記表皮の末端が前記突出部において一体に貼着されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る表皮付き中空成形品は、請求項1記載の構成において、前記突出部は略平坦な表面壁の外縁の全周にわたって中実状に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3に係る表皮付き中空成形品は、請求項1記載の構成において、前記突出部の厚さ(a)および突出長さ(b)は、a<10(mm)、かつa≦bの関係を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項4に係る表皮付き中空成形品は、請求項1記載の構成において、中空成形品本体は平均粒子径が120μm以下の気泡セルからなる発泡状態であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る表皮付き中空成形品の製造方法は、熱可塑性プラスチックからなる表面壁および裏面壁を有する中空成形品本体と、前記表面壁に一体に貼着された表皮からなる表皮付き中空成形品の製造方法であって、分割金型間に発泡状態のパリソンおよび表皮を配置して分割金型を型締めすることにより、突出部形成部においてパリソンをコンプレッションして中実状の突出部を略平坦な表面壁の外縁の全周にわたって形成するとともに、前記表皮が前記突出部に沿って貼着されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項6に係る表皮付き中空成形品の製造方法は、請求項5記載の構成において、前記分割金型の突出部形成部に沿って突条が設けられており、当該突条により突出部の付け根部分に凹溝が形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表皮末端が貼着される中空成形品の外縁に分割金型のコンプレッションにより中実状の突出部を形成するとともに、突出部を表面壁の外縁の全周にわたって形成することで、エアの圧力に因らず金型の型締め圧力により表皮末端部分の形状を形成し、成形性の良好な中空成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る表皮付き中空成形品の一部を示す断面図、図2は同上一部を示す斜視図、図3は同上全体の斜視図、図4は図3のA−A線詳細断面図、図5は図4に対応する他の実施の形態を示す断面図である。また、図6は図1ないし図4に示す表皮付き中空成形品のブロー成形工程を示す断面図、図7は同上一部を示す斜視図、図8は図7の状態から型締めした態様の一部を示す斜視図、図9は本発明に係る表皮付き中空成形品を自動車のカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)として使用した態様を示す斜視図、図10は本発明に係る表皮付き中空成形品を自動車のリアパーセルシェルフとして使用した態様を示す斜視図、図11は従来の表皮付き中空成形品における一部を示す斜視図である。
【0015】
図1ないし図4において、1は表皮付き中空成形品である。この表皮付き中空成形品1は、表面壁2、裏面壁3、側面壁4からなる中空二重壁構造の板状の中空成形品本体5と、その表面壁2の外表面に表皮6を一体に貼着したものである。7は中空部である。中空成形品本体5は平均粒子径が120μm以下の気泡セルからなる発泡状態に形成されている。中空成形品本体5はポリオレフィン系樹脂よりなり、その発泡倍率が1.1〜3.5倍の範囲の発泡状態であることが、表皮付きパネル1を軽量かつ高剛性にする観点より好適である。中空成形品本体5の中空部7内には、H鋼形状の補強材8が埋め込まれており、裏面壁3には表面壁2に向けた凹状リブ9が形成されており、10はその溶着面である。なお、図5に示すように、中空部7内には裏面壁3から表面壁2に達するインナーリブ11を形成した補強構造とすることもできる。
【0016】
中空成形品本体5の外縁には、側面壁4より外方へ張り出した突出部12が形成されており、前記表皮6の末端が前記突出部12において一体に貼着されている。この突出部12は略平坦な表面壁2の全周にわたって中実状に形成されている。前記突出部12の厚さをaとし、突出長さをbとすれば、a<10(mm)、かつa≦bの関係を有している。13はピンチオフ部、14は溶着部である。これにより、表皮6が貼着される表面壁2の外周縁には2〜5Rの曲率半径を有する外観の良好なコーナー部分22が形成される。
【0017】
ところで、発泡ブロー成形により中空成形品本体5を製造する場合、一般に気泡セルが潰れて発泡倍率が低下することを防止するために、パリソン内に導入するエアの圧力は通常のブロー成形時よりも低く設定される。エアの吹込み圧力は3.0kg/cm以下、好ましくは0.5〜2.5kg/cmである。このため、従来から表皮6を分割金型間に配置して一体に表皮付き中空成形品本体5を製造する際に、表皮6が貼着される表面壁2側のコーナー部分22は溶融されたパリソンに比べ伸びの悪い表皮6が配置されるため、表皮6がエアによって十分に引き伸ばされないためにキャビティ面に沿った形状のコーナー部分22を附形できず、成形不良となる問題があった(図11参照)。しかし、本発明に係る中空成形品本体5はその外縁に側面壁4より外方へ張り出した突出部12が分割金型のピンチオフ部に設けられた突出部形成部20においてコンプレッションされることにより形成されており、表皮6の末端が前記突出部12において一体に貼着されているので、従来のもののような不都合は生じない。さらに、前記分割金型の突出部形成部20に沿って突条21が設けられており、当該突条21により突出部12の付け根部分に凹溝が形成される。突出部形成部20に沿って形成された突条21によって、コンプレッションされた際に金型により押圧されたパリソンが中空部内へ逃げるのを防止することができ、突出部12が中実状に確実に形成されるとともに、表皮6の末端を突出部12において強固に貼着させることができる。
【0018】
中空成形品本体5を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂が用いられる。特に、メルトフローレートの異なる長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体と直鎖構造を有するプロピレン単独重合体のブレンドを用いることが好適である。その際、ブレンドされたポリオレフィン系樹脂のうち5〜35wt%の範囲でポリエチレン樹脂を添加するとともに、50wt%以上より詳しくは50〜80wt%の範囲で直鎖構造のプロピレン単独重合体とするのが好ましい。さらに、直鎖構造のプロピレン単独重合体は引張弾性率(JIS K7161)が1100MPa以上、さらに詳しくは1500MPa以上、230℃におけるメルトフローレート(JIS K7210)が1.5g/10分以下、さらに詳しくは0.5g/10分以下のものを用いる。これにより、ブレンドされたポリオレフィン系樹脂の230℃におけるメルトフローレート(JIS K7210)は0.6g/10分以下に調整され、ブロー成形時に表皮材6を一体に貼着するのに充分な温度で熱可塑性プラスチックを溶融状態とした場合であっても気泡セルの破泡を低減することができ、曲げ強度の高い表皮付きブロー成形品を得ることができる。なお、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体には190℃におけるメルトフローレートが1.5g/10分以下、好ましくは0.3g/10分以下のポリエチレン樹脂を50wt%以上含有する場合にも同様の効果が期待できる。
【0019】
また、中空成形品本体5を構成する熱可塑性プラスチックとしてポリオレフィン系樹脂にSBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)またはこれらの混合物を3〜10wt%配合することにより、耐衝撃性を向上することができ、発泡状態の中空成形品本体5により表皮付きパネル1を構成した場合であっても、図9に示すように、特にカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)15、または図10に示すように、リアパーセルシェルフ16などの自動車用内装品として好適に使用することが可能である。またこれら自動車用内装品として用いられる場合にあっては気泡セルを有することにより特に、エンジン音等の騒音に対する防音性および直射日光による荷室、ラゲージボックス内の昇温に対する断熱性を得ることができ好適である。
【0020】
表皮6は、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンなどの再生繊維、アセテート、レーヨンなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの合成繊維、およびこれらのブレンド繊維を加工して得られる編物、織物、不織布等の繊維シートであり、布の広がり方向に対して垂直な外方に向けて起毛状態の毛羽を有する起毛した布地や剪毛した布地とすることが意匠的に好適であるが、表皮材は毛羽を有しないものであってもよい。さらには、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂製の樹脂シートとすることもできる。樹脂シートはクッション性、表皮材とパリソン等との間のエア溜り防止、表皮材とパリソン等との貼着強度の向上のため不織布などの繊維シート、発泡シートまたは公知の裏打ち材などを積層することができる。このうちポリエステル、ポリプロピレンまたはポリアミドからなる合成繊維よりなる目付重量が100g/m以上の不織布であることが成形性の観点から特に好ましい。
【0021】
図1ないし図4に示す表皮付き成形品1は、図6ないし図8に示すようにブロー成形される。すなわち、押出ヘッド17からポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂に二酸化炭素または窒素ガス等の物理発泡剤または各種公知の化学発泡剤などの発泡剤を添加、混練して、単層からなる筒状の発泡状態のパリソン18を185℃以上、好ましくは190℃以上の高温で溶融押し出し、分割金型間19、19に表皮6とともに配置して型締めを行うことにより、平均粒子径が120μm以下の気泡セルからなる発泡状態の中空成形品本体5を成形するとともに中空成形品本体5の表面壁2の外表面に表皮6が一体に貼着された表皮付き中空成形品1を得る。発泡状態のパリソン17は185℃以上、好ましくは190℃以上の高温で溶融押し出しされて加圧流体を導入することにより、金型19、19のキャビティの形状に沿って伸ばされるが、気泡が破れることによる急激な発泡倍率の低下を招くことなく、1.1〜3.5倍の所望の発泡倍率からなる中空成形品本体5を形成することができる。
【0022】
本発明において、ブロー成形とは所謂ダイレクトブロー成形に限らずシートブロー成形等を含むものであり、筒状に押出されたパリソンを用いる代わりに複数の樹脂シートを溶融押出しまたは予備成形した樹脂シートを溶融軟化させて、分割金型間に挟み込みエアを導入してキャビティ面に沿った所望の形状を付与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る表皮付き中空成形品の一部を示す断面図である。
【図2】同上一部を示す斜視図である。
【図3】同上全体の斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図4に対応する他の実施の形態を示す断面図である。
【図6】図1ないし図4に示す表皮付き中空成形品のブロー成形工程を示す断面図である。
【図7】同上一部を示す斜視図である。
【図8】図7の状態から型締めした態様の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る表皮付き中空成形品を自動車のカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)として使用した態様を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る表皮付き中空成形品を自動車のリアパーセルシェルフとして使用した態様を示す斜視図である。
【図11】従来の表皮付き中空成形品における一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 表皮付き中空成形品
2 表面壁
3 裏面壁
4 側面壁
5 中空成形品本体
6 表皮
7 中空部
8 補強材
9 凹状リブ
10 溶着面
11 インナーリブ
12 突出部
13 ピンチオフ部
14 溶着部
15 カーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)
16 リアパーセルシェルフ
17 押出ヘッド
18 パリソン
19、19 金型
20 突出部形成部
21 突条
22 コーナー部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチックからなる表面壁および裏面壁を有する中空成形品本体と、
前記表面壁に一体に貼着された表皮からなり、
前記中空成形品本体の外縁には側面壁より外方へ張り出した突出部が形成されており、
前記表皮の末端が前記突出部において一体に貼着されている
ことを特徴とする表皮付き中空成形品。
【請求項2】
前記突出部は略平坦な表面壁の外縁の全周にわたって中実状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の表皮付き中空成形品。
【請求項3】
前記突出部の厚さ(a)および突出長さ(b)は、a<10(mm)、かつa≦bの関係を有することを特徴とする請求項1記載の表皮付き中空成形品。
【請求項4】
中空成形品本体は平均粒子径が120μm以下の気泡セルからなる発泡状態であることを特徴とする請求項1記載の表皮付き中空成形品。
【請求項5】
熱可塑性プラスチックからなる表面壁および裏面壁を有する中空成形品本体と、前記表面壁に一体に貼着された表皮からなる表皮付き中空成形品の製造方法であって、
分割金型間に発泡状態のパリソンおよび表皮を配置して分割金型を型締めすることにより、
突出部形成部においてパリソンをコンプレッションして中実状の突出部を略平坦な表面壁の外縁の全周にわたって形成するとともに、
前記表皮が前記突出部に沿って貼着される
ことを特徴とする表皮付き中空成形品の製造方法。
【請求項6】
前記分割金型の突出部形成部に沿って突条が設けられており、当該突条により突出部の付け根部分に凹溝が形成される
ことを特徴とする請求項5記載の表皮付き中空成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−55806(P2008−55806A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236936(P2006−236936)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】