説明

表示装置及びその製造方法

【課題】 反射領域を備えた表示装置の高品質化。
【解決手段】 第1基板には、画素ごとに設けられた薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタを覆う少なくとも1層の絶縁膜が配置され、絶縁膜上には第1電極と前記第1電極を覆う第1透明電極とを備えて構成される表示装置において、第1電極は少なくともAlとNdとNiを含む合金からなり、絶縁膜層のコンタクトホールを介して薄膜トランジスタと電気的に接続されると共に、絶縁膜上の所定画素領域に配置する。このような構成にすることにより、フリッカを抑制できる高品質な表示を行うことができる液晶表示装置において、スパッタリングやフォトリソなどの工程数を少なくすることができ、かつ、不良の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射領域を備えた表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT(陰極線管)に代わる表示装置として、液晶表示装置(Liquid Crystal Display:以下、「LCD」と称する)やエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:以下、「EL」と称する。)素子を用いたEL表示装置が注目されている。
【0003】
例えば、LCDは薄型で低消費電力であるという特徴を備え、現在、コンピュータや、携帯情報機器などのモニターとして広く用いられている。このようなLCDは、一対の基板間に液晶が封入され、それぞれの基板に形成され電極によって間に位置する液晶の配向を制御することで表示を行うものである。LCDは、CRTディスプレイや、ELディスプレイ等と異なり、原理上自ら発光しないため、観察者に対して画像を表示するには光源を必要とする。
【0004】
光源の違いによるLCDの種類としては、反射型LCD、透過型LCD、半透過型LCDなどがあるが、このうち透過型LCDは、各基板に形成する電極として透明電極を採用し、LCDパネルの後方や側方に光源を配置し、この光源光の透過量をLCDパネルで制御することで周囲が暗くてもLCDパネルを明るく表示ができる。
【0005】
しかし、常に光源を点灯させて表示を行うため、光源による消費電力の増加が避けられないこと、また昼間の屋外のように外光が非常に強い環境下では、十分なコントラストが確保できないという問題点がある。
【0006】
機器の低消費電力化に対する要求が一段と強まる状況下では、透過型LCDよりも消費電力の小さい反射型及び半透過型LCDは有利であるため、携帯機器の高精細モニター用途などへの採用が進んでいる。
【0007】
図7は、各画素ごとに薄膜トランジスタ(以下、TFT:Thin Film Transistor)を備えた従来のアクティブマトリクス型の反射型LCDの1画素あたりの平面構造(第1基板側)を示し、図8は、この図7のC−C線に沿った位置での反射型LCDの概略断面構造を示している。
【0008】
反射型LCDは所定ギャップを隔てて貼り合わされた第1基板100と第2基板200との間に液晶層300が封入されて構成されている。第1及び第2基板100及び200としてはガラス基板やプラスチック基板などが用いられる。
【0009】
第1基板100の液晶側の面には、各画素ごとにTFT110が形成されている。このTFT110の能動層120の例えばドレイン電極には、層間絶縁膜134に形成されたコンタクトホールを介して各画素にデータ信号を供給するためのデータライン136が接続され、ソース電極には、層間絶縁膜134及び平坦化絶縁膜138を貫通するように形成されたコンタクトホールを介して、画素ごとに個別パターンに形成された第1電極(画素電極)150が接続されている。
【0010】
上記第1電極150としては、反射率の高い材料であるAl、Agなどが用いられており、この第1電極150上に液晶層300の初期配向を制御するための配向膜160が形成されている。
【0011】
第1基板100と対向するように配置される第2基板200の液晶側には、カラー表示装置の場合、R,G,Bに3色に対応したカラーフィルタ210が形成され、カラーフィルタ210の上に第2透明電極として、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料が用いられた透明電極250が形成されている。
【0012】
またこの第2透明電極250の上には、第1基板側と同様の配向膜260が形成されている。
【0013】
反射型LCDは、上述のような構成を備えており、第2基板側から液晶パネルに入射され、第1電極150で反射され、再び液晶パネルから射出される光の量を、画素ごとに制御して所望の表示を行う。
【0014】
前述のような液晶表示装置において、特開2003-202587号公報には、さらにフリッカなどを発生することなく高品質な表示ができる表示装置が示されている。この液晶表示装置の断面図を図9に示し、以下に説明する。
【0015】
まず、第1基板100の第1電極144を、絶縁膜138の上に各画素のスイッチ素子とは絶縁して配置する。次に、この第1電極144を覆うように、第2基板200の第2透明電極250と同様の特性を備える第1透明電極160を配置する。
【0016】
このように、透明電極として用いる材料を、第2基板側の第2透明電極250の材料と同一とすることにより、液晶層300に対し、同一の仕事関数の電極が、間に配向膜160,260を介して配置されることになるため、第1透明電極150と第2透明電極250とにより液晶層300を非常に対称性よく交流駆動することが可能となる。このため、フリッカや液晶の焼き付きが発生しない、高品質な表示が可能となる。
【0017】
ここで、第1電極144は前述のようにAlなど導電性材料によって構成されるが、この第1電極144上に積層される第1透明電極150と、第1電極144とは電気的に絶縁される。絶縁される理由は、第1電極50の材料としてIZOや、ITO等を採用する場合、これらがAr+O2雰囲気でのスパッタリングによって成膜されることによる。即ち、Alなどからなる第1電極144は、スパッタリング雰囲気に晒されることで、表面で酸化反応が起き、自然酸化膜(不図示)で覆われるためである。
【0018】
また、第1基板側の第1透明電極150とTFT110とを接続するためにTi、Crなどの高融点金属材料を用いている。高融点金属材料は、IZOやITOなどからなる第1透明電極150との電気的接続がとれ、TFT110にMo/Al/Moなどのソース電極140が設けられる場合、このソース電極140と電気的にコンタクトでき、画素ごとの個別形状に第1電極144をパターニングする際に、この第1電極144のエッチング液によって除去されない特徴がある。
【特許文献1】特開2003-202587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上術のように形成したフリッカを抑制する反射型LCDは、薄膜トランジスタのドレイン電極と平坦化絶縁膜38とに接するCrや等の高融点金属層と、反射に用いるAl、Ag等の電極を別のプロセスで形成するため、フォトリソグラフィーやエッチングなどの工程数が増えるという問題があった。
【0020】
また、反射電極に用いられるAlやAg系の金属材料は、その表面に自然酸化膜が形成
されやすく、IZOや、ITO等をスパッタリングによって成膜する際、スパッタリング雰囲気に晒されることで、自然酸化膜が形成されてしまう。従って、AlやAg系の金属材料をTFTのドレインまたはソースとコンタクトを取った場合、透明電極と絶縁になってしまい液晶を駆動することができないという問題があった。そのため、TFTのソース電極と接する電極として、前述したようにCr等の高融点金属を用いたが、高融点金属は応力が高いため、薄膜トランジスタのソース電極とのコンタクト部分がはがれてしまう不良を発生させる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで本発明は、第1基板には、画素ごとに設けられた薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタを覆う少なくとも1層の絶縁膜が配置され、前記絶縁膜上には第1電極と前記第1電極を覆う第1透明電極とを備える表示装置において、前記第1電極は少なくともAlとNdとNiを含む合金からなり、絶縁膜層のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタと電気的に接続されると共に、前記絶縁膜上の所定画素領域に配置する。
【0022】
また、本発明の製造方法は、第1基板上に薄膜トランジスタを形成し、前記薄膜トランジスタを覆う少なくとも一層の絶縁膜を形成し、前記絶縁膜の前記薄膜トランジスタに対応する領域にコンタクトホールを形成し、少なくともAlとNdとNiを含む合金からなる第1電極を、前記薄膜トランジスタと接続されるように、かつ前記絶縁膜上の所定画素領域に形成し、前記第1電極を覆うように第1透明電極を形成する。
【0023】
上述のような構成、製造方法で作成することにより、フリッカを抑制できる高品質な表示を行うことができる液晶表示装置において、反射性能を維持したまま、スパッタリングやフォトリソなどの工程数を少なくすることができ、かつ、不良の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
フリッカを抑制できる高品質な表示を行うことができる液晶表示装置において、電極材料として少なくともAlとNdとNiを含む合金を用いることで、TFTのソース電極のコンタクトと、反射電極とを一回の成膜およびパターニングで作成できる。このことにより、液晶表示装置の反射性能を維持したまま、スパッタリングやフォトリソなどの工程数を少なくすることができ、かつ、不良の発生を抑制する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の好適な実施の形態(以下実施形態という)について説明する。
【0026】
図1は、本発明第1の実施形態に係る反射型LCDとして反射型アクティブマトリクスLCDの第1基板側の平面構成の一部、図2は、図1のA−A線に沿った位置におけるLCDの概略断面構成を示している。アクティブマトリクス型LCDでは、表示領域内にマトリクス状に複数の画素が設けられ、各画素に対してTFTなどのスイッチ素子が設けられる。スイッチ素子は、第1基板100側に画素ごとに形成され、このスイッチ素子に個別パターンに形成された画素電極(第1透明電極)50が接続されている。
【0027】
第1及び第2基板100,200には、ガラスなどの透明基板が用いられ、第1基板100と対向する第2基板200側には、従来と同様に、カラータイプの場合にはカラーフィルタ210が形成され、このカラーフィルタ210上にIZO(Indium Zinc Oxide)やITOなどの透明導電材料からなる第2透明電極が形成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、この第2透明電極250は各画素に対する共通電極として形成
されている。また、このような第2透明電極250の上には、ポリイミドなどからなる配向膜260が形成されている。
【0029】
前述のような構成の第2基板側に対し、本実施形態では、第2透明電極250と仕事関数の差が小さい材料、即ち、IZOやITOなど、第2透明電極250と同様の透明導電材料からなる第1透明電極50を形成している。そして、反射型LCDとするため、この第1透明電極50の下層には、第2基板側からの入射光を反射する第1電極44が形成されている。
【0030】
第1透明電極50として用いる材料は、第2透明電極250の材料と同一とすることにより、液晶層300に対し、同一の仕事関数の電極が、間に配向膜60,260を介して配置されることになるため、第1透明電極50と第2透明電極250とにより液晶層300を対称性よく交流駆動することが可能となる。但し、第1透明電極50と第2透明電極250とはその仕事関数が同一でなくても、液晶層300を対称性よく駆動可能な限り近似していればよい。例えば、両電極の仕事関数の差を0.5eV程度以下とすれば、液晶の駆動周波数を限界フリッカ周波数以下とした場合であっても、フリッカや液晶の焼き付きなく、高品質な表示が可能となる。
【0031】
このような条件を満たす第1透明電極50及び第2透明電極250としては、例えば、第1透明電極50にIZO(仕事関数4.7eV〜5.2eV)、第2透明電極250にITO(仕事関数4.7eV〜5.0eV)、あるいはその逆などが可能であり、材料の選択にあたっては、透過率、パターニング精度などプロセス上の特性や、製造コストなどを考慮して各電極に用いる材料をそれぞれ選択してもよい。
【0032】
本実施例では、反射層かつTFTと電気的に接続される第1電極44として少なくともAlとNdとNiを含む合金(Al-Nd-Ni)を用いた。Al-Nd-Niの特徴を以下に示す。
(1)従来反射膜として用いていたAl-Ndと比較して酸化されにくい材料であり、電極を覆う透明電極とコンタクトをとることができる。
(2)Al-Nd-Niの反射率がAl-Ndの反射率とほとんどかわらず、反射性能を維持することができる。
(3)従来ではTFTのコンタクト用にマスクをしてCr等を形成し、反射領域のみに電極が形成できるようマスクをした後にAl-Ndをスパッタリングで形成し、その後マスクを除去していた。しかし、Al-Nd-Niを用いることで、1度のスパッタリングでコンタクト領域と、反射領域に電極を形成できるため、工程数を減少することができる。
(4)Crの応力は1×1010 dyn/cm2程度と大きく、TFTのソース電極とのコンタクト部分がはがれてしまう不良が発生していた。しかしAl-Nd-Niの応力は5×10dyn/cm2以下であり、Crよりも小さくこのコンタクト部分がはがれてしまう不良を抑制することができる。
【0033】
以上のように第1電極としてAl-Nd-Niを用いることで従来の反射性能を維持したまま、工程数を減少し、かつ不良を抑制することができる。
【0034】
以下、本実施形態のような第1透明電極50と対応するTFT110とを確実に接続するための構造、及びこの構造を実現する製造方法について図2を用いて説明する。
【0035】
TFT110は、トップゲート型を採用しており、また、能動層20としてアモルファスシリコン(a−Si)をレーザアニールで多結晶化して得た多結晶シリコン(p−Si)を用いている。もちろん、TFT110は、トップゲート型に限定されるものではなく、ボトムゲート型でもよいし、能動層にa−Siを採用してもよい。TFT110の能動層20のソース・ドレイン領域20s、20dにドープされる不純物は、n導電型、p導
電型のいずれでもよいが、本実施形態ではリンなどのn導電型不純物をドープし、n−ch型のTFT110を採用している。
【0036】
TFT110の能動層20はゲート絶縁膜30に覆われ、ゲート絶縁膜30上にMoなどからなりゲートラインを兼用するゲート電極32が形成されている。そして、このゲート電極32形成後、このゲート電極をマスクとして能動層20には上記不純物がドープされてソース及びドレイン領域20s、20d、そして不純物がドープされないチャネル領域20cが形成される。次に、このTFT110全体を覆って層間絶縁膜34を形成し、この層間絶縁膜34にコンタクトホール70を形成した後、電極材料が形成され、このコンタクトホール70を介して、それぞれ、上記p−Si能動層20のソース領域20sにソース電極40が接続され、ドレイン領域20dにドレイン電極36が接続される。なお、本実施形態では、ドレイン電極36は、各TFT110に表示内容に応じたデータ信号を供給するデータラインを兼用している。
【0037】
ソース電極40及びドレイン電極36の形成後、基板全面を覆ってアクリル樹脂などの樹脂材料からなる平坦化絶縁膜38が形成され、ソース電極40の形成領域にコンタクトホールが形成され、ここにスパッタリングにより第1電極(Al-Nd-Ni)44が形成され、ソース電極40と接続される。ソース電極40としてAlやMo/Al/Moなどが用いられている場合に、ソース電極40と第1電極44は良好なオーミックコンタクトを得られる。
【0038】
図3に示すように、ソース電極40を省略することも可能である。この場合、第1電極44は、TFT110のシリコン能動層20と接することとなるが、Al-Nd-Ni電極は、このような半導体材料との間でオーミックコンタクトを確立することができる。
【0039】
また、第1電極44は絶縁膜38上の所定画素領域に配置される際に、ソース電極とコンタクトを取ることができる。
【0040】
第1電極44形成後、透明導電層がスパッタリングによって第1電極44を含む基板全面を覆うように積層される。従って、第1電極44は、この第1電極の上に積層される第1電極用の透明導電層との間でオーミックコンタクトすることができる。
【0041】
なお、透明導電層は、成膜後、図1に示すように画素毎に独立した形状にパターニングされ、これにより第1透明電極50が得られる。また、各画素領域に第1透明電極50が形成された後、基板全面を覆うようにポリイミドなどからなる配向膜60が形成され第1基板側が完成する。後は、配向膜260まで形成した第2基板200とこの第1基板100とを一定のギャップに離して基板の周辺部分で貼り合わせ、基板間に液晶を封入して、液晶表示装置を得る。
【0042】
なお、本実施形態の第1電極44は、ソース電極41がCr等の高融点金属層によってAl層が挟まれた積層構造を備える場合においても、ソース電極41と良好な接続を維持できる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係る半透過型LCDについて説明する。(第1の実施例では、第1電極44が1画素領域内のほぼ全域に形成された反射型LCDを例に説明した。しかし本発明は反射型としてだけでなく半透過型LCDにも適用することが可能である。)
図4は、半透過型アクティブマトリクスLCDの一画素あたりの平面構成、図5は、図4のB−B線に沿った位置におけるLCDの概略断面構成を示している。上記図1及び図2に示した反射型LCDにおいて、第1電極44は、1画素領域のほぼ全て(TFTとのコンタクト領域は除く)に形成されている。これに対し、図4及び図5に示すような半透
過型LCDでは、1画素内に第1電極44及び透明第1電極50が積層された反射領域と、第1電極44が形成されず、透明第1電極50のみ存在しない光透過領域とが形成されている。
【0044】
このような半透過型LCDにおいても、第1透明電極50を第1電極44よりも液晶層側に配置しつつ、周囲光の強さ等に応じて光源を切り替えることで、反射表示、透過表示のいずれも行うことができる。
【0045】
以上、第1電極44を備える反射または半透過型のLCDについて説明したが、本発明に係るスイッチ素子(TFT)、接続用金属層、反射層及び透明第1電極の構成を、ELディスプレイに適用することができる。図6は本実施形態に係るアクティブマトリクス型のELディスプレイの各画素における部分断面構造を示す。
【0046】
図6のELディスプレイにおいて採用された素子は、発光材料として有機化合物を用いた有機EL素子90であり、陽極80と陰極86との間に有機素子層88が形成されている。有機素子層88は、少なくとも発光層83を備え、有機化合物の特性、発光色などにより単層構造、2層、3層またはそれ以上の多層構造から構成することができる。図6では、有機素子層88は、基板側100に配置される陽極80側から正孔輸送層82/発光層83/電子輸送層84がこの順に形成され、発光層83は陽極80と同様に画素ごとに個別パターンとされ、正孔輸送層82及び電子輸送層84が陰極86と同様に全画素共通で形成されている。なお、隣接する画素間で各陽極80を絶縁し、また陽極80のエッジ領域において上層の陰極86とのショートを防止する目的で、隣接画素の陽極間領域には平坦化絶縁膜39が形成されている。
【0047】
以上のような構成の有機EL素子90は、陽極80から注入される正孔と陰極86から注入される電子とが発光層83で再結合して有機発光分子が励起され、これが基底状態に戻る際に光が放射される。このように有機EL素子90は電流駆動型の発光素子であり、陽極80は、有機素子層88に対して十分な正孔注入能力を備える必要があり、仕事関数の高いITO、IZOなどの透明導電材料が用いられることが多い。従って、多くの場合、発光層83からの光は、この透明な陽極80側から透明な基板100を透過して外部に射出される。しかし、図6に示すアクティブマトリクス型有機ELディスプレイでは、陰極側から光を射出することができる。
【0048】
このような図6のディスプレイは、上記有機EL素子90を駆動するためのTFT110、第1電極44、そして、有機EL素子90の陽極80は、例えば図2に示すような上述のTFT110、第1電極44及び第1透明電極50と同様の構成が採用されている。従って、陽極80に透明導電材料を用いた場合において、この陽極80の下層に、Al- Nd-Niからなる第1電極44を設けることができる。
【0049】
このため、有機EL素子90の陰極86として、陽極80と同様にITOやIZOなどの透明導電材料を用いるか、または光を透過可能な程度薄く第1電極44を形成することで(開口部を設けてもよい)、発光層83からの光を陰極86側から外部に射出するトップエミッション型構造を容易に実現することができる。即ち、図6に示すように、陽極80の下層には第1電極44が配置されているため、陽極80側に進んだ光は反射層44で反射され、発光層83で得られた光を陰極86側から射出することが可能となる。
【0050】
なお、本実施例の図2と図6には平坦化層には平坦化絶縁膜38が1層だけの場合を示したが、2層であっても良い。この場合は、下層にパッシベーション膜として窒化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い上層にアクリル樹脂膜を配置する。このような構成とすることで、外部からの水分の浸入を下層の窒化シリコン膜で抑制することができる。
【0051】
ここで、Cr等の高融点金属層と、反射に用いるAl-Nd電極を別の製造工程で形成する従来型の製造方法に、2層の平坦化絶縁膜を適用した場合の問題点を以下に示す。
(1)Al-Nd電極は、Al-Nd電極とソース電極(Mo/Al/Mo)のエッチング液が同じであるため、SiN膜とアクリル樹脂のコンタクトホールを形成したあとにAl-Nd電極を形成しパターニングすることができない。そのため、Al-Nd電極を形成しパターニングし、アクリル樹脂層を開口した後に、アクリル樹脂層の開口部を残すパターンのレジスト膜を形成し、SiN膜をエッチングする必要がある。
【0052】
しかし、SiN膜をフッ酸系の溶液でウェットエッチングを行うと、レジスト膜がアクリル樹脂の開口部の内側に形成され厚膜化するため、エッチング時に泡のかみこみの発生の原因となり、SiN膜が開口されないコンタクト不良部が発生してしまう。
(2)またその対策として2層の平坦化絶縁膜をSF6等のガスを用いてアクリル樹脂膜とSiN膜1度にドライエッチングすることが考えられる。しかしこの場合、ソース電極材料のMo/Al/Moは、ドライエッチング時のオーバーエッチングが原因で高温・高湿環境下で腐食されやすくなり、信頼性低下の原因になる。
【0053】
しかし、TFTのソース電極のコンタクトと、反射電極とを一回の成膜およびパターニングすることができるAl-Nd-Niを用いることで、以下のような製造工程を採用することができる。
(1)TFT形成後パッシベーション膜としてSiN膜を形成する。
(2)ソース電極に対応する箇所に、フッ酸系の溶液でウェットエッチングを行う。
(3)ソース電極上の所定の領域は覆わないレジストパターンで形成し、アクリル樹脂を形成する。その後レジスト膜を除去する。
(4)Al-Nd-Ni電極を、TFTのソース電極にコンタクト領域と、所定画素領域に配置できるようにスパッタリングにする。
【0054】
以上のような、製造工程を採用することで、SiN膜をエッチングしてから、アクリル樹脂、Al-Nd-Niを形成できるため、従来問題となっていたSiN膜が開口されないコンタクト不良、ソース電極材料のMo/Al/Moの腐食を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施例のTFTはn型のTFTであるため、第1電極をソース電極に接続しているが、p型のTFTを用いた場合、第1電極をドレイン電極に接続することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型の反射型LCDの第1基板側の概略平面構成を示す図である。
【図2】図1のA−A線に沿った位置における反射型LCDの概略断面構成を示す図である。
【図3】図1のA−A線に沿った位置における反射型LCDの他の概略断面構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型の半透過型LCDの第1基板側の概略平面構成を示す図である。
【図5】図4のB−B線に沿った位置における半透過型LCDの概略断面構成を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機ELディスプレイの概略断面構造を示す図である。
【図7】従来のアクティブマトリクス型の反射型LCDにおける第1基板側の一部平面構造を示す図である。
【図8】図8のC−C線に沿った位置における従来の反射型LCDの概略断面構造を示す図である。
【図9】図8のC−C線に沿った位置における従来のフリッカを抑制する反射型LCDの概略断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
20 能動層(p−Si層)、30 ゲート絶縁膜、32 ゲート電極(ゲートラン)、34 層間絶縁膜、36,37 ドレイン電極(データライン)、38,39 平坦化絶縁膜、40,41 ソース電極、42 接続用金属層、44 第1電極(Al-Nd-Ni)、
46 自然酸化膜、50 第1電極、60,260 配向膜、70 コンタクトホール、80 陽極(第1透明電極)、82 正孔輸送層、83 発光層、84 電子輸送層、86 陰極(第2透明電極)、88 有機素子層、90 有機EL素子、100 第1基板、110 TFT、200 第2基板、210 カラーフィルタ、250 第2電極、300 液晶層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板には、画素ごとに設けられた薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタを覆う少なくとも1層の絶縁膜が配置され、前記絶縁膜上には第1電極と前記第1電極を覆う第1透明電極とを備える表示装置において、
前記第1電極は少なくともAlとNdとNiを含む合金からなり、絶縁膜層のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタと電気的に接続されると共に、前記絶縁膜上の所定画素領域に配置され、さらに、第1透明電極側から入射される光を反射することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1基板上に薄膜トランジスタを形成し、前記薄膜トランジスタを覆う少なくとも一層の絶縁膜を形成し、前記絶縁膜の前記薄膜トランジスタに対応する領域にコンタクトホールを形成し、
少なくともAlとNdとNiを含む合金からなる第1電極を、前記薄膜トランジスタと接続されるように、かつ前記絶縁膜上の所定画素領域に形成し、
前記第1電極を覆うように第1透明電極を形成することを特徴とした表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1透明電極上には液晶または有機EL素子が配置されることを特長とする請求項1又は請求項2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−154494(P2006−154494A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346968(P2004−346968)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】