説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】レーザを照射して薄膜トランジスタに用いる微結晶薄膜を形成する工程において、結晶性の周期的な劣化を回避し、安定して均一性能の微結晶膜を形成することができる平面表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】連続発振レーザ光を非晶質シリコン膜表面に照射し、一定の速度でレーザを基板に対して相対的に走査しながら結晶化する際に、非晶質シリコン膜の一領域あたりへのレーザ照射時間が0.1ms以上となるように走査し、結晶化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の製造方法及び表示装置に関し、より詳しくは薄膜トランジスタを利用した表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示装置あるいは有機EL表示装置はガラスや溶融石英などの基板上の非晶質シリコン膜、あるいは多結晶シリコン膜で形成された薄膜トランジスタ(以下、「TFT」という。)のスイッチングにより画像を表示している。
【0003】
多結晶シリコンをトランジスタの能動層として用いた多結晶シリコンTFTは、非晶質シリコンを用いた非晶質シリコンTFTよりも移動度が高く、液晶表示装置、液晶プロジェクター、有機EL表示装置を用いた有機EL表示装置用のスイッチング素子、あるいはこれら表示装置の駆動用ドライバの回路素子として広く適用されている。多結晶シリコン膜の形成手法として、従来からエキシマレーザアニールを用いた方法が一般的に採用されている。この方法はガラスなどの絶縁基板上に形成された非晶質シリコン膜(移動度は0.1cm/Vs以下程度)にエキシマレーザを照射して、非晶質シリコン膜を多結晶シリコン膜に変化させることで、移動度を改善するものである。エキシマレーザの照射により得られた多結晶膜は、結晶粒径が数100nm程度となる。
【0004】
この多結晶膜を用いて形成したTFTは、移動度が100cm/Vs程度であり、画素TFTを駆動するためには十分な性能を有するが、TFT素子間のしきい値電圧バラつきが大きいという問題がある。即ち、TFTの数μm程度のゲート長に対し、結晶膜の結晶粒サイズが数百nm程度と大きく、TFTゲート中の電子の移動を阻害する結晶粒界の絶対数が素子間で異なることにより、移動度、しきい値電圧といったTFT電気特性に素子間のバラつきが生じる。
【0005】
特に有機EL表示装置では、TFTをスイッチング素子として用いて画像表示を行っており、エキシマレーザで形成した多結晶シリコン膜で形成したTFT素子間のしきい値電圧のバラつきがそのまま画像表示ムラの主要因となるため、適用することができない。このため、このバラつきを極力低減することが要求されている。また、結晶粒界には数10〜100nmの突起が形成され、トランジスタの耐圧を低下させる欠点もある。
【0006】
一方、非晶質シリコン膜を用いたTFTは、素子間のしきい値電圧のバラつきが小さいメリットがある一方で、絶対的に移動度が低いという課題を有する。これらの課題を解決する次世代薄膜として、微結晶シリコン薄膜が注目されている。微結晶シリコン膜を用いる、即ちトランジスタのゲート長に対する結晶粒の大きさを均一に小さくし、TFTゲートを横切る結晶粒界の影響を軽減することで、素子間の電気特性のバラつきが低減され、かつ、非晶質シリコン膜よりも優れた移動度を有するTFTを実現することができる。
【0007】
上述のような特徴を有する微結晶膜の形成方法として、例えば特許文献1、特許文献2には、半導体薄膜上に光吸収層を形成した後にレーザ照射し、結晶化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−5508号公報
【特許文献2】特開2003−168646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術では、非晶質シリコン膜上に成膜した光吸収層表面に対してレーザ光を照射し、光エネルギを吸収し過熱された吸収層からの熱が下層の半導体膜まで伝導し、半導体膜の温度が上昇することで結晶成長が促進される薄膜結晶化方法を開示している。しかしながら、これらの方法は、半導体膜上に光吸収層を成膜、結晶化が完了した後にこの光吸収層を除去する工程が必要となり、工程の複雑化、あるいは工程数増加による製造コスト増大、スループット低下が問題となっていた。
【0010】
本出願人は、従来技術において、半導体薄膜上に光吸収層を形成工程がコスト増大、スループット低下の原因となっていることに着目し、半導体薄膜表面に直接レーザ光を照射し、微結晶を形成するプロセスの検討を実施した。微結晶膜は、結晶粒サイズの均一性を基板全面において保持することが重要な課題となる。パルス間エネルギのバラつきが大きいエキシマレーザを含むパルスレーザで照射した場合、基板全面に渡り、均一な加熱を行うことが困難であり、結晶粒のサイズを安定して適切な範囲内に保持することはできない。
【0011】
また、パルスレーザ加熱の結晶化は、膜が一旦完全に溶融し、再凝固する際にランダムな位置に発生する核を基点として結晶が成長し、隣り合う結晶粒同士が衝突する際に結晶粒界に突起が発生するという特徴がある。突起の高さは、膜厚50nmの多結晶薄膜において50nm以上となる。粒界突起は、TFT耐圧低下の要因となるため、微結晶膜形成には適していない。そこで、連続発振レーザ(以下、「CWレーザ」という。)を線状集光し、薄膜表面から照射し、一定速度で走査する方式の検討を進めた。
【0012】
しかしながら、検討の結果、連続発振レーザを採用した方式において、以下の課題が明らかになった。図18は、非晶質シリコン薄膜表面からCWレーザを照射し、一定速度で走査した結果形成された微結晶膜の電子顕微鏡(以下、「SEM」という。)観察像を概略的に示したものである。照射条件は、レーザ走査速度を800mm/s、線状ビームの短軸幅を2.5μm、シリコン膜上での照射時間を3.1μs、照射パワー密度を393kW/cmであり、観察像の左から右方向へ、レーザを走査して結晶化を行ったところ、形成された微結晶膜501の中に、レーザ走査方向と鉛直方向に0.4μmピッチで、周期的に結晶性が劣化している部分502が形成されていることがわかった。この劣化部分502は、多結晶シリコン膜の結晶状態をSEM観察する際に、観察試料の前処理として一般的に用いられるSECCOエッチングで顕在化したものである。SECCOエッチングは、シリコン結晶のダングリングボンド、結晶欠陥等、結晶性が良好でない部分のみを選択的に除去する効果があるため、SECCOエッチングにより顕在化した領域は結晶性は良好でない為に除去された領域であることがわかる。即ちSEM観察像の劣化部分502は、周期的に結晶性が劣化する現象に対応する。この膜を用いてTFTを形成した場合、TFT電気特性(素子間のしきい値電圧バラつき、移動度)劣化の主要因となる。
【0013】
本発明の目的は、微結晶膜を形成する工程において、工程を複雑化させることなく、より簡便な方法で、安定して微結晶膜を形成できる平面表示装置の製造方法を提供することにある。併せて、上記結晶性の周期的な劣化を回避し、安定して均一性能の微結晶膜を形成できる平面表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の製造方法は、薄膜トランジスタ基板を製造する薄膜トランジスタ基板製造工程を備え、前記薄膜トランジスタ基板製造工程は、絶縁基板上に非晶質シリコン薄膜を形成する非晶質シリコン薄膜形成工程と、前記非晶質シリコン薄膜に第1の連続発振レーザ光を照射して、微結晶シリコン膜を形成する微結晶シリコン膜形成工程と、を有する、ことを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0015】
また、本発明の製造方法は、前記微結晶シリコン膜形成工程における前記連続発振レーザ光の一領域あたりの照射時間は100マイクロ秒以上である、とすることができる。
【0016】
また、本発明の製造方法は、前記微結晶シリコン膜に第2の連続発振レーザ光を照射して、前記微結晶シリコン膜の結晶よりも粒径の大きい結晶のシリコン膜を形成する結晶シリコン膜形成工程を更に有する、とすることができる。
【0017】
また、本発明の製造方法は、前記微結晶シリコン膜を使用した薄膜トランジスタは、前記薄膜トランジスタ基板の表示領域内の薄膜トランジスタであり、前記粒径の大きい結晶のシリコン膜を使用したトランジスタは、前記薄膜トランジスタ基板の表示領域外の薄膜トランジスタである、とすることができる。
【0018】
本発明の表示装置は、薄膜トランジスタ基板を備える表示装置であって、前記薄膜トランジスタ基板は、微結晶シリコン膜により形成された表示領域内の第1薄膜トランジスタと、前記微結晶シリコン膜の結晶より大きな結晶のシリコン膜により形成された表示領域外の第2薄膜トランジスタと、を有することを特徴とする表示装置である。
【0019】
または、本発明の表示装置は、前記第2薄膜トランジスタは、表示用の駆動回路の一部である、とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、現状の工程よりも簡略化した工程によって、歩留まり低下を回避し、高品質な平面表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザアニール装置について概略的に示す図である。
【図2】図1のレーザアニール装置を用いた液晶表示装置の製造工程について示すフローチャートである。
【図3】図2のレーザアニール工程について示すフローチャートである。
【図4】複数のパネルが基板に形成される様子を示す図である。
【図5】線状レーザ光照射により微結晶膜を形成する様子を示す図である。
【図6】駆動回路形成領域に線状レーザ光を照射し、膜質を改善させる様子を示す図である。
【図7】線状レーザ光照射により微結晶膜を形成する様子を示す図である。
【図8】レーザ光照射後の試料表面のAFM観察の結果を示す表である。
【図9】非晶質シリコン薄膜及び結晶シリコン薄膜の光吸収係数の波長依存性を表すグラフである。
【図10】微結晶化マージンのレーザ照射時間依存性を表すグラフである。
【図11】レーザ光照射後のTFT基板を概略的に示す図である。
【図12】LCD(Liquid Crystal Display)パネルを概略的に示す図である。
【図13】液晶表示装置を概略的に示す図である。
【図14】LCDパネルの構造を示す断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るレーザアニール装置について概略的に示す図である。
【図16】有機EL表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
【図17】有機EL基板の構造を示す断面図である。
【図18】微結晶膜の電子顕微鏡観察像を概略的に示した図である。
【図19】微結晶膜の電子顕微鏡観察像を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るレーザアニール装置100について概略的に示す図である。レーザアニール装置100は、レーザダイオードを積層して構成したレーザダイオードアレイ101、各レーザダイオードから射出したレーザ光を導光するファイバ102、レーザダイオードの光を集束し、長手方向に均一な強度分布を有する線状ビームを形成するカライドスコープ103、カライドスコープから射出した光の余分な成分をカットしたり、集光時の寸法を調整したりするための矩形スリット104、矩形スリット上で整形されたレーザ光をスリットの縮小投影像として、ステージ上の基板200に照射するためのリレーレンズ105、対物レンズ106、XY方向に駆動するステージ112、ステージ位置を検出するためのリニアエンコーダ(図示せず)、リニアエンコーダが発するパルス信号をカウントし、予め設定したパルス数ごとにレーザダイオードをオンオフ駆動する為のドライバに制御信号を送る制御装置(図示せず)、試料面上でのビームプロファイルを観察する為のビームプロファイラ114、試料面上でのレーザパワーを計測するためのパワーメータ115及び統括制御PC119、並びに試料面の状態を観察するために必要な機能を有する駆動機構付ミラー107、リレーレンズ116、撮像装置および照明装置117及び画像データ処理装置118等から構成される。
【0023】
レーザダイオードは、紫外、あるいは可視から近赤外までの波長のレーザ光を発振するものが好適であり、特に非晶質シリコン膜の光吸収特性、レーザ出力の大きさ等を鑑みて最適なものを選択することが可能である。対象物が非晶質シリコン膜の場合、膜の吸収特性として、紫外から可視光波長領域の光に対して吸収が大きく、波長400nm〜600nmの波長範囲のレーザダイオードが選択する波長として好適である。レーザ出力調整は、レーザダイオードの出力自体を制御し調整することで行う。また、本実施形態では、光源としてレーザダイオードアレイを用いた場合を記載しているが、これに限らず、紫外、あるいは可視領域のLD励起連続発振YVO4レーザ、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)、第3高調波(波長355nm)、第4高調波(波長266nm)などを用いても良い。各レーザダイオードのレーザ光は、レンズによりそれぞれ集光されファイバ102端部から入射し、導光される。ファイバ102の射出側端部は、一次元アレイ状に並べられて配置されている。
【0024】
ファイバ端部から射出した光は、シリンドリカルレンズ等で集光されカライドスコープ103に入射し、中で多重反射を繰り返しながら集束し、射出口において、長手方向に均一な強度分布を有する線状レーザ光120として射出される。カライドスコープ103は、材質はクォーツで、入射部から射出部に向かいレーザを多重反射する光導波路部分の幅が段々と狭まっていく、いわゆるくさび型形状(テーパ形状)になっている。レーザを一軸方向に絞り、線状レーザ光120を形成する際には、この様な形状のカライドスコープ103が好適であるが、カライドスコープ103の形状は、これに限定されず、矩形等でもよい。カライドスコープ103から射出された線状に集光されたレーザ光は電動矩形開口スリット104で不要な部分のレーザ光を切り落とされて所望の長軸幅の矩形形状に成形され、リレーレンズ105、対物レンズ106を経て基板200上に縮小投影される。
【0025】
基板200にレーザ光を照射するに当たって、ステージ112をXY平面内で移動しながら所望の位置にレーザ光を照射するが、基板200表面の凹凸、うねりなどによる焦点ズレが起きると、集光されたレーザ光のパワー密度変動、パワー密度不均一の発生、照射形状の劣化が起き、微結晶膜を安定して形成することができない。このため、必要に応じて、常に焦点位置で照射できるように、自動焦点光学系(図示せず)により焦点位置を検出し、焦点位置から外れた場合にはステージ112をZ方向(高さ方向)駆動するか、あるいは光学系をZ方向(高さ方向)駆動して、常に焦点位置(電動矩形開口スリット104面の投影位置)と基板200表面が一致するように制御する。
【0026】
図2は、上述したレーザアニール装置100を用いた液晶表示装置370の製造工程について示す図である。この図2に示すように、まず、ガラス基板301上へに絶縁膜が形成され(ステップS101)、続いて、その上に非晶質シリコン(a−Si)膜が形成され(ステップS102)。その後、ステップS103のレーザアニール工程が実施される。ステップS103のレーザアニール工程は図3に示すように、まず、ステップS201において基板200がアニール室に搬送され、プリアライメント(ステップS202)の後、ステップS203におけるアライメントマークが形成される。アライメントマーク形成はアニール用のレーザで行っても良いし、インクジェットのような手段で行っても良い。予めフォトエッチングプロセスで形成することも可能であり、その場合には、ここでは省略することができる。
【0027】
ステップS203で形成したアライメントマークでアライメントを行い(ステップS204)、画素部および必要に応じて周辺回路部に、所望の形状に整形したCWレーザ光を、必要に応じて時間変調しながら照射して、アニール工程(ステップS205及びステップS206)を実施し、それぞれ目的の結晶を成長させる。
【0028】
ここでこのアニール工程(ステップS205及びステップS206)について、図4〜図6を参照しつつ説明する。対象となる基板200は、厚さ0.3〜1.0mm程度のガラス基板301の1主面に絶縁体薄膜を介して膜厚30〜150nmの非晶質シリコン薄膜を形成したものである。ここで、絶縁体薄膜は、膜厚50〜200nmのSiOあるいはSiNあるいはそれらの複合膜である。この基板200には図4に破線で示すように、複数のパネル207が形成される。各パネル207は、図5に示すように、画素領域(表示領域)201と走査線駆動回路領域202、信号線駆動回路領域203、その他周辺回路領域204などのトランジスタ形成領域から構成され、線状、あるいは矩形状に整形、集光したレーザ光205を相対的に走査しながら、線状レーザ光205を必要に応じて時間変調し、基板200内を全面に渡りアニールして行く。アニールは、基板200上の所望の全領域が完了するまで続行する(ステップS205)。
【0029】
ここで、膜質の改善によって得られる結晶膜とは、溶融再凝固過程を経て再結晶化した、結晶粒の大きさが数百nmの多結晶膜、あるいは、レーザ走査方向(ラテラル方向)に数μm程度結晶成長した幅数百nm、長さ数μmのラテラル成長結晶膜のことを指す。こうして、パネルの仕様によっては、微結晶膜、多結晶膜、ラテラル成長結晶膜など、数種類の異なる結晶性の多結晶膜が混載するパネルを形成しても良い。
【0030】
ここで、アニール処理の詳細について、説明する。図7は、レーザ照射により微結晶膜を形成する工程を模式的に表した図である。基板200の構成は、ガラス基板301の1主面に絶縁体薄膜302を介して非晶質シリコン薄膜303を形成したものである。照射するレーザ光205のビーム形状は線状、あるいは矩形が望ましく、レーザ走査方向に対して直行方向が線状、あるいは矩形レーザ光の長手方向となるように設定する。また、照射するレーザ光205の強度分布は、長手方向が均一な強度分布であることが望ましく、短手方向はガウス分布、あるいは矩形の強度分布であることが望ましい。レーザ光205を非晶質シリコン薄膜303上に照射し、基板200に対して相対的に一定速度で走査すると、レーザのエネルギを非晶質シリコン薄膜303が吸収した際に生じる温度上昇により微結晶膜305へと改質する。このプロセスにより形成された適正な微結晶膜のSEM観察像の概略図を図19に示す。このプロセスで得られる微結晶膜503の結晶粒径の適正値は50nm以下、平均値で30nm程度である。また、結晶膜表面は、10nm以下とパルスレーザ照射により結晶化した多結晶膜と比べて、粒界突起が無く、平坦であるという特徴を有する。
【0031】
また、図18で示したように、レーザ照射条件によっては、微結晶膜の結晶性が周期的に劣化する現象が発生する。この結晶性の劣化とTFTの電気特性には密接な相関があり、結晶性が周期的に劣化した微結晶膜を用いてTFTを形成した場合、しきい値電圧の素子間バラつき、移動度のバラつきが発生するため、結晶性の劣化を回避し、均質な微結晶膜を安定して形成する条件を確立する必要がある。そこで、発明者は、微結晶膜の安定形成条件の規定を目的として検討を実施した。使用したレーザ光源は、波長445nmのレーザダイオードをアレイ状に並べたダイオードアレイ、および波長532nmの連続発振タイプのLD励起Nd:YVO4レーザ装置である。このレーザ光を、短軸幅が数μm〜数十μmの線状ビームへと整形し照射を行う。線状レーザ光の短軸幅と走査速度、一領域辺りの照射時間、照射パワー密度をパラメータとして、照射条件を変えて結晶化を行った。ここで、結晶化実験は、線状レーザ光の短軸幅方向に一定速度で走査することとし、一領域辺りの照射時間とは、走査するレーザ光が一領域辺りを通過する時間、即ちレーザ光の短軸幅を走査速度で割った時間と規定する。
【0032】
代表的な結果を図8の表に示す。これらは、レーザ照射完了後の試料表面のAFM観察により導かれた数値である。測定領域は5μm角、レーザ照射条件(ビーム短軸幅、照射時間、レーザパワー密度)は表中に示すとおりである。照射時間が0.02msから0.0875msでレーザ照射を行った条件において、微結晶が形成されているのと同時に、結晶性劣化に相当する試料表面の周期的な凹凸(劣化部分)も観察された。しかしながら、照射時間を0.1ms以上まで延長すると、周期的な結晶表面凹凸(劣化部分)の無い、均質な微結晶膜が形成されることがわかった。また、この時の表面粗さは、測定領域内で10nm以下と極めて平坦であることがわかった。
【0033】
周期的な結晶劣化が発生する現象は、定性的に次のように理解することができる。レーザ照射により膜の温度が上昇し、ある一定時間以上保持されることで、非晶質膜は微結晶化される。この際に、図9に示すように、実験に使用したレーザの波長532nmにおいては、多結晶シリコン膜の吸収係数αは、非晶質シリコン膜のそれと比較して、1/6と小さい為(多結晶シリコン膜:2.5×10cm−1、非晶質シリコン膜:1.5×10cm−1)、同じ厚さの膜に、同じ強度のレーザ光を照射した場合、多結晶シリコン膜においては非晶質シリコン膜と比較して、相対的に膜中に吸収されるエネルギ成分が減少する。即ち、相対的に温度が上昇しない。本実験では、線状レーザ光を短軸方向に対して、一定速度で照射しながら走査することで微結晶化を行う。レーザ照射され微結晶化が進行している状態においては、レーザ照射領域周辺にも伝熱による温度上昇が発生する。レーザ光進行方向にも伝熱による温度上昇は発生し、レーザ照射領域に隣接して不完全に結晶化される領域が形成される。レーザ光が進行し、その部分にレーザが照射される段階では、不完全ながら結晶化が進行した状態の膜にレーザが照射される状態となるため、その領域では光吸収率は減少し(エネルギ透過成分が増加し)、微結晶化が進行するのに十分な温度上昇を誘起するのに必要なエネルギが膜中に吸収されず、温度が上昇しない。従って、正常な微結晶が形成されない領域として残ってしまうこととなる。レーザが走査され、この領域を超えると、再び非晶質シリコン膜にレーザ照射される状態に戻り、正常な微結晶化が起こり、再びレーザ進行方向に、伝熱による不完全な結晶化が進行する。この現象の繰り返しにより、周期的に結晶性の劣化した微結晶膜が形成されることとなる。この現象を回避するためにはレーザ照射時間を延長することが有効である。即ち、伝熱による不完全な結晶化を抑制し、かつ一領域辺りのレーザ照射時間を延長することで、不必要な温度上昇を避けることができ、均質な微結晶が形成されることとなる。
【0034】
また、微結晶膜が形成されるレーザパワー密度には上限と下限が存在する。照射時間が一定のとき、微結晶膜が形成されるよりも低いレーザパワー密度で非晶質シリコン膜へのレーザ照射を行うと、膜は非晶質のまま改質することはない。一方、微結晶膜が形成されるよりも高いパワー密度で照射を行うと、膜が完全溶融する条件となり、溶融再凝固過程を経て再結晶化が進み、結晶粒拡大と結晶粒界同士の衝突による粒界突起を特徴とする、パルスレーザ結晶化で形成した膜と同質の多結晶膜が形成される。安定して、再現性良く微結晶膜を形成する、即ち微結晶膜形成条件範囲の拡大は、量産時の歩留まり低下を抑制する観点から、極めて重要である。
【0035】
図10に、レーザ照射条件(照射時間、レーザパワー密度)をパラメータとして、非晶質シリコン膜にレーザ照射を行い、レーザ照射条件の上限と下限を求め、纏めた結果を示す。図の横軸はレーザ照射時間、縦軸は各照射時間における微結晶膜が形成されるパワー密度の上限値を下限値で除したものにあたり、微結晶化におけるレーザパワー密度の条件範囲を示す指標である。即ち、パワー密度の条件範囲(マージン)を、下限パワー密度を基準とした相対値として表した数値である。以下、この指標を微結晶化マージンと呼ぶ。この微結晶化マージンが大きい程、プロセス安定性が確保される。0.1msよりも短い照射時間においては、微結晶化マージンが狭く、なおかつマージン内で形成される全ての微結晶膜は、周期的結晶性劣化を伴うことがわかった。一方、0.1msよりもレーザ照射時間を長く設定した際には、照射時間の延長に伴い、パワー密度範囲が拡大する傾向が確認された。同時に、周期的結晶性劣化が発生せず、均質な微結晶が安定して形成されることがわかった。即ち、0.1msをしきい値としてそれよりも長いレーザ照射時間を設定し、照射を実施することで、再現性良く、均質な微結晶膜を形成することができることが明らかになった。
【0036】
ところで、信号線駆動回路領域203に形成する駆動回路は、画像信号の処理を行うために高速駆動する必要があり、駆動回路に用いられるTFTにも、優れた電気特性が求められる。パネルの要求仕様によっては、微結晶膜で形成したTFTでは、所望の駆動回路を形成するに十分でないことがある。このため図6に示すように、必要に応じて、基板全面の微結晶化工程が完了した基板200内の信号線駆動回路を形成する領域203、あるいはそれ以外でも高速駆動回路を形成する必要のある所望の領域204にのみ(画素スイッチングTFTが存在する画素領域201は除く)、短軸幅数μmまでの絞った線状レーザ光206を、微結晶膜が完全に溶融するパワー密度に設定した後に、必要に応じて時間変調しながら走査、照射し、膜質の改善を行う工程を追加して行ってもよい(ステップS206)。
【0037】
ここで、駆動回路に用いられるTFTには、画素スイッチングを行なうTFTよりも電気特性劣化の影響が小さいので、信号駆動回路を形成する領域203では、多結晶膜を形成してもよい。このときには、微結晶膜形成時のように結晶の周期的劣化の問題は発生しないので、スループプット向上のためにレーザ光の操作速度を速くすることができる。例えば、レーザ照射時間は、微結晶シリコン膜形成時は一領域あたり0.1ms以上であるのに対し、多結晶シリコン膜(ラテラル成長結晶)形成時には0.01ms以下でよく、レーザ光の走査速度を10倍以上に速くすることができる。なお、レーザ光のパワー密度は、微結晶シリコン膜形成時では50kw/cmであるのに対し、多結晶シリコン膜形成時には、100kw/cm以上と、2倍以上になる。
【0038】
図3に戻り、必要なアニール処理が終了すると、基板200をレーザアニール装置から搬出し次工程へ送られる(ステップS207)。図2に戻り、レーザアニール後、フォトエッチング工程によりトランジスタ形成に必要なシリコン膜のみを残し、ゲート絶縁膜形成、ゲート電極形成、不純物拡散、活性化、相関絶縁膜形成、ソース・ドレイン電極形成、保護膜(パシベーション膜)形成を経て、図11に示すようなTFT基板350が完成する(ステップS104〜ステップS111)。この後、TFT基板350に配向膜を形成し、ラビング工程を経た後、ステップS112のLCDパネル工程において、カラーフィルタ基板351を重ね、TFT基板350との間に液晶を封入し、図12に示すLCDパネル360を製造し、信号及び電源の端子352を接続後、ステップS113において、バックライト(図示せず)などと一緒にシャーシ353に組み込むモジュール工程を経て、高速駆動回路および必要に応じてインタフェース回路などの高速回路を基板上に形成した液晶表示装置370を製造する。
【0039】
図14には、LCDパネル360の断面図が示されている。即ち、ガラス基板301上にSiN膜222とSiO膜223から構成される絶縁膜を介して、本発明のレーザアニールを行ったシリコン膜224でトランジスタの能動層が形成されている。ゲート絶縁膜225を介してゲート電極226が形成され、シリコン膜224とオーミックな接続を有するソース電極227、ドレイン電極228がスルーホールを介して層間絶縁膜229上に形成されている。また、透明画素電極231が保護膜(パシベーション膜)230上にスルーホールを介してソース電極227に接続して形成され、その上に全面を覆う配向膜232が形成されている。
【0040】
一方、カラーフィルタ基板351はガラス基板251上にR(赤)G(緑)B(青)3色からなるカラーフィルタ層252が形成され、保護膜253を介して透明電極254、そして配向膜255が形成されている。必要に応じてカラーフィルタ層252にはRGB各色の境界部に黒色の層(ブラックマトリクス層256)を設ける場合がある。あるいは、ブラックマトリクス層はカラーフィルタ層252とガラス基板251との間に設けられる場合もある。
【0041】
これら、TFT基板350とカラーフィルタ基板351の間に、液晶257が、ビーズ258により一定の間隙を保って封入されている。ビーズ258の代わりにカラムスペーサをTFT基板側あるいはカラーフィルタ基板側に形成する場合もある。カラーフィルタ基板351の外側には偏光板259が貼り付けられている。
【0042】
[第2実施形態]
図15は本発明の製造方法の第2実施形態に係る製造装置であるレーザアニール装置600について概略的に示す図である。レーザ源はレーザダイオード電源601内に設置されたレーザダイオードから発生する赤外光を光ファイバ602で発振器内に導いて励起するLD励起連続発振固体レーザ603を用い、発振した連続発振レーザ光604の出力を調整するためのNDフィルタ605、時間変調するためのEOモジュレータ606、長手方向に均一なエネルギ分布の線状ビームに整形するためのホモジナイザ607、余分なレーザ光をカットしたり集光寸法を調整したりするための電動矩形開口スリット608、電動矩形開口スリット608を通過したレーザ光をスリットの投影像としてステージ609上に載置された基板610に照射するための対物レンズ611、ステージ609位置を検出するためのリニアエンコーダ612、リニアエンコーダ612が発生するパルス信号をカウントし、予め設定されたパルス数ごとにEOモジュレータ606を駆動するためのドライバ615に制御信号を送る制御装置616、および照明光源617及び618、TVカメラ619などから構成されている。
【0043】
レーザ発振器603は紫外あるいは可視波長の連続発振光を発生するものが用いられ、特に出力の大きさ、出力の安定性等からレーザダイオード励起YVO4レーザあるいはレーザダイオード励起YAGレーザの第二高調波(波長:532nm)が最適である。しかし、これに限定されることなく、アルゴンレーザ、YVO4あるいはYAGレーザの第3あるいは第4高調波、ファイバで結合した複数の半導体レーザ等を使用することが可能である。
【0044】
レーザ発振器603で発振された連続発振レーザ光604は出力を調整するための透過率可変NDフィルタ605を透過し、EOモジュレータ606に入射される。この時、EOモジュレータ606の耐パワー性を考慮して、EOモジュレータ606の有効径に近い大きさまで、ビームエキスパンダ(図示せず)でビーム径を拡大してもよい。EOモジュレータ606は、ポッケルス・セル(以下、結晶と称する)と偏光ビームスプリッタを組み合わせて使用する。レーザ光604が直線偏光の場合、EOモジュレータドライバ615を介して結晶に電圧V1(通常は電圧0V)を印加することにより、結晶を透過するレーザ光604の偏光方向は回転せずにそのまま保存され、偏光ビームスプリッタにS偏光として入射して、90度偏向されるように設定する。即ちこの状態では、レーザ光604は90度偏向して出力してしまうため、以後の光学系には入射せず、基板610上ではレーザ光604はOFF状態となる。
【0045】
また、結晶を透過するレーザ光604の偏光方向を90度回転させることのできる電圧V2を印加することにより、結晶を透過するレーザ光604の偏光方向は90度回転し、偏光ビームスプリッタにP偏光として入射する。この時、レーザ光604は偏光ビームスプリッタを透過・直進する。即ち、この状態では、レーザ光604は直進して以後の光学系に入射するので、基板610上ではレーザ光604はON状態となる。
【0046】
さらに、結晶に印加する電圧をV1(通常は0V)とV2の間で変化させることにより、EOモジュレータ606を透過するレーザ光604の透過率をT1(通常は0)とT2(ここでは最大透過率、即ち1)の間で任意に設定することができる。即ち、EOモジュレータ606を透過するレーザ光604の透過率を0から1の間で任意に設定することができる。ただし、これは結晶や偏光ビームスプリッタ表面での反射や吸収はないものとして考えた場合である。
【0047】
これらのことから、EOモジュレータ606に入射するレーザ光604の出力(EOモジュレータ606への入力)をP0一定とし、結晶への印加電圧をV1,V2,V3,V4と変化させることにより、EOモジュレータ606からのレーザ出力として、出力P1(ここでは0V)、P2、P3、P4の階段状のパルス出力が得られる。ここで出力P2はEOモジュレータ606への入力P0と電圧V2を印加したときの透過率T2との積で求められ、P3はP0と電圧V3を印加したときの透過率T3との積で、P4はP0とV4を印加した時の透過率T4の積で求められる。当然、結晶に印加する電圧を連続的に変化させることにより、透過するレーザ光604の出力を連続的に変化させることができ、結果的に任意の時間変化を有するレーザ光604を得ることができることになる。
【0048】
ここではEOモジュレータ606として、ポッケルス・セルと偏光ビームスプリッタを組み合わせることで説明したが、偏光ビームスプリッタの代わりに各種偏光板を用いることができる。尚、以後の説明では結晶と偏光ビームスプリッタ(または偏光板)の組み合わせをEOモジュレータ606と称する。
【0049】
EOモジュレータ606の他に、AO(音響光学)モジュレータを使用することができる。ただし、一般的にAOモジュレータはEOモジュレータと比較して、駆動周波数が低く、回折効率が70〜80%とやや低い欠点があるが、使用することができる。このようにEOモジュレータ606あるいはAOモジュレータなどの変調器を用いることにより、レーザ発振器からは常にレーザ光を出力した状態で、被照射部に任意の時点(あるいは位置)で照射を開始し、任意出力変化を経て任意の時点で照射を終了することができる。即ち、任意の時間変調をかけることが可能である。
【0050】
EOモジュレータ606によりON状態になったレーザ光604はビームホモジナイザ607で線状(あるいは矩形)のビームに成形する。通常、ガスレーザ発振器や固体レーザ発振器からの出力ビームは、円形且つガウス形のエネルギ分布を持っているため、そのままでは本発明のレーザアニールに使用することはできない。この欠点を解決して、ガウス形の分布を均一な分布に変換するために、ビームホモジナイザ607を用いる。
【0051】
ビームホモジナイザ607にはマルチレンズアレイを用いたもの、パウエルレンズとシリンドリカルレンズを組み合わせたもの、回折形光学素子を用いたもの等、種々の形式のものがあるが、線状、あるいは矩形に集光でき、かつ長手方向に均一なエネルギ分布が実現できるものであれば、どのような手段を用いてもよい。幅(短手)方向の分布は均一でもガウス分布のままでもよい。
【0052】
ビームホモジナイザ607で線状に集光されたレーザ光604を電動矩形開口スリット608で不要な部分のレーザ光を切り落して所望の矩形形状に成形し、対物レンズ611で縮小投影した像をガラス基板上に成膜されたシリコン薄膜に照射する。
【0053】
基板610にレーザ光604を照射するに当たって、ステージ609をXY平面内で移動しながら所望の位置にレーザ光604を照射するが、基板610表面の凹凸、うねりなどによる焦点はずれが起きると、集光されたレーザ光604のパワー密度変動、パワー密度不均一の発生、照射形状の劣化が起き、所期の目的を達成することができない。このため、必要に応じて、常に焦点位置で照射できるように、自動焦点光学系(図示せず)により焦点位置を検出し、焦点位置から外れた場合にはステージ609をZ方向(高さ方向)駆動するか、あるいは光学系をZ方向(高さ方向)駆動して、常に焦点位置(電動矩形開口スリット608面の投影位置)と基板610表面が一致するように制御する。
【0054】
次に、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を用いた表示装置の製造工程について説明する。図16は有機EL表示装置の製造工程を示すフロー図であり、図17は完成した有機EL基板の構造を示す断面図である。図16に示すように、ガラス基板401上にバリア膜として機能するSiN膜402およびSiO膜403をCVD等の手段により薄く堆積し(ステップS301)、その上にアモルファスシリコン膜404を50nm程度の厚さにCVD法で堆積する(ステップS302)。ここで記載した、バリア膜の層構成、膜厚およびシリコン膜の膜厚等については一例であり、かかる記載が本発明を制限するものではないことは強調されるべきである。
【0055】
その後、ステップS103のレーザアニール工程において、レーザダイオードもしくは固体レーザから発振するCWレーザ光を照射して非晶質シリコン膜を全面、あるいは、必要に応じて画素回路を形成すべき部分、および駆動回路を形成すべき部分を選択的に微結晶膜、あるいは多結晶膜405に改質する。このレーザアニール工程は、上述した図3のレーザアニール工程と同じである。
【0056】
続いて、形成した改質されたシリコン膜405を所定の回路になるようにアイランド形状にエッチングし(ステップS303)、ゲート絶縁膜(図示せず)、ゲート配線406を形成後、イオン打ち込みによる不純物拡散、および不純物拡散領域の活性化アニールを行い、ソース、ドレイン配線407、層間絶縁膜408、パシベーション膜409、透明電極410を順次、形成することで(ステップS304〜ステップS311)、トランジスタ回路を画素部に配置したアクティブマトリクス基板が形成できる。
【0057】
有機EL素子を駆動するために必要となる画素あたりのトランジスタ数は2乃至5が選択され、トランジスタを組み合わせた最適な回路構成を用いれば良い。かかる回路にはCMOS回路で形成した低電流駆動回路が一例として推奨される。かかる回路、電極形成にかかわる加工技術の詳細は当該業者には周知である。またトランジスタ回路の製造工程の途中にイオン打ち込み、活性化アニール等の工程の追加が必要であることも周知である。
【0058】
次に、アクティブマトリクス基板上の透明電極410の周辺部に素子分離帯411を形成する(ステップS312)。かかる素子分離帯411には絶縁性が求められ、ポリイミド等の有機材料を用いることもできるし、SiO、SiNなどの無機材料を用いてもよい。かかる素子分離帯411の成膜およびパターン形成法についても当該業者に周知である。
【0059】
ついで透明電極410上に有機EL材料の正孔輸送層412、発光兼電子輸送層413、陰極414を順次形成する(ステップS313〜ステップS315)。かかる形成の際には発光色の異なる発光兼電子輸送層413を、蒸着マスクを用いて特定の透明電極410上にのみ形成することで多色のディスプレイが形成できることは周知である。
【0060】
画素エリアにのみスクリーン印刷などの手段で充填材415を塗布し(ステップS316)、該充填材416上に封止板(図示せず)を積層して封止が完了する(ステップS317)。この後、必要に応じて筐体に格納するモジュール工程(ステップS318)を経て有機EL表示装置が完成する。
【0061】
本発明は上記で説明した有機層を真空蒸着で形成する、いわゆる低分子型のディスプレイにのみ有効なわけではなく、いわゆる高分子型と称される有機ELディスプレイにも有効である。さらに本発明は、前述したようなガラス基板上に透明電極と有機層と陰極を順次に積層してEL発光をガラス基板側に取り出す、いわゆるボトムエミッション型の有機ELの製造にのみ有効なわけではなく、ガラス基板上に陰極と有機層と透明電極を順次に積層してEL発光を封止基板側に取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機ELの製造にも有効である。
【0062】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、半導体薄膜上に光吸収層等を形成する事無く、即ち工程を複雑化させること無く、また結晶性の周期的劣化を回避して安定して均質な微結晶膜を形成することができるため、製造歩留まりを向上させると共に、耐圧低下の原因である粒界突起の発生しない微結晶膜を回路に必要な性能に応じて形成することができる。
【0063】
なお、上述の実施形態においては、液晶表示装置及び有機EL表示装置の実施形態としたが薄膜トランジスタ基板を用いるその他の表示装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 レーザアニール装置、101 レーザダイオードアレイ、102 ファイバ、103 カライドスコープ、104 矩形スリット、105 リレーレンズ、106 対物レンズ、107 駆動機構付ミラー、112 ステージ、114 ビームプロファイラ、115 パワーメータ、116 リレーレンズ、117 照明装置、118 画像データ処理装置、120 線状レーザ光、200 基板、202 走査線駆動回路領域、203 信号線駆動回路領域、204 周辺回路領域、205 線状レーザ光、206 線状レーザ光、207 パネル、222 SiN膜、223 SiO膜、224 シリコン膜、225 ゲート絶縁膜、226 ゲート電極、227 ソース電極、228 ドレイン電極、229 層間絶縁膜、231 透明画素電極、232 配向膜、251 ガラス基板、252 カラーフィルタ層、253 保護膜、254 透明電極、255 配向膜、256 ブラックマトリクス層、257 液晶、258 ビーズ、259 偏光板、301 ガラス基板、302 絶縁体薄膜、303 非晶質シリコン薄膜、305 微結晶膜、350 基板、351 カラーフィルタ基板、352 端子、353 シャーシ、360 パネル、370 液晶表示装置、401 ガラス基板、402 SiN膜、403 SiO膜、404 アモルファスシリコン膜、405 シリコン膜、406 ゲート配線、407 ドレイン配線、408 層間絶縁膜、409 パシベーション膜、410 透明電極、411 素子分離帯、412 正孔輸送層、413 発光兼電子輸送層、414 陰極、415 充填材、416 充填材、501 微結晶膜、502 劣化部分、600 レーザアニール装置、601 レーザダイオード電源、602 光ファイバ、603 レーザ発振器、604 レーザ光、605 フィルタ、606 EOモジュレータ、607 ビームホモジナイザ、608 電動矩形開口スリット、609 ステージ、610 基板、611 対物レンズ、612 リニアエンコーダ、615 ドライバ、616 制御装置、617 照明光源、619 カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタ基板を製造する薄膜トランジスタ基板製造工程を備え、
前記薄膜トランジスタ基板製造工程は、
絶縁基板上に非晶質シリコン薄膜を形成する非晶質シリコン薄膜形成工程と、
前記非晶質シリコン薄膜に第1の連続発振レーザ光を照射して、微結晶シリコン膜を形成する微結晶シリコン膜形成工程と、
を有する、ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記微結晶シリコン膜形成工程における前記連続発振レーザ光の一領域あたりの照射時間は100マイクロ秒以上である、ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記微結晶シリコン膜に第2の連続発振レーザ光を照射して、前記微結晶シリコン膜の結晶よりも粒径の大きい結晶のシリコン膜を形成する結晶シリコン膜形成工程を更に有する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記結晶シリコン膜形成工程では、多結晶シリコン膜が形成され、
前記第2の連続発振レーザ光の強度は、前記第1の連続発振レーザ光の強度よりも大きく、
前記第2の連続発振レーザ光の走査速度は、前記第1の連続発振レーザ光の走査速度よりも速い、ことを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の連続発振レーザ光の走査速度は、前記第1の連続発振レーザ光走査速度の10倍以上である、こと特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記微結晶シリコン膜を使用した薄膜トランジスタは、前記薄膜トランジスタ基板の表示領域内の薄膜トランジスタであり、前記粒径の大きい結晶のシリコン膜を使用したトランジスタは、前記薄膜トランジスタ基板の表示領域外の薄膜トランジスタである、ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
薄膜トランジスタ基板を備える表示装置であって、
前記薄膜トランジスタ基板は、
微結晶シリコン膜により形成された表示領域内の第1薄膜トランジスタと、
前記微結晶シリコン膜の結晶より大きな結晶のシリコン膜により形成された表示領域外の第2薄膜トランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記第1薄膜トランジスタは、画素のスイッチングに用いられ、前記第2薄膜トランジスタは、表示用の駆動回路の一部である、ことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2011−165717(P2011−165717A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23461(P2010−23461)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】