説明

表示装置

【課題】ゲート絶縁膜に異物の侵入あるいは汚染を回避させた薄膜トランジスタを備える表示装置の提供。スルーホールを通した電気的接続に信頼性を向上させた表示装置の提供。
【解決手段】基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタとして、前記基板上にゲート電極を被って形成されるシリコン窒化膜に選択的に形成されたシリコン酸化膜を備え、
少なくとも前記シリコン酸化膜の上面に形成された擬似単結晶層あるいは多結晶層を含む半導体層を備え、
該半導体層の上面にコンタクト層を介してドレイン電極およびソース電極が形成されて構成され、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層はアモルファスシリコン層の結晶化によって形成されているとともに、その周側壁面はその下層の前記シリコン酸化膜の周側壁面と段差を有することなく連続した構成からなるものを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、基板に薄膜トランジスタが形成されている表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような表示装置として、その基板面において、表示領域の各画素に画素選択用の薄膜トランジスタが形成されているとともに、該表示領域の周辺において前記各画素を駆動させるための周辺回路が形成され、この周辺回路には複数の薄膜トランジスタを備えたものがある。
【0003】
そして、該表示装置を製造する場合、その効率化を図るため、画素選択用の薄膜トランジスタと周辺回路の薄膜トランジスタは、並行して形成していくのが通常となっている。
【0004】
また、画素選択用の薄膜トランジスタにはアモルファスシリコン(a−Si)を半導体層としたものを形成し、周辺回路の薄膜トランジスタにはアモルファスシリコンをたとえば擬似単結晶化技術によって結晶化した多結晶シリコンを半導体層としたものを形成するものが知られている。多結晶シリコンを半導体層とした場合、移動度に優れた薄膜トランジスタを得ることができるからである。
【0005】
この場合、アモルファスシリコンを半導体層とした薄膜トランジスタには、そのゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜を用い、多結晶シリコンを半導体層とした薄膜トランジスタには、そのゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜を用いることが、それぞれの薄膜トランジスタの特性を向上させることが知られている。
【0006】
このような構成からなる表示装置は、その製造方法とともに、下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平5−107560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に示す表示装置は、その基板の主面において、画素選択用および周辺回路のそれぞれの薄膜トランジスタのゲート電極を形成した後に、該基板の周面に前記ゲート電極をも被って、まず、シリコン窒化膜を形成している。
【0008】
そして、該シリコン窒化膜の上面にシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜を選択エッチングし、該シリコン酸化膜を周辺回路の形成領域において残存させている。
【0009】
そして、前記基板の主面にアモルファスシリコン層を形成し、このアモルファスシリコン層の前記周辺回路における各薄膜トランジスタの半導体層の形成領域に選択的に結晶化を行って多結晶シリコン膜を形成するようにしたものである。
【0010】
このことから、前記シリコン酸化膜の選択エッチングの際において該シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜に異物が侵入したり汚染されたりする不都合を有するものであった。
【0011】
また、前記特許文献1に示す表示装置は、前記シリコン酸化膜が周辺回路の形成領域に及んで形成されているものと推定でき、たとえば薄膜トランジスタのゲート電極とドレイン電極(ソース電極)の電気的接続を図る場合に、その接続の信頼性が乏しくなる不都合を有するようになる。
【0012】
すなわち、薄膜トランジスタのゲート電極とドレイン電極(ソース電極)の電気的接続は、積層されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜にそれぞれ形成するスルーホールを通して形成される金属膜によって行うようになっている。この場合、前記スルーホールを形成する際に、前記シリコン窒化膜がシリコン酸化の下層においてアンダーカットがなされ、該スルーホールの側壁面において形成される段差によって、前記金属膜に断切れが生じ易くなる。
【0013】
本発明の目的は、ゲート絶縁膜に異物の侵入あるいは汚染を回避させた薄膜トランジスタを備える表示装置を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、スルーホールを通した電気的接続に信頼性を向上させた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
(1)本発明による表示装置は、たとえば、基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタとして、前記基板上にゲート電極を被って形成されるシリコン窒化膜に選択的に形成されたシリコン酸化膜を備え、
少なくとも前記シリコン酸化膜の上面に形成された擬似単結晶層あるいは多結晶層を含む半導体層を備え、
該半導体層の上面にコンタクト層を介してドレイン電極およびソース電極が形成されて構成され、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層はアモルファスシリコン層の結晶化によって形成されているとともに、その周側壁面はその下層の前記シリコン酸化膜の周側壁面と段差を有することなく連続した構成からなるものを含むことを特徴とする。
【0017】
(2)本発明による表示装置は、たとえば、基板面において、表示領域の各画素および前記表示領域の周辺回路にそれぞれ薄膜トランジスタが形成され、(1)に示す構成の薄膜トランジスタは、前記周辺回路に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0018】
(3)本発明による表示装置は、たとえば、(2)の構成を前提とし、表示領域の画素に形成された薄膜トランジスタは、前記基板上にゲート電極を被って形成される前記シリコン窒化膜と、
前記シリコン窒化膜の上面に形成されたアモルファスシリコン層と、
該アモルファスシリコン層の上面にコンタクト層を介して形成されたドレイン電極およびソース電極を備えることを特徴とする。
【0019】
(4)本発明による表示装置は、たとえば、赤(R)、緑(G)、青(B)を担当する各画素への映像信号の供給を時分割駆動によって行うスイッチ素子を備える表示装置において、
前記スイッチ素子は、(1)に示す薄膜トランジスタによって構成されていることを特徴とする。
【0020】
(5)本発明による表示装置の製造方法は、たとえば、表示装置の基板上に、ゲート電極を被って形成されるシリコン窒化膜に選択的に形成されたシリコン酸化膜を備え、
少なくとも前記シリコン酸化膜の上面に擬似単結晶層あるいは多結晶層を含む半導体層を備え、
前記半導体層の上面にコンタクト層を介してドレイン電極およびソース電極が形成されて構成され、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層はアモルファスシリコン層の結晶化によって形成された薄膜トランジスタを備えるものであって、
前記シリコン窒化膜、前記シリコン酸化膜、および前記アモルファスシリコン層を順次連続して形成する工程と、
前記アモルファスシリコン層に選択的に結晶化して前記擬似単結晶層あるいは多結晶層を形成する工程と、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層を残存させ、前記アモルファスシリコン層をエッチングする際に、該アモルファスシリコン層の下層に位置付けられるシリコン酸化膜もエッチングする工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した表示装置は、ゲート絶縁膜に異物の侵入あるいは汚染を回避させた薄膜トランジスタを備えたものを得ることができる。
【0023】
また、このように構成した表示装置は、スルーホールを通した電気的接続に信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明による表示装置の実施例を図面を用いて説明をする。
【0025】
〈表示装置の概略構成〉
図2は、本発明による表示装置をたとえば液晶表示装置を例に挙げて示した概略平面図である。
【0026】
図2において、該液晶表示装置は、液晶層を介在させて対向配置させたたとえばガラスからなる基板SUB1、SUB2を外囲器とし、該液晶層は図示しないシール材によって前記基板SUB1、SUB2の間に封止されている。
【0027】
たとえば基板SUB1の液晶側の面には、図中x方向に延在しy方向に並設されたゲート信号線GL、および図中y方向に延在しx方向に並設されたドレイン信号線DLが形成されている。
【0028】
そして、一対の隣接するゲート信号線GLと一対の隣接するドレイン信号線DLとで囲まれた領域を画素領域とし、これら画素領域のマトリックス状に配置された集合体で液晶表示領域ARを構成するようになっている。
【0029】
ゲート信号線GLは、たとえば図中左側端において走査信号駆動回路Vに接続されている。ゲート信号線GLには、たとえば図中上段から下段へ、さらに上段に戻ってという順で、前記走査信号駆動回路Vからの走査信号が供給されるようになっている。
【0030】
ドレイン信号線DLは、たとえば図中下側端において映像駆動回路Heに接続されている。ドレイン信号線DLには、前記走査信号の供給のタイミングに合わせて、前記映像駆動回路Heからの映像信号が供給されるようになっている。
【0031】
なお、前記走査信号駆動回路Vおよび映像信号駆動回路Heは、それぞれ複数の薄膜トランジスタTHT1を備える回路から構成されている。
【0032】
また、前記画素領域には、図中実線枠α内を拡大して示した図Aに示すように、ゲート信号線GLからの走査信号の供給によってオンされる薄膜トランジスタTFT2と、このオンされた薄膜トランジスタTFT2を介してドレイン信号線DLからの映像信号が供給される画素電極PXと、この画素電極PXと該画素電極PXに隣接するゲート信号線GLであって前記薄膜トランジスタTFT2を駆動させるゲート信号線でない方のゲート信号線GLとの間に接続される容量素子Caddを備えて構成されている。
【0033】
前記画素電極PXは、たとえば基板SUB2の液晶側の面に各画素領域に共通に形成された対向電極(図示せず)との間に電界を生じせしめるようになっている。
【0034】
このように構成される液晶表示装置は、基板SUB1上の構成の製造において、前記走査信号駆動回路Vおよび映像信号駆動回路Heは画素領域の構成と並行して形成されるのが通常となっており、これにより、前記薄膜トランジスタTFT1と薄膜トランジスタTFT2も並行して形成されるようになる。
【0035】
ここで、この実施例では、前記走査信号駆動回路Vおよび映像信号駆動回路Heにおいて形成される薄膜トランジスタTHT1と、画素領域に形成される薄膜トランジスタTFT2は、それらのゲート絶縁膜と半導体層に材料および構成の相異を有し、このことから、前者の薄膜トランジスタにおいてはTFT1の符号を付し、後者の薄膜トランジスタにおいてはTFT2の符号を付して区別を図っている。
【0036】
〈半導体装置の構成〉
図1は、本発明による表示装置に形成される薄膜トランジスタの一実施例を示す構成図である。
【0037】
図1において、図中左側に描画されている薄膜トランジスタTFT1は、前記走査信号駆動回路Vあるいは映像信号駆動回路He等の周辺回路に形成される薄膜トランジスタであり、その半導体層はアモルファスシリコン層をたとえば擬似単結晶化させた擬似単結晶層(図中符号4aで示す)を含んで構成されている。また、図中右側に描画されている薄膜トランジスタTFT2は、画素領域に形成される薄膜トランジスタであり、その半導体層はアモルファスシリコン層(図中符号5で示す)によって構成されたものとなっている。
【0038】
薄膜トランジスタTFT1は次のようにして構成されている。すなわち、たとえばガラス等からなる基板SUB1の表面に、ゲート電極GT1が形成され、このゲート電極GT1を被うようにしてシリコン窒化膜(SiN膜)2が形成されている。このシリコン窒化膜2は薄膜トランジスタTFT2の形成領域にまで及んで形成された膜となっている。
【0039】
前記シリコン窒化膜2の上面には、該ゲート電極GT1を跨ぐようにしてシリコン酸化膜(SiO膜)3が選択的に形成され、さらにこのシリコン酸化膜3の上面に重畳されてアモルファスシリコン層(図3にて符号4で示す)をたとえば擬似単結晶化させた擬似単結晶層4aが形成されている。ここで、前記シリコン酸化膜3と擬似単結晶層4aの周辺における各側壁面(図中矢印Qで示す)は連続して形成され、段差のない構成となっている。このことは、前記シリコン酸化膜3は擬似単結晶層4aの下層のみに形成され、平面的にそれ以上外方へ延在されていないことを意味するが、この効果については後述する。
【0040】
そして、前記擬似単結晶層4aに積層されて島状のアモルファスシリコン層5が形成されている。
【0041】
該アモルファスシリコン層5の上面には、平面的に観た場合、先端部において前記ゲート電極GT1と重畳し、互いに離間されて配置されるドレイン電極DTとソース電極STが、該ドレイン電極DTと前記アモルファスシリコン層5の界面に高濃度n型アモルファスシリコン層7(図中符号7aで示す)を、該ソース電極STと前記アモルファスシリコン層5の界面に高濃度n型アモルファスシリコン層7(図中符号7bで示す)を介在させて、形成されている。
【0042】
そして、このように形成された薄膜トランジスタTFT1の上面にはシリコン
窒化膜8が被われている。このシリコン窒化膜8は薄膜トランジスタTFT2の形成領域にまで及んで形成された膜となっている。
【0043】
一方、薄膜トランジスタTFT2は次のようにして構成されている。前記ガラス基板SUB1の表面に、ゲート電極GT2が形成され、このゲート電極GT2を被うようにして前記シリコン窒化膜(SiN膜)2が形成されている。
【0044】
前記シリコン窒化膜2の上面には、該ゲート電極GT2を跨ぐようにして前記アモルファスシリコン層5が島状に形成されている。
【0045】
該アモルファスシリコン層5の上面には、平面的に観た場合、先端部において前記ゲート電極GT2と重畳し、互いに離間されて配置されるドレイン電極DT2とソース電極ST2が、該ドレイン電極DT2と前記アモルファスシリコン層5の界面に高濃度n型アモルファスシリコン層7(図中符号7cで示す)を、該ソース電極ST2と前記アモルファスシリコン層5の界面に高濃度n型アモルファスシリコン層7(図中符号7dで示す)を介在させて、形成されている。
【0046】
そして、このように形成された薄膜トランジスタTFT1の上面には前記シリコン窒化膜8が被われている。
【0047】
なお、図1に示した薄膜トランジスタTFT1における擬似単結晶層4aは、これに換えて多結晶層としてもよい。同様の特性が得られるからである。
【0048】
また、薄膜トランジスタTFT1において前記擬似単結晶層4aにアモルファスシリコン層5を積層させた構成としたものであるが、該アモルファスシリコン層5を形成しない構成としてもよい。
【0049】
〈半導体装置の製造方法〉
図3および図4は、図1に示した薄膜トランジスタTFT1、TFT2の製造方法の一実施例を示す工程図である。図中左側が薄膜トランジスタTFT1の形成領域を右側が薄膜トランジスタTFT2の形成領域を示している。以下、工程順に説明をする。
【0050】
工程1.(図3(a))
たとえばガラスからなる基板SUB1を用意し、この基板SUB1の一方の表面にスパッタリング法を用いてたとえばMoW等の金属膜を50nm〜150nmで形成する。その後、フォトリソグラフィ技術による選択エッチング法を用いてゲート電極GT1、GT2を形成する。
【0051】
工程2.(図3(b))
前記基板1の表面に、前記ゲート電極GT1、GT2をも被って、シリコン窒化膜(SiN膜)2を約300nmで形成する。続けて、シリコン酸化膜(SiO膜)3を約25nmで形成する。さらに、アモルファスシリコン層(a−Si膜)4を50〜150nmで形成する。
【0052】
これら、シリコン窒化膜2、シリコン酸化膜3、およびアモルファスシリコン層4のそれぞれの成膜は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて連続して行う。このように同一の装置を用いて、シリコン窒化膜2、シリコン酸化膜3、およびアモルファスシリコン層4を連続して形成することにより、これら各膜の界面、膜中への異物の侵入あるいは汚染を大幅に低減できる効果を奏する。
【0053】
工程3.(図3(c))
前記アモルファスシリコン層4の形成領域において、周辺回路の薄膜トランジスタTFT1の半導体層の形成領域に相当する箇所に、たとえば擬似単結晶化技術を用いて、レーザーアニールを選択的に行うことにより、前記アモルファスシリコン層4を改質させた擬似単結晶層4aを形成する。
【0054】
この場合、他の実施例として、前記擬似単結晶層4aに改質することに限定されず、多結晶化させた多結晶層を形成するようにしてもよい。
【0055】
工程4.(図3(d))
前記アモルファスシリコン層4(擬似単結晶層4aも含む)上の全域にフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィ技術により、前記擬似単結晶層4a上のフォトレジスト膜のみを残存させ、他の領域におけるフォトレジスト膜を除去する。
【0056】
次に、残存されたフォトレジスト膜をマスクとし、該マスクから露出する前記アモルファスシリコン層4(擬似単結晶層4aは含まない)をたとえばドライエッチングする。さらに、前記マスクから露出したシリコン酸化膜3をドライエッチングあるいはウェットエッチングする。
【0057】
そして、前記残存するフォトレジスト膜をたとえば酸素プラズマによるアッシングによって、あるいは剥離剤によって除去する。
【0058】
このようにすることによって、周辺回路の形成領域には、この領域に形成される薄膜トランジスタ(擬似単結晶層4aを半導体層とする)のゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜3が形成されたままとなる。一方、画素の形成領域には、薄膜トランジスタTFT2(a−Siを半導体層とする)のゲート絶縁膜となるシリコン窒化膜2が露出されるようになる。
【0059】
工程5.(図3(e))
基板1の表面に、アモルファスシリコン層(a−Si膜)5を約150nmで形成し、続けて高濃度n型アモルファスシリコン層(a−Si膜)7を20〜50nmで形成する。
【0060】
これら、アモルファスシリコン層5および高濃度n型アモルファスシリコン層7のそれぞれの成膜は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて連続して行う。
【0061】
工程6.(図4(a))
アモルファスシリコン層5および高濃度n型アモルファスシリコン層7の積層体を、フォトリソグラフィ技術によるエッチング法によって、各薄膜トランジスタTFTの半導体層形成領域に残存させ、他の領域において除去する。
【0062】
これにより、周辺回路における薄膜トランジスタTFT1の部分には、前記擬似単結晶層4a上にアモルファスシリコン層5および高濃度n型アモルファスシリコン層7が順次積層されて構成されるようになる。
【0063】
工程7.(図4(b))
基板1の表面に、たとえばAlを主材料として含む金属膜を形成し、フォトリソグラフィ技術による選択エッチングにより、周辺回路の形成領域における薄膜トランジスタTFT1のドレイン電極DT1およびソース電極ST1を形成するとともに、画素領域における薄膜トランジスタTFT2のドレイン電極DT2およびソース電極ST2を形成する。
【0064】
さらに、各薄膜トランジスタTFT1、TFT2のドレイン電極DT1、DT2およびソース電極ST1、ST2の間のそれぞれの高濃度n型アモルファスシリコン層7をオーバエッチングし、その下層のアモルファスシリコン層5を充分に露出させる。これにより、前記高濃度n型アモルファスシリコン層7はドレイン電極DT1、DT2とアモルファスシリコン層5の間、ソース電極ST1、ST2とアモルファスシリコン層5の間に形成(それぞれ、符号7a、7c、7b、7dで示す)されてコンタクト層として機能するようになる。
【0065】
工程8.(図4(c))
そして、ガラス基板1の表面にたとえばCVD方法を用いてシリコン窒化膜(SiN膜)8を形成する。このシリコン窒化膜8は各薄膜トランジスタTFTを被って形成され、たとえば保護膜として機能するようになっている。
【0066】
〈従来構成との比較〉
図5、6は、従来における薄膜トランジスタTFT1、TFT2の製造方法の一例を示した工程図で、図3、4と対応させて描いた図となっている。図5、6に示す材料において図3、4と同符号のものは、図3、4に示した材料と同じものを示している。
【0067】
このため、図5、6の説明にあっては、図3、4と異なる構成のみの説明に止め、図3、4と同一の構成について説明を省略する。
【0068】
まず、図5(b)に示すように、シリコン窒化膜2の形成の後に、シリコン酸化膜3を形成し、このシリコン酸化膜3を選択的に除去して、たとえば周辺回路の形成領域に該シリコン酸化膜3を残存させるようにしている。
【0069】
そして、その後に、アモルファスシリコン層4を成膜し、周辺回路の薄膜トランジスタTFT1の半導体層の形成領域に相当する箇所に、レーザーアニールを選択的に行うことにより、前記アモルファスシリコン層5を改質させた擬似単結晶層4aを形成するようにしている。
【0070】
このことから、シリコン窒化膜2、シリコン酸化膜3、およびアモルファスシリコン層4の各成膜の途中に、シリコン酸化膜3の選択エッチングの工程なされ、これにより、たとえば同一のCVD装置による連続成膜がなされていないことが判る。
【0071】
これに対し、本実施例では、図3(b)に示すようにシリコン窒化膜2、シリコン酸化膜3、およびアモルファスシリコン層4の各成膜は連続して行われ、たとえば同一のCVD装置によって成膜ができ、各膜に、あるいは膜の界面に異物の侵入あるいは汚染が生じることがなく、電気的に信頼性のあるゲート絶縁膜を形成することができる。
【0072】
また、図6(a)に示すように、アモルファスシリコン層5を成膜した後に、このアモルファスシリコン層5を各薄膜トランジスタ毎に島状となるように選択エッチングをしている。
【0073】
この場合、周辺回路に備えられる薄膜トランジスタTFT1においては、前記アモルファスシリコン層5をその下層のアモルファスシリコン層4とともに選択エッチングしているが、該アモルファスシリコン層4の下層のシリコン酸化膜3はエッチングしないようになっている。
【0074】
このため、前記シリコン酸化膜3は、薄膜トランジスタTFT1の半導体層(擬似単結晶層4a、アモルファスシリコン層5)からはみ出して形成され、たとえば周辺回路の形成領域にわたって形成されていることになる。
【0075】
このことから、それぞれの薄膜トランジスタTFT1において、たとえばゲート電極GT1とドレイン電極DT1(あるいはソース電極ST1)のスルーホールを通した接続を図る場合、シリコン窒化膜2とシリコン酸化膜3の順次積層体に前記スルーホールを形成することになる。
【0076】
この場合、シリコン窒化膜2とシリコン酸化膜3の順次積層体に前記スルーホールを形成した際に、その断面図である図7に示すように、シリコン窒化膜2はシリコン酸化膜3の下方においてアンダーカットされるようになってしまう。換言すれば、シリコン窒化膜2に形成されるスルーホールの内壁面は、シリコン酸化膜3に形成されるスルーホールの内壁面よりもオーバエッチングされるようになってしまう。
【0077】
このため、このようなスルーホールを通して、金属膜による配線を形成する場合、該スルーホールの内壁面において該金属膜の断切れが生じ易い構成となることを免れ得ない。
【0078】
これに対して本実施例は、図4(a)に示すように、周辺回路の形成領域においてシリコン酸化膜3が形成されている部分は各薄膜トランジスタTFT1の半導体層(擬似単結晶層4a、アモルファスシリコン層5)の下層にのみ形成されていることから、前述したようにたとえばゲート電極GT1とドレイン電極DT1(あるいはソース電極ST1)のスルーホールの形成箇所に前記シリコン酸化膜3が形成されていることはなく、シリコン窒化膜2のみとなる。このため、該スルーホールの内壁面は段差のない連続した面として形成される効果を奏する。
【0079】
〈他の実施例〉
上述した実施例では、アモルファスシリコン層を擬似単結晶化させた半導体層を有する薄膜トランジスタTFT1を、画素を駆動させる周辺回路に組み込ませるように構成したものである。
【0080】
しかし、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれを担当する画素にドレイン信号線DLを介して映像信号を供給する際に、その供給を時分割で行うための時分割用スイッチSW(R)、SW(G)、SW(B)を組み込ませた表示装置にあって、この時分割用スイッチSW(R)、SW(G)、SW(B)に前記薄膜トランジスタTFT1を適用させるようにしてもよい。
【0081】
図8は、表示領域ARのたとえば図中下側に前記分割用スイッチSW(R)、SW(G)、SW(B)が配置されている表示装置の概略を示した平面図である。
【0082】
表示領域ARにおける各画素において、たとえば、図中y方向に並設される各画素は共通の色を担当し、図中左側から右側にかけて赤(R)、緑(G)、青(B)を担当し、これを順次繰り返すようになっているとする。
【0083】
図中赤(R)を担当する画素に共通のドレイン信号線DL(図中DL(R)で示す)には時分割スイッチSW(R)を介してドレイン信号線DLcから映像信号が供給されるようになっている。また、図中緑(G)を担当する画素に共通のドレイン信号線DL(図中DL(G)で示す)には時分割スイッチSW(G)を介してドレイン信号線DLcから映像信号が供給されるようになっている。さらに、図中青(B)を担当する画素に共通のドレイン信号線DL(図中DL(B)で示す)には時分割スイッチSW(B)を介してドレイン信号線DLcから映像信号が供給されるようになっている。
【0084】
前記時分割スイッチSW(R)、SW(G)、SW(B)は、それらのゲート電極に信号を供給することによって、たとえばその順番でオンが繰り替えされるようになっており、そのオンのタイミングに合わせて、ドレイン信号線DLcを通して映像信号が、対応する各ドレイン信号線DLに供給されるようになっている。
【0085】
このように構成される表示装置は、映像信号駆動回路(図2参照)から一本のドレイン信号線DLcを通して、3本の各ドレイン信号線DLに映像信号を供給できる構成とすることができるようになる。
【0086】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明による表示装置の基板に形成されている薄膜トランジスタの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明による表示装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図3】本発明による表示装置の基板に形成されている薄膜トランジスタの製造方法の一実施例を示す工程図で、図4とともに全工程を示した図である。
【図4】本発明による表示装置の基板に形成されている薄膜トランジスタの製造方法の一実施例を示す工程図で、図3とともに全工程を示した図である。
【図5】従来の表示装置の基板に形成されている薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す工程図で、図6とともに全工程を示した図である。
【図6】従来の表示装置の基板に形成されている薄膜トランジスタの製造方法の一例を示す工程図で、図5とともに全工程を示した図である。
【図7】従来の表示装置の不都合を示す説明図である。
【図8】本発明による表示装置の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
SUB1、SUB2……基板、DL……ドレイン信号線、GL……ゲート信号線、V……走査信号駆動回路、He……映像信号駆動回路、TFT1、TFT2……薄膜トランジスタ、PX……画素電極、Cadd……容量素子、GT1、GT2……ゲート電極、2、8……シリコン窒化膜、3……シリコン酸化膜、4、5……アモルファスシリコン層、4a……擬似単結晶層、7……高濃度層、DT1、DT2……ドレイン電極、ST1、ST2……ソース電極、SW(R)、SW(G)、SW(B)……時分割用スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に薄膜トランジスタが形成された表示装置であって、
前記薄膜トランジスタとして、前記基板上にゲート電極を被って形成されるシリコン窒化膜に選択的に形成されたシリコン酸化膜を備え、
少なくとも前記シリコン酸化膜の上面に形成された擬似単結晶層あるいは多結晶層を含む半導体層を備え、
該半導体層の上面にコンタクト層を介してドレイン電極およびソース電極が形成されて構成され、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層はアモルファスシリコン層の結晶化によって形成されているとともに、その周側壁面はその下層の前記シリコン酸化膜の周側壁面と段差を有することなく連続した構成からなるものを含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
基板面において、表示領域の各画素および前記表示領域の周辺回路にそれぞれ薄膜トランジスタが形成され、
請求項1に記載の薄膜トランジスタは、前記周辺回路に形成される薄膜トランジスタであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
表示領域の画素に形成された薄膜トランジスタは、前記基板上にゲート電極を被って形成される前記シリコン窒化膜と、
前記シリコン窒化膜の上面に形成されたアモルファスシリコン層と、
該アモルファスシリコン層の上面にコンタクト層を介して形成されたドレイン電極およびソース電極を備えることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
赤(R)、緑(G)、青(B)を担当する各画素への映像信号の供給を時分割駆動によって行うスイッチ素子を備える表示装置において、
前記スイッチ素子は、請求項1に記載の薄膜トランジスタによって構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
表示装置の基板上に、ゲート電極を被って形成されるシリコン窒化膜に選択的に形成されたシリコン酸化膜を備え、
少なくとも前記シリコン酸化膜の上面に擬似単結晶層あるいは多結晶層を含む半導体層を備え、
前記半導体層の上面にコンタクト層を介してドレイン電極およびソース電極が形成されて構成され、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層はアモルファスシリコン層の結晶化によって形成された薄膜トランジスタを備えるものであって、
前記シリコン窒化膜、前記シリコン酸化膜、および前記アモルファスシリコン層を順次連続して形成する工程と、
前記アモルファスシリコン層に選択的に結晶化して前記擬似単結晶層あるいは多結晶層を形成する工程と、
前記擬似単結晶層あるいは多結晶層を残存させ、前記アモルファスシリコン層をエッチングする際に、該アモルファスシリコン層の下層に位置付けられるシリコン酸化膜もエッチングする工程とを備えることを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−70861(P2009−70861A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234836(P2007−234836)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】