表示装置
【課題】画素の電圧変動を低減することにより、多階調表示を実現できる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置において、並設された複数本のソース信号線10,20と、ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線30と、ソース信号線とゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタ40を介して、ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極70と、を備え、隣接する一対のソース信号線間に設けられる画素電極の側縁部を、ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方のソース信号線との重畳面積を、他方のソース信号線との重畳面積と等しくする。
【解決手段】表示装置において、並設された複数本のソース信号線10,20と、ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線30と、ソース信号線とゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタ40を介して、ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極70と、を備え、隣接する一対のソース信号線間に設けられる画素電極の側縁部を、ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方のソース信号線との重畳面積を、他方のソース信号線との重畳面積と等しくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、表示装置に関する。特に、多階調表示を実現できる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、アモルファスシリコンまたはポリシリコンを用いたトランジスタで駆動するタイプが主流である。しかし、これらの表示装置は、トランジスタのオフ電流の影響により、多階調表示を実現することが困難であった。
【0003】
表示装置における画素の一例として、トランジスタ100、液晶素子110および保持容量120を備える画素を図12に示す。トランジスタ100は、アモルファスシリコントランジスタまたはポリシリコントランジスタである。各画素において、トランジスタ100より液晶素子110および保持容量120に対して、画像データを書き込むことによって、液晶素子110に電界が与えられ画像表示を行うことが可能となる。
【0004】
しかし、トランジスタ100に存在するオフ電流によって、液晶素子110および保持容量120に蓄えられた電荷は放電し、それに伴い画素の電圧も変動してしまう。
【0005】
各画素において、保持容量C,電圧変動V,オフ電流iおよび保持時間Tは、CV=iTの関係を満たす。したがって、トランジスタ100のオフ電流i=0.1[pA]、保持容量120の静電容量C=0.1[pF]、1フレーム期間T=16.6[ms]とした場合、静電容量と電圧変動の積はオフ電流と保持時間の積と等しいので、1フレーム期間中の画素の電圧変動Vは、16.6[mV]となる。
【0006】
この表示装置が256(=28)階調であり、かつ、画素における液晶素子の最大駆動電圧が5[V]であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約20[mV]である。つまり、先の計算により求めた画素の電圧変動V=16.6[mV]は、およそ1階調分の階調電圧の変動に相当する。
【0007】
また、表示装置が1024(=210)階調であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約5[mV]である。したがって、画素の電圧変動V=16.6[mV]は、およそ4階調分の階調電圧の変動に相当し、オフ電流による電圧変動の影響を無視することはできない。
【0008】
特許文献1では、ポリシリコントランジスタを用いた表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−110530号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
画素の電圧変動を低減することにより、多階調表示を実現できる表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、並設された複数本のソース信号線と、ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線と、ソース信号線とゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタを介して、ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極と、を備え、隣接する一対のソース信号線間に設けられる画素電極の側縁部を、ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方のソース信号線との重畳面積を、他方のソース信号線との重畳面積と等しくすることを特徴とする表示装置である。
【0012】
酸化物半導体は真性または実質的に真性であり、トランジスタの単位チャネル幅あたりのオフ電流が100aA/μm以下(aは10−18を表す)、好ましくは1aA/μm以下、さらに好ましくは1zA/μm以下(zは10−21を表す)であることを特徴とする。なお、本明細書において、「真性」とは、キャリア濃度が1×1012/cm3未満である半導体の状態を指し、「実質的に真性」とは、キャリア濃度が1×1012/cm3以上1×1014/cm3未満である半導体の状態を指すものとする。
【発明の効果】
【0013】
画素の電圧変動を低減することにより、多階調表示を実現できる。さらに、信号線と画素電極との間の寄生容量の影響を減らすことにより、クロストーク等を抑えた表示品位の高い表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】表示装置の構成例を示す平面図
【図2】画素の反転方式を示す模式図
【図3】ソース信号線10,20と画素電極70との重畳により形成された寄生容量を示す回路図
【図4】表示装置の構成例を示す平面図
【図5】表示装置の構成例を示す平面図
【図6】トランジスタの構造の一例を示す図
【図7】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図8】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図9】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図10】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図11】トランジスタの電気特性を示すグラフ
【図12】画素の構成例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、開示される発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。ただし、発明は以下の説明に限定されず、その発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その態様および詳細をさまざまに変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、表示装置における画素の構成例を示す平面図である。この表示装置は、ソース信号線10,20,ゲート信号線30,トランジスタ40,保持容量50,容量線60および画素電極70を備えている。
【0017】
この表示装置には、ソース信号線10,20を含む複数のソース信号線が並設されている。また、これらのソース信号線に対して、ゲート信号線30を含む複数のゲート信号線が、マトリクス状に並設されている。
【0018】
ソース信号線10とゲート信号線30との交差部の近傍に、スイッチング素子としてのトランジスタ40が配置されている。トランジスタ40に隣接して保持容量50および容量線60が配置されている。
【0019】
画素電極70の側縁部は、隣接する一対のソース信号線10,20および隣接する一対のゲート信号線30の側縁に、それぞれ重畳するように形成されている。
【0020】
トランジスタ40は、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを特徴とする。真性または実質的に真性である酸化物半導体を用いることで、トランジスタ40のオフ電流を、100[aA]以下、好ましくは1[aA]以下、さらに好ましくは10[zA]以下とすることができる。ただし、この数値は、トランジスタ40のチャネル幅Wを1[μm]とし、室温で測定した場合の数値である。
【0021】
図1に示す表示装置の画素において、トランジスタ40のオフ電流i,保持容量50の静電容量C,電圧変動Vおよび保持時間Tは、CV=iTの関係を満たす。したがって、トランジスタ40のオフ電流iを低減することにより、トランジスタ40がオフの状態における、電圧変動Vを低減することが可能となる。
【0022】
具体的に、トランジスタ40のオフ電流i=1[aA],保持容量50の静電容量C=0.1[pF],1フレーム期間T=16.6[ms]である場合、静電容量と電圧変動の積はオフ電流と保持時間の積と等しいので、トランジスタ40のオフ電流による画素の電圧変動Vは、16.6×10−5[mV]となる。
【0023】
この表示装置が256(=28)階調であり、かつ、画素における液晶素子の最大駆動電圧が5[V]であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約20[mV]である。つまり、ここで求めた画素の電圧変動V=16.6×10−5[mV]は、1階調分の階調電圧に対して極めて小さい値である。
【0024】
また、表示装置の階調数をさらに増加した場合でも、この画素の電圧変動Vは、階調電圧と比較してはるかに小さい値である。すなわち、トランジスタ40のオフ電流による画素の電圧変動は、実質的にゼロとみなすことができる。
【0025】
続いて、表示装置における液晶素子のリーク電流による、画素の電圧変動Vを考える。一般的な液晶素子のリーク電流は1[fA]程度であるため、この値を用いると、電圧変動V=0.166[mV]と求まる。この値は、表示装置が約30000階調に及ぶと、電圧変動Vの影響が生じることを意味している。したがって、通常の液晶素子では、そのリーク電流は問題とはならない。
【0026】
表示装置における画素電極は、ソース信号線およびゲート信号線などの信号線と重畳しているため、これらの信号線との間で寄生容量が発生し、その寄生容量による容量結合によって、画素電極の電位が変動する場合がある。
【0027】
表示装置における画素電極、ソース信号線およびゲート信号線の配置関係は、一般的に、基板側から順にゲート信号線、ソース信号線、画素電極の順となっている。そのため、ソース信号線と画素電極との距離は、ゲート信号線と画素電極との距離より近い。また、画素の形状は、ソース信号線方向に長さを有する長方形であるため、ソース信号線と重畳する画素電極の面積は、ゲート信号線と重畳する画素電極の面積より大きい。したがって、ソース信号線と画素電極との間の寄生容量は、ゲート信号線と画素電極との間の寄生容量より大きい。よって、寄生容量の影響は、ソース信号線との間に発生する寄生容量を考えればよい。
【0028】
液晶素子を備える表示装置では、液晶材料の劣化を防ぐため、交流電圧を印加することで駆動する交流駆動が行われている。図2は、画素の反転方式を示す模式図である。図2(A)−(D)に示す反転方式は、それぞれ左右に示す状態が入れ替わるように動作する。
【0029】
図2(A)は、フレーム反転駆動方式を示している。フレーム反転駆動方式は、フレームごとにすべてのサブ画素を反転させる方式である。なお、フレーム反転駆動方式は、フリッカが発生するため一般的には使用されない。図2(B)は、ゲートライン反転駆動方式を示している。ゲートライン反転駆動方式は、フレームごとに行方向のサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。図2(C)は、ソースライン反転駆動方式を示している。ソースライン反転駆動方式は、フレームごとに列方向のサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。図2(D)は、ドット反転駆動方式を示している。ドット反転駆動方式は、フレームごとに1つおきのサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。
【0030】
図1に示す画素において、画素電極70とソース信号線10,20との重畳により、寄生容量が発生する。ゲートライン反転駆動方式またはドット反転駆動方式で駆動する場合は、ゲート信号線30ごとにデータが反転するため、ソース信号線10,20に入力される信号は、ゲートライン期間(30μs程度)ごとに反転する。これにより、画素電極70は、寄生容量の影響をうけるが、周波数が高いため、人の眼には認識されない。
【0031】
一方、ソースライン反転駆動方式で駆動する場合は、ソース信号線10,20に入力される信号は、フレーム周期ごと(16ms程度)に反転する。これにより、画素電極70は、人の眼で認識されうる程度に寄生容量の影響をうけてしまう。
【0032】
以下、ソースライン反転駆動方式を前提に説明する。
【0033】
図5に示す画素の平面図においては、トランジスタ40の近傍では、画素電極70とソース信号線10とは重畳していない。したがって、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積は、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積より、大きい。すなわち、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量は、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量より、大きくなる。
【0034】
図3は、ソース信号線10,20と画素電極70との重畳により形成された寄生容量を示す回路図である。図3において、寄生容量51は、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量を表している。また、寄生容量52は、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量を表している。
【0035】
図3における、保持容量50,寄生容量51,52の容量値を、それぞれC50,C51,C52とする。また、ソース信号線10,20の振幅を、それぞれV10,V20とする。この場合、画素電極70に発生する振幅ΔVの値は、式(1)で表される。
【数1】
【0036】
ここで、ソース信号線10,20の振幅が等しく、V10=V20ならば、式(1)
は式(2)に変形できる。
【数2】
【0037】
式(2)より、寄生容量51,52の容量値が等しく、C51=C52ならば、画素電極70に発生する振幅ΔV=0となる。したがって、画素電極70に発生する振幅ΔVに起因する階調落ちなどを防ぐことができ、多階調表示を実現できる。
【0038】
寄生容量51,寄生容量52の容量値を等しくするために、図1において、ソース信号線20と重畳する画素電極70のうち、領域80の部分を削り、重畳面積を調整する。すなわち、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積が、等しくなるようにする。なお、これらの面積は厳密に一致しなくてもよい。例えば、10%程度の相違であれば許容される。さらに好ましいのは5%以内の相異である。
【0039】
これにより、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量と、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量は、等しくなる。その結果、クロストーク等の表示不良を防止することができる。
【0040】
ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積が等しくなれば、領域80は図1に示す位置に限られない。例えば、図4に示す位置であってもよい。また、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積を等しくするために、複数の領域80を形成してもよい。ただし、図1に示す領域80の位置であれば、ソース信号線10と画素電極70とが重畳しない位置と点対照になるため、表示ムラ等を防ぐ効果が得られる。
【0041】
次に、トランジスタ40に用いる酸化物半導体について、詳細に説明する。
【0042】
トランジスタ40に用いる酸化物半導体は、ドナーの原因と考えられる水素、水分、水酸基または水酸化物(水素化合物ともいう)などの不純物を意図的に排除したのち、これらの不純物の排除工程において同時に減少してしまう酸素を供給することで、高純度化および電気的にi型(真性)化されている。トランジスタ40の電気的特性の変動を抑制するためである。
【0043】
酸化物半導体に含まれる水素を極力除去することで、酸化物半導体中のキャリア密度は、1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、より好ましくは1×1010/cm3未満となる。
【0044】
ワイドギャップ半導体である酸化物半導体は、少数キャリア密度が低く、また、少数キャリアが誘起されにくい。そのため、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、トンネル電流が発生し難く、ひいては、オフ電流が流れ難いといえる。
【0045】
また、ワイドギャップ半導体である酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、衝突イオン化ならびにアバランシェ降伏が起きにくい。したがって、酸化物半導体を用いたトランジスタは、ホットキャリア劣化への耐性があるといえる。ホットキャリア劣化の主な要因は、アバランシェ降伏によってキャリアが増大し、高速に加速されたキャリアがゲート絶縁膜へ注入されることであるためである。
【0046】
なお、本明細書においてオフ電流とは、室温において、−20[V]以上−5[V]以下の範囲で任意のゲート電圧を印加したときに、しきい値電圧Vthが正であるnチャネル型トランジスタのソース−ドレイン間を流れる電流を指す。なお、室温とは、15℃以上25℃以下の温度を指す。
【0047】
本明細書に開示する酸化物半導体を用いたトランジスタ40のオフ電流は、室温において、チャネル幅W=1[μm]あたりの電流値が、100[aA/μm]以下、好ましくは1[aA/μm]以下、さらに好ましくは10[zA/μm]以下である。
【0048】
先述のとおり、高純度化および電気的にi型(真性)化された酸化物半導体を用いることにより、オフ電流値が極めて小さいトランジスタを提供できる。以下、評価用素子(TEGとも呼ぶ)を作製し、得られたオフ電流特性の測定結果について説明する。
【0049】
作製したTEGには、L/W=3[μm]/50[μm](膜厚d:30[nm])のトランジスタを200個並列に接続することにより、L/W=3[μm]/10000[μm]のトランジスタを設けた。
【0050】
図11は、TEGに設けたトランジスタの伝達特性[log(Id)−Vg]を示すグラフである。これらのグラフの、横軸はゲート電圧値Vg[V]を表し、縦軸はドレイン電流値Id[A]を表している。なお、基板温度は室温であり、ソース−ドレイン間電圧Vdは1[V](グラフは破線)または10[V](グラフは実線)のいずれかである。このとき、ソース−ゲート間電圧Vgを−20[V]〜+5[V]まで変化させ、ソース−ドレイン電流Idの変化特性を測定した。
【0051】
図11に示すように、チャネル幅Wが10000[μm]のトランジスタは、Vdが1[V]および10[V]のいずれにおいても、オフ電流は1×10−13[A]以下となっている。これは、測定機(半導体パラメータ・アナライザ、Agilent 4156C;Agilent社製)の分解能(100fA)以下である。このオフ電流値は、チャネル幅1[μm]あたりに換算すると、10[aA/μm]に相当する。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造の一例およびその作製方法の一例について説明する。
【0053】
図6(A),(B)は、トランジスタの平面および断面構造の一例を示す図である。図6(A)は、トップゲート構造のトランジスタの平面図である。図6(B)は、図6(A)中、直線C1−C2で示す部位の断面図である。
【0054】
トランジスタ410は、基板400上に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極(ソース電極およびドレイン電極の一方)415a、第2の電極(ソース電極およびドレイン電極の他方)415b、ゲート絶縁層402、およびゲート電極411を有し、第1の電極415a、第2の電極415bにはそれぞれ第1の配線層414a、第2の配線層414bが接して設けられ、電気的に接続されている。
【0055】
なお、図6(A)に示すトランジスタ410はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0056】
次に、図7(A)−(E)に基づいて、トランジスタ410を作製する方法について説明する。
【0057】
まず、基板400上に下地膜となる絶縁層407を形成する。
【0058】
基板400は、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上の基板を用いるとよい。
【0059】
絶縁層407は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層を用いる。絶縁層407の形成方法としては、プラズマCVD法、スパッタリング法等を用いることができるが、絶縁層407中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で絶縁層407を成膜することが好ましい。本実施の形態においては、絶縁層407としてスパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。具体的には、基板400を処理室へ搬送した後、水素および水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコンまたはシリコン酸化物のターゲットを用いて、基板400上に絶縁層407として酸化シリコン層を成膜する。なお、成膜時の基板400は室温でもよいし、加熱されていてもよい。
【0060】
成膜条件の具体例としては、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度108℃、基板400とターゲット間の距離(T−S間距離)を60mm、圧力を0.4Pa、高周波電源を1.5kWとし、酸素およびアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm)混合雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることもできる。また、スパッタガスとして酸素およびアルゴンの混合ガスに代えて酸素ガスを用いてもよい。ここで、絶縁層407を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスを用いる。
【0061】
また、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層407を成膜することにより、絶縁層407に水素、水、水酸基または水酸化物などが含まれないようにするとよい。
【0062】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いればよい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることできる。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを組み合わせて使用することが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、水素原子や、水(H2O)等の水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層407は、水素原子が極力取り込まれにくく好ましい。
【0063】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法と、DCスパッタリング法があり、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法もある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0064】
また、材料の異なるターゲットを複数設置可能な多元スパッタ装置もある。多元スパッタ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0065】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタ装置を用いることができる。
【0066】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法としては、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反応させ、それらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0067】
また、絶縁層407は単層構造に限定されず、積層構造でもよい。例えば、基板400側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、または窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層とが積層した構造としてもよい。
【0068】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に、水素および水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。また、窒化シリコン層を形成する場合も、成膜時に基板を加熱してもよい。
【0069】
次に、絶縁層407上に、酸化物半導体層を、スパッタリング法により形成する。なお、酸化物半導体層の成膜前には、絶縁層407が形成された基板400を予備加熱するとよい。この予備加熱により、基板400に吸着した水素、水分などの不純物は脱離し、排気される。酸化物半導体層に、水素、水分および水酸基が極力含まれないようにするためである。
【0070】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により成膜する前に逆スパッタを行い、絶縁層407の表面に付着しているゴミを除去するとよい。逆スパッタとは、例えばアルゴン雰囲気下で、高周波電源を用いて基板側に電圧を印加することによって、基板近傍にプラズマを形成し、表面を改質する方法である。その際、ターゲット側には、電圧を印加しない。
【0071】
酸化物半導体成膜用ターゲットとしては、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。例えば、組成比として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]などを用いることができる。また、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有する金属酸化物のターゲットを用いることもできる。また、SiO2を2重量%以上10重量%以下含む金属酸化物のターゲットを用いることもできる。酸化物半導体ターゲットの充填率は90%以上100%以下であればよく、95%以上99.9%以下が好適である。充填率の高い酸化物半導体ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0072】
なお、酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスおよび酸素混合雰囲気下で成膜するとよい。酸化物半導体層の成膜には、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスをスパッタガスとして用いる。
【0073】
残留水分が除去され、かつ、減圧状態に保持された処理室内に基板400を保持し、金属酸化物をターゲットとして基板400上に酸化物半導体層を成膜する。成膜の際、水素および水分が除去されたスパッタガスを導入する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いるとよい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体層成膜時に基板を室温状態のままとするか、または400℃未満の温度に加熱してもよい。
【0074】
酸化物半導体層の成膜条件の一例としては、基板温度を室温、基板とターゲットの間との距離を110mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素およびアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)混合雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0075】
以上では、酸化物半導体として、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物を用いる例を示したが、その他にも、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−Oや、他の三元系金属酸化物であるIn−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O、Sn−Zn−O、Al−Zn−O、Zn−Mg−O、Sn−Mg−O、In−Mg−Oや、In−O、Sn−O、Zn−Oなどの酸化物半導体を用いることができる。また、上記酸化物半導体は珪素を含んでいてもよい。また、これらの酸化物半導体は、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。または、非単結晶であってもよいし、単結晶であってもよい。
【0076】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される薄膜を用いることもできる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素である。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoが挙げられる。
【0077】
次に、酸化物半導体層を第1のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層412に加工する(図7(A)参照)。なお、島状の酸化物半導体層412を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0078】
なお、酸化物半導体層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0079】
ドライエッチングを行う場合、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0080】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、塩化硼素(BCl3)、塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)など)が好ましいが、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF4)、弗化硫黄(SF6)、弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、を用いることもできる。また、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス等を用いることもできる。
【0081】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。エッチングの条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)については、酸化物半導体の材料に合わせて適宜調節すればよい。
【0082】
また、ウェットエッチングを行う場合、エッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれる材料(例えば、インジウム等のレアメタル)を回収して再利用することにより、資源を有効活用することができる。
【0083】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体層を島状の酸化物半導体層412に加工する。
【0084】
次に、酸化物半導体層412に第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層412から水素、水、および水酸基等を除去することができる。
【0085】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体としては、不活性ガス(代表的には、アルゴン等の希ガス)または窒素ガスを用いることができる。
【0086】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いることにより、短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0087】
第1の加熱処理の際の雰囲気には、水、水素などが含まれないようにすることが好ましい。または、加熱処理装置の装置内に導入する窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0088】
なお、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、第1の加熱処理により島状の酸化物半導体層412が結晶化し、微結晶化または多結晶化する場合もある。例えば、結晶化率が80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。ただし、第1の加熱処理を行っても島状の酸化物半導体層412が結晶化せず、非晶質の酸化物半導体層となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体層の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる場合もある。
【0089】
酸化物半導体層に対する第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体層に行ってもよい。この場合、第1の加熱処理後に、加熱処理装置から基板を取り出し、第1のフォトリソグラフィ工程を行う。また、第1の加熱処理は、酸化物半導体層上にソース電極およびドレイン電極を積層させた後に行ってもよい。同様に、第1の加熱処理は、ソース電極およびドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後に行ってもよい。
【0090】
第1の加熱処理においては、酸化物半導体層中から水素、水、および水酸基等の不純物を除去することを主な目的としているが、この加熱処理の際に酸化物半導体層中に酸素欠損が生じてしまうおそれがある。このため、第1の加熱処理の後に、加酸化処理を行うことが好ましい。加酸化処理の具体例としては、第1の加熱処理の後、連続して酸素雰囲気または窒素および酸素を含む混合雰囲気(例えば、窒素:酸素の体積比=4:1)での加熱処理を行う方法が挙げられる。また、酸素雰囲気下でのプラズマ処理を行う方法を用いることもできる。
【0091】
第1の加熱処理は、酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する。
【0092】
次に、絶縁層407および酸化物半導体層412上に、導電膜を形成する。導電膜は、スパッタリング法や真空蒸着法により形成すればよい。導電膜の材料としては、アルミニウム、銅、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、イットリウムなどの金属材料、該金属材料を成分とする合金材料、導電性を有する金属酸化物等が挙げられる。また、ヒロックやウィスカーの発生を防止するために、例えば、シリコン、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウム、イットリウムなどの元素が添加されたアルミニウム材料を用いてもよい。この場合、耐熱性を向上させることができる。導電性を有する金属酸化物としては、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)または前記金属酸化物材料にシリコンもしくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0093】
また、導電膜は、単層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層した2層構造、チタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を積層した3層構造が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属層と、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層とが積層された構成としてもよい。
【0094】
本実施の形態では、導電膜としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0095】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極415aおよび第2の電極415bを形成する。その後、レジストマスクは除去する(図7(B)参照)。第1の電極415aは、ソース電極およびドレイン電極の一方として機能する。第2の電極415bは、ソース電極およびドレイン電極の他方として機能する。ここで、第1の電極415aおよび第2の電極415bの端部が、テーパ形状となるようにエッチングすると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上する。なお、第1の電極415a、第2の電極415bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0096】
また、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層412が除去されてその下の絶縁層407が露出しないようにそれぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層412としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)を用いることにより、酸化物半導体層412の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層412の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0097】
第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層412上で隣り合う第1の電極415aの下端部と第2の電極415bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能である。この場合、トランジスタの動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0098】
次に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極415a、第2の電極415b上にゲート絶縁層402を形成する(図7(C)参照)。
【0099】
ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。
【0100】
ゲート絶縁層402を形成する際は、水素が含まれないようにすることが好ましい。このため、成膜時の雰囲気に水素を極力減らすことが可能なスパッタリング法でゲート絶縁層402を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素、または酸素およびアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0101】
また、ゲート絶縁層402は、基板400側から順に酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiOx(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素およびアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)混合雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0102】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層402の一部を除去することにより、第1の電極415a、第2の電極415bに達する開口421a、421bを形成する(図7(D)参照)。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成する場合、フォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0103】
次に、ゲート絶縁層402、および開口421a、421b上に導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bを形成する。
【0104】
ゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bの材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層または積層して形成することができる。ゲート電極411、第1の配線層414a、および第2の配線層414bの2層構造の具体例としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上に窒化チタン層もしくは窒化タンタル層が積層された構造、または窒化チタン層上にモリブデン層が積層された構造が挙げられる。また、3層構造の具体例としては、タングステン層または窒化タングステン層と、アルミニウムおよびシリコンの合金層またはアルミニウムおよびチタンの合金層と、窒化チタン層またはチタン層とが積層された構造が挙げられる。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極を形成することもできる。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0105】
本実施の形態ではゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bとして、スパッタリング法により形成した膜厚150nmのチタン膜を用いる。
【0106】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。なお、第2の加熱処理は、トランジスタ410上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0107】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を更に行ってもよい。この加熱処理は、一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回繰り返して行ってもよい。また、この加熱処理を保護絶縁層や平坦化絶縁層の形成前に減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができるので好ましい。
【0108】
以上の工程により、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された、高純度の酸化物半導体層412を有するトランジスタ410を形成することができる(図7(E)参照)。トランジスタ410は、実施の形態1で説明したトランジスタ等に適用することができる。
【0109】
また、トランジスタ410上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。保護絶縁層としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。また、平坦化絶縁層としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることもできる。また、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0110】
ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いてもよい。また、有機基はフルオロ基を有していてもよい。
【0111】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0112】
上述したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、酸化物半導体層中の水素および水素化物の濃度を低減することができる。
【0113】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例について説明する。
【0115】
図8(A)−(E)にトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。図8(E)に示すトランジスタ390は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ390を、実施の形態1で説明したトランジスタ等に用いることができる。なお、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0116】
以下、図8(A)−(E)に基づいて、基板394上にトランジスタ390を作製する工程について説明する。
【0117】
まず、基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極391を形成する。形成されたゲート電極の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0118】
ここで、基板394の材料については、上記実施の形態で説明した基板400と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極391の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明したゲート電極411と同様のものを採用することができる。
【0119】
なお、基板394とゲート電極391との間に、下地膜となる絶縁膜を設けてもよい。下地膜は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜から選ばれた一からなる単層構造、またはこれらから選ばれた複数の膜による積層構造により形成すればよい。
【0120】
次に、ゲート電極391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0121】
ゲート絶縁層397は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層397中に水素が多量に含まれないようにするために、スパッタリング法でゲート絶縁層397を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素または、酸素およびアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0122】
ゲート絶縁層397は、ゲート電極391側から順に窒化シリコン層と酸化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiOx(x>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層とすればよい。
【0123】
次に、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体層393を形成する(図8(A)参照)。
【0124】
ここで、酸化物半導体層393の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明した酸化物半導体層(島状の酸化物半導体層412)と同様のものを採用することができる。
【0125】
例えば、酸化物半導体層393をスパッタリング法により形成する際の成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層393の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0126】
なお、酸化物半導体層393を成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。
【0127】
また、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層393に水素、水酸基および水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極391が形成された基板394、またはゲート電極391とゲート絶縁層397が形成された基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下とすればよい。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。また、この予備加熱は、保護絶縁層396の成膜前に、ゲート電極391、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層399、第1の電極395aおよび第2の電極395bまでが形成された基板394に対して同様に行ってもよい。
【0128】
次に、酸化物半導体層を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層399に加工する(図8(B)参照)。なお、島状の酸化物半導体層399の加工方法については、上記実施の形態で説明した島状の酸化物半導体層412を形成する際の加工方法と同様のものを採用することができる。
【0129】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層399およびゲート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0130】
次に、ゲート絶縁層397および酸化物半導体層399上に導電膜を形成する。導電膜の成膜方法は、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いればよい。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金、またはこれらの元素を複数組み合わせた合金等を用いることができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数から選択された材料を含んでもよい。また、透光性を有する導電膜を用いてもよい。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0131】
また、導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。
【0132】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極395a、第2の電極395bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(C)参照)。ここで、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層399が除去されてその下のゲート絶縁層397が露出しないようにそれぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層399としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)を用いることにより、酸化物半導体層399の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第3のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層399の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0133】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層399上で隣り合う第1の電極395aの下端部と第2の電極395bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能である。この場合、トランジスタの動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0134】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数および工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0135】
上記エッチングを行って第1の電極395a、第2の電極395bを形成した後、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層399の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。本実施の形態では、上記いずれかのプラズマ処理を行う。
【0136】
次に、プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、露出されている酸化物半導体層399、第1の電極395a、および第2の電極395bに接する保護絶縁層396を形成する(図8(D)参照)。このとき、酸化物半導体層399および保護絶縁層396に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層396を成膜することが好ましい。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した保護絶縁層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0137】
本実施の形態では、保護絶縁層396として酸化物絶縁層を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層396の形成方法として、島状の酸化物半導体層399、第1の電極395a、および第2の電極395bが形成された基板394を室温状態のまま、または100℃未満の温度に加熱し、水素および水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて、酸化シリコン層を成膜する。なお、酸化物絶縁層として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0138】
上記の成膜条件の一例としては、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗率0.01Ωcm)を用い、基板とターゲット間の距離(T−S間距離)を89mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスDCスパッタリング法により、酸化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層の膜厚は300nmとする。なお、シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を用いることもできる。スパッタガスは、酸素、または酸素およびアルゴンの混合ガスを用いればよい。
【0139】
さらに、保護絶縁層396と酸化物半導体層399とが接した状態で100℃ないし400℃で加熱処理を行うことが好ましい。本実施の形態における保護絶縁層396は欠陥を多く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸基または水素化物などの不純物を保護絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0140】
以上の工程により、水素、水分、水酸基または水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層392を有するトランジスタ390を形成することができる(図8(E)参照)。本実施の形態で説明したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することにより、該酸化物半導体層中の水素および水素化物の濃度を低減することができる。この結果、真性または実質的に真性な半導体が得られる。
【0141】
なお、保護絶縁層396上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層396上に絶縁層398を形成する。絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを用いればよい。
【0142】
絶縁層398の形成方法としては、ゲート電極391、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層399、第1の電極395a、第2の電極395b、及び保護絶縁層396が形成された基板394を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素および水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、保護絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層398を成膜することが好ましい。絶縁層398の成膜時に100℃〜400℃に基板394を加熱することにより、酸化物半導体層399中に含まれる水素または水分を絶縁層398に拡散させることができる。この場合、保護絶縁層396の形成直後に加熱処理を行わなくてもよい。
【0143】
また、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を形成する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを、窒素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止できる。なお、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素もしくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃ないし400℃)を行うことがさらに好ましい。
【0144】
保護絶縁層396の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0145】
上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、400℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができるので、表示パネルを製造するためのエネルギー消費を低減することができる。
【0146】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0147】
(実施の形態4)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例について説明する。
【0148】
図9(A)−(D)にトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。図9(D)に示すトランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ360を、実施の形態1で説明したトランジスタ等に用いることができる。なお、トランジスタ360はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0149】
以下、図9(A)−(D)に基づいて、基板320上にトランジスタ360を作製する工程について説明する。
【0150】
まず、基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極361を形成する。基板320の材料については、上記実施の形態で説明した基板394と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極361の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明したゲート電極391と同様のものを採用することができる。
【0151】
次に、ゲート電極361上にゲート絶縁層322を形成する。ゲート絶縁層322の材料については、上記実施の形態で説明したゲート絶縁層397と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、ゲート絶縁層322としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0152】
次に、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体層を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層332に加工する。島状の酸化物半導体層の材料や成膜方法、加工方法等は、上記実施の形態で説明した島状の酸化物半導体層399と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0153】
次に、酸化物半導体層332の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層332に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う(図9(A)参照)。なお、この工程によって、酸化物半導体層332に酸素欠損が生じ、低抵抗化する。
【0154】
次に、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。または、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0155】
次に、ゲート絶縁層322、および酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0156】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366として、膜厚200nmの酸化シリコン膜をスパッタリング法により成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化シリコン膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)および酸素混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。例えば、シリコンターゲットを用いて、酸素および窒素混合雰囲気下でスパッタリング法により酸化シリコンを形成することができる。酸化物半導体層332に接して形成する酸化物絶縁層366としては、酸化シリコン以外にも、水分や、水素イオンや、OH−などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用いることができる。代表的には、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いることができる。
【0157】
このとき、酸化物半導体層332および酸化物絶縁層366に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜することが好ましい。なお、処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0158】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うことが好ましい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱される。このとき、酸化物絶縁層366で覆われている領域では、酸化物絶縁層から酸素が供給されるため、高抵抗化する。
【0159】
一方、酸化物絶縁層366によって覆われていない領域の、露出された酸化物半導体層332は、窒素、不活性ガス雰囲気下、または減圧下で加熱処理を行うと、酸素欠損のため、さらに低抵抗化することができる。
【0160】
すなわち、第2の加熱処理により、酸化物半導体層332は、抵抗の異なる領域(図9(B)においては斜線領域および白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0161】
次に、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、および酸化物絶縁層366上に、導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極365a、第2の電極365bを形成した後、レジストマスクを除去する(図9(C)参照)。
【0162】
第1の電極365a、第2の電極365bの材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金か、これらの元素を組み合わせた合金等が挙げられる。また、金属導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。
【0163】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極361と重なるチャネル形成領域363は、真性または実質的に真性となり、第1の電極365aに重なる低抵抗領域364aと、第2の電極365bに重なる低抵抗領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程により、トランジスタ360が形成される。
【0164】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層に残存する微量の水素が酸化物絶縁層中にとりこまれ、真性または実質的に真性な酸化物半導体層を得ることができる。
【0165】
なお、第2の電極365b(および第1の電極365a)と重畳した酸化物半導体層において低抵抗領域364b(および低抵抗領域364a)を形成することにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、低抵抗領域364bを形成することで、第2の電極365bから低抵抗領域364b、チャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、第2の電極365bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極361と第2の電極365bとの間に高電界が印加されても低抵抗領域がバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0166】
次に、第1の電極365a、第2の電極365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成する(図9(D)参照)。
【0167】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0168】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0169】
(実施の形態5)
本実施の形態は、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ350は、実施の形態1のトランジスタ等に用いることができる。
【0170】
図10(D)に示すトランジスタ350はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0171】
以下、図10(A)−(D)に基づいて、基板340上にトランジスタ350を作製する方法を説明する。
【0172】
まず、基板340上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極351を形成する。本実施の形態では、ゲート電極351として、膜厚150nmのタングステン膜を、スパッタリング法を用いて形成する。
【0173】
次に、ゲート電極351上にゲート絶縁層342を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁層342としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素膜を形成する。
【0174】
次に、ゲート絶縁層342に導電膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極355a、第2の電極355bを形成した後、レジストマスクを除去する(図10(A)参照)。
【0175】
次に酸化物半導体層345を形成する(図10(B)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体層345としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。続いて、酸化物半導体層345を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。
【0176】
酸化物半導体層345を成膜する工程においては、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体層345を成膜することにより、酸化物半導体層345に水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0177】
次に、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うために、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層346を得る(図10(C)参照)。
【0178】
また、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0179】
次に、酸化物半導体層346に接する酸化物絶縁層356を形成する。酸化物絶縁層356は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、酸化物絶縁層356に水、水素等の不純物を混入させない方法(例えば、スパッタリング法)を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層356に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、または水素による酸化物半導体層中の酸素を引き抜きが生じ、酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。このため、酸化物絶縁層356はできるだけ水素を含まない膜になるような成膜方法を用いることが重要である。
【0180】
なお、酸化物絶縁層356の材料や成膜方法等については、上記実施の形態における保護絶縁層396と同様のものを採用することができる。
【0181】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部が酸化物絶縁層356と接した状態で加熱される。
【0182】
以上の工程を経ることによって、第1の加熱処理の際に脱水化または脱水素化のために低抵抗化した酸化物半導体層が、酸素過剰な状態となる。その結果、真性または実質的に真性な酸化物半導体層352が形成される。以上の工程により、トランジスタ350が形成される。
【0183】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層に残存する微量の水素が酸化物絶縁層中にとりこまれ、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって表示装置の信頼性を向上できる。
【0184】
なお、酸化物絶縁層356上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、酸化物絶縁層356上に絶縁層343を形成する(図10(D)参照)。絶縁層343の材料や成膜方法等については、上記実施の形態における絶縁層398と同様のものを採用することができる。
【0185】
また、絶縁層343上の表面を平坦化する目的で、平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0186】
以上のような方法により、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【符号の説明】
【0187】
10,20 ソース信号線
30 ゲート信号線
40 トランジスタ
50 保持容量
51,52 寄生容量
60 容量線
70 画素電極
【技術分野】
【0001】
技術分野は、表示装置に関する。特に、多階調表示を実現できる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、アモルファスシリコンまたはポリシリコンを用いたトランジスタで駆動するタイプが主流である。しかし、これらの表示装置は、トランジスタのオフ電流の影響により、多階調表示を実現することが困難であった。
【0003】
表示装置における画素の一例として、トランジスタ100、液晶素子110および保持容量120を備える画素を図12に示す。トランジスタ100は、アモルファスシリコントランジスタまたはポリシリコントランジスタである。各画素において、トランジスタ100より液晶素子110および保持容量120に対して、画像データを書き込むことによって、液晶素子110に電界が与えられ画像表示を行うことが可能となる。
【0004】
しかし、トランジスタ100に存在するオフ電流によって、液晶素子110および保持容量120に蓄えられた電荷は放電し、それに伴い画素の電圧も変動してしまう。
【0005】
各画素において、保持容量C,電圧変動V,オフ電流iおよび保持時間Tは、CV=iTの関係を満たす。したがって、トランジスタ100のオフ電流i=0.1[pA]、保持容量120の静電容量C=0.1[pF]、1フレーム期間T=16.6[ms]とした場合、静電容量と電圧変動の積はオフ電流と保持時間の積と等しいので、1フレーム期間中の画素の電圧変動Vは、16.6[mV]となる。
【0006】
この表示装置が256(=28)階調であり、かつ、画素における液晶素子の最大駆動電圧が5[V]であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約20[mV]である。つまり、先の計算により求めた画素の電圧変動V=16.6[mV]は、およそ1階調分の階調電圧の変動に相当する。
【0007】
また、表示装置が1024(=210)階調であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約5[mV]である。したがって、画素の電圧変動V=16.6[mV]は、およそ4階調分の階調電圧の変動に相当し、オフ電流による電圧変動の影響を無視することはできない。
【0008】
特許文献1では、ポリシリコントランジスタを用いた表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−110530号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
画素の電圧変動を低減することにより、多階調表示を実現できる表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、並設された複数本のソース信号線と、ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線と、ソース信号線とゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタを介して、ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極と、を備え、隣接する一対のソース信号線間に設けられる画素電極の側縁部を、ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方のソース信号線との重畳面積を、他方のソース信号線との重畳面積と等しくすることを特徴とする表示装置である。
【0012】
酸化物半導体は真性または実質的に真性であり、トランジスタの単位チャネル幅あたりのオフ電流が100aA/μm以下(aは10−18を表す)、好ましくは1aA/μm以下、さらに好ましくは1zA/μm以下(zは10−21を表す)であることを特徴とする。なお、本明細書において、「真性」とは、キャリア濃度が1×1012/cm3未満である半導体の状態を指し、「実質的に真性」とは、キャリア濃度が1×1012/cm3以上1×1014/cm3未満である半導体の状態を指すものとする。
【発明の効果】
【0013】
画素の電圧変動を低減することにより、多階調表示を実現できる。さらに、信号線と画素電極との間の寄生容量の影響を減らすことにより、クロストーク等を抑えた表示品位の高い表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】表示装置の構成例を示す平面図
【図2】画素の反転方式を示す模式図
【図3】ソース信号線10,20と画素電極70との重畳により形成された寄生容量を示す回路図
【図4】表示装置の構成例を示す平面図
【図5】表示装置の構成例を示す平面図
【図6】トランジスタの構造の一例を示す図
【図7】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図8】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図9】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図10】トランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す図
【図11】トランジスタの電気特性を示すグラフ
【図12】画素の構成例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、開示される発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。ただし、発明は以下の説明に限定されず、その発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その態様および詳細をさまざまに変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、表示装置における画素の構成例を示す平面図である。この表示装置は、ソース信号線10,20,ゲート信号線30,トランジスタ40,保持容量50,容量線60および画素電極70を備えている。
【0017】
この表示装置には、ソース信号線10,20を含む複数のソース信号線が並設されている。また、これらのソース信号線に対して、ゲート信号線30を含む複数のゲート信号線が、マトリクス状に並設されている。
【0018】
ソース信号線10とゲート信号線30との交差部の近傍に、スイッチング素子としてのトランジスタ40が配置されている。トランジスタ40に隣接して保持容量50および容量線60が配置されている。
【0019】
画素電極70の側縁部は、隣接する一対のソース信号線10,20および隣接する一対のゲート信号線30の側縁に、それぞれ重畳するように形成されている。
【0020】
トランジスタ40は、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを特徴とする。真性または実質的に真性である酸化物半導体を用いることで、トランジスタ40のオフ電流を、100[aA]以下、好ましくは1[aA]以下、さらに好ましくは10[zA]以下とすることができる。ただし、この数値は、トランジスタ40のチャネル幅Wを1[μm]とし、室温で測定した場合の数値である。
【0021】
図1に示す表示装置の画素において、トランジスタ40のオフ電流i,保持容量50の静電容量C,電圧変動Vおよび保持時間Tは、CV=iTの関係を満たす。したがって、トランジスタ40のオフ電流iを低減することにより、トランジスタ40がオフの状態における、電圧変動Vを低減することが可能となる。
【0022】
具体的に、トランジスタ40のオフ電流i=1[aA],保持容量50の静電容量C=0.1[pF],1フレーム期間T=16.6[ms]である場合、静電容量と電圧変動の積はオフ電流と保持時間の積と等しいので、トランジスタ40のオフ電流による画素の電圧変動Vは、16.6×10−5[mV]となる。
【0023】
この表示装置が256(=28)階調であり、かつ、画素における液晶素子の最大駆動電圧が5[V]であるとする。この場合、1階調分の階調電圧は約20[mV]である。つまり、ここで求めた画素の電圧変動V=16.6×10−5[mV]は、1階調分の階調電圧に対して極めて小さい値である。
【0024】
また、表示装置の階調数をさらに増加した場合でも、この画素の電圧変動Vは、階調電圧と比較してはるかに小さい値である。すなわち、トランジスタ40のオフ電流による画素の電圧変動は、実質的にゼロとみなすことができる。
【0025】
続いて、表示装置における液晶素子のリーク電流による、画素の電圧変動Vを考える。一般的な液晶素子のリーク電流は1[fA]程度であるため、この値を用いると、電圧変動V=0.166[mV]と求まる。この値は、表示装置が約30000階調に及ぶと、電圧変動Vの影響が生じることを意味している。したがって、通常の液晶素子では、そのリーク電流は問題とはならない。
【0026】
表示装置における画素電極は、ソース信号線およびゲート信号線などの信号線と重畳しているため、これらの信号線との間で寄生容量が発生し、その寄生容量による容量結合によって、画素電極の電位が変動する場合がある。
【0027】
表示装置における画素電極、ソース信号線およびゲート信号線の配置関係は、一般的に、基板側から順にゲート信号線、ソース信号線、画素電極の順となっている。そのため、ソース信号線と画素電極との距離は、ゲート信号線と画素電極との距離より近い。また、画素の形状は、ソース信号線方向に長さを有する長方形であるため、ソース信号線と重畳する画素電極の面積は、ゲート信号線と重畳する画素電極の面積より大きい。したがって、ソース信号線と画素電極との間の寄生容量は、ゲート信号線と画素電極との間の寄生容量より大きい。よって、寄生容量の影響は、ソース信号線との間に発生する寄生容量を考えればよい。
【0028】
液晶素子を備える表示装置では、液晶材料の劣化を防ぐため、交流電圧を印加することで駆動する交流駆動が行われている。図2は、画素の反転方式を示す模式図である。図2(A)−(D)に示す反転方式は、それぞれ左右に示す状態が入れ替わるように動作する。
【0029】
図2(A)は、フレーム反転駆動方式を示している。フレーム反転駆動方式は、フレームごとにすべてのサブ画素を反転させる方式である。なお、フレーム反転駆動方式は、フリッカが発生するため一般的には使用されない。図2(B)は、ゲートライン反転駆動方式を示している。ゲートライン反転駆動方式は、フレームごとに行方向のサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。図2(C)は、ソースライン反転駆動方式を示している。ソースライン反転駆動方式は、フレームごとに列方向のサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。図2(D)は、ドット反転駆動方式を示している。ドット反転駆動方式は、フレームごとに1つおきのサブ画素の正極と負極を反転させる方式である。
【0030】
図1に示す画素において、画素電極70とソース信号線10,20との重畳により、寄生容量が発生する。ゲートライン反転駆動方式またはドット反転駆動方式で駆動する場合は、ゲート信号線30ごとにデータが反転するため、ソース信号線10,20に入力される信号は、ゲートライン期間(30μs程度)ごとに反転する。これにより、画素電極70は、寄生容量の影響をうけるが、周波数が高いため、人の眼には認識されない。
【0031】
一方、ソースライン反転駆動方式で駆動する場合は、ソース信号線10,20に入力される信号は、フレーム周期ごと(16ms程度)に反転する。これにより、画素電極70は、人の眼で認識されうる程度に寄生容量の影響をうけてしまう。
【0032】
以下、ソースライン反転駆動方式を前提に説明する。
【0033】
図5に示す画素の平面図においては、トランジスタ40の近傍では、画素電極70とソース信号線10とは重畳していない。したがって、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積は、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積より、大きい。すなわち、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量は、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量より、大きくなる。
【0034】
図3は、ソース信号線10,20と画素電極70との重畳により形成された寄生容量を示す回路図である。図3において、寄生容量51は、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量を表している。また、寄生容量52は、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量を表している。
【0035】
図3における、保持容量50,寄生容量51,52の容量値を、それぞれC50,C51,C52とする。また、ソース信号線10,20の振幅を、それぞれV10,V20とする。この場合、画素電極70に発生する振幅ΔVの値は、式(1)で表される。
【数1】
【0036】
ここで、ソース信号線10,20の振幅が等しく、V10=V20ならば、式(1)
は式(2)に変形できる。
【数2】
【0037】
式(2)より、寄生容量51,52の容量値が等しく、C51=C52ならば、画素電極70に発生する振幅ΔV=0となる。したがって、画素電極70に発生する振幅ΔVに起因する階調落ちなどを防ぐことができ、多階調表示を実現できる。
【0038】
寄生容量51,寄生容量52の容量値を等しくするために、図1において、ソース信号線20と重畳する画素電極70のうち、領域80の部分を削り、重畳面積を調整する。すなわち、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積が、等しくなるようにする。なお、これらの面積は厳密に一致しなくてもよい。例えば、10%程度の相違であれば許容される。さらに好ましいのは5%以内の相異である。
【0039】
これにより、ソース信号線10と画素電極70との重畳により形成される寄生容量と、ソース信号線20と画素電極70との重畳により形成される寄生容量は、等しくなる。その結果、クロストーク等の表示不良を防止することができる。
【0040】
ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積が等しくなれば、領域80は図1に示す位置に限られない。例えば、図4に示す位置であってもよい。また、ソース信号線10と重畳する画素電極70の面積と、ソース信号線20と重畳する画素電極70の面積を等しくするために、複数の領域80を形成してもよい。ただし、図1に示す領域80の位置であれば、ソース信号線10と画素電極70とが重畳しない位置と点対照になるため、表示ムラ等を防ぐ効果が得られる。
【0041】
次に、トランジスタ40に用いる酸化物半導体について、詳細に説明する。
【0042】
トランジスタ40に用いる酸化物半導体は、ドナーの原因と考えられる水素、水分、水酸基または水酸化物(水素化合物ともいう)などの不純物を意図的に排除したのち、これらの不純物の排除工程において同時に減少してしまう酸素を供給することで、高純度化および電気的にi型(真性)化されている。トランジスタ40の電気的特性の変動を抑制するためである。
【0043】
酸化物半導体に含まれる水素を極力除去することで、酸化物半導体中のキャリア密度は、1×1014/cm3未満、好ましくは1×1012/cm3未満、より好ましくは1×1010/cm3未満となる。
【0044】
ワイドギャップ半導体である酸化物半導体は、少数キャリア密度が低く、また、少数キャリアが誘起されにくい。そのため、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、トンネル電流が発生し難く、ひいては、オフ電流が流れ難いといえる。
【0045】
また、ワイドギャップ半導体である酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、衝突イオン化ならびにアバランシェ降伏が起きにくい。したがって、酸化物半導体を用いたトランジスタは、ホットキャリア劣化への耐性があるといえる。ホットキャリア劣化の主な要因は、アバランシェ降伏によってキャリアが増大し、高速に加速されたキャリアがゲート絶縁膜へ注入されることであるためである。
【0046】
なお、本明細書においてオフ電流とは、室温において、−20[V]以上−5[V]以下の範囲で任意のゲート電圧を印加したときに、しきい値電圧Vthが正であるnチャネル型トランジスタのソース−ドレイン間を流れる電流を指す。なお、室温とは、15℃以上25℃以下の温度を指す。
【0047】
本明細書に開示する酸化物半導体を用いたトランジスタ40のオフ電流は、室温において、チャネル幅W=1[μm]あたりの電流値が、100[aA/μm]以下、好ましくは1[aA/μm]以下、さらに好ましくは10[zA/μm]以下である。
【0048】
先述のとおり、高純度化および電気的にi型(真性)化された酸化物半導体を用いることにより、オフ電流値が極めて小さいトランジスタを提供できる。以下、評価用素子(TEGとも呼ぶ)を作製し、得られたオフ電流特性の測定結果について説明する。
【0049】
作製したTEGには、L/W=3[μm]/50[μm](膜厚d:30[nm])のトランジスタを200個並列に接続することにより、L/W=3[μm]/10000[μm]のトランジスタを設けた。
【0050】
図11は、TEGに設けたトランジスタの伝達特性[log(Id)−Vg]を示すグラフである。これらのグラフの、横軸はゲート電圧値Vg[V]を表し、縦軸はドレイン電流値Id[A]を表している。なお、基板温度は室温であり、ソース−ドレイン間電圧Vdは1[V](グラフは破線)または10[V](グラフは実線)のいずれかである。このとき、ソース−ゲート間電圧Vgを−20[V]〜+5[V]まで変化させ、ソース−ドレイン電流Idの変化特性を測定した。
【0051】
図11に示すように、チャネル幅Wが10000[μm]のトランジスタは、Vdが1[V]および10[V]のいずれにおいても、オフ電流は1×10−13[A]以下となっている。これは、測定機(半導体パラメータ・アナライザ、Agilent 4156C;Agilent社製)の分解能(100fA)以下である。このオフ電流値は、チャネル幅1[μm]あたりに換算すると、10[aA/μm]に相当する。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造の一例およびその作製方法の一例について説明する。
【0053】
図6(A),(B)は、トランジスタの平面および断面構造の一例を示す図である。図6(A)は、トップゲート構造のトランジスタの平面図である。図6(B)は、図6(A)中、直線C1−C2で示す部位の断面図である。
【0054】
トランジスタ410は、基板400上に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極(ソース電極およびドレイン電極の一方)415a、第2の電極(ソース電極およびドレイン電極の他方)415b、ゲート絶縁層402、およびゲート電極411を有し、第1の電極415a、第2の電極415bにはそれぞれ第1の配線層414a、第2の配線層414bが接して設けられ、電気的に接続されている。
【0055】
なお、図6(A)に示すトランジスタ410はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0056】
次に、図7(A)−(E)に基づいて、トランジスタ410を作製する方法について説明する。
【0057】
まず、基板400上に下地膜となる絶縁層407を形成する。
【0058】
基板400は、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上の基板を用いるとよい。
【0059】
絶縁層407は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層を用いる。絶縁層407の形成方法としては、プラズマCVD法、スパッタリング法等を用いることができるが、絶縁層407中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で絶縁層407を成膜することが好ましい。本実施の形態においては、絶縁層407としてスパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。具体的には、基板400を処理室へ搬送した後、水素および水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコンまたはシリコン酸化物のターゲットを用いて、基板400上に絶縁層407として酸化シリコン層を成膜する。なお、成膜時の基板400は室温でもよいし、加熱されていてもよい。
【0060】
成膜条件の具体例としては、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度108℃、基板400とターゲット間の距離(T−S間距離)を60mm、圧力を0.4Pa、高周波電源を1.5kWとし、酸素およびアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm)混合雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、ターゲットとして石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることもできる。また、スパッタガスとして酸素およびアルゴンの混合ガスに代えて酸素ガスを用いてもよい。ここで、絶縁層407を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスを用いる。
【0061】
また、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層407を成膜することにより、絶縁層407に水素、水、水酸基または水酸化物などが含まれないようにするとよい。
【0062】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いればよい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることできる。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを組み合わせて使用することが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、水素原子や、水(H2O)等の水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層407は、水素原子が極力取り込まれにくく好ましい。
【0063】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法と、DCスパッタリング法があり、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法もある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0064】
また、材料の異なるターゲットを複数設置可能な多元スパッタ装置もある。多元スパッタ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0065】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタ装置を用いることができる。
【0066】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法としては、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反応させ、それらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0067】
また、絶縁層407は単層構造に限定されず、積層構造でもよい。例えば、基板400側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、または窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層とが積層した構造としてもよい。
【0068】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に、水素および水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。また、窒化シリコン層を形成する場合も、成膜時に基板を加熱してもよい。
【0069】
次に、絶縁層407上に、酸化物半導体層を、スパッタリング法により形成する。なお、酸化物半導体層の成膜前には、絶縁層407が形成された基板400を予備加熱するとよい。この予備加熱により、基板400に吸着した水素、水分などの不純物は脱離し、排気される。酸化物半導体層に、水素、水分および水酸基が極力含まれないようにするためである。
【0070】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により成膜する前に逆スパッタを行い、絶縁層407の表面に付着しているゴミを除去するとよい。逆スパッタとは、例えばアルゴン雰囲気下で、高周波電源を用いて基板側に電圧を印加することによって、基板近傍にプラズマを形成し、表面を改質する方法である。その際、ターゲット側には、電圧を印加しない。
【0071】
酸化物半導体成膜用ターゲットとしては、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。例えば、組成比として、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol数比]などを用いることができる。また、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有する金属酸化物のターゲットを用いることもできる。また、SiO2を2重量%以上10重量%以下含む金属酸化物のターゲットを用いることもできる。酸化物半導体ターゲットの充填率は90%以上100%以下であればよく、95%以上99.9%以下が好適である。充填率の高い酸化物半導体ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0072】
なお、酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスおよび酸素混合雰囲気下で成膜するとよい。酸化物半導体層の成膜には、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物の濃度がppmレベル、好ましくはppbレベルまで除去された高純度ガスをスパッタガスとして用いる。
【0073】
残留水分が除去され、かつ、減圧状態に保持された処理室内に基板400を保持し、金属酸化物をターゲットとして基板400上に酸化物半導体層を成膜する。成膜の際、水素および水分が除去されたスパッタガスを導入する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いるとよい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体層成膜時に基板を室温状態のままとするか、または400℃未満の温度に加熱してもよい。
【0074】
酸化物半導体層の成膜条件の一例としては、基板温度を室温、基板とターゲットの間との距離を110mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素およびアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)混合雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0075】
以上では、酸化物半導体として、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物を用いる例を示したが、その他にも、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−Oや、他の三元系金属酸化物であるIn−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O、Sn−Zn−O、Al−Zn−O、Zn−Mg−O、Sn−Mg−O、In−Mg−Oや、In−O、Sn−O、Zn−Oなどの酸化物半導体を用いることができる。また、上記酸化物半導体は珪素を含んでいてもよい。また、これらの酸化物半導体は、非晶質であってもよいし、結晶質であってもよい。または、非単結晶であってもよいし、単結晶であってもよい。
【0076】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される薄膜を用いることもできる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素である。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoが挙げられる。
【0077】
次に、酸化物半導体層を第1のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層412に加工する(図7(A)参照)。なお、島状の酸化物半導体層412を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0078】
なお、酸化物半導体層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0079】
ドライエッチングを行う場合、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0080】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、塩化硼素(BCl3)、塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)など)が好ましいが、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF4)、弗化硫黄(SF6)、弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン(CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、を用いることもできる。また、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス等を用いることもできる。
【0081】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。エッチングの条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)については、酸化物半導体の材料に合わせて適宜調節すればよい。
【0082】
また、ウェットエッチングを行う場合、エッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれる材料(例えば、インジウム等のレアメタル)を回収して再利用することにより、資源を有効活用することができる。
【0083】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体層を島状の酸化物半導体層412に加工する。
【0084】
次に、酸化物半導体層412に第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層412から水素、水、および水酸基等を除去することができる。
【0085】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体としては、不活性ガス(代表的には、アルゴン等の希ガス)または窒素ガスを用いることができる。
【0086】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いることにより、短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0087】
第1の加熱処理の際の雰囲気には、水、水素などが含まれないようにすることが好ましい。または、加熱処理装置の装置内に導入する窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0088】
なお、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、第1の加熱処理により島状の酸化物半導体層412が結晶化し、微結晶化または多結晶化する場合もある。例えば、結晶化率が80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。ただし、第1の加熱処理を行っても島状の酸化物半導体層412が結晶化せず、非晶質の酸化物半導体層となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体層の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる場合もある。
【0089】
酸化物半導体層に対する第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体層に行ってもよい。この場合、第1の加熱処理後に、加熱処理装置から基板を取り出し、第1のフォトリソグラフィ工程を行う。また、第1の加熱処理は、酸化物半導体層上にソース電極およびドレイン電極を積層させた後に行ってもよい。同様に、第1の加熱処理は、ソース電極およびドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後に行ってもよい。
【0090】
第1の加熱処理においては、酸化物半導体層中から水素、水、および水酸基等の不純物を除去することを主な目的としているが、この加熱処理の際に酸化物半導体層中に酸素欠損が生じてしまうおそれがある。このため、第1の加熱処理の後に、加酸化処理を行うことが好ましい。加酸化処理の具体例としては、第1の加熱処理の後、連続して酸素雰囲気または窒素および酸素を含む混合雰囲気(例えば、窒素:酸素の体積比=4:1)での加熱処理を行う方法が挙げられる。また、酸素雰囲気下でのプラズマ処理を行う方法を用いることもできる。
【0091】
第1の加熱処理は、酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する。
【0092】
次に、絶縁層407および酸化物半導体層412上に、導電膜を形成する。導電膜は、スパッタリング法や真空蒸着法により形成すればよい。導電膜の材料としては、アルミニウム、銅、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、イットリウムなどの金属材料、該金属材料を成分とする合金材料、導電性を有する金属酸化物等が挙げられる。また、ヒロックやウィスカーの発生を防止するために、例えば、シリコン、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウム、イットリウムなどの元素が添加されたアルミニウム材料を用いてもよい。この場合、耐熱性を向上させることができる。導電性を有する金属酸化物としては、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)または前記金属酸化物材料にシリコンもしくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0093】
また、導電膜は、単層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層した2層構造、チタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を積層した3層構造が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属層と、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属層とが積層された構成としてもよい。
【0094】
本実施の形態では、導電膜としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0095】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極415aおよび第2の電極415bを形成する。その後、レジストマスクは除去する(図7(B)参照)。第1の電極415aは、ソース電極およびドレイン電極の一方として機能する。第2の電極415bは、ソース電極およびドレイン電極の他方として機能する。ここで、第1の電極415aおよび第2の電極415bの端部が、テーパ形状となるようにエッチングすると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上する。なお、第1の電極415a、第2の電極415bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0096】
また、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層412が除去されてその下の絶縁層407が露出しないようにそれぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層412としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)を用いることにより、酸化物半導体層412の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層412の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0097】
第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層412上で隣り合う第1の電極415aの下端部と第2の電極415bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能である。この場合、トランジスタの動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0098】
次に、絶縁層407、酸化物半導体層412、第1の電極415a、第2の電極415b上にゲート絶縁層402を形成する(図7(C)参照)。
【0099】
ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。
【0100】
ゲート絶縁層402を形成する際は、水素が含まれないようにすることが好ましい。このため、成膜時の雰囲気に水素を極力減らすことが可能なスパッタリング法でゲート絶縁層402を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素、または酸素およびアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0101】
また、ゲート絶縁層402は、基板400側から順に酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiOx(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素およびアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)混合雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0102】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層402の一部を除去することにより、第1の電極415a、第2の電極415bに達する開口421a、421bを形成する(図7(D)参照)。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成する場合、フォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0103】
次に、ゲート絶縁層402、および開口421a、421b上に導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bを形成する。
【0104】
ゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bの材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層または積層して形成することができる。ゲート電極411、第1の配線層414a、および第2の配線層414bの2層構造の具体例としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上にモリブデン層が積層された構造、銅層上に窒化チタン層もしくは窒化タンタル層が積層された構造、または窒化チタン層上にモリブデン層が積層された構造が挙げられる。また、3層構造の具体例としては、タングステン層または窒化タングステン層と、アルミニウムおよびシリコンの合金層またはアルミニウムおよびチタンの合金層と、窒化チタン層またはチタン層とが積層された構造が挙げられる。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極を形成することもできる。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0105】
本実施の形態ではゲート電極411、第1の配線層414a、第2の配線層414bとして、スパッタリング法により形成した膜厚150nmのチタン膜を用いる。
【0106】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。なお、第2の加熱処理は、トランジスタ410上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0107】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を更に行ってもよい。この加熱処理は、一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回繰り返して行ってもよい。また、この加熱処理を保護絶縁層や平坦化絶縁層の形成前に減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができるので好ましい。
【0108】
以上の工程により、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された、高純度の酸化物半導体層412を有するトランジスタ410を形成することができる(図7(E)参照)。トランジスタ410は、実施の形態1で説明したトランジスタ等に適用することができる。
【0109】
また、トランジスタ410上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。保護絶縁層としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。また、平坦化絶縁層としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることもできる。また、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0110】
ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いてもよい。また、有機基はフルオロ基を有していてもよい。
【0111】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0112】
上述したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、酸化物半導体層中の水素および水素化物の濃度を低減することができる。
【0113】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例について説明する。
【0115】
図8(A)−(E)にトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。図8(E)に示すトランジスタ390は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ390を、実施の形態1で説明したトランジスタ等に用いることができる。なお、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0116】
以下、図8(A)−(E)に基づいて、基板394上にトランジスタ390を作製する工程について説明する。
【0117】
まず、基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極391を形成する。形成されたゲート電極の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0118】
ここで、基板394の材料については、上記実施の形態で説明した基板400と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極391の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明したゲート電極411と同様のものを採用することができる。
【0119】
なお、基板394とゲート電極391との間に、下地膜となる絶縁膜を設けてもよい。下地膜は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜から選ばれた一からなる単層構造、またはこれらから選ばれた複数の膜による積層構造により形成すればよい。
【0120】
次に、ゲート電極391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0121】
ゲート絶縁層397は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、または酸化アルミニウム層を単層または積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層397中に水素が多量に含まれないようにするために、スパッタリング法でゲート絶縁層397を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素または、酸素およびアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0122】
ゲート絶縁層397は、ゲート電極391側から順に窒化シリコン層と酸化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiOx(x>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層とすればよい。
【0123】
次に、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体層393を形成する(図8(A)参照)。
【0124】
ここで、酸化物半導体層393の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明した酸化物半導体層(島状の酸化物半導体層412)と同様のものを採用することができる。
【0125】
例えば、酸化物半導体層393をスパッタリング法により形成する際の成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が挙げられる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体層393の膜厚は、膜厚2nm以上200nm以下とすればよく、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体の材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0126】
なお、酸化物半導体層393を成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。
【0127】
また、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層393に水素、水酸基および水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極391が形成された基板394、またはゲート電極391とゲート絶縁層397が形成された基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下とすればよい。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。また、この予備加熱は、保護絶縁層396の成膜前に、ゲート電極391、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層399、第1の電極395aおよび第2の電極395bまでが形成された基板394に対して同様に行ってもよい。
【0128】
次に、酸化物半導体層を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層399に加工する(図8(B)参照)。なお、島状の酸化物半導体層399の加工方法については、上記実施の形態で説明した島状の酸化物半導体層412を形成する際の加工方法と同様のものを採用することができる。
【0129】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層399およびゲート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0130】
次に、ゲート絶縁層397および酸化物半導体層399上に導電膜を形成する。導電膜の成膜方法は、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いればよい。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金、またはこれらの元素を複数組み合わせた合金等を用いることができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数から選択された材料を含んでもよい。また、透光性を有する導電膜を用いてもよい。透光性を有する導電膜の具体例としては、透光性を有する導電性酸化物が挙げられる。
【0131】
また、導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。
【0132】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極395a、第2の電極395bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(C)参照)。ここで、導電膜のエッチングの際には、酸化物半導体層399が除去されてその下のゲート絶縁層397が露出しないようにそれぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する必要がある。そこで、本実施の形態では、酸化物半導体層399としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を用い、導電膜としてチタン膜を用い、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(31重量%過酸化水素:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)を用いることにより、酸化物半導体層399の一部がエッチングされないようにしているが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、第3のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層399の一部をエッチングし、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層とすることもできる。
【0133】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光を用いればよい。酸化物半導体層399上で隣り合う第1の電極395aの下端部と第2の電極395bの下端部との間隔幅によって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。このため、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能である。この場合、トランジスタの動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、トランジスタの低消費電力化を図ることができる。
【0134】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数および工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0135】
上記エッチングを行って第1の電極395a、第2の電極395bを形成した後、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層399の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。本実施の形態では、上記いずれかのプラズマ処理を行う。
【0136】
次に、プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、露出されている酸化物半導体層399、第1の電極395a、および第2の電極395bに接する保護絶縁層396を形成する(図8(D)参照)。このとき、酸化物半導体層399および保護絶縁層396に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層396を成膜することが好ましい。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した保護絶縁層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0137】
本実施の形態では、保護絶縁層396として酸化物絶縁層を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層396の形成方法として、島状の酸化物半導体層399、第1の電極395a、および第2の電極395bが形成された基板394を室温状態のまま、または100℃未満の温度に加熱し、水素および水分が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて、酸化シリコン層を成膜する。なお、酸化物絶縁層として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0138】
上記の成膜条件の一例としては、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗率0.01Ωcm)を用い、基板とターゲット間の距離(T−S間距離)を89mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスDCスパッタリング法により、酸化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層の膜厚は300nmとする。なお、シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を用いることもできる。スパッタガスは、酸素、または酸素およびアルゴンの混合ガスを用いればよい。
【0139】
さらに、保護絶縁層396と酸化物半導体層399とが接した状態で100℃ないし400℃で加熱処理を行うことが好ましい。本実施の形態における保護絶縁層396は欠陥を多く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸基または水素化物などの不純物を保護絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0140】
以上の工程により、水素、水分、水酸基または水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層392を有するトランジスタ390を形成することができる(図8(E)参照)。本実施の形態で説明したように、酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することにより、該酸化物半導体層中の水素および水素化物の濃度を低減することができる。この結果、真性または実質的に真性な半導体が得られる。
【0141】
なお、保護絶縁層396上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層396上に絶縁層398を形成する。絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを用いればよい。
【0142】
絶縁層398の形成方法としては、ゲート電極391、ゲート絶縁層397、酸化物半導体層399、第1の電極395a、第2の電極395b、及び保護絶縁層396が形成された基板394を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素および水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入し、シリコン半導体のターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、保護絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層398を成膜することが好ましい。絶縁層398の成膜時に100℃〜400℃に基板394を加熱することにより、酸化物半導体層399中に含まれる水素または水分を絶縁層398に拡散させることができる。この場合、保護絶縁層396の形成直後に加熱処理を行わなくてもよい。
【0143】
また、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を形成する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを、窒素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止できる。なお、保護絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素もしくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃ないし400℃)を行うことがさらに好ましい。
【0144】
保護絶縁層396の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0145】
上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、400℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができるので、表示パネルを製造するためのエネルギー消費を低減することができる。
【0146】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0147】
(実施の形態4)
本実施の形態では、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例について説明する。
【0148】
図9(A)−(D)にトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。図9(D)に示すトランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型のトランジスタともいう。このトランジスタ360を、実施の形態1で説明したトランジスタ等に用いることができる。なお、トランジスタ360はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0149】
以下、図9(A)−(D)に基づいて、基板320上にトランジスタ360を作製する工程について説明する。
【0150】
まず、基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極361を形成する。基板320の材料については、上記実施の形態で説明した基板394と同様のものを採用することができる。また、ゲート電極361の材料や成膜方法等は、上記実施の形態で説明したゲート電極391と同様のものを採用することができる。
【0151】
次に、ゲート電極361上にゲート絶縁層322を形成する。ゲート絶縁層322の材料については、上記実施の形態で説明したゲート絶縁層397と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、ゲート絶縁層322としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0152】
次に、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体層を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層332に加工する。島状の酸化物半導体層の材料や成膜方法、加工方法等は、上記実施の形態で説明した島状の酸化物半導体層399と同様のものを採用することができる。本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0153】
次に、酸化物半導体層332の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層332に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う(図9(A)参照)。なお、この工程によって、酸化物半導体層332に酸素欠損が生じ、低抵抗化する。
【0154】
次に、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。または、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0155】
次に、ゲート絶縁層322、および酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0156】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366として、膜厚200nmの酸化シリコン膜をスパッタリング法により成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化シリコン膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)および酸素混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。例えば、シリコンターゲットを用いて、酸素および窒素混合雰囲気下でスパッタリング法により酸化シリコンを形成することができる。酸化物半導体層332に接して形成する酸化物絶縁層366としては、酸化シリコン以外にも、水分や、水素イオンや、OH−などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用いることができる。代表的には、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いることができる。
【0157】
このとき、酸化物半導体層332および酸化物絶縁層366に水素、水酸基または水分が含まれないようにするため、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜することが好ましい。なお、処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0158】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うことが好ましい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱される。このとき、酸化物絶縁層366で覆われている領域では、酸化物絶縁層から酸素が供給されるため、高抵抗化する。
【0159】
一方、酸化物絶縁層366によって覆われていない領域の、露出された酸化物半導体層332は、窒素、不活性ガス雰囲気下、または減圧下で加熱処理を行うと、酸素欠損のため、さらに低抵抗化することができる。
【0160】
すなわち、第2の加熱処理により、酸化物半導体層332は、抵抗の異なる領域(図9(B)においては斜線領域および白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0161】
次に、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、および酸化物絶縁層366上に、導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極365a、第2の電極365bを形成した後、レジストマスクを除去する(図9(C)参照)。
【0162】
第1の電極365a、第2の電極365bの材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金か、これらの元素を組み合わせた合金等が挙げられる。また、金属導電膜は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。
【0163】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体層に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極361と重なるチャネル形成領域363は、真性または実質的に真性となり、第1の電極365aに重なる低抵抗領域364aと、第2の電極365bに重なる低抵抗領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程により、トランジスタ360が形成される。
【0164】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層に残存する微量の水素が酸化物絶縁層中にとりこまれ、真性または実質的に真性な酸化物半導体層を得ることができる。
【0165】
なお、第2の電極365b(および第1の電極365a)と重畳した酸化物半導体層において低抵抗領域364b(および低抵抗領域364a)を形成することにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、低抵抗領域364bを形成することで、第2の電極365bから低抵抗領域364b、チャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、第2の電極365bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極361と第2の電極365bとの間に高電界が印加されても低抵抗領域がバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0166】
次に、第1の電極365a、第2の電極365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成する(図9(D)参照)。
【0167】
以上のように、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【0168】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0169】
(実施の形態5)
本実施の形態は、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタの構造およびその作製方法の一例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ350は、実施の形態1のトランジスタ等に用いることができる。
【0170】
図10(D)に示すトランジスタ350はシングルゲート構造のトランジスタを示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ゲート電極を複数有し、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとしてもよい。
【0171】
以下、図10(A)−(D)に基づいて、基板340上にトランジスタ350を作製する方法を説明する。
【0172】
まず、基板340上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極351を形成する。本実施の形態では、ゲート電極351として、膜厚150nmのタングステン膜を、スパッタリング法を用いて形成する。
【0173】
次に、ゲート電極351上にゲート絶縁層342を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁層342としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素膜を形成する。
【0174】
次に、ゲート絶縁層342に導電膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って第1の電極355a、第2の電極355bを形成した後、レジストマスクを除去する(図10(A)参照)。
【0175】
次に酸化物半導体層345を形成する(図10(B)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体層345としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。続いて、酸化物半導体層345を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。
【0176】
酸化物半導体層345を成膜する工程においては、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体層345を成膜することにより、酸化物半導体層345に水素、水酸基または水分が含まれないようにすることが好ましい。処理室内の残留水分の除去方法については、他の実施の形態で説明した方法を用いることができる。
【0177】
次に、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うために、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層346を得る(図10(C)参照)。
【0178】
また、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0179】
次に、酸化物半導体層346に接する酸化物絶縁層356を形成する。酸化物絶縁層356は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、酸化物絶縁層356に水、水素等の不純物を混入させない方法(例えば、スパッタリング法)を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層356に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、または水素による酸化物半導体層中の酸素を引き抜きが生じ、酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。このため、酸化物絶縁層356はできるだけ水素を含まない膜になるような成膜方法を用いることが重要である。
【0180】
なお、酸化物絶縁層356の材料や成膜方法等については、上記実施の形態における保護絶縁層396と同様のものを採用することができる。
【0181】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部が酸化物絶縁層356と接した状態で加熱される。
【0182】
以上の工程を経ることによって、第1の加熱処理の際に脱水化または脱水素化のために低抵抗化した酸化物半導体層が、酸素過剰な状態となる。その結果、真性または実質的に真性な酸化物半導体層352が形成される。以上の工程により、トランジスタ350が形成される。
【0183】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層に残存する微量の水素が酸化物絶縁層中にとりこまれ、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって表示装置の信頼性を向上できる。
【0184】
なお、酸化物絶縁層356上に絶縁層をさらに設けてもよい。本実施の形態では、酸化物絶縁層356上に絶縁層343を形成する(図10(D)参照)。絶縁層343の材料や成膜方法等については、上記実施の形態における絶縁層398と同様のものを採用することができる。
【0185】
また、絶縁層343上の表面を平坦化する目的で、平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0186】
以上のような方法により、真性または実質的に真性な酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することができる。
【符号の説明】
【0187】
10,20 ソース信号線
30 ゲート信号線
40 トランジスタ
50 保持容量
51,52 寄生容量
60 容量線
70 画素電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数本のソース信号線と、
前記ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線と、
前記ソース信号線と前記ゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタを介して、前記ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極と、
を備え、
隣接する一対の前記ソース信号線間に設けられる前記画素電極の側縁部を、前記ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方の前記ソース信号線との重畳面積を、他方の前記ソース信号線との重畳面積と等しくすることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体は、真性または実質的に真性であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体は、オフ電流が1[aA/μm]以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項1】
並設された複数本のソース信号線と、
前記ソース信号線と交差するように並設された複数本のゲート信号線と、
前記ソース信号線と前記ゲート信号線との交差部近傍に設けられた酸化物半導体を用いたトランジスタを介して、前記ソース信号線の信号電圧が印加される画素電極と、
を備え、
隣接する一対の前記ソース信号線間に設けられる前記画素電極の側縁部を、前記ソース信号線の側縁部に重畳させ、かつ、一方の前記ソース信号線との重畳面積を、他方の前記ソース信号線との重畳面積と等しくすることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体は、真性または実質的に真性であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記酸化物半導体は、オフ電流が1[aA/μm]以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−150315(P2011−150315A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280227(P2010−280227)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]