説明

表面処理方法および該表面処理方法を用いた金属材料および除菌装置

【課題】水中または高湿度条件下で使用する金属材料に、防錆効果と除菌効果を同時に付与できる簡易な表面処理方法を提供すること。また、前記表面処理方法を用いて、防錆効果と除菌効果を併せ持つ金属材料を提供すること。また、前記表面処理された金属材料を用いた除菌装置を提供すること。
【解決手段】金属材料1よりイオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とを、イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とが電気的に接合するように金属材料1に接触させる。これにより、イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3の電位差によって微生物を除菌することができる。また、イオン化傾向の高い金属2の電気化学的な防食作用により、金属材料1に防錆効果を与えることができる。また、前記表面処理した金属材料1を用いて、水中や高湿度下でも除菌作用を維持できる装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料に防錆効果と除菌効果を付与する表面処理方法に関する。また、前記表面処理方法を用いた、鉄骨や屋根材や壁材やボルト類やねじ類や金属繊維や金属板や水槽やダクトなどの金属材料に関する。また、前記表面処理された金属材料を用いた清掃用スポンジやろ過フィルタに関する。また、前記表面処理された金属材料を用いた空調装置、加湿装置、除湿装置、空気清浄装置、サウナ装置、熱交換装置、換気装置、水処理装置、除菌装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
金属の腐食は、大別して空気による金属の酸化作用と水による電気化学的腐食作用によって発生することが知られている。これらの対策として、塗装・メッキ処理・油脂類の塗布などによって保護層を設けて空気による酸化を防ぐ方法や、金属の表面に亜鉛または亜鉛合金等の金属類を塗布する方法が用いられてきた。
【0003】
たとえば、下記の特許文献1記載の従来の防錆方法は、鉄鋼より低電位のアルミや亜鉛などの卑金属合金を塗料に混合し、前記塗料を鉄鋼に塗着するものである。卑金属は鉄鋼よりもイオン化傾向が高いため、陽極となって電流を発生し、卑金属イオンが犠牲溶解することによって鉄鋼の防錆が行われる。
【0004】
また、排水溝の部材や金属フィルタなどの水を利用する商品、および加湿器や空調装置など高湿度雰囲気下で使用される金属を使った商品では、雑菌の繁殖によるにおいやぬめりの発生などが問題となっている。これらの対策として、金属イオンの殺菌性を利用した方法が知られている。
【0005】
たとえば下記の文献2には、水中に銀または銅あるいはその合金電極を設け、概電極に電流を流して電極の金属をイオン化させ、銀イオン等の殺菌作用により、水中に繁殖する雑菌を殺菌する加湿器が示されている。
【特許文献1】特開昭55−39214号公報
【特許文献2】実用新案登録第1677716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防錆方法では、鉄鋼と空気の接触を塗料の皮膜で遮断して酸化を防ぎ、経年劣化によって発生する亀裂等に対しても卑金属の犠牲防食作用によって防錆効果が持続するという効果は得られるものの、皮膜表面での雑菌やカビの繁殖に対しては効果が期待できないものであった。また、塗料の皮膜中に卑金属が埋没して絶縁皮膜となっているため表面が帯電しやすいという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の方法では、電極から溶出させた金属イオンを用いて殺菌することができるものの、電極から溶出させるためには外部からの電源入力が必須であり、電源のない場所や装置が停止しているときには殺菌効果が働かず、菌が増殖してしまうという課題があった。特に電源入力が停止しているときには金属の溶出が進まないため、細菌と金属イオンの物理的な接触はほとんど期待できず、金属板表面近傍のごく限られた領域でしか効果がないという課題があった。また、物理的な接触確率を上げるために金属板の間隔を狭め、開口面積を小さくすると、著しく圧力損失が増大し、空気や水などの流体を流すことが困難になるという課題があり、より低圧損で殺菌効果の高い技術が求められていた。さらに、殺菌手段では微生物の死骸が金属イオンを付与した領域に残る場合があり、快適性を保つためには除去された方が望ましく、殺菌手段ではなく除菌手段がより要望されている。
【0008】
また、防錆効果、殺菌効果を単独で付与することは可能であったが、防錆効果・帯電防止効果・殺菌効果・除菌効果を同時に与える表面処理方法は知られていなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、金属材料に防錆効果と除菌効果を同時に付与できる簡易な表面処理方法を提供することを目的としている。また、前記表面処理方法を用いて、防錆と除菌効果を併せ持つ金属材料を提供することを目的としている。また、前記表面処理方法を用いて、防錆と除菌効果を併せ持つフィルタを提供することを目的としている。また、前記表面処理された金属材料を用いて、除菌装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面処理方法は上記目的を達成するために、請求項1に記載の通り、金属材料に除菌および防錆効果をもたせるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の表面処理方法は、金属材料の表面処理方法において、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを電気的に接合し金属材料に接触させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の表面処理方法は、金属材料の表面処理方法において、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを分散および/または溶解させた処理液を、当該金属と導電性の材料とが電気的に接合するように前記金属材料に塗布したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属が亜鉛であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の表面処理方法は、導電性の材料が、金属よりもイオン化傾向の低い材料であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の表面処理方法は、導電性の材料が、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン,カーボンマイクロコイル,カーボンナノコイル、不飽和結合をもつ導電性ポリマーから選ばれる1つ以上の炭素材料であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属および/または導電性の材料の粒子径が、微生物の大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属が粉末および/または繊維状であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属の配合比率が導電性の材料よりも高いことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の表面処理方法は、処理液にバインダーを含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の表面処理方法は、処理液を塗布した後、乾燥させることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の表面処理方法は、表面処理部分の色が有色であることを特徴とする。
【0022】
本発明の金属材料は、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法で製造したことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の表面処理方法は、表面処理部分の表面電気抵抗が107Ω/□以下であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の除菌フィルタは、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属フィルタ基材に施したことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の除菌フィルタは、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属繊維および/または金属板に施した後、フィルタ形状に加工したことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の除菌装置は、請求項15または16記載の除菌フィルタを、空気または水の流れる通路に配したことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の除菌装置は、請求項15または16記載の除菌フィルタの後段に、活性炭フィルタを配したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属材料に除菌効果と防錆効果を同時に付与できる簡易な表面処理方法を提供することができる。また、前記表面処理方法を用いて、防錆効果と除菌効果を併せ持つ金属材料を提供することができる。除菌効果と防錆効果を併せ持つフィルタを提供することができる。また、前記表面処理された金属材料を用いて、除菌装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の表面処理方法は上記目的を達成するために、金属材料に除菌および防錆効果をもたせるようにしたことを特徴とする。これにより水中や空気中の微生物を除菌、捕集することができるという作用を有するとともに、水中や高湿度下でも腐食が起こりにくく、耐久性に優れた金属材料を得ることができる。
【0030】
また、本発明の表面処理方法は、金属材料の表面処理方法において、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを電気的に接合し前記金属材料に接触させることを特徴とする。これにより、電位差によって帯電した微生物を除菌、捕集することができるとともに、金属材料よりイオン化傾向の高い金属が優先的に溶出することによって金属材料のイオン化を抑制し、電気化学的な防食作用を得ることができるため、水中や高湿度下でも腐食が起こりにくく、耐久性に優れた金属材料を得ることができる。
【0031】
また、本発明の表面処理方法は、金属材料に対し、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを分散および/または溶解させた処理液を、金属と導電性の材料とが電気的に接合するように金属材料に塗布したことを特徴とする。これにより処理液を塗布するという簡易な手段で、除菌および防錆効果を得ることができる。また、処理液が塗布された部分に皮膜が形成されるため、金属材料と空気の接触を低減し、空気酸化による腐食を抑制するという作用を有する。また、金属と導電性の材料を有しているため、処理液を塗布した表面に静電気が蓄積されるのを防ぐ帯電防止作用を得ることができる。
【0032】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属が亜鉛であることを特徴とする。亜鉛は抗菌性をもつ金属であるため、除菌されて表面に凝集した微生物を殺菌するという作用を有する。また、殺菌性をもった亜鉛イオンを水中に放出することにより、殺菌性を持った水を得ることができるという作用を有する。
【0033】
また、本発明の表面処理方法は、導電性の材料が、金属よりもイオン化傾向の低い材料であることを特徴とする。これにより、金属を優先的に溶出させて防錆効果を得るとともに、金属と導電性材料の間に電位差を発生させて除菌することができるという作用を有する。
【0034】
また、本発明の表面処理方法は、導電性の材料が、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン,カーボンマイクロコイル,カーボンナノコイル、不飽和結合をもつ導電性ポリマーから選ばれる1つ以上の炭素材料であることを特徴とする。これにより、導電性の材料に金属を使う場合にくらべて、軽量化することができるという作用を有する。また、炭素材料を使うことにより、表面処理した場所を暗黒色にすることができるため、表面処理した部分を容易に視認することができ、傷や塗布むらの発生を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属および/または導電性の材料の粒子径が、微生物の大きさよりも大きいことを特徴とする。これにより、イオン化傾向の高い金属と導電性の材料の間に発生した電位差によって、帯電した微生物がどちらか一方に誘引されるという作用を有する。
【0036】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属が粉末および/または繊維状であることを特徴とする。これにより、粉末の場合、イオン化傾向の高い金属および導電性の材料を分散させる際に、分散性がよく加工しやすいという効果を得ることができる。また、繊維状にくらべて均一な状態を得やすいため、処理液を塗布した後の色むらや凹凸の抑制など外観上の利点がある。繊維状の場合は、分散した際に繊維同士の接点が多くなり、処理液を塗布した皮膜表面に局所的な電位差が発生する場所を多くすることができるという作用を有する。また、皮膜の強度を高めることができるという作用を有する。
【0037】
また、本発明の表面処理方法は、イオン化傾向の高い金属の配合比率が導電性の材料よりも高いことを特徴とする。イオン化傾向の高い金属が大量に溶出するため、水中の金属イオン濃度が早く増加するという効果を得ることができる。特に、亜鉛のような抗菌性を有する金属イオンの場合には、抗菌効果がすばやく発揮されるという効果を得ることができる。また、イオン化傾向の高い金属の量を多くすることによって、効果の持続期間を長くすることができるという作用を有する。
【0038】
また、本発明の表面処理方法は、処理液にバインダーを含むことを特徴とする。これにより、イオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを固定化し、皮膜の強度を高めることができる。
【0039】
また、本発明の表面処理方法は、処理液を塗布した後、乾燥させることを特徴とする。乾燥させることによって、短時間でバインダーの硬化を行うことができるという作用を有する。加熱乾燥させることによって、バインダーの縮合硬化が進むので、金属基材に強固に接着することができるという作用を有する。
【0040】
また、本発明の表面処理方法は、表面処理部分の色が有色であることを特徴とする。これにより、除菌および防錆効果の発揮される部分を容易に視認することができるという作用を有する。視認が容易なため、塗布むらによる加工不良や傷等の発生を簡単に確認することができるという作用を有する。
【0041】
本発明の金属材料は、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法で製造するものであり、除菌および防錆効果をあわせもつ金属材料を提供することができる。これによって、防錆効果と除菌効果を併せ持つ鉄骨や屋根材や壁材やボルト類やねじ類や金属繊維や金属板や水槽やダクトなどの金属材料を提供することができる。また前記金属材料を備えた清掃用スポンジやろ過フィルタなどを提供することができる。
【0042】
また、本発明の表面処理方法は、表面処理部分の表面電気抵抗が107Ω/□以下であることを特徴とする。表面電気抵抗が高すぎると絶縁皮膜となって、電場の強さが低下するため、除菌および防錆作用が低下するため好ましくない。また、表面電気抵抗を低くすることによって、帯電によるほこりや空気中の微生物の付着を軽減することができるという作用を有する。
【0043】
また、本発明の除菌フィルタは、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属フィルタ基材に施したことを特徴とする。これにより、防錆と除菌効果を備えた除菌フィルタを提供することができる。
【0044】
また、本発明の除菌フィルタは、請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属繊維および/または金属板に施した後、フィルタ形状に加工したことを特徴とする。これにより、金属繊維および/または金属板に防錆と除菌効果を与えることができる。たとえば、水や水蒸気と接触する部分だけに前記金属繊維および/または金属板を備えた除菌フィルタにすることにより、表面処理を部分を限定して低コストの除菌フィルタを提供することができる。
【0045】
また、本発明の除菌装置は、請求項15または16記載の除菌フィルタを、空気または水の流れる通路に配したことを特徴とする。これにより、除菌フィルタの上流から流れてくる流体に含まれる微生物は、除菌フィルタの作用によって捕集され、下流側には微生物が除去されて排出されるという作用を有する。除菌フィルタ10は除菌作用を有しているため、微生物の大きさよりも大きな開口部であっても微生物をろ過捕集することができ、低圧損のフィルタを得ることができる。また、防錆効果を有しているため、水中や高湿度雰囲気下に配するろ過フィルタとして利用した際に、腐食しにくく耐久性に優れるという効果を得ることができる。また、抗菌性の金属を有する場合には、捕集した微生物をその場で殺菌することができ、フィルタ上でのカビやぬめりの発生を防ぐことができる。
【0046】
また、本発明の除菌装置は、請求項15または16記載の除菌フィルタの後段に、活性炭フィルタを配したことを特徴とする。前段の除菌フィルタで雑菌・カビ等の物質を捕集できるため、後段の活性炭フィルタに雑菌やカビが繁殖する恐れが少ないという効果を得ることができる。また、活性炭フィルタの作用によって、脱色および/または脱臭効果を得ることができる。
【0047】
また、本発明の表面処理方法を施した金属材料を利用して、空調装置、加湿装置、除湿装置、空気清浄装置、サウナ装置、熱交換装置、換気装置、排水処理装置、水浄化装置、除菌装置などを作成することができる。表面処理によって金属材料に防錆および除菌効果を付与しているため、金属材料の腐食が進みにくく、雑菌の繁殖が少ない衛生的な装置とすることができる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
(実施の形態1)
図1に示すように、金属材料1の表面に、処理液を塗布することにより、イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とバインダー4からなる固体成分の皮膜が形成されている。バインダー4は皮膜の強度を高めるために添加することが望ましいが、強度が十分であれば必ずしも必要ではない。イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3は電気的に接続され、電池構造が形成されている。
【0050】
金属材料1に、金属材料1よりイオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とを、イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とが電気的に接合するように金属材料1に接触させることにより、前記イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とを含む固体成分が皮膜となって金属材料1を覆うため、金属材料1と空気の接触が低減され、金属材料1の酸化が進みにくくなるという効果が得られる。また、金属材料1の表面に固体成分の皮膜が形成されるため、皮膜の保護作用で外部からの衝撃が加わった際に金属材料1まで達する傷がつきにくく、傷部分から腐食がすすむ心配が少ない。また、金属材料1よりもイオン化傾向の高い金属2が含まれているため、イオン化傾向の高い金属2の犠牲防食作用によって、電気化学的な腐食が抑制され金属材料1が防食される。また、イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とによって皮膜表面の電気抵抗が下がるため、皮膜に帯電防止作用を与えるという効果が得られる。
【0051】
金属材料よりイオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3とを、金属と導電性の材料とが電気的に接合するように金属材料に接触させる方法としては、メッキ、蒸着、スパッタリング等の方法などが挙げられ、これ以外の方法であっても金属材料への密着性が確保されていれば特に問題はない。接着せずに圧着する方法でもよい。また、処理液を金属材料1に塗布する方法でも、処理液に含まれている固体成分が皮膜となって金属材料1を覆うため、同様の効果を得ることができる。
【0052】
図1の皮膜表面を拡大した概略断面図を図2に示す。イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3はバインダー4とともに皮膜を形成している。この皮膜の上を、微生物5を含む水がAからB方向に流れるとする。水に含まれる微生物5はその表面電荷として一定の電荷を有しているため、水中に電場を与えるとその電場の向きに応じて移動する作用が生まれる。イオン化傾向の高い金属2と導電性の材料3は電気的に接合されているためプラスとマイナスの電荷を帯びており、両者の間には電場が発生している。微生物5は電荷を有しているため、電場の作用によってイオン化傾向の高い材料2か導電性の材料3のいずれか一方の方向に誘引され凝集する。この結果、微生物5を含む水はAからB方向に進むにしたがって除菌されていく。
【0053】
物理的な接触のみで殺菌する方法では、接触確率を上げるために金属板の間隔を狭め、開口面積を小さくしなければ殺菌性能が向上しないが、著しく圧力損失が増大し、空気や水などの流体を流すことが困難になるという課題があり、より低圧損で殺菌効果の高い技術が求められていた。本発明では、微生物を誘引する除菌効果を有するため、電場が働く範囲まで効果を発揮させることができ、開口面積を小さくしなくても微生物を除去できるという効果を得ることができる。
【0054】
また、特許文献2のような従来の方法は、金属イオンの溶出によって殺菌する方法であるが、金属イオンを電極から溶出させるために外部からの電源入力が必須であり、電源のない場所や装置が停止しているときには殺菌効果が働かず、菌が増殖してしまうという課題があった。本発明においては、電池構造であるため外部からの電源入力は不要であり、つねに除菌効果が発揮されるという作用を有する。また、電力が必要ないため、省エネルギーであるという作用を有する。また、通電回路や制御機構も不要で装置が簡略化できる。また、処理液を塗布して皮膜を形成させるという簡単な手法によって効果が発揮されるため、屋根材や建築物など大面積の金属材料や、凹凸形状の金属材料に対しても容易に加工できるという作用を有する。
【0055】
さらに、重金属イオンを放出することで殺菌効果を発揮する殺菌剤とは異なり、物理的な作用で除菌効果を発揮するため、効果の持続性/永続性があり、表面処理した金属材料表面のヌメリの抑制、微生物増殖に伴う悪臭の発生抑止のみならず、微生物増殖に伴う衛生状態の悪化を抑止する効果があり、快適性を保つ効果を発揮することができる。
【0056】
処理液は、金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを溶媒に分散および/または溶解させることによって得る事ができる。溶媒としては、アルコール類・直鎖の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族類など、分散および/または溶解性を持つ種々の溶媒が利用できる。分散性を高めるために界面活性剤を添加してもよい。イオン化傾向の高い金属と導電性の材料の粒子径は、大きすぎると分散性が悪くなるため、好ましくは500μm以下がよい。また、粒子径は除去しようとする微生物の大きさよりも大きいことが望ましい。電位差によって微生物を集めるためには、少なくとも電位がかかっている部分の間隔が微生物の大きさよりも大きい必要がある。十分な距離を確保するためには雑菌として平均的な微生物の大きさである1μmより十分大きい10μm以上であることが好ましい。形状が繊維状である場合には太さではなく長さ方向について前記の条件であればよい。粒子径を前記の範囲に制御することによって、平面性を確保し美観性および実用性に優れた塗膜を得ることができる。
【0057】
イオン化傾向の高い金属および導電性の材料の形状としては、粉末および/または繊維状であることが好ましい。粉末の場合、イオン化傾向の高い金属および導電性の材料を分散させる際に、分散性がよく加工しやすいという効果を得ることができる。また、繊維状にくらべて均一な状態を得やすいため、処理液を塗布した後の色むらや凹凸の抑制など外観上の利点がある。繊維状の場合は、分散した際に繊維同士の接点が多くなり、処理液を塗布した皮膜表面に局所的な電位差が発生する場所を多くすることができる。用途に応じて粉末と繊維の混合や、異種金属の混合を行ってもなんら問題はない。
【0058】
イオン化傾向の高い金属としては、金属材料よりもイオン化傾向が高ければ特に制限はない。表1に金属の種類と標準水素電極を基準とした電極電位を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
例えば金属材料がFeであった場合には、Feよりイオン化傾向の高い金属としてZnを選択することができ、そのときの電位差は0.32Vとなる。表1に示す金属以外でも電位差が発生すれば特に問題はなく、これらの合金でもよい。Znは比較的イオン化傾向が高く、かつ金属自体の抗菌性が強いため好ましい。
【0061】
導電性の材料は、電気的な接合ができれば特に制約はなく、あらゆる導電性の材料が利用できる。Pt,Ag,Cu,Pb,Ni,Sb,Co,W,Fe,Sn,Cr,Zn,V,Al,Ti,Zr,Mg、あるいはこれらの合金などの金属材料のほか、炭素系の導電材料を用いてもよい。ただし、前記イオン化傾向の高い金属と導電性の材料の電位差が、水の電気分解開始電圧である1.2V以上になると水素の発生が生じるため好ましくない。導電性の炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン,カーボンマイクロコイル,カーボンナノコイル、不飽和結合をもつ導電性ポリマーなどが挙げられる。黒鉛とカーボンブラックはもっとも一般的に用いられる導電性の炭素材料であり、経済性が高い。また、導電性塗料として樹脂エマルジョンとカーボンを混合したものが市販されており、容易に入手可能である。炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン,カーボンマイクロコイル,カーボンナノコイルなどは皮膜の強度向上や軽量化の効果を得ることができる。
【0062】
また、導電性の材料が、金属よりもイオン化傾向の低い材料であることを特徴としたものであり、イオン化傾向の高い金属が優先的に溶出するため、水中の金属イオン濃度が早く増加するという効果を得ることができる。特に、亜鉛のような抗菌性を有する金属イオンの場合には、抗菌効果がすばやく発揮されるという効果を得ることができる。
【0063】
また、イオン化傾向の高い金属の配合比率が導電性の材料よりも高いことを特徴としたものである。イオン化傾向の高い金属が優先的に溶出するため、イオン化傾向の高い金属の配合比率を多くすることによって、除菌および防錆効果を長期間保つという効果を得ることができる。
【0064】
処理液にはバインダーを含んでいてもよい。バインダーについては特に制限はなく、従来から塗料に使われている樹脂、例えばエポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ゴム系樹脂、アクリル樹脂などの中から任意のものを選択して用いることができる。また、無機系のバインダーを利用してもよく、コロイダルシリカ、オルガノシリカ樹脂、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、エチルシリケート、リチウムシリケート、カリウムシリケートなどの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0065】
また、処理液を塗布した後、乾燥させることを特徴としたものである。乾燥させることによって、短時間でバインダーの硬化を行うことができる。乾燥条件はバインダーの種類によって決定すればよいが、60℃以上であることが望ましい。加熱乾燥させることによって、バインダーの縮合硬化が進むので、金属基材に強固に接着することができるという作用を有する。
【0066】
また、表面処理部分の色が有色であることを特徴としたものである。除菌および防錆効果を発揮するのは処理液を塗布して皮膜が形成された部分だけであり、有色にすることにより、効果の発揮される部分を容易に視認することができるという作用を有する。視認が容易なため、塗布むらによる加工不良や傷等の発生を簡単に確認することができるという作用を有する。処理液を有色にするためには、たとえばカーボンブラックやグラファイトなどの黒色成分やマンガン、酸化鉄、酸化銅あるいはその合金などの有色金属を任意の割合で添加すればよい。
【0067】
金属材料としては鉄、アルミニウムあるいはそれらの合金など、防錆効果が必要とされるあらゆる金属材料に適用することができる。処理液を塗布する場合、ブラスト処理、研磨処理などの前処理を施しておくと、処理液の濡れ性が向上し強固な皮膜を得やすい。金属材料の形状は、例えば、棒状、繊維状、網状、ビーズ状、スリット状、ストロー状、板状、ハニカム状、スポンジ状、発砲体状などあらゆる形状が利用できる。
【0068】
また、表面処理部分の表面電気抵抗が107Ω/□以下であることを特徴としたものである。表面電気抵抗が高すぎると絶縁皮膜となって、電場の強さが低下するため、除菌および防錆作用が低下するため好ましくない。固形物成分の配合量と、皮膜の膜厚を調整することによって、用途に合わせて調整すればよい。また、表面電気抵抗を低くすることによって、帯電によるほこりや空気中の微生物の付着を軽減することができるという作用を有する。
【0069】
(実施の形態2)
図3は、処理液を塗布して作成した除菌フィルタ10を有する除菌装置11の一例である。除菌フィルタ10は、イオン化傾向の高い金属と、導電性の材料と、バインダーと溶剤とを混合した処理液を、金属フィルタとしての金属網に塗布することによって作成されている。金属フィルタに処理液を塗布することにより、防錆と除菌効果を備えた除菌フィルタ10を得ることができる。別の方法として、処理液を金属繊維および/または金属板に塗布することにより、表面に防錆および除菌効果を付与することができる。処理後の金属繊維および/または金属板をフィルタ形状に加工することによって、防錆と除菌効果を備えた除菌フィルタ10を得ることができる。除菌フィルタ10は、水や空気が流れる通路内に配置され、除菌装置11を形成している。上流から流れてくる菌液12に含まれる微生物は、除菌フィルタ10の作用によって捕集され、下流側には微生物が除去されて排出される。除菌フィルタ10は除菌作用を有しているため、微生物の大きさよりも大きな開口部であっても微生物をろ過捕集することができ、低圧損のフィルタを得ることができる。また、防錆効果を有しているため、水中や高湿度雰囲気下に配するろ過フィルタとして利用した際に、腐食しにくく耐久性に優れるという効果を得ることができる。また、抗菌性の金属を有する場合には、捕集した微生物をその場で殺菌することができ、フィルタ上でのカビやぬめりの発生を防ぐことができる。
【0070】
また、前記除菌フィルタ10の後段に活性炭フィルタ13を配置することにより、前段の除菌フィルタ10で雑菌・カビ等の物質を捕集できるため、後段の活性炭フィルタ13に雑菌やカビが繁殖する恐れが少ないという効果を得ることができる。また、活性炭フィルタ13の作用によって、脱色および/または脱臭効果を得ることができる。
【0071】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0072】
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)を添加した菌液を作成した。30cm2(金属面としては裏表合わせて60cm2)になるように作成した2枚の金属板を電気的に接合してプラスチックシャーレに入れた。金属板は銅と銅の組み合わせ、および銅と亜鉛の組み合わせとした。菌液をそれぞれプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。所定時間経過後の菌数を初期の菌数で割って規格化した値を菌の残存比として縦軸にとり、横軸に経過時間を表した結果を図4に示す。銅‐銅の組み合わせでも銅の抗菌作用によって菌数の減少が見られたが、6時間という尺度では金属を入れないブランクと比べて大きな差は出ていない。一方、銅−亜鉛では6時間後に大きな菌数の減少が見られた。ここから、イオン化傾向の異なる材料を電気的に接合すると、短時間で菌数が減少することがわかる。
【実施例2】
【0073】
銅板と亜鉛板をスライドグラス上にのせ、顕微鏡の視野に入る間隔で配置した。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)を添加し、約106cfu/ml程度の菌液を、銅板と亜鉛板に触れるようにスライドグラス上に0.2ml滴下した。ただちに顕微鏡で観察したところ、大腸菌は亜鉛板側に移動して凝集した。このことから、イオン化傾向の異なる材料を電気的に接合すると、菌液中の大腸菌が除菌されることがわかった。
【0074】
2枚の亜鉛板を使って同様な実験を行ったところ、大腸菌は通常の運動状態でありどちらかの金属に誘引される様子は見られなかった。
【実施例3】
【0075】
(1)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛とカーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液を直径85mm(約57cm2)の円形に成型した金属材料としての鉄板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板A作成した。
【0076】
(2)金属として75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、銅:カーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液を金属材料としての鉄板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Bを作成した。
【0077】
(3)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛:銅:カーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液を金属材料としての鉄板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Cを作成した。
【0078】
(4)亜鉛を96%、アクリル樹脂を4%含有する市販の防錆塗料を金属材料としての鉄板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板A作成した。
【0079】
(5)亜鉛を83%、アルミニウムを5%、アクリル樹脂を12%含有する市販の防錆塗料を金属材料としての鉄板に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板Bを作成した。
【0080】
(6)何も処理せずに、比較板Cを作成した。
【0081】
前記(1)〜(6)の方法で作成した鉄板を、処理液の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
【0082】
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)が約105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。所定時間経過後の菌数を初期の菌数で割って規格化した値を菌の残存比として縦軸にとり、横軸に経過時間を表した結果を図5に示す。除菌板A、B、Cでは菌数が減少し、除菌されていることがわかった。除菌板AとBではZnを添加したAほうが除菌速度が速かった。銅と亜鉛を添加した除菌板Cは特に1時間後の菌数減少が顕著であった。
【0083】
市販の防錆塗料を塗布した比較板Aはわずかに菌数の減少が観察された。比較板B、Cでは菌数はほとんど変化せず、除菌効果が働いていないことがわかった。
【0084】
作成した除菌板および比較板の表面電気抵抗を測定した結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
市販の防錆塗料である比較板A,Bでは表面抵抗が非常に高く、導電性を有していないことがわかる。一方、除菌板A、B、Cでは表面抵抗が低く導電性を有している。図5の結果と対比してみると、導電性を有している除菌板A、B、Cでは除菌性能があり、導電性を有していない比較板A、Bおよびなにも処理していない比較板Cでは除菌性能が低いことがわかった。
【実施例4】
【0087】
実施例3で作成した除菌板Cをスライドグラス上にのせ、顕微鏡の視野に入る位置に配置した。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli,IFO3972)を添加し、約106cfu/ml程度の菌液を、除菌板Cに触れるようにスライドグラス上に0.2ml滴下した。ただちに顕微鏡で観察したところ、大腸菌は除菌板Cの特定の位置に偏在して移動し、凝集した。除菌板Cは亜鉛と銅と導電性カーボンが混在しており、どの位置に各材料が塗布されているか確認することはできなかった。大腸菌の大きさ(約2μm)に比べて、亜鉛と銅の大きさは十分に大きく(50〜150μm)、実施例2の結果と合わせて考えると、おそらく亜鉛が高濃度に存在する位置に菌が凝集しているものと思われた。
【実施例5】
【0088】
実施例3で作成した除菌板C、比較板A、比較板B、比較板Cを5cm×5cmの大きさに切断し、中央部に傷をつけて皮膜を排除することによってサンプル板を作成した。サンプル板を5wt%の食塩水にいれ、50℃で保持した。目視観察の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
10日後には比較板Cのみに少量の赤錆の発生が認められた。14日後では、比較板Cには全体に多くの赤錆が観察された。除菌板Cでは全体に亜鉛の酸化物と思われる白色の粉体の析出がみられ、傷をつけた部分には少量の赤錆の発生が認められた。比較板Bでは、傷をつけた部分に大量の赤錆の発生が認められた。比較板Aでは錆は観察されなかった。
【0091】
この結果から、除菌板Cは、比較板Aには劣るものの比較板Cに比べて錆の発生が遅く、防錆効果があることがわかった。
【実施例6】
【0092】
イオン化傾向の高い金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、導電性の材料として75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛:銅:カーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。金属材料としてのフェライト系金属発泡体フィルタを、作成した処理液に浸漬し、余剰液を排除した後、60℃で2時間乾燥させることによって機能性フィルタとしての除菌フィルタ10を作成した。図3に示すように、フィルタ収納容器内に前記機能性フィルタとしての除菌フィルタ10を配置し、その後段に活性炭フィルタ13を配置することによって除菌装置11を作成した。除菌装置11の上流側から菌液12を流して除菌装置11の除菌性能を測定した。一定時間ごとに、菌液12を除菌装置11の入口・出口から0.3mlずつ採取して培養することにより、菌数の変化を測定した。
【0093】
フィルタの断面積2.7cm2、長さ5cm、菌液の通過流速2.4ml/分の条件で試験した時の結果を図6に示す。除菌率は80%以上の値を継続的に示し、試験開始から40時間後でも変わらない値を示した。また、使用後のフィルタに錆の発生は認められなかった。菌液の流速とフィルタの大きさを変化させることによって除菌性能を制御できるので、使用条件と必要な性能に合わせて装置を設計することにより、水の除菌装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の表面処理方法では、金属材料に防錆効果と除菌効果を同時に付与することができる。前記表面処理方法を用いて、防錆効果と除菌効果を併せ持つ金属材料を提供することができ、鉄骨や屋根材や壁材やボルト類やねじ類や金属繊維や金属板や水槽やダクトなどの金属材料の表面処理や、その表面処理された金属材料を用いた清掃用スポンジやろ過フィルタなどへ応用展開が期待できる。また、前記表面処理された金属材料を用いた装置を得ることができ、空調装置、加湿装置、除湿装置、空気清浄装置、サウナ装置、熱交換装置、換気装置、水処理装置、除菌装置への展開用途が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1に示す処理液を塗布した金属材料の概略断面図
【図2】本発明の実施の形態1に示す処理液を塗布した金属材料の概略断面図
【図3】本発明の実施の形態2に示す水浄化装置の概略断面図
【図4】本発明の実施例1に示す菌の残存比と経過時間の関係を示すグラフ
【図5】本発明の実施例3に示す菌の残存比と経過時間の関係を示すグラフ
【図6】本発明の実施例6に示す除菌率と経過時間の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0096】
1 金属材料
2 イオン化傾向の高い金属
3 導電性の材料
4 バインダー
5 微生物
10 除菌フィルタ
11 除菌装置
12 菌液
13 活性炭フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料に除菌および防錆効果をもたせるようにしたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
金属材料の表面処理方法において、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを電気的に接合し前記金属材料に接触させることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】
金属材料の表面処理方法において、前記金属材料よりイオン化傾向の高い金属と導電性の材料とを分散および/または溶解させた処理液を、当該金属と導電性の材料とが電気的に接合するように前記金属材料に塗布したことを特徴とする請求項1または2記載の表面処理方法。
【請求項4】
イオン化傾向の高い金属が亜鉛であることを特徴とする請求項2または3記載の表面処理方法。
【請求項5】
導電性の材料が、金属よりもイオン化傾向の低い材料であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項6】
導電性の材料が、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン,カーボンマイクロコイル,カーボンナノコイル、不飽和結合をもつ導電性ポリマーから選ばれる1つ以上の炭素材料であることを特徴とする請求項2乃至5いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項7】
イオン化傾向の高い金属および/または導電性の材料の粒子径が、微生物の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項2乃至6いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項8】
イオン化傾向の高い金属が粉末および/または繊維状であることを特徴とする請求項2乃至7いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項9】
イオン化傾向の高い金属の配合比率が導電性の材料の配合比率よりも高いことを特徴とする請求項2乃至8いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項10】
処理液にバインダーを含むことを特徴とする請求項3乃至9いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項11】
処理液を塗布した後、乾燥させることを特徴とする請求項3乃至10いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項12】
表面処理部分の色が有色であることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の表面処理方法。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法で製造したことを特徴とする金属材料。
【請求項14】
表面処理部分の表面電気抵抗が107Ω/□以下であることを特徴とした請求項13記載の金属材料。
【請求項15】
請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属フィルタ基材に施したことを特徴とする除菌フィルタ。
【請求項16】
請求項1乃至12いずれかに記載の表面処理方法を、金属繊維および/または金属板に施した後、フィルタ形状に加工したことを特徴とする除菌フィルタ。
【請求項17】
請求項15または16記載の除菌フィルタを、空気または水の流れる通路に配したことを特徴とする除菌装置。
【請求項18】
除菌フィルタの後段に、活性炭フィルタを配したことを特徴とする請求項17記載の除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−1950(P2008−1950A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173345(P2006−173345)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】