説明

被搬送物保管システム

【課題】搬送台車の停止位置補正教示工数を極限まで削減することができる被搬送物保管システムを提供する。
【解決手段】天井に敷設されたレール520a〜520fに沿ってOHT搬送台車300がFOUPを把持して走行する。レール520a〜520f下方に被搬送物保管棚200が設けられる。レール520a〜520fに複数のマスターバーコードが所定の間隔で貼着される。被搬送物保管棚200には、複数のキネマティックピンを有する位置決めプレートが複数枚配設され当該個々の位置決めプレートが所定の間隔で貼着された個々のマスターバーコードとの間で相対的に配置される。一の位置決めプレートの座標と、相対的に配置された一のマスターバーコードに基づいて停止したOHT搬送台車300のグリッパの座標との誤差量が補正装置に記録され、制御手段が他の被搬送物保管棚またはマスターバーコードに展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車により搬送される被搬送物を一時的に保管する被搬送物保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場においては、製品のコストダウンと生産量の増大に対処するための生産効率の向上が強く求められている。この一環として搬送設備にもクリーンルームスペースの有効活用、建設時の建設コスト、建設期間の短縮、および設備稼動後における搬送時間の短縮について、一層の向上が求められている。
【0003】
半導体製造工場においては、天井に敷設した軌道上を走行し物品を搬送するOHT(Over head Hoist Transport)またはOHS(Over Head Shuttle)等の搬送台車システムが使用されている。
【0004】
この搬送台車システムに関して、種々の研究および開発が成されており、特許文献1には、ワーク搬送システムについて開示されている。
【0005】
特許文献1記載のワーク搬送システムは、巻き取りドラムを、適宜、正逆回転させて、巻き取りドラムにワイヤーを巻き取り、或いは、巻き取りドラムからワイヤーを繰り出すことにより、チャック装置を昇降させるとともに、天井付近に敷設されたレールに沿って走行する天井走行車を備えたものである。また、ワークが載置可能なストレージラック部材を、床面の上方で、且つ、レールの下方に配設したものである。
【0006】
その結果、ワークが載置可能なストレージラック部材を、床面の上方で、且つ、レールの下方に配設したので、処理ステーションや床等の省スペース化が実現できるとともに、天井走行車によるワークの受け渡し時間を短縮化することができるという効果が得られる。
【特許文献1】特開平10−109887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に建設時のシステム構築作業には多大の時間と工数とが必要とされる。この建設時システム構築作業の1つにストレージラックにおける搬送台車の停止位置補正教示がある。
【0008】
搬送台車は通常走行軌道上に取付けられたバーコードで停止位置を検知するが、停止位置補正教示前の搬送台車では、停止位置と被搬送物の載置位置とが一致しない。不一致の程度は搬送台車毎に走行方向誤差、走行方向における直角方向誤差、台車回転方向誤差等があり、それぞれ誤差量が異なる。また、ストレージラックのレールへの取付け状況がラック毎に異なるため、1の台車についてもラック毎に不一致の程度が異なる。特許文献1などの従来技術では、このストレージラック毎に異なる補正値をストレージラック毎にマニュアルで入力(教示)を行っていた。この教示作業は全ての搬送台車について、全てのストレージラックで実施せねばならず、教示作業に要する時間と工数は膨大なものであった。
【0009】
本発明の目的は、保管棚の被載置物を載置する1組の突起が、軌道上に取付けられたバーコードに対向する相対位置の誤差を実用上零と見なせる載置棚の提供と、この載置棚について搬送台車の位置補正の教示工数を極限まで削減できる被搬送物保管システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)
本発明に係る被搬送物保管システムは、天井に敷設された軌道に沿って被搬送物を懸垂状態で把持して走行する搬送台車を備えた被搬送物保管システムであって、軌道の下方に懸垂状態で配置され、複数個の被搬送物を載置可能な被搬送物保管棚と、被搬送物保管棚に載置される複数個の被搬送物の底面に形成された凹部に嵌合して支持できる突起群を備えた位置決めプレートと、軌道の下部に所定の間隔で貼着された複数のコード情報と、複数のコード情報を読み取るコード情報読み取り装置、被搬送物に形成された被把持部を把持しつつ移送可能な把持部および軌道に沿って走行し、停止位置を調整することができる補正手段を備える搬送台車と、を含み、予め位置決めプレートを被搬送物保管棚の被搬送物を載置させる面の所定位置に配置し、複数のコード情報の個々のコード情報と突起群との相対的座標をそれぞれ確定し、搬送台車を一のコード情報に基づき停止させ、突起群の上に載置された被搬送物の被把持部の位置と、当該停止した搬送台車の把持部の位置との誤差量を補正手段に補正情報として記録させ、補正手段が、他のコード情報に対して当該補正情報を用いて搬送台車の停止位置を補正するものである。
【0011】
本発明に係る被搬送物保管システムにおいては、天井に敷設された軌道に沿って、搬送台車が被搬送物を懸垂状態で把持して走行する。その軌道下方に懸垂状態で被搬送物を載置することが可能な被搬送物保管棚が設けられる。当該被搬送物保管棚の上方の領域における軌道に複数のコード情報が、所定の間隔で貼着される。その貼着された複数のコード情報に基づいて搬送台車自身が走行または停止を判定しつつ自律走行を行なう。
【0012】
また、被搬送物保管棚を設置する際に、被搬送物保管棚には、突起群を有する位置決めプレートが1又は複数枚配設され、当該個々の位置決めプレートが所定の間隔で貼着された個々のコード情報との間で相対的に配置され、当該複数の位置決めプレートのうち一の位置決めプレートの座標と、当該相対的に配置されたコード情報に基づいて停止した搬送台車の把持部の座標との誤差量が補正手段により記録される。
【0013】
この場合、被搬送物保管棚の設置時において、一のコード情報に基づいた補正情報が補正手段により記録されているので、所定の間隔で配置された他のコード情報に展開することができる。その結果、位置決めプレートを個々に調整する必要がなくなり、被搬送物保管棚の設置工数を削減することができる。
【0014】
このように本発明に係る被搬送物保管システムにおいては、保管棚の被載置物を載置する1組の突起が、軌道上に取付けられたバーコードに対向する相対位置の誤差を実用上零と見なせる載置棚を提供することができ、当該載置棚について搬送台車の位置補正の教示工数を極限まで削減することができる。
【0015】
(2)
補正手段は、突起群の上に載置された被搬送物の被把持部の位置と、当該停止した搬送台車の把持部の位置との誤差量を外部から入力できる外部入力手段をさらに含み、補正手段は、外部入力手段からの誤差量を補正情報として記録できることが好ましい。
【0016】
この場合、補正手段は、外部入力手段をさらに含むので、外部入力手段からの誤差量に応じて微妙な調整を行い、補正情報として記録することができるので、より容易で確実に被搬送物保管システムを立ち上げることができる。
【0017】
(3)
相対的座標は、突起群を構成し、一の被搬送物を載置させる1組の突起を頂点として形成される図形の図心と、コード情報とを鉛直軸上に配置させることが好ましい。
【0018】
この場合、図心と所定の間隔で配置されたコード情報とが、鉛直軸上に配置されるので、当該鉛直軸が搬送台車の把持部の鉛直軸と一致するように補正することで、他のコード情報に対して補正を容易に行なうことができる。
【0019】
(4)
複数のコード情報は、マスターバーコードであり、読み取り装置は、バーコードリーダであることが好ましい。
【0020】
この場合、マスターバーコードの作成が容易で、バーコードリーダによりマスターバーコードを容易に読み取ることができるので、搬送台車が、容易に自律走行および停止を行なうことができる。
【0021】
(5)
位置決めプレートは、1つ又は複数設置され、個々に被搬送物保管棚に固定可能なものであることが好ましい。
【0022】
この場合、複数枚からなる位置決めプレートは、個々に被搬送物保管棚に固定することができるので、被搬送物保管棚に直接突起群を形成する場合と比較して、被搬送物保管棚形成後の突起群の配置調整を容易に行なうことができる。
【0023】
(6)
軌道上に複数の被搬送物保管棚が設けられ、補正手段は、複数の被搬送物保管棚のうちいずれか1個の被搬送物保管棚の被搬送物についての補正情報を他の被搬送物保管棚の補正情報として使用し、搬送台車の停止位置を補正してもよい。
【0024】
この場合、全ての被搬送物保管棚の設置時に軌道およびコード情報と被搬送物保管棚との相対的位置関係を合わせることで、1個の被搬送物保管棚の補正情報を他の被搬送物保管棚にも展開することができる。その結果、個々に調整する必要がなくなり、被搬送物保管棚の設置工数を削減することができる。その結果、被搬送物保管システム全体において、設置効率を向上させ、設置時間工数を削減することができる。
【0025】
(7)
軌道は、複数の環状軌道および複数の環状軌道を繋ぐ軌道からなり、補正手段は、複数の環状軌道の一の環状軌道内に設置された複数の被搬送物保管棚の一の被搬送物についての補正情報を用いて、同一環状軌道内における他の被搬送物保管棚についての搬送台車の停止位置の補正を行なってもよい。
【0026】
この場合、同一環状軌道内に複数設けられた被搬送物保管棚のうち1個の被搬送物保管棚の補正情報を求めることで、他の被搬送物保管棚に展開することができる。その結果、同一環状軌道内の個々の被搬送物保管棚についての搬送台車の停止位置の補正を行う必要がなくなり、被搬送物保管棚の設置工数を削減することができる。その結果、被搬送物保管システム全体において、設置効率を向上させることができる。
【0027】
(8)
軌道は、複数の環状軌道および複数の環状軌道を繋ぐ軌道からなり、補正手段は、複数の環状軌道の一の環状軌道内に設置された複数の被搬送物保管棚のうちの一の被搬送物保管棚の一の被搬送物についての補正情報を用いて、同一環状軌道外における他の被搬送物保管棚についての搬送台車の停止位置の補正を行ってもよい。
【0028】
この場合、同一環状軌道内および同一環状軌道外の全ての被搬送物保管棚の設置条件を一致させることで、同一環状軌道内に複数設けられた被搬送物保管棚のうち1個の被搬送物保管棚の補正情報を求めることで、同一環状軌道外の被搬送物保管棚についての搬送台車の停止位置の補正に展開することができる。その結果、被搬送物保管システム全体の個々の被搬送物保管棚についての搬送台車の停止位置の補正情報を調整する必要がなくなり、被搬送物保管棚の設置工数を削減することができる。その結果、被搬送物保管システム全体において、設置効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
(一実施の形態)
【0030】
図1は、本発明に係る一実施の形態に係る被搬送物保管システム100の全体の一例を示す模式図である。
【0031】
まず、図1に示すように、被搬送物保管システム100は、複数の環状レール(工程内軌道)520a,520b,520c,520dを有する。また、被搬送物保管システム100は、複数の環状レール520a〜520dを繋ぐ環状レール(工程間軌道)520eを有する。さらに、被搬送物保管システム100においては、接続レール520fにより複数の環状レール520a〜520dと環状レール520eとが接続される。
【0032】
それにより、レール520a、520f、520e、520f、520b、520f、520e、520f、520d、520f、520e、520f、520c、520f、520e、520aの順に、後述するOHT搬送台車300を後退させずに一方向に循環して駆動させることができる。
【0033】
図1に示すように、複数の環状レール520a〜520dの周囲には、複数の半導体処理装置900が配置される。また、複数の環状レール520a〜520dには、複数の被搬送物保管システム100の被搬送物保管棚200a,200b,200cが配置される。以下、被搬送物保管棚を被搬送物保管棚200と略記する。また、環状レール(工程間軌道)520eには、ストッカ910が配置される。
【0034】
OHT搬送台車300は、複数の環状レール520a〜520dを走行する際に、後述するFOUP400を被搬送物保管棚200に載置したり、移送したりする。それにより、FOUP400内に収納された基板が、半導体処理装置900におけるハンドにより取り出され、所定の処理が施された後、FOUP400内に収納される。そして、FOUP400がOHT搬送台車300に把持され、次工程の半導体処理装置900まで移送されることにより、FOUP400内の基板に対して所定の処理が順に施される。
【0035】
図2は被搬送物保管システム100の被搬送物保管棚200の詳細を示す模式図である。
【0036】
図2に示す被搬送物保管システム100は、主に天井500に設けられる。天井500から懸垂部材510を介してレール520が設けられる。このレール520は、環状に設けられる(図1参照)。また、レール520は、複数の目的地点への途中の経路において分岐されており、その分岐点の近辺に被搬送物保管棚200が設けられる。また、レール520には、所定の間隔で複数のコード情報(以下、マスターバーコードとする。)530a〜530eが設けられる。このマスターバーコード530a〜530eの詳細については後述する。
【0037】
被搬送物保管棚200は、レール520に懸垂した状態で設けられる。具体的には、吊り部材240,241の一端が、それぞれ支持部材230を介してレール520に対して鉛直下向き方向に設けられる。また、吊り部材240の他端が、ナット251により棚板250の一端に固定され、吊り部材241の他端が、ナット252により棚板250の他端に固定される。それにより、棚板250が、水平面に平行に配設される。
【0038】
また、レール520に対向する棚板250の面には、位置決めプレート260が配置される。この位置決めプレート260は、後述するようにキネマティックピン261が複数個配置された板状部材からなる。したがって、当該棚板250の面には、位置決めプレート260が1つ又は複数枚敷き詰められた状態となる。図2においては、位置決めプレート260が1つ敷き詰められた状態を示す。
【0039】
次に、レール520に懸垂した状態で移動するOHT(Over head Hoist Transport)搬送台車300について説明する。
【0040】
OHT搬送台車300は、本体部310、昇降装置320、懸垂ベルト330およびグリッパ340を含む。OHT搬送台車300は、レール520に沿って移動し、かつ昇降装置320を懸垂ベルト330により上下動させることができる。昇降装置320の下部には、グリッパ340が設けられている。グリッパ340は、後述する被搬送物のフランジ420を把持可能な形状からなる。例えば、グリッパ340は、一対の部材からなり、後述するフランジ420を左右から挟持することができる。
【0041】
また、OHT搬送台車300は、制御装置350、補正装置351、駆動装置370およびデータ読み取り装置(以下、バーコードリーダとする。)360を内蔵する(図8参照)。制御装置350は、バーコードリーダ360からの読み取りデータに基づいて駆動装置370の駆動および停止を制御する。さらに、制御装置350は、懸垂ベルト330の巻き取りおよび引き出しを制御するとともに、グリッパ340の動作も指示する。補正装置351は、制御装置350に補正情報を与える。補正装置351の詳細については後述する。また、OHT搬送台車300は、外部入力操作部660(図9参照)からの信号を受け取る受信装置を備える。制御装置350は、外部入力操作部660からの指示を補正装置351に与え、補正装置351は当該指示を補正情報として記録する。制御装置350は、当該指示に応じて駆動装置370の駆動および停止の制御を補正する。ここで、外部入力操作部660とは、携帯型リモートコントローラまたは前進後退スイッチ等である。
【0042】
続いて、被搬送物の一例としてFOUP(Front−Opening Unified Pod)400について説明する。ここで、FOUPとは、SEMIスタンダードE47.1に規定されている、ミニエンバイロメント方式の半導体工場で使われる300mmウェハ用の搬送、保管を目的としたキャリアであり、正面開口式カセット一体型搬送の保管箱である。
【0043】
FOUP400は、本体部410およびフランジ420からなる。本体部410は、被搬送物を収納可能な箱形状からなる。そして、当該箱形状の内部は、ウェハが収納可能な構造で形成されている。また、本体部410の外側の下面には、位置決めプレート260のキネマティックピン261の突起と嵌合する凹部が形成されている。
【0044】
続いて、本発明に係る被搬送物保管システム100の設置時の工程について説明を行なう。図3は、レール520に被搬送物保管棚200を形成する工程を示す模式図であり、図4は、レール520にマスターバーコード530a,〜,530eを設ける状態を示す模式図である。図4(a)はレール520の下面を下方から見た状態を示し、図4(b)は図4(a)のレール520の断面を示す。
【0045】
まず、図3に示すように、吊り部材240,241および棚板250を配設する。次に、図4(a)に示すように、レール520に所定の間隔L毎にマスターバーコード530a,〜,530eを配設する。この場合、図4(b)に示すようにレール520は、内部が空洞のC型形状からなり、鉛直下方向の面にマスターバーコード530a,〜,530eが配設される。
【0046】
続いて、図5は棚板250の上に位置決めプレート260を配置する状態を説明するための説明図であり、図6は位置決めプレート260の固定方法の一例を示す模式図である。
【0047】
図5に示すように、棚板250の当該面上に1つの位置決めプレート260が配設される。この位置決めプレートは、長方形形状からなり、3つのキネマティックピン261を1組として複数組のキネマティックピンが設けられている。例えば、図5の場合においては、一枚の位置決めプレート260の上に2組(各組は3つのキネマティックピンで構成される)のキネマティックピン261が配設されている。
【0048】
そして、図6に示すように、位置決めプレート260に設けられた長孔262に対して、ワッシャ630を挟み、ボルト620を貫通させナット610により移動自在に仮止めする。
【0049】
次に、図5に示すように、ポジションポインター600を使用して、マスターバーコード530a,〜,530eの端部Pにポジションポインター600から照射される鉛直光をあわせる。それにより、ポジションポインター600から照射される鉛直下方向の光が、位置決めプレート260の上部に点として現れる。この場合、3つのキネマティックピン261から形成される三角形の図心が、ポジションポインター600の光の点と一致するように、位置決めプレート260の位置を図6の水平方向の矢印および回転方向の矢印のように、移動させて調整する。すなわち、この位置決めプレート260の取付け方法によれば、被載置物を載置する複数組の突起と、これらに対向する軌道上に取付けられた対応するそれぞれのバーコード530a,〜,530eとの相対位置の誤差は実用上零と見なせる精度に位置合わせされる。
【0050】
続いて、位置決めプレート260の位置調整終了後、先に仮止めしたナット610を所定の回転トルクで締め付け、位置決めプレート260を棚板250に固定する。
【0051】
なお、本実施の形態においては、レーザビームを発するポジションポインター600を用いたが、これに限定されず、例えば、糸の先端に分銅を付けたもの等であってもよい。また、位置決めプレート260を四角形状としたが、これに限定されず、他の任意の形状であってもよい。
【0052】
次に、本発明に係る被搬送物保管システム100の設置後のOHT搬送台車300の位置調整について説明を行なう。
【0053】
図7および図8は、本発明に係る建設時システム構築作業時に実施される載置棚についての搬送台車の位置補正教示方法の一例を説明するための説明図である。
【0054】
まず、図7に示すように、手作業によりFOUP400をキネマティックピン261の上に載置する。ここで、FOUP400の下面には、3つのキネマティックピン261に対して嵌合可能な凹部が形成されているので、その凹部に3つのキネマティックピン261が嵌合される。
【0055】
次に、図8に示すように、OHT搬送台車300がレール520に沿って矢印Aの方向に移動する。そして、OHT搬送台車300に内蔵されたバーコードリーダ360がマスターバーコード530aを読み取り、制御装置350の働きによりOHT搬送台車300が停車する。
【0056】
図8に示すように、OHT搬送台車300が停車した位置におけるグリッパ340の鉛直方向の中心軸と、FOUP400のフランジ420の鉛直方向の中心軸との間で、誤差L1が生じると仮定する。この場合、FOUP400を安定して載置させ、または搬送させるためには、この誤差L1をOHT搬送台車300の駆動装置において調整する必要がある。
【0057】
すなわち、図8のOHT搬送台車300では、当該誤差L1が補正値となる。また、この調整は、矢印Aの方向のみに止まらず、通常は走行方向、走行に垂直方向、回転方向、高さ方向の組み合わせが必要となる。
【0058】
次に、この補正値をOHT搬送台車300に教示する方法について図9を用い説明する。図9は、OHT搬送台車300に当該補正値を教示する方法を説明するための模式図である。
【0059】
図9に示すように、教示には外部入力操作部660を使用する。教示では作業者が、まずOHT搬送台車300が停止している現在位置の座標値(X0,Y0,Z0,θ0)を外部入力操作部660を操作して補正装置351に記憶させる。
【0060】
次いで、OHT搬送台車300がグリッパ部340でFOUP400のフランジ420を正しく把持できる正規の位置まで作業者が外部入力操作部660を操作し、OHT搬送台車300を移動させる。
【0061】
図9では移動操作に必要な移動量をL1で代表させているが、通常はL1に垂直方向、上下方向、回転方向の移動も必要となる。OHT搬送台車300の正規位置への移動完了後、外部入力操作部660を操作して移動後のOHT搬送台車300の停止位置の座標値(X1,Y1,Z1,θ1)を補正装置351に記憶させる。先に記憶させた座標値(X0,Y0,Z0,θ0)と今回記憶させた座標値(X1,Y1,Z1,θ1)の差が補正値となるので、外部入力操作部660を操作して補正装置351に補正値を計算させ、これを記憶させる。この補正値を補正装置351に記憶させる操作を教示作業と呼ぶ。
【0062】
制御装置350は、補正装置351に記録された誤差L1を座標値としてOHT搬送台車300の駆動を制御する。ここで、マスターバーコード530a,〜,530eは、等間隔で配置されておりマスターバーコードと位置決めプレートは、正確に位置合わせされているので、マスターバーコード530b,530c,530d,530eにおける誤差も同様に、マスターバーコード530aの場合と同じ補正値(誤差L1)となるため、複数回誤差の調整を行なう必要なく、短時間でOHT搬送台車300によりFOUP400を安定して載置または搬送を行なわせることができる。
【0063】
以上のように、本発明に係る被搬送物保管システム100においては、一のマスターバーコード530aに基づいた補正情報(誤差量L1)が補正装置351に記録されているので、制御装置350が所定の間隔で配置されたマスターバーコード530b,〜,530eに展開することができる。また位置決めプレート260には複数のキネマティックピン組が一体に形成されるので、FOUP毎のキネマティックピン組を個々に位置合わせする必要がなくなり、被搬送物保管システム100の設置工数(特に教示時間)を削減することができる。
【0064】
また、外部入力操作部660(携帯型リモートコントローラ等)を用いて教示操作を行なうことができ、補正情報として記録することができるので、より容易で確実に被搬送物保管システム100を立ち上げることができる。
【0065】
この場合、被搬送物を載置させる1組の突起を頂点として形成される図形の図心と所定の間隔で配置されたマスターバーコード530a,〜,530eとが、鉛直軸上に配置される。そして、当該鉛直軸に基づいてOHT搬送台車300のグリッパ340がFOUPを正しく把持できるようにOHT搬送台車300の停止位置が補正されるので、他のマスターバーコード530b,〜,530eに対して容易に補正を行なうことができる。
【0066】
この場合、複数枚からなる位置決めプレート260は、個々に被搬送物保管棚200に固定可能であるので、被搬送物保管棚200に直接キネマティックピン261を形成する場合と比較して、被搬送物保管棚200形成後のキネマティックピン261の配置調整を容易に行なうことができる。
【0067】
また、本発明に係る被搬送物保管システム100においては、一のマスターバーコード530aに基づいた補正情報(誤差量L1)が補正装置351に記録されているので、制御装置350が同一軌道内(例えば、レール520a)における他の被搬送物保管棚200a,200b,200c(図1参照)についてのOHT搬送台車300の停止位置の補正に対して展開することができる。その結果、同一軌道内における被搬送物保管棚200a,200b,200cの個々にOHT搬送台車300の停止位置の教示をする必要がなくなり、被搬送物保管システム100の設置工数(特に教示作業および教示時間)を削減することができる。
【0068】
さらに、本発明に係る被搬送物保管システム100においては、一のマスターバーコード530aに基づいた補正情報(誤差量L1)が補正装置351に記録されているので、被搬送物保管システム100における全ての被搬送物保管棚200の設置条件を統一すれば、制御装置350が同一軌道外における他の被搬送物保管棚200に対する搬送台車の停止位置に対して展開することができる。その結果、同一軌道外における被搬送物保管棚200の個々にOHT搬送台車300の停止位置の教示をする必要がなくなり、被搬送物保管システム100の設置工数(特に教示作業、教示時間)を削減することができる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、位置決めプレート260が、一枚の長方形の板状部材から形成されたこととしているが、それに限定されず、他の任意の形状から形成されてもよく、さらに、キネマティックピン261の代わりに他の部材または凹部を形成することとしてもよい。
【0070】
さらに、本発明に係る被搬送物保管システム100においては、コード情報としてマスターバーコードを用い、コード情報読み取り装置としてバーコードリーダを用いることとしたが、これに限定されず、他の任意のコード情報、例えば、ICタグ(RFID)、二次元バーコード等を用いてもよい。
【0071】
上記一実施の形態においては、天井500が天井に相当し、レール520が軌道に相当し、FOUP400が被搬送物に相当し、OHT搬送台車300が搬送台車に相当し、被搬送物保管システム100が被搬送物保管システムに相当し、被搬送物保管棚200が被搬送物保管棚に相当し、複数のキネマティックピン261が突起群に相当し、位置決めプレート260が位置決めプレートに相当し、マスターバーコード530a〜530eが複数のコード情報に相当し、バーコードリーダ360およびデータ読み取り装置がコード情報読み取り装置に相当し、フランジ420が被把持部に相当し、グリッパ340が把持部に相当し、補正装置351が補正手段に相当し、誤差L1が誤差量に相当し、外部入力操作部660(携帯型リモートコントローラ)が外部入力手段に相当し、3つのキネマティックピン261の重心位置Gが、図心に相当する。
【0072】
本発明は、上記の好ましい一実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る一実施の形態に係る被搬送物保管システムの全体の一例を示す模式図
【図2】被搬送物保管システムの被搬送物保管棚の詳細を示す模式図
【図3】レールに被搬送物保管棚を形成する工程を示す模式図
【図4】レールにマスターバーコードを設ける状態を示す模式図
【図5】棚板の上に位置決めプレートを配置する状態を説明するための説明図
【図6】位置決めプレートの固定方法の一例を示す模式図
【図7】本発明に係る建設時システム構築作業時に実施される載置棚についての搬送台車の位置補正教示方法の一例を説明するための説明図
【図8】本発明に係る建設時システム構築作業時に実施される載置棚についての搬送台車の位置補正教示方法の一例を説明するための説明図
【図9】OHT搬送台車に当該補正値を教示する方法を説明するための模式図
【符号の説明】
【0074】
100 被搬送物保管システム
200 被搬送物保管棚
230 支持部材
240,241 吊り部材
250 棚板
251,252 ナット
260 位置決めプレート
261 キネマティックピン
262 長孔
300 OHT搬送台車
310 本体部
320 昇降装置
330 懸垂ベルト
340 グリッパ
350 制御装置
351 補正装置
360 データ読み取り装置
370 駆動装置
400 FOUP
410 本体部
420 フランジ
500 天井
510 懸垂部材
520,520a,520b,520c, レール
520d,520e,520f レール
530a,〜,530e マスターバーコード
600 ポジションポインター
610 ナット
620 ボルト
630 ワッシャ
660 外部入力操作部
900 半導体処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された軌道に沿って被搬送物を懸垂状態で把持して走行する搬送台車を備えた被搬送物保管システムであって、
前記軌道の下方に懸垂状態で配置され、複数個の前記被搬送物を載置可能な被搬送物保管棚と、
前記被搬送物保管棚に載置される複数個の前記被搬送物の底面に形成された凹部に嵌合して支持することができる突起群を備えた位置決めプレートと、
前記軌道の下部に所定の間隔で貼着された複数のコード情報と、
前記複数のコード情報を読み取るコード情報読み取り装置、前記被搬送物に形成された被把持部を把持しつつ移送可能な把持部および前記軌道に沿って走行し停止位置を調整することができる補正手段を備える搬送台車と、を含み、
予め前記位置決めプレートを前記被搬送物保管棚の前記被搬送物を載置させる面の所定位置に配置し、前記複数のコード情報の個々のコード情報と前記突起群との相対的座標をそれぞれ確定し、
前記搬送台車を前記一のコード情報に基づき停止させ、前記突起群の上に載置された被搬送物の被把持部の位置と、当該停止した搬送台車の把持部の位置との誤差量を前記補正手段に補正情報として記録させ、前記補正手段が、前記他のコード情報に対して当該補正情報を用いて前記搬送台車の停止位置を補正することを特徴とする被搬送物保管システム。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記突起群の上に載置された被搬送物の被把持部の位置と、当該停止した搬送台車の把持部の位置との誤差量を外部から入力できる外部入力手段をさらに含み、
前記補正手段は、前記外部入力手段からの誤差量を補正情報として記録することができることを特徴とする請求項1記載の被搬送物保管システム。
【請求項3】
前記相対的座標は、
前記突起群を構成し前記一の被搬送物を載置させる1組の突起を頂点として形成される図形の図心と、前記コード情報とを鉛直軸上に配置させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の被搬送物保管システム。
【請求項4】
前記複数のコード情報は、マスターバーコードであり、前記読み取り装置は、バーコードリーダであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被搬送物保管システム。
【請求項5】
前記位置決めプレートは、1つ又は複数設置され、個々に前記被搬送物保管棚に固定可能なことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被搬送物保管システム。
【請求項6】
前記軌道上に複数の前記被搬送物保管棚が設けられ、
前記補正手段は、前記複数の被搬送物保管棚のうちいずれか1個の前記被搬送物保管棚の被搬送物についての補正情報を、他の前記被搬送物保管棚の補正情報として使用し、前記搬送台車の停止位置を補正することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被搬送物保管システム。
【請求項7】
前記軌道は、複数の環状軌道および前記複数の環状軌道を繋ぐ軌道からなり、
前記補正手段は、
前記複数の環状軌道における一の環状軌道内に設置された複数の被搬送物保管棚のうち一の被搬送物保管棚の一の被搬送物についての補正情報を用いて、同一環状軌道内における他の被搬送物保管棚についての前記搬送台車の停止位置の補正を行なうことを特徴とする請求項6記載の被搬送物保管システム。
【請求項8】
前記軌道は、複数の環状軌道および前記複数の環状軌道を繋ぐ軌道からなり、
前記補正手段は、
前記複数の環状軌道の一の環状軌道内に設置された複数の被搬送物保管棚のうちの一の被搬送物保管棚の一の被搬送物についての補正情報を用いて、同一環状軌道外における他の被搬送物保管棚についての前記搬送台車の停止位置の補正を行なうことを特徴とする請求項6記載の被搬送物保管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−56450(P2008−56450A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237198(P2006−237198)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】