説明

複合ケーブル端末とその端末処理方法と端末固定方法と複合ケーブルの布設方法

【課題】光コード12と給電線14と補強繊維16とを外被18で緩く包囲した複合ケーブルの端末を確実に安定に固定する。
【解決手段】光コード12と給電線14と補強繊維16とを外被18で緩く包囲した複合ケーブル端において、外被18を所定長剥離した外被端19に、ケーブル長手方向に沿って形成された所定長の切れ目28と、外被18の切れ目28を有する部分とこれに包囲される光コード12と給電線14の間に生じた隙間に充填され、両者を一体化する接着剤30と、外被端19の外周に機械的に固定され、外被18の切れ目28から引き出された補強繊維16を外周面に固定した補強スリーブ32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル内のデータ通信と給電のために布設されるディストリビューションタイプの複合ケーブルであって、光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲したものの、複合ケーブル端末とその端末処理方法と端末固定方法と複合ケーブルの布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅導体を備えた電線と光ファイバケーブルとは機械特性が大きく相違する。前者は張力を加えると伸びを生じるが比較的断線し難い。一方、後者は全く伸びないし、引っ張り強度や曲げ強度が比較的弱い。そこで、両者を一括被覆した複合ケーブルには特殊な端末構造が採用される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−287914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
ビル内のデータ通信と給電のために布設されるディストリビューションタイプの複合ケーブルは、光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した構造をしている。空隙には補強繊維が挿入されている。光コードは光ファイバ芯に保護被覆を施した光ファイバケーブルである。この複合ケーブルの端末部を機器等に固定したときに、光コード等の内部心線が固定されずに端末から出入りして、口出し長が一定しないことがある。また、端末部において、ケーブル外被に外圧を加えて固定しようとすると、ケーブルが簡単に潰れてしまい強固に固定することが難しい場合がある。
上記の課題を解決するために、本発明は、光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの端末を確実に安定に固定できる、複合ケーブル端末とその端末処理方法と端末固定方法と複合ケーブルの布設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブル端において、上記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って形成された所定長の切れ目と、上記外被の切れ目を形成した部分に包囲される上記光コードと給電線の間に生じた隙間に充填され、上記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤と、上記外被の切れ目から引き出された補強繊維を外周面に固定し、上記外被端の外周に機械的に固定された補強スリーブとを備えることを特徴とする複合ケーブル端末。
【0005】
ケーブル外被端に所定長の切れ目を設け、この部分に接着剤を充填して、外被とこれに包囲される光コードと給電線を一体化したので、口出し長を一定に保持することができる。また、ケーブル外被端に機械的に固定された補強スリーブを機器にクランプすれば、ケーブル端末を機器に確実に固定できる。補強スリーブの外周面に、外被の切れ目から引き出された補強繊維を固定したので、光コードと給電線に影響無く、ケーブルに加わる張力を補強繊維が担うことができる。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の複合ケーブル端末において、上記補強繊維束が上記外被の切れ目の最奥部から纏めて引き出されて上記補強スリーブ外周に固定されることを特徴とする複合ケーブル端末。
【0007】
補強繊維束が接着剤により光コードや給電線と一体化することがないので、補強繊維束に張力が加わったとき、接着剤で一体化した部分を壊すような力が加わらない。
【0008】
〈構成3〉
構成1または2に記載の複合ケーブル端末において、上記補強繊維束は上記補強スリーブ外周に巻回され縛り付けて固定されることを特徴とする複合ケーブル端末。
【0009】
補強繊維束に張力が加わると、補強繊維束が補強スリーブ外周をより強く締め付けるような力が加わるので、補強繊維束を補強スリーブに固定する力が高まり、簡単な構造で強い張力にも耐えることができる。
【0010】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、上記外被に設けられた切れ目はケーブル軸から見たときに、軸対称に配置されていることを特徴とする複合ケーブル端末。
【0011】
補強繊維に張力が加わったとき、ケーブル軸から見てバランス良くケーブル全周にその力が加わるので、ケーブルに曲がりが生じない。
【0012】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、上記補強スリーブは上記外被よりも形状保持性の高い材料からなることを特徴とする複合ケーブル端末。
【0013】
補強スリーブを機器にクランプを用いて固定するようなが加わっても、補強スリーブはその形状を保持して潰れを生じないので、光コードや給電線を保護できる。
【0014】
〈構成6〉
構成5に記載の複合ケーブル端末において、上記補強スリーブはステンレスシートとプラスチックフィルムを積層したラミネートテープであって、上記プラスチックフィルムを上記ケーブル外被端に融着一体化して固定したことを特徴とする複合ケーブル端末。
【0015】
ステンレスシートとプラスチックフィルムを積層したラミネートテープは、薄くて強度も強く、耐腐食性もよいので、ケーブル外被に包囲された光コードや給電線を、機械的、化学的に保護できる。
【0016】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、上記接着剤は光コードと給電線のいずれの絶縁体よりもヤング率が小さいことを特徴とする複合ケーブル端末。
【0017】
ケーブル端末に外被からケーブル軸心に向かう圧縮力が加わっても、光コードや給電線の絶縁体に機械的な損傷を与えることがない。
【0018】
〈構成8〉
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの端において、上記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、上記外被の切れ目を形成した部分に包囲される上記光コードと給電線の間に生じた隙間に、両者を一体化する接着剤を充填し、補強スリーブを、上記外被端の外周に機械的に固定し、上記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定することを特徴とする複合ケーブルの端末処理方法。
【0019】
〈構成9〉
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの端において、上記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、上記外被の切れ目を形成した部分に包囲される上記光コードと給電線の間に生じた隙間に、上記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤を充填し、補強スリーブを、上記外被端の外周に機械的に固定し、上記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定して、上記補強スリーブを機器のクランプで把持し、上記全ての補強繊維束の端を上記補強スリーブ外周から光コードと給電線の端末側に引き出して、一箇所で結束し、この結束端を、上記機器のクランプ近傍に固定することを特徴とする複合ケーブルの端末固定方法。
【0020】
〈構成10〉
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの一方の端部に、上記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、上記外被の切れ目を有する部分とこれに包囲される上記光コードと給電線の間に生じた隙間に、上記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤を充填し、補強スリーブを、上記外被端の外周に機械的に固定し、上記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定し、上記複合ケーブルの他方の端部を牽引することを特徴とする複合ケーブルの布設方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
携帯電話のビル内不感地エリア解消の為に、IMCS(Inbuilding Mobile Communication System )というシステムが知られている。その配線ケーブルとして光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルが使用される。この複合ケーブルは、ビル内の通信親機から、各フロアに設置される子機(携帯電話用アンテナ)間を繋ぐケーブルとして利用される。
【0022】
この複合ケーブルは、屋内配線工事を容易にする為に、より細く且つ可とう性の良いものが求められている。既知の光ファイバ複合ケーブルは、スチール製のテンションメンバを有し、これを用いて配線工事時の引き取りや端末の固定を行っていた。これに対して、以下の実施例で使用するディストリビューションタイプのケーブルにはテンションメンバが無い。従って、内部心線が自由に移動してしまい、口出し長がコントロールできない。また、ケーブル外被に外圧を加えて固定するクランプを用いる場合、外被と抗張力体が一体化していない為、十分な固定ができない。
【0023】
そこで、本発明では、複合ケーブルの端末内部に接着剤を充填し、光コードと給電線を固定及び保護し、更にその端末外被上に、例えば、SUS製のラミネートテープ等からなる補強スリーブを固定し、ケーブル抗張力体(補強繊維束)を補強スリーブに結び付けた。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1の複合ケーブル端末10を示す側面図である。また、図2はその複合ケーブルのA−A断面図である。
図2に示すように、複合ケーブルは、光コード12と給電線14と補強繊維16とドレンワイヤ20とを外被18で緩く包囲した構成をしている。図1(a)に示すように、複合ケーブル端末10は、外被18を所定長剥離して、光コード12と給電線14を口出し処理し、光コード12には光コネクタ24を取り付けたものである。この外被端19に、ケーブル長手方向に沿って所定長の一対の切れ目28が形成されている。図では手前の切れ目28のみが見えている。もう一方は反対側にある。外被18の切れ目28を有する部分と、これに包囲される光コード12と給電線14の間に生じた隙間には、後で説明する接着剤30が充填され、外被18と光コード12と給電線14とドレンワイヤ20とが一体化されている。
【0025】
例えば、上記の外被18には難燃性の黒色ポリエチレンを使用する。補強繊維16は例えばアラミド繊維である。光コード12にはアラミド繊維を縦添えした紫外線硬化型樹脂被覆石英光ファイバで、塩化ビニル樹脂を被覆したコード外径2mmのものを使用した。給電線14には外径0.6mmの導体を7本撚り合わせた軟銅撚り線でポリエチレン絶縁被覆を施し、外径3.4mmのものを使用した。ドレンワイヤ20には外径0.26mmの導体を7本撚り合わせた錫メッキ軟銅線を使用した。複合ケーブルの仕上外径は約11mmである。この複合ケーブルは、このように、ディストリビューションタイプに適する柔軟な構造になっている。
【0026】
また、外被端19の外周には、補強スリーブ32が機械的に固定されている。さらに、複合ケーブル内部の補強繊維16は2分されて、半分ずつ外被18に設けた一対の切れ目28から引き出されている。これらは、補強スリーブ32の外周面に縛り付けられ、図1の(b)に示すようにテープ巻き層22で押さえつけることにより、補強スリーブ32に固定されている。また、2本の補強繊維16の端部はかしめ金具26により集合結束されている。補強スリーブ32は機器に対して、後で説明するクランプにより固定される。かしめ金具26も機器に適当な方法で固定されるとよい。
【実施例2】
【0027】
図3〜図6は、本発明の複合ケーブルの端末処理方法説明図である。
まず、図3(a)に示すように複合ケーブルの端末において、外被18を所定長剥離して、光コード12と給電線14とドレンワイヤ20とを口出し処理する。そして、外被端19の部分に破線のように切れ目28を入れる。こうして、図3(b)に示すように、ケーブル外被を端末部にて半割にし、抗張力体である補強繊維16を、二等分の束にし、それぞれの切れ目28の最奥部から引き出しておく。
【0028】
外被端19を半割にした部分の光コード12と給電線14には、図4(a)に示すように、接着剤30を塗布(充填)して、半割にした外被端19を元に戻し、図4(b)に示すように仮止めテープ31で固定する。接着剤30には、エポキシ系の樹脂を使用するとよい。接着剤30の硬化後の堅さは、堅すぎず、多少柔軟性を持つ物を使用する方がよい。例えば、接着剤30は光コード12と給電線14のいずれの絶縁体よりもヤング率が小さいものを使用することが好ましい。これにより、ケーブル端末に外被18からケーブル軸心に向かう圧縮力が加わっても、光コード12や給電線14の絶縁体に機械的な損傷を与えることがない。また、半割にした外被端19に接着剤30を塗布充填するので、作業性が非常に良い。予定した所定長分だけ隙間無く接着剤30を充填できる。このとき、接着剤30の成型のための型やコネクタハウジングも不要である。
【0029】
その後、接着剤30が硬化した後に仮止めテープ31を剥がす。次に、図5の(a)に示すように、外被端19の外周上にラミネートテープを熱融着させる。これが、補強スリーブ32となる。ラミネートテープはステンレスシートとプラスチックフィルムを積層したものであって、プラスチックフィルムをケーブル外被端19に融着一体化して固定する。実施例のラミネートテープは厚さ約0.275mmで、強度的にも十分であり、且つケーブル外径をほとんど太くすることもない。なお、ラミネートテープを用いずに、ケーブル外径と同じ内径のステンレススチールパイプを用いても良い。ステンレスシートとプラスチックフィルムを積層したラミネートテープは、薄くて強度も強く、耐腐食性もよいので、ケーブル外被18に包囲された光コード12や給電線14を、機械的、化学的に保護できる。補強スリーブ32は外被18よりも形状保持性の高い材料からなることが好ましい。補強スリーブ32を機器にクランプを用いて固定するような力が加わっても、補強スリーブ32はその形状を保持して潰れを生じないので、光コード12や給電線14を保護できる。
【0030】
その後、図5の(b)に示すように、二等分して引き出しておいた補強繊維16を補強スリーブ32上で縛り、各々の束がケーブル断面からみて外被端19の両サイドから引き出されるように配置する。さらに、図5(c)に示すように、補強スリーブ32と補強繊維16とを、テープ巻き層22で包囲して固定する。テープ巻き層22には粘着性のビニルテープを使用する。補強繊維16を補強スリーブ32上に巻き付けて縛ることにより、ケーブルに張力が加わって補強繊維16が引っ張られたとき、撚り締まりの効果で位置がずれず、外被端19と補強スリーブ32と補強繊維16とを強固に一体化することが可能となる。更に、補強繊維16を両サイドから引き出すことにより、張力が一方に集中してケーブルが曲げられるという心配もない。
【0031】
最後に、2分された補強繊維16の端部は図6(a)に示すようにかしめ金具26で束ねて一箇所に固定結束する。かしめ金具26は図6(b)に示すように、アルミニウムのスリーブ等からなり、圧縮により補強繊維16の端末を固定するものであることが好ましい。このように構成すると、金属製のケーブルクランプやゴムブッシュ等を用いて、ケーブル外被に圧力をかけてケーブル端末を固定する治具を用いても、光コード12や給電線14に影響を与える事はない。
【0032】
図7は、上記の構成のケーブル端末部の保護構造を示す側面図である。
図に示すように、完成した複合ケーブル端末10上に保護管34を被せる。保護管34は例えばポリエチレンの筒でケーブルの布設作業時に複合ケーブル端末10を保護するためのものである。上記のように、ケーブル外被端19に所定長の切れ目28を設け、この部分に接着剤30を充填して、外被18とこれに包囲される光コード12と給電線14を一体化したので、口出し長を一定に保持することができる。即ち、図7に示すような状態で複合ケーブルの他端を引き取って管路に布設するような外力が加わっても、外被端19から引き出された光コード12と給電線14の長さを一定に保持できる。
【実施例3】
【0033】
図8は複合ケーブル端末10の機器側固定構造説明図で、(a)は平面図、(b)はB−B断面図である。
図に示すように、複合ケーブル端末10は、機器の部分で、例えば、鞍形のクランプ36を用いて固定される。ケーブル外被端19に機械的に固定された補強スリーブ32(図5)を、テープ巻き層22を介して機器にクランプ36とビス40を用いて機器38に固定すれば、ケーブル端末が潰れないで確実にケーブル外被端19を固定できる。図5に示したように、補強スリーブ32の外周面に、外被18の切れ目28から引き出された補強繊維16を固定すれば、光コード12と給電線14に影響無く、複合ケーブルに加わる張力を補強繊維16が担うことができる。
【0034】
さらに、ケーブル端末を機器に固定するクランプ36が補強繊維16を補強スリーブ32の外周面に押しつけるような力を及ぼすので、補強スリーブ32と補強繊維16との間の摩擦力が高まり固定が緩まない。また、光コード12と給電線14を一体化する接着剤30を設けた部分と、補強スリーブ32と、補強繊維16の固定端とをほぼ同位置に集中させることができるので、ケーブル接続端末の全長をコンパクトに形成できる。
【0035】
図9の(a)は従来技術による複合ケーブル端末固定部平面図、(b)は本発明の複合ケーブル端末の補強繊維固定方法説明図である。
従来技術によれば、図の(a)のように、複合ケーブル50の端末をクランプ51で固定し、補強繊維52を引き出してケーブルの両側で固定し、ケーブル芯53を接着剤でモールドしてクランプ54で固定する。従って、機器への固定構造がケーブル長手方向に見て大型になる。しかも、それぞれ機器への固定作業が必要になる。一方、本発明によれば、上記の図8(a)と(b)のように、ケーブル外被端19と補強繊維16と接着剤30の部分を、補強スリーブ32を包囲する1個のクランプ36で一括固定できる。固定作業は一回ですむ。なお、本発明の複合ケーブル端末において、補強繊維16は、図9(b)に示すように、その端をかしめ金具26で結束した後に、機器に対してピン42等を用いて固定するとよい。
【実施例4】
【0036】
図10は本発明の複合ケーブルの横断面説明図で、(a)は側面図、(b)はC−C横断面図、(c)はD−D横断面図、(d)はE−E横断面図である。
図1の実施例では、補強繊維16が外被18の切れ目28の最奥部から纏めて引き出されており、これが補強スリーブ32の外周に巻き付け固定されている。なお最奥部というのは、ケーブルを長手方向にみたとき、ケーブル外被端19の光コード12や給電線14が口出しされた側と反対部分のことをいう。こうすると、補強繊維16が接着剤30により光コード12や給電線14と一体化することがない。即ち、図10(b)に示したように、補強繊維16は、外被18の断面全体に、空隙を覆うように挿入されている。しかしながら、切れ目28の最奥部付近から、補強繊維16を引き出すと、図10(c)に示すように、全ての補強繊維16が切れ目28方向に引き寄せられて、光コード12や給電線14がフリーの状態になる。
【0037】
その空隙に接着剤30を充填すると、図10(d)に示すように、補強繊維16が無く、光コード12と給電線14とドレンワイヤ20だけが一体化される。即ち、接着剤30は光コード12と給電線14とドレンワイヤ20とを一体化するが、補強繊維16にはほとんど付着しない。このケーブル端末10の他端側を牽引して電線管等に複合ケーブルを布設するとき、補強繊維16にその引き取り力が伝わる。光コード12や給電線14と補強繊維16とが接着剤30で一体化していると、補強繊維16が接着剤30の層を壊す。上記の実施例のように、そこで、接着剤30を充填する部分よりも、給電線14が口出しされた側から遠い場所で、補強繊維16を外へ取り出すと、ケーブルの他端側から補強繊維16に張力が加わったとき、接着剤30で一体化した部分を壊すような力が加わらない。
【0038】
なお、上記の実施例によれば、外被18に設けられた切れ目28は、図10(d)に示すように、ケーブル軸から見たときに、左右軸対称に配置されている。こうすれば、補強繊維16に張力が加わったとき、ケーブル軸から見てバランス良くケーブル全周にその力が加わるので、ケーブルに曲がりが生じない。従って、例えば、切れ目を3本あるいは4本設ける場合においても、ケーブル軸から見たときに、軸対称に配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の複合ケーブル端末10を示す側面図である。
【図2】実施例1の複合ケーブルのA−A断面図である。
【図3】本発明の複合ケーブルの端末処理方法説明図(その1)である。
【図4】本発明の複合ケーブルの端末処理方法説明図(その2)である。
【図5】本発明の複合ケーブルの端末処理方法説明図(その3)である。
【図6】本発明の複合ケーブルの端末処理方法説明図(その4)である。
【図7】上記の構成のケーブル端末部保護構造を示す側面図である。
【図8】複合ケーブル端末10の機器側固定構造説明図で、(a)は平面図、(b)はB−B断面図である。
【図9】(a)は従来技術による複合ケーブル端末固定部平面図、(b)は本発明の複合ケーブル端末の補強繊維固定方法説明図である。
【図10】本発明の複合ケーブルの横断面説明図で、(a)は側面図、(b)はC−C横断面図、(c)はD−D横断面図、(d)はE−E横断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 複合ケーブル端末
12 光コード
14 給電線
16 補強繊維
18 外被
19 外被端
20 ドレンワイヤ
22 テープ巻き層
24 光コネクタ
26 かしめ金具
28 切れ目
30 接着剤
31 仮止めテープ
32 補強スリーブ
34 保護管
36 クランプ
38 機器
40 ビス
42 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブル端において、
前記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って形成された所定長の切れ目と、
前記外被の切れ目を形成した部分に包囲される前記光コードと給電線の間に生じた隙間に充填され、前記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤と、
前記外被の切れ目から引き出された補強繊維を外周面に固定し、前記外被端の外周に機械的に固定された補強スリーブとを備えることを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項2】
請求項1に記載の複合ケーブル端末において、
前記補強繊維束が前記外被の切れ目の最奥部から纏めて引き出されて前記補強スリーブ外周に固定されることを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合ケーブル端末において、
前記補強繊維束は前記補強スリーブ外周に巻回され縛り付けて固定されることを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、
前記外被に設けられた切れ目はケーブル軸から見たときに、軸対称に配置されていることを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、
前記補強スリーブは前記外被よりも形状保持性の高い材料からなることを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項6】
請求項5に記載の複合ケーブル端末において、
前記補強スリーブはステンレスシートとプラスチックフィルムを積層したラミネートテープであって、前記プラスチックフィルムを前記ケーブル外被端に融着一体化して固定したことを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の複合ケーブル端末において、
前記接着剤は光コードと給電線のいずれの絶縁体よりもヤング率が小さいことを特徴とする複合ケーブル端末。
【請求項8】
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの端において、前記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、
前記外被の切れ目を形成した部分に包囲される前記光コードと給電線の間に生じた隙間に、両者を一体化する接着剤を充填し、
補強スリーブを、前記外被端の外周に機械的に固定し、
前記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定することを特徴とする複合ケーブルの端末処理方法。
【請求項9】
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの端において、前記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、
前記外被の切れ目を形成した部分に包囲される前記光コードと給電線の間に生じた隙間に、前記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤を充填し、
補強スリーブを、前記外被端の外周に機械的に固定し、
前記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定して、
前記補強スリーブを機器のクランプで把持し、
前記全ての補強繊維束の端を前記補強スリーブ外周から光コードと給電線の端末側に引き出して、一箇所で結束し、この結束端を、前記機器のクランプ近傍に固定することを特徴とする複合ケーブルの端末固定方法。
【請求項10】
光コードと給電線と補強繊維とを外被で緩く包囲した複合ケーブルの一方の端部に、前記外被を所定長剥離した外被端に、ケーブル長手方向に沿って所定長の切れ目を形成し、
前記外被の切れ目を有する部分とこれに包囲される前記光コードと給電線の間に生じた隙間に、前記外被と光コードと給電線を一体化する接着剤を充填し、
補強スリーブを、前記外被端の外周に機械的に固定し、
前記外被の切れ目から引き出された補強繊維を補強スリーブの外周面に固定し、前記複合ケーブルの他方の端部を牽引することを特徴とする複合ケーブルの布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−193768(P2008−193768A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22908(P2007−22908)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】