説明

誘導結合プラズマ処理装置

【課題】 被処理基板の大型化に対応して誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割して従来技術よりも多数の分割片に分割した場合でも、処理室内に強いプラズマを発生させることが可能な誘導結合プラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】 処理室内のプラズマ生成領域に誘導結合プラズマを発生させる高周波アンテナ11a〜11cと、プラズマ生成領域と高周波アンテナ11a〜11cとの間に配置され、複数の誘電部材3a〜3hと、該複数の誘電部材3a〜3hを支持する導電性梁7とを含む誘電体窓部3を備え、導電性梁7が誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割し、かつ、導電性梁7には、導電性梁7が誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割したときに誘電体窓部3の中央部分に高周波アンテナ11a、11bに沿って生じる閉ループ回路200がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)製造用のガラス基板等の基板にプラズマ処理を施す誘導結合プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等の製造工程においては、ガラス基板に所定の処理を施すために、プラズマエッチング装置やプラズマCVD成膜装置等の種々のプラズマ処理装置が用いられる。このようなプラズマ処理装置としては従来、容量結合プラズマ処理装置が多用されていたが、近時、高密度のプラズマを得ることができるという大きな利点を有する誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)処理装置が注目されている。
【0003】
誘導結合プラズマ処理装置は、被処理基板を収容する処理室の誘電体窓の外側に高周波アンテナを配置し、処理室内に処理ガスを供給するとともにこの高周波アンテナに高周波電力を供給することにより、処理室内に誘導結合プラズマを生じさせ、この誘導結合プラズマによって被処理基板に所定のプラズマ処理を施すものである。誘導結合プラズマ処理装置の高周波アンテナとしては、平面状の所定パターンをなす平面アンテナが多用されている。公知例としては、特許文献1がある。
【0004】
近時、被処理基板のサイズが大型化している。例えば、LCD用の矩形状ガラス基板を例にあげると、短辺×長辺の長さが、約1500mm×約1800mmのサイズから約2200mm×約2400mmのサイズへ、さらには約2800mm×約3000mmのサイズへとその大型化が著しい。
【0005】
誘導結合プラズマ処理装置の場合、高周波アンテナと処理室との間に、誘電体窓部を介在させる。被処理基板が大型化すれば、誘電体窓部も大型化される。誘電体窓部には、特許文献1にも記載されているように、一般的に石英ガラス、あるいはセラミックが用いられる。
【0006】
しかし、石英ガラスやセラミックは脆く、大型化には不向きである。このため、例えば、特許文献2に記載されているように4分割する等して、石英ガラスを適当な大きさの分割片に分割することで誘電体窓部の大型化に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3077009号公報
【特許文献2】特許第3609985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、被処理基板の大型化はなお著しく進展している。このため、誘電体窓部の分割数をさらに増やさなければ適当な分割片の大きさにすることができない。
【0009】
しかしながら、被処理基板の大型化に応じ、特許文献2に記載されているような直線的な分割による手法を用いて、特許文献2で一辺当たり二に分割して全体を均等に4分割する方法と同様に誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割して均等に9分割しようとすると、後述の理由により処理室内に発生する誘導電界が小さくなり、これに伴い誘導電界により生成されるプラズマが弱くなってしまう、という事情がある。
【0010】
この発明は、被処理基板の大型化に対応して誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割して従来技術よりも多数の分割片に分割した場合でも、処理室内に強いプラズマを発生させることが可能な誘導結合プラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一態様に係る誘導結合プラズマ処理装置は、処理室内のプラズマ生成領域に誘導結合プラズマを発生させ、基板をプラズマ処理する誘導結合プラズマ処理装置であって、前記プラズマ生成領域に前記誘導結合プラズマを発生させる高周波アンテナと、前記プラズマ生成領域と前記高周波アンテナとの間に配置され、複数の誘電部材と、該複数の誘電部材を支持する導電性梁とを含む誘電体窓部を備え、前記導電性梁が前記誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割し、かつ、前記導電性梁には、前記導電性梁が前記誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割したときに前記誘電体窓部の中央部分に前記高周波アンテナに沿って生じる閉ループ回路がない。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、被処理基板の大型化に対応して誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割して従来技術よりも多数の分割片に分割した場合でも、処理室内に強いプラズマを発生させることが可能な誘導結合プラズマ処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置を概略的に示す断面図
【図2】(A)図は一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第1の分割例を示す平面図、(B)図、(C)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【図3】(A)図は一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第2の分割例を示す平面図、(B)図、(C)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【図4】(A)図は一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第3の分割例を示す平面図、(B)図、(C)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【図5】(A)図は一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第4の分割例を示す平面図、(B)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【図6】高周波アンテナの他例を示す平面図
【図7】(A)図は誘電体窓部を一辺当たり三つに分割した9分割型誘電体窓部の平面図、(B)図〜(D)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【図8】(A)図は誘電体窓部を一辺当たり四つに分割した16分割型誘電体窓部の平面図、(B)図は(A)図から高周波アンテナを省略した平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態の説明に先立ち、誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割しようとすると、処理室内に発生する誘導電界が小さくなる、という事情について説明する。
【0015】
図7Aは誘電体窓部を一辺当たり三つに分割した9分割型誘電体窓部の平面図、図7B〜図7Dは図7Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0016】
図7A及び図7Bに示すように、9分割型誘電体窓部103は、縦横それぞれ3×3の合計9枚の分割片(分割された複数の誘電部材)103a〜103iに分割されている。分割片103a〜103iは格子状の平面パターンを持つ導電性支持梁、例えば金属支持梁107により支持されている。高周波アンテナ111は、本例では3組あり、それぞれ内側高周波アンテナ111a、中間高周波アンテナ111b、並びに外側高周波アンテナ111cに別れている。内側高周波アンテナ111aは、誘電体窓部103の中央部分に配置された1つの分割片103iの上方に配置され、中間高周波アンテナ111b及び外側高周波アンテナ111cは、誘電体窓部103の外側部分に配置された8つの分割片103a〜103hの上方に配置されている。
【0017】
しかし、このような9分割型誘電体窓部103であると、内側高周波アンテナ111aと中間高周波アンテナ111bとの間の金属梁107内に、これら内側高周波アンテナ111aと中間高周波アンテナ111bに沿って環状に寄生的に生じる閉ループ回路200ができてしまう。
【0018】
閉ループ回路200には、内側高周波アンテナ111a及び中間高周波アンテナ111bに時計回りに電流Iが流れると、反時計回りに電流Iiが流れる(図7C)。反対に、内側高周波アンテナ111a及び中間高周波アンテナ111bに反時計回りに電流Iが流れると、閉ループ回路200には時計回りに電流Iiが流れる(図7D)。いわゆる、逆起電力である。
【0019】
金属梁107中に逆起電力による電流Iiが流れると、電流Iiは、内側高周波アンテナ111a及び中間高周波アンテナ111bにより処理室内に発生される誘導電界を打ち消すように作用する。このため、処理室内に発生する誘導電界が小さくなり、処理室内に発生するプラズマが弱ってしまう。このような事情を、以下の実施形態では解決する。
【0020】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、全図にわたり、同一の部分には同一の参照符号を付す。
【0021】
図1はこの発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。図1に示す誘導結合プラズマ処理装置は、例えば、FPD用ガラス基板上に薄膜トランジスタを形成する際のメタル膜、ITO膜、酸化膜等のエッチングや、レジスト膜のアッシング処理等のプラズマ処理に用いることができる。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。また、FPD用ガラス基板に限らず、太陽電池パネル用ガラス基板に対する上記同様のプラズマ処理にも用いることができる。
【0022】
プラズマ処理装置は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムからなる角筒形状の気密な本体容器1を有する。本体容器1は、接地線2により接地されている。本体容器1は、本体容器1と絶縁されて形成された誘電体窓部3により上下にアンテナ室4および処理室5に区画されている。誘電体窓部3は、本例では処理室5の天井壁を構成する。誘電体窓部3は、誘電材料を用いて構成される。誘電材料は、例えば、石英ガラス、あるいはセラミックである。
【0023】
アンテナ室4の側壁4aと処理室5の側壁5aとの間には、誘電体窓部3に向かって、本体容器1の内側に突出する支持棚6及び支持梁7が設けられている。支持棚6及び支持梁7は導電性材料、望ましくは金属で構成される。以下、金属支持棚6、及び金属支持梁7と呼ぶ。金属の例としてはアルミニウムである。金属支持梁7は、本例では処理ガス供給用のシャワー筐体を兼ねる。金属支持梁7がシャワー筐体を兼ねる場合には、金属支持梁7の内部に、被処理基板Gの被処理面に対して平行に伸びるガス流路8が形成される。ガス流路8には、処理室5内に処理ガスを噴出する複数のガス吐出孔8aが形成される。ガス流路8には、処理ガス供給機構9からガス供給管10を介して処理ガスが供給され、ガス吐出孔8aから処理室5の内部に、処理ガスが吐出される。
【0024】
誘電体窓部3の上のアンテナ室4内には、誘電体窓部3に面するように高周波アンテナ11が配置されている。高周波アンテナ11は絶縁部材からなるスペーサ12により誘電体窓部3から離間して配置されている。プラズマ処理の間、高周波アンテナ11には誘導電界形成用の高周波電力が、第一の高周波電源13から整合器14及び給電部材15を介して供給される。高周波電力の周波数は、例えば、13.56MHzである。高周波電力が高周波アンテナ11に供給されることで、処理室5内のプラズマ生成領域には誘導電界が形成される。この誘導電界により複数のガス吐出孔8aから供給された処理ガスが、処理室5内のプラズマ生成領域においてプラズマ化される。
【0025】
処理室5内の下方には、誘電体窓部3を介して高周波アンテナ11と対向する載置台16が、本体容器1から絶縁部材17によって絶縁された状態で配置されている。載置台16は、導電性材料、例えば、表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台16には、被処理基板G、例えば、LCDガラス基板が載置される。載置台16には静電チャック(図示せず)が設けられている。被処理基板Gは、静電チャックによって載置台16に吸着保持される。載置台16には、第二の高周波電源18が整合器19及び給電線20を介して接続されている。本例では、プラズマ処理の間、載置台16にバイアス用の高周波電力を、第二の高周波電源18から整合器19及び給電線20を介して供給する。バイアス用の高周波電力の周波数は、例えば、3.2MHzである。バイアス用の高周波電力を載置台16に印加することで、処理室5内に生成されたプラズマ中のイオンは、効果的に被処理基板Gに引き込まれる。また、特に図示しないが、載置台16内には、被処理基板Gの温度を制御するためセラミックヒータ等の加熱手段や、冷媒流路等からなる温度制御機構、及び温度センサーなどが設けられる。
【0026】
処理室5の側壁5aには、処理室5の内部へ被処理基板Gを搬入出する搬入出口21が設けられている。搬入出口21はゲートバルブ22によって開閉される。
【0027】
処理室5の底壁5bには、処理室5の内部を排気する排気口23が設けられている。排気口23には真空ポンプ等を含む排気装置24が接続される。排気装置24により、処理室5の内部が排気され、プラズマ処理の間、処理室5の内部の圧力が所定の真空雰囲気(例えば、1.33Pa)に設定、維持される。
【0028】
誘導結合プラズマ処理装置は、コンピュータを含む制御部25により制御される。制御部25には、ユーザインターフェース26及び記憶部27が接続されている。ユーザインターフェース26には、工程管理者が、誘導結合プラズマ処理装置を管理するためのコマンド入力操作等を行うキーボードや、誘導結合プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等が含まれている。記憶部27には、誘導結合プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部25の制御にて実現する制御プログラムや、処理条件に応じて誘導結合プラズマ処理装置の各部に処理を実行させるプログラム(プロセスレシピ)が格納される。プロセスレシピは、ハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよいし、CD−ROM、DVD等の可搬性の記憶媒体に収容された状態で記憶部27にセットするようになっていてもよい。さらに、プロセスレシピは、例えば、専用回線を介して別の装置から適宜伝送させるようにしてもよい。プラズマ処理は、ユーザインターフェース26からの指示等にて任意のプロセスレシピを記憶部27から呼び出し、プロセスレシピに従った処理を制御部25に実行させることで、制御部25の制御のもと行われる。
【0029】
次に、この発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部について説明する。
【0030】
(誘電体窓部の第1の分割例)
図2Aはこの発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第1の分割例を示す平面図、図2B、図2Cは図2Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0031】
図2A及び図2Bに示すように、第1の分割例に係る誘電体窓部3の平面形状は矩形状である。矩形状の誘電体窓部3は一辺当たり三つに分割され、それぞれ分割片(分割された複数の誘電部材)3a〜3hに8分割されている。これら分割誘電体窓3a〜3hはそれぞれ、金属支持棚6及び金属支持梁7上に支持される。
【0032】
高周波アンテナ11は、本例では環状の内側高周波アンテナ11aと、環状の外側高周波アンテナ11cと、内側高周波アンテナ11aと外側高周波アンテナ11cとの間に、環状の中間高周波アンテナ11bとが備えられている。
【0033】
本例における誘電体窓部3の分割の仕方は次の通りである。
【0034】
先に説明したとおり、誘電体窓部を単純に一辺当たり三つに分割すれば図7のような9分割の構成が得られるが、本実施の形態のアンテナ構成においては逆起電力による電流が閉ループ回路200に流れてしまうため、この閉ループ回路200が生じるのを防がなければならない。そこで、図2Cに示すように、金属支持梁7を用いて、矩形状の誘電体窓部3を一辺当たり三つに分割する際に図中想像線(2点鎖線)で示すような誘電体窓部3の中央部分に閉ループ回路200が生じるのを防ぐため、本例では、閉ループ回路200を生じさせる金属支持梁7を、図中矢印で示すように誘電体窓部3の中心点に向けて曲げる。これにより、高周波アンテナ11、本例では図2Aに示すように、内側高周波アンテナ11aが、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7と交差する。このように金属支持梁7の配置を工夫することで、内側高周波アンテナ11aと中間高周波アンテナ11bとの間に、これらのアンテナ11a、11bに沿って生じようとしていた閉ループ回路200を消失させた。閉ループ回路200を消失させた結果、金属支持梁7には逆起電力による電流が流れることはなくなり、誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割しようとした際に生ずる、処理室5内に発生する誘導電界が小さくなる、という事情を解消することができる。図2Cに示すように、金属支持梁7を用いて、矩形状の誘電体窓部3を一辺当たり三つに分割しようとすると、図中想像線で示すように、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7中に閉ループ回路200が生じようとする。本例では、閉ループ回路200を生じさせようとする金属支持梁7を、図中矢印で示すように誘電体窓部3の中心点に向けて曲げる。これにより、高周波アンテナ11、本例では図2Aに示すように、内側高周波アンテナ11aが、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7と交差する。このように金属支持梁7の配置を工夫することで、内側高周波アンテナ11aと中間高周波アンテナ11bとの間に、これらのアンテナ11a、11bに沿って生じようとしていた閉ループ回路200を消失させた。閉ループ回路200を消失させた結果、金属支持梁7には逆起電力による電流が流れることはなくなり、誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割しようとした際に生ずる、処理室5内に発生する誘導電界が小さくなる、という事情を解消することができる。
【0035】
よって、一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置によれば、誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割した場合でも、処理室5内に強いプラズマを発生させることが可能となる、という利点を得ることができる。
【0036】
なお、本例においては、金属支持梁7は誘電体窓部3の中央部分において放射状に延びる放射状部位を有し、金属支持梁7が前記誘電体窓部3の中央部分で交差している平面形状を有している。
【0037】
また、放射状部位は、誘電体窓部3の対角線に沿ったものとなっている。
【0038】
(誘電体窓部の第2の分割例)
上記誘電体窓部を一辺当たり三分割した際に生ずる、処理室5内に発生する誘導電界が小さくなる、という事情は、誘電体窓部を一辺当たり四分割した際にも生ずる。参考例を図8A、図8Bに示す。
【0039】
図8Aは誘電体窓部を一辺当たり四つに分割した16分割型誘電体窓部の平面図、図8Bは図8Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0040】
図8A及び図8Bに示すように、16分割型誘電体窓部103は、縦横それぞれ4×4の合計16枚の分割片(分割された複数の誘電部材)103a〜103pに分割されている。これら分割片103a〜103pは格子状の平面パターンを持つ導電性支持梁、例えば金属支持梁107により支持されている。高周波アンテナ111は、内側高周波アンテナ111a、中間高周波アンテナ111b、並びに外側高周波アンテナ111cを備えており、内側高周波アンテナ111a及び中間高周波アンテナ111bは、誘電体窓部103の中央部分に配置された4つの分割片103m〜103pの上方に配置され、外側高周波アンテナ111cは、誘電体窓部103の外側部分に配置された12の分割片103a〜103lの上方に配置されている。
【0041】
このような16分割型誘電体窓部103においては、図8Aに示すように、中間高周波アンテナ111bと外側高周波アンテナ111cとの間の金属梁107内に、これら中間高周波アンテナ111bと外側高周波アンテナ111cに沿って環状に寄生的に生じる閉ループ回路200ができる。閉ループ回路200には、図7A〜図7Cに示した9分割型誘電体窓部の閉ループ回路200と同様に、逆起電力による電流が流れる。よって、逆起電力による電流が、内側高周波アンテナ111a及び中間高周波アンテナ111bにより処理室内に発生される誘導電界を打ち消すように作用し、処理室内に発生する誘導電界が小さくなり、処理室内に発生するプラズマが弱まる。
【0042】
このように、閉ループ回路200は、金属支持梁107が誘電体窓部103を一辺当たり三以上に分割したときに生じるものである。逆に言えば特許文献2のように誘電体窓部103を一辺当たり二に分割したときには、このような閉ループ回路は生じないから、本件出願のような解決課題はない。
【0043】
第2の分割例は、誘電体窓部を一辺当たり四つに分割したときに、閉ループ回路200を消失させる例である。
【0044】
図3Aはこの発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第2の分割例を示す平面図、図3B、図3Cは図3Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0045】
図3A及び図3Bに示すように、第2の分割例に係る誘電体窓部3の平面形状は、第1の分割例と同様に矩形状である。矩形状の誘電体窓部3は一辺当たり四つに分割され、それぞれ分割片(分割された複数の誘電部材)3a〜3lに12分割されている。これら分割誘電体窓3a〜3lはそれぞれ、金属支持棚6及び金属支持梁7上に支持される。
【0046】
高周波アンテナ11は、環状の内側高周波アンテナ11aと、環状の外側高周波アンテナ11cと、内側高周波アンテナ11aと外側高周波アンテナ11cとの間に、環状の中間高周波アンテナ11bとが備えられている。
【0047】
本例における誘電体窓部3の分割の仕方は次の通りである。
【0048】
先に説明したとおり、誘電体窓部を単純に一辺当たり四つに分割すれば図8のような16分割の構成が得られるが、本実施の形態のアンテナ構成においては逆起電力による電流が閉ループ回路200に流れてしまうため、この閉ループ回路200が生じるのを防がなければならない。そこで、図3Cに示すように、金属支持梁7を用いて誘電体窓部3を一辺当たり四つに分割する際に誘電体窓部3の中央部分に閉ループ回路200が生じる(図中想像線で示す)のを防ぐため、本例では、閉ループ回路200を生じさせる金属支持梁7を、第1の分割例と同様に、図中矢印で示すように誘電体窓部3の中心点に向けて曲げる。これにより、高周波アンテナ11、本例では図3Aに示すように、内側高周波アンテナ11a、中間高周波アンテナ11bが、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7と交差する。
【0049】
このように第2の分割例においても、内側高周波アンテナ11a、中間高周波アンテナ11bが金属支持梁7と交差するように、金属支持梁7の配置を工夫したことで、中間高周波アンテナ11bと外側高周波アンテナ11cとの間に、これらのアンテナ11b、11cに沿って生じようとしていた閉ループ回路200を消失させている。閉ループ回路200が消失した結果、第2の分割例においても、第1の分割例と同様の利点を得ることができる。
【0050】
なお、本例においても、金属支持梁7は誘電体窓部3の中央部分において放射状に延びる放射状部位を有しており、金属支持梁7が前記誘電体窓部3の中央部分で交差している平面形状を有している。
【0051】
また、放射状部位は、誘電体窓部3の対角線に沿ったものとなっている。
【0052】
(誘電体窓部の第3の分割例)
第3の分割例は、第1の分割例から、さらに分割数を上げた例である。
【0053】
図4Aはこの発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第3の分割例を示す平面図、図4B、図4Cは図4Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0054】
図4A及び図4Bに示すように、第3の分割例においては、矩形状の誘電体窓部3を一辺当たり三つに分割し、さらに角部以外の分割片については、さらに誘電体窓部3の周方向に沿って、さらに分割している。この結果、本例では誘電体窓部3は、それぞれ分割片(分割された複数の誘電部材)3a〜3lに12分割される。これら分割誘電体窓3a〜3lはそれぞれ、金属支持棚6及び金属支持梁7上に支持される。
【0055】
本例における誘電体窓部3の分割の仕方は次の通りである。
【0056】
図4Cに示すように、金属支持梁7を用いて誘電体窓部3を周方向θに沿ってさらに分割しようとすると、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7中に閉ループ回路200が生じる(図中想像線で示す)。本例では、閉ループ回路200を生じさせようとする金属支持梁7を、誘電体窓部3の中心点に向けて曲げるのではなく、閉ループ回路200が消失されるように、金属支持梁7を、誘電体窓部3の中央部分において途切れるように配置したものである。
【0057】
このように、第3の分割例においては、閉ループ回路200を生じさせようとする金属支持梁7を誘電体窓部3の中央部分において途切れさせることで、中間高周波アンテナ11bと外側高周波アンテナ11cとの間に、これらのアンテナ11b、11cに沿って生じようとしていた閉ループ回路200を消失させる。閉ループ回路200が消失した結果、第3の分割例においても、第1、第2の分割例と同様の利点を得ることができる。
【0058】
(誘電体窓部の第4の分割例)
第4の分割例は、誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割する際、誘電体窓部3の中央部分にある全ての金属支持梁7を、高周波アンテナ11と交差するように、金属支持梁7の配置を工夫したものである。
【0059】
図5Aはこの発明の一実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置が備える誘電体窓部の第4の分割例を示す平面図、図5Bは図5Aから高周波アンテナを省略した平面図である。
【0060】
図5A及び図5Bに示すように、第4の分割例においては、矩形状の誘電体窓部3を一辺当たり三分割(例えば、図5Bの上辺においては3a、3b、3cの三分割)する際、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7を、周方向に沿って環状に形成されている内側高周波アンテナ11a、中間高周波アンテナ11b、外側高周波アンテナ11cと交差する方向に配置したものである。本例では、周方向と交差する方向として、誘電体窓部3の対角線方向としている。誘電体窓部3を2つの対角線に沿って、まず4分割する。
【0061】
さらに、誘電体窓部3を、第1の辺の中心o1と第1の辺に時計回りに隣接する第2の辺の中心o2とを結ぶ線、第2の辺の中心o2と第2の辺に時計回りに隣接する第3の辺の中心o3とを結ぶ線、第3の辺の中心o3と第3の辺に時計回りに隣接する第4の辺の中心o4とを結ぶ線、第4の辺の中心o4と第4の辺に時計回りに隣接する第1の辺の中心o1とを結ぶ線に沿って、さらに分割する。
【0062】
このような分割により、誘電体窓部3は、それぞれ分割片(分割された複数の誘電部材)3a〜3lに12分割される。これら分割誘電体窓3a〜3lはそれぞれ、金属支持棚6及び金属支持梁7上に支持される。
【0063】
このように、誘電体窓部3の中央部分において、金属支持梁7の全ての辺が、高周波アンテナ11a、11b、11cと交差するように、金属支持梁7の配置を工夫しても閉ループ回路200が発生しなくなる。閉ループ回路200が発生しない結果、第4の分割例においても、第1〜第3の分割例と同様の利点を得ることができる。
【0064】
以上、この発明の実施形態によれば、誘電体窓部3を一辺当たり三以上に分割した場合でも、逆起電力が発生するような閉ループ回路を生じることが無いので、処理室5内に強いプラズマを発生させることが可能な誘導結合プラズマ処理装置を提供することができる。
【0065】
なお、この発明は上記一実施形態に限定されることなく種々変形可能である。また、この発明の実施形態は上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0066】
例えば、高周波アンテナ11の構造は上記実施形態に開示した構造に限るものではない。例えば、図6に示すような渦巻状の高周波アンテナ40も用いることができる。
【0067】
図6に示すように、渦巻状の高周波アンテナ40は、その中心部の周囲に、中心からほぼ同一半径位置で90°ずつ、ずれた位置に図1に示した給電部材15に接続される4つの給電部41、42、43、44を有し、これら各給電部41、42、43、44から2本ずつのアンテナ線が外側に延びて構成される。各アンテナ線の終端にはコンデンサ45が接続され、各アンテナ線はコンデンサ45を介して接地される。
【0068】
このような渦巻状の高周波アンテナ40においては、アンテナ線が密に配置された箇所を持つ。本例では、アンテナ線が密に配置された箇所を、内側と外側とに二箇所有している。アンテナ線が密に配置された内側箇所46aは、上記一実施形態の内側高周波アンテナ11aに対応する。また、アンテナ線が密に配置された外側箇所46bは、上記一実施形態の中間高周波アンテナ11b又は外側高周波アンテナ11cに対応する。
【0069】
なお、高周波アンテナ11の構造は、環状、又は渦巻状に限らず、本体容器1内に誘導電界を形成することができるならば、如何なる構造であっても採用することができる。
【0070】
さらにまた、上記実施形態では誘導結合プラズマ処理装置の一例としてアッシング装置を例示したが、アッシング装置に限らず、エッチングや、CVD成膜等の他方のプラズマ処理装置に適用することができる。
【0071】
さらにまた、被処理基板としてFPD基板を用いたが、この発明はこれに限らず半導体ウエハ等他方の基板を処理する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1;本体容器、3;誘電体窓部、4;アンテナ室、5;処理室、6;金属支持棚、7;金属支持梁、11;高周波アンテナ、16;載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内のプラズマ生成領域に誘導結合プラズマを発生させ、基板をプラズマ処理する誘導結合プラズマ処理装置であって、
前記プラズマ生成領域に前記誘導結合プラズマを発生させる高周波アンテナと、
前記プラズマ生成領域と前記高周波アンテナとの間に配置され、複数の誘電部材と、該複数の誘電部材を支持する導電性梁とを含む誘電体窓部を備え、
前記導電性梁が前記誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割し、
かつ、前記導電性梁には、前記導電性梁が前記誘電体窓部を一辺当たり三以上に分割したときに前記誘電体窓部の中央部分に前記高周波アンテナに沿って生じる閉ループ回路がないことを特徴とする誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記導電性梁が、前記閉ループ回路が消失されるように、前記誘電体窓部の中央部分において前記高周波アンテナと交差するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記導電性梁が、前記誘電体窓部の中央部分において放射状に延びる放射状部位を有し、前記導電性梁が前記誘電体窓部の中央部分で交差していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記放射状部位は、前記誘電体窓部の対角線に沿っていることを特徴とする請求項3に記載の誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記導電性梁が、前記閉ループ回路が消失されるように、前記誘電体窓部の中央部分において途切れるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項6】
前記誘電体窓部の中央部分において、前記導電性梁の全ての辺が、前記高周波アンテナと交差していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の誘導結合プラズマ処理装置。
【請求項7】
前記高周波アンテナは、少なくとも第1高周波アンテナとこの第1高周波アンテナの外側にある第2高周波アンテナの2つを含み、
前記閉ループ回路は、前記第1高周波アンテナと前記第2高周波アンテナとの間で、かつ、前記第1の高周波アンテナと前記第2の高周波アンテナに沿って環状に生じるものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の誘導結合プラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−227428(P2012−227428A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95155(P2011−95155)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】