説明

車両に搭載された電気機器の冷却制御装置

【課題】車両の後方に搭載されたバッテリを十分に冷却する。
【解決手段】ECUは、エアコンがマニュアルモードでフェースモードであるかオートモードでフェースモードであると(S300にてYESまたは400にてYES)、外気温TH(A)、車内温度TH(IN)、エアコン設定温度TH(AC)、バッテリ温度TH(B)およびバッテリ冷却風温度TH(BF)を検出して(S500)、バッテリ冷却要求度合いを算出するステップ(S600)と、冷却要求度合いから全風量に対するリヤダクトの風量割合を算出するステップ(S700)と、風量割合に応じてモード切り替えドアの開度を制御するステップ(S800、S900)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電気機器(蓄電機構(二次電池、キャパシタ等)、電力変換用半導体素子等)の冷却装置に関し、特に、車両後方に搭載された電気機器を車室内に設けられた吸入口から車室内の空気を吸入して電気機器を冷却する冷却制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の機関を用いることが考えられる。)と電気モータとを組合せたハイブリッドシステムと呼ばれるパワートレインを搭載した車両が開発され、実用化されている。このような車両においては、走行用の電気モータを駆動するための二次電池やキャパシタ等の蓄電機構およびインバータやDC/DCコンバータ等の電力変換用機器の電気機器を搭載している。この二次電池は、化学反応により放電や充電が行なわれ、この化学反応が発熱を伴うため、冷却する必要がある。また、インバータやDC/DCコンバータもパワー素子が発熱するため、冷却する必要がある。一般的に、電気機器においては電力線に電流が流れるとジュール熱が発生するため、冷却する必要がある。
【0003】
このような電気機器は、たとえば、車両後席下部や車両後席とラゲッジルームとの間に配置されることがある。この電気機器は、空気通路をなすダクト状のケーシング内に配置されており、ケーシング内の電気機器の吸気上流側には、電気機器を冷却する冷却風を発生させる冷却ファンが配置されている。そして、このケーシングの上流端部は、車室内に連通(具体的には、後席前方のフロアパネル上に設けられたダクトの吸入口やリヤパッケージトレイに開口した吸入口により連通)しているため、電気機器が、車室内の空気にて冷却されることになる。
【0004】
また、インバータやDC/DCコンバータは、PCU(Power Control Unit)と呼ばれる電気機器として一体化されて車両に搭載されることもある。このPCUも、電気機器として、車両後席下部や車両後席とラゲッジルームとの間に配置されることがある。
【0005】
ハイブリッド車両においては、エンジンに加えてこのような電気機器を搭載しなければならない。特開2006−188182号公報(特許文献1)は、車両の後方に搭載されたバッテリ等の電気機器を十分に冷却可能な、蓄電機構の冷却装置を開示する。この蓄電機構の冷却装置は、車両の室内のシートの下に搭載された蓄電機構の冷却装置であって、室内の空気を蓄電機構に供給するための空気供給手段と、車両の室内に設けられた第1の吸気口および車両の室内であって第1の吸気口とは異なる個所に設けられた第2の吸気口にそれぞれ接続され、空気を空気供給手段に流通させる吸気ダクトと、吸気ダクトに設けられ、各吸気口から吸入される空気の吸入状態に基づいて、第1の吸気口および第2の吸気口の少なくともいずれかと空気供給手段との間の連通状態を切り替えるための切り替え手段とを含む。
【0006】
この蓄電機構の冷却装置によると、たとえば、車両の室内に設けられた第1の吸気口が荷物等により閉塞すると、空気供給手段が蓄電機構に空気を供給しているため、吸気ダクトにおいて、第1の吸気口側の空気の吸入状態が変化する。すなわち、第1の吸気口側の空気の圧力(あるいは、流量)が低下する。切り替え手段は、吸気口から吸入される空気の吸入状態(たとえば、圧力の低下)に基づいて、第2の吸気口と空気供給手段(たとえば、冷却ファン)との間の連通状態を切り替える。これにより、第1の吸気口が荷物等により閉塞しても、第2の吸気口から空気を吸入することができる。そのため、蓄電機構(たとえば、電池パック)の冷却効率の低下を抑制することができる。また、たとえば、第1の吸気口および第2の吸気口のうちのいずれか温度の低い空気を吸入できる一方の吸気口を連通させておき、空気の吸入状態に基づいて、切り替え手段により他方の吸気口が連通するように切り替わると、吸気口が閉塞されていない状態においては、温度の低い空気を選択的に吸入することができる。したがって、冷却効率を向上させ、さらに、吸気口が荷物等により閉塞された場合であっても十分な冷却効率を実現できる蓄電機構の冷却装置を提供することができる。
【特許文献1】特開2006−188182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された蓄電機構の冷却装置は、車両の室内の後席シートの下に搭載された蓄電機構を冷却する。より具体的には、蓄電機構への冷却風を吸入する吸入口(1)を後席のシートクッションの下方に、吸入口(2)をリヤパケージトレイに設ける。前席と後席との間(後席の足元)に荷物等が置かれて吸入口(1)から十分な冷却風を吸入できなくなると、吸入口(2)から冷却風を吸入する。
【0008】
しかしながら、この蓄電機構の冷却装置では、車両の室内の後席シートの下に搭載された蓄電機構を冷却する場合の以下のような問題を解決し得ない。たとえば、気温の高い夏期において車内温度が高いときにエアコンディショナ(以下、エアコンと記載する)を低い温度設定とすると、フェース(FACE)モードとなり、センターレジスターあるいはサイドレジスターとから冷風が吹き出す。ところが、後席下部に設けられた蓄電機構の冷却風の吸入口は、ノイズ対策等の関係からフロアパネルに沿った上方(後席足元近傍)に設けられることが多い。このため、フェースモードでは、後席足元に設けられた吸入口にはエアコンの冷却風が到達しにくい。さらに、このような位置に設けられるとエンジンの排気系配管がフロアパネルの下方に対向して配置されることもあり、特に後席足元近傍に設けられた吸入口の周りの空気温度が高くなる可能性がある。すなわち、夏期において蓄電機構を冷却しにくくなる可能性がある。なお、レジスターとは吹き出し口のことである。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両の後方に搭載された蓄電機構(バッテリ、キャパシタ)等の電気機器を十分に冷却可能な、車両に搭載された電気機器の冷却制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る冷却制御装置は、車両の後部座席側に搭載された電気機器を車室内の空気を用いて冷却する装置を制御する。車両には車室内の空気の温度を調整する温度調整機構が設けられ、温度調整機構は吹き出しの方向が異なる吹き出し口に連通した複数の通路を有する。この制御装置は、温度調整機構により車室内の温度よりも低く温度調整された空気が、車両の前部座席側に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、車両の後部座席方向に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための切り替え手段と、第1の通路に温度調整された空気が流れるように切り替えられている場合において、第2の通路にも温度調整された空気が流れるように、切り替え手段を制御するための制御手段とを含む。
【0011】
第1の発明によると、車室内の空気の温度は温度調整機構(エアコン)により調整される。この温度調整機構は、たとえば、空気密度の温度特性や搭乗者の体感温度等を考慮して、冷気は搭乗者の上体に向けて、暖機は搭乗者の下肢に向けて空気を吹き出すように複数の通路を有し、どの通路に空気を流すのがが切り替えられる。このような状態において、温度調整機構により車室内の温度よりも低く温度調整された空気(冷気)は前部座席側(たとえば搭乗者の上体)に向けて吹き出されるので、車両の後部座席側に設けられた電気機器に冷気は到達しない。このため、車両の後部座席方向に向けて吹き出す吹き出し口からも冷気が吹き出すように制御される。これにより、冷気は第2の通路を通って吹き出し口から車両の後部座席方向に向けて吹き出され、車両の後部座席方向(座席下方でも座席上方でも構わない)に設けられた電気機器に冷気は到達する。その結果、車両の後方に搭載された蓄電機構(バッテリ、キャパシタ)等の電気機器を十分に冷却可能な、車両に搭載された電気機器の冷却制御装置を提供することができる。
【0012】
第2の発明に係る冷却制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、電気機器は車両の後部座席の下方に搭載され、切り替え手段は、温度調整機構により車室内の温度よりも低く温度調整された空気が、前部座席側であって車両の搭乗者の上体に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、車両の後部座席方向であって車室の下方に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための手段を含む。
【0013】
第2の発明によると、車室の下方に向けて吹き出す吹き出し口からも冷気が吹き出すように制御されるので、冷気は第2の通路を通って吹き出し口から車室の下方に向けて吹き出され、車両の後部座席の下方に設けられた電気機器に冷気は到達する。その結果、車両の後方に搭載された蓄電機構(バッテリ、キャパシタ)等の電気機器を十分に冷却可能な、車両に搭載された電気機器の冷却制御装置を提供することができる。
【0014】
第3の発明に係る冷却制御装置においては、第1または2の発明の構成に加えて、第2の通路に連通した吹き出し口は、電気機器を冷却する冷却風を吸入する吸入口に対向するように設けられる。
【0015】
第3の発明によると、車室の下方に向けて吹き出す吹き出し口から吹き出した冷気は、吹き出し口に対向する吸入口から電気機器に到達して、電気機器を冷却できる。これにより、冷気は第2の通路を通って吹き出し口から車室の下方に向けて吹き出され、吸入口を通って電気機器に冷気が到達する。
【0016】
第4の発明に係る冷却制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、温度調整機構は車両の前方に搭載され、吸入口は車両の後席下方に、開口部を車両前方に向けて設けられる。切り替え手段は、車両の前席搭乗者の上体に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、車両の後席搭乗者の下肢に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための手段を含む。
【0017】
第4の発明によると、フロント側に設けられた温度調整機構であるエアコンには、前席搭乗者の上体に向けて吹き出す吹き出し口(センターレジスターやサイドレジスターと呼ばれる)と、後席搭乗者の下肢に向けて吹き出す吹き出し口(リヤダクト)とを有する。リヤダクトからは通常は冷気は吹き出されないが、制御手段により吹き出された冷気は、吹き出し口に対向する吸入口から電気機器に到達して、電気機器を冷却できる。
【0018】
第5の発明に係る冷却制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、車両の搭乗者に温度調整機構に対する違和感を与えない範囲で、第2の通路にも温度調整された空気が流れるように、切り替え手段を制御するための手段を含む。
【0019】
第5の発明によると、あまりにも多い割合の冷気を第2の通路に流してしまうと、車両の搭乗者が車室内の温度が下がらないと感じて、搭乗者(特に前席搭乗者)に、温度調整機構が故障しているのではないかという違和感を与えてしまう。制御手段は、このような違和感を与えない範囲(たとえば、全風量の1割から2割程度まで)で第2の通路に冷気を流すようにする。これにより、電気機器の冷却と車室内の温度調整とを両立できる。
【0020】
第6の発明に係る冷却制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、電気機器の冷却要求度合いに基づいて、第2の通路にも温度調整された空気が流れるように、切り替え手段を制御するための手段を含む。
【0021】
第6の発明によると、電気機器の冷却要求度合いが高くないときには、第2の通路に冷気を流す必要も高くない。一方、電気機器の冷却要求度合いが高いときには、第2の通路に冷気を流す必要が高い。このように電気機器の冷却要求度合い(たとえば電気機器の温度により冷却要求度合いを算出する)に基づいて切り替え手段を制御することにより、電気機器の冷却と車室内の温度調整とを両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の説明では、蓄電機構の一例である二次電池(以下、バッテリと記載する場合がある)を電気機器として冷却する車両用冷却装置について説明するが(なお、本実施の形態に係る冷却制御装置は、この車両用冷却装置の一部である)、本発明はこれに限定されない。蓄電機構は二次電池ではなくキャパシタであってもよいし、電気機器は蓄電機構(バッテリやキャパシタ)ではなく、インバータやDC/DCコンバータを含むPCUであってもよい。また、以下の説明において、車両は、エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド車両を想定するが、電気自動車(EV)であってもよい(EVの電源は限定されるものでない)。
【0023】
図1に、本実施の形態に係る冷却制御装置を搭載した車両の制御ブロック図を示す。図1に示すように、この冷却制御装置は、後席シート1020の下方のフロアパネル上に載置されたバッテリ1500を効率的に冷却する。バッテリ1500は、車室内空間(搭乗空間である後席シート1020)より車両後方側のトランクルーム(搭乗空間以外の空間)内に配設されるものであってもよい。このバッテリ1500は、車両幅方向の両側のタイヤハウスを避けるように載置されている。なお、バッテリ1500は、後席シート1020の下方のフロアパネル上に載置されるものに限定されるものではない。
【0024】
このバッテリ1500は、車両の駆動源である充放電可能な二次電池(ニッケル水素電池やリチウムイオン電池)であって、車両前方に向けた開口部(吸入口)を備えた冷却風吸入ダクト1510から電動冷却ファンにより冷却風が吸引されることにより、冷却される。なお、バッテリ1500を冷却した空気は、バッテリ1500の後方に接続された排出ダクトを通って車外に排出される。電動冷却ファンの位置は特に限定されず、バッテリ1500よりも下流側であって排出ダクトの上流側に設けられることが多い。
【0025】
バッテリ1500は、たとえば、角型のバッテリセル(通常1.2V程度の出力電圧)が6個直列に接続されて1個のバッテリモジュールを形成し、多数(20〜30個)のバッテリモジュールを直列に接続してバッテリパックとして構成される。なお、このバッテリ1500の体格は、一例として、車両幅方向のリヤサイドメンバの内側に収まるような寸法である。
【0026】
エアコンユニット2000は、車外から空気を取り入れる外気吸入状態(外気吸入モード)と車室内の空気を循環させる内気吸入状態(内気吸入モード)とを切り替えるための内外気切り替ドア等を含む複数のドアを有する。なお、ここで記載するドアとは冷却風の流れを切り替えるためにダクトに設けられた切り替え弁のことを示す。また、以下においては、エアコンユニット2000はオードモードを備えたオートエアコンであるとして説明するが、マニュアルエアコンであっても構わない。
【0027】
外気吸入モードのときには、車外に開口された外気取り入れ口から車両の外部の空気がエアコンユニット2000に吸入される。内気吸入モードのときには、車内に開口された内気取り入れ口から車両の内部の空気がエアコンユニット2000に吸入される。
【0028】
この内外気切り替ドアは、電気モータや空気アクチュエータで作動され、これらの機器(モータ、アクチュエータ)はECU(Electronic Control Unit)10000からの指令信号に基づいて、その作動が制御される。また、ECU10000には、外気温を検知する外気温センサから外気温TH(A)、車室内の温度を検知する車室温センサから車内温度TH(IN)、バッテリ1500に設けられた温度センサからバッテリ温度TH(B)、冷却風吸入ダクト1510に設けられた温度センサからバッテリ1500を冷却する冷却風の温度TH(BF)が、それぞれ入力される。また、エアコンユニット2000の設定温度TH(AC)、エアコンユニット2000の操作部に入力されたエアコン操作信号がECU10000に入力される。このエアコン操作信号に基づいてエアコンユニット2000が制御されるので、このエアコン操作信号はエアコンユニット2000の作動状態を示すことになる。
【0029】
ECU10000は、各センサから入力された温度情報、設定温度、エアコン操作信号等に基づいてエアコンユニット2000を制御する。なお、ECU10000に入力される信号および出力される信号はこれらに限定されるものではない。
【0030】
エアコンユニット2000のエアコン操作信号は、車両の搭乗者がエアコン操作スイッチを操作することにより設定されたエアコンユニット2000の作動状態を示す。たとえば、エアコン操作スイッチには、内外気切り替えスイッチ、温度設定スイッチ、吹き出しモード切り替えスイッチ等がある。吹き出しモード切り替えスイッチは、マニュアルモードのとき、前席搭乗者(運転席1010や助手席1012に座った者)の上体に向けて風を吹き出すフェースモード、前席搭乗者の下肢に向けて風を吹き出すフット(FOOT)モード、フロントガラスの曇りを取るためにフロンドガラスに向けて風を吹き出すデフロスター(DEF)モード、およびこれらを組合せたモードがある。なお、オートモードの時には、冷風を吹き出す場合にはフェースモード、温風を吹き出す場合にはフットモードが自動的に選択される。
【0031】
図2を参照して、エアコンユニット2000の切り替えドアの配置について説明する。エアコンユニット2000は、外気吸入と内気吸入とを切り替えるための内外気切り替えドア2010(A位置で外気吸入、B位置で内気吸入)と、エアフィルター2020と、ブロア2030と、冷気を発生させるためのエバポレータ2040と、暖気を発生させるためのヒータコア2070と、冷気と暖気との混合割合を変化させて、車内温度TH(IN)が設定温度TH(AC)になるように連続的にその開度を変化させるエアミックスドア2050(C位置〜D位置〜E位置)とを含む。
【0032】
さらに、エアコンユニット2000は、デフロスター(フロントデフロスターおよびサイドデフロスター)への流量を調整するモード切り替えドア2060と、足下吹き出し口およびリヤダクト(後席足元から吹き出し)への流量を調整するモード切り替えドア2080と、運転席1010および助手席1012にそれぞれに向けて車両のセンターコンソールの左右端に設けられたサイドレジスターへの流量を調整するモード切り替えドア2090およびモード切り替えドア2100と、センターコンソールの中央部に設けられたセンターレジスターへの流量を調整するモード切り替えドア2110とを含む。
【0033】
さらに、本実施の形態における冷却制御装置であるECU10000により制御されるエアコンユニット2000には、特徴的なモード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130を備える。モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130は、リヤダクト2200(左右2本)への流量を調整する。モード切り替えドア2080を全閉(U位置)ではない状態で、モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130を全閉(X位置)にすると、運転席1010側の足下吹き出し口および助手席1012側の足下吹き出し口への流量が少なくされて(0でもよい)、リヤダクト2200への流量が多くなる。モード切り替えドア2060が全閉(I位置)かつモード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130が全閉(X位置)の状態において、センターレジスターおよびサイドレジスターへの流量とリヤダクト2200への流量との割合は、モード切り替えドア2080の開度により調整される。
【0034】
図3を参照して、エアコンユニット2000のモード一覧について説明する。モードにはM1〜M9までの9種類のモードがある。なお、モードM1およびモードM2は内外気の切り替え、モードM3は温度調整のためのものである(エアコンスイッチをオンにしないとモードM3にはならないで温度調整されていない送風モードになる)。
【0035】
エアコンユニット2000がオートモードであっても、エアコンユニット2000の操作パネルに設けられた、図3に示すような絵柄のスイッチを押すと、マニュアルモードに切り替わり、モードM4〜モードM9のいずれかのモードでエアコンユニット2000が作動する。また、エアコンユニット2000がオートモードであるときには、冷風を吹き出す場合には、フェースモードになる。
【0036】
夏期において、車室温度TH(IN)が高くエアコン設定温度TH(AC)が低いときに、エアコンユニット2000がオートモードであるとフェースモードとなりセンターレジスターおよびサイドレジスターのみから冷風が吹き出される。また、マニュアルモードでフェースモードが選択されてもセンターレジスターおよびサイドレジスターのみから冷風が吹き出される。これでは、後席足元に設置された冷却風吸入ダクト1510付近には冷風が到達しない。このため、本実施の形態における冷却制御装置であるECU10000は、このような状態であることを検出すると、オートモードであっても(マニュアルモードのフェースモード(モードM4)であっても)、モードM5を選択して、リヤダクト2200に冷風を流すようにモード切り替えドアの開度を制御する。以下、この制御について説明する。
【0037】
図4を参照して、本実施の形態に係る冷却装置を制御するECU10000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、このフローチャートで表わされるプログラムは、予め定められたサイクルタイム(たとえば80msec)で繰返し実行される。
【0038】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU10000は、エアコンはマニュアルモードであるか否か(エアコンユニット2000が作動している状態ではマニュアルモードでない場合にはオートモード)を判断する。この判断は、エアコンユニット2000から入力されるエアコン操作信号に基づいて判断される。エアコンがマニュアルモードであると(S100にてYES)、処理はS200へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS400へ移される。
【0039】
S200にて、ECU10000は、マニュアルモードでのエアコン吹き出し口を選択する操作信号を検出する。このとき、エアコンユニット2000から入力されるエアコン操作信号に基づいて検出される。S300にて、ECU10000は、マニュアルモードでフェースモードが選択されているか否かを判断する。マニュアルモードでフェースモードが選択されていると(S300にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、この処理は終了する。
【0040】
S400にて、ECU10000は、オートモードでフェースモードであるか否かを判断する。オードモートで冷風を車内に吹き出す場合にはフェースモードとなっている。オートモードでフェースモードであると(S400にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、この処理は終了する。
【0041】
S500にて、ECU10000は、外気温TH(A)、車内温度TH(IN)、エアコン設定温度TH(AC)、バッテリ1500の温度TH(B)、バッテリ1500の冷却風の温度TH(BF)(冷却風吸入ダクト1510における空気温度)を検出する。
【0042】
S600にて、ECU10000は、バッテリ1500の冷却要求度合いを算出する。S700にて、ECU10000は、冷却要求度合いから風量割合(この風量割合とは全風量に対するリヤダクト2200の風量の割合)を算出する。このS600およびS700における処理の一例を図5および図6を参照して説明する。
【0043】
図5は、横軸を外気温TH(A)、車内温度TH(IN)または冷却風温度TH(BF)として、縦軸を風量割合として、パラメータをバッテリ温度(B)としたマップである。外気温TH(A)、車内温度TH(IN)または冷却風温度TH(BF)が高くなるほど、バッテリ温度TH(B)が高くなるほど、風量割合が大きくなるように設定されている。
【0044】
図6は、横軸をエアコン設定温度TH(AC)として、縦軸を風量割合として、パラメータをバッテリ温度(B)としたマップである。エアコン設定温度TH(AC)が低くなるほど、バッテリ温度TH(B)が高くなるほど、風量割合が大きくなるように設定されている。
【0045】
図5および図6のいずれにおいても、斜線部分がモードM5の使用想定範囲であって、車両の搭乗者の冷却要求を満足し、かつ、バッテリ1500を適切に冷却すべく、10%〜20%の風量がリヤダクト2200に流される。なお、図5および図6のいずれも一例であって、本発明がこれらのマップに限定されるものではない。風量割合の変化が直線で表わされるものに限定される必要もなく、パラメータもバッテリ温度TH(B)に限定される必要もない。さらに、使用想定範囲も一例であって、図示した使用想定範囲にも限定されない。
【0046】
S800にて、ECU10000は、モード切り替えドア2080を中間のT位置に切り替える。S900にて、算出された風量割合に応じて、モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130の開度をX位置〜Y位置の間で制御する。なお、フェースモードでは、通常は運転席足下にも助手席足下にも冷風を流さないので、モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130の開度をX位置として、モード切り替えドア2080の開度をS位置〜T位置〜U位置の間で制御して、算出された風量割合の冷風がリヤダクト2200から吹き出すように制御される。
【0047】
以上のような構造に基づく、本実施の形態に係る冷却制御装置の動作について、説明する。
【0048】
たとえば、夏期の気温が高いときに、車両がREADY−ON状態になると、バッテリ1500冷却用の電動冷却ファンを駆動するモータに作動指令信号が出力されて、電動冷却ファンが作動を始める。
【0049】
車両の搭乗者がオートモードで(S100にてNO)、エアコンユニット2000の温度設定部を操作してエアコンの設定温度TH(AC)がセットされる。このときに、外気温TH(A)が高く(たとえば30℃〜35℃以上)、設定温度外気温TH(A)よりもかなり低いと、フェースモードが選択される(S400にてYES)。
【0050】
あるいは、車両の搭乗者がマニュアルモードで(S100にてYES)、エアコンユニット2000の温度設定部を操作してエアコンの設定温度TH(AC)がセットされて、エアコン吹き出しモードをフェースモードにする(S200、S300にてYES)。なお、多くの場合、搭乗者は早く冷感を得たいのでフェースモードにする。
【0051】
外気温TH(A)、車内温度TH(IN)、エアコン設定温度TH(AC)、バッテリ温度TH(B)およびバッテリ冷却風温度T(BF)が検出されて(S500)、バッテリ1500の冷却要求度合いが算出され、風量割合が算出される(S600、S700)。このとき、図5や図6に一例として示すマップに基づいて風量割合が算出される。
【0052】
算出された風量割合に応じて、(1)モード切り替えドア2080を中間のT位置に切り替えて、モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130の開度をX位置〜Y位置の間で制御したり、(2)モード切り替えドア2120およびモード切り替えドア2130の開度をX位置として、モード切り替えドア2080の開度をS位置〜T位置〜U位置の間で制御される(S800、S900)。これにより、算出された風量割合の冷風がリヤダクト2200から吹き出すように制御される。なお、この風量割合は全風量の10%〜20%である。このため、車両の搭乗者に違和感を与えにくい。
【0053】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却制御装置によると、車両後方のフロアパネル上に載置されたバッテリの冷却風吸入ダクトに向けて、搭乗者の上体に向けられる冷風の一部を吹き出すことができる。このため、ノイズ対策等の関係からフロアパネルに沿って設けられエアコンの冷却風が到達しにくく、エンジンの排気系配管に近いため熱害を受け易い、冷却風吸入ダクトから冷風をバッテリに供給することができる。
【0054】
なお、上述した説明においては、内気吸入と外気吸入とを区別しないで、フェースモードのときに従来のモードM4では冷風が流れないリヤダクト2200に冷風が流れるものとした。しかしながら、内気吸入と外気吸入とを区別して、異なるように制御したり、流量割合の算出方法を変更したり、流量割合の算出マップのパラメータを変更したりしてもよい。
【0055】
以下、本発明の実施の形態に係る変形例について説明する。
図7を参照して、第1の変形例として、リヤエアコン3600を搭載した車両3000について説明する。なお、本変形例の制御は、上述の実施の形態と同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0056】
本変形例においては、リヤエアコン3600の吹き出しモードがフェースモードであっても(吹き出しダクト3610から車室内に吹き出す)、冷風の一部をバッテリ3500の冷却用に使用する。リアエアコン3600は、フェースモード用の吹き出しダクト3610と、足下吹き出しダクト3620とを有し、図示しないモード切り替えドアで流量配分を調整する。2列目シート3020下方に設けられたバッテリ3500の冷却風吸入ダクト3520は、足下吹き出しダクト3620の吹き出し口に向いている。
【0057】
このため、リヤエアコン3600がフェースモードでも、冷風の一部が足下吹き出しダクト3620から吹き出されて、冷却風吸入ダクト3520からバッテリ3500に供給されて、バッテリ3500を適切に冷却できる。
【0058】
図8を参照して、第2の変形例として、リヤエアコン4600を搭載した車両4000について説明する。なお、バッテリ4500の冷却風吸入ダクト4520はリヤパッケージトレイ4510に開口されている。
【0059】
本変形例においては、リヤエアコン4600の吹き出しモードがフェースモードであっても(吹き出しレジスター4612から後席4030に向けて車室内に吹き出す)、冷風の一部をバッテリ4500の冷却用に使用する。リアエアコン4600は、フェースモード用の吹き出しレジスター4612と、リヤパッケージトレイ4510の冷却風吸入ダクト4520の開口部に向けて風を吹き出す吹き出しレジスター4614とを有し、図示しないモード切り替えドアで流量配分を調整する。なお、リヤエアコン4600は、吹き出しレジスター4612に冷却風を供給する通路と、吹き出しレジスター4614に冷却風を供給する通路とを有する。これらの通路への分岐部にモード切り替えドアが設けられている。
【0060】
このため、リヤエアコン4600がフェースモードでも、冷風の一部が吹き出しレジスター4614から吹き出されて、リヤパッケージトレイ4510の冷却風吸入ダクト4520の開口部からバッテリ4500に供給されて、バッテリ4500を適切に冷却できる。
【0061】
なお、上述したリヤエアコンを用いた変形例において以下のようにしても構わない。リヤエアコンを用いないで、フロントに載置されたエアコンから車両の天井部分に設けられた通路を通じて温度調整された空気を供給するようにする。すなわち、リヤエアコンに代えて、このようなフロントエアコンおよび冷却通路を用いて、車両の後部座席側に冷却された空気を供給するのである。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用冷却装置の制御ブロック図である。
【図2】エアコンユニットの切り替えドアの配置図である。
【図3】エアコンユニットのモードを示す図である。
【図4】図1のECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】バッテリ冷却風量の割合を算出するためのマップを示す図(その1)である。
【図6】バッテリ冷却風量の割合を算出するためのマップを示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る車両用冷却装置の構成図である。
【図8】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る車両用冷却装置の構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1000 車両、1010 運転席シート、1012 助手席シート、1020 後席シート、1500 バッテリ、1510 冷却風吸入ダクト、2000 エアコンユニット、2200 リヤダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部座席側に搭載された電気機器を車室内の空気を用いて冷却する装置の制御装置であって、前記車両には前記車室内の空気の温度を調整する温度調整機構が設けられ、前記温度調整機構は吹き出しの方向が異なる吹き出し口に連通した複数の通路を有し、
前記制御装置は、
前記温度調整機構により前記車室内の温度よりも低く温度調整された空気が、前記車両の前部座席側に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、前記車両の後部座席方向に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための切り替え手段と、
前記第1の通路に前記温度調整された空気が流れるように切り替えられている場合において、前記第2の通路にも前記温度調整された空気が流れるように、前記切り替え手段を制御するための制御手段とを含む、冷却制御装置。
【請求項2】
前記電気機器は車両の後部座席の下方に搭載され、
前記切り替え手段は、温度調整機構により前記車室内の温度よりも低く温度調整された空気が、前記前部座席側であって車両の搭乗者の上体に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、前記車両の後部座席方向であって車室の下方に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための手段を含む、請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項3】
前記第2の通路に連通した吹き出し口は、前記電気機器を冷却する冷却風を吸入する吸入口に対向するように設けられる、請求項1または2に記載の冷却制御装置。
【請求項4】
前記温度調整機構は車両の前方に搭載され、
前記吸入口は前記車両の後席下方に、開口部を車両前方に向けて設けられ、
前記切り替え手段は、前記車両の前席搭乗者の上体に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第1の通路に流れる状態と、前記車両の後席搭乗者の下肢に向けて吹き出す吹き出し口に連通した第2の通路に流れる状態とを、切り替えるための手段を含む、請求項3に記載の冷却制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記車両の搭乗者に前記温度調整機構に対する違和感を与えない範囲で、前記第2の通路にも前記温度調整された空気が流れるように、前記切り替え手段を制御するための手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の冷却制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電気機器の冷却要求度合いに基づいて、前記第2の通路にも前記温度調整された空気が流れるように、前記切り替え手段を制御するための手段を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の冷却制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−105605(P2008−105605A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291562(P2006−291562)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】