説明

車両の制御装置、制御方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体、車両用の駆動装置

【課題】インヒビット制御実行中の車両の進行方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除する。
【解決手段】ECUは、Dインヒビット制御中であると(S102にてYES)、Dインヒビット制御解除後のMG(2)140Aの同期回転数NS(2)を算出するステップ(S106)と、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で正回転させるステップ(S108)と、Dインヒビット制御解除後の各クラッチおよび各ブレーキを半係合状態にするステップ(S110)と、入力軸回転数NINの変化量ΔNINを算出するステップ(S114)と、入力軸回転数NINの変化量ΔNINがしきい値Aより小さいと(S116にてYES)、車両が前進中であると判断して(S118)、Dインヒビット制御を解除するステップ(S120)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機の制御に関し、特に、予め定められた車速以上でシフトレバーの位置が前進ポジションおよび後進ポジションのいずれかに切り換えられると、自動変速機による動力伝達を遮断する制御(インヒビット制御)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を備えた車両が公知である。自動変速機は、通常、運転者により操作されるシフトレバーの位置に応じて係合されたり解放されたりする摩擦係合要素を備える。シフトレバーの位置が前進ポジション(Dポジション)であると、前進用の摩擦係合要素が係合され、シフトレバーの位置が後進ポジション(Rポジション)であると後進用の摩擦係合要素が係合され、シフトレバーの位置がニュートラルポジション(Nポジション)であると前進用および後進用の各摩擦係合要素が解放される。このような自動変速機では、車両の進行方向と反対の方向に動力を伝達する状態に自動変速機が切り換えられると、摩擦係合要素への入力トルクが過大になって、大きなショックが発生するとともに、摩擦係合要素の耐久性が低下する。これらの問題を抑制するために、予め定められた車速以上でシフトレバーの位置がDポジションおよびRポジションのいずれかに切り換えられると、各摩擦係合要素を解放して自動変速機による動力伝達を遮断する制御(インヒビット制御)が実行される場合がある。インヒビット制御は、たとえば車速がしきい値以下に低下するまで実行される。このしきい値が低いと、運転者が迅速に前後進を切り換えたい場合(たとえば車庫入れを行なう場合)に、運転者の意図どおりに進行方向を切り換えることができず、運転性が低下する場合がある。一方、しきい値が高いと、ショックの発生と摩擦係合要素の耐久性の低下とが十分に抑制されない場合がある。このような問題を解決する技術が、たとえば、特開2004−108516号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この公報に開示された自動変速機の制御装置は、DポジションまたはRポジションのいずれかを選択するポジション選択装置で選択されたポジションに基づいて、車両の前進または後進を切り換える前後進切り換え装置を制御する。この制御装置は、車両の前進中にRポジションが選択されたことを判定するための手段と、車速を検出するための手段と、Dポジションが選択されていた時間(Dポジション選択時間)を測定するための手段と、Rポジションが選択されたことが判定されたときに、検出された車速が予め定められた第1の車速以下であることを判定するための手段と、Rポジションが選択されたことが判定されたときに、Dポジション選択時間と予め定められた判定時間とを比較するための手段と、検出された車速が第1の車速以下であってDポジション選択時間が判定時間以下の場合には、Rポジションへの切り換えを実行する一方、検出された車速が第1の車速より大きい場合および検出された車速が第1の車速以下であってDポジション選択時間が判定時間を超えるときには、第1の車速よりも小さく設定された第2の車速以下となるまでRポジションへの切り換えを遅延するように制御するための手段とを含む。
【0004】
この公報に開示された自動変速機の制御装置によると、Rポジション選択時の車速が第1の車速(たとえば15km/h)以上の場合や第1の車速以下であってDポジション選択時間が判定時間を超える場合には、Rポジションへの切り換えが運転者の意図に反すると判断されて第2の車速(たとえば7km/h)以下となるまで遅延される。これにより、Rポジションへの切り換えショックを抑制して、運転者の意図に反する急減速を抑制するとともに前後進切り換え装置の耐久性を向上することができる。一方、Rポジション選択時の車速が第1の車速以下であってDポジション選択時間が判定時間以下のときは、Rポジションへの切り換えが運転者の意図であると判断されてそのまま実行される。これにより、迅速に前後進を切り換えて運転者の意図どおりに進行方向を切り換えることができる。そのため、車両の運転性と耐久性とを向上させることができる。
【特許文献1】特開2004−108516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された自動変速機の制御装置において、Rポジション選択時の車速が第1の車速以上であっても、Rポジションへの切り換えが運転者の意図である場合がある。たとえば、第1の車速以上での後進中に誤操作によりNポジションが選択された場合、第1の車速以上であっても、誤操作に気付いた運転者が即座にRポジションを選択して誤操作前の状態への切り換えを意図する場合がある。この場合、Rポジションへの切り換え(すなわち自動変速機における後進状態への切り換え)が遅延されるインヒビット制御が実行される。しかし、車両が誤操作前と同様に後進中である場合には、自動変速機を後進状態へ切り換えてもショックは小さく耐久性への影響も小さいため、インヒビット制御の実行を即座に解除することが望ましい。このように、車両の進行方向(すなわち自動変速機の出力軸の回転方向)を検出することができれば、不要なインヒビット制御の実行を即座に解除することができる。
【0006】
しかしながら、自動変速機の出力軸に設けられることが多い車速センサでは、出力軸の回転数を検出できても回転方向は検出できない場合が多い。さらに、上述のように、インヒビット制御中は自動変速機による動力伝達が遮断されているため、インヒビット制御が一旦実行されると、たとえ自動変速機の入力軸の回転方向を検出できたとしても、出力軸の回転方向を検出することができない。そのため、出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けていない車両においては、不要なインヒビット制御が実行されていても、特許文献1に開示された自動変速機の制御装置のように、車速が第2の車速に低下するまで解除することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を自動変速機の出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除することができる制御装置、制御方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を提供すること、および、インヒビット制御実行中の自動変速機の出力軸の回転方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除することができる駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る制御装置は、動力源と、動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両を制御する。自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前進用の摩擦係合要素を制御することができる。車両においては、予め定められた車速以上で可動部のポジションが前進ポジション以外のポジションから前進ポジションに切り換えられると、前進用の摩擦係合要素の係合を禁止して自動変速機を中立状態にする前進インヒビット制御の実行が開始される。制御装置は、出力軸の回転数を検出するための手段と、前進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、前進インヒビット制御が実行中であると、出力軸の回転数と前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、入力軸の同期回転数を算出するための手段と、同期回転数で入力軸が回転するように動力源を制御するための回転制御手段と、前進用の摩擦係合要素が半係合状態になるように自動変速機を制御するための手段と、前進用の摩擦係合要素が半係合状態となった場合における入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、変化量に基づいて、車両の進行方向を判断するための判断手段と、車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、前進用の摩擦係合要素を完全係合状態にして前進インヒビット制御を解除するように自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む。第11の発明に係る制御方法は、第1の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0009】
第1または11の発明によると、前進インヒビット制御の実行中は、前進用の摩擦係合要素の係合が禁止され、自動変速機の入力軸と出力軸とが接続されていない状態となる。このような状態において、出力軸の回転数と前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて算出された同期回転数で入力軸が回転させられた後、前進用の摩擦係合要素が半係合状態にされる。ここで、自動変速機が前進走行状態である場合において車両を前進させる方向に入力軸が回転させられた場合において、入力軸の回転数がほとんど変化しない場合、入力軸の回転数および回転方向と出力軸の回転数および回転方向とが同期していると考えられる。すなわち、車両は前進していると考えられる。一方、入力軸の回転数が急激に低下する場合、入力軸と出力軸との回転方向が逆方向であるために、入力軸の回転を抑制するトルクが自動変速機から入力軸に作用していると考えられる。すなわち、車両は後進していると考えられる。そこで、入力軸の回転数の変化量に基づいて、車両の進行方向が判断される。たとえば、入力軸の変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向が前進方向と判断される。これにより、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を自動変速機の出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく判断することができる。車両の進行方向が前進方向と判断される場合、前進インヒビット制御は不要な制御であるとして解除される。その結果、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除することができる制御装置および制御方法を提供することができる。
【0010】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、回転制御手段は、自動変速機が前進走行状態である場合において車両を前進させる方向に入力軸が回転するように動力源を制御するための手段を含む。判断手段は、変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向を前進方向と判断するための手段を含む。第12の発明に係る制御方法は、第2の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0011】
第2または12の発明によると、自動変速機が前進走行状態である場合において車両を前進させる方向に入力軸が回転させられた場合において、入力軸の回転数がほとんど変化しない場合、入力軸の回転数および回転方向と出力軸の回転数および回転方向とが同期していると考えられる。すなわち、車両は前進していると考えられる。そこで、入力軸の変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向が前進方向と判断される。これにより、前進インヒビット制御実行中において、車両の進行方向が前進方向であることを、自動変速機の出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく判断することができる。
【0012】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、予め定められた値は、車両の進行方向が後進方向である場合における変化量に基づいて設定される、第13の発明に係る制御方法は、第3の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0013】
第3または13の発明によると、車両の進行方向が後進方向である場合、入力軸と出力軸との回転方向が逆方向であるため、入力軸の回転を抑制するトルクが自動変速機から入力軸に作用する。そのため、入力軸の回転数が急激に低下する。このときの入力軸の変化量に基づいて、予め定められた値が設定される。そのため、車両の進行方向を入力軸の変化量に基づいて精度よく判断することができる。
【0014】
第4の発明に係る制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、解除制御手段は、車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するための手段と、同期回転数が予め定められた回転数より小さいと、同期回転数で予め定められた方向と逆の方向に入力軸が回転するように動力源を制御するための逆回転制御手段と、逆回転制御手段により入力軸を逆の方向に回転させた後に、前進インヒビット制御を解除するように自動変速機を制御するための手段とを含む。第14の発明に係る制御方法は、第4の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0015】
第4または14の発明によると、車両が後進中にそのまま前進インヒビット制御を解除すると、大きなショックが発生する場合がある。そこで、車両の進行方向が後進方向と判断された場合には、同期回転数が予め定められた回転数(たとえば、動力源や動力源の回転軸に接続された部品の耐久性に影響する回転数)より小さいか否かが判断される。同期回転数が予め定められた回転数より小さい場合、同期回転数で予め定められた方向と逆の方向に入力軸が回転するように動力源が制御される。そのため、動力源や動力源に接続された部品などの耐久性が入力軸を逆回転することにより悪化することを抑制することができる。さらに、入力軸を同期回転数で逆回転させた後に、前進インヒビット制御が解除される。そのため、前進インヒビット制御解除時のショックを抑制することができる。
【0016】
第5の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、動力源は、少なくとも回転電機を含む。予め定められた回転数は、回転電機への影響に基づいて設定される。第15の発明に係る制御方法は、第5の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0017】
第5または15の発明によると、回転電機の耐久性が悪化することを抑制しつつ、回転電機により入力軸を逆回転させることができる。
【0018】
第6の発明に係る制御装置は、動力源と、動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両を制御する。自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、後進用の摩擦係合要素を制御することができる。車両においては、予め定められた車速以上で可動部のポジションが後進ポジション以外のポジションから後進ポジションに切り換えられると、後進用の摩擦係合要素の係合を禁止して自動変速機を中立状態にする後進インヒビット制御の実行が開始される。制御装置は、出力軸の回転数を検出するための手段と、後進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、後進インヒビット制御が実行中であると、出力軸の回転数と後進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、入力軸の同期回転数を算出するための手段と、同期回転数で入力軸が回転するように動力源を制御するための回転制御手段と、後進用の摩擦係合要素が半係合状態になるように自動変速機を制御するための手段と、後進用の摩擦係合要素が半係合状態となった場合における入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、変化量に基づいて、車両の進行方向を判断するための判断手段と、車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、後進用の摩擦係合要素を完全係合状態にして後進インヒビット制御を解除するように自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む。第16の発明に係る制御方法は、第6の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0019】
第6または16の発明によると、後進インヒビット制御の実行中は、後進用の摩擦係合要素の係合が禁止され、自動変速機の入力軸と出力軸とが接続されていない状態となる。このような状態において、出力軸の回転数と後進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて算出された同期回転数で入力軸が回転させられた後、後進用の摩擦係合要素が半係合状態にされる。ここで、自動変速機が後進走行状態である場合において車両を後進させる方向に入力軸が回転させられた場合において、入力軸の回転数がほとんど変化しない場合、入力軸の回転数および回転方向と出力軸の回転数および回転方向とが同期していると考えられる。すなわち、車両は後進していると考えられる。一方、入力軸の回転数が急激に低下する場合、入力軸と出力軸との回転方向が逆方向であるために、入力軸の回転を抑制するトルクが自動変速機から入力軸に作用していると考えられる。すなわち、車両は前進していると考えられる。そこで、入力軸の回転数の変化量に基づいて、車両の進行方向が判断される。たとえば、入力軸の変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向が後進方向と判断される。これにより、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を自動変速機の出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく判断することができる。車両の進行方向が後進方向と判断される場合、後進インヒビット制御は不要な制御であるとして解除される。その結果、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除することができる制御装置および制御方法を提供することができる。
【0020】
第7の発明に係る制御装置は、第6の発明の構成に加えて、回転制御手段は、自動変速機が後進走行状態である場合において車両を後進させる方向に入力軸が回転するように動力源を制御するための手段を含む。判断手段は、変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向を後進方向と判断するための手段を含む。第17の発明に係る制御方法は、第7の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0021】
第7または17の発明によると、自動変速機が後進走行状態である場合において車両を後進させる方向に入力軸が回転させられた場合において、入力軸の回転数がほとんど変化しない場合、入力軸の回転数および回転方向と出力軸の回転数および回転方向とが同期していると考えられる。すなわち、車両は後進していると考えられる。そこで、入力軸の変化量が予め定められた値より小さい場合に、車両の進行方向が後進方向と判断される。これにより、後進インヒビット制御実行中において、車両の進行方向が後進方向であることを、自動変速機の出力軸の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく判断することができる。
【0022】
第8の発明に係る制御装置は、第7の発明の構成に加えて、予め定められた値は、車両の進行方向が前進方向である場合における変化量に基づいて設定される。第18の発明に係る制御方法は、第8の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0023】
第8または18の発明によると、車両の進行方向が前進方向である場合、入力軸と出力軸との回転方向が逆方向であるため、入力軸の回転を抑制するトルクが自動変速機から入力軸に作用する。そのため、入力軸の回転数が急激に低下する。このときの入力軸の変化量に基づいて、予め定められた値が設定される。そのため、車両の進行方向を入力軸の変化量に基づいて精度よく判断することができる。
【0024】
第9の発明に係る制御装置は、第6〜8のいずれかの発明の構成に加えて、解除制御手段は、車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するための手段と、同期回転数が予め定められた回転数より小さいと、同期回転数で予め定められた方向と逆の方向に入力軸が回転するように動力源を制御するための逆回転制御手段と、逆回転制御手段により入力軸を逆の方向に回転させた後に、後進インヒビット制御を解除するように自動変速機を制御するための手段とを含む。第19の発明に係る制御方法は、第9の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0025】
第9または19の発明によると、車両が前進中にそのまま後進インヒビット制御を解除すると、大きなショックが発生する場合がある。そこで、車両の進行方向が前進方向と判断された場合には、同期回転数が予め定められた回転数(たとえば、動力源や動力源の回転軸に接続された部品の耐久性に影響する回転数)より小さいか否かが判断される。同期回転数が予め定められた回転数より小さい場合、同期回転数で予め定められた方向と逆の方向に入力軸が回転するように動力源が制御される。そのため、動力源や動力源に接続された部品などの耐久性が入力軸を逆回転することにより悪化することを抑制することができる。さらに、入力軸を同期回転数で逆回転させた後に、後進インヒビット制御が解除される。そのため、後進インヒビット制御解除時のショックを抑制することができる。
【0026】
第10の発明に係る制御装置は、第9の発明の構成に加えて、動力源は、少なくとも回転電機を含む。予め定められた回転数は、回転電機への影響に基づいて設定される。第20の発明に係る制御方法は、第10の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0027】
第10または20の発明によると、回転電機の耐久性が悪化することを抑制しつつ、回転電機により入力軸を逆回転させることができる。
【0028】
第21の発明に係るプログラムは、第11〜20のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実行させる。第22の発明に係る記録媒体は、第11〜20のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録する。
【0029】
第21または第22の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第11〜第20のいずれかの発明に係る制御方法を実現することができる。
【0030】
第23の発明に係る駆動装置は、回転電機と、回転電機に接続された自動変速機とを備える。自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前進用の摩擦係合要素を制御することができる。駆動装置においては、駆動装置の出力軸が予め定められた回転数以上で可動部のポジションが前進ポジション以外のポジションから前進ポジションに切り換えられると、前進用の摩擦係合要素の係合を禁止して自動変速機を中立状態にする前進インヒビット制御の実行が開始される。制御装置は、出力軸の回転数を検出するための手段と、前進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、前進インヒビット制御が実行中であると、出力軸の回転数と前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、入力軸の同期回転数を算出するための手段と、同期回転数で自動変速機の入力軸が回転するように回転電機を制御するための回転制御手段と、前進用の摩擦係合要素が半係合状態になるように自動変速機を制御するための手段と、前進用の摩擦係合要素が半係合状態となった場合における入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、変化量に基づいて、出力軸の回転方向を判断するための判断手段と、出力軸の回転方向が前進方向と判断された場合に、前進用の摩擦係合要素を完全係合状態にして前進インヒビット制御を解除するように自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む。
【0031】
第23の発明によると、前進インヒビット制御の実行中は、前進用の摩擦係合要素の係合が禁止され、自動変速機の入力軸と出力軸とが接続されていない状態となる。このような状態において、出力軸の回転数と前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて算出された同期回転数で入力軸が回転させられた後、前進用の摩擦係合要素が半係合状態にされる。ここで、自動変速機が前進走行状態である場合において車両を前進させる方向に入力軸が回転させられた場合において、入力軸の回転数がほとんど変化しない場合、入力軸の回転数および回転方向と出力軸の回転数および回転方向とが同期していると考えられる。一方、入力軸の回転数が急激に低下する場合、入力軸と出力軸との回転方向が逆方向であるために、入力軸の回転を抑制するトルクが自動変速機から入力軸に作用していると考えられる。そこで、入力軸の回転数の変化量に基づいて、出力軸の回転方向が判断される。たとえば、入力軸の変化量が予め定められた値より小さい場合に、出力軸の回転方向が車両を前進させる方向であると判断される。これにより、インヒビット制御実行中の出力軸の回転方向を専用のセンサを設けることなく判断することができる。出力軸の回転方向が車両を前進させる方向であると判断される場合、前進インヒビット制御は不要な制御であるとして解除される。その結果、インヒビット制御実行中の自動変速機の出力軸の回転方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を解除することができる駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0033】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を備えたハイブリッド車両全体の制御ブロック図を説明する。なお、本発明に係る制御装置を適用できる車両は、駆動源からの動力を自動変速機で変速した駆動力で走行する車両であれば、図1に示すハイブリッド車両に限定されず、走行用のバッテリを搭載した他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい。このバッテリは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などであって、その種類は特に限定されるものではない。また、蓄電機構としては、バッテリの代わりにキャパシタでも構わない。また、ハイブリッド車両ではなく、たとえば、エンジンからの駆動力のみにより走行する車両や、モータからの駆動力のみにより走行する電気自動車であってもよい。
【0034】
ハイブリッド車両は、エンジン120と、モータジェネレータ140A(MG(2)140A)と、モータジェネレータ140B(MG(1)140B)とを含む。なお、以下においては、説明の便宜上、MG(2)140AとMG(1)140Bとを区別することなく説明する場合には、モータジェネレータ140とも表現する。
【0035】
モータジェネレータ140は、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、ジェネレータとして機能したりモータとして機能したりする。モータジェネレータ140の回転軸は、車両のドライブシャフト(図示せず)に接続され、駆動輪180に駆動力を伝達する。車両は、モータジェネレータ140からの駆動力により走行する。モータジェネレータ140がジェネレータとして機能する場合に回生制動が行なわれる。モータジェネレータ140がジェネレータとして機能するときには、車両の運動エネルギが電気エネルギに変換されて、車両が減速される。
【0036】
ハイブリッド車両は、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪180に伝達したり、駆動輪180の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達したりする減速機160と、入力軸214がエンジン120のクランクシャフトに接続され、エンジン120の発生する動力を駆動輪180とMG(1)140Bとの2経路に分配する動力分割機構200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電するバッテリ150と、バッテリ150の直流とMG(2)140AおよびMG(1)140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ154と、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するECU500等を含む。
【0037】
インバータ154は、ECU500からの制御信号に基づいて、モータジェネレータ140をモータまたはジェネレータとして機能させる。インバータ154は、モータジェネレータ140をモータとして機能させる場合、バッテリ150から供給された直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ140に供給する。インバータ154は、モータジェネレータ140に供給する電力を制御することにより、モータジェネレータ140がECU500からの制御信号で要求される回転数および回転方向になるように制御する。
【0038】
さらに、バッテリ150とインバータ154との間には、昇圧コンバータ152が設けられている。これは、バッテリ150の定格電圧が、MG(2)140AやMG(1)140Bの定格電圧よりも低いので、バッテリ150からMG(2)140AやMG(1)140Bに電力を供給するときには、昇圧コンバータ152で電力を昇圧する。なお、MG(2)140AやMG(1)140Bで発電した電力をバッテリ150に充電する場合には、昇圧コンバータで電力を降圧する。
【0039】
さらに、MG(2)140Aと減速機160との間には、自動変速機300が設けられる。自動変速機300の入力軸302はMG(2)140Aに接続され、自動変速機300の出力軸322は減速機160に接続される。自動変速機300は、ギヤユニット内のクラッチおよびブレーキが油圧回路により制御されることにより、所望のギヤ段を形成し、入力軸302の回転数を所望の回転数に変速して出力軸322に出力する。
【0040】
ECU500には、レゾルバ回路142Aと、レゾルバ回路142Bと、シフトレバー502のポジションスイッチ504と、アクセルペダル506のアクセル開度センサ508と、エンジン回転数センサ510と、出力軸回転数センサ512とがハーネスなどを介して接続されている。
【0041】
レゾルバ回路142Aは、MG(2)140Aの回転数および回転方向を検出し、検出結果を表わす信号をECU500に送信する。なお、MG(2)140Aの出力軸は、自動変速機300の入力軸302に接続されているため、MG(2)140Aの回転数および回転方向は、自動変速機300の入力軸回転数NINおよび回転方向である。
【0042】
レゾルバ回路142Bは、MG(1)140Bの回転数および回転方向を検出し、検出結果を表わす信号をECU500に送信する。
【0043】
シフトレバー502の位置(シフトポジション)は、ポジションスイッチ504により検出され、検出結果を表わす信号がECU500に送信される。シフトポジションに対応して、自動変速機300のギヤ段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
【0044】
アクセル開度センサ508は、アクセルペダル506の開度を検出し、検出結果を表わす信号をECU500に送信する。
【0045】
エンジン回転数センサ510は、エンジン120の出力軸であるクランクシャフトの回転数(エンジン回転数NE)を検出し、検出結果を表わす信号をECU500に送信する。
【0046】
出力軸回転数センサ512は、自動変速機300の出力軸回転数NOUTを検出し、検出結果を表わす信号をECU500に送信する。なお、出力軸322は、減速機160およびドライブシャフト170を経由して駆動輪180に接続されているため、出力軸回転数NOUTを検出することにより車両の速度を検出することができる。
【0047】
ECU500は、レゾルバ回路142A、レゾルバ回路142B、シフトレバー502のポジションスイッチ504、アクセル開度センサ508、エンジン回転数センサ510、および出力軸回転数センサ512などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0048】
図2を参照して、本実施の形態に係る動力分割機構200および自動変速機300について説明する。
【0049】
動力分割機構200は、エンジン120のクランクシャフトに接続される入力軸214と、シングルピニオン型の遊星歯車装置224と、クラッチC0およびブレーキB0と、出力軸218とを含む。
【0050】
遊星歯車装置224は、サンギヤS1、遊星歯車P1、遊星歯車P1を自転および公転可能に支持するキャリアCA1、および遊星歯車P1を経由してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1とを備えている。
【0051】
動力分割機構200においては、キャリアCA1は入力軸214に接続され、サンギヤS1はMG(1)140Bに接続され、リングギヤR1は出力軸218に接続されている。また、ブレーキB0はサンギヤS1とケース212との間に設けられ、クラッチC0はサンギヤS1とキャリアCA1との間に設けられている。クラッチC0およびブレーキB0が解放されると、エンジン120の出力がMG(1)140Bと出力軸218とに分配される。
【0052】
クラッチC0が係合させられてサンギヤS1とキャリアCA1とが一体的に係合させられると、動力分割機構200は、入力軸214の回転数(エンジン回転数NE)と出力軸218の回転数とが一致する状態となる。
【0053】
エンジン120、MG(1)140BおよびMG(2)140Aが、遊星歯車からなる動力分割機構200を介して連結されることで、エンジン120、MG(1)140BおよびMG(2)140Aの回転数は、たとえば、図3に示すように、共線図において直線で結ばれる関係になる(図3は定常運転時の一例である)。
【0054】
さらに詳しくは、動力分割機構200における3つの回転軸のうちの2つの回転軸の回転数が決定されると残りの回転軸の回転数が決まるという性質を有している。各回転軸の回転数の関係は次の式(1)の通りである。
【0055】
N(C)=N(S)×ρ/(1+ρ)+N(R)×1/(1+ρ) … (1)
ここで、N(C)はキャリアCA1の回転数(すなわちエンジン回転数NE)、N(S)はサンギヤS1の回転数(すなわちMG(1)140Bの回転数)、N(R)はリングギヤR1の回転数(すなわちMG(2)140Aの回転数)である。また、ρは次式で表される通り、サンギヤS1とリングギヤR1とのギヤ比である。
【0056】
ρ=(サンギヤS1の歯数)/(リングギヤR1の歯数)
ハイブリッド車両は、このような動力分割機構200の機能により、種々の状態で走行することができる。
【0057】
自動変速機300は、シングルピニオン型の遊星歯車装置326と、シングルピニオン型の遊星歯車装置328と、シングルピニオン型の遊星歯車装置330を備えている。
【0058】
遊星歯車装置326は、サンギヤS2、遊星歯車P2、遊星歯車P2を自転および公転可能に支持するキャリアCA2、遊星歯車P2を経由してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備える。
【0059】
遊星歯車装置328は、サンギヤS3、遊星歯車P3、その遊星歯車P3を自転および公転可能に支持するキャリアCA3、遊星歯車P3を経由してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備える。
【0060】
遊星歯車装置330は、サンギヤS4、遊星歯車P4、その遊星歯車P4を自転および公転可能に支持するキャリアCA4、遊星歯車P4を経由してサンギヤS4と噛み合うリングギヤR4を備える。
【0061】
自動変速機300では、サンギヤS2とサンギヤS3とが一体的に接続されてクラッチC2を経由して入力軸302に選択的に接続されるとともにブレーキB1を経由してケース212に選択的に接続され、キャリアCA2はブレーキB2を経由してケース212に選択的に接続され、リングギヤR4はブレーキB3を経由してケース212に選択的に接続され、リングギヤR2とキャリアCA3とキャリアCA4とが一体的に接続されて出力軸322に接続され、リングギヤR3とサンギヤS4とが一体的に接続されてクラッチC1を経由して入力軸302に選択的に接続されている。
【0062】
このように、自動変速機300の入力軸214と出力軸218とは自動変速機300の変速段を成立させるために用いられるクラッチC1またはクラッチC2を経由して選択的に接続されている。言い換えれば、クラッチC1およびクラッチC2は、入力軸302と出力軸322とを接続状態として動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、入力軸302と出力軸322とを非接続状態として動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、クラッチC1およびクラッチC2の少なくとの一方が係合されることで動力伝達可能状態とされ、クラッチC1およびクラッチC2が解放されることで動力伝達遮断状態とされる。
【0063】
図4に、シフトポジションおよび各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。ECU500は、油圧回路を制御することにより、この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させる。これにより、自動変速機300は、Dポジションである場合には前進走行状態に、Rポジションである場合には後進走行状態に、Nポジションである場合にはニュートラル状態(中立状態)に、それぞれ制御される。なお、シフトポジションがDポジションであるときには、ECU500は、別途定められた変速線図に従って自動的に1速〜5速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、自動変速機300を制御する。
【0064】
本実施の形態において、車両の進行方向と反対の方向に動力を伝達する状態に自動変速機300が切り換えられると、ショックが発生してしまう。このショックを防止するために、ECU500は、予め定められた車速以上でシフトポジションが走行ポジション(DポジションおよびRポジションのいずれか)に切り換えられると、自動変速機300の各クラッチおよび各ブレーキを解放して自動変速機300による動力伝達を遮断する制御(インヒビット制御)を実行する。なお、以下の説明においては、シフトポジションがDポジション以外のポジションからDポジションに切り換えられた場合に実行されるインヒビット制御を前進(D)インヒビット制御と記載する。また、シフトポジションがRポジション以外のポジションからRポジションに切り換えられた場合に実行されるインヒビット制御を後進(R)インヒビット制御と記載する。
【0065】
ところで、たとえば、前進走行中に誤操作によりシフトポジションがDポジションからNポジションに切り換えられた場合、誤操作に気付いた運転者が即座にDポジション(誤操作前の状態)へ切り換える場合がある。この場合、Dポジションへの切り換え時の車速が予め定められた車速を越えていると、Dインヒビット制御が実行される。しかし、自動変速機300を即座に誤操作前の前進走行状態へ切り換えるのであればショックは小さく耐久性への影響も小さいと考えられる。そのため、運転者の意図通りにDインヒビット制御の実行を解除することが望ましい。そのためには、まず車両の進行方向、すなわち自動変速機300の出力軸322の回転方向を検出する必要がある。
【0066】
しかし、上述のように、インヒビット制御中は自動変速機300の入力軸302と出力軸322とが非接続状態となる。そのため、レゾルバ回路142Aからの信号により入力軸302の回転方向を検出できたとしても、出力軸322の回転方向を検出することはできない。また、出力軸回転数センサ512では、出力軸322の回転数を検出できても回転方向は検出できない。そのため、不要なDインヒビット制御が実行されていても、車両の進行方向を検出することができず、車速がショックの発生が抑制される値に低下するまでは、Dインヒビット制御を解除することができないという問題がある。この問題は、Rインヒビット制御についても同様である。
【0067】
本実施の形態に係る制御装置は、この問題を解決するために、インヒビット制御の実行中において、インヒビット制御解除後のクラッチおよびブレーキを半係合状態にしたときの入力軸302の回転数(入力軸回転数)NINの変化量に基づいて、インヒビット制御の実行を解除する。なお、ここでいう半係合状態とは、完全解放状態と完全係合状態との間の状態を意味するものとする。以下の説明についても同様の意味である。
【0068】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置の機能ブロック図について説明する。図5に示すように、この制御装置は、インヒビット制御判断部520と、同期回転数算出部530と、インバータ制御部540と、NIN変化量算出部550と、走行状態判断部560と、インヒビット制御解除可否判断部570と、自動変速機制御部580とを含む。
【0069】
インヒビット制御判断部520は、少なくともポジションスイッチ504から送信されるシフトポジションに基づいて、インヒビット制御中であるか否かを判断する。
【0070】
同期回転数算出部530は、インヒビット制御判断部520の判断結果および出力軸回転数センサ512から送信される出力軸回転数NOUTに基づいて、入力軸302の同期回転数を算出する。
【0071】
インバータ制御部540は、同期回転数算出部530で算出された同期回転数およびインヒビット制御解除可否判断部570の判断結果に基づいて、MG(2)140Aを回転するようにインバータ154を制御する。
【0072】
NIN変化量算出部550は、レゾルバ回路142Aから送信される入力軸回転数NINおよび自動変速機制御部580からの信号に基づいて、入力軸回転数NINの変化量ΔNINを算出する。
【0073】
走行状態判断部560は、NIN変化量算出部550で算出された入力軸回転数NINの変化量ΔNINに基づいて、車両が前進中であるのか後進中であるのかを判断する。
【0074】
インヒビット制御解除可否判断部570は、エンジン回転数センサ510から送信されるエンジン回転数NEおよび走行状態判断部560の判断結果に基づいて、インヒビット制御の解除の可否を判断する。
【0075】
自動変速機制御部580は、インバータ制御部540からの信号およびインヒビット制御解除可否判断部570の判断結果に基づいて、自動変速機300を制御する。
【0076】
このような機能ブロックを有する本実施の形態に係る制御装置は、デジタル回路やアナログ回路の構成を主体としたハードウェアでも、ECUに含まれるCPU(Central Processing Unit)およびメモリとメモリから読み出されてCPUで実行されるプログラムとを主体としたソフトウェアでも実現することが可能である。一般的に、ハードウェアで実現した場合には動作速度の点で有利で、ソフトウェアで実現した場合には設計変更の点で有利であると言われている。以下においては、ソフトウェアとして制御装置を実現した場合を説明する。なお、このようなプログラムを記録した記録媒体についても本発明の一態様である。
【0077】
図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU500がDインヒビット制御を解除する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰返し実行される。
【0078】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU500は、ポジションスイッチ504からの信号に基づいて、シフトポジションを検出する。
【0079】
S102にて、ECU500は、Dインヒビット制御中か否かを判断する。ECU500は、たとえば、シフトポジションがDポジションであるにも関わらす、自動変速機300がニュートラル状態に制御されている場合に、Dインヒビット制御中であると判断する。Dインヒビット制御中であると(S102にてYES)、処理はS104に移される。そうでないと(S102にてNO)、この処理は終了する。
【0080】
S104にて、ECU500は、出力軸回転数センサ512からの信号に基づいて、出力軸回転数NOUTを検出する。
【0081】
S106にて、ECU500は、Dインヒビット制御解除後のMG(2)140Aの同期回転数NS(2)を算出する。ECU500は、たとえば、出力軸回転数NOUTとDインヒビット制御の解除後の変速比との積を、同期回転数NS(2)として算出する。
【0082】
S108にて、ECU500は、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で正回転させる制御信号をインバータ154に送信する。なお、ここでいう正回転とは、自動変速機300が前進走行状態である場合において車両を前進させる方向(言い換えれば、自動変速機300が後進走行状態である場合において車両を後進させる方向)に回転させることを意味するものとする。以下の説明についても同様の意味である。
【0083】
S110にて、ECU500は、Dインヒビット制御解除後の各クラッチおよび各ブレーキを半係合状態にする制御信号を自動変速機300に送信する。たとえば、ECU500は、Dインヒビット制御解除後の変速段が3速である場合には、クラッチC1およびブレーキB1(図4参照)を半係合状態にする制御信号を自動変速機300に送信する。
【0084】
S112にて、ECU500は、レゾルバ回路142Aからの信号に基づいて、MG(2)140Aの回転数、すなわち入力軸回転数NINを検出する。
【0085】
S114にて、ECU500は、入力軸回転数NINの変化量ΔNINを算出する。ECU500は、たとえば、入力軸回転数NINを時間微分することにより変化量ΔNINを算出する。
【0086】
S116にて、ECU500は、入力軸回転数NINの変化量ΔNINが、しきい値Aより小さいか否かを判断する。しきい値Aは、車両が後進中である場合における入力軸回転数NINの変化量ΔNINに基づいて設定される。しきい値Aより小さいと(S116にてYES)、処理はS118に移される。そうでないと(S116にてNO)、処理はS122に移される。
【0087】
S118にて、ECU500は、出力軸322が車両を前進させる方向に回転しており、車両が前進中であると判断する。
【0088】
S120にて、ECU500は、Dインヒビット制御を解除するように自動変速機300を制御する。たとえば、ECU500は、Dインヒビット制御解除後の変速段が3速である場合には、クラッチC1およびブレーキB1を完全係合状態にする制御信号を自動変速機300に送信する。
【0089】
S122にて、ECU500は、入力軸302が車両を後進させる方向に回転しており、車両が後進中であると判断する。
【0090】
S124にて、ECU500は、同期回転数NS(2)がしきい値Bより小さいか否かを判断する。しきい値Bは、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で逆回転した場合におけるMG(2)140Aの耐久性への影響に基づいて設定される。しきい値Bより小さいと(S124にてYES)、処理はS126に移される。そうでないと(S124にてNO)、処理はS138に移される。
【0091】
S126にて、ECU500は、エンジン回転数センサ510からの信号に基づいて、エンジン回転数NEを検出する。
【0092】
S128にて、ECU500は、エンジン回転数NEおよび同期回転数NS(2)に基づいて、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で負回転した場合のMG(1)140Bの回転数NS(1)を算出する。ECU500は、上述の式(1)の関係式から、回転数NS(1)を算出する。なお、ここでいう負回転とは、上述の正回転と逆の方向に回転させることを意味するものとする。以下の説明についても同様である。
【0093】
S130にて、ECU500は、回転数NS(1)がしきい値Cより小さいか否かを判断する。しきい値Cは、MG(1)140Bを回転数NS(1)で回転した場合におけるMG(1)140Bの耐久性への影響に基づいて設定される。しきい値Cより小さいと(S130にてYES)、処理はS132に移される。そうでないと(S130にてNO)、処理はS138に移される。
【0094】
S132にて、ECU500は、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で負回転させた場合のピニオン回転数NPを算出する。ECU500は、MG(2)140AとMG(1)140Bとの回転数差(すなわち同期回転数NS(2)の絶対値と回転数NS(1)の絶対値との和)をピニオン回転数NPとして算出する。
【0095】
S134にて、ECU500は、ピニオン回転数NPがしきい値Dより小さいか否かを判断する。しきい値Dは、動力分割機構200の遊星歯車P1がピニオン回転数NPで回転した場合における遊星歯車P1の耐久性への影響に基づいて設定される。しきい値Dより小さいと(S134にてYES)、処理はS136に移される。そうでないと(S134にてNO)、処理はS138に移される。
【0096】
S136にて、ECU500は、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で負回転させる制御信号をインバータ154に送信する。
【0097】
S138にて、ECU500は、Dインヒビット制御を継続するように自動変速機300を制御する。
【0098】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU500がRインヒビット制御を解除する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、図7に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0099】
S200にて、ECU500は、Rインヒビット制御中か否かを判断する。ECU500は、たとえば、シフトポジションがRポジションであるにも関わらす、自動変速機300がニュートラル状態に制御されている場合に、Rインヒビット制御中であると判断する。Rインヒビット制御中であると(S200にてYES)、処理はS104に移される。そうでないと(S200にてNO)、この処理は終了する。
【0100】
S202にて、ECU500は、Rインヒビット制御解除後のMG(2)140Aの同期回転数NS(2)を算出する。なお、ECU500は、出力軸回転数NOUTとRインヒビット制御の解除後の変速比との積を、同期回転数NS(2)として算出する。
【0101】
S204にて、ECU500は、Rインヒビット制御解除後のクラッチC2およびブレーキB3を半係合する制御信号を自動変速機300に送信する。
【0102】
S206にて、ECU500は、入力軸回転数NINの変化量ΔNINが、しきい値Eより小さいか否かを判断する。しきい値Eは、車両が前進中である場合における入力軸回転数NINの変化量ΔNINに基づいて設定される。しきい値Eより小さいと(S206にてYES)、処理はS208に移される。そうでないと(S206にてNO)、処理はS212に移される。
【0103】
S208にて、ECU500は、出力軸322が車両後進方向に回転しており、車両が後進中であると判断する。
【0104】
S210にて、ECU500は、Rインヒビット制御を解除するように自動変速機300を制御する。具体的には、ECU500は、クラッチC2およびブレーキB3を完全係合状態にする制御信号を自動変速機300に送信する。
【0105】
S212にて、ECU500は、入力軸302が車両前進方向に回転しており、車両が前進中であると判断する。
【0106】
S214にて、ECU500は、同期回転数NS(2)がしきい値Fより小さいか否かを判断する。しきい値Fは、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で逆回転した場合におけるMG(2)140Aの耐久性への影響に基づいて設定される。なお、しきい値Fは、前述のしきい値Bと同じ値であってもよい。しきい値Fより小さいと(S214にてYES)、処理はS126に移される。そうでないと(S214にてNO)、処理はS220に移される。
【0107】
S216にて、ECU500は、回転数NS(1)がしきい値Gより小さいか否かを判断する。しきい値Gは、MG(1)140Bを回転数NS(1)で回転した場合におけるMG(1)140Bの耐久性への影響に基づいて設定される。なお、しきい値Gは、前述のしきい値Cと同じ値であってもよい。しきい値Gより小さいと(S216にてYES)、処理はS132に移される。そうでないと(S216にてNO)、処理はS220に移される。
【0108】
S218にて、ECU500は、ピニオン回転数NPかしきい値Hより小さいか否かを判断する。しきい値Hは、動力分割機構200の遊星歯車P1がピニオン回転数NPで回転した場合における遊星歯車P1の耐久性への影響に基づいて設定される。なお、しきい値Hは、前述のしきい値Dと同じ値であってもよい。しきい値Hより小さいと(S218にてYES)、処理はS136に移される。そうでないと(S218にてNO)、処理はS220に移される。
【0109】
S220にて、ECU500は、Rインヒビット制御を継続するように自動変速機300を制御する。
【0110】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU500により制御される車両の動作について説明する。なお、ここでは、Dインヒビット制御を解除する際の車両の動作について説明する。
【0111】
まず、図8に示すように、予め定められた車速以上での前進中の時刻T(1)で、シフトポジションがNポジションからDポジションに切り換えられ場合を想定する。運転者がNポジションからDポジションへ切り換えた時刻T(1)で、Dインヒビット制御が実行され、自動変速機300はニュートラル状態に制御される。
【0112】
車両の進行方向が判断できない場合は、ショックの発生の可能性を考慮して、図8の一点鎖線に示すように、車速が十分に低下するまで、Dインヒビット制御を解除することができない。
【0113】
本実施の形態においては、Dインヒビット制御中であると(S102にてYES)、出力軸回転数NOUTが検出され(S104)、出力軸回転数NOUTとDインヒビット制御の解除後の変速比との積が入力軸302の同期回転数NS(2)として算出される(S106)。その後、時刻T(2)にて、MG(2)140Aが同期回転数NS(2)で正回転させられ(S108)、Dインヒビット制御解除後の各クラッチおよび各ブレーキが半係合状態にされる(S110)。
【0114】
ここで、入力軸302の回転数と出力軸322の回転数とは同期化されている。さらに、車両が前進しており、入力軸302の回転方向と出力軸322の回転方向とが同期している。そのため、入力軸回転数NINはほとんど変化せず、時刻T(2)から時刻T(3)までの入力軸回転数NINの変化量ΔNINはしきい値Aより小さくなり(S116にてYES)、時刻T(3)において車両が前進中であると判断される(S118)。これにより、Dインヒビット制御実行中において、出力軸322の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく、車両の進行方向を判断することができる。
【0115】
車両が前進中である判断された時刻T(3)において、Dインヒビット制御は不要な制御として解除され(S120)、図8に示すように、自動変速機300は前進走行状態に制御される。そのため、Dインヒビット制御実行中の車両の進行方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を早期に解除することができる。
【0116】
次に、図9に示すように、予め定められた車速以上での後進中の時刻T(4)で、シフトポジションがNポジションからDポジションに切り換えられ場合を想定する。運転者がNポジションからDポジションへ切り換えた時刻T(4)で、Dインヒビット制御が実行され、自動変速機300はニュートラル状態に制御される。
【0117】
車両の進行方向が判断できない場合は、ショックの発生の可能性を考慮して、図9の一点鎖線に示すように、車速が十分に低下するまで、Dインヒビット制御を解除することができない。
【0118】
本実施の形態においては、上述の場合と同様に、時刻T(5)にて、MG(2)140Aが同期回転数NS(2)で正回転させられ(S108)、Dインヒビット制御解除後の各クラッチおよび各ブレーキが半係合状態にされる(S110)。
【0119】
ここで、入力軸302の回転数と出力軸322の回転数とは同期しているが、車両が後進しており、入力軸302の回転方向と出力軸322の回転方向と逆方向である。そのため、入力軸302の回転を抑制するトルクが自動変速機300から入力軸302に作用して、入力軸回転数NINが急激に低下する。そのため、時刻T(5)から時刻T(6)までの入力軸回転数NINの変化量ΔNINはしきい値Aより大きくなり(S116にてNO)、時刻T(6)において車両が後進中であると判断される(S122)。これにより、Dインヒビット制御実行中において、出力軸322の回転方向を検出する専用のセンサを設けることなく、車両の進行方向を判断することができる。
【0120】
車両が後進中であると判断された時刻T(6)において、そのままDインヒビット制御を解除すると、大きなショックが発生する場合がある。そこで、MG(2)140Aを同期回転数NS(2)で逆回転した場合における、MG(2)140A、MG(1)140Bおよび遊星歯車P1の耐久性への影響が判断される(S124、S130、S134)。MG(2)140A、MG(1)140Bおよび遊星歯車P1の耐久性への影響がなくなった(S124にてYES、S130にてYES、S134にてYES)時刻T(7)で、MG(2)140Aが同期回転数NS(2)で負回転される(S136)。これにより、入力軸302と出力軸322との回転数および回転方向が同期されて、Dインヒビット制御解除時のショックが抑制される。そのため、図9に示すように、時刻T(7)で、Dインヒビット制御は解除され(S120)、自動変速機300は前進走行状態に制御される。これにより、MG(2)140A、MG(1)140Bおよび遊星歯車P1の耐久性の悪化を抑制するしつつ、Dインヒビット制御解除時のショックを抑制することができる。
【0121】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、インヒビット制御の実行中において、インヒビット制御解除後のクラッチおよびブレーキを半係合状態にしたときの入力軸回転数NINの変化量に基づいて、車両の進行方向を判断する。そのため、インヒビット制御実行中の車両の進行方向を専用のセンサを設けることなく判断して、不要なインヒビット制御の実行を早期に解除することができる。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置が適用される車両全体の制御ブロック図である。
【図2】動力分割機構および自動変速機におけるギヤトレーンを示すスケルトン図である。
【図3】エンジン、MG(1)およびMG(2)の回転数の関係を示す共線図である。
【図4】自動変速機の作動表を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUの制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図7】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUの制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図8】本実施の形態に係る制御装置により制御される車両の自動変速機の状態を示すタイミングチャート(その1)である。
【図9】本実施の形態に係る制御装置により制御される車両の自動変速機の状態を示すタイミングチャート(その1)である。
【符号の説明】
【0124】
120 エンジン、140 モータジェネレータ、140A MG(2)、140B MG(1)、142A,142B レゾルバ回路、150 バッテリ、152 昇圧コンバータ、154 インバータ、160 減速機、170 ドライブシャフト、180 駆動輪、200 動力分割機構、212 ケース、214,302 入力軸、218,322 出力軸、224 遊星歯車装置、300 自動変速機、326,328,330 遊星歯車装置、500 ECU、502 シフトレバー、504 ポジションスイッチ、506 アクセルペダル、508 アクセル開度センサ、510 エンジン回転数センサ、512 出力軸回転数センサ、B0,B1,B2,B3 ブレーキ、C0,C1,C2 クラッチ、S1,S2,S3,S4 サンギヤ、P1,P2,P3,P4 遊星歯車、R1,R2,R3,R4 リングギヤ、CA1,CA2,CA3,CA4 キャリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、前記動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両の制御装置であって、
前記自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各前記摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前記前進用の摩擦係合要素を制御することができ、
前記車両においては、予め定められた車速以上で前記可動部のポジションが前記前進ポジション以外のポジションから前記前進ポジションに切り換えられると、前記前進用の摩擦係合要素の係合を禁止して前記自動変速機を前記中立状態にする前進インヒビット制御の実行が開始され、
前記制御装置は、
前記出力軸の回転数を検出するための手段と、
前記前進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、
前記前進インヒビット制御が実行中であると、前記出力軸の回転数と前記前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、前記入力軸の同期回転数を算出するための手段と、
前記同期回転数で前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための回転制御手段と、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態になるように前記自動変速機を制御するための手段と、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態となった場合における前記入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、
前記変化量に基づいて、前記車両の進行方向を判断するための判断手段と、
前記車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、前記前進用の摩擦係合要素を前記完全係合状態にして前記前進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記自動変速機が前記前進走行状態である場合において前記車両を前進させる方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための手段を含み、
前記判断手段は、前記変化量が予め定められた値より小さい場合に、前記車両の進行方向を前進方向と判断するための手段を含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記予め定められた値は、前記車両の進行方向が後進方向である場合における前記変化量に基づいて設定される、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記解除制御手段は、
前記車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、前記同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するための手段と、
前記同期回転数が前記予め定められた回転数より小さいと、前記同期回転数で前記予め定められた方向と逆の方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための逆回転制御手段と、
前記逆回転制御手段により前記入力軸を前記逆の方向に回転させた後に、前記前進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するための手段とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記動力源は、少なくとも回転電機を含み、
前記予め定められた回転数は、前記回転電機への影響に基づいて設定される、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
動力源と、前記動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両の制御装置であって、
前記自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各前記摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前記後進用の摩擦係合要素を制御することができ、
前記車両においては、予め定められた車速以上で前記可動部のポジションが前記後進ポジション以外のポジションから前記後進ポジションに切り換えられると、前記後進用の摩擦係合要素の係合を禁止して前記自動変速機を前記中立状態にする後進インヒビット制御の実行が開始され、
前記制御装置は、
前記出力軸の回転数を検出するための手段と、
前記後進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、
前記後進インヒビット制御が実行中であると、前記出力軸の回転数と前記後進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、前記入力軸の同期回転数を算出するための手段と、
前記同期回転数で前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための回転制御手段と、
前記後進用の摩擦係合要素が前記半係合状態になるように前記自動変速機を制御するための手段と、
前記後進用の摩擦係合要素が前記半係合状態となった場合における前記入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、
前記変化量に基づいて、前記車両の進行方向を判断するための判断手段と、
前記車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、前記後進用の摩擦係合要素を前記完全係合状態にして前記後進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項7】
前記回転制御手段は、前記自動変速機が前記後進走行状態である場合において前記車両を後進させる方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための手段を含み、
前記判断手段は、前記変化量が予め定められた値より小さい場合に、前記車両の進行方向を後進方向と判断するための手段を含む、請求項6に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記予め定められた値は、前記車両の進行方向が前進方向である場合における前記変化量に基づいて設定される、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記解除制御手段は、
前記車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、前記同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するための手段と、
前記同期回転数が前記予め定められた回転数より小さいと、前記同期回転数で前記予め定められた方向と逆の方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するための逆回転制御手段と、
前記逆回転制御手段により前記入力軸を前記逆の方向に回転させた後に、前記後進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するための手段とを含む、請求項6〜8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記動力源は、少なくとも回転電機を含み、
前記予め定められた回転数は、前記回転電機への影響に基づいて設定される、請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
動力源と、前記動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両の制御方法であって、
前記自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各前記摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前記前進用の摩擦係合要素を制御することができ、
前記車両においては、予め定められた車速以上で前記可動部のポジションが前記前進ポジション以外のポジションから前記前進ポジションに切り換えられると、前記前進用の摩擦係合要素の係合を禁止して前記自動変速機を前記中立状態にする前進インヒビット制御の実行が開始され、
前記制御方法は、
前記出力軸の回転数を検出するステップと、
前記前進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するステップと、
前記前進インヒビット制御が実行中であると、前記出力軸の回転数と前記前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、前記入力軸の同期回転数を算出するステップと、
前記同期回転数で前記入力軸が回転するように前記動力源を制御する回転制御ステップと、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態になるように前記自動変速機を制御するステップと、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態となった場合における前記入力軸の回転数の変化量を検出するステップと、
前記変化量に基づいて、前記車両の進行方向を判断する判断ステップと、
前記車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、前記前進用の摩擦係合要素を前記完全係合状態にして前記前進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御する解除制御ステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項12】
前記回転制御ステップは、前記自動変速機が前記前進走行状態である場合において前記車両を前進させる方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するステップを含み、
前記判断ステップは、前記変化量が予め定められた値より小さい場合に、前記車両の進行方向を前進方向と判断するステップを含む、請求項11に記載の車両の制御方法。
【請求項13】
前記予め定められた値は、前記車両の進行方向が後進方向である場合における前記変化量に基づいて設定される、請求項12に記載の車両の制御方法。
【請求項14】
前記解除制御ステップは、
前記車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、前記同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するステップと、
前記同期回転数が前記予め定められた回転数より小さいと、前記同期回転数で前記予め定められた方向と逆の方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御する逆回転制御ステップと、
前記逆回転制御ステップにより前記入力軸を前記逆の方向に回転させた後に、前記前進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するステップとを含む、請求項11〜13のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項15】
前記動力源は、少なくとも回転電機を含み、
前記予め定められた回転数は、前記回転電機への影響に基づいて設定される、請求項14に記載の車両の制御方法。
【請求項16】
動力源と、前記動力源に接続された入力軸および駆動輪に接続された出力軸を備えた自動変速機とを備えた車両の制御方法であって、
前記自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各前記摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前記後進用の摩擦係合要素を制御することができ、
前記車両においては、予め定められた車速以上で前記可動部のポジションが前記後進ポジション以外のポジションから前記後進ポジションに切り換えられると、前記後進用の摩擦係合要素の係合を禁止して前記自動変速機を前記中立状態にする後進インヒビット制御の実行が開始され、
前記制御方法は、
前記出力軸の回転数を検出するステップと、
前記後進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するステップと、
前記後進インヒビット制御が実行中であると、前記出力軸の回転数と前記後進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、前記入力軸の同期回転数を算出するステップと、
前記同期回転数で前記入力軸が回転するように前記動力源を制御する回転制御ステップと、
前記後進用の摩擦係合要素が前記半係合状態になるように前記自動変速機を制御するステップと、
前記後進用の摩擦係合要素が前記半係合状態となった場合における前記入力軸の回転数の変化量を検出するステップと、
前記変化量に基づいて、前記車両の進行方向を判断する判断ステップと、
前記車両の進行方向が後進方向と判断された場合に、前記後進用の摩擦係合要素を前記完全係合状態にして前記後進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御する解除制御ステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項17】
前記回転制御ステップは、前記自動変速機が前記後進走行状態である場合において前記車両を後進させる方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御するステップを含み、
前記判断ステップは、前記変化量が予め定められた値より小さい場合に、前記車両の進行方向を後進方向と判断するステップを含む、請求項16に記載の車両の制御方法。
【請求項18】
前記予め定められた値は、前記車両の進行方向が前進方向である場合における前記変化量に基づいて設定される、請求項17に記載の車両の制御方法。
【請求項19】
前記解除制御ステップは、
前記車両の進行方向が前進方向と判断された場合に、前記同期回転数が予め定められた回転数より小さいか否かを判断するステップと、
前記同期回転数が前記予め定められた回転数より小さいと、前記同期回転数で前記予め定められた方向と逆の方向に前記入力軸が回転するように前記動力源を制御する逆回転制御ステップと、
前記逆回転制御ステップにより前記入力軸を前記逆の方向に回転させた後に、前記後進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するステップとを含む、請求項16〜18のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項20】
前記動力源は、少なくとも回転電機を含み、
前記予め定められた回転数は、前記回転電機への影響に基づいて設定される、請求項19に記載の車両の制御方法。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
請求項11〜20のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
【請求項23】
回転電機と、前記回転電機に接続された自動変速機とを備えた車両用の駆動装置であって、
前記自動変速機は、運転者により操作される可動部のポジションが、前進ポジションである場合には前進用の摩擦係合要素を係合して前進走行状態を、後進ポジションである場合には後進用の摩擦係合要素を係合して後進走行状態を、中立ポジションである場合には各前記摩擦係合要素を解放して中立状態を、それぞれ実現するとともに、完全解放状態と完全係合状態との間である半係合状態になるように、前記前進用の摩擦係合要素を制御することができ、
前記駆動装置においては、前記駆動装置の出力軸が予め定められた回転数以上で前記可動部のポジションが前記前進ポジション以外のポジションから前記前進ポジションに切り換えられると、前記前進用の摩擦係合要素の係合を禁止して前記自動変速機を前記中立状態にする前進インヒビット制御の実行が開始され、
前記駆動装置は、
前記出力軸の回転数を検出するための手段と、
前記前進インヒビット制御が実行中であるか否かを判断するための手段と、
前記前進インヒビット制御が実行中であると、前記出力軸の回転数と前記前進インヒビット制御の解除後の変速比とに基づいて、前記入力軸の同期回転数を算出するための手段と、
前記同期回転数で前記自動変速機の入力軸が回転するように前記回転電機を制御するための回転制御手段と、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態になるように前記自動変速機を制御するための手段と、
前記前進用の摩擦係合要素が前記半係合状態となった場合における前記入力軸の回転数の変化量を検出するための手段と、
前記変化量に基づいて、前記出力軸の回転方向を判断するための判断手段と、
前記出力軸の回転方向が前進方向と判断された場合に、前記前進用の摩擦係合要素を前記完全係合状態にして前記前進インヒビット制御を解除するように前記自動変速機を制御するための解除制御手段とを含む、駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−151300(P2008−151300A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341667(P2006−341667)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】