説明

車両の制御装置

【課題】車両の制御装置において、車両が走行中で内燃機関が停止中における内燃機関の始動性の向上を可能とする。
【解決手段】エンジン11と多段変速機13との間に駆動力を伝達または遮断可能なクラッチ12を設け、エンジン11を停止した状態で車両が走行しているとき、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求を取得したとき、多段変速機13の変速段をニュートラルから前進段に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関と変速機と電動機を駆動連結したハイブリッド車両が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されたハイブリッド車両のエンジン始動制御装置では、始動クラッチを開放し、モータジェネレータのみを動力源として走行するEVモードでの走行中、エンジンとモータジェネレータとを動力源として走行するハイブリッドモードへの遷移要求があった場合、始動クラッチの引き摺りトルクによりエンジンを始動可能に構成し、EVモードで走行中にアクセル開度が所定値以上となった場合、変速機のダウンシフト中にエンジンを始動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−207643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のハイブリッド車両のエンジン始動制御装置では、EVモードで走行中に、ドライバがアクセル開度を所定値以上として加速要求があったとき、変速機のダウンシフト中にエンジンを始動するようにしている。ところが、車両に搭載されたバッテリの充電量が低いときもエンジンを始動する必要があり、この点が考慮されておらず、エンジン始動時の応答性が十分とは言えない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両が走行中で内燃機関が停止中における内燃機関の始動性の向上を可能とする車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の制御装置は、内燃機関と、変速機と、前記内燃機関と前記変速機との間の駆動伝達を遮断可能なクラッチと、を備える車両において、車両側からの前記内燃機関の始動要求を取得する始動要求取得手段と、前記始動要求取得手段が始動要求を取得したときに前記変速機の変速段を前進段に変更する内燃機関始動準備手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記車両の制御装置にて、前記変速機に接続可能な電気モータと、前記電気モータに電力を供給可能な二次電池と、前記二次電池の充電量を検出する充電量検出センサを設け、前記始動要求取得手段は、前記充電量検出センサが検出した充電量が予め設定された所定値以下となったときに前記内燃機関の始動要求を取得することが好ましい。
【0008】
上記車両の制御装置にて、前記始動要求取得手段が始動要求を取得したときに前記内燃機関を始動すると共に前記クラッチを係合状態とする内燃機関始動手段を設け、前記内燃機関始動準備手段が前記変速機の変速段を前進段に変更した後、前記内燃機関始動手段が内燃機関を始動してから前記クラッチを係合状態とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両の制御装置は、車両側からの内燃機関の始動要求を取得したときに変速機の変速段を前進段に変更するので、内燃機関を早期に始動することが可能となり、車両が走行中で内燃機関が停止中における内燃機関の始動性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る車両の制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施形態の車両の制御装置におけるエンジン始動制御の処理を表すフローチャートである。
【図3】図3は、本実施形態の車両の制御装置におけるエンジン始動制御の動作を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る車両の制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の制御装置を表す概略構成図、図2は、本実施形態の車両の制御装置におけるエンジン始動制御の処理を表すフローチャート、図3は、本実施形態の車両の制御装置におけるエンジン始動制御の動作を表すタイムチャートである。
【0013】
本実施形態のハイブリッド車両は、図1に示すように、動力源としてのエンジン(内燃機関)11と、自動式のクラッチ12と、自動式の多段変速機13と、動力源としてのモータジェネレータ(電気モータ)14と、最終減速装置15と、駆動輪16とを有している。
【0014】
エンジン11としては、燃焼室内で燃料を燃焼させ、これにより発生した熱エネルギを機械的エネルギに変換する熱機関たる内燃機関であって、ガソリンを燃料とし、ピストンの往復運動によって出力軸(クランクシャフト)21から機械的な動力を出力可能となっている。このエンジン11は、燃料噴射装置及び点火装置を有しており、この燃料噴射装置及び点火装置は、動作がエンジン用の電子制御装置(以下、エンジンECUと称する。)101により制御される。このエンジンECU101は、燃料噴射装置の燃料噴射量や燃料噴射時期などを制御すると共に、点火装置の点火時期を制御して、エンジン11の出力軸21から出力される機械的な動力(エンジン出力トルク)の大きさを調整することができる。
【0015】
このエンジンECU101は、CPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラムなどを予め記憶しているROM(Read Only Memory)、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0016】
モータジェネレータ14は、供給された電力を機械的な動力(モータ出力トルク)に変換して出力軸22から出力するモータ(電動機)としての機能と、出力軸22に入力された機械的な動力を電力に変換して回収するジェネレータ(発電機)としての機能とを兼ね備えている。このモータジェネレータ14は、例えば、永久磁石型交流同期電動機として構成されており、インバータ23から三相の交流電力が供給されて回転磁界を形成するステータ24と、その回転磁界に引き付けられて回転する回転子としてのロータ25とを有している。そのロータ25は、出力軸22と一体になって回転する。また、このモータジェネレータ14は、ロータ25の回転角位置を検出する回転センサ(レゾルバ)が設けられており、その回転センサが検出信号をモータジェネレータ用の電子制御装置(以下、モータECUと称する。)102に送信する。このモータECU102は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
【0017】
また、モータジェネレータ14は、出力軸22が多段変速機13の出力軸38に連結されている。そして、モータジェネレータ14は、モータとして機能するときには、モータ出力トルクを多段変速機13の出力軸38に伝達する一方、ジェネレータとして機能するときには、多段変速機13の出力軸38からの機械的な動力が出力軸22に入力される。
【0018】
このモータジェネレータ14は、インバータ23を介してバッテリ(二次電池)26が接続されている。このバッテリ26からの直流電力は、インバータ23で交流電力に変換されてモータジェネレータ14に供給される。この交流電力が供給されたモータジェネレータ14は、モータとして作動して、出力軸22からモータ出力トルクを出力する。一方、このモータジェネレータ14をジェネレータとして作動させたときは、このモータジェネレータ14からの交流電力をインバータ23で直流電力に変換してバッテリ26に回収、または、電力の回生を行いながら駆動輪16に制動力(回生制動)を加えることができる。この場合、このモータジェネレータ14は、多段変速機13から出力された機械的な動力(出力トルク)が出力軸22を介してロータ25に入力され、この入力トルクを交流電力に変換する。このインバータ23の動作は、モータECU102によって制御される。
【0019】
バッテリ26は、その充電状態(SOC:State of Charge)などを管理するバッテリ用の電子制御装置(以下、バッテリECUと称する。)103が接続されている。このバッテリECU103は、バッテリ26の充電状態、つまり、充電状態量(SOC量)を検出するSOCセンサ61が設けられている。バッテリECU103は、SOCセンサ61が検出したバッテリ26の充電状態量(SOC量)に関する信号を受信する。そして、このバッテリECU103は、この信号に基づいてバッテリ26の充電状態の判定を行い、充電及び放電の要否を判定する。
【0020】
多段変速機13は、エンジン11の動力(エンジン出力トルク)やモータジェネレータ14の動力(モータ出力トルク)を駆動力とし、最終減速装置15を介して左右の駆動輪16に伝達するものである。
【0021】
この自動式の多段変速機13は、前進5段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34、第5速ギア段35を有し、後退用の変速段として後退ギア段36を有している。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31、第2速ギア段32、第3速ギア段33、第4速ギア段34、第5速ギア段35の順に小さくなるよう構成されている。また、この多段変速機13は、エンジン11のエンジン出力トルクが伝達される入力軸37と、この入力軸37に対して間隔を空けて平行に配置された出力軸38を有している。なお、この多段変速機13は、その構成を簡易的に説明しており、各変速段の数や配置については、図1のものに限るものではない。
【0022】
ここで、第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bとで構成され、第1速ドライブギア31aは入力軸37上に配置され、第1速ドリブンギア31bは出力軸38上に配置される。第2速ギア段32は、互いに噛み合い状態にある第2速ドライブギア32aと第2速ドリブンギア32bとで構成され、第2速ドライブギア32aは入力軸37上に配置され、第2速ドリブンギア32bは出力軸38上に配置される。第3速ギア段33は、互いに噛み合い状態にある第3速ドライブギア33aと第3速ドリブンギア33bとで構成され、第3速ドライブギア33aは入力軸37上に配置され、第3速ドリブンギア33bは出力軸38上に配置される。第4速ギア段34は、互いに噛み合い状態にある第4速ドライブギア34aと第4速ドリブンギア34bとで構成され、第4速ドライブギア34aは入力軸37上に配置され、第4速ドリブンギア34bは出力軸38上に配置される。第5速ギア段35は、互いに噛み合い状態にある第5速ドライブギア35aと第5速ドリブンギア35bとで構成され、第5速ドライブギア35aは入力軸37上に配置され、第5速ドリブンギア35bは出力軸38上に配置される。
【0023】
後退ギア段36は、後退ドライブギア36aと後退ドリブンギア36bと後退中間ギア36cとで構成される。後退ドライブギア36aは入力軸37上に配置され、後退ドリブンギア36bは出力軸38上に配置され、後退中間ギア36cは、後退ドライブギア36a及び後退ドリブンギア36bと噛み合い状態にあり、回転軸39上に配置される。
【0024】
なお、実際の多段変速機13の構成においては、各変速段のドライブギアのうちのいずれかが、入力軸37と一体回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸37に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、そのうちのいずれかが出力軸38と一体回転するように配設される一方、残りが出力軸38に対して相対回転するように配設される。
【0025】
また、この実施形態では、変速機として多段変速機13を適用したが、ベルト式あるいはトロイダル式の無段変速機を適用してもよい。また、モータジェネレータ14が変速機13の出力軸38に対して常時連結された構造となっている。しかし、このような構造に限らず、モータジェネレータ14と変速機13の出力軸38をクラッチにより係合及び開放(伝達遮断)可能となるように構成してもよい。また、モータジェネレータ14と変速機13の入力軸37とを直接またはクラッチにより係合及び開放可能となるように構成してもよい。
【0026】
多段変速機13は、変速機用の電子制御装置(以下、変速機ECUと称する。)104により制御される。変速機ECU104は、変速操作装置41が接続されている。そのため、ドライバによる変速操作装置41の操作信号が変速機ECU104に入力され、変速機ECU104は、図示しない油圧装置(油圧アクチュエータ)を用いて多段変速機13における変速段の変更を行う。
【0027】
この場合、多段変速機13の入力軸37や出力軸38は、変速機ECU104により、油圧で軸線方向に移動するスリーブを有している。このスリーブが軸線方向へ移動することで、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸37や出力軸38と一体回転させる。この多段変速機13は、スリーブが移動することで、変速段への切り替えやニュートラル位置への切り替えを行うことができる。
【0028】
クラッチ12は、エンジン11と多段変速機13との間に介装され、このエンジン11の出力軸21と多段変速機13の入力軸37との間で、動力を伝達可能な係合状態と、動力の伝達を遮断可能な開放状態とに切替可能となっている。このクラッチ12は、乾式または湿式の単板クラッチ、多板クラッチであって、円板状の摩擦板を有し、この摩擦板の摩擦力によりエンジン11のエンジン出力トルクを出力軸21から多段変速機13の入力軸37に伝達することができる。このクラッチ12は、出力軸21に連結される入力側回転部45と、入力軸37に連結される出力側回転部46とを有している。そして、クラッチ12は、クラッチ用の電子制御装置(以下、クラッチECUと称する。)105により制御される。クラッチECU105は、車両の運転状態に応じて、図示しない油圧装置(油圧アクチュエータ)を用いてクラッチ12の作動状態の切替動作(係合及び開放)を行うことができる。
【0029】
最終減速装置15は、多段変速機13の出力軸38から入力された入力トルクを減速して、左右の駆動輪16に分配するものである。この最終減速装置15は、出力軸38の端部に固定されたピニオンギア51と、このピニオンギア51に噛み合って回転トルクを減速させながら回転方向を直交方向へと変換するリングギア52と、このリングギア52を介して入力された回転トルクを左右の駆動輪16に分配する差動機構53とを有している。
【0030】
更に、このハイブリッド車両は、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、ハイブリッドECUと称する。)100が設けられている。このハイブリッドECU100は、CPU、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM、そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM、予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されており、エンジンECU101、モータECU102、バッテリECU103、変速機ECU104、クラッチECU105との間で各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。
【0031】
そして、ハイブリッドECU100においては、その走行モードとして、エンジン走行モード、モータ走行モード、ハイブリッド走行モードが少なくとも用意され、ドライバによる変速操作装置41を操作、ハイブリッド車両の走行状態に基づいて各モードのいずれかを実現可能としている。
【0032】
ハイブリッドECU100は、エンジン11の出力軸21の回転数(エンジン回転数)Neを検出するエンジン回転数センサ62と、変速機13の入力軸37の回転数(インプット回転数)Ninを検出するインプット回転数センサ63と、車速を検出する車速センサ64と、アクセル開度θを検出するアクセル開度センサ65と、ブレーキペダルの踏み込みのON/OFFを検出するブレーキペダルセンサ66とが接続されている。ハイブリッドECU100は、各センサ61〜66の出力信号に基づいて、各ECU101〜105により、エンジン11、クラッチ12、多段変速機13、モータジェネレータ14、バッテリ26を駆動制御可能であり、各種の制御を実現することができる。
【0033】
ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードでは、クラッチ12を係合状態としてエンジン11を駆動する。すると、エンジン11が駆動トルクを発生し、この駆動トルクがクラッチ12を介して多段変速機13に伝達される。そして、この駆動トルクが多段変速機13にて変速され、最終減速装置15にて減速されて左右の駆動輪16に配分される。
【0034】
一方、ハイブリッドECU100は、モータ走行モードでは、クラッチ12を開放状態としてエンジン11を多段変速機13から分離し、モータジェネレータ14を駆動する。すると、モータジェネレータ14が駆動トルクを発生し、この駆動トルクが多段変速機13の出力軸38を介して最終減速装置15に伝達され、最終減速装置15にて減速されて左右の駆動輪16に配分される。
【0035】
また、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードでは、クラッチ12を係合状態としてエンジン11を駆動すると共に、モータジェネレータ14を駆動する。すると、エンジン11の駆動トルクがクラッチ12を介して多段変速機13に伝達され、多段変速機13にて変速される。一方、モータジェネレータ14の駆動トルクが多段変速機13の出力軸38に伝達される。そして、エンジン11及びモータジェネレータ14の駆動トルクが最終減速装置15にて減速されて左右の駆動輪16に配分される。
【0036】
そして、ハイブリッドECU100は、このハイブリッド走行モードにて、エンジン11を一時的に停止させるエコラン制御を実現することができる。例えば、ハイブリッド車両が減速走行しているとき、惰性走行しているときなど、ハイブリッド車両が駆動トルクを必要としていないときに、ハイブリッドECU100は、クラッチ12を開放状態としてエンジン11を停止させることができる。ハイブリッド走行モードにて、エンジン11を停止することで、燃費を向上することができる。また、このとき、モータジェネレータ14を発電機として用いることで、回生走行を行うようにしてもよいし、モータジェネレータ14を停止してもよい。
【0037】
このように構成された本実施形態の車両の制御装置では、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求を取得する始動要求取得手段と、この始動要求取得手段が始動要求を取得したときに多段変速機13の変速段を前進段に変更する内燃機関始動準備手段とが設けられている。この場合、始動要求取得手段と内燃機関始動準備手段は、ハイブリッドECU100が機能する。
【0038】
即ち、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードにて、エンジン11を一時的に停止させるエコラン制御を実行しているとき、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求として、例えば、SOCセンサ61が検出した充電状態量(SOC量)が予め設定された所定値以下となったときの信号を取得すると、多段変速機13の変速段を前進段に変更する。
【0039】
そして、始動要求取得手段が始動要求を取得したときにエンジン11を始動すると共にクラッチ12を係合状態とする内燃機関始動手段を設け、内燃機関始動準備手段が多段変速機13の変速段を前進段に変更した後、内燃機関始動手段がエンジン11を始動してからクラッチ12を係合状態とする。この場合、内燃機関始動手段は、ハイブリッドECU100が機能する。
【0040】
即ち、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードにて、エンジン11を一時的に停止させるエコラン制御を実行しているとき、SOCセンサ61が検出した充電状態量(SOC量)が予め設定された所定値以下となったとき、多段変速機13の変速段を前進段に変更した後、エンジン11を始動してからクラッチ12を係合状態とする。
【0041】
ここで、本実施形態の車両の制御装置によるエンジン11の始動制御の処理について、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0042】
一般に、ハイブリッド車両では、走行中で、且つ、エンジン11の休止中に、ドライバからの加速要求や車両システム(例えば、各ECU101〜105)からのエンジン始動要求により、エンジン11の始動制御(または、再始動制御)を実行する場合がある。このとき、ドライバの加速要求や車両システムからのエンジン始動要求に応じて、早期にエンジン11を始動する必要がある。
【0043】
本実施形態の車両の制御装置によるエンジン11の始動制御において、図2に示すように、ステップS11にて、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド車両が走行中で、且つ、エンジン11が休止中であるか否かを判定する。この場合、車両走行中で、且つ、エンジン休止中の状態としては、例えば、車両走行中にて、エンジン11及びモータジェネレータ14が停止している状態、エンジン11が停止してモータジェネレータ14が回生発電している状態、エンジン11が停止してモータジェネレータ14が駆動力を発生している状態などが想定される。
【0044】
なお、本実施形態では、車速センサ64が車速を検出しており、ハイブリッドECU100は、この車速センサ64の出力信号に基づいて車両走行中であるか否かの判定を行っている。また、エンジン回転数センサ62がエンジン回転数Neを検出しており、ハイブリッドECU100は、このエンジン回転数Neに基づいてエンジン休止中であるか否かの判定を行っている。また、エンジン休止中には、クラッチ12が開放状態にあり、エンジン11と多段変速機13との間のトルク伝達が開放されている。
【0045】
そして、このステップS11にて、ハイブリッド車両が走行中で、且つ、エンジン11が休止中であると判定(Yes)されたら、ステップS12に移行し、ハイブリッド車両が走行中でない、または、エンジン11が休止中でないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0046】
ステップS12にて、ハイブリッドECU100は、多段変速機13の変速段がニュートラルであるか否かを判定する。例えば、本実施形態では、多段変速機13が変速段を切り替える油圧装置を有していることから、ハイブリッドECU100は、この油圧装置の油圧を取得して現在の多段変速機13の変速段を判定する。また、多段変速機13に変速段検出センサを設けてもよい。このステップS12にて、多段変速機13の変速段がニュートラルであると判定(Yes)されたら、ステップS13に移行し、多段変速機13の変速段がニュートラルでないと判定(No)されたら、ステップS17に移行する。
【0047】
ステップS13にて、ハイブリッドECU100は、バッテリ26の充電状態量(SOC量)が予め設定された所定値(所定の充電状態量)SOC1以下(SOC≦SOC1)であるか否かを判定する。この判定条件は、バッテリECU103が、バッテリ26に充電されている現在の充電状態量では、モータジェネレータ14を駆動してハイブリッド車両をドライバの要求通りに走行させることが困難であることを判定するものである。そのため、この所定の充電状態量SOC1は、上記の判定条件に対応して設定されており、ハイブリッドECU100は、SOCセンサ61が検出したバッテリ26の充電状態量(SOC量)と、この所定の充電状態量SOC1とを比較して判定している。
【0048】
そして、このステップS13にて、バッテリ26の充電状態量SOC量が所定の充電状態量SOC1以下であると判定(Yes)されたら、ステップS14に移行し、バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC1より多いと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0049】
ステップS14にて、ハイブリッドECU100は、多段変速機13の変速段をニュートラルから前進段に変更する。即ち、この変速段の変更開始は、バッテリECU103からのエンジン始動要求(バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC1以下となる状態)を契機として、エンジン11の始動に先立って行われる。なお、多段変速機13における変更先の前進段(変速制御の目標値)は、任意に選択され得る。例えば、変更先の前進段が、車速及びアクセル開度θに基づいて設定されてもよいし、後述するエンジン11の始動完了後のエンジン回転数Neに基づいて設定されてもよい。また、本実施形態では、変速機ECU104が所定の制御マップに基づいて変更先の前進段を設定し、この設定値を目標値として多段変速機13を駆動制御し、多段変速機13の変速段を変更している。この場合、ハイブリッドECU100からの指令により変速機ECU104が、多段変速機13の変速段を変更している。
【0050】
ハイブリッドECU100は、ステップS14で、多段変速機13の変速段をニュートラルから前進段に変更したら、ステップS15にて、エンジン11の始動(あるいは再始動)を行う。このエンジン11の始動開始制御は、変速段の変更が開始された後に実行される。但し、このエンジン11の始動開始制御は、変速段の変更の完了後に行われてもよいし、変速段の変更制御に並行して行われてもよい。この場合、ハイブリッドECU100からの指令により、クラッチECU105がエンジン11の始動開始時にクラッチ12を開放状態とし、エンジンECU101がエンジン11を始動している。
【0051】
ハイブリッドECU100は、ステップS15で、エンジン11を始動したら、ステップS16にて、クラッチ12を係合する。これにより、エンジン11が駆動系に係合されて、エンジン11を動力源としたエンジン走行モードが実現する。このとき、予め多段変速機13の変速段が前進段に変更されているので、クラッチ12の係合後に早期にエンジン11を始動し、モータジェネレータ14を駆動してバッテリ26の充電を開始することができる。
【0052】
一方、ステップS17にて、ハイブリッドECU100は、バッテリ26の充電状態量(SOC量)が予め設定された所定値(所定の充電状態量)SOC2以上(SOC≧SOC2)であるか否かを判定する。この判定条件は、バッテリECU103が、バッテリ26に充電されている現在の充電状態量で、モータジェネレータ14を駆動してハイブリッド車両をドライバの要求通りに走行させることが十分に可能であることを判定するものである。そのため、この所定の充電状態量SOC2は、上記の判定条件に対応して設定されており、SOC1<SOC2である。
【0053】
そして、このステップS17にて、バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC2以上であると判定(Yes)されたら、ステップS18に移行し、バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC2より少ないと判定(No)されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0054】
ステップS18にて、ハイブリッドECU100は、多段変速機13の変速段をニュートラルに変更する。即ち、車両走行中で、且つ、エンジン休止中にて、多段変速機13の変速段がニュートラル以外の変速段にある場合には、バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC2以上であることを条件として、多段変速機13の変速段をニュートラルに変更する。これにより、変速段が常に前進段に設定されている場合に比べてハイブリッド車両の走行抵抗を低減できる。
【0055】
また、ここで、本実施形態の車両の制御装置によるエンジン11の始動制御の動作について、図3のタイムチャートに基づいて詳細に説明する。
【0056】
本実施形態の車両の制御装置によるエンジン11の始動制御の動作において、図3に示すように、エンジン11が停止され、モータジェネレータ14を駆動源としたモータ走行モードが実行されているとき、多段変速機13は、変速段がニュートラルにあり、アクセルペダルが所定量だけ踏み込まれることで、アクセル開度θが一定となっている。そして、モータジェネレータ14が駆動しているために、バッテリ26の充電量SOCが低下してきている。また、クラッチ12が開放状態にあることから、クラッチトルクTcがTc=0であり、モータECU102がアクセル開度θに基づいてモータジェネレータ14のモータトルクTmを制御している。また、エンジン11が停止していることから、エンジントルクTeがTe=0であり、エンジン回転数NeがNe=0で、多段変速機13のインプット回転数NinがNin=0である。
【0057】
時間t1になると、バッテリ26の充電状態量SOCが所定の充電状態量SOC1以下になる。すると、変速機ECU104は、多段変速機13を駆動し、変速段をニュートラルから前進段に変更する。このとき、変速機ECU104は、車速、アクセル開度θ、充電量SOC、所定の制御マップに基づいて変速先の前進段の目標値を設定し、多段変速機13を駆動制御する。これにより、多段変速機13は、変速段がバッテリ26の充電量SOCの低下状況に応じた最適な変速段(要求変速段)となる。また、多段変速機13のインプット回転数Ninも上昇する。
【0058】
そして、時間t2になると、多段変速機13の変速段の変更が完了し、エンジンECU101がエンジン11の始動を開始し、エンジントルクTe及びエンジン回転数Neが上昇する。そのため、変速機ECU104が多段変速機13の変速段の変更を完了した後、エンジンECU101がエンジン11の始動を開始することとなる。
【0059】
その後、時間t3では、クラッチECU105は、クラッチ12の係合を開始し、クラッチトルクTcが上昇する。また、エンジン11のエンジン回転数Neと多段変速機13のインプット回転数Ninとが同期してくる。また、モータECU102は、モータジェネレータ14の駆動電力を漸減し、モータトルクTmを減少させる。
【0060】
時間t4では、クラッチ12が係合状態となり、モータジェネレータ14が停止する。従って、モータ走行モードからエンジン走行モードに切り替わる。このとき、予め多段変速機13の変速段が前進段に変更されているので、クラッチ12の係合後に速やかな車両の加速を実現できる。
【0061】
このように本実施形態の車両の制御装置によれば、エンジン11と多段変速機13との間に駆動力を伝達または遮断可能なクラッチ12を設け、エンジン11を停止した状態で車両が走行しているとき、ハイブリッドECU100は、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求を取得したとき、多段変速機13の変速段をニュートラルから前進段に変更するようにしている。
【0062】
従って、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求を取得したときに多段変速機13の変速段を前進段に変更するため、その後、エンジン11を早期に始動することが可能となり、ハイブリッド車両が走行中でエンジン11が停止中にあるとき、エンジン11の始動性を向上することができるという効果を奏する。
【0063】
また、本実施形態の車両の制御装置では、多段変速機13の出力軸38にモータジェネレータ14を接続し、このモータジェネレータ14にバッテリ26を接続して電力を供給可能とすると共に、バッテリ26の充電状態量を検出するSOCセンサ61を設け、ハイブリッドECU100は、SOCセンサ61が検出した充電状態量が予め設定された所定の充電状態量SOC1以下となったときに、エンジン11の始動要求を取得するようにしている。従って、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求として、バッテリ26の充電状態量が低下したら、多段変速機13の変速段を前進段に変更するため、エンジン11を早期に始動することが可能となり、バッテリ26の充電状態量を常時モータジェネレータ14を駆動可能な量に維持することができる。
【0064】
また、本実施形態の車両の制御装置では、ハイブリッドECU100は、エンジン11の始動要求を取得したとき、多段変速機13の変速段を前進段に変更した後、エンジン11を始動してからクラッチ12を係合状態としている。従って、エンジン11が停止してモータジェネレータ14が駆動して車両が走行するモータ走行モードにあるとき、バッテリ26の充電状態量が低下したら、多段変速機13の変速段を前進段に変更するため、クラッチ12の係合後に速やかな車両の加速を実現することができ、エンジン走行モードへの早期の切り替えが可能となる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、エンジン11を停止した車両のエコラン走行にて、ハイブリッド車両側からのエンジン11の始動要求として、バッテリ26の充電状態量SOCが所定値以下となったら、多段変速機13の変速段を前進段に変更し、その後、エンジン11を始動してからクラッチ12を係合状態としている。このような構成に加えて、エンジン11を停止した車両のエコラン走行にて、ドライバからのエンジン11の始動要求として、加速要求(アクセル開度やアクセル速度の変化率の増加)があったら、多段変速機13の変速段を前進段に変更し、その後、エンジン11を始動してからクラッチ12を係合状態とする構成を付加してもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、本発明の車両を、駆動源としてエンジン11とモータジェネレータ14を有するハイブリッド車両に適用して説明したが、駆動源としてエンジン11のみを有する車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
11 エンジン(内燃機関)
12 クラッチ
13 多段変速機(変速機)
14 モータジェネレータ(電気モータ)
15 最終減速装置
16 駆動輪
23 インバータ
26 バッテリ(二次電池)
41 変速操作装置
61 SOCセンサ(充電量検出センサ)
100 ハイブリッドECU(始動要求取得手段、内燃機関始動準備手段、内燃機関始動手段)
101 エンジンECU
102 モータECU
103 バッテリECU
104 変速機ECU
105 クラッチECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
変速機と、
前記内燃機関と前記変速機との間の駆動伝達を遮断可能なクラッチと、
を備える車両において、
車両側からの前記内燃機関の始動要求を取得する始動要求取得手段と、
前記始動要求取得手段が始動要求を取得したときに前記変速機の変速段を前進段に変更する内燃機関始動準備手段と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記変速機に接続可能な電気モータと、前記電気モータに電力を供給可能な二次電池と、前記二次電池の充電量を検出する充電量検出センサを設け、前記始動要求取得手段は、前記充電量検出センサが検出した充電量が予め設定された所定値以下となったときに前記内燃機関の始動要求を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記始動要求取得手段が始動要求を取得したときに前記内燃機関を始動すると共に前記クラッチを係合状態とする内燃機関始動手段を設け、前記内燃機関始動準備手段が前記変速機の変速段を前進段に変更した後、前記内燃機関始動手段が内燃機関を始動してから前記クラッチを係合状態とすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1282(P2013−1282A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135455(P2011−135455)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】