説明

車両の駆動装置

【課題】軸線方向の寸法の増大を抑制できる車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】第1モータ・ジェネレータ4、動力分配機構5、変速機構10及第2モータ・ジェネレータ9が同軸的に配置されている駆動装置2であって、第2モータ・ジェネレータ9に隣接してロータ21の一端を支持する第1支持壁25と、ロータ21の他端を支持する第2支持壁26とがケース17に設けられており、第1支持壁25に変速機構10の変速切替部41が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機が設けられた車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動装置として、内燃機関の出力軸と同軸的に配置されたジェネレータ及びモータを備え、ジェネレータとモータとの間に自動変速機の出力ギア及びクラッチが配置されたものが知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2及び3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開平6−328950号公報
【特許文献2】特開2003−191761号公報
【特許文献3】特開2005−127411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駆動装置は、モータを支持する支持壁と自動変速機のクラッチが配置される支持壁とが別体であるので、軸線方向の寸法が大きくなりがちである。また、軸線方向の寸法増大を抑制するためには、モータのロータ内周に自動変速機の構成要素を配置するなどの工夫が必要になるため構造が複雑化するおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、軸線方向の寸法の増大を抑制できる車両の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、第1電動機と、内燃機関に連結された第1回転要素、前記第1電動機に連結された第2回転要素及び動力を出力する第3回転要素を有する第1差動機構と、前記第1差動機構の前記第3回転要素から出力された動力を伝達する中間回転部材と、第2電動機と、前記第2電動機のステータが固定されるケースと、前記第2電動機に連結された第4回転要素、前記ケースに連結された第5回転要素及び前記中間回転部材に連結された第6回転要素を有する第2差動機構と、動力を駆動輪に伝達するための出力部と、前記出力部に至る動力伝達状態を切り替える変速切替部を持ち前記中間回転部材の回転を変速して前記出力部に伝達する変速機構と、を備え、前記第1電動機、前記第1差動機構、前記変速機構及び前記第2電動機が同軸的に配置された車両の駆動装置であって、前記ケースには、前記第2電動機に隣接して前記第2電動機のロータの一端を支持する第1支持壁と、前記第2電動機の前記ロータの他端を支持する第2支持壁とが設けられており、前記第1支持壁に前記変速機構の前記変速切替部が配置されているものである(請求項1)。
【0007】
この駆動装置によれば、第2電動機のロータの一端を支持する第1支持壁に変速機構の変速切替部が配置されている。つまり、第2電動機のロータの支持と変速切替部の支持とを共通の第1支持壁にて行うことができるため、これらの支持を別々の支持壁で行う態様と比較して軸線方向の寸法を短くできる。
【0008】
本発明の駆動装置の一態様においては、前記第2差動機構が、前記第2支持壁を挟んで前記第1支持壁の反対側に配置され、前記第2差動機構の前記第6回転要素に連結された前記中間回転部材が、前記第1支持壁と、前記第2差動機構を挟んで前記第2支持壁の反対側に設けられた第3支持壁とによって支持されてもよい(請求項2)。この態様によれば、中間回転部材の一端の支持を第1支持壁にて行うことができるので、その一端の支持を第1支持壁とは別の支持壁で行う場合と比べて中間回転部材の軸線方向の寸法増大を抑えることができる。これにより、軸線方向の寸法増大を効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明の駆動装置の一態様においては、前記内燃機関側から、前記第1電動機、前記第1差動機構、前記変速機構、前記第2電動機及び前記第2差動機構の順番でこれらが同一軸線方向に配置されており、前記第1差動機構及び前記変速機構のそれぞれの外周側に前記出力部が配置されてもよい(請求項3)。この場合には、出力部が第1差動機構及び変速機構のそれぞれの外周側に配置されるため、出力部を第1差動機構又は変速機構に隣接するように配置する場合に比べて軸線方向の小型化を容易に達成できる。
【0010】
本発明の駆動装置の一態様において、前記出力部は、前記第3回転要素と一体回転するカウンタドライブギアと、前記カウンタドライブギアと噛み合うカウンタドリブンギアと、前記カウンタドリブンギアを経由した動力を前記駆動輪に伝達する差動装置とを有し、前記カウンタドライブギア、前記カウンタドリブンギア及び前記差動装置が共通の前記ケースにて支持されてもよい(請求項4)。この態様によれば、カウンタドライブギア、カウンタドリブンギア及び差動装置が同じケースにて支持されるため、組み付け誤差が小さくかつ支持剛性が高い駆動装置を提供できる。
【0011】
出力部が第1差動機構及び変速機構のそれぞれの外周側に配置される場合には、前記変速機構は、相互に差動回転するサンギア、リングギア及びキャリアを有するダブルピニオン型の遊星歯車機構として構成された第3差動機構を有し、かつ前記変速切替部として、前記サンギアと前記キャリアとを結合又は解放するクラッチと、前記サンギアと前記ケースとを結合又は解放するブレーキとが設けられており、前記リングギアが前記出力部に、前記キャリアが前記中間回転部材にそれぞれ連結されていてもよい(請求項5)。この態様によれば、リングギアから動力が出力されるため、変速機構の外周側の出力部へサンギアやキャリア等の他の要素から動力を出力する場合と比べて、軸線方向の寸法を増加させることなく変速機構の外周から出力部へ容易に出力できる。
【0012】
この態様においては、前記クラッチは、前記キャリアに一体回転可能に設けられた複数の第1クラッチ板と、前記第1クラッチ板の間に配置され、前記サンギアと一体回転できる複数の第2クラッチ板と、前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板とを接近させるためのクラッチピストンとを持つ多板クラッチして構成され、前記ブレーキは、前記ケースに一体回転可能に設けられた複数の第1ブレーキ板と、前記第1ブレーキ板の間に配置され、前記サンギアと一体回転できる複数の第2ブレーキ板と、前記第1ブレーキ板と前記第2ブレーキ板とを接近させるためのブレーキピストンとを持つ多板ブレーキとして構成され、前記クラッチの前記第2クラッチ板と前記ブレーキの前記第2ブレーキ板とが、前記サンギアと一体回転できる共通の回転部材に軸線方向に関してオーバーラップした状態でそれぞれ設けられていてもよい(請求項6)。この場合には、第2クラッチ板と第2ブレーキ板とが軸線方向にオーバーラップした状態で、ブレーキとクラッチとをまとめて配置できるため、ブレーキとクラッチとを軸線方向に並べた場合と比べて軸線方向の寸法を短縮できる。また、第2クラッチ板と第2ブレーキ板とが共通の回転部材に設けられているので、部品点数を削減できるため体格の低減、軽量化及び低コスト化が可能になる。
【0013】
本発明の一態様において、前記第2差動機構は、前記第5回転要素として設けられかつ前記第2支持壁に固定された固定キャリアを有するシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されており、前記第2支持壁には、前記第2電動機を冷却したオイルを前記固定キャリアにて支持されるピニオンへ導く潤滑油路が設けられていてもよい(請求項7)。この態様によれば、第2支持壁を利用して潤滑油路を形成できるため、第2支持壁と独立して潤滑油路を形成する場合と比べて潤滑油路の構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の駆動装置によれば、第2電動機のロータの支持と変速切替部の支持とを共通の第1支持壁にて行うことができるため、これらの支持を別々の支持壁で行う態様と比較して軸線方向の寸法を短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一形態に係る駆動装置が組み込まれた車両の全体構成を概略的に示しており、図2は図1に示された駆動装置を詳細に示している。車両1はいわゆるハイブリッド車両として構成されている。周知のようにハイブリッド車両は、内燃機関を走行用の駆動力源として備えるとともに、電動機を他の走行用の駆動力源として備えた車両である。車両1は駆動輪と内燃機関とが車両前部に位置するFFレイアウトの車両として構成されている。
【0016】
駆動装置2は、内燃機関3と、第1モータ・ジェネレータ4と、内燃機関3及び第1モータ・ジェネレータ4がそれぞれ連結された第1差動機構としての動力分配機構5と、動力分配機構5からの動力が伝達される中間回転部材としての中間軸6とを備えている。また、駆動装置2には第2差動機構としての減速機構8を介して中間軸6に連結された第2モータ・ジェネレータ9が設けられている。中間軸6の動力は変速機構10を介して出力部11に伝達され、出力部11を経由した動力は左右の駆動輪12に伝達される。第1モータ・ジェネレータ4、動力分配機構5、変速機構10、第2モータ・ジェネレータ9及び減速機構8は内燃機関3側から当該順序で図示の通りに同軸的に配置されている。
【0017】
内燃機関3は、火花点火型の多気筒内燃機関として構成されており、その動力は入力軸15を介して動力分配機構5に伝達される。入力軸15は中間軸6と同軸に配置されていて、入力軸15及び中間軸6は共通の軸線Ax1(図2)の回りに回転する。入力軸15と内燃機関3との間にはダンパ16が介在しており、内燃機関3のトルク変動はダンパ16にて吸収される。
【0018】
第1モータ・ジェネレータ4と第2モータ・ジェネレータ9とは同様の構成を持っていて、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えている。第1モータ・ジェネレータ4は、ケース17に固定されたステータ18と、そのステータ18の内周側に同軸に配置されたロータ19とを備えている。第2モータ・ジェネレータ9も同様に、ケース17に固定されたステータ20と、そのステータ20の内周側に同軸に配置されたロータ21とを備えている。第1モータ・ジェネレータ4は本発明に係る第1電動機に、第2モータ・ジェネレータ9は本発明に係る第2電動機にそれぞれ相当する。図2に示すように、第2モータ・ジェネレータ9のロータ21は、電磁鋼板が積層されたロータコアを支持する支持部21aを有しており、その支持部21aは中間軸6の外周に相対回転可能な状態で同軸上に配置されている。第2モータ・ジェネレータ9のロータ21は、その右側の一端が第1支持壁25に軸受27を介して回転自在に支持されるとともに、左側の他端が第2支持壁26に軸受28を介して回転自在に支持されている。第1支持壁25及び第2支持壁26はケース17に固定されていてケース17に対して静止している。
【0019】
動力分配機構5は、相互に差動回転可能な3つの回転要素を持つシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されており、外歯歯車であるサンギアSu1と、そのサンギアSu1に対して同軸的に配置された内歯歯車であるリングギアRi1と、これらのギアSu1、Ri1に噛み合うピニオン30を自転かつ公転自在に保持するキャリアCr1とを備えている。この形態では、入力軸15がキャリアCr1に、第1モータ・ジェネレータ4がサンギアSu1に、中間軸6がリングギアRi1にそれぞれ連結されている。従って、本形態においては、キャリアCr1が本発明に係る第1回転要素に、サンギアSu1が本発明に係る第2回転要素に、リングギアRi1が本発明に係る第3回転要素にそれぞれ相当する。
【0020】
減速機構8は、相互に差動回転可能な3つの回転要素を持つシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されている。減速機構8は第2支持壁26を挟んで第1支持壁25の反対側に配置されていて、外歯歯車であるサンギアSu2と、そのサンギアSu2に対して同軸的に配置された内歯歯車であるリングギアRi2と、これらのギアSu2、Ri2に噛み合うピニオン31を自転かつ公転自在に保持するキャリアCr2とを備えている。この形態では、第2モータ・ジェネレータ9がサンギアSu2に、ケース17(第2支持壁22)がキャリアCr2に、中間軸6がリングギアRi2にそれぞれ連結されている。従って、本形態においては、サンギアSu2が本発明に係る第4回転要素に、キャリアCr2が本発明に係る第5回転要素に、リングギアRi2が本発明に係る第6回転要素にそれぞれ相当する。また、キャリアCr2は本発明に係る固定キャリアに相当する。
【0021】
図3は図2に示された減速機構8及びその周辺を拡大した拡大図である。この図に示すように、減速機構8のキャリアCr2にはピニオン31を回転自在に支持する支持軸34が設けられており、その支持軸34にはその外周面に開口しかつ第2支持壁26側の端部に開口する油供給路34aが形成されている。油供給路34aには第2支持壁26に形成された潤滑油路26aの一端が接続されている。その潤滑油路26aの他端は第2モータ・ジェネレータ9側に開口している。これにより、図3の矢印で示すように第2モータ・ジェネレータ9を冷却したオイルを、第2支持壁26に形成された潤滑油路26aと支持軸34に形成された油供給路34aとを通じてピニオン26へ導くことができる。このように、第2支持壁26を利用して潤滑油路26aを形成できるため、第2支持壁26と独立した潤滑油路を形成する場合と比べて潤滑油路の構成を簡略化できる。
【0022】
図1〜図3に示すように、中間軸6の左側の端部にはリングギアRi2がスプライン嵌合にて相対回転不能に装着されている(図3参照)。中間軸6は、第2モータ・ジェネレータ9のロータ21と減速機構8とが外周に配置された状態で、第1支持壁25と、第2支持壁26と、減速機構8を挟んで第2支持壁22の反対側に設けられた第3支持壁35とによって支持されている。第3支持壁35はケース17に固定されている。図2及び図3に示すように、第3支持壁35と中間軸6との間には軸受36が介在しており、その軸受36を介して中間軸6は第3支持壁35に回転自在に支持されている。
【0023】
変速機構10は、相互に差動回転可能な3つの回転要素を持つダブルピニオン型の遊星歯車機構として構成された差動機構40と、出力部11に至る動力伝達状態を切り替える変速切替部41とを備えている。差動機構40は本発明に係る第3差動機構に相当する。差動機構40は、外歯歯車であるサンギアSu3と、そのサンギアSu3に対して同軸的に配置された内歯歯車であるリングギアRi3と、サンギアSu3に噛み合う第1ピニオン42及びリングギアRi3に噛み合う第2ピニオン43を相互に噛み合わせた状態で、これらのピニオン42、43を自転かつ公転自在に保持するキャリアCr3とを有している。変速切替部41はサンギアSu3とキャリアCr3とを結合又は解放するクラッチCLと、サンギアSu3とケース17とを結合又は解放するブレーキBとを有している。
【0024】
変速機構10は、変速切替部41のクラッチCL及びブレーキBの各作動状態を変更することにより、ギア比が高い第1速とギア比が低い第2速とを選択的に成立させる。第1速はクラッチCLにてサンギアSu3とキャリアCr3とを解放した状態で、ブレーキBにてサンギアSu3とケース17とを結合することにより成立する。他方、第2速はクラッチCLにてサンギアSu3とキャリアCr3とを結合した状態で、ブレーキBにてサンギアSu3とケース17とを解放することにより成立する。変速機構10に対する変速制御は周知のように車速とアクセル操作量とに基づいて行われる。
【0025】
図4は、図2に示された変速切替部41及びその周辺を拡大した拡大図である。この図にも示すように、変速切替部41は第2モータ・ジェネレータ9に隣接する第1支持壁25に配置されていて、クラッチCLとブレーキBとが軸線方向にオーバーラップした状態で集約されている。クラッチCLは、差動機構40のキャリアCr3に一体回転可能に設けられた複数の(図では4枚の)第1クラッチ板45と、第1クラッチ板45の間に配置され、サンギアSu3と一体回転できる複数の(図では4枚の)第2クラッチ板46と、第1クラッチ板45と第2クラッチ板46とを接近させるためのクラッチピストン48とを持つ多板クラッチして構成されている。他方、ブレーキBはケース17に一体回転可能に設けられた複数の(図では4枚の)第1ブレーキ板49と、第1ブレーキ板49の間に配置され、サンギアSu3と一体回転できる複数の(図では4枚の)第2ブレーキ板50と、第1ブレーキ板49と第2ブレーキ板50とを接近させるためのブレーキピストン51とを持つ多板ブレーキとして構成されている。そして、クラッチCLの第2クラッチ板46とブレーキBの第2ブレーキ板50とは軸線方向にオーバーラップした状態でサンギアSu3と一体回転できる共通の回転部材52に設けられている。第2クラッチ板46は回転部材52の回転半径方向外側に装着されており、第2ブレーキ板50は回転部材42の回転半径方向内側に装着されている。
【0026】
クラッチCLのクラッチピストン48は回転部材52に隣接するピストン室55に収容されており、そのピストン室55にはクラッチピストン48をクラッチ板45、46から離す方向に付勢するリターンスプリング56が設けられている。ピストン室55への油圧の供給を不図示のコントロールバルブにて制御することにより、サンギアSu3とキャリアCr3とを結合する係合状態と、サンギアSu3とキャリアCr3とを解放する解放状態とを切り替えることができる。他方、ブレーキBのブレーキピストン51は第1支持壁25に形成されたピストン室57に収容されており、そのピストン室57にはブレーキピストン51をブレーキ板49、50から離す方向に付勢するリターンスプリング58が設けられている。ブレーキBもクラッチCLと同様に、ピストン室57への油圧の供給を不図示のコントロールバルブにて制御することにより、サンギアSu3とケース17とを結合する係合状態と、サンギアSu3とケース17とを解放する解放状態とを切り替えることができる。
【0027】
変速切替部41は、第2クラッチ板46と第2ブレーキ板50とが軸線方向にオーバーラップした状態でブレーキBとクラッチCLとがまとめられているため、ブレーキBとクラッチCLとを軸線方向に並べた場合と比べて軸線方向の寸法を短縮できる。また、第2クラッチ板46と第2ブレーキ板50とが共通の回転部材52に設けられているので、部品点数を削減できるため体格の低減、軽量化及び低コスト化が可能になる。
【0028】
図1及び図2に示すように、出力部11は、動力分配機構5及び変速機構10のそれぞれの外周側に配置されている。このため、出力部11を動力分配機構5又は変速機構10に隣接するように配置する場合に比べて軸線方向の小型化を容易に達成できる。また、出力部11は、動力分配機構5のリングギアRi1と一体回転するカウンタドライブギア60と、カウンタドライブギア60と噛み合うカウンタドリブンギア61と、カウンタドリブンギア61を経由した動力を駆動輪12(図1)に伝達する差動装置62とを有している。カウンタドリブンギア61と作動装置62との間にはカウンタドリブンギア61と同軸かつ一体回転する中間ギア63が介在しており、この中間ギア63は差動装置62のケースに設けられたドリブンギア64と噛み合っている。図2に示すように、カウンタドライブギア60、カウンタドリブンギア61及び差動装置62は、共通のケース17にて支持されている。そのため、出力部11の構成要素がケース17と別体のハウジングにて支持される形態と比較して、組み付け誤差を小さくすることができかつ支持剛性を容易に高めることができる。
【0029】
以上の駆動装置2によれば、第2モータ・ジェネレータ9のロータ21の支持と変速切替部41の支持とを共通の第1支持壁25にて行うことができるため、これらの支持を別々の支持壁で行う形態と比較して軸線方向の寸法を短くできる。また、中間軸6が第1支持壁25と、第3支持壁35とによって支持されている。このため、中間軸6の一端の支持を第1支持壁25とは別の支持壁で行う場合と比べて中間軸6の軸線方向の寸法増大を抑えることができる。
【0030】
本発明は上記の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。駆動装置2の各構成要素の配置は一例であり、第1モータ・ジェネレータ4、動力分配機構5、変速機構10、第2モータ・ジェネレータ9及び減速機構8が同軸的に配置されていれば十分であり、変速機構10と第2モータ・ジェネレータ9とが隣り合う限りにおいてこれらの並び順は任意であってよい。また、上述した各形態の差動機構は一例にすぎず、これらを機構学上等価な別形態に変更することも可能である。また差動機構を遊星歯車機構により実現することは一例にすぎない。例えば、上述した各形態の遊星歯車機構の全部又は一部を、歯車ではない摩擦車(ローラ)を回転要素として持つ遊星ローラ機構に置き換えて実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一形態に係る駆動装置が組み込まれた車両の全体構成を概略的に示した図。
【図2】図1に示された駆動装置を詳細に示した図。
【図3】図2に示された減速機構及びその周辺を拡大した拡大図。
【図4】図2に示された変速切替部及びその周辺を拡大した拡大図。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
3 内燃機関
4 第1モータ・ジェネレータ(第1電動機)
5 動力分配機構(第1差動機構)
6 中間軸(中間回転部材)
8 減速機構(第2差動機構)
9 第2モータ・ジェネレータ(第2電動機)
10 変速機構
11 出力部
17 ケース
19 ロータ
25 第1支持壁
26 第2支持壁
26a 潤滑油路
31 ピニオン
35 第3支持壁
40 差動機構(第3差動機構)
41 変速切替部
45 第1クラッチ板
46 第2クラッチ板
49 第1ブレーキ板
50 第2ブレーキ板
52 回転部材
60 カウンタドライブギア
61 カウンタドリブンギア
62 差動装置
B ブレーキ
CL クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電動機と、内燃機関に連結された第1回転要素、前記第1電動機に連結された第2回転要素及び動力を出力する第3回転要素を有する第1差動機構と、前記第1差動機構の前記第3回転要素から出力された動力を伝達する中間回転部材と、第2電動機と、前記第2電動機のステータが固定されるケースと、前記第2電動機に連結された第4回転要素、前記ケースに連結された第5回転要素及び前記中間回転部材に連結された第6回転要素を有する第2差動機構と、動力を駆動輪に伝達するための出力部と、前記出力部に至る動力伝達状態を切り替える変速切替部を持ち前記中間回転部材の回転を変速して前記出力部に伝達する変速機構と、を備え、前記第1電動機、前記第1差動機構、前記変速機構及び前記第2電動機が同軸的に配置された車両の駆動装置であって、
前記ケースには、前記第2電動機に隣接して前記第2電動機のロータの一端を支持する第1支持壁と、前記第2電動機の前記ロータの他端を支持する第2支持壁とが設けられており、
前記第1支持壁に前記変速機構の前記変速切替部が配置されていることを特徴とする車両の駆動装置。
【請求項2】
前記第2差動機構が、前記第2支持壁を挟んで前記第1支持壁の反対側に配置され、
前記第2差動機構の前記第6回転要素に連結された前記中間回転部材が、前記第1支持壁と、前記第2差動機構を挟んで前記第2支持壁の反対側に設けられた第3支持壁とによって支持されている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記内燃機関側から、前記第1電動機、前記第1差動機構、前記変速機構、前記第2電動機及び前記第2差動機構の順番でこれらが同一軸線方向に配置されており、
前記第1差動機構及び前記変速機構のそれぞれの外周側に前記出力部が配置されている請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記第3回転要素と一体回転するカウンタドライブギアと、前記カウンタドライブギアと噛み合うカウンタドリブンギアと、前記カウンタドリブンギアを経由した動力を前記駆動輪に伝達する差動装置とを有し、前記カウンタドライブギア、前記カウンタドリブンギア及び前記差動装置が共通の前記ケースにて支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記変速機構は、相互に差動回転するサンギア、リングギア及びキャリアを有するダブルプラネタリ型の遊星歯車機構として構成された第3差動機構を有し、かつ前記変速切替部として、前記サンギアと前記キャリアとを結合又は解放するクラッチと、前記サンギアと前記ケースとを結合又は解放するブレーキとが設けられており、
前記リングギアが前記出力部に、前記キャリアが前記中間回転部材にそれぞれ連結されている請求項3に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記クラッチは、前記キャリアに一体回転可能に設けられた複数の第1クラッチ板と、前記第1クラッチ板の間に配置され、前記サンギアと一体回転できる複数の第2クラッチ板と、前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板とを接近させるためのクラッチピストンとを持つ多板クラッチして構成され、
前記ブレーキは、前記ケースに一体回転可能に設けられた複数の第1ブレーキ板と、前記第1ブレーキ板の間に配置され、前記サンギアと一体回転できる複数の第2ブレーキ板と、前記第1ブレーキ板と前記第2ブレーキ板とを接近させるためのブレーキピストンとを持つ多板ブレーキとして構成され、
前記クラッチの前記第2クラッチ板と前記ブレーキの前記第2ブレーキ板とが、前記サンギアと一体回転できる共通の回転部材に軸線方向に関してオーバーラップした状態でそれぞれ設けられている請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第2差動機構は、前記第5回転要素として設けられかつ前記第2支持壁に固定された固定キャリアを有するシングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されており、
前記第2支持壁には、前記第2電動機を冷却したオイルを前記固定キャリアにて支持されるピニオンへ導く潤滑油路が設けられている請求項1〜6のいずれか一項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100216(P2010−100216A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274586(P2008−274586)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】