説明

車両制御装置

【課題】車両減速時に燃料消費を抑制する。
【解決手段】走行駆動用エンジン及びニュートラルに切り換え可能な変速機を備えた車両の制御装置であって、車両の目標停止位置までの距離として先行車両との車間距離を検出する車間距離検出装置3と、車速を検出する車速センサ6と、減速開始時において車間距離検出装置3により検出された目標停止位置までの距離と車速センサ6により検出された車速とに基づいて、変速機7をニュートラルとした状態で走行するニュートラル走行と、変速機7を接続した状態で走行する通常走行とのうち、目標停止位置までの燃料消費量の少ない走行方法を選択し、当該選択された走行方法により目標停止位置まで走行するように、走行駆動用エンジン及び変速機7を制御するコントロールユニット2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に係り、詳しくは車両減速時における走行制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両減速時には、通常、走行駆動用エンジンに対する燃料噴射を停止する燃料カットが行なわれている。燃料カットは、燃料消費が抑制されるとともにエンジンブレーキが効果的に作用するので、車両減速時に有効な技術である。
また、変速機の変速段をニュートラルにして走行するニュートラル走行が可能な車両も知られている。ニュートラル走行では、エンジンブレーキが作用しないので、車速の低下が抑えられ、緩い下り坂のような場所での無負荷走行時に適している。
【0003】
更に、燃料カットを行う通常走行とニュートラル走行とを減速中に切換えて走行制御する車両が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両減速時に目標停止位置までの距離が比較的大きい場合には、燃料カットを行なうと目標停止位置に到達するまでに必要以上に減速してしまう虞がある。このような場合には目標停止位置前に走行駆動用エンジンが停止しないように、燃料噴射を再開しなければならず、車両減速開始から目標停止位置に到達するまでの累計の燃料消費量が、ニュートラル走行で目標停止位置に到達する場合よりも大きくなってしまう場合がある。
【0006】
一方、ニュートラル走行では、走行抵抗により車両の減速が可能であるが、走行駆動用エンジンがアイドリング状態であるので常に燃料を消費しており、燃料カット時よりは燃費は低下する。
また、上記特許文献1では、車両減速中にニュートラル走行から通常走行に自動的に切換えるので、搭乗者に違和感を与える虞がある。
【0007】
本願発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、車両減速時に燃料消費を抑制することが可能な車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、請求項1の車両制御装置は、走行駆動用エンジン及びニュートラルに切り換え可能な変速機を備えた車両の制御装置であって、車両の目標停止位置までの距離を検出する停止距離検出手段と、車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、減速開始時において停止距離検出手段により検出された目標停止位置までの距離と車両走行状態検出手段により検出された車両の走行状態とに基づいて、変速機をニュートラルとした状態で走行するニュートラル走行と、変速機を接続した状態で走行する通常走行とのうち、目標停止位置までの燃料消費量の少ない走行方法を選択し、当該選択された走行方法により目標停止位置まで走行するように、走行駆動用エンジン及び変速機を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の車両制御装置は、請求項1において、車両走行状態検出手段が、少なくとも減速開始時における車両の走行速度を車両の走行状態として検出することを特徴とする。
また、請求項3の車両制御装置は、請求項1または2において、停止距離検出手段が、先行車両との距離を目標停止位置までの距離として検出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の車両制御装置は、請求項1または2において、停止距離検出手段が、車両前方の信号までの距離を目標停止位置までの距離として検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の車両制御装置によれば、車両減速時にニュートラル走行と通常走行のうち目標停止位置までの燃料消費量の少ない走行方法で走行するので、車両減速時にニュートラル走行を行わない場合やニュートラル走行のみ行う場合と比較して、燃料消費を抑えることができる。
また、車両減速中にニュートラル走行と通常走行とを切換えないことで、意図していない時期での走行方法の切換えが行われず、搭乗者における違和感の発生を防止することができる。
【0012】
請求項2の車両制御装置によれば、減速開始時における車両の目標停止位置までの距離と車両の走行速度とに基づいて、目標停止位置までの到達時間が演算されるので、ニュートラル走行による燃料消費量を求めることができる。そして、通常走行における、燃料カット解除後の燃料消費量と比較することができ、ニュートラル走行と通常走行のうち、いずれが目標停止位置に到達するまでの燃料消費量の少ない走行方法であるかを容易に判別することができる。
【0013】
請求項3の車両制御装置によれば、先行車両の位置に到達することで車両が停止すると見なし、例えば車載レーダにより先行車両との距離を検出することで、容易に目標停止位置までの距離を検出することが可能となる。
請求項4の車両制御装置によれば、車両前方の信号に到達したときに車両が停止すると見なし、例えばビデオカメラによる撮影画像から車両前方の信号との距離を推定することで、容易に目標停止位置までの距離を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】コントロールユニットにおける制御要領を示すフローチャートである。
【図3】走行方法判別用のマップである。
【図4】ニュートラル走行と通常走行とでの単位時間当たりの燃料消費量の推移の一例を示すグラフである。
【図5】図4に示したニュートラル走行と通常走行とでの累積の燃料消費量の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態の車両制御装置1は、コントロールユニット2(制御手段)、車間距離検出装置3(停止距離検出手段)、アクセルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ4、ブレーキの操作を検出するブレーキスイッチ5、車速を検出する車速センサ6、変速機7及び走行駆動用エンジンの燃料噴射弁8により構成されている。
【0016】
車間距離検出装置3は、前方の先行車両までの車間距離を検出する装置である。具体的には、車載レーダ、車両を認識可能な道路インフラシステムとの通信装置、あるいはナビシステムが用いられる。
変速機7は、走行駆動用エンジンと走行駆動輪との間の駆動系に介装され、コントロールユニット2からの制御信号により、ニュートラル及び各変速段のいずれかに切換え可能となっている。
【0017】
コントロールユニット2は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成され、車間距離検出装置3、アクセルポジションセンサ4、ブレーキスイッチ5及び車速センサ6から、各種検出信号を入力し、変速機7及び燃料噴射弁8を制御して、車両減速時における変速段及び燃料噴射量を制御する機能を有する。
【0018】
図2は、コントロールユニット3における制御要領を示すフローチャートである。
本ルーチンは、車両キースイッチオン、かつ車両走行時、即ち車速センサ6により検出された車速Vが所定速度より大きい場合に実行される。なお、ここでの所定速度は、0より大きい値に設定される。
始めにステップS10では、アクセルオフであるか否か、即ちアクセルポジションセンサ4により検出されたアクセル量が0であるか否かを判別する。アクセルオフである場合には、ステップS20に進む。アクセルオンである場合には、ステップS10を繰り返す。
【0019】
ステップS20では、車間距離検出装置3により検出した車間距離を車両の目標停止位置までの距離Lsとして入力する。そして、ステップS30に進む。
ステップS30では、変速機7をニュートラルにして走行するニュートラル走行が有効か否かを判別する。詳しくは、先行車両の位置に到達して車両が停止するまでに、ニュートラル走行した場合と通常走行した場合とで、いずれの累積の燃料消費量Qtが少ないかを判別するものであり、ニュートラル走行の方が累積の燃料消費量Qtが少ない場合をニュートラル走行が有効であると判定し、通常走行の方が累積の燃料消費量Qtが少ない場合をニュートラル走行が有効でないと判定する。なお、通常走行は、変速機7を接続した状態での走行であり、車両減速時には、燃料噴射弁8からの燃料噴射がカットされるとともに、車速の低下に伴い走行駆動用エンジンの回転速度が低下したときに走行駆動用エンジンが停止しないように燃料噴射を再開させる。また、ニュートラル走行時には、走行駆動用エンジンがアイドリング状態となるように燃料噴射量が制御される。
【0020】
これらの累積の燃料消費量Qtは、車間距離検出装置3により検出した目標停止位置までの距離Lsと車速Vにより求められる。累積の燃料消費量Qtは、あらかじめ確認の上、例えば図3に示すようなマップとして記憶されている。そして、本ステップにおいて、ステップS20で入力した目標停止位置までの距離Lsと車速センサ6により検出した車速Vとに基づいて、記憶されているマップを用いてニュートラル走行が有効か否かを判別する。ニュートラル走行が有効である場合には、ステップS40に進む。ニュートラル走行が有効でない場合には、ステップS10に戻る。
【0021】
ステップS40では、変速段がニュートラルとなるように変速機7を制御する。そして、ステップS50に進む。
ステップS50では、先行車が加速したか否かを判別する。具体的には、車間距離検出装置3により先行車両との車間距離を検出し、この車間距離が増加したか否かにより判別すればよい。先行車両が加速した場合には、ステップS60に進む。先行車両が加速していない場合は、ステップS50を繰り返す。
【0022】
ステップS60では、ニュートラルを解除して接続状態となるよう変速機7を制御する。そして、ステップS10に戻る。
次に、図4及び図5を用いてニュートラル走行及び通常走行の燃料消費量の推移の具体例について説明する。
図4は、ニュートラル走行と通常走行とでの単位時間当たりの燃料消費量Qfの推移の一例を示すグラフである。図5は、図4に示したニュートラル走行と通常走行とでの累積の燃料消費量Qtの推移を示すグラフである。
【0023】
同一の車速からアクセルオフ及びブレーキオフを条件として、ニュートラル走行と通常走行とで夫々減速した場合、図4に示すように、ニュートラル走行では、減速開始から目標停止位置到達までエンジン回転速度がアイドル状態で一定であり、燃料消費量も一定に推移する。通常走行では、減速開始から燃料カットが行われ、燃料消費量が0になる。そして、エンジンブレーキにより車速が低下してエンジン回転速度がエンジン停止直前まで低下すると、燃料カットが解除され、燃料噴射が再開される。このときの燃料噴射量は、走行駆動用エンジンが安定して作動するように、アイドル状態の燃料噴射量より大きい値となる。そして、その後は車速の低下に伴って燃料噴射量が徐々に低下する。なお、図4中斜線部の面積がニュートラル走行と通常走行とでの累積の燃料消費量Qtの差に相当する。本実施形態では、燃料カット解除を境にして図中右側の斜線部の面積が大きいので、目標停止位置に到達するまでの累積の燃料消費量Qtは、通常走行の方が大きいことを示す。
【0024】
図5に示すように、上記ニュートラル走行と通常走行とを比較すると、減速を開始してから燃料カット解除までは図4に示す通常走行の方が累積の燃料消費量Qtが少なく、燃料カット解除後はニュートラル走行より通常走行の燃料消費量Qfが大きいことから、燃料カット解除後所定時間経過すると逆転して通常走行の方が累積の燃料消費量Qtが大きくなる。
【0025】
したがって、目標停止位置までの距離Lsが大きくなると、目標停止位置までの経過時間も増加することから、ニュートラル走行より通常走行の方が累積の燃料消費量Qtが大きくなり、ニュートラル走行の方が有効となる。また、減速開始時の車速Vが大きくなるほど燃料カット解除までの時間が長くなるので、ニュートラル走行の方が累積の燃料消費量Qtが大きくなり、通常走行の方が有効となる。
【0026】
本実施形態では、上記のように減速開始時の車速Vと目標停止位置までの距離Lsとに基づいて、ニュートラル走行と通常走行とのうち累積の燃料消費量Qtの少ない方が選択され、目標停止位置到達までの変速機7及び燃料噴射弁8の制御が行われる。
したがって、車両減速時に通常走行のみ行う場合や、ニュートラル走行のみ行う場合と比較して、累積の燃料消費量Qtを減少させることが可能となり、燃費を向上させることができる。
【0027】
また、車両減速開始から目標停止位置到達までニュートラル走行と通常走行とを切換えないので、搭乗者の意図していない時期でニュートラルと接続状態とで変速機7が切換えられることによる違和感の発生を防止することができる。
また、本実施形態では、ニュートラル走行時に先行車両が加速したか否かを判別し、加速した場合にはニュートラルを解除する。したがって、アクセルの操作に応じて直ぐに自車を加速させることができる。ニュートラル解除時にエンジン回転速度や車速に応じて変速段を適切に選択して接続させておけば、自車の加速開始時に更なる迅速な加速を可能にすることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、先行車両の位置を車両の目標停止位置と見なし、車両の目標停止位置までの距離Lsを車間距離検出装置3により検出しているが、本願発明はこれに限定するものではない。例えば車両前方の信号位置を車両の目標停止位置と見なしてもよい。この場合、例えば、ビデオカメラや、道路インフラ情報を受信するシステム、あるいはナビゲーションシステムを車両に搭載し、これらを用いて車両前方の信号位置までの距離を検出して車両の目標停止位置までの距離Lsとして用いればよい。
【0029】
また、上記実施形態では、ステップS30においてニュートラル走行が有効か否かを、目標停止位置までの距離Ls及び車速Vに基づいて判別しているが、更に減速開始時の変速機7での変速段及びエンジン回転速度に基づいて判別してもよい。この場合、図1中破線で示すように、減速開始時の変速段情報は減速機7から入力し、エンジン回転速度はクランク角センサ10から入力すればよい。そして、本実施形態では、変速段やエンジン回転速度に応じたマップをあらかじめ複数枚記憶しておき、これらのマップを減速開始時の変速段やエンジン回転速度に応じて切換えるようにすればよい。このように、減速開始時の目標停止位置までの距離Ls及び車速Vだけでなく、変速段及びエンジン回転速度に基づいてニュートラル走行及び通常走行を選択することで、車両減速時における燃料消費をより精度よく抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 車両制御装置
2 コントロールユニット
3 車間距離検出装置
7 変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動用エンジン及びニュートラルに切り換え可能な変速機を備えた車両の制御装置であって、
前記車両の目標停止位置までの距離を検出する停止距離検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する車両走行状態検出手段と、
減速開始時において前記停止距離検出手段により検出された目標停止位置までの距離と前記車両走行状態検出手段により検出された車両の走行状態とに基づいて、前記変速機をニュートラルとした状態で走行するニュートラル走行と、前記変速機を接続した状態で走行する通常走行とのうち、前記目標停止位置までの燃料消費量の少ない走行方法を選択し、当該選択された走行方法により前記目標停止位置まで走行するように、前記走行駆動用エンジン及び前記変速機を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記車両走行状態検出手段は、少なくとも前記減速開始時における前記車両の走行速度を前記車両の走行状態として検出することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記停止距離検出手段は、先行車両との距離を前記目標停止位置までの距離として検出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記停止距離検出手段は、車両前方の信号までの距離を前記目標停止位置までの距離として検出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117473(P2012−117473A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269402(P2010−269402)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】