説明

車両制御装置

【課題】運転者に与える違和感を抑制する車両制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン2と、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると、エンジン2への過給を行うターボ過給機3と、ロックアップクラッチ4aを有し、エンジン2で発生した回転が伝達されるトルクコンバータ4と、トルクコンバータ4を介して、回転が伝達される無段変速機6とを備える車両1を制御する車両制御装置において、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段23を備え、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きく、かつロックアップクラッチ4aの締結制御中にエンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機付きエンジン搭載車両において、過給圧が所定の範囲内にあると判断された場合に、無段変速機の変速比を一時的にハイギヤ側に変更するものが、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、過給圧が負圧から正圧になるような場合に、変速比を一時的にハイギヤ側に変更することで、駆動力の変化を緩やかすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−299818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロックアップクラッチを有するトルクコンバータを有する車両においては、トルクコンバータのロックアップクラッチが締結していない場合に、一旦エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなり、その後例えばロックアップクラッチの締結によりエンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さくなる場合がある。このような短い時間に過給機の過給開始、および過給停止が行われる場合には、過給開始、および過給停止時に生じる駆動力の変化によるショックが短い時間に複数回生じる。
【0006】
上記発明においては、このようなショックの発生を防ぐことができず、運転者に違和感を与える、といった問題点がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、短い時間に過給機の過給開始、および過給停止が行われることを防止し、ショックの発生を防ぎ、運転者に与える違和感を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る車両制御装置は、エンジンと、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると、エンジンへの過給を行うターボ過給機と、ロックアップクラッチを有し、エンジンで発生した回転が伝達されるトルクコンバータと、トルクコンバータを介して、回転が伝達される無段変速機とを備える車両を制御する車両制御装置である。車両制御装置は、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段を備え、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きく、かつロックアップクラッチの締結制御中にエンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下とならないようにする。
【発明の効果】
【0009】
この態様によると、ロックアップクラッチが解放しており、エンジンの回転速度がターボ回転速度よりも大きい場合には、エンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないようにすることで、短い時間に過給機による過給開始、および過給停止が行われることを防ぐことができ、ショックの発生を防止し、運転者に与える違和感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の車両の概略構成図である。
【図2】本実施形態の無段変速機の変速比制御を示すフローチャートである。
【図3】目標エンジン回転速度を算出するためのマップである。
【図4】本実施形態の無段変速機の変速比制御を説明するタイムチャートである。
【図5】本実施形態の無段変速機の変速比制御を説明するタイムチャートである。
【図6】本実施形態の無段変速機の変速比制御を説明するタイムチャートである。
【図7】本実施形態の無段変速機の変速比制御を説明するタイムチャートである。
【図8】図2に示す変速比制御を行わない場合の目標エンジン回転速度を算出するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の車両制御装置について図1を用いて説明する。図1は車両の概略構成図である。
【0012】
車両1は、エンジン2と、過給機3と、トルクコンバータ4と、前後進切換機構5と、無段変速機6と、コントローラ7とを備える。
【0013】
エンジン2はディーゼルエンジンである。エンジン2の吸気通路8には、過給機3のコンプレッサ3a及びインタークーラ9が配置される。過給機3による過給が行われる場合には、エアはコンプレッサ3aで圧縮され、インタークーラで冷却された後、エンジンに供給される。
【0014】
過給機3は、コンプレッサ3aと、タービン3bとを備える。タービン3bは、エンジン2の排気通路10に配置され、排気ガスの流れによって回転する。タービン3bの回転はコンプレッサ3aに伝達され、コンプレッサ3aは伝達された回転によって吸気通路8のエアを圧縮する。過給機3は、タービン3bのタービン入口面積を可変に絞るノズルベーン(図示せず)を備えており、ノズルベーンの開度をアクチュエータ(図示せず)によって制御することで、タービン入口面積の絞り量を制御することができる。過給機3はエンジン回転速度がターボ回転速度以上となると過給を開始し、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さくなると過給を終了する。
【0015】
トルクコンバータ4は、エンジン2と前後進切換機構5との間に設けられる。トルクコンバータ4はエンジン2で発生した回転を前後進切換機構5に伝達する。トルクコンバータ4では、エンジン2から回転が伝達されたポンプインペラが回転し、内部の油を介してタービンランナに回転が伝達される。トルクコンバータ4は、油を介さずにエンジン2の回転を前後進切換機構5に伝達可能とするロックアップクラッチ4aを備える。
【0016】
前後進切換機構5は、トルクコンバータ4と無段変速機6との間に設けられる。前後進切換機構5は、遊星歯車5aと、前進クラッチ5bと、後進ブレーキ5cとを備える。
【0017】
前進クラッチ5bは、前進クラッチピストン室に油が供給されると締結し、前進クラッチピストン室から油が排出されると解放する。後進ブレーキ5cは後進ブレーキピストン室に油が供給されると締結し、後進ブレーキピストン室から油が排出されると解放する。
【0018】
無段変速機6は、プライマリプーリ11と、セカンダリプーリ12と、Vベルト13とを備える。
【0019】
プライマリプーリ11は、固定円錐板11aと可動円錐板11bと対向配置され、固定円錐板のシーブ面と可動円錐板のシーブ面との間でV字状のプーリ溝11cを形成する。プライマリプーリ11には前後進切換機構5から回転が伝達される。
【0020】
可動円錐板11bは、プライマリプーリ室に油が給排されることで軸方向へ前後進する。これによってプライマリプーリ11のプーリ溝11cの幅が変更される。
【0021】
セカンダリプーリ12は、固定円錐板12aと可動円錐板12bとが対向配置され、固定円錐板のシーブ面と可動円錐板のシーブ面との間でV字状のプーリ溝12cを形成する。
【0022】
可動円錐板12bは、セカンダリプーリ室に油が給排されることで軸方向へ前後進する。これによってセカンダリプーリ12のプーリ溝12cの幅が変更される。
【0023】
Vベルト13は、プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12に巻き掛けられ、プライマリプーリ11に伝達された回転をセカンダリプーリ12に伝達する。セカンダリプーリ12に伝達された回転が駆動輪14に伝達されて車両は走行する。
【0024】
無段変速機6は、プライマリプーリ室およびセカンダリプーリ室に給排される油を調整することで、Vベルト13と、プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12との接触半径を変更し、連続的に変速比を変更する。
【0025】
コントローラ7は、プライマリプーリ回転速度センサ20からの信号、セカンダリプーリ回転速度センサ21からの信号、アクセルペダル開度センサ22からの信号、エンジン回転速度センサ23からの信号、エンジンコントロールユニット(図示せず)から出力されるトルク情報などに基づいてプライマリプーリ室およびセカンダリプーリ室への油の給排を制御し、無段変速機6の変速比を制御する。コントローラ7は、CPU、ROM、RAMなどによって構成され、CPUがROMに格納されたプログラムを読み出すことで、コントローラ7の各機能が発揮される。
【0026】
次に本実施形態の無段変速機6の変速比制御について図2のフローチャートを用いて説明する。以下において説明する変速比制御は、車両発進時に実行される。
【0027】
ステップS100では、コントローラ7は、ロックアップクラッチ4aが締結しているかどうか判定する。コントローラ7は、ロックアップクラッチ4aが締結している場合にはステップS101へ進み、ロックアップクラッチ4aが締結制御中にはステップS109へ進む。ロックアップクラッチ4aが締結制御中とは、ロックアップクラッチ4aが半締結している状態、すなわちスリップ状態が含まれる。
【0028】
ステップS101では、コントローラ7は、エンジン回転速度センサ23からの信号に基づいて実際のエンジン回転速度を算出する。
【0029】
ステップS102では、コントローラ7は、エンジン回転速度とターボ回転速度とを比較する。コントローラ7は、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さい場合にはステップS103へ進み、エンジン回転速度がターボ回転速度以上である場合には本制御を終了し、通常の制御を行う。
【0030】
なお、ターボ回転速度の代わりに第1回転速度を用いても良い。第1回転速度は、ターボ回転速度から所定値を減算した回転速度であり、ターボ回転速度に対して余裕代を持って設定された回転速度である。つまり、エンジン回転速度が第1回転速度よりも小さい場合には、過給機3による過給が開始されることはない。
【0031】
ステップS103では、コントローラ7は、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくならないように無段変速機6の変速比を制御する。具体的には、コントローラ7は、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくならないように無段変速機6の変速比をHigh側へ変更、または変速比を維持する。
【0032】
ステップS104では、コントローラ7は、アクセルペダル開度センサ22からの信号に基づきアクセルペダル開度を算出する。
【0033】
ステップS105では、コントローラ7は、アクセルペダル開度が増加したかどうか判定する。具体的には、コントローラ7は、今回の制御によりステップS104によって算出したアクセルペダル開度と、前回の制御によりステップS104によって算出したアクセルペダル開度とを比較する。コントローラ7は、アクセルペダル開度が増加している場合にはステップS106へ進み、アクセルペダル開度が変更されていない場合、またはアクセルペダル開度が減少している場合にはステップS103へ戻り上記制御を繰り返す。
【0034】
ステップS106では、コントローラ7は、セカンダリプーリ回転速度センサ21からの信号に基づいて車速を算出する。
【0035】
ステップS107では、コントローラ7は、アクセルペダル開度と車速に基づいて図3に示すマップから目標エンジン回転速度を算出する。図3に示すマップは、アクセルペダル開度と、車速と、目標エンジン回転速度との関係を示す概略マップである。
【0036】
ステップS108では、コントローラ7は、目標エンジン回転速度とターボ回転速度とを比較する。コントローラ7は、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きい場合には本制御を終了し通常の制御を行う。コントローラ7は、目標エンジン回転速度がターボ回転速度以下の場合にはステップS103へ戻り上記制御を繰り返す。
【0037】
ステップS100においてロックアップクラッチ4aが締結制御中であると判定されると、ステップS109においてコントローラ7は、エンジン回転速度センサ23からの信号に基づいて実際のエンジン回転速度を算出する。
【0038】
ステップS110では、コントローラ7は、セカンダリプーリ回転速度センサ21からの信号に基づいて車速を算出する。
【0039】
ステップS111では、コントローラ7は、アクセルペダル開度センサ22からの信号に基づいてアクセルペダル開度を算出する。
【0040】
ステップS112では、コントローラ7は、車速とアクセルペダル開度とから図3に示すマップに基づいて目標エンジン回転速度を算出する。
【0041】
ステップS113では、コントローラ7は、エンジン回転速度とターボ回転速度、目標エンジン回転速度とターボ回転速度を比較する。コントローラ7は、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きく、かつ目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さい場合にはステップS114へ進み、エンジン回転速度がターボ回転速度以下、または目標エンジン回転速度がターボ回転速度以上の場合にはステップS100へ戻り上記制御を繰り返す。
【0042】
なお、ターボ回転速度の代わりに第2回転速度を用いても良い。第2回転速度は、ターボ回転速度に所定値を加算した回転速度であり、ターボ回転速度に対して余裕代を持って設定された回転速度である。つまり、エンジン回転速度が第2回転速度よりも大きい場合には、過給機3による過給が終了することはない。所定値は、第1回転速度の所定値と異なる値であってもよい。
【0043】
ステップS114では、コントローラ7は、エンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないように無段変速機6の変速比を制御する。具体的には、コントローラ7は、無段変速機6の変速比をLow側へ変更、または無段変速機6の変速比を維持する。
【0044】
ステップS115では、コントローラ7は、アクセルペダル開度センサ22からの信号に基づいてアクセルペダル開度を算出する。
【0045】
ステップS116では、コントローラ7は、アクセルペダル開度が減少したかどうか判定する。具体的には、コントローラ7は、ステップS115によって算出したアクセルペダル開度と、ステップS111によって算出したアクセルペダル開度とを比較する。コントローラ7は、ステップS115によって算出したアクセルペダル開度が、ステップS111によって算出したアクセルペダル開度も小さくなっている場合にはステップS117へ進む。コントローラ7は、ステップS115によって算出したアクセルペダル開度が、ステップS111によって算出したアクセルペダル開度以上である場合にはステップS114へ戻り、上記制御を繰り返す。
【0046】
ステップS117では、コントローラ7は、セカンダリプーリ回転速度センサ21からの信号に基づいて車速を算出する。
【0047】
ステップS118では、コントローラ7は、ステップS117によって算出した車速とステップS115によって算出したアクセルペダル開度とから図3に示すマップに基づいて目標エンジン回転速度を算出する。
【0048】
ステップS119では、コントローラ7は、目標エンジン回転速度とターボ回転速度とを比較する。コントローラ7は、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さい場合には本制御を終了し通常の制御を行う。コントローラ7は、目標エンジン回転速度がターボ回転速度以上である場合にはステップS114へ戻り上記制御を繰り返す。
【0049】
本制御を終了し、通常の制御に移行すると、車速とアクセルペダル開度とから図8に示すマップに基づいて目標エンジン回転速度を算出し、算出した目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比が制御される。例えば、ステップS108において、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きい場合には、目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比が制御される。つまり、エンジン回転速度がターボ回転速度以下となっている状態からアクセルペダル開度が増加し、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなった場合には、目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比が制御される。また、ステップS119において、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さい場合には、目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比が制御される。つまり、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなった後に、アクセルペダル開度が減少し、目標エンジン回転速度がターボ回転速度以下となった場合には、目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比が制御される。
【0050】
また、目標エンジン回転速度を実現するようにエンジン回転速度が制御され、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると過給機3による過給が開始され、エンジン回転速度がターボ回転速度以下となると過給機3による過給が終了する。
【0051】
次に本実施形態においてエンジン2を始動した後にアクセルペダル開度が一定で発進した場合のエンジン回転速度などの変化を図4、図5のタイムチャートを用いて説明する。図4は、アクセルペダル開度が比較的小さく、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなる前にロックアップクラッチ4aが締結している場合のタイムチャートである。図5は、アクセルペダル開度が図4のアクセルペダル開度よりも大きく、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなる時にロックアップクラッチ4aが解放している場合のタイムチャートである。
【0052】
まず、図4に示すタイムチャートについて説明する。本実施形態を用いない場合の変化を破線で示す。
【0053】
時間t0において、アクセルペダルが踏み込まれ、アクセルペダル開度が増加すると、エンジン回転速度が一時的に増加する。この時ロックアップクラッチ4aは締結しておらず、無段変速機6の入力回転速度、つまりプライマリプーリ回転速度はエンジン回転速度よりも遅れて増加する。駆動輪14に伝達される駆動力はアクセルペダル開度に応じて大きくなる。無段変速機6の変速比は最Lowに維持されている。
【0054】
時間t1において、プライマリプーリ回転速度の増加に伴って無段変速機6の変速比がHig側へ変更される。
【0055】
時間t2において、ロックアップクラッチ4aが締結する。
【0056】
本実施形態では、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくならないように無段変速機6の変速比が制御されており、時間t3において、無段変速機6の変速比がHigh側に変更される。
【0057】
一方、本実施形態を用いない場合にも、無段変速機6の変速比はHigh側に変更されているが、時間t4においてエンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなり、過給機3による過給が開始され、エンジントルクが増加し、駆動輪14に伝達される駆動力も増加する。そのため、アクセルペダル開度が小さく、運転者に加速意図がない場合であっても駆動力の増加によるショックが発生する。
【0058】
本実施形態では、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくならず、過給機3による過給が開始されないので、ショックの発生を防止することができる。
【0059】
次に、図5に示すタイムチャートについて説明する。本実施形態を用いない場合の変化を破線で示す。
【0060】
時間t0において、アクセルペダルが踏み込まれ、アクセルペダル開度が増加すると、エンジン回転速度が一時的に増加する。ここでのアクセルペダル開度は図4に示すアクセルペダル開度よりも大きく一定である。また、ロックアップクラッチ4aは締結していない。無段変速機6の変速比は最Lowに維持されている。
【0061】
時間t1において、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると、過給機3による過給が開始され、エンジンで発生するトルクが大きくなり、駆動輪14に伝達される駆動力が大きくなる。無段変速機6の変速比は変更されない。増加したエンジン回転速度は、その後ロックアップクラッチ4aが締結制御によってスリップ状態となることで小さくなる。
【0062】
本実施形態を用いない場合には、時間t2においてプライマリプーリ回転速度の増加によって無段変速機6の変速比がHigh側へ変更され、エンジン回転速度が減少する。
【0063】
増加したエンジン回転速度に対して目標エンジン回転速度は、エンジン回転速度よりも小さく設定されており、ここでは目標エンジン回転速度はターボ回転速度よりも小さい。このような状態においては、本実施形態では、エンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないようにするために無段変速機6の変速比は変更されない。
【0064】
本実施形態を用いない場合には、エンジン回転速度が減少し、時間t3においてエンジン回転速度がターボ回転速度以下となると、過給機3による過給が終了する。そのためエンジントルクが急激に減少し、駆動輪14に伝達される駆動力が急激に減少し、運転者にショックを与える。
【0065】
一方、本実施形態を用いた場合には、エンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないように無段変速機6の変速比を制御している。そのため、過給機3による過給は継続され、本実施形態を用いない場合のようにエンジントルクは減少せずに、ショックの発生を防止することができる。
【0066】
時間t4において、ロックアップクラッチ4aが締結すると、無段変速機6の変速比をHigh側へ変更する。
【0067】
本実施形態を用いない場合には、時間t5においてエンジン回転速度が再びターボ回転速度よりも大きくなり、過給機3による過給が開始され、運転者にショックを与える。本実施形態を用いない場合には短い時間の間に過給機3による過給開始、過給終了、過給開始が行われ、運転者に複数回のショックを与える。
【0068】
図4、5ではアクセルペダル開度が一定の場合について説明したが、図6、7においてアクセルペダルの踏み込み量が変更されて、アクセルペダル開度が変更された場合について説明する。
【0069】
図6は、図4のタイムチャートに対応し、時間t2までは図4と同じであり、時間t3においてアクセルペダル開度が増加する。図6においては、図4に示す本実施形態を用いずにアクセルペダル開度が一定の場合を破線で示す。
【0070】
時間t3において、アクセルペダルがさらに踏み込まれ、図3に示すマップに基づく目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると、本実施形態の制御を終了し、無段変速機6の変速比をLow側に変更する。また、エンジン回転速度が増加し、過給機3による過給が行われ、エンジントルクが大きくなり、駆動輪14に伝達される駆動力が大きくなる。このようにアクセルペダルが踏み込まれてアクセル開度が増加し、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなった場合には、運転者の加速意図に応じて車両を加速させることができる。
【0071】
図7は、図5のタイムチャートに対応し、時間t1までは図5と同じであり、時間t2においてアクセルペダル開度が小さくなる。図7においては、図5に示す本実施形態を用いずにアクセルペダル開度が一定の場合を破線で示す。
【0072】
時間t2において、アクセルペダルの踏み込み量が小さくなり、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さくなると、本実施形態の制御を終了し、無段変速機6の変速比をHigh側に変更する。また、エンジン回転速度が減少し、過給機3による過給を終了し、エンジントルクが小さくなり、駆動輪14に伝達される駆動力が小さくなる。このようにアクセルペダルの踏み込み量が小さくなりアクセルペダル開度が小さくなり、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも小さくなると、運転者の減速意図に応じて駆動力を小さくすることができる。
【0073】
その後アクセルペダル開度が一定であり、ロックアップクラッチ4aは締結しているので、図4のタイムチャートと同様にエンジン回転がターボ回転速度よりも大きくならないように無段変速機6の変速比が制御される。
【0074】
次に本実施形態の効果について説明する。
【0075】
エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなり、ロックアップクラッチ4aの締結制御中には、エンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないように無段変速機6の変速比を制御することで、短い時間の間にエンジン回転速度がターボ回転速度を跨ぐことを防止することができる。これにより、過給機3の過給開始、および過給停止によって生じるショックの発生を防止することができ、運転者に与える違和感を抑制することができる。
【0076】
エンジン回転速度がターボ回転速度以下であり、ロックアップクラッチ4aが締結している場合には、エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくならないように無段変速機6の変速比を制御することで、運転者が過給機3による過給を用いた加速を望んでいないような場合に過給機3による過給が開始されることで生じるショックの発生を防止することができる。
【0077】
エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなり、過給機3による過給が開始された後に、アクセルペダル開度が減少し、目標エンジン回転速度がターボ回転速度以下となった場合には、目標エンジン回転速度に基づいて無段変速機6の変速比を制御する。これにより、運転者のアクセルペダルの操作に応じて過給機3による過給を終了し、エンジンから駆動力が過剰に出力されることを抑制することができ、運転者のアクセルペダルの操作に応じた運転を行うことができる。
【0078】
エンジン回転速度がターボ回転速度以下となっている状態からアクセルペダル開度が増加し、目標エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなった場合には、目標エンジン回転速度に応じて無段変速機6の変速比を制御する。これによって、運転者のアクセルペダルの操作に応じて過給機3による過給を開始し、運転者のアクセルペダルの操作に応じて車両を加速させることができる。
【0079】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【0080】
本実施形態では、車両の発進時の無段変速機6の変速比制御について説明したが、これに限られることはなく、車両の速度が小さくなった場合、ロックアップクラッチ4aが解放された場合などに上記に示す変速比制御を行っても良い。
【0081】
さらに本実施形態では、無段変速機6の変速比を制御することによりエンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないようにするものについて説明をしたが、変速比を制御するものに限定されず、例えばロックアップクラッチ4aの締結力を制御することによりエンジン回転速度がターボ回転速度以下とならないようにしても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
2 エンジン
3 過給機(ターボ過給機)
4 トルクコンバータ
4a ロックアップクラッチ
6 無段変速機
7 コントローラ(変速比制御手段)
22 アクセルペダル開度センサ(アクセルペダル開度検出手段)
23 エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段、目標エンジン回転速度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
エンジン回転速度がターボ回転速度よりも大きくなると、前記エンジンへの過給を行うターボ過給機と、
ロックアップクラッチを有し、前記エンジンで発生した回転が伝達されるトルクコンバータと、
前記トルクコンバータを介して、前記回転が伝達される無段変速機とを備える車両を制御する車両制御装置において、
前記エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段を備え、
前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度よりも大きく、かつ前記ロックアップクラッチの締結制御中に前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下とならないようにすることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度よりも大きく、かつ前記ロックアップクラッチの締結制御中に前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下とならないようにするように、前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記変速比制御手段は、前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下であり、かつ前記ロックアップクラッチが締結している場合には、前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度よりも大きくならないように前記無段変速機の変速比を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
アクセルペダル開度を検出するアクセルペダル開度検出手段と、
前記アクセルペダル開度に基づいて前記エンジンの目標エンジン回転速度を算出する目標エンジン回転速度算出手段とを備え、
前記変速比制御手段は、前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度よりも大きくなった後に、前記アクセルペダル開度が減少し、減少した前記アクセルペダル開度に基づく前記目標エンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下である場合には、前記ターボ回転速度以下である前記目標エンジン回転速度に基づいて前記無段変速機の変速比を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
アクセルペダル開度を検出するアクセルペダル開度検出手段と、
前記アクセルペダル開度に基づいて前記エンジンの目標エンジン回転速度を算出する目標エンジン回転速度算出手段とを備え、
前記変速比制御手段は、前記エンジン回転速度が前記ターボ回転速度以下となっている状態から前記アクセルペダル開度が増加し、増加した前記アクセルペダル開度に基づく前記目標エンジン回転速度が前記ターボ回転速度よりも大きい場合には、前記ターボ回転速度よりも大きい前記目標エンジン回転速度に基づいて前記無段変速機の変速比を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−44244(P2013−44244A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180604(P2011−180604)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】